※十六夜咲夜が羽目を外します。
庭師に恋をした。
庭師と言っても紅魔館の庭師じゃないです。
冥界の庭師です。
紅魔館の庭師は庭師じゃなくて門番です。
庭師なのに刀を振り回しているところが素敵。
ああ、私はメイド長です。
人間です。でも彼女は人間じゃありません。
そこが良いと思いませんか?
種族を超えた愛。
ドラマティックじゃないですか。
でも彼女は私を特別視していません。
咲夜ちゃんウフフぐらい言ってくれても構わないのに。
妖夢ちゃんウフフ。
彼女の気を惹くにはどうすればいいのか。
私も刀を持ってみるのはどうだろうか。
メイドに刀。
ちょっとお洒落になると思います。
でもメイドがナイフを持てばもっとお洒落ではないでしょうか。
意味がありませんね。
このままが一番なのでしょうか。
ちょっとだけ納得がいきませんね。
振り向いてもらうには何か行動を起こさないと。
え? 告白?
いやいや妖夢、そういうわけには。
そんなことが出来る勇気はまだ私にはありませんので。
あしからず。
庭師。
そうだ、私も庭師になろう。
庭師になれば庭師の気持ちが理解できるはず。
そうと決まればナイフで剪定。
ズババババっと。
マジカル剪定。
まじかる☆さくやちゃんスターとは関係ありませんわ。
妖夢ちゃんウフフ。
でも剪定なんてしたことないんですよね。
せいぜい庭の草むしり程度ですわ。
彼女も草むしりぐらいならするかもしれない。
剪定は難しそうだから草むしりにしよう。
でも草むしりしようにも草がありません。
うちの庭師が片付けたのかもしれません。
やることがなくなりました。
そうだ、私も妖夢になろう。
髪の色が似てるし、大丈夫。
妖夢の衣装のイメージは頭にあります。
チョキチョキっと。
ブラウスはそのままで。
緑色のスカートとベストを作ります。
妖夢ちゃんウフフ。
ああ、カチューシャもね。
あと裾の長いドロワーズ。
見せドロワでロリータアピール。
鏡で自分を見てみたけどイマイチ。
模倣は模倣に過ぎないということです。
コピーはコピー。
コピーのコピー。
コピーでコピー。
もしかするとカチューシャのキクラゲらしさが足りないから満足出来ないのかもしれません。
妖夢ちゃんウフフ。
はぁ。
ちょっと休憩しましょうか。
三時のお茶。
折角だから彼女とお茶をしたいです。
妖夢ちゃんウフフ。
彼女の使用済みカップを私の前に置けばそれっぽくならないだろうか。
ならないな。
おおっと。
お嬢様に呼ばれてしまった。
え? お使い?
良いですよ、今暇ですし。
行って参ります。
美鈴、そういうわけで行って来るわよ。
人里。
彼女が通りかかってくれたら良いのになあ。
通りを歩く彼女に襲い掛かって愛の告白。
この際無理やりというのはどうだろう。
レズレイプ。
素晴らしい響きです。
妖夢ちゃんウフフ。
妖夢ちゃんとの素晴らしい毎日のために禁忌を犯そう。
いやいや咲夜、やっぱりそれはいけないわ。
なんて悩んでいると霧雨魔理沙ちゃんじゃあ、ありませんか。
え? 今日人里で妖夢ちゃんを見かけた?
良い情報を教えてくれたからお礼に押し倒してあげました。
でも時を止めて里中を探し回っても彼女が見つかりません。
なんということでしょう、もう冥界へ帰ってしまったのでしょうか。
こうなってはお嬢様のお使いなんてもうどうでもいいです。
妖夢ちゃんを探しにいこう。
妖夢ちゃんウフフ。
最初に尋ねたのは博麗神社。
縁側で寝転がっている巫女を叩き起こす。
近くに転がっている湯飲みを投げつけられた。
え? 妖夢ちゃんが一度来た?
でももう行ってしまった後の様子。
どこかに残り香でもないだろうか。
クンカクンカ。
巫女の匂いはどうでもいい。
庭師の匂いを欲しているのだ。
お。
見つけた。
妖夢ちゃんウフフ。
匂いは冥界に続いている。
これを辿れば良い訳だ。
冥界。
これは妖々夢ではないので四面ボスなんて居ませんわ。
おい亡霊。
妖夢ちゃんはどこに居る。
え? 風邪で寝込んでる?
妖夢ちゃんウフフ。
これは又とないチャンス。
看病なら私が致しますわ。
妖夢ちゃん。
じゃなくて、妖夢。
愛してる。
じゃなくて、こんにちは。
え? 帰ってくれ?
まあまあそう言わずに。
え? メイドの仕事はどうしたのって?
瀟洒にサボータジュですわ。
え? わざわざ来たのはどうしたのか、だって?
別に顔を見に来ただけよ。
妖夢ちゃんウフフ。
喉が渇いたらお茶を持ってきてあげます。
お腹が空いたらおかゆを炊いてもってきてあげます。
寂しくなったら傍に居てあげます。
え? なんかそれ恋人みたいだって?
妖夢ちゃんウフフ。
そろそろ理性の限界です。
妖夢ちゃんとの素晴らしい毎日のために禁忌を犯そう。
妖夢ちゃんの風邪っ気な吐息ウフフ。
風邪で弱っている妖夢ちゃんを押し倒して唇を奪ってやりたいですわ。
舌をねじこみたいですわ。
歯や歯茎を舐めて妖夢ちゃんの歯垢を食べてみたいですわ。
万の言葉を用いて罵られようが、億の言葉を用いて妖夢ちゃんへの愛を説きたいですわ。
妖夢ちゃんウフフ。
え? お嬢様が来ている?
なんとお嬢様。
どうされたのです?
え? 私が帰らないのを心配してくださった?
良いところで引き剥がされてしまいました。
でも私は挫けない。
何度でも妖夢ちゃんの唇を奪いに来ますわ。
妖夢ちゃんウフフ。
私は玄関のマットを洗っている。
玄の関のマット。
お嬢様が一日かけて洗えと仰った。
昨日紅魔館を抜け出したのがダメだったらしい。
どうしてだろう?
何が悪かった?
お嬢様にそう訊いてみたら怒られてしまいました。
妖夢ちゃんウフフ。
一日マットを洗ったらどれぐらい女子力が上がるのだろうか。
門番が緑の服を着ている。
緑の服を着た門番がいる。
美鈴が緑の服を着ている。
緑の服を着た美鈴が緑の服を着た客の相手をしていた。
美鈴が緑の服を着て客も緑の服。
え? 美鈴以外の緑の服を着た人?
妖夢ちゃんウフフ。
私の瀟洒ブレインが超高速で動き出す。
瀟洒イヤーはその客の声が妖夢ちゃんだと感じ取った。
瀟洒タンが空気の味を読み取って妖夢ちゃんが近くに居るとわかった。
瀟洒アイから放出した瀟洒レイを対象物にぶつけると、その凹凸具合で妖夢ちゃんだと判別出来た。
おい美鈴代われ。
妖夢ちゃんと会話して良いのは私だけだ。
仕舞いには二人が弾幕ごっこをし始めた。
おい美鈴代われって言ってるでしょ。
あ。美鈴が妖夢ちゃんを蹴った。
おい美鈴私の妖夢ちゃんに怪我をさせたら許さないぞ。
あ。美鈴が妖夢ちゃんに斬られた。
おい美鈴私の妖夢ちゃんに斬られて良いのは私だけだぞ。
あ。美鈴が負けた。
おい美鈴私の妖夢ちゃんに道を譲れ。
あ。美鈴が妖夢ちゃんに微笑えまれた。
おい美鈴私の妖夢ちゃんの微笑みもらってんじゃないわよ。
あ! 妖夢ちゃんがこっち見た!
妖夢ちゃんがこっち見てる!
こっち来たこっち来た!
現実の妖夢ちゃんが私を見ているぞ!
妖夢ちゃん!
妖夢ちゃん!
妖夢ちゃん!
妖夢ちゃんとちゅっちゅしたい!
看病したお礼を言いにきてくれたのね妖夢ちゃん!
お礼も良いけど誠意も欲しいの妖夢ちゃん!
だからちゅっちゅしましょ!
妖夢ちゃんとの素晴らしい毎日のために禁忌を犯そう。
妖夢ちゃんウフフ。
警察がなんだ。
法律がなんだ。
刑罰がなんだ。
ああ妖夢ちゃんのDNAが欲しい。
妖夢ちゃんの唾液が欲しい。
妖夢ちゃんの排泄物も欲しい。
妖夢ちゃんのありとあらゆる液体が欲しい。
妖夢ちゃんが汗をかいている。
さっきうちの門番と弾幕ごっこしたからか。
グッジョブだ美鈴、あなたのお陰よ。
時間を止めて妖夢ちゃんの汗ぺろぺろ。
美味しい。
素晴らしい。
妖夢ちゃんウフフ。
超一流のパティシエでも首吊り自殺するぐらい美味しい液体。
ああもう全身を舐め回したい。
いやいや咲夜、楽しみは最後に取っておくのよ。
カチューシャみたいなキクラゲ。
これも最後までおあずけだ。
だがいつかその装飾品に私の唾液を塗りつけてやる。
妖夢ちゃんもしかしてドロワーズ蒸れてる?
妖夢ちゃんウフフ。
さっき体動かしたんだから。
もわもわと。
ほのかな香りが。
私の肺一杯に満たしたい。
おっといけない。
私は皆の前では瀟洒な咲夜で通っているのだ。
一度落ち着こう。
妖夢ちゃんのブラウスを煮込んでダシを取りたいですわ。
もう大丈夫。
いつもの咲夜よ。
咲夜のいつもの。
妖夢ちゃんウフフ。
どうやら彼女は昨日私が来たのを幽々子から聞いて来たそうだ。
まさかと思ったが本当だったとは。
とりあえず妖夢ちゃん私の部屋に上がって。
妖夢ちゃんウフフ。
さあ妖夢ちゃん、私の部屋の空気をあなたの吐息で満たしてください。
じゃあ私はお茶を淹れてくるわね。
妖夢ちゃんウフフ。
お茶には私の唾液を混ぜておきましょう。
強い意思があれば彼女の胃の中に入った私の唾液が変質して精子になり、妖夢ちゃんの子宮目指して細胞の世界を泳いでくれるのではなかろうか。
お茶請けのクッキーには私の血液を混ぜておきます。
生地に練りこみ、かき混ぜているから気付かないと思いますけど。
妖夢ちゃんウフフ。
これで妖夢ちゃんは何も知らずに私の体液を取り込んでしまうのよ。
え? 混ぜたりしたらそもそも効果が薄いんじゃないかって?
薄いぐらいが丁度良いのよ。
塵も積もれば何とやら。
毎日与えておけばいつかは。
さあ妖夢ちゃん、お茶が入ったわよ。
フーフーしながらお茶飲んでる妖夢ちゃん可愛い可愛いって監禁したいですわ。
妖夢ちゃん監禁して可愛い可愛いってフーフーしながらお茶を飲む。
妖夢ちゃん風邪はもう大丈夫なの?
ああ、そう。
いっそのこと私の白血球を送り込んで妖夢ちゃんの風邪ウイルスを退治して差し上げたかったな。
妖夢ちゃん今日泊まっていくの?
え? それはない?
残念。
妖夢ちゃんウフフ。
ねぇ妖夢ちゃん、ちょっと妖夢ちゃんの指紋くれない?
ちょっと記念に残したいだけなんだけど。
なんで妖夢ちゃんちょっと引いてるの?
え? そんなことない?
妖夢ちゃんウフフ。
トイレどこにあるかって?
部屋を出て右に行ってすぐの角を曲がってちょっと歩いた先ですわ。
何なら私の部屋にトイレ作っておこうかしら。
妖夢ちゃん専用にするから何の問題もありません。
妖夢ちゃんウフフ。
妖夢ちゃんが用を足しに行った。
花を摘みに行ったとも言う。
妖夢ちゃんが口をつけたカップが目についた。
妖夢ちゃんウフフ。
同じ柄のカップに同じ色と香りのお茶を同じ量と同じ温度で淹れておけば、きっとバレませんわ。
妖夢ちゃん使用済みカップぺろぺろ。
妖夢ちゃんの唾液がわずかながら付着しています。
ぺろぺろせずに保存してしまうのも良かったかもしれない。
時間を止めてお茶を淹れ直しておく。
妖夢ちゃんが帰ってきた。
何も問題はない。
しまったな。
トイレに行っている妖夢ちゃんに襲い掛かればよかった。
おかえり妖夢。
妖夢ちゃんウフフ。
何も知らずにお茶を飲んでいます。
え? もう帰る?
せめて夕食ぐらい食べて行ってくれてもいいのに。
遠慮しなくていいから。
本気で。
食べていけよおい。
クッキーに睡眠薬でも混ぜておくべきだったか。
妖夢ちゃんは私の目の前から去って行ってしまった。
いつでも遊びに来てねと言うしかなかった。
いつでも。
一秒後にでも来てくれても良いのよ。
来なかった。
二秒後になっても。
三秒後になっても。
妖夢ちゃん……。
妖夢ちゃんは私の愛に気付いてくれないのか。
気付かれないままの、一方的な愛で我慢しろということなのか。
我慢。
我慢だ咲夜。
咲夜は我慢。
いいや限界だ。
妖夢ちゃんウフフ。
やっぱり愛し、愛される関係が良い。
そうと決まれば次の手を考えなければ。
いっそのことまどろっこしいことなどせず、ストレートに告白すべきなのか。
いやいや咲夜、もうちょっとだけ頑張ってみよう。
ソフトな接触を続けよう。
妖夢ちゃんの半霊に舌を這わせたいですわ。
妖夢ちゃんウフフ。
私は一生死ぬ人間。
彼女は半分死んだ人間。
彼女に一生ついていくことは不可能である。
だから精一杯人生を謳歌するしかありません。
妖夢ちゃんウフフ。
いっそのこと彼女も時を止めた世界に入ることが出来れば良いのに。
そうすれば永遠に彼女と居られるのだが。
まあ無理か。
それにそうなったら、時間を止めてドロワを盗むなんてことが出来なくなる。
妖夢ちゃんウフフ。
さあ明日からのことを考えよう。
お嬢様に呼ばれた。
無視してやれ。
今は妖夢ちゃんのことで頭が一杯なんです。
また呼ばれた。
仕方がない、行ってあげましょう。
きちんとメイドメイドして、それから彼女と一つになる方法を考えましょう。
妖夢ちゃんウフフ。
あと怖い。
でも正直悪くなかった。