Coolier - 新生・東方創想話

記念日に…

2011/05/11 21:02:07
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__魔法の森___



「らんらんら~ん♪きょうは~記念日~大切な日~♪」
森をスキップしているのは私、紅美鈴です。
お嬢様に今日が記念日だということを伝えたら、快く今日だけ門番は休ませてもらうことができました。感激です。
「あぁ~楽しみですぅ。どんな顔をするんでしょうか?
 もう今からワクワクがとまりませんよぉ!」
私は目的地へと早く到着したかったのでスキップのリズムを速めた。走ればいいじゃないか、という反論はやめてほしいですね。妖怪だって楽しいときはスキップをしていたいのです。大丈夫、木の根に引っかかってこけるような無様なことにはなりません。私の自慢は運動神経ですから。
 まぁコケたところで痛みなどすぐに忘れてしまいそうなほど、私の気分は高揚しているんですがね。
「るんるんる~ん♪」
タタッタタッタタッタタッ…



__そうして、紅美鈴はスキップしていった。魔法の森にすむ人形遣いの家へと__








__紅魔館___




「あぁ~もう、本当に忙しい!!」
私は、どれだけ時を止めても一向に終わる気配のない仕事の多さにイラだっていた。
「どうして今日だけこうなのよ~!!」
美鈴が休みということで、門番役としてメイド妖精が20匹ほど門番へと駆り出されているのだ。しかし、美鈴と妖精の戦力比を考えたらそれでも足りないぐらいなのだが…
そんなこともあってかどうか、今日はやけにメイド妖精がはりきっている。いつもなら自分のことで精一杯の彼女たちが、門番の子の分もカバーしようといつになく真剣に仕事をしている。いつもは、私がやっている仕事もやろうとする。それだけなら、よかった。私も楽できると思った。でも、現実はそう甘くはなかった。
やはり、いくら張り切ろうと妖精は妖精。どこか、ぬけている。廊下や部屋を掃除すればかならず花瓶を倒し、窓ふきをすればガラスを割る。キッチンの掃除をしようものなら、食材・食器あらゆるものがひっくり返る。結果、私の仕事がいつもより増える。自分たちで処理できればいいのだが、そんなことをすれば、もっとひどくなるのは目に見えている。時間を止めて、私が片付けをするしかないのだ。ただ、片付けが終わっても時を動かした数分後には、また別の事件が起こっている。この繰り返しなのだ。
「せめて、全員が門番に行ってくれたらねぇ」
私は一人つぶやく。妖精がいない方が楽になるのだ。
すると、一匹のメイド妖精がやってきた。確か、彼女は客間の清掃をしていたはずだ。
「あっあのメイド長」
「どうかしたの?」
私は疲れなどまったく見せず、瀟洒に答えた。そう、これが紅魔館のメイド長のあるべき姿だ。間違っても、「あぁ~?また~?」などとは言わない。そう、私、瀟洒。
「じっじつは、シャンデリアが落ちてしまって」
メイド妖精はとても焦っていた。それはそうだろう、あのシャンデリアは紅魔館が外の世界にあった時からお嬢様が最も気に入っていたものだからだ。
しかし、いったいなぜシャンデリアが落ちたのだろうか。
「チルノちゃんがキックをして」
「ちょっと待てぃ」
はっ、いかんいかん。あまりにも唐突すぎてすこし瀟洒が崩れてしまった。反省。
それにしても、おかしい。どうしてあの妖精がでてくるのだ。
「どうしてチルノがいるのかしら?」
「門番の子と友達らしくて、中に入ってきちゃったんです」
やっぱり妖精はダメだ。門番の意味わかっているんだろうか。
しかし、これは面倒なことだ。いくらチルノが⑨と巷で言われていようと、妖精という枠組みの中では強い部類にはいる。紅魔館の妖精では歯が立たないだろう。つまり私がいって片づけるしかない。
それに、もしシャンデリアが壊れていたのなら直すのにも手間がかかる。
美鈴ならこんなことは無かっただろう。いつもチルノになぞなぞを出して、泉の大妖精が探しに来るまで門のところで考えさせていた。
「しょうがないわね、私がいってくるわ」
そう告げて私は客間へとむかった。





途中、美鈴の部屋で立ち止まった。
「美鈴、お休み中わるいんだけど少し手伝ってもらえるかしら?」
扉越しに尋ねる。しかし、返事はない。
「美鈴?ねてるの?」
「美鈴さんならいませんよ。魔法の森に行くって言っていました」
近くにいた妖精が答えた。
「えっ?私聞いてないわよ」
「えっ?そうなんですか?」
聞いていない。
ショックだった。
美鈴が私に何も言わずにでかけるなんて。昔から美鈴はいつだって私が心配しないように行先を告げてくれていた。外出は無論、お風呂に入るときも伝えてくれた。
なのに、今日に限って。しかも、魔法の森?どうして?あんなところはキノコしかないし、人もよりつかない。 
いるとしたら………あぁ、あの人形遣いか。そっか、美鈴はアリスに会いに行ったのか。
私に、内緒で。
そういえば、アリスはこの前図書館にきたっけ。それで帰るときに美鈴と話していた。
何を話していたんだろう。とても親しそうだった。
…ダメだ、疲れてるからこんな風に悪く考えちゃうんだ。やめよう、もう。
しかし、思わないとしようとすればするほど考え込んでしまう。
内から溢れるは大好きな人への、切ない気持ち。それは涙となって外へと現れてきた。
気づけば私は時間を止めていた。
膝をついて、両の手で顔を覆い、泣いていた。

…どうして!?なんでアリスなの!?私はこんなにもあなたのことを思っているのに!
私があなたを思っているくらいに、あなたにも私をおもってもらいたい!
……あなたの中を私で満たしたい…。
気づいてほしかった。恥ずかしいから、そっけない振りをしていた。
なんだろう、この気持ちは。前に、パチュリー様に聞いたことがある
『それは好きっていう感情よ』
そんなものは、私も知っている。
好きと言うなら、お嬢様もフラン様もパチュリー様も小悪魔も美鈴もみんな好きだ。
でも、お嬢様と美鈴への感情は他とは違う。それにお嬢様への好きと美鈴への好きもまた、違う。美鈴に笑いかけられるとあったかな気分になる。辛いときは、門を守る美鈴の背中をみると安心して元気が出る。美鈴が嬉しかったら、私も嬉しい。美鈴が悲しめば私も悲しい。
だけど、もう、遅い。
私が自分の気持ちにハッキリと答えを出していなかったから、恥ずかしがったから、美鈴に思いが伝えられなかった。
美鈴は私以外の誰の元へも行かないと、根拠もなく思っていた。でも、でももう___
 



 






私は止まった世界で独り、止まらない涙を流し続けた____



 







____夜_紅魔館広間_____





ようやく落ち着きを取り戻した私は、晩御飯の支度をして皆が来るのを待っていた。
美鈴は、まだ帰ってきていない。
そこに、お嬢様があらわれた。寝起きだというのに、やはり威厳がある。
「ごきげんよう、咲夜」
「お嬢様、今日も気品が満ち溢れていらしてなによりですわ」
「当然よ。あら?」
そこに、パチュリー様と小悪魔も入ってきた。
「ごきげんよう、レミィ。
 あ、咲夜、コーヒーを淹れてきてくれない?眠気覚ましに」
「あ、それでしたらわたくしが淹れて」
「お前はいい」
「ガーン!」
うなだれる小悪魔をしりめに、コーヒーを淹れようと広間を出て行こうとしたところ、
「あらパチェ、ダメよ。今日は咲夜を働かせたら」
「あぁ、そうだったわね。小悪魔、淹れてきて」
「ハイ!!」
小悪魔はパタパタと嬉しそうに出て行った。
一瞬で小悪魔が元気になったことにも驚いたが、気になったこと、
「あの、お嬢様。働かなくてはいいとはどういう…?」
「あら、今日はゆっくり休めたんじゃないのかしら?
 妖精に咲夜の代わりを果たすように言っておいたんだけど」
あぁ、だから今日はいやに妖精がはりきっていたのか。
「レミィ、逆に咲夜は疲れたと思うわ。妖精が役立たずなのは分かっているでしょ」
「あっ…ご、ごめんね咲夜。今日は休ませてあげようと思って」
「まったく、ちょっとは考えなさいよ。友達として恥ずかしいわ」
「うー…」
どうやら今日のことは、お嬢様の気遣いだったらしい。
それにしても、なぜ、
「お嬢様、お心遣いは感謝します。しかし、なぜ今日なのですか?」
すると、二人ともびっくりした顔になる。
「忘れてしまったの?最近、いそがしかったからかしら」
「それもあると思うけど、レミィ、咲夜はきっと美鈴のことばっか考えてたのよ」


そして、声をそろえて


「「だって今日は、あなたの記念日じゃない?」」







◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ダダダダダダダダ!!!
「はぁはぁ」
私は紅魔館の廊下を走っていた。スキップする余裕など今はない。
思ったより時間がかかってしまった。
急がなきゃ。
途中で小悪魔とぶつかり彼女に「ギニャアアアア!」コーヒーがかかってしまったが、あとでちゃんと謝ろう。
ただ、右手の箱は揺らさないように、左手の花が散ってしまわないように、慎重に急ぎ、疾駆する。
 


そして_____



バンッ!!!


私は勢いよく広間の扉を開けた。
中では不思議そうな顔をした咲夜さんに、お嬢様とパチュリー様が何か喋っているようだった。
咲夜さんがこっちを見た。
「め、美鈴?なんで?アリスの所に行ったんじゃ?」
おや、咲夜さんはもう知ってたようです。少し残念。驚かせようと思ったのに。
「ありゃりゃ…ばれてましたか、そうなんですアリスさんのとこに行ってたんですよ~」
「…そう、やっぱり……あっ、あのね」
「で、これを作ってたんです。どーぞ。」
「えっ?」
私は右手の箱をテーブルに置き、ふたを取った。
「ケーキ…?」
咲夜さんが疑問符を浮かべる。よかった、驚いてますね。成功です。
「あら?美鈴、あなたケーキなんて作れたの?」
「いいえ、お嬢様。だから今日はアリスの家に行って作り方を教えてもらってたんですよ
 まぁ大分失敗して遅くなってしまったんですけどね」
咲夜さんがハッとしている。どうかしたんでしょうか。おっと、もう一つあったんだ、
「咲夜さん、これは私が大切に育てた花です。咲夜さんに差し上げようと思って。この日のために 心をこめて育ててきたんです。もらってください。」
そういって、私が花を差し出すと咲夜さんは
「え、えっと、ありがとう。でも、ちょっと待って、あの、いろいろ混乱してる。
 記念日っていうけど、今日は何の日?それに、そんな大切な花なら好きな人にあげたほうが…」


 
…どうやら、いろいろ混乱しているようですね

 
でも、最後の質問は、


「咲夜さん、私は大切な人に大切な花を贈ります」


私は彼女に近づいて、片手で引き寄せる。


「私はあなたのことを一番に思っているから、花を贈るんです」


「え?それって…」



「大好きってことです。じゃなきゃケーキつくったりしません。
 …愛してますよ、咲夜さん。」








もう、言葉はいらなかった。
自分のすぐ近くのこの女の子がなにを思っているかぐらい、目を見れば、分かる。
そして、自然と顔と顔との距離が縮まって______







訪れるは、永遠よりも長い一瞬__何よりも儚く、甘い、優しい時間






私はくちびるを離す。
最初の疑問に答えるために、今日は何の日か、今日は、そう今日は、








「今日は、あなたが紅魔館に初めてきた日ですよ。
 忘れちゃダメです、咲夜ちゃん」 







言って、もう一度花を差し出す。
今度は、受け取ってくれた。
彼女は一度下を向き、少しはにかんだ後、顔を上げて、瞳を潤ませ、
そして、最高の笑顔で








「うん、もう忘れない。ありがとう。
 …私も大好きだよ、めーりんお姉ちゃん」













あぁ、昔のように呼んでくれるんですね。
でも、呼ばれ方が変わっても私の愛は変わっていませんよ。
これまでも、そして、これからもずっと______________
パ「小悪魔、あんたなに寝てんのよ。コーヒー持ってきてって言ったでしょ?」
こあ「きゅう~~~」



どうも。2回目の投稿となります。小雨トキトです。
まぁ2回目と言っても、1回目とほぼ同時に書き上げたのであまり変わらないんですがね。
前回より少し長めの文となりました。最後まで読んで下さりありがとうございました。
あなたに読んでもらえて本当にうれしいです。
あぁ、美鈴、咲夜ぁ…紅魔組は東方の中でも特に好きですが、やはりこの2人が自分にとって最高ですね。
最後に、アドバイス・間違いの指摘などお願いします!

奇声を発する程度の能力>こちらも読んで頂けたようで、感無量です。ありがとうございます。

10さん>深夜なのでカフェインにはご注意を…
なら、僕は咲夜さんに紅茶を淹れてもらいます(^^)
小雨トキト
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コメント



0.1120簡易評価
2.100奇声を発する程度の能力削除
最後で咲夜ちゃん&めーりんお姉ちゃんキタコレ!
こっちも良いめーさくでした
10.100名前が無い程度の能力削除
口の中が超甘い…こぁにコーヒーでも淹れてもらうか…