CAUTION!
この作品は東方プロジェクトの二次創作小説です
この作品には多分に、作者の妄想、オリジナル設定、ねつ造が含まれているので
そういうのが苦手な人はもどるをクリック!
なお、この作品は『外の世界から』の連作となっています!
『外の世界から『転・続』』
紫に突然連れてこられたこの世界、そして偶然拾った十数年前の新聞。
僕がこの『過去』の幻想郷に来てから、幾月が経った。
まだ、僕が元の世界に帰れる目処は立っては居ない。
「毎度ありがとうございます!」
ここ最近になって贔屓になってくれたという女性客に精一杯の愛想で対応する。
僕の香霖堂ならこうはならないのだが、流石に他の店での対応ともなるとそれなりに気が張るものだ。
「また、入り用になったら来ますわね♪」
「はい、是非ご贔屓に」
女性客は他の友人らしき女性客と一緒になってわいわいと出て行った。
妙に騒がしく僕を指さしていたのが、勘に障ったのだが・・・・。
これも客商売、そんなことを言っていれば僕は解雇の目にあってしまうだろう。
「はぁ・・・」
「あ、『こーりん』さん!」
接客に気疲れしていた僕を呼び止めたのは同僚の裁縫係の先輩だった。
「実は私、お弁当を食べるはずだった友達が休んじゃって、 余らせるのももったいないので・・・ ご一緒しませんか?」
「はぁ、 友達がお休み・・・・」
もじもじと重箱を持っている先輩、彼女を見ているとなぜだか魔理沙の事を思い出した。
『香霖はろくに昼飯も喰わないからモヤシのままなんだ! これでも食べろ!』
魔理沙の数少ない僕を心配する殊勝な態度に感激しながら魔理沙の弁当を食べた事があった。
どれだけ心配だったのか、押しつける様に弁当をつきだしてくるので僕も断る術が無かった訳なのだが。
魔理沙に関する思い出の中で、ほとんど皆無に等しい魔理沙が僕に施しをした思い出の一つでもある。
魔理沙は「旨いか?」と念を押すように何度も何度も聞いてきたっけ
それから魔理沙が僕の家の台所に入り込む様になった。
毎度押しかけて昼飯やら朝食やらを僕の分まで作っては食べていくことになったのだが。
・・・・もしかして、あれは僕の台所を好いように使うための布石だったのか?
あれから霊夢とか紫とか幽香とか・・・えっと後誰だっけ? などのタチの悪い友人達が同様に僕の家の台所を使うようになった。
我が家のエンゲル係数は危険数値に跳ね上がった。
視線を先輩に戻す。
僕は基本昼飯なんぞを抜いても全く問題ない体だから普段は昼食の習慣なんてない。
逆に、この先輩の弁当をいただいても良いのだが。
「すいません、実は『子供』をまたせているので・・・」
「・・・・え?」
「一人で食べさせるのには小さな子供でして、 申し訳ありませんが今日は子供の世話をしないといけませんから」
「・・・・は、はい・・・・」
先輩の親切を断るのに多少の罪悪感を感じ、詫びながら店を後にする。
先輩達が後ろで「まさかのコブつきかよ!? チクショー!!」となにやら誤解したような事を話し合っていた気がするが、どうでも良いことなので訂正はしなかった。
勿論のこと僕には実の子供なんて居ない、だが世話をしなければいけない子供というのは居る。
以前に世話になっていた里の大手店「霧雨道具店」で働きこれからの事を考えている。
僕はどうすれば紫の言っていた『必然』とやらを見つける事ができるのやら?
店先の広場らしいところに子供達の遊び場が有る、そこで待ち合わせをしている。
近くまでいくと、子供達がままごとらしい遊びをしていた、その輪のなかにお目当ての人物が居る。
そのお目当ての人物は僕を視認すると、仲間達に別れを告げ、小走りでよってきた。
「『こーりん』! はやくかえろうよぅ!」
僕がこの『過去』幻想郷で拾ってしまった一人の少女だ。
親類を失ってしまったこの小さい子供の世話(育児?)をするために金が入り用になった。
「こらこら、 目上の人を呼ぶときは「さん」付けじゃないと駄目っていったじゃあないか」
「はーい『こーりんさん』」
「よしよし」
頭を撫でる、子供はほめた方が才能の伸びが良いと聴く。 些細なことでもそれとなくほめたり出来るかが育児の鍵らしいので僕はそれになるべく習ってみよう。
周りの子供達も保護者が次々に現れて、半刻もしないうちに広場は誰もいなくなった。
僕が今日、仕事を昼で上がれたのには、少しだけ訳がある。
日が傾くと現れる、 『でいだらぼっち』のためだ。
ここ、数週間の間目撃情報が多発し始めた異変で、 夕方になると山の向こうから謎の大きな陰が現れるらしい。
僕は一度として見たことは無かったのだが、どうも事実らしく、霧雨の旦那も目撃者の一人でそれきり店が昼頃に上がりになることが多くなったのはこのためだ。
里でも
すわ、妖怪の仕業か!?
と、こういう有様で夕方になると里の街道にでる人がぐっと減ったというわけである。
そんなわけで外に居ても仕方がないので、僕はいつものように彼女の生家にお邪魔しながら生活をしている。
手元には紅い布、丁寧に縫いつけていく。 これが今の僕の日課だ
「なにしてるの?」
「・・・今は秘密さ、 けど完成したら君にあげるつもりだよ」
「おおー」
霧雨の旦那から少し譲ってもらう布を織って作る、大切な品物。
これが出来る頃になれば僕はきっと帰れる気がする。
「少し、聴きたいことがあるんだ」
「え なに?」
「君の敵って、どんな妖怪だった?」
「んー」
細い首を捻らせ腕を組み始めた。
もう、彼女のなかには復讐心のような物は薄くしか残っていないのかもしれない。
「おおきかった!」
「へぇ 大きいってどのくらいだい?」
「すっごく!」
「そうか」
足をぶらつかせつつ、僕のマジックアイテムを弄る少女の手つきは危なげない。
少し前から始めた魔法の講義、不断の努力と才能を必要とする魔法の才覚は彼女に取っては遊びに等しい物らしい。
魔法、超常的な才能にすさまじく富んでいた彼女は僕の教える事をすべて吸収してしまった。
「ねぇねぇー なにこれ?」
「ん?」
だるい会話、あの香霖堂の情景をそのままに感じさせる雰囲気。
彼女が僕の巾着から取り出したのは一切れの厚手の紙だった。
スペルカードだった。
「・・・ああ、これか」
「めんこ かなぁ?」
それをしげしげと眺める彼女の手からスペルカードを取り上げてしまう。
少し非難のまなざしを向けられるが、別段かまわないさ。
「いや、 違うよ。 これは『スペルカード』さ」
「・・・・」
「めんこ みたいにね これも遊びの為に作られたカードさ」
「なんか つまんなさそうー」
そういいつつも彼女の好奇心を宿した瞳は僕の手のスペルカードを離さない。
「これはこの世で最も楽しく、最も美しく、そして最も無駄なゲーム『スペルカード戦』をするために作った物なんだ」
「こーりんさんがつくったの?」
「いや・・・・」
僕は 一度息を止めた。
「僕の大切な友達が作ったんだ、 これさえあれば、どんな人とでも、みんな仲良く遊ぶことが出来るんだ」
「どんな・・・でも?」
「そう! 『スペルカード戦』は人間だろうと、妖怪だろうと、幽霊でもオケラでも参加できる平等なゲームなんだよ」
これは魔理沙の受け売りだ。
「これで、僕の友達はみんな仲良しになったんだ」
「・・・」
少女はこの美しい幾何学模様のカードを痛く気に入った。
僕は彼女にこれの使い方を教えてやった。
翌日の朝、 僕は草薙の剣をこっそり包みに忍ばせて店に向かった。
彼女にも、「今日は外出しないで僕の帰りを待つ」と言った。
今朝の噂で例の『でいだらぼっち』が里のすぐ側まで近づいているという目撃情報を知ったからだ。
店は昼時で客が来なくなるため店員も昼前後に帰される。
僕は普段とはまた格別に違う店の雰囲気を楽しんでいた。
雰囲気が違うというのは、なにもすべてが全て、気のせいと言う訳ではない。 雰囲気が違ってくれば客層も自然と違って来るものだ。
香霖堂の時もそうだった。
このとき、目の前に来た客は、香霖堂にとっては常客だったが、この店にとってはあまりに奇遇な客だった。
「ご機嫌よう、 いつかの晩 その節はどうも」
「・・・・」
「私の事 覚えておいでかしら?」
紫の衣装に、自慢の日傘。 八雲 紫、 幻想郷の賢者だ。
ただし、この紫はどうやら僕のよく知る方の紫ではなく、『過去』の幻想郷の紫だ。
幸いというか不幸というか、店内、僕の目の届く範囲には誰もいなかった。
「ああ、よく覚えているよ。 確か僕のことを蜂の巣か蓮根の根だと勘違いしているご婦人だったね。 執拗に僕の体に穴を増やそうとするんだ」
「ふふ、 またまたそんな戯れ言? それと、この店はお客さんにそんな不躾な態度をとる接客が普通なのかしら?」
「君は普通の客では無いだろうからね、 この接客が正しいのさ」
紫は何気なく織物を触って店内を見回す。
「貴方も普通じゃないわね、少なくとも人間の里の店にいるにはふさわしくはないわ・・・」
せせら笑うような、彼女の顔の陰の気が強くなった。
いつかの晩、 彼女に襲われた事を思い出し、全身の筋肉が緊張する。
「それでお客様、今日はどんな御用向きで?」
包みのなかの草薙の剣をたぐり寄せる。
「最近になって現れる 『でいだらぼっち』の噂は聞いているわよね」
「ああ、よく聞くね。 おかげで店内が寂しくなっていけない」
紫は店内を僕が見える場所で歩き始めた。
「私はね、 この幻想郷を守らなければならない、この土地の母親なの」
「幻想郷の賢者らしい言葉だ」
「だから、 大事をとって危険分子は排除する。 わかるわね?」
「・・・・結局何が言いたいんだい?」
「貴方があの晩現れてから、 幻想郷が少しおかしな事になり始めたのよ、 だから私は貴方が何か知っているのじゃないかと思ってね?」
「悪いけど、 僕は唯の道具屋だよ」
「そうかしら?」
辺りが暗くなり始める、夕暮れがやってくる。
「そろそろ、時間ね」
彼女がそう告げる。
店内の置物がぐらぐら揺れだした。
まるで、大きな生き物がゆっくりと歩みを薦めるような、ゆったりとした地響き。
「今日は、近いわね。 貴方と私が会ったこの日に、この瞬間に現れた。 貴方はこれを偶然ととらえる? それとも必然と考えるかしら?」
僕は店を飛び出して地響きを感じる方向を見上げた。
影でしか見えないが。 山の様に大きい人の影『でいだらぼっち』を確かに見た。
「あ・・・あれは・・!」
「行ってみましょうか、 ここからならすぐに見に行けるわ」
紫の狭間が僕の足下を覆った。
崖から落ちるように、僕は真っ逆さまにスキマに落ちてく。
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今日は、そとはさわがしい
『こーりん』が今日は外にはでないほうがいいと言っていたから、そとで遊ぶのはだめだ。
おとうさんみたいな人だ、 楽しいことをたくさん教えてくれる。
森で怖い目にあっていたのをたすけてくれたのもこーりんだ。
こーりんが教えてくれた方法で空をとべるようになった。
すごく楽しい。
こうりんが外にいくと決まってわたしはこーりんの袋を探して、もらった絵本をよむ。
半分妖怪の男の子の絵本だ。
こーりんになんか似ているので、この男の子のことは好きだった。
そうしていると、そとから大きな音が聞こえた。
すぐにきになって外にいくと、おおきなものがうごいていた。
ようかいだ
もしかしたらお父さんやお母さんをころした妖怪かもしれない。
少し気になったので、 飛んで見に行くことにした。
すぐに戻ってくればこーりんには怒られない、
ようはばれなければいいのだ。
わたしはこーりんの袋を探して紅い靴をはいた。
これで良し
わたしは紅く染まりかけた雲にむかって飛び出した
ひょっとしてスペカ考案の元になったのが香霖とか?