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「さとりさま~、なにしてるんですか?」
「あぁ、お空。これはね、書道をしているのよ」
「しょどう?」
「筆で字を書くのです。こうやって墨を付けて、絵を描くみたいに」
さとりは座卓の前で正座をしながら、毛先が黒く染まった筆を持ちながら白い紙に向き合っていた。
と、深呼吸をして目をつむったさとりが、ゆっくりとまぶたをあげた。そして意を決して紙の上に腕を滑らすと、描いた奇跡の上に黒い川が浮かび上がる。和紙特有のざらつきに、筆の中腹が折れ、少し遅れて毛筆の先端が走る。
その動作を口を半開きにしながら空は見ていた。目の前の半紙に神経を尖らしているさとりは、呼吸すらも止めているので、部屋の静けさに墨を引く掠れた音だけが響く。
やがて、最後の文字の止めに筆を置いたさとりは、墨が滲んだのを確認して、紙から筆を離し硯に置いて、深く息を吐いた。
「うん、上出来」
人に見られていたからなのか、それとも思いのほか上手に書けたのか、さとりはどことなく満足した顔つきで頬を綻ばせた。
そして、墨が零れないのを確認して、正座から軽く足を崩した。緊張した体を解したその楽な姿勢には、一仕事終えた充足感が垣間見えた。
一呼吸入れた後さとりは、書き終えた半紙を胸の前に掲げて、空に見せる。
書かれた字をまじまじと見つめていた空だったが、やがて、さとりの目を見た。
「なんてかいてあるのかわかんない」
「なんてかいてあるのかわかんない」
「うにゅ?」
重なった声に、困惑した顔を見せた空。
「う~、こころをよんだんですね?」
「今のは読まなくても分かる気がするけれど……」
「そうなんですかぁ」
顔がおかしかったのかな、と空は自分の頬に手を当てた。
しかし、すぐそれに飽きると、さとりの側に腰を下ろした。空の目線の先には、すずりと筆がある。
「貴女もやってみる、お空?」
「うん、さとりさま」
さとりは、濃い紅色の下敷きを空の方のスペースに広げ、新しい紙をしいた。そして持っていた筆をくるんと筆先を自分の方に向け、空の広げた掌にのせた。空は開いた手をそのまま握り、筆の柄の部分を鷲掴みにして半紙に下ろした。
そしてそのまま固まってしまった。
「さとりさま、なにをかけばいいの?」
「そうね、じゃあ、自分の名前を書いてみたら?」
べったりと滲んでしまった紙を苦笑しながら代えながら提案していると、後ろから声がかかった。
「それで、なんで書道なんてしてるんですか?」
「あら聞いてたの? お燐」
「えぇ、少しばかり」
とととと、と跳ねるように歩いた燐は、さとりの向かい側に行儀よく座った
「淑女のたしなみ、というよりかは覚りの力の修行かしらね」
「書道と覚りの力に何か関係があるのですか?」
少し興奮した様子で筆をひいてる、もとい押しつけている空を見ながらさとりは肯定した。
「えぇ、書道は心を表すものだからね」
つられて、燐も空のお習字風景を見る。
「私が心で感じた字、つまり表象風景とも言えるそれを、現実に形にすることは、とても大切なことよ。イメージだけでは、本質は掴めない。しっかりと現存するものにして、そして誰にでも見えるようにすることで、やっと見えてくるものもあるの」
そう言って、さとりは胸に手を置いた。燐には、誰にでも見える、という言葉に、アクセントがかかっているように聞こえていた。
「心の声を字として視覚化するとすれば、例えばお空の声は、ひらがなで丸く太い字が頭に浮かぶの」
「うにゅ? さとりさま、できたよぉ」
空はさとりが言っていることはわからなかったが、自分の名前が彼女の口から発せられたので、顔をあげた。そして、今し方書き終えたばかりの自分の名が書かれた半紙を掲げた。練習中に墨と悪戦苦闘したようで、紙をつまんだ指は真っ黒で、その手のひらで触った箇所はべたべたに汚れていた。一所懸命に書いた空の書は、太く大きな丸い時で「うつほ」と書いてあった。
「あら、心の字がそのまま現れたかんじね」
「漢字じゃないですけどねぇ」
「こぉら、お燐? そういうことはいうものではありません」
「だめ、なの?」
二人のやりとりをみて空は不安そうにさとりの顔色を伺った。さとりは、柔らなかな笑みを浮かべて、空の頭を撫でた。
「いいえ、あなたらしい、いい字だわ。心の声が聞こえるように」
「ほんとうですか? わぁい!」
「心に浮かんだ字を表すのが書道ですからね。まぁ、でも自分の名前を漢字で書けることはいいことですから、ちょっとお空いらっしゃい。一緒に書いてあげましょうね」
「はぁい」
さとりは自分の足をぽんと叩いて空を招く。空は飛びかかるようにして、さとりに抱きかかえられながらふとももの上におさまった。その様子を流し見た燐の耳がぴんと立った。
「お燐も、やりたいですか?」
誘いかけるような含み笑いを投げかけながらさとりは訊いた。
「あたいは別に・・・・・・それに、ただでさえ、覚られるのに、また見透かされるようでいやですから」
そう言って、燐はそっぽを向いた。
さとりは、ふぅん、と意味ありげにつぶやきながら、空の手に自分の手を重ねて、空という字の練習を始めた。
「あ、そうそう、お燐・・・・・・プリン」
「え、何のことですか?!」(美味しかったです☆)
「実に美味しそうな字ですね。お燐は今日のねこまんま抜き!」
「そんに"ゃぁ」
盗み食いを看破されたお燐はしゅんと、うなだれてしまった。さとりは、冗談ですよ、といたずらっぽい笑みをこぼした。
「書道は、私が脳内で視覚化している文字の表記を、現実上に書き記すものと言っても言い過ぎではないでしょう。ですから書道というものは、その人の心の在り方が如実に顕われるものです」
「ふぅん、じゃお姉ちゃんがさっき書いてたの、線がのろくて真っすぐじゃないのは、お姉ちゃんが歪んでるからかな?」
「あら、こいし。あれはね、隷書と言って、穏やかで伸びやかに、心を静めて書く書なのですよ! 正にこの、さとりそのもの!」
さとりが、一文が話し終わる頃には、こいしはまともに彼女の話を聞いておらず、別のことを考えていた。
(静かでおだやかなんて、楽しくないなぁ・・・・・・そうだ、みんなでくすぐりあいっこすればきっと楽しいよ! このホヨホヨの筆で…うふふふふ)
途中でそんなことを思いついたこいしで無邪気な笑みを漏らした。しかし、語っている最中のさとりには、そんなこいしの企みなど気づくはずもない。こいしが、何かよからぬことを考えているのに気づいたのは、空と燐だけだった。
「ですから、別にお姉ちゃんの性格が歪んでるわけではないのですよ。そうね、あなたもふらふら遊んでいないで、たまには心を落ち着けて、筆遊びでも・・・・・・」
「は! そうだったのね、お姉ちゃん可哀そうに! 地底に追いやられて、人から鬼だの悪魔だの幼女、小五ロリ最高! とか言われて、性格が歪んでしまったのね!」
さとりの説教に近い書体の解説がまもなく終わろうとする直前で、こいしはさとりの言を遮って叫んだ。さとりは、妹が突然、狂言のような大げさな言い回しでまくしたてるのにあっけをとられて、声にならないつぶやきを漏らした。こいしはそれにかまわずさらに続ける。
「そう……そんな心を闇に閉ざしたお姉ちゃんにせめて、私ができることと言えば、この筆で無理やりにでもお姉ちゃんを笑わせてあげることだけ!」
「でもさっきさとりさま、わらってたよ?」
空がきょとんとする。
「・・・・・・、さぁ、お姉ちゃん覚悟なさい」
「ちょっと、何しれっと何もなかったように進めようとしているのよ?!」
さとりが逃げようとして立ち上がろうにも、膝の上に空が乗っているので、とっさに逃げることができない。
「さぁて、お姉ちゃんの敏感ポイントはどこかな? ここかなぁ?」
こいしがおろしていない筆先をこなねらせながら、さとりの体をじっくりと視線で舐め回した。ゆっくりと上体を左右に揺らしながらこいしはさとりに近づいていく。
さとりは、乱暴にならないようにお空を膝からどけようとする。
「さとり様は、腋を責められるのに弱いです!」
が、その前に、燐がさとりの体に巻き付き、彼女の行動を縛った。
「ふぅん、そうなんだぁ」
「いや、やめて、こいし、私の話を聞いて」
こいしの口が半月に裂けた。にたにたした笑い張り付けた目の焦点は、さとりの腋に注目している。
「じゃあ、お燐は尻尾でお姉ちゃんにいたずらしなさい、両側から責めるわよ」
半ば磔にされたようなさとりは為す術なく、上着の下からのこいしの侵入を許した。一方の燐も、こいしの手で作られた服と肌との隙間に、その長いしっぽをくねらせながら挿入した。
「ぁ・・・・・・! だめ、やめ・・・・・・ぁん、そこは、だめなの」
姉の蹂躙の仕方を心得ているこいしは、腋の下に触れそうで触れない位置で、筆を弄ぶ。そのうち先っぽが、さとりの柔肌を撫でると、そのたびに、さとりは声をあげた。
さとりにいたずらをするのに夢中な二人において行かれた空は、退屈たまりかねてこいしに訊いた。
「うにゅ、あたしはなにをすればいいの?」
「羽で好きなとこをくすぐりなさい」
「うん、わかった。じゃあさとりさま、しつれいします」
すると、今まで頑として動かなかった膝の上からいとも簡単におりた空は、さとりの前の机をどかして、スカートの中に顔をつっこんだ。
「ちょっと、やめ、お空! そんな所に頭つっこんで! めくらないで! そこは、まだダメなのぉ!」
「さぁ、良い子の諸君は、ここで回れ右だよ。大きなお友達は、一緒にお姉ちゃんと楽しもう」
「と、思ったけど、ここは健全サイトだった。お楽しみは私たちだけで……。
残念だったねぇ」
作者様の字を知っているだけに残念ですが、そこは会場に行って見てこいという事か。
残念ながら私は行けませんけどは当日頑張って下さい。
あとここ健全サイトですけど、かなりグレーゾーンは広いからこの位は全然オッケーかと思われますw
変な落ち付けなくてもいいのでは。
面白くない人の書く下ネタは読者の不快感を5倍増しで煽るし