よく晴れた昼下がり。
一人の少女が穏やかな渓流わきの岩に腰掛けて、釣り糸を垂らしていた。
いつからそうしているのだろうか、魚が釣れている様子もなく、まったく動きに変化がない。
傍からみていると、そののんびりとした風景に溶け込んで、まるで自然と一体化しているかのようであった。
踵まで届こうかと思われるほどの真っ白な長い髪に、同じく真っ白の肌、そして炎のごとく紅く煌く両眼。
サスペンダーにもんぺという奇妙ないでたちの彼女――藤原妹紅――にとっては別段焦る必要もなく、ゆっくりと待つだけであった。
とはいえ、
「釣れないなあ」
まったく反応がないと、さすがに退屈にもなるというものである。
「アイツの家に土産にでも持って行くつもりだったんだけどね」
気づけば勝手に独り言さえ飛び出していた。
ふぅ。と一つため息をついた妹紅は、しかし、再び辛抱することに決めたようであった。
そもそもこのように何も考えずに時を過ごしていくことは、別に苦痛ではない。
ある因果から不老不死となり、永遠の時を運命付けられた彼女にとっては、終わりを迎えられないというその事実こそが最大の苦痛であるからである。
昔は死んでも死んでも復活するその体を忌み嫌い、不老不死の薬を飲んだことを文字通り死ぬほど後悔したものであったが、今では今更くよくよしても仕方ない、と前向きに考えるようにもなった。
生きてりゃ楽しいこともあるでしょ。と、いつしか座右の銘となっていた言葉を出そうとした瞬間、自身の眉間に皺が寄っていくのを感じた。
「これはこれは、これまたとんでもない大物がかかったみたいね」
妹紅が振り向いたその先には、日傘をさした緑髪の少女が静かに佇んでいた。
お互い声を発することなく、対峙する両者に時間が流れていく。
次第に緊迫していく空気のなか、均衡が破られた。
「こんにちは。お久しぶりね。藤原妹紅」
と、日傘の少女が挨拶をした。
「ああ、久しぶりだ。風見幽香。まさかあんたも幻想郷――ここ――にきているとは夢にも思わなかったよ」
と、少しの逡巡の後、妹紅も返答をした。
「それは私も同じよ。まさかあなたとこうして出会えるなんてね」
「一体なんの用だい? 昔の雪辱を晴らしに来た、なんて言ってほしくないんだけど」
「ふふ、どこかで聞いたような言葉ね。そんなんじゃないわ。ただ、昔に全力で戦った相手に会いたかっただけよ」
ニコニコと笑みを浮かべる日傘の少女と、それを訝しげに見る不老不死の少女。
日傘の少女――風見幽香――は、はるか昔に妹紅によって退治された妖怪であった。
遡ること1000年ほど。妹紅はまだ幻想郷にたどり着いておらず、妖怪があたりを跋扈していた時代のこと。
妖怪退治を生業としていた妹紅は、とある村にいた。
生業といっても自らを売り込むようなことを妹紅はあまり好まない。各地を転々とし、そこで依頼があれば受けるといった感じであった。
このときも村の近くで下級妖怪の退治をしているところを、偶然にもその村の村長に見られていてのことであった。
「あなたは妖怪の退治屋かな?」
退治が終わったところを見計らって、初老の村長は妹紅に話しかけてきた。
「退治屋などと大げさなものではないが、それに近いことをしている」
ほぅ、女人か。と村長はその凛とした声に驚きを覚えた。
「依頼があれば受けてくれるのだろうか」
「話の内容、条件にもよる」
「もちろんそれなりの謝礼はする。そうだな、ここではなんだから、村に来てくれんかね」
そうして妹紅はこの村に連れてこられたのであった。
村に入ったとたんに住人の視線が集まる。
聞こえてくるのは訝りや疑いの声。
「こんどはあいつか。見ろよ、あの真っ白な髪」
「相変わらず退治屋ちゅうもんは奇異な格好しとるな」
「まあ、どうせだめだろう」
中には妹紅が女性であると分かった者もいたのか、野卑めいた言葉も聞こえてくる。
「見ろよ、あれ女だぜ。よくみりゃ綺麗な顔立ちしてるぜ」
「ほほぅ、外見じゃ老婆だが、へへ、いい女じゃねーか」
「いやいや、まことに申し訳ない。粗忽なものばっかりなもので」
「別に、慣れている」
謝罪する村長の言葉にぶっきらぼうに答えながら、妹紅は村長の家へと通された。
「さて本題なのだが、最近この村の近くに妖怪が住み着いてしまったという噂があった」
「噂でもやはり住民は不安がる。そこで真偽を確かめるため、これまで幾人かの退治屋と称する者どもを向かわせた」
「屈強なもの、全身に札を貼り付けたもの、怪しげな武具をもったもの、さまざまおったが成功したものは誰一人おらん」
「みな這う這うの態で逃げ帰ってきて、口をそろえて言うには、あれには関わってはならぬ、退治など以ての外。とのことだ」
ここまで黙って話を聞いてきた妹紅が口を開いた。
「この村の被害は?」
「幸いにして今のところはない」
「なら簡単な話だ。その退治屋達の言うとおり、これ以上関わらないことが最善だ」
「ぬぅ」
「そこまでしておいて、村に被害がなかったことこそ逆に妖怪に感謝すべきだ。並みの妖怪ならばとっくに村を滅ぼしに来ている」
「つまり、どいういうことですかな」
「分別を持ち合わせていることからも、かなり強大な妖怪だってことだ。大人しくしているのであれば、そっとしておいたほうがよい」
「それは、あなたでも退治は無理ということですかな?」
「無理とは言わないが、やる必要性がない」
ふむ。と村長は値踏みするように妹紅を見据え、しばらく考え込んだ。やがて、
「どうやらあなたはこれまでの退治屋とは違うようだ。本来であれば一笑に付すところではあるが、言葉に長年の経験と実績に裏打ちされたものが感じられる。不思議なものだ、外見は年端も行かぬ少女だというのに」
「……」
「わかった。その言葉を信じよう。では、退治してくれとは言わぬ。せめてもう少し離れてもらうように説得してきてはくれまいか」
「それも難しいな」
「なぜ故」
「妖怪が人間の言うことに素直に従うとは思えない。加えて、それほどの妖怪になると自尊心もかなり高い」
「……そこをなんとか」
「…………」
実のところ、妹紅もそれほどまでの妖怪に興味がないといえば嘘となる。
一体如何ほどの妖怪なのだろうか。近くにいると言うが、そこまでの妖気を感じ取ることができていない。
結局、妹紅は村長の要求をのむことにした。ただし、成功の保障はできないという条件をつけて。
「ここか……」
翌日の昼、妹紅は妖怪が住むと教えられた場所に来ていた。
一面に咲く花々。まるで幻想の世界に入り込んだような錯覚を覚えた。
「きれいだな……」
「あら、うれしいわね」
「!!」
思わず見とれてしまった妹紅は、わずか一瞬ではあるが、すぐそばに佇む日傘を差した少女の認知に遅れた。
慌てて距離をとる。
「あんたがここに住む妖怪か」
「妖怪? 私が? ただここで花の世話をしているだけだけど」
眼を丸くして驚いた表情を作る日傘の少女。
しかし、妹紅は騙されることはなかった。鋭い双眸を向ける。
「ふん。あんた本体は見事なまでに妖気を隠してはいる。だが、どうやらその手塩にかけている花からは、わずかながら妖気の跡が感じられるんでね」
「……なるほど、いままでの退治屋とやらとは違うというわけね。となるとこれはどうかしら?」
突如凄まじい妖気とともに目の前に現れた巨大な花の妖怪。その丈は妹紅の倍以上はある。
驚きはしたものの、妹紅はすぐに冷静さを取り戻した。
「幻影か」
「……さすがね」
パチンと日傘の少女が指を鳴らすと、たちまち巨大な花の妖怪の姿が消えた。
(それにしてもなんという妖気だ……)
妹紅は表向きには冷静を装っていたものの、内心ではその妖気の大きさに驚愕せざるを得なかった。
日傘の少女もまた同様に驚きの表情を浮かべていた。
「ここまで即座に見破られたのは初めてよ。人間のようだけどそうでもないような。名前を教えてくれないかしら。私は風見幽香」
「藤原妹紅。一応人間だ」
「ふーん。それで藤原妹紅とやら、ここに何の用かしら。退治しに来たなんて言葉は期待したくないのだけれど」
「そちらの出方次第だ、風見幽香とやら。率直に言うと、ここから離れてほしい」
「あら、なぜかしら。この場所は気に入っているし、別に誰にも迷惑をかけていない認識なのだけど」
「……あんたがここにいると不安がる者たちがいる」
「勝手な言い分ね」
まったくもって正論である。
だが、妹紅は自分の言葉に納得はいっていないが、押し通すことにした。
「勝手なのはわかっている。そこを敢えてだ」
「ふふ、ならば私もはっきり言わせてもらうわ。人間ごときに従う義理はないわね」
「……」
「……」
両者にらみ合い、緊迫した空気が辺りを包んでいく。
しばしの時が流れ、潮時か、これ以上の刺激は禁物だな、と妹紅が諦めかけていたとき、しかし、折れたのは幽香であった。
「いいわ。あなたに敬意を表してここから去ってあげる。ここまで妖怪を怖れない人間も初めてだわ」
これには妹紅も驚きを隠せなかった。
まさかこれほどの大妖怪が人間の要求をのむなどとは。
「本当か!?」
「ええ。ただし条件がある」
「条件……?」
まさか生贄を捧げろとでも言い出すのだろうか、と妹紅は身構える。
「これだけ力を持った人間を目の前にして、黙って帰るようじゃ妖怪の名が廃るわ」
「……なるほど、つまりは戦えと」
「察しが良くて助かるわ。その通りよ。それも全力でね。言っとくけど、この勝ち負けとさっきの約束は関係ないから安心していいわ」
と、不適な笑みを浮かべる幽香。そこには妖怪としての本性が滲み出ていた。
(ここまで持ってこれたのならば僥倖と言うべきか。それにこれほど分別のある妖怪、約束を反故にすることもないだろう)
もはや妹紅にも選択肢は一つしかなかった。
「わかった。言うとおりにする」
「うれしいわね。その前に場所を変えてもいいかしら。ここで始めたらこの子たちが可愛そうだから」
「ああ、同意だ。この花たちに罪はない」
二人は周りに何もない開けた場所へと移動していった。
辺りに轟音が響き渡る。凄まじい速度で交錯する2つの影。
単純な力勝負では、はるかに幽香に分がある。
妹紅もそれを自覚しているからこそ、無理には張り合わず、妖術、符術などを駆使して対抗していった。
「やるじゃないの。あなた本当に人間?」
「ああ。ただちょいと変わってるがね」
お互い軽口を叩きながらも、力と技の応酬は続く。
(ちょいと変わっているなんてレベルじゃないわね……どうしてこんな少女がここまで強くなれたのかしら)
幽香は不思議に思わずにはいられない。
一挙手一投足をみても妹紅は相当な経験を積んだ手練れだ。
頑丈な体と高い身体能力・治癒能力を持つ妖怪であればまだしも、か弱い人間がここまで死なずに来れるものなのであろうか。
「面白い。面白いわあなた」
(面白がられても困るんだが……)
一方の妹紅も幽香の力の大きさに舌を巻いていた。
なんとか攻撃をかわしているものの、一撃でもまともに食らえば、たちまち戦闘不能に陥ることだろう。
その後もしばらく一進一退の攻防が続き、このまま膠着状態が続くかと思われたとき、幽香が言い放った。
「そろそろ終わりにしましょうか」
「!!」
途端、一気に幽香の妖気が増幅する。
手に力を収束させ、次の瞬間、目も眩むほどの凄まじい閃光が迸った。
「ぐぅ!」
妹紅は不意のことにわずかに対応が遅れ、完全にかわしきる事ができなかった。
見れば片腕がこそぎ取られていた。苦痛に顔をゆがめる。
「あら、すごいわね。完全に勝負がついたと思ったのに」
「まだまだだ」
虚勢とも取れる妹紅の言葉ではあるが、闘志は幾分も薄れていない。
それを感じ取った幽香も油断することなく攻撃に転じた。
だがやはり片腕を失った代償は大きく、妹紅は押され始めていく。
そしてついに幽香の拳がまともに妹紅を捕らえた。
「ぐぁ!」
ここで一気に勝負を決しようと、立て続けに妹紅に拳を叩き込む。骨が粉々に砕ける音が響き渡る。
ついに妹紅は地面に倒れ伏した。それを見下す幽香。
「すごいわ。まさか人間がここまでやるとは思わなかったわ」
「まだ……だ……」
「!?」
幽香を見上げる妹紅の眼。
これだけのダメージを負っていても、少しも衰えることのないその眼光に、幽香は少なからず驚愕する。
なんという執念深さか。
「致命傷のはずなのに、まだ意識があるのね。それにその眼、まだ何か切り札を隠しているかのよう……危険ね。非常に惜しいけど、ここで完全に消えてもらうことにするわ」
手に力を集め、再度幽香は閃光を放った。
光が納まったそこには、もはや妹紅の影も形もなかった。
「悪く思わないで頂戴ね」
誰にともなく幽香が呟いたその瞬間、
「まだ終わっちゃいないよ」
どこからともなく聞こえてくる声、いつの間にか4つの巨大な火球が幽香を取り囲んでいた。
激しい爆音とともに火球が弾け、幽香は爆炎に巻き込まれていった。
「い、一体何が?」
派手に吹き飛ばされ、朦朧とする意識のなかで幽香が見たものは、今しがた消滅させたばかりの真っ白な少女の姿。もぎ取られたはずの腕さえすべて元通りに修復されていた。
ただ容姿が先ほどとは異なっている。その背中には炎を纏った巨大な翼が出現していた。
「こ、これは……」
「言っただろ、私はちょいと変わってるってさ」
不適に笑う妹紅をにらみながら、幽香もようやく立ち上がった。
「ここまでくればもう"変わってる"とかそういう問題じゃないわ。どこが人間なのよ」
「いや、間違いなく私は人間だ。ただし、死んでもすぐに復活するというおまけつき。いわゆる不老不死と言うやつだ」
「復活……不老不死……」
呟いた瞬間に幽香のすべての疑問が氷解した。
こんな華奢な人間の少女がここまで生き延びてこられたこと、人間と思えぬ多彩な術と身のこなし、衰えることのない眼の煌き、消滅させたはずなのに何事もなかったかのように目の前に立っていること……
妹紅の言うとおり、不老不死であればこれらすべての辻褄があう。
にわかには信じがたいが、これが現実か。
「ま、ここまでなるまでに数え切れないほど殺されてきたがね。さっきみたいに」
その通りであろうと幽香は思った。
いまの妹紅のこの姿も、長年妖怪を殺し、また殺されてきた結果なのであろう。なんという神々しい姿か、まるで不死鳥そのものだと感じた。
「降参するわ。不老不死とあっては手の出しようがないわ。それに久しぶりに思い切り体を動かせて十分満足したし」
ここに、風見幽香は敗北宣言を行った。
「あんたはあまり変わりなさそうだねぇ。風見幽香」
釣竿を放りだして、体ごと幽香へと振り向く。
「幽香でいいわよ。そういうあなたは随分と変わったようだけど」
ふふ。と笑い妹紅に近づいていく。
「そんなことはないさ。私は昔から変わっちゃいないよ」
「あら、そうかしら? 少なくとも昔のあなたはそんなしゃべり方じゃなかったけど」
「うぐっ」
妹紅の座る岩まで来て、ぺたんと隣に座る。
「なんというか雰囲気も随分と穏やかになってるし」
「ちょっとぉ、近寄らないでよ」
「それに、こうやって見ると随分と可愛らしいのね。不死鳥さん」
「ちょっとちょっと! 何言ってんの!!」
「あらあら照れちゃって。ますます可愛いわね」
むきー! と真っ赤になって怒る妹紅をどうどうと諌める。
「ハアハア……まったく、何がしたいのよあんたは」
「昔の続き」
「なにぃ!?」
「冗談よ、冗談。7割ほどはね」
「おねがいだからやめて」
疲れきった表情で言う妹紅を見て、幽香はくすくすと笑いが納まらない。
それを妹紅はにらみ付ける。
「本当に人間って変わるものなのね、あなたがこんなにも表情豊かだとは思いもよらなかったわ。昔と今のあなた、どちらが本来のあなたなのかしら」
「……」
「おそらくどちらもなのね。となると、やはりあなたは色々と何かしら誰かしらの影響を受けてきたと見るべきね」
「……まったくよくしゃべる」
妹紅はそう毒づくも、幻想郷に来てからこれまでのことを思い返していた。
親の仇敵である月の姫との邂逅と殺し合い、博麗の巫女や魔法使いとの遭遇、親友であった半獣の少女との出会いと別れ。
どれも忘れがたい思い出であった。
「ついうれしくなってしまってね。それと、覚えている範囲でいいから、少し昔話をさせて頂戴」
「昔話?」
「ええ。あれから私はあなたに白旗をあげたけど、その後あなたはどうなったのかしら」
「ああ、あんたを追いやってくれと依頼された村に数日留まってたよ。始めのうちは英雄扱いだけど、徐々に煙たがられてってね。すぐに出て行ったよ」
「なぜ煙たがられるのかしら? 英雄なんでしょ?」
「だって、妖怪に匹敵する力を持ったものが村の中にいるんだ。村人としてはいつ襲われるか気が気じゃなんだね。そんで謝礼はするからあなたも離れていってくだされ、というわけさ」
「重ね重ね身勝手な連中ね」
「どこもそんなもんだよ。もっとも、私はあんたに感心してるけどね。結局あの村を襲わずにいてくれたんだから」
「あんな連中相手にする価値もないわ。退治屋なんぞと言って威勢良く来ていた連中も、幻影見せたらどいつもこいつも腰抜かして逃げていくんだから」
「ああ……あれね……そりゃあんなもん見せられたら誰でもビビるわよ」
「そんなわけで、私が虐めるのはあなたのような強者で十分よ」
「たのむからやめて」
再度疲れた表情を妹紅が見せたとき、突拍子もない声が上空より舞い降りてきた。
「あやややや、これは珍しい! あの藤原妹紅さんとあの風見幽香さんのツーショットが見れるなんて」
「うわわわわ、めんどうなのが来たな」
妹紅が見上げると、予想通りそこには1体の烏天狗――射命丸文――の姿があった。
「私に時間がないのが非常に悔やまれますが、ここはぜひともインタビューさせてもらいましょう。お二人はどうやってここで出会ったのですか? なんで仲良くお話しているのですか? どういうわけですか? 手短にお願いします」
「ああ、うざったい……」
明らかにげんなりとした表情で、追い返す気満々の妹紅とは対照的に、幽香はまあいいじゃないの、といった態である。
「単に妹紅がここで釣りをしていたのを偶然私が見つけただけよ。それに彼女とは大昔からの知り合いでね。懐かしさのあまり、つい話し込んでしまったの」
「なるほど、なるほど。そりゃ昔からの知り合いとなれば話も弾みますよね。私もそのお話に非常に興味があります」
「それはあなたの職業柄から来るものかしら?」
「それもありますが、個人的にもですね」
そう言って文が妹紅に向かってにっこりと笑顔を向けた。
「妹紅さんはどうなんです? なつかしの再開は感動しましたか?」
「いや、別に……感動とかそんなのはないんだけど」
「あや~残念、根掘り葉掘り聞きたいところですが時間がありません。今日はここまでです。今度是非聞かせてもらいますよ」
自分から質問しておいて、バタバタと飛び立つ。瞬く間に疾風となって見えなくなってしまった。
「なんだいありゃ」
「相変わらず慌しい子ね」
「今日はそろそろお暇するわ。久しぶりに会えてうれしかったわ。また今度ゆっくりお話しましょう」
「……考えとくよ」
「じゃあね」
妹紅は優雅に去っていく幽香の背を見送っていた。気づけばだいぶ日も落ちてきていた。
今日はやたらと懐古に暮れてしまったものだ。そういえば私は何をしにきたんだっけ、と我に返る妹紅。
ああ、そうだ、えーと、魚は……ダメだ……
ま、いいや、土産は今度ということにして、今日はご飯をタカらせてもらいに行くとしますかね
「人間は変わるもの、か……そうかもしれないな」
本日数回目となる独り言を残してよいしょと立ち上がり、妹紅は永遠亭へと歩みだした。
キャラ名の誤字は致命的です -80点
昔話が中心なのに少しあっさりしてしまっている。
あと射命丸が写命丸になっとりますえ~
>>なつかしの再開
再会
でも次が楽しみな作品でした
話をもうちょっと煮詰めればさらによくなると思います。
次に期待ということでこの点数