CAUTION!
この作品は東方プロジェクトの二次創作小説です!
オリジナル要素、 キャラの表現や設定、時系列の乱れ等が多分に含まれますので
苦手な方はもどるをクリック!
なお、この作品は 『外の世界から『承』』の続きの作品となっています。
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「これは、・・・・一体・・・?」
紫にさらわれた先で僕が手に取った一部の新聞。通称『文文。新聞』。
その内容は何でも良かった、たまには里で買い物でもと思って買った気まぐれの読み物だったからだ。
しかし、日付を記してある幻想郷の暦。
その日付欄は僕が知る幻想郷の時間より十数年前の数字が踊っていた。
近くを通りかかった、農夫に思わず声をかけてしまう。
「あ、あの・・・」
「ん? なんだよ?」
「すいません、急に。 この新聞の事なんですけど・・・」
僕に呼び止められた男は僕の風体を物珍しい顔で眺めまわす。
確かに、普通の里人の格好ではないが・・・・
「ああ、この新聞ね。 山の天狗が書いてるやつだよな」
「ええ、そうなんです」
「これが、どうかしたのか?」
「この日付なんですけど、なにかおかしいと思いません?」
「・・・・」
しばらく、「うーん」とうなっていたが、男はまるでなぞなぞを解いたかのように、パッっと明るい顔をした。
やっと気付いてもらえた!
それはそうだ、日付が年単位で間違ってる新聞を買ってしまうなんて、かなり珍しいだろう。
むしろ、何気なく買った新聞がこんな物だったなんて逆に笑える。
「あー、兄ちゃん。 やられたなぁ! 一週間前の新聞なんて買わされたのかよ!? あそこの売店やたらいい加減だからなぁ!」
破顔した男は僕の肩を叩いて、「まぁ、新しいのにかえてもらいな」と言って。作業に戻ってしまった。
「・・・・ええ、そうします・・・」
僕は手にしていた新聞に再び目を落とした。
僕は昨日までの紫の言葉を頭の中で反復、何度も反復した。
もしやと思っていたことが、現実として僕の手の新聞に書かれている。
『実は私、必然や運命ってあると思ってますの』
『そうね、折を見て迎えに来ます』
『・・・・あなたはここで私たちの『必然』を満たしてもらいます』
ある思考が決定した。
『私の境界に干渉して、幻想境への道を開いた貴方に問うわ、 如何なる用事で此処にきた?』
もしや・・・・ここって・・・
「過去の幻想郷なのか?」
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外の世界から『転』
とりあえず、僕たち(森で助けた少女も一緒なので)は森を抜けて香霖堂の近くまでやってきた。
のだが。
「ぼろぼろだよー?」
「ああ・・・まぁ、ちょっと最近は留守にしてたんだよ・・・」
蔦がからみついてとても人が住んでいそうな雰囲気がない小屋が目の前にあっただけだ。
そういえば僕が香霖堂を開いた時も最初はこんな感じの物件だったなぁ・・・
少女には、それとなく嘘をついておいた。
この少女の疑わしい視線が非常に苦しい・・・。
お前本当はただの無職なんじゃないのか?
そう少女の瞳が僕を責めている気がする。
それはともかく、これで本当に確信した。
やっぱり僕は紫に昔の幻想郷につれてこられたのだ。
八雲 紫の能力、 『境界を操る程度の能力』
信じがたい事だが。
おそらく紫は『今の幻想郷』と『昔の幻想郷』の境界をその能力でもって曖昧にした。
言い換えるなら、現在と過去の境界を曖昧にした。
タイムスリップだ。
多分、紫はこの十数年前の世界で、
彼女の過去の経験として、
他の世界から来た僕を見たことが有ったのだ。
回りくどい事をして僕をスキマに放り込んだのも、このためだったなら納得がいく。
それなら、それで『現在』の紫が『過去』の紫に僕を紹介してくれれば良かったのでは? とも思う。
そうすれば、僕も『過去』の紫にナマス切りにされかけずに済んだ。
しかし、紫はそうするわけにはいかなかった
何故か。
それは、紫が経験として、侵入者としての自分自身に会うという経験をしたことがなかったからだ。
なぜ、紫は僕に草薙の剣をもたせたのか、 初めて僕と会ったときに僕がそれを持っていたからだ。
なんで、紫が僕のことを知らなかったのか、 過去の紫にとって初対面の人間だからだ。
昨晩の過去の紫の言葉・・・・
『貴方、一体何者なの?!』
『・・・・あなた、死んでもらおうかしら?』
僕が襲われた時になぜ紫は僕を殺そうとしたのか。
紫がスペルカード宣言をしなかった訳がここでもわかる。
スペルカード戦は 博麗 霊夢 の発案した決闘方法なのだ。
どうも今の博霊の巫女は霊夢ではないし、スペルカード戦は最近幻想郷に広まったもの。
十数年も昔に紫がスペルカードを知っているわけがない。
従って、いざ決闘となったら妖怪本来の闘争に巻き込まれることになったわけだ。
紫がやたら慌てていたのは、おそらくだが、現在の紫は過去の紫に能力を封じる手立てをしたからだろう。
『今の紫』と『昔の紫』の能力、その境界を曖昧にしたのではないだろうか?
だから紫は過去にやってきた僕達の前にすぐに現れることができなかった。
なぜなら、『境界を操る能力』は『現在の紫』が使っていたから。
なぜ紫がそんな自分を混乱させるような回りくどい、見方によれば危険な行動を取ったのか。
経験として紫が十数年前に同じ体験をしたからだ。
そして、ある時期になり。
自分がその再現をやって見せた。
香霖堂の薄闇の中で彼女はこう、僕に問いた。
『貴方は今までの人生に運命や必然、そういったものを感じたことがあるかしら』
香霖堂(跡地?)に伸びにのびた蔦を無造作にむしって、店内に入った。
恐ろしいほどの埃がたまっている。
長い間いると体に悪そうだ。
「けほっ」
「ああ、 ごめん。 ごちそうしたいって言ったけど、今すぐは無理そうだ」
「えー、うそつきー」
「里に戻らないかい? お金は有るし、それで何か食べようじゃないか。 それで勘弁してもらえないかな」
「うん!」
少女は足取り軽く僕の手を取って走り出した。
「お、おい!」
少女は飛ぶように下りジャリ道を下っていく。
『実は私、必然や運命ってあると思ってますの』
じゃあ、紫は なんで僕をここにつれてきたんだろう?
過去に出会った僕は一体どうなったんだろう?
僕のこれからの運命も紫は知ってたのかな?
そこまでは紫の行動からは想像できなかった。
僕は普段走らない、なまった体を少し恨みながら
これからの自分の運命。
これから自分が何をすべきなのか。
いろんな事を考えながら砂利道を走った。
汗を流して里に着く。
そんなこんなで、そろそろ夕飯時。
「おいしい!」
「それはよかった」
里の飯屋で助けた里の少女と夕飯を取り始めた頃、僕ははたと気付いたのだ。
僕がこれからすべき事はあっさりと解った。
「金がない・・・・」
そう、店屋で物を買えば当然対価が要る。
ごく当たり前に、ご飯を食べてもそれは必要だ。
「毎度ー!」
幸い飲食代は払うことができたものの、明日も同様に過ぎたら僕は間違いなく一文無しになる。
「♪」
僕の手を握ってご機嫌の少女。
すこし気が重いが、僕はこのご機嫌な女の子に質問しなければならない。
「ちょっと、いいかい?」
「え?」
「君は、・・・そうだな、これから頼りにできる人がいるかい、つまりおじさんやおばさん、親戚の人はいるかい?」
「・・・・」
とたんに少女の顔が暗くなる。
「そんなひと、いないよ」
「そうか・・・」
やはり、というか。 少女を引き取ってくれるような家はないようだ。
もしもいたならば、夜中に妖怪相手の敵討ちなんて周りの人たちが止めただろう。
厚かましいようだが、僕はこの天涯孤独の少女の暮らしを守ることにした。
今の僕も天涯孤独、というのもあって同情が湧いたというのもある。
しかしそれ以上に、一度本来は死ぬべきだった人間を助けてしまったのだ。
本当は僕は此処には居ないはずの人間なんだ。 なんらかの形で決着がつくまでは僕がその責任を取らなくてはいけない。
別段、僕一人だけなら働く必要もない、半分妖怪である身だから食事は嗜む程度で済むのだ。 寝床だっていい加減でもいい。
しかし、人間はそうはいかない、毎日衣食住を充実させないと、健やかに生きていけないのだ。
香霖堂で、食材を食い散らかしていた魔理沙の姿が目に浮かぶ。
あれは健やかとは、また違うが。
働かざる者喰うべからずと格言が有るように、ぼくはこれから働いて稼ぐ必要が有ると気付いた。
「ねぇねぇ!」
「ん? なんだい?」
「ほら! はやくいこっ!」
女の子は急かすように、 少し楽しいような、ワクワクしているような様子で僕の服を、手を引いた。
「え? 行くって、何処にだい?」
「おうち!」
「あー、なるほどなるほど」
思わず苦笑してしまった、 どうやらこの少女の中で僕が彼女の生家で寝泊まりするのは決定事項だったようだ。
まぁ、こちらとしても非常に助かるのだが、あえて言い出す必要がなくなったとはいえ、
これだけは言っておこうかな。
「ありがとう、泊めてくれるかい?」
「うん!」
その晩、布団を敷いて、何とか寝かしつけようと試みるがなかなか寝てくれない。
本人の言によると「お話してくれたら寝る!」とのことだ。
僕は父親でもなんでもないのだが・・・・。
魔理沙が小さいときもこんな事いわれたな。
「うーん・・・」
「ねぇねぇ、はやくしてよー」
「・・・ああ、そうだ」
僕は巾着袋から一冊の絵本を取り出した。
僕がこの昔の幻想郷に来る前に手にしていた、一冊の漫画だ。
半分妖怪の主人公が活躍する絵本の世界。
「わぁ・・・」
目を輝かせる。どうやらお気に召したらしい。
「これは、とても、とっても珍しい本だ。 僕の店でしか売ってない本なんだよ」
「とってもたかい?」
値段が破格に高いと言いたいのだろうか?
「うーん、まぁ そうといえなくもないな」
「おおー」
さらに目を輝かせる。
まったく・・・若い子はすぐにこれだ、すぐに意味のない『珍しい』という意味のない商品価値にあてられたり、本質的でない金銭感覚にとらわれる。
「ほしい!」
・・・おいおい
「・・・・僕に読んでほしかったんじゃないのか? この絵本を?」
「・・・えー あれ?」
自分の言葉に不思議そうな疑問符を山ほど浮かべている。
小さい子供の癖してもう既に金欲にまみれているとは・・・・将来が心配である。
「まぁ・・・そうだね、この先君が良い子だったなら、これをあげようか」
「ほんと!?」
「そうだとも、 ただし、タダであげる訳じゃない」
「え? なにそれ? くれないの?」
「つまり、 出世払いってやつさ、 僕はこう見えても商人でね」
「あきんどー?」
「つまりだ、・・・・君が大人になってからでいい、これの代金を払ってくれる約束をしてくれるならあげるっていう約束だ」
「する!」
即答か
本当にわかっているのだろうか?
まぁ、僕は長生きだから気長に待っていいし、 元の世界に戻ってもこの少女は十五か二十そこらの歳だろうし、回収は可能だろう。
「やくそくするから! ちょーだい!」
「そうだね、しかし、君はこれからこれを受け取るために良い子にならなくてはいけない」
僕は「わかるかい?」と諭すようにいってみる。
「? うん」
「つまり、君はこれから良い子になって布団で寝なければならない訳だよ」
「わかった ねる!」
少女は布団に飛び込んだ。
ニヤニヤしながら目をつぶって「いっしょにねんねしよー」と手招き。
おそらくは金欲からくるニヤニヤの笑顔に若干引きつつも僕は少女頭をなでて横になった。
しばらくすると規則正しい寝息がし始める。
「・・・寝たかな?」
少女が寝たのを確かに確認する、そして僕は改めて自分の持ち物を確認してみた。
マジックアイテムが数点、 検めてみると使い方によっては危険な物が多い。
それと僕の虎の子の『草薙の剣』
これがあればスペルカード戦でないこの幻想郷でも身が守れそうだ。
すぅすぅ、 静かな寝息がする。
『ひとりでやる わたしがもっとおおきくなって ひとりでやる!』
ふと、昨晩の森の少女との話を思い出した。
そういえば、敵討ちしたいっていってたっけな・・・。
彼女は身内を妖怪に殺されて一人になってしまった。
勿論、こんな女の子が一人でそんなことが出来るわけがない。
事実僕があの場に居なければ、確実に妖怪に喰われて、森のなかで残骸をさらしていただろう。
「・・・・」
すやすやと眠る少女の横顔。
さっきまで、ちょっとやかましい、僕の中で騒がしく楽しかった雰囲気も突然切ないものに変わった気がした。
もう、この女の子は、頼れる人がいないんだ・・・。
「マジックアイテム、使い方、教えてやるかな・・?」
天涯孤独。
だったら、少しぐらい自分の身を守れる術があって良いはずじゃないか。
他の子供とはすこしくらい、生き方が違っていてもいいじゃないか。
魔法にどのくらい才能が有るかは解らないが、教えてみよう、時間をかけて。
今の僕には、本来、僕がいないはずの世界で死ぬべきだった少女を助けること。
それが今の僕の運命なのかもしれない。
そんな風に思い始めた。
仮に、たったいま 僕のよく知る『現代』の八雲 紫が 僕を迎えにきても、僕は帰らない。
僕が、おもっていたより 香霖堂 に帰れる日は遠いかもしれない。
翌日、僕は以前からよく知る道具屋に足早く訪れた。
こっそり抜けて来たつもりだったが、いつの間にか少女が恨めしそうな目でにらんでいた。
少女は家に居させるつもりだったが、どうも僕がこれきりでいなくなるのではと不安になったらしく、ぐずりかけたので仕方なく連れてきた。
僕がやってきたのは大手道具店「霧雨店」
僕がかつて修行時代に世話になっていた店だ、 魔理沙の実家でもある。
僕が稼げる場所といったら此処しか考えられなかったのだ。
・・・・というか、大丈夫なのだろうか? ここに入ってしまって・・・?
『この時代』の僕がここで働き始めるのとはタッチの差で時間差が有るようだが・・・、それにしたって僕が此処で働いたときは霧雨の旦那と僕とは間違いなく初対面だったはずだ・・・。
これでもし僕が食費のために此処で働き始めたらどうなるんだ?
もしかして、現在と過去の出来事が食い違ってしまうかもしれない?
所謂 『タイム・パラドックス』という奴だ。
そうなったら、現在が破壊されて新しい幻想郷が作られる? いや 違う幻想郷がもう一つできる・・?
訳がわからなくなってきたぞ・・!
っていうか、もし『過去』の僕と鉢合わせしたらどうなる?!
僕はそんなおっかない経験をしたことがない。
紫が『過去』の紫と顔を合わせなかったのはそういう意味合いもあったかもしれないぞ・・・!
ガラッ!
「あ・・・」
「お、 いらっしゃい! 何かお求めかい?」
霧雨の旦那だった、 かなり若々しい。
というか、会ってしまった・・・。
しかし、これで腹が決まってしまった、だってこうして会ってしまったのだからもう仕方がない。
霧雨の旦那は一度来た客だろうが必ず顔を覚える人だった。
もうサイは投げられたのだ。
もう、こうなれば勢いだけでやるしかなかった。
「実は此処で働きたい者なんです! 是非雇ってほしいんです! お話だけもお願いします!」
もう、吃驚していたのでとりあえず働きたい意志だけで大声が出てしまった。
旦那はさらに吃驚しただろうが。
「おお・・・!? まぁ、そういうことなら上がってくれ」
「はい! 失礼します!」
ああ、なんか今の僕初々しいな・・・。
なんとなく新鮮な気分だった。
とりあえず、よく知った店内を通されて椅子に座らせられた。
旦那は「あー」と唸ってから漸く話を切り出した。
「ウチで働きたいって話だよな」
「はい! こう見えても道具屋に必要な事は一通りはできます、必ず役に立って見せます」
「あー、けどなぁ・・・ウチ今は人手募集してなくてな・・・」
不味い・・・! なんとしても売り込まなくては!
「以前は独立して店の経営をしてました! 修繕でも経理でも店に必要な事はできます お願いです、雇ってください!」
「うーん」
店の経営をしていたのはかなりの強みになると思ったが、 見通しが甘かったようだ。 どうも反応が悪い、しかし何とか押し切らなければ。
というか、僕が初めてこの店に来たときの、一年後ぐらいには
『ああ! 人手が足りなくてな 、早速働いてもらうぜ!』
っていってた気がするが、 店の経営状況は大手店になると変わりやすいものなのだろうか?
閑古鳥の香霖堂には解らない事情である。
かなり旦那は悩んで居るようだ。
何か他に、僕のセールスポイントはないのだろうか?
よく、貴方の娘に品物を強奪されます・・・、イヤ駄目に決まってる! 落ち着け!
と袖を引っ張る感覚が、振り向くとついてきた少女がひもじそうに僕を見ていた。
「ねーね、 おなかへったー」
「! あ、 駄目だよ。 今大切な話が・・・・」
「・・・お前さん、その子、お前さんの子供か・・?」
「え?」
違いますけど
何故そうなるんだ?
いきなり旦那の顔が重たい表情になった。
「子供なんだな・・・」
「え・・・? ええ・・」
なんと、同意してしまった。 何をやって居るんだ僕は・・・。
「ああー、だよなぁ・・・、やっぱり小さいガキがいると色々心配になるよなぁ・・・・」
「え、はい、そうですよ・・・ね・・・?」
「俺も最近カミさんが身ごもってるってわかってな・・、 まぁ色々とこれからのこととか心配だしなぁ・・・・、お前さんの必死な気持ち分からんでもないよ」
「はい・・・きょう・・しゅくです・・」
本当に恐縮だ。 ・・・・やばい嘘を付いてしまった。 どうすれば良いんだ。
「あ、僕は父親じゃなくて、その身内の子供が身寄りがなくなってしまって・・・それで引き取って・・・」
「マジかよ・・」
ますます旦那の表情が憐憫のような、そういったものでいっぱいになってきた。
「あ、はい・・・」
だましてるこっちが居たたまれない。
苦しいがこれで通すしかない・・!
旦那が勢いよく膝を叩いた。
「よし! わかった! 雇ってやる! お前さんの男気に感服した! この作業着着な! 今日から仕事だ!」
「あ・・・ありがとうございます!」
「けっこう忙しいが、 そこんところは我慢しな!」
と、なんとか、雇ってもらうことには成功した。
しかし一方で大問題も。
・・・・ああ、この時代の僕と会いませんように・・・・
「っと、・・・・そういやまだ、聞いてなかったな・・・」
「え?」
「名前だよ名前! っていうか自己紹介くらい最初にしておけよ」
「あ、 すいません・・・、 僕の名前は・・・りん・・・」
「え? なに?」
「・・・・僕の名前は香霖(こうりん)です 香るのこうに霖雨(りんう)のりんです」
「こーりんねぇ・・・」
とっさに出た言葉だった、霧雨一家が僕を呼ぶときのあだ名だ。
単純に僕が本名を出すと不味いことになるという直感だけであだ名を本名にしてしまったが、 これでよかったのだろうか・・?
「なんか、女の名前みたいだな・・・」
『元といえば、旦那がつけたあだ名なんだが・・・』
そんな風に思うのにそんなあだ名をつけたのか?
そう言いたいのをやっとでこらえた。
「よかったねー こーりん!」
「ああ、 君のおかげだよ」
店でとりあえず仕事をこなしてきて、 その帰りだった。
店に運ばれてくる物をちょいちょい直したり、荷物を移動させたりするだけだった。
以前はこれでも大変な事だったが、昔取った杵柄というか、やってたことをもう一度するだけ。
旦那はかなり驚いていたが、それは昔さんざん絞られたから出来ないわけがない。
今日の駄賃を、支度金のノリでもらってしまったが、大いに役に立った。
子供が凄いのだ。
まぁ、よく喰う。
「ただいまー!」
「ただいま」
元気の良い声だ、 しつけもしっかりしてるようだし、親御さんはしっかりした人だったのかもしれない。
帰宅すると僕は、彼女の敵討ちを手伝うべく、所持していたマジックアイテム数点の使い方を教えることにした。
彼女の望みは一対一の真っ向勝負。
僕はこうして身を守る術を教えることにした。
僕の持っていたマジックアイテムには、扱いによっては妖怪と戦える代物もある
熟練に至るまでは長い日がかかるだろうが、この少女には時間はたっぷりある。
これから先、作り方なんかも教えてやりたい。
少女は目を輝かせて僕の説明にかぶりつきだった。
頗る気分が良い、 知識を披露するのは他に代え難い快感ではなかろうか。
魔理沙は僕の話は聞いてるようで話半分だからな・・・。
「これなにー?」
「ああ、こいつは、これを・・・」
使い方を教える・・・が、色々な魔法の種類について離してやると少女は「ふんふん」と頷いて説明をよく聞く。
聞き上手のようだ。
こっちも話しやすい。
しかし、幾度も考えてしまうことだが、長い目でみないとこの手の物品は使えない。
いまは、この程度でも十分かな・・?
そういえば、 さっき霧雨の旦那がいってた『奥さんが身ごもってる』。あれって、 もしかしなくても魔理沙ってことだろうか?
十月十日でそんなものだろうか?
遅産だったらしいが、どうなんだろうか?
「あ、 できたー」
「うんうん、そうそう、そうやって・・・・・・」
「おおー、たかーい」
「・・・・・」
女の子は飛んでいた。 空中を自由に。
「・・・・え?」
「これはどうやってつかうの?」
少女はうきうきして、次のマジックアイテムの使い方をせびっていた。
この少女、ダヴィンチ並の天才だったらしい。
バック・トゥ・ザ・フューチャーを見ている気分だw
予定としては次でおしまいの予定です。)ノシ