はじめに
もう過ぎていますが、四月一日の設定です。あと、ホラー注意です。
昼の紅魔館、メイド達が食事休憩をとっている頃
咲夜、パチュリー、小悪魔の三人はレミリアの部屋に呼び出されていた。
「よく集まってくれたわね、皆」
「お嬢様、美鈴がまだ来ていないようですが…」
レミリアは紅茶を一口んだ後、話し始めた。
「あえて呼ばなかったのよ。理由は後で説明するわ
それより今日は何の日か知っているかしら?」
「四月一日、エイプリルフールね」
「そうよ、さすがパチェね。で、今朝私もさっそく騙されたわ
霊夢がね、魔理沙が死体で発見されたとか言ってきたのよ。」
「レミィらしくないわね、そんなバレバレの嘘に引っかかるなんて」
「それがね、霊夢の顔がものすごい青ざめててとても嘘とは思えなかったの
本当に迫真の演技だったわ、霊夢が帰った後カレンダーを見てやっと嘘だって気づいたの」
「しかし、なぜそれで私達が呼び出されているのでしょう?」
レミリアが机を叩いた。
「くやしいじゃない!!私も誰かを騙したくなったのよ!!」
「騙すとは…誰をですか?」
「美鈴よ!美鈴!あいつは馬鹿だからきっと簡単にひっかかるでしょう」
「なるほど、だから美鈴がここに居ないのね?」
「そう!この四人で協力して美鈴を騙しましょう!」
「レミィ…霊夢に騙されたくらいで、関係ない美鈴に八つ当たりするのはどうかと思うわ」
「うるさいわねパチェ!やるったらやるの!私がやるって言ってるのよ!!」
レミリアは何度も机を叩きながら叫ぶ。
パチュリーと小悪魔が呆れている中、咲夜が手を上げた。
「面白そうですね、私は賛成です」
その言葉に先程呆れていた二人は目を丸くした。
美鈴と最も仲の良い咲夜が、まさか賛成するとは思っていなかったのである。
「ふふふ、さすが咲夜ね、話がわかるじゃない」
「ただしお願いがあります、美鈴を騙すための計画は私に任せてください」
「あら、何か考えがあるのね?いいわ、あなたに任せましょう」
それを聞いてパチュリーも協力すると言った。
「まあ、咲夜なら安心して任せられるわね」
「パチェ、それどういう意味?」
レミリアがパチュリーを睨みつける。
夕食を食べ終わった四人は再びレミリアの部屋に集まった。
そこで咲夜は考えていた計画を三人に説明した。
「10分後、美鈴はここに来ます。
お嬢様は美鈴が来たら、今日限りで美鈴をクビにするという事を伝えてください」
「ちょっとベタすぎない?」
「大丈夫です。必ず騙されます」
「なんでそんなこと断言できるのよ」
「美鈴は馬鹿ですから」
「ひどっ」
「レミィもさっき言ってたじゃない」
「まあ、そうだけど…」
そして10分後、咲夜の言った通り美鈴は来た。
レミリアは計画通り、美鈴に嘘話を始める。
「残念だけどこれは四人で話合った結果なのよ、分かってちょうだい」
美鈴は話を聞いている間、下を向いたまま何も言うことは無かった。
それを見てレミリアは美鈴をかわいそうに思い、ネタばらしをしようとした。
「なんてね…」
そこまでレミリアが言ったとき、突然美鈴が叫んだ。
「ひどいです!!」
レミリアは驚きのあまり絶句する。
「私は…私は…いままで皆さんを家族の様に思ってきました…
たしかに私は…居眠りもよくしてしまうし…役立たずかもしれませんが…
でも…こんな事…こんな事…ひどすぎます!!」
美鈴はそう言うと、レミリアが言葉をかける間もなく走り去ってしまった。
「あ…美鈴…さ、咲夜どうしよう?」
うろたえるレミリアとは対照的に、咲夜は冷静な様子で話し始める。
「落ち着いてください、おそらくあれは嘘です」
「嘘?」
「ええ、こちらの嘘に気づいたのでしょう。
そこで美鈴は怒ったフリをして反撃したものと思われます」
「そんな保障どこにあるのよ…」
今まで黙って様子を見ていたパチュリーも口を開いた。
「そうよ、たしかにその可能性も考えられるけど、本気だったら取り返しのつかないことになりかねないわ」
しかし咲夜は冷静な表情のままでいる。
「大丈夫です、あいつの事は私が一番分かっています。もうすぐこちらの様子を伺いにもどって来るでしょう」
その言葉にレミリアが抗議しようとした時、あっと小悪魔が声をあげた。
小悪魔は扉の方を見ている。それを見てパチュリーとレミリアも扉に視線を移した。
扉は2、3cmほど開いていて、その隙間には人影が見えている。
咲夜は扉の人影に聞こえないよう、小声で告げた。
「みなさん目をそらして下さい、美鈴にばれますよ。
言ったでしょう、様子を伺いに来ると」
「ど…どうするつもりなの?」
「入ってこない所を見ると、美鈴はまだ私達が気付いていないと思っているのでしょう…
お嬢様、このままでは美鈴に負けたようなものです。こちらも嘘で反撃しましょう」
「嘘って?」
「美鈴に気付いていないフリをして、美鈴の悪口を言ってやるのです」
「ねえ、私だんだん美鈴がかわいそうになってきたんだけど…」
「お嬢様、このままでは私達が美鈴に騙されたという結果で終わってしまいます!
それに、計画は私に任せて下さると言ったではありませんか!」
「う、そうね、分かったわ」
咲夜の立てた作戦通り、美鈴の悪口を四人は始めた。
そうしているうち、小悪魔がまた扉の方を見て声を上げた。
扉から覗いていた人影が消えていたのである。
「咲夜!どうするつもり!?きっと怒って帰ってしまったんだわ!」
今まで冷静だった咲夜が、ここで初めて慌てた表情をみせる。
「こ、これは予想していませんでした…
し、しかし美鈴を騙すことには成功したわけですし、今から本当の事を言えば…」
「そ、そうね、探しましょう!自室かしら…」
「すみません、お嬢様、少し調子に乗りすぎたようです」
「気にすることないわ、元はといえば私が言い出した事なんだから」
四人が部屋から出ようとしたとき、扉が勢いよく開かれた。
開いた出入り口に立っていたのは、顔に怒りの表情を浮かべた美鈴だった。
「め、美鈴!あ、あのね、さ、さっきのは…」
そう言いながら美鈴の元へ歩きだすレミリアだったが、すぐにその足は止まった。
レミリアの視線の先、美鈴の右手には、包丁が握られていた。
「殺してやる…」
美鈴が呟いた。
「殺してやる、冗談だと思ったのに…皆を信じていたのに…許さない!」
三人はその言葉を聞き真っ青になる、しかし、咲夜だけは落ち着いていた。
咲夜はクスリと笑うと、美鈴に近寄っていく。
「はいはい美鈴、私達の負けよ」
「さ、咲夜何言ってるの!?」
「分かりませんか?嘘ですよこれも、美鈴が私達を怖がらせようとして嘘をついているのです」
咲夜は笑みを浮かべながら美鈴の方を向いた。
「しかしあなたもやるわね、なかなかの演技よ見直したわ」
咲夜がそう言っても、美鈴の表情は変わらないままだった。レミリア達は不安そうに咲夜を見つめる。
「もうバレてるわよ…」
そう咲夜が言った直後、包丁を持った美鈴の右手が咲夜の腹に振り下ろされた。
「咲夜!!!」
苦しそうにうめきながら、咲夜はその場に膝をついた。床に血が広がっていく。
「美鈴…あな…た…」
そう言うと咲夜は床に崩れ落ちた。
「美鈴!よくも咲夜を!」
レミリアは戦闘体制をとり、少し遅れてパチュリーも身構える。その横では泣き続ける小悪魔の姿があった。
「みんな、みんな殺してやるうううううううううううううううう」
襲われると思いレミリアが攻撃を開始しようとした時だった。突然美鈴の顔から怒りの色が消えたかと思うと
手に持っている包丁を床に落とした。
「なんてねっ」
ニッコリとした笑顔で美鈴が言った。
訳がわからず三人が固まっていると、倒れていた咲夜が起き上がった。
「そういうことです、お嬢様」
しばらく呆然としていたレミリアだったが、すぐに状況を理解し
安堵のため息を吐いた。
「グルだったのね、あなた達」
「はい、実は元々美鈴と二人で皆さんを騙すつもりだったのですが、
昼のお嬢様の話を聞いて計画を変更、美鈴と協力をしてその計画を実行した結果、今に至るわけです」
「なるほどね、その血袋は元々の計画で使う予定だったのかしら?」
今だに泣き続ける小悪魔を抱きしめながらパチュリーは聞いた。
「はい、これを作ったのは美鈴です、良く出来ているでしょう?」
「ひどいわね、協力者だとばかり思っていたのに…」
「お嬢様、今日はエイプリルフールですよ?そう簡単に信用してはいけません」
「そうね、今回は負けを認めるわ。さすが咲夜ね」
「いいえ、これも美鈴の迫真の演技のおかげです。それにこの血の完成度、臭いといい色といい…
よく作ったわねあなた」
すると美鈴は、不思議そうな顔をして首をかしげた。
「それ…作り物じゃないですよ?」
「え?」
「どういうこと?」
美鈴は笑顔で答えた。
「魔理沙さんのです!」
そりゃあ霊夢の様子が尋常じゃないなって読んでて思ったけどさ
めでたしで終わらない四月ネタも珍しい……?
レミリアがパチュリーを睨みつけたっていうところの
場面転換がちょっと急に感じたな
でも面白かった。ありがとうね
紅魔館って紫から定期的に人間を供給されているはずだから、それを使えばよかったんじゃ?
展開が読めたってのも残念
最初の注意書きで死人が「何人」出るって言われなかったので、魔理沙の死が最初から確定事項として頭に残り続けてしまったのが残念。
あと、最後の台詞に「!」があることで、オチ(というか最後に出るべき雰囲気)がぶち壊しになった感が。
粗探しはともかく、スッと読めてハハッと笑えた。よかったと思う。
改行がいくら何でも多すぎかと