汝、其のスイッチをおすべからず。

　幻想郷に、古くから伝わる自爆スイッチがありました。

　自爆スイッチの横には「汝、其のスイッチをおすべからず」と書かれた立て札が置かれていました。

　しかし件のスイッチには「強くおす」と書かれています。

　まだ言い伝えを知らない子ども達は、この自爆スイッチを見かけるたびに混乱してしまいます。



　おや、言っているそばから、元気そうな妖精、チルノがやってきたようですよ。

　空の虫かご片手に上機嫌。これから昆虫採集に向かうのでしょう。

　チルノはスイッチの前で止まりました。

「おんな、そのスイッチをおすべからず」

　漢字が読めなかったようです。

　チルノはスイッチに書いてある「強くおす」という文字も見て考えました。女がおしちゃいけないのなら、男は強くおすんだなと。

「オッス！」

　チルノは女の子だと言うのに、強く押忍して、満足そうに、去っていきました。

　オッス！



　あやや、今度は気の弱そうな大妖精がやってきましたよ。

「汝、其のスイッチをおすべからず」

　大妖精はつい伸びかけていた手を引っ込めますが、スイッチに書いてある文字を見て戸惑います。

「強く、おす。……えぇ？」

　彼女は気の弱さ故、どちらの言葉にも逆らってはいけないと思いました。

　迷いに迷い、結局スイッチを強く撫でることで解決していきました。



　そして次にやってきたのは空を見て惚けているルーミアです。

　彼女が真っ先に目にしたのは、スイッチの方でした。

　強くおす。そう書かれた文字を見た彼女は言います。

「そーなのかー」

　彼女の指はものすごい加速度でスイッチに向かいました。

　しかし、ギリギリのところで立て札にも気がつきます。

　汝、其のスイッチを押すべからず。

「そーなのかー」

　手を引っ込めたルーミアは何の疑問も持たないまま去っていきました。



　しばらくすると、歌を歌いながら上機嫌のミスティアが現れました。

　しかし彼女は歌うことに夢中で、どうやらスイッチには気づかなかったようです。



　沢山の昆虫を引き連れて、リグルがやってきました。

　リグルは立て札とスイッチに気がつくと、虫達と話し合いを始めました。

　おすべき派の虫と、おさない派の虫は激しくぶつかり合い、その戦いっぷりを見ていたリグルは目に涙を浮かべながら、もう争うのはやめてと叫んでいました。

　いくら叫ぼうと、リグルの声は虫達に届きません。

　自らの無力さを知ったリグルは、とうとう泣き崩れてしまいました。

　その涙を見たカブトムシが、おす派の昆虫を静止させます。同時にクワガタムシもおさない派の昆虫を止めました。

　自慢の角で涙を吹いてやる二匹。リグルの目からは、感謝と感動の涙が止まりません。

「ありがとう」

　リグルの潤んだ言葉は、昆虫全部に感動の波を作りました。

　おめおめと泣きながら、彼女達は去っていきます。

　自爆スイッチのことなど、もうすっかり頭には無いのでしょう。

　めでたし。



　夕方になると、チルノ、大妖精、ルーミア、リグル、そしてミスティアが仲良く帰ってきました。

　チルノは空の虫かごを下げてうなだれ、四人がそれをなだめていました。

「ちくしょうなんで捕まえられないんだよ！」
「私がいる限り昆虫は捕まえさせないわよ」
「リグルのアホー！　バカー！」

　勢いに任せて、ついにチルノがスイッチを殴ってしまいました。


「さて、どうなる！？」

　テンションが上がり過ぎ、思わず隠れていた木陰から身を乗り出してしまった私は、十秒後、轟音と共に見事吹っ飛んでいました。



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「押せって書いてあるスイッチと、押すなって書いてある看板を並べたときの色々な人の反応を記事にしたいので、作ってください」
「えーそんな無駄なもの作るのー」
「天狗に河童が楯突くというのですか」
「それを出すのは卑怯じゃないかい……？」
「じゃあ、意味ある物にしましょう。……そうですね、爆破オチも悪くないので、自爆スイッチにでもしましょう」
「なんでまた」
「設定は古くから伝わる自爆スイッチでいくので、なるべく古そうに作ってくださいね」
「本当に自爆スイッチなんかでいいのかい？」
「それじゃ、よろしく！」
「え、あ。ちょっと……。うーん、しょうがないから作るか」


　走馬灯のように河童のニトリとのやりとりを思い出しました。

　自爆スイッチって、別に私が自爆したかったわけじゃないのに。

これやりたい。

追記：まさか元ネタというか既に何かしらでやれれてたネタだとは思わなかった。
ガンダ＃Wさんごめんなさい。私ガンダ”＃百式とファンネル出すやつしかわからないけど。

追記2：背景を少し変えました。ごめんなさい。