Coolier - 新生・東方創想話

一番、東風谷早苗、脱ぎます!!

2011/03/28 04:56:03
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「早苗ちゃんの、ちょっといいとこ見てみたい!」

 桜舞う守矢神社に幻想郷中から沢山の人妖が集っていた。
 そして皆の目は私に注がれていた。
 私の前には大杯に並々と注がれた日本酒。
 逃げるわけにはいかなかった。
 私より年下の霊夢さんと魔理沙さんは苦も無くグイッと飲み干してしまったし、
 お酒に弱い妖夢さんも果敢に挑んで飲み干した挙句、
 その屍を西行寺さんの膝の上に晒している。
 私は覚悟を決めて杯を両手で掴む。
 ツンときついアルコールの香り。
 味合わうことなく、一気に喉に流し込んでしまう。
 酔いは回ってこない。
 今度こそ私はお酒を克服したのだという達成感。 
 が、一瞬の後に全身が熱くなる。
 胸の中にむかつきが広がっていき、頭は痺れる。
 私の記憶はそこで途切れた。

 ※※※

 目が覚めると私は自室にいた。
 宴会は夜だったはずなのに、もう昼過ぎになっていた。
 頭はガンガンと痛く、喉が渇いていて、全身には脱力感。
 髪は濡れていて、服は寝間着になっていた。
 私はまたしても宴会の途中で酔い潰れた挙句、介抱してもらったらしい。
 私の中に屈辱と羞恥が広がる。
 私はどうしてこんなにお酒に弱いのだろうか。
 体質としか言いようが無かった。
 ビールの一杯で前後不覚に陥っていた最初よりは強くなったものの、
 あどけない顔をした女の子が一升瓶を空けてしまう幻想郷で、それは焼け石に水だった。
 神奈子様と諏訪子様に相談しても、

「飲んでりゃそのうち強くなるわよ」

「潰れても私が介抱してあげるよ。酔い潰れた早苗も可愛いし」 

 と、有難い御言葉しか頂けなかった。

 枕元に置かれた水と二日酔いの薬を飲む。
 いつもより気分も優れないし、置き薬の残りもあまり無い。
 私は今後の相談も兼ねて、永遠亭の薬師の所に行くことにした。

 ※※※

 案内をしてくれた藤原さんと別れ、私は八意さんの診療所に行って診察の受付を済ませる。
 八意さんは本業が薬師でありながら、幻想郷一の腕を持つ名医でもある。
 診療代も良心的で、お金が無い人には診療代の請求を待ってあげるという立派な人である。
 診療所の設備は充実していて、沢山の種類の薬が揃っていた。
 藤原さんの案内が無ければまず来れない程に辺鄙な場所にあることを除けば、
 理想的な診療所だった。
 
 診療所の待合室には患者も少なく、すぐに私の名前が呼ばれる。 
 私が診察室に入ると、白衣を着て足を組んだ八意さんがいた。
 八意さんは患者を安心させる柔和な顔つきの中にも瞳には鋭い理知的な光を湛えていて、 
 また、女の私でもドキッとする程の色気を持っていた。

 私は要件を告げて、診察を始めてもらう。
 気分が優れないのは診察するまでも無く二日酔いだった。二日酔いの薬を出してもらう。
 重要なのはお酒に弱い私の今後だった。
  
「お酒に弱いのは体の異常ではないのだから、治療の必要は無いと思うわ。
お酒を体が拒否するのはアルコールという毒物に対する正常な反応よ」
 
 やはり、お酒が強い人には私の気持ちは分かってもらえないのだろうか。
 八意さんは酒豪揃いの幻想郷の中でも極め付けの酒豪だ。
 八意さんは普段宴会で酒をあまり飲まない。
 ある時、それに目を付けたある天狗が飲み比べを挑んだ。
 天狗も八意さんも強い酒を水でも飲むかのようにハイペースで飲み干していく。
 数時間後には天狗は床に転がり、八意さんは何事も無かったかのような顔をしていた。
 それ以降は飲み比べが趣味の鬼や天狗も、八意さんには飲み比べを挑まなくなった
 八意さんはどんなに強い酒でも、どれだけの量を飲んでも顔色一つ変えない。
 まるでアルコールが効かないみたいだった。
 私は八意さんのお酒の強さに憧れ、羨ましかった。
 
「それでも私はお酒が飲めるようになりたいんです。
お酒が飲めなくて馬鹿にされることも、酔い潰れて皆に迷惑をかけることも嫌なんです。
お酒を沢山飲んで皆に一目置かれるようになりたいんです」 

「そもそも、お酒を沢山飲めるってそんなに偉い事なのかしら。
体質的な強い弱いを除外すれば、許容できるアルコール量はだいたい体重に比例するわ。
つまり、極論すれば体重が重いほど偉いことになるわね。そうなのかしら?」

「それは……」

「もっと極論すれば、
穴の開いたバケツに酒を流し続ければ数分でこの世で最も偉い存在が出来上がるわ。
乱暴なことを言えば、貴方の言ってることってそういうことよ」

 それでも私は粘った。
 何度も何度も頼み込んで、理屈で説得しようとする八意さんに感情で対抗する。
 お酒に強くなれる薬を出してくれるまでは梃でも動かないという意志が伝わったのか、
 遂に八意さんは一服だけ、しばらく酒に全く酔わなくなるという薬を処方してくれた。

 診療所を出ると私を待っていてくれた藤原さんと合流して神社に帰る。
 予定よりも大分時間がかかったことを謝るが、
 藤原さんはどうせ暇してるからと快く許してくれた。
 この薬があれば霊夢さんや魔理沙さんにも勝てるだろう。
 まだ頭痛や倦怠感は残っていたが、帰りの足取りは軽かった。

 ※※※

 私はあの娘、早苗の後姿を遠くに見送りながら酒瓶を傾けていた。
 さっきの一件で久しぶりに酒が飲みたくなっていた。
 医療に携わるものが勤務時間中に酒を飲むのはどうかと思うが、
 今日はもう患者も来ないだろうし、酒の臭いは消毒用アルコールに紛れてしまうだろう。
 アルコール度数九十六度の蒸留酒が喉を焼く。
 そろそろ瓶も空になろうとしていたが、やはり私は全く酔わない。
 私にはあらゆる薬毒が効かない。当然アルコールで酔うこともない。
 酒の味やアルコールの風味は好きだが、酔うことが無いのは醍醐味を欠くものであった。
 私は酒のことで一喜一憂するあの娘が羨ましかった。
 
 ※※※
 
 その日、博麗神社で霊夢さんと魔理沙さんと三人で飲み会をしていた。
 あらかじめ例の薬を飲んでいた私はいつにないハイペースでお酒を飲む。

「今日は随分と余裕じゃない」

「すぐに床におねんねさせてやるぜ!」

 私に対抗して二人もハイペースでお酒を飲む。

 ※※※

「あんた一体どんな術を使ったのよ……」

「私はまだ戦えるぞ……。霊夢、そこの酒瓶を取れ……」

 数時間後、素面の私は二人の介抱をしていた。
 薬の効果は絶大で、私はいくら飲んでも酔わない。
 二人は普段舐めていた私に負けることはプライドが許さないのか、
 限界を明らかに超えた量を飲んで酔い潰れた。
 魔理沙さんはそれでもなお、飲もうとする。私は急いでお酒を片付けた。

 ※※※
 
 二人を何とか寝室に運んで寝かしつけた後、
 手持ち無沙汰な私は月を見ながら一人でちびちびとお酒を飲んでいた。
 そろそろ薬の効果が切れるのだろう、少しずつ酔いが回ってきた。
 私は今日のことを考える。
 普段私のお酒の弱さをからかう二人が無様に酔い潰れるのは確かに痛快だった。
 だが、酔いの無いお酒はどこか味気ないものだったし、
 誰がどれだけ飲めるかを本気で競っている二人を侮辱しているような気がした。
 私の胸がどうのとエロ親父のように絡んでくる二人の介抱は大変だった。
 私はふと思う、飲み会はお酒が強い人だけのものではない、と。
 弱いなりの楽しみ方があるのではないかと。
 お酒に弱い人は、弱いなりにちびちび飲んで楽しんだり、
 あるいはいっそのこと早々に酔ってしまって、酒の勢いで迷惑をかけてしまえばいいのだ。
 酔ったのは酒を勧めてきた人の責任だ。私のせいではない。
 お酒に強い人には強者の義務を果たしてもらえばいいのだ。
 お酒に弱いことを馬鹿にしてくる人はいるのだろうが、
 それは本気で私のことを馬鹿にしているのではない。
 私を愛してくれているからこそのことだろう。
 
 私は寝室に向かって二人の横の布団に潜り込むと、酒瓶を掴んで一気飲みする。
 間も無く、頭の痺れと胸のむかつきが襲ってきて意識が途切れてくるが、
 私はどこかすっきりして満足していた。
最近平和な話ばかり書いていてバトル分が足りないなーと思って、
アルコールと激しいバトルを繰り広げる早苗さんを書きました。
ちなみに、タイトルは釣りではありません。
えーりんの診察を受けるときに早苗さんは脱いでます。
何か指摘していただければ励みになります。
根古間りさ
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コメント



0.2580簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
飲み過ぎイクナイ
4.90名前が無い程度の能力削除
酔えない酒なんて魅力半減よね
えーりん可哀想
11.100名前が無い程度の能力削除
脱衣が足りない
13.60名前が無い程度の能力削除
スピリタスェ……
15.80名前が無い程度の能力削除
寝着に着替えさせられた時も脱いでますね
16.70奇声を発する程度の能力削除
お酒は飲みすぎは気をつけないとですねぇ
17.100名前が無い程度の能力削除
待て待て、「バトル分が足りない」……だと?
妹紅や妖夢や魔理沙はどうなったアッー!
20.20名前が無い程度の能力削除
バトルしてなくね?
24.70名前が無い程度の能力削除
一瞬、えーりんが早苗に蓬莱の薬を盛ったのかとヒヤヒヤしました
27.50名前が無い程度の能力削除
酒盛りでえーりんと境界弄ったゆかりんが延々と酒の飲んでいる様が浮かんだ。
嗚呼おそろしや。
29.80名前が無い程度の能力削除
小学生の日記みたい。全部過去形で書いているからそう見える
あなたの次の作品も読んでみたいです
36.80名前が無い程度の能力削除
とても短い。濃厚なストーリーでもない。予想外のオチがあるわけでもない。
それでも、面白いと思わせる技量にまいりました。
41.70愚迂多良童子削除
酒は酔うのが目的なんであって、酔わぬ酒なんてのはソフトドリンクと大差ないですね。
それは兎も角、この酔わなくなる薬は急性アルコール中毒を助長しそうでちょっと怖いですね。永琳が処方を渋ったのもそういう理由からでしょうか。
酒に弱いということは、アルコールを分解しにくい体質ということで、血中アルコール濃度が上がりやすくなりそうな気がします。それとも強制的にアルコールを分解する薬なんでしょうか、謎。
46.30名前が無い程度の能力削除
うーん
淡々としているのは良いのですが、文章がバラバラな印象を受けました。
47.90名前が無い程度の能力削除
呑めない人は無理して飲むことは無いのです。
49.80名前が無い程度の能力削除
永琳もちょっとかわいそう。
52.100名前が無い程度の能力削除
どんでん返しがあるのかと身構えてしまったけど、しっぽりとした良い終わり方でした。
62.70名前が無い程度の能力削除
よし、今日は飲もう。
65.50名前が無い程度の能力削除
地の文の内容は早苗の一人称でお酒に弱いことへの嘆きや焦りを書いているに、
書き方が淡々とし過ぎてまるで全く興味のない他人の事を語ってるような感じがした。
変な例えだけど、やる気のない読書感想文のような。
67.100名前が無い程度の能力削除
淡々と進む雰囲気がなんともよいです
77.90ぺ・四潤削除
途中で早苗さんに言いたくなったことをちゃんと自分でわかってくれたようでよかったです。
酒は多くても少なくても酔えるから楽しいのです。いくら呑んでも酔えなかったら宴会は苦痛の場でしかありません。
ところでなぜ二日酔いの診察で服を脱ぐのですか早苗さん……!!