東方X戦記
第16話「儚き力は皆の為に」
「文さん・・・・・・良かった・・・・・・生き返ったなんて・・・・・・。」
懐かしき天狗を見、早苗は涙ぐんだ。死んだはずの射命丸文が生き返ったのだ、無理もない。
恐らく、大神・天照の力で慧音と一緒に生き返ったのだろう・・・・・・まさに奇跡と言い様がない。
「射命丸文・・・・・・生きていたのか・・・・・・そして、何故ここにいる?」
文を睨みながら、神影は警戒する。情報では射命丸文は犬走椛と一緒にキリュウに殺された筈だが・・・・・・
そんな神影に対し、文は肩をすくめ、苦笑しながら説明する。
「それが、自分でも分かりませんよ・・・・・・気が付いたら、幻想郷にいまして・・・・・・夢かな?と思ったのですが、目の前に何か禍々しいスキマがあるじゃないですか!紫さんとは違う雰囲気でしたので、自分は何故か生き返ったのかという事に気が付きました。そしてスキマをくぐって外の世界で約3カ月、外の世界の情報・・・・・・取り分け、北方勇者帝国の情報を探っていたのです。」
「・・・・・・ジャーナリスト魂と言う奴か・・・・・・!」
「何はともあれ、貴方が北方勇者帝国の幹部ですね?どう言う理由かは知りませんが・・・・・・」
そして、文は紅葉型の扇子を持って戦闘態勢を取る。
「うちの知り合いをここまで痛めつけた礼を・・・・・・手数料込みでお返ししますよ!」
「文さん、気を付けて下さい!神影さんは私や八坂様、諏訪子様、文さん達の能力を持っているクローンです!」
「えっ!?そうなのですか!?私が見た情報ですと、幻想郷の住人の情報を基に作り出されたT‐Jシリーズと私を死に追いやったあの頭のネジが数本ない小娘だけ思いましたが・・・・・・所で、幻想郷の住人の情報の出所は何処からでしょうか?」
「そ、それは・・・・・・。」
「私です・・・・・・。」
「「えっ!?」」
「私なのです、射命丸さん!私がZに脅されて皆の事を全て話したのが原因なのです!そのせいで椛や射命丸さんが・・・・・・。」
「まさか、にとりさんが脅されて・・・・・・いえ、Zの計画には他にも隠された訳があります・・・・・・闇の巫女です・・・・・・。」
「闇の巫女ってアリスさんが言っていた・・・・・・?神綺さんや紫さんも知っていた様な・・・・・・。」
「オイ・・・・・・。」
「兎に角、詳細は手帳に書いたのですが、残念な事に刺される前に落としてしまいまして・・・・・・。」
「・・・・・・そう言えば、霊夢さんの神社で手帳を見た様な気が・・・・・・。」
「えぇっ!?ならば、霊夢さんはその中身を見たのでは!?」
「オイ・・・・・・・・・・・・!」
「い、いえ・・・・・・あの後の霊夢さんは・・・・・・とにかく、まだ見ていません・・・・・・。」
「あやややや・・・・・・何やら、訳ありですね・・・・・・ですが、私が生き返ったからには、説明しましょう・・・・・・。」
「オイ!!」
「あや?」
怒号に振り向くとそこにはすっかり痺れを切らした様な神影がいた。どうやら、長話にウンザリした様だ。
「さっさと、弾幕しろよ。」
「ふむ・・・・・・どうやら、話は後ですね・・・・・・早苗さんはここにいて下さい・・・・・・すぐに決着を付けます!」
「いいだろう・・・・・・どうやら、やるしかないのか・・・・・・。」
「行きますよ~!」
そう言って、文は高速で神影に接近する。対する神影も高速で文に立ち向かう。
そして、高速移動する文と神影は接近戦による激しい戦いを繰り広げていた。だが・・・・・・
「な、成程・・・・・・私だけでなく、早苗さん達の能力をコピーしていたとは・・・・・・分が悪いですね・・・・・・。」
同じ高速の能力で、弾幕が出せてもかつて早苗達(風神録)の能力を多数持ち、弾幕が出ない代わりに剣による接近戦に長けた神影に文は苦戦していた。徐々に押され始めて疲労と焦りを隠せない。そして神影が口を開く。
「射命丸文・・・・・・お前は何故、生き返った・・・・・・?」
「知りませんってば・・・・・・早苗さん達が知っているそうですし・・・・・・。」
「そうではない・・・・・・何故、犬走椛を差し置いてお前だけ生き返った・・・・・・?」
「っ!どう言う事ですか・・・・・・何が言いたいのです!?」
神影の言葉に表情を変える文。そんな彼女に神影は非常の言葉を述べる。
「俺には分かる、お前達の最期の記憶が・・・・・・お前は椛と一緒に飛んで行き、椛の意向を知らずに主・Zの忠告を無視してレッドゾーンへと入った・・・・・・そしてキリュウに椛と共に殺された・・・・・・いや、その探究心と行動が椛を殺した・・・・・・。」
「っ!!!???」
それを聞いた文はショックを受けたのか絶句し、動きを止めるそれを見逃す神影ではなかった。
「遅い!」
神影の剣の柄により突きで吹き飛ばされ、壁に激突してしまう文。
「あ、文さん!?・・・・・・文さん?」
早苗がその光景に驚くが、何やら文さんの様子がおかしい。顔が真っ青で体が震えていた。
「私の・・・・・・私の探究心と行動で椛を殺してしまった・・・・・・私が椛の気持ちも考えないで無謀にも危険な所に入ってしまったから、椛が死んだ・・・・・・それなのに・・・・・・それなのに私だけが生き返るなんて!」
両手を頭に抱え、文は子供の様に泣き叫ぶ。自分の行動で大切な者を失ったばかりに
「何故です・・・・・・どうしてなのですか!?どうして私だけが生き返ったのですか!?どうして椛だけ生き返らしてくれないのですか!?私よりも椛の方が良かったのではないですか!こんなのは・・・・・・こんなのはあんまりです!あんまりじゃないですか・・・・・・ネタ欲しさに行動してしまう私は馬鹿です!愚かな天狗です!会いたい・・・・・・椛にもう一度会いたいです!!」
文の悲しみの叫びに早苗はある事に気づく。同じだ・・・・・・にとりさんと同じ感じの罪悪感・・・・・・!
「文さん・・・・・・っ!神影さん・・・・・・貴方は・・・・・・!・・・・・・?」
早苗は神影を睨むが、神影は悲しそうな瞳を早苗に見せる。
「俺もあいつと同じだった・・・・・・自分のせいで大切な者を失ってしまった罪悪感・・・・・・それが体を蝕んでいるのだ・・・・・・だからこそ、俺は思い知ったのだ・・・・・・どんなに夢や希望を抱いても現実は非常で奇跡は存在しない事を・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
それを聞いた早苗は考えた。神影さんの言う事も分かります・・・・・・大切な人を傷つけたのは誰かではなく、自分であるという罪悪感が生じる事は確かです・・・・・・でも、本当にそれでいいのですか・・・・・・自分のせいだけでそれで納得できるんですか・・・・・・?
にとりさんはZさんに脅されて、T‐Jを作り上げた・・・・・・しかし、それは河童の仲間達を守る為に仕方なくやったと思う。
文さんは自分のせいで椛さんが死んだと言っているが、何も文さんの知りたい気持ちが原因ではないと思う。
それで・・・・・・それでいいのか?その考えが早苗の頭の中で一杯になった時、神奈子様と諏訪子様との日々を思い出す。
そうだ・・・・・・皆さんは全ての責任は自分だけだと思っているんだ・・・・・・だから私は・・・・・・
何やら決心した表情の早苗は息を吸い込み・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・いい加減にしなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」
思いっきり叫んだ。その叫びは都心部へ向かって暴走する装甲機関車の壁をビリビリと震えあがらせた。
「こっちはどうですか、レティさん?」
「駄目ね・・・・・・機械人形が見張っているわ・・・・・・。」
一方、北方勇者帝国本部では、囚われの大妖精とレティが脱出する手口を考えていた。
しかし今、自分達がいる独房は特殊な鋼鉄でできている為、弾幕でもなかなか傷一つ付かない。
その上、定期的に機械人形が大妖精達を見張っているので脱出しにくいのである。これではもうお手上げである。
だが、こんな所でもたもたしている場合ではなかった。チルノが気がかりである。
「チルノちゃん・・・・・・あの人と一緒に行動しているなんて・・・・・・一体、何があったの・・・・・・。」
「あのキリュウと言う少女に操られているのかしら・・・・・・ともかく、早くここから出ないと・・・・・・あら?」
「どうしましたか?」
「・・・・・・どうして今まで気づかなかったかしら・・・・・・通気口があるじゃないの・・・・・・。」
「で、ですが、あの通気口では流石にレティさんは・・・・・・あ・・・・・・。」
自分の口を塞ぐが時すでに遅く、見るとジト目のレティが自分を見ていたのだ。体型を気にしているから無理もない。
「・・・・・・しょうがないわね・・・・・・機械人形は私が誤魔化すから、貴方は脱出する準備を・・・・・・一刻も早くここから脱出して霊夢達に私達の事を知らせて・・・・・・音からして何やら慌てている様な気がするから。」
「は、はい・・・・・・。」
「気を付けてね・・・・・・。」
レティの言葉を聞いて大妖精は通気口を通る。通ったがいいが、何処へ向かえばよいやら・・・・・・
そう考えていると、ふと、光が見えた。そこへ向かって進んでいると出口らしきものが・・・・・・
「よっと・・・・・・ってあれ?ここ何処の部屋かな?」
「誰・・・・・・?」
「えっ・・・・・・。」
驚いて恐る恐る振り向くとそこには少女がいた。大妖精は慌てて逃げようとするが、どうやら敵ではない雰囲気を持っている。
その少女はベッドに横たわり、頭にはバンダナ、体中に包帯が痛々しそうに巻いている。そして表情はどこか切ない。
「あ、あの・・・・・・。」
「・・・・・・始めまして・・・・・・。」
「あ、始めまして・・・・・・。」
しどろもどろになる大妖精にその少女はフフッと微笑み、挨拶をする。それに同じ様に挨拶する大妖精。
「私、エミリー・・・・・・貴方は?」
「え、あの、名無しの大妖精です・・・・・・。」
「ふふっ、面白い名前ね・・・・・・。」
「あの、エミリーさんは一体・・・・・・。」
「私?・・・・・・私、実は悪い人に捕まっているの・・・・・・。」
「え!?エミリーさんもですか!?実も私も捕まっていまして・・・・・・。」
「そうなんだ・・・・・・。」
「あの、エミリーさんはどうして捕まったのですか?」
「・・・・・・私ね、訳あって一人ぼっちだったの・・・・・・だけどある時、私を孤独から助けてくれた人がいたんだ・・・・・・その人は自分が人間じゃなくてクローンであるという事に悩んでいたらしくて、何か私と同じだなと思い、話し合ったら“お前は俺が守る”って言って、他のクローンには内緒で居候させてくれた・・・・・・だけど・・・・・・。」
「クローン・・・・・・も、もしかしてキリュウと言う方では?」
「いいえ、名前は東風谷薫・・・・・・それが私の大切な友達の名前・・・・・・だけどある時、そのキリュウと言う彼女よりも高い地位を持つ者にばれてしまって、私はこの独房に閉じ込められ、彼女は自分の責任だと感じているらしくてそれっきり会ってないの・・・・・・。」
「そうだったのですか・・・・・・(東風谷・・・・・・?聞いた事のある名前だけど・・・・・・?)」
寂しそうに言うエミリーに大妖精は同情する。なんだか悲しそうな人だ・・・・・・
その悲しみの表情がチルノと重なってしまい、慌てて振り払って辺りを見回す。
「?どうしたの?」
「私はここから逃げなくてはなりません・・・・・・友達のチルノちゃんがそのキリュウと言う人の言いなりになっているのです・・・・・・多分、私達を人質にしているからだと思います・・・・・・ですから、早く霊夢さんにその事を・・・・・・!」
「!(同じだ・・・・・・私の為にキリュウに逆らえない薫と・・・・・・)大妖精さん・・・・・・私も手伝っていい?」
「えっ!?いいんですか!?」
「実は、定期的にあのロボットが1体、私の世話や状態などを調べる為に入って来る事になっている・・・・・・。」
「そこを突いて脱出するのですね・・・・・・。」
「幸い、このベッドの下にあるモップに気付かなかったとすると、X線とかで透視できない様になっているから大丈夫よ。後は・・・・・・っ!来た!早くベッドの下に隠れて!」
「は、はい!」
エミリーにそう言われて大妖精は慌ててベッドの下に潜り込む。それと同時に機械人形が1体、入り込んで来た。
どうやら、様子見なのか機械人形はエミリーの方に近づき、センサーでエミリーの脈拍数等をチェックする。
少し心拍数が上がっているが、他は異常無しなので戻ろうとするとセンサーに何やら、別の動きを捕らえたその時!
「でやぁぁぁぁぁぁっ!!」
何とベッドの下から大妖精が飛び出したのだ!手にはエミリーが隠していたモップを持ってそれを一気に振り下ろす!
しかし、大妖精は中ボスで相手は量産型とは言え、機械人形。奇襲したもののすぐに片手でモップを掴んでしまう。
「くっ・・・・・・!」
「頭部・・・・・・取り分け、目を狙って!そうすれば、一時は脱出できる時間が出来るわ!」
「は、はい!」
モップを掴まれた事にたじろぐ大妖精だったが、エミリーの指示通りに頭部目掛けて弾幕を放つ。
すると運良く、機械人形の弱点の一つ、最も耐久度が低い目のセンサーの破壊に成功する。
「さ、エミリーさん!掴まって下さい!」
機械人形が後ずさると同時に大妖精はエミリーをおんぶして猛スピードで飛び立ち、部屋を出る。それと同時にブザーが
「えぇっ!?もう警報が・・・・・・!」
「多分、さっきの奴ね。私達が逃げた事をデータにして送信したかも・・・・・・そう言えば、他に捕まった人は?」
「レティさんがいますが・・・・・・この様子では救出は無理の様です・・・・・・。」
「そうね・・・・・・私も薫を説得したいけど・・・・・・私達が逃げた事でその人が危険な目にあうかもしれない・・・・・・となると、誰かにこの事を知らせて、何とかしなくては・・・・・・私の知り合いと言えば彼等ね・・・・・・今はここから出る事だけを考えましょう!」
「はい!・・・・・・っ!?」
そう返事をした瞬間、何と大妖精達の目の前の空間に一筋の線が引かれ、スキマが現れ、そこから女性が現れたのだ!
「スキマ・・・・・・けど、紫さんじゃない・・・・・・!」
大妖精は知らないが、彼女は勇者8号・四由美。妖夢に倒されて本部にやって来たのだった。
「あら・・・・・・?」「「っ!!??」」
四由美に発見され、固まる大妖精とエミリー。しかし、四由美は少し考えた後・・・・・・
「・・・・・・どうやら、ここから逃げたいのね~?ささ、遠慮せずにどうぞ~。」
そう言って四由美はスキマを弄って本部の外行きのスキマを作り出す。その光景にキョトンとなる2人。
「え・・・・・・何で・・・・・・?」
「あらあら~、貴方が大妖精ね?急がないと皆さんがここにも来ますよ~?後、一ついい?」
「???」
「妖夢ちゃんや博麗霊夢さん達に伝言、『キリュウちゃんは頑固だから止めるなら本気で止めてあげて』ってね♪」
「は、はぁ・・・・・・?」
ちょっと半信半疑ながらも味方っぽいのでスキマに恐る恐る入る大妖精とエミリー。それを見て、四由美は呟く。
「・・・・・・後は他の皆・・・・・・取り分け、薫ちゃんやチルノちゃんに説明ね・・・・・・大変だわ~。」
「キリュウッ!単刀直入に言っておくが、この本部にだけ何故、監視カメラとか付いていないのだ!」
数分後、大妖精達を逃がした帝国本部の会議室でザリクが忌々しそうにキリュウに言う。対するキリュウも言い返す。
「仕方ないじゃろう!ぬしらの基地とかに設置したら案の定、足りなくなっての・・・・・・まぁ、誰かさんのせいでパーじゃが?」
「ぐっ・・・・・・減らず口を・・・・・・それで?逃げたのはあの⑨妖精の仲間か?」
「報告によれば、1年前に本部に忍び込んだあの小娘も同行していたぞ。やっぱりじゃな♪」
「なっ・・・・・・!?エミリーが!?」
キリュウの報告に驚いたのはレグリンだった。あの時、自分の弾幕で傷ついた少女が・・・・・・
「やはり、あやつはスパイだったのじゃな・・・・・・これで奴を殺す口実はできたもんじゃ♪」
「ま、待て、キリュウ!第一、彼女は2号の知り合いだぞ!」
「ふ~ん・・・・・・それがどうかしたのかえ、レグリン?あやつの知り合いはわしらだけで十分じゃぞ?」
「もし、彼女に何かあったらまた2号が・・・・・・。」
「ほぉ、彼女を殺せば、今度こそあやつはわしを殺すのか?だったら、楽しみよのぉ、ククク・・・・・・。」
「っ!今何と言ったキリュウ・・・・・・貴様は奴に殺される事を楽しんでいるのか・・・・・・!?」
キリュウの言葉にザリク達はたじろぐ。そんな彼女達に対し、キリュウは不気味に笑う。
「わしも楽しみにしていたのじゃ・・・・・・殺される覚悟を・・・・・・そういうスリルを味わうと・・・・・・まさに快感じゃな♪」
「むむむ・・・・・・そう言うの、ハロウィン向きですね・・・・・・!」
「何とでも言え・・・・・・まぁわしはあ奴等を殺す事は考えておらんがな。何せ、あの2人はわしのお気に入りじゃから。」
「キリュウ、あの2人だけひいきしてずる~い!」
「スィガ、やかましっ!1号、2号はわしの娘みたいなものじゃぞ。ともかく、冬の妖怪がいる以上、あやつらが再び、ここにやって来る可能性は高くなったのじゃ・・・・・・んで、四由美、わしとの約束はバッチリかの?」
「勿論よ♪けど、妖夢ちゃんも強くなっているから、油断は禁物よ~?」
「まぁ良い、外部は2人に任せて、わしらは本部の防衛だけに努めれば良い。幸い、闇の巫女やAチルノもおるし。」
「・・・・・・その事を⑨に言ったか・・・・・・いや、この様子だと言っていないな・・・・・・。」
「当り前じゃ、わしの一番弟子じゃがな・・・・・・では、ぬしらもさっさと備えをせい。これにて解散じゃ。」
その言葉にバラバラと解散する勇者達。そんな中、1人だけ残っている者がいた。レグリンである。
「(・・・・・・これで・・・・・・これでいいのか・・・・・・?やはり、もう1人の鈴仙の言う通り、この戦いは正義も悪も関係ないというのか・・・・・・?この戦いで何を得られるというのだ・・・・・・?)」
「6号・・・・・・。」
振り向くと、そこには勇者5号・天玖だった。天子に壊されたバイザーは新調している。
「5号・・・・・・この戦いは激しくなるな・・・・・・だが、この戦いに意味はあるのか?」
「許して下さい・・・・・・旧式の天人が要塞を破壊する力を持っていたとは知りませんでした・・・・・・。」
「良いんだ・・・・・・彼女等も守るべきものの為に必死だからな・・・・・・私も彼女等と戦う覚悟が必要だな・・・・・・。」
そう言って、天玖に背を向けて去るレグリン。それを見ながら、天玖は溜息をついて呟く。
「正義にこだわるあの人には心底、ウンザリさせます・・・・・・。(ですが、私を打ち破ったあの天人の技・・・・・・かつてキリュウの書籍から見た、『伝説の夢想技』だとしたら・・・・・・紅とて、完全ではありません・・・・・・もし、彼女等と戦えば最低、ダメージを与える事が出来ます・・・・・・そしてどっちが勝ってもそのトドメは私が・・・・・・ふふふ・・・・・・我ながら完璧な計画ですね・・・・・・。)」
早苗の突然の大声に神影、文、にとりは驚いて彼女を見る。早苗は涙ぐみながらまくし立てる。
「皆さん、どうかしていますよ・・・・・・自分のせいだ、自分のせいだ、って思っているなんて・・・・・・皆さんは自らの罪を抱えているでしょうが、なら、もう2度と起こらない為に行動したらどうですか!そう言うのは逃げているのと同じなのです!」
そう言って、早苗はにとりの方を見る。
「にとりさんは自分が情報提供したから皆が死んだと思っておりますが、八坂様を殺したのは貴方ではなくてT‐Jです!」
「早苗・・・・・・。」
「私も八坂様や諏訪子様が死んだのは正直、悲しいです・・・・・・ですが、それをにとりさんのせいだとは思っていません。」
そして今度は文の方を見る。
「文さんもです・・・・・・椛さんが死んだのは貴方のせいではないのです・・・・・・何でも一人で抱え込まないで下さい・・・・・・。」
「・・・・・・ですが・・・・・・私の好奇心のせいで、椛が・・・・・・。」
「文さんの好奇心は記者として素晴らしいと思います・・・私はそんな文さんが好きです・・・椛さんもそう思っているのです。」
最後に早苗は神影の方を見る。
「・・・・・・神影さん・・・・・・本当に彼女の事を大切に思うのなら、何故、行かないのです?少しは彼女の話を聞く勇気はないのですか?」
「っ・・・・・・俺は・・・・・・。」
「言った筈です・・・・・・私は絶対に諦めません!どんなに現実が非常だろうと、最後まで諦めません!そしてキリュウさんの計画を止めて、2つの世界を救って見せます!霊夢さんや魔理沙さん達と一緒に!」
そう言って、早苗は怪我を物ともせず、折れた椛の剣を構えて強い意志を込めて言う。
「その為にも・・・・・・神影さん・・・・・・いえ、薫さん・・・・・・貴方を倒してこの装甲機関車を止めます!!」
そう言ったその時、早苗の体が光り出し、何処からかスペルカードが現れた。その光景に神影は驚いた。
「な、何だ、あのスペルカードは・・・・・・!?一体、どこから・・・・・・!?」
一方の早苗も突然の事態に驚いていた。慌てて浮いているスペルカードを手にとって良く見る。
「!これは・・・・・・!?・・・・・・一か八かやって見るしかないですね・・・・・・!」
そして躊躇わず早苗はスペルカードを発動させようとするが、文が慌てて止めようとする。
「早苗さん、駄目です!そんな体で見た事もないスペルを発動するのは危険そのものです!」
「大丈夫です、文さん・・・・・・私は信じます・・・・・・このスペルカードに全てを・・・・・・。」
「そんな・・・・・・流石に奇跡を起こすのは不可能です!精々、1%以下ですよ!」
「構いません・・・・・・99.9%以上が不可能でも・・・・・・私は1%以下の希望に賭けて見ます!」
そう言って、早苗は・・・・・・重症の体のまま、スペルを発動した。その時、奇跡は起きた・・・・・・!
「スペル発動!・・・・・・“夢想風神蓮”!!」
早苗がスペルを発動した瞬間、早苗の前方から神影の方へ何やら色鮮やかな線が飛び出す。それにそって走り出す。
「何っ!?」
「行きます!」
そう言って、早苗は線に沿って一気に神影に向かって高速で突っ込んでいく。神影も慌てて剣を構える。
「(突っ込んで来るか・・・・・・ならば、この剣に全てを込めて叩き斬るのみ!)」
そう思い、剣を構えて早苗の動きに注目したその時、何と早苗が赤と青、黄、紫、白に分かれたのだ。
「なっ!?!?(分身だと!?いや、幻か!?となると、どちらかが本物・・・・・・どれなんだ!?)」
5つに分かれた早苗に神影は動揺した。流石の彼女もこの光景には冷静に判断する事は出来ないのは無理もない。
「「「「「はぁっ!!」」」」」
その隙を付いて、5人の早苗達が弾幕や接近戦で攻撃する。驚く事にどれも実体の様だ。
そして、その攻撃の後、頭上から本物の早苗が折れた椛の剣を持って一気に振り下ろしたのだ。
「なっ・・・・・・!?」
「でやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
早苗が放った斬撃は分身で怯んだ神影に一撃をもたらしたのだ。
ピチュチュチュ―――ン!!!
そして、その攻撃は床をも破壊し、その下にある車軸を切り裂いた。たちまち、装甲機関車はバランスを失う。
「・・・・・・間に合いました・・・・・・。」
早苗がそう言った直後、倒れてしまう。どうやら、あの体でスペルを発動したのだ。問題は徐々に傾き始める機関車。
「うわわっ!装甲機関車が倒れるぞ~!」
「早苗さん、掴まって下さい!」
慌てて、文とにとりは早苗を抱えて脱出する。その直後、装甲機関車は脱線し、大爆発を起こした。
巨大な煙を出して炎上する装甲機関車。都心部まであと3時間位。確実に間に合ったのだった。
早苗を介抱しているにとりと文はそれを見ていた。もし、早苗がスペルを発動しなかったら今頃は・・・・・・
その時、煙の中から何かが飛び出した。驚く事にボロボロの状態の神影だった。
「薫さん・・・・・・!」
「くっ・・・・・・俺の剣があと少し早く防御すれば、完全に防げたものを・・・・・・だが、あのスペルは例え、完全に防いでいても無傷では済まない程の威力だった・・・・・・東風谷早苗・・・・・・これがお前の信じる奇跡というものなのか・・・・・・?」
「・・・・・・はい、そうだと思います・・・・・・どんな辛い事も信じればいつかは奇跡が起こるというのです・・・・・・。」
「そうか・・・・・・む?」
その時、神影は何かを察知したのか明後日の方を向いていた。見るとゴマ粒みたいなのが見えるが・・・・・・?
「あれは、チルノの妖精と・・・・・・っ!!・・・・・・エミリー・・・・・・エミリーなのか・・・・・・!?」
神影の表情が変わった所を見ると、彼女には椛同様、千里眼まで見る能力を持っている様だ。
「エミリー・・・・・・?もしかしてあの時、話した・・・・・・!?」
「・・・・・・どうやら、あの妖精が脱出する時に助けた様だな・・・・・・。」
「・・・・・・良かったです・・・・・・薫さん・・・・・・もう貴方はキリュウの言う事に従う事はないのでは・・・・・・。」
「いや・・・・・・俺は勇者のままでいる・・・・・・。」
「!?」
その言葉に早苗は絶句する。何故だ?エミリーが助けられたのに何故・・・・・・?
「俺は所詮、戦うだけのクローン・・・・・・その戦いにエミリーが巻き込まれたのだ・・・・・・故にもう会う事もない・・・・・・。」
「そんな・・・・・・それで・・・・・・それで、貴方は本当にそれで良いとお思いですか・・・・・・!?」
「・・・・・・これで良いんだ・・・・・・エミリーは心が同じだと言っていたが・・・・・・違う所は多過ぎるのだ・・・・・・彼女のおかげで俺は生きる術を見出せた・・・・・・だが、彼女を危険な目に合わせたくない・・・・・・彼女が幸せならそれでいい・・・・・・。」
「薫さん・・・・・・。」
「それに・・・・・・一つ、忠告しておく・・・・・・チルノを説得しても無駄だ・・・・・・もうあの時のチルノではない・・・・・・。」
「え?ど、どうしてですか?」
「あいつは俺達と違い、純粋に1人前の勇者になって強くなる、それだけを望んでいたのだ・・・・・・それに俺が出撃する前に・・・・・・あいつは模擬戦の頃を話していた・・・・・・その時、あいつは俺が弾幕を出さずに剣だけで戦った事に疑問を持っていた・・・・・・そしたら、俺が弾幕の出せない失敗作と言う事に気づかず、『あたいみたいな奴には弾幕を行う必要が無いんだ』、と勝手に納得した・・・・・・。」
「薫さん・・・・・・。」
「奇跡か・・・・・・俺も少しは可能性を信じるとしよう・・・・・・だが、所詮、俺とお前は敵同士・・・・・・それだけは変わらない故に次も戦場で会おう・・・・・・それから・・・・・・エミリーの事を頼む・・・・・・俺の分までな・・・・・・。」
神影は寂しそうにそう言うと、テレポート装置で瞬間移動した。それを見る事が出来ない早苗達。
「薫さん・・・・・・どうして・・・・・・。」
早苗は彼女のいた方へ歩こうとするが、足元がおぼつかず、よろめいてしまう。慌てて支える文。
「早苗さん、無理をしないで下さい・・・・・・全く、無茶にも程がありますよ・・・・・・。」
「すみません・・・・・・ですが、霊夢さん達もきっと頑張っていますし・・・・・・私も・・・・・・。」
「早苗さん・・・・・・?寝てしまいましたね・・・・・・早苗さんも何だかんだ言って私達の事を思っているんですね・・・・・・。」
「そうだね・・・・・・早苗は人一倍、思いやりがあるからそれが強さと繋がっているんだね・・・・・・。」
「私達も負けていられませんよ・・・・・・さて、それでは大妖精さん達を回収しましょうか?情報もありそうですし。」
「うん、分かった・・・・・・行こう!」
そう言い合って、にとりと文は早苗を抱えながら、遠くの大妖精と合流しようとした。
そして、朝日が立ち上り、彼女達を照らす。それが何らかの意味を持っているかは彼女達しか知らない・・・・・・
早苗達とはかけ離れている所・・・・・・そこにも朝日が昇っているがそれを見ている彼女の心は穏やかではなかった。
「御免・・・・・・小悪魔・・・・・・私が・・・・・・私が臆病だったせいで今度は貴方を・・・・・・!」
そう涙交じりに呟いているのは紅魔館のメイド、十六夜咲夜。しかし、彼女の状態は満身創痍だった。
自慢のメイド服は傷だらけ血だらけで、目も泣き続けているのか真っ赤だった。足元も何だか不安定だ。
彼女はフラフラと歩き、丘を登り切ると街が見えた・・・・・・だが・・・・・・
「なっ・・・・・・何よ・・・・・・これ・・・・・・?」
咲夜の眼に映ったのは・・・・・・・・・・・・荒れ果てた都市そのものだった・・・・・・
続く
次回:「勇者帝国と政府軍が引き起こした戦いにより、活気あって有名な都市は死の街へと変貌した。“主と同じ能力を持つクローンと戦いたくない”自らの迷いが原因で小悪魔が勇者1号に捕らわれた事にショックを受けている咲夜。自分の生きる気力を失った彼女が瓦礫の中で出会ったのは小さな命と最新鋭の武装を誇る特殊部隊。そして、慧音と霊牙は思い出す・・・・・・幻想郷を揺るがす忌々しき記憶を・・・・・・果たして、紅魔館のメイドは復活できるのか!?次回、『絶望の街 炎のさだめ』にご期待下さい!!」
キャラ紹介
「双神勇者:神影」
クローン2号で本名は「東風谷薫」。クールで、周りを冷静に捉えている。プロポーションの大半は多分、早苗。
かつて、親友のエミリーが傷ついた事により、奇跡等を信じず、現実は非常だと思っている。口癖は“弾幕しろよ。”
実はバグで能力は使えるものの、弾幕の出せない“失敗作”であり、その事を知っているのはキリュウと紅、他の勇者達だが、それを知らないAチルノからは尊敬されている。剣による戦い方を得意とし、勇者では上級の1人でキリュウに大事にされている。
第16話「儚き力は皆の為に」
「文さん・・・・・・良かった・・・・・・生き返ったなんて・・・・・・。」
懐かしき天狗を見、早苗は涙ぐんだ。死んだはずの射命丸文が生き返ったのだ、無理もない。
恐らく、大神・天照の力で慧音と一緒に生き返ったのだろう・・・・・・まさに奇跡と言い様がない。
「射命丸文・・・・・・生きていたのか・・・・・・そして、何故ここにいる?」
文を睨みながら、神影は警戒する。情報では射命丸文は犬走椛と一緒にキリュウに殺された筈だが・・・・・・
そんな神影に対し、文は肩をすくめ、苦笑しながら説明する。
「それが、自分でも分かりませんよ・・・・・・気が付いたら、幻想郷にいまして・・・・・・夢かな?と思ったのですが、目の前に何か禍々しいスキマがあるじゃないですか!紫さんとは違う雰囲気でしたので、自分は何故か生き返ったのかという事に気が付きました。そしてスキマをくぐって外の世界で約3カ月、外の世界の情報・・・・・・取り分け、北方勇者帝国の情報を探っていたのです。」
「・・・・・・ジャーナリスト魂と言う奴か・・・・・・!」
「何はともあれ、貴方が北方勇者帝国の幹部ですね?どう言う理由かは知りませんが・・・・・・」
そして、文は紅葉型の扇子を持って戦闘態勢を取る。
「うちの知り合いをここまで痛めつけた礼を・・・・・・手数料込みでお返ししますよ!」
「文さん、気を付けて下さい!神影さんは私や八坂様、諏訪子様、文さん達の能力を持っているクローンです!」
「えっ!?そうなのですか!?私が見た情報ですと、幻想郷の住人の情報を基に作り出されたT‐Jシリーズと私を死に追いやったあの頭のネジが数本ない小娘だけ思いましたが・・・・・・所で、幻想郷の住人の情報の出所は何処からでしょうか?」
「そ、それは・・・・・・。」
「私です・・・・・・。」
「「えっ!?」」
「私なのです、射命丸さん!私がZに脅されて皆の事を全て話したのが原因なのです!そのせいで椛や射命丸さんが・・・・・・。」
「まさか、にとりさんが脅されて・・・・・・いえ、Zの計画には他にも隠された訳があります・・・・・・闇の巫女です・・・・・・。」
「闇の巫女ってアリスさんが言っていた・・・・・・?神綺さんや紫さんも知っていた様な・・・・・・。」
「オイ・・・・・・。」
「兎に角、詳細は手帳に書いたのですが、残念な事に刺される前に落としてしまいまして・・・・・・。」
「・・・・・・そう言えば、霊夢さんの神社で手帳を見た様な気が・・・・・・。」
「えぇっ!?ならば、霊夢さんはその中身を見たのでは!?」
「オイ・・・・・・・・・・・・!」
「い、いえ・・・・・・あの後の霊夢さんは・・・・・・とにかく、まだ見ていません・・・・・・。」
「あやややや・・・・・・何やら、訳ありですね・・・・・・ですが、私が生き返ったからには、説明しましょう・・・・・・。」
「オイ!!」
「あや?」
怒号に振り向くとそこにはすっかり痺れを切らした様な神影がいた。どうやら、長話にウンザリした様だ。
「さっさと、弾幕しろよ。」
「ふむ・・・・・・どうやら、話は後ですね・・・・・・早苗さんはここにいて下さい・・・・・・すぐに決着を付けます!」
「いいだろう・・・・・・どうやら、やるしかないのか・・・・・・。」
「行きますよ~!」
そう言って、文は高速で神影に接近する。対する神影も高速で文に立ち向かう。
そして、高速移動する文と神影は接近戦による激しい戦いを繰り広げていた。だが・・・・・・
「な、成程・・・・・・私だけでなく、早苗さん達の能力をコピーしていたとは・・・・・・分が悪いですね・・・・・・。」
同じ高速の能力で、弾幕が出せてもかつて早苗達(風神録)の能力を多数持ち、弾幕が出ない代わりに剣による接近戦に長けた神影に文は苦戦していた。徐々に押され始めて疲労と焦りを隠せない。そして神影が口を開く。
「射命丸文・・・・・・お前は何故、生き返った・・・・・・?」
「知りませんってば・・・・・・早苗さん達が知っているそうですし・・・・・・。」
「そうではない・・・・・・何故、犬走椛を差し置いてお前だけ生き返った・・・・・・?」
「っ!どう言う事ですか・・・・・・何が言いたいのです!?」
神影の言葉に表情を変える文。そんな彼女に神影は非常の言葉を述べる。
「俺には分かる、お前達の最期の記憶が・・・・・・お前は椛と一緒に飛んで行き、椛の意向を知らずに主・Zの忠告を無視してレッドゾーンへと入った・・・・・・そしてキリュウに椛と共に殺された・・・・・・いや、その探究心と行動が椛を殺した・・・・・・。」
「っ!!!???」
それを聞いた文はショックを受けたのか絶句し、動きを止めるそれを見逃す神影ではなかった。
「遅い!」
神影の剣の柄により突きで吹き飛ばされ、壁に激突してしまう文。
「あ、文さん!?・・・・・・文さん?」
早苗がその光景に驚くが、何やら文さんの様子がおかしい。顔が真っ青で体が震えていた。
「私の・・・・・・私の探究心と行動で椛を殺してしまった・・・・・・私が椛の気持ちも考えないで無謀にも危険な所に入ってしまったから、椛が死んだ・・・・・・それなのに・・・・・・それなのに私だけが生き返るなんて!」
両手を頭に抱え、文は子供の様に泣き叫ぶ。自分の行動で大切な者を失ったばかりに
「何故です・・・・・・どうしてなのですか!?どうして私だけが生き返ったのですか!?どうして椛だけ生き返らしてくれないのですか!?私よりも椛の方が良かったのではないですか!こんなのは・・・・・・こんなのはあんまりです!あんまりじゃないですか・・・・・・ネタ欲しさに行動してしまう私は馬鹿です!愚かな天狗です!会いたい・・・・・・椛にもう一度会いたいです!!」
文の悲しみの叫びに早苗はある事に気づく。同じだ・・・・・・にとりさんと同じ感じの罪悪感・・・・・・!
「文さん・・・・・・っ!神影さん・・・・・・貴方は・・・・・・!・・・・・・?」
早苗は神影を睨むが、神影は悲しそうな瞳を早苗に見せる。
「俺もあいつと同じだった・・・・・・自分のせいで大切な者を失ってしまった罪悪感・・・・・・それが体を蝕んでいるのだ・・・・・・だからこそ、俺は思い知ったのだ・・・・・・どんなに夢や希望を抱いても現実は非常で奇跡は存在しない事を・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
それを聞いた早苗は考えた。神影さんの言う事も分かります・・・・・・大切な人を傷つけたのは誰かではなく、自分であるという罪悪感が生じる事は確かです・・・・・・でも、本当にそれでいいのですか・・・・・・自分のせいだけでそれで納得できるんですか・・・・・・?
にとりさんはZさんに脅されて、T‐Jを作り上げた・・・・・・しかし、それは河童の仲間達を守る為に仕方なくやったと思う。
文さんは自分のせいで椛さんが死んだと言っているが、何も文さんの知りたい気持ちが原因ではないと思う。
それで・・・・・・それでいいのか?その考えが早苗の頭の中で一杯になった時、神奈子様と諏訪子様との日々を思い出す。
そうだ・・・・・・皆さんは全ての責任は自分だけだと思っているんだ・・・・・・だから私は・・・・・・
何やら決心した表情の早苗は息を吸い込み・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・いい加減にしなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!」
思いっきり叫んだ。その叫びは都心部へ向かって暴走する装甲機関車の壁をビリビリと震えあがらせた。
「こっちはどうですか、レティさん?」
「駄目ね・・・・・・機械人形が見張っているわ・・・・・・。」
一方、北方勇者帝国本部では、囚われの大妖精とレティが脱出する手口を考えていた。
しかし今、自分達がいる独房は特殊な鋼鉄でできている為、弾幕でもなかなか傷一つ付かない。
その上、定期的に機械人形が大妖精達を見張っているので脱出しにくいのである。これではもうお手上げである。
だが、こんな所でもたもたしている場合ではなかった。チルノが気がかりである。
「チルノちゃん・・・・・・あの人と一緒に行動しているなんて・・・・・・一体、何があったの・・・・・・。」
「あのキリュウと言う少女に操られているのかしら・・・・・・ともかく、早くここから出ないと・・・・・・あら?」
「どうしましたか?」
「・・・・・・どうして今まで気づかなかったかしら・・・・・・通気口があるじゃないの・・・・・・。」
「で、ですが、あの通気口では流石にレティさんは・・・・・・あ・・・・・・。」
自分の口を塞ぐが時すでに遅く、見るとジト目のレティが自分を見ていたのだ。体型を気にしているから無理もない。
「・・・・・・しょうがないわね・・・・・・機械人形は私が誤魔化すから、貴方は脱出する準備を・・・・・・一刻も早くここから脱出して霊夢達に私達の事を知らせて・・・・・・音からして何やら慌てている様な気がするから。」
「は、はい・・・・・・。」
「気を付けてね・・・・・・。」
レティの言葉を聞いて大妖精は通気口を通る。通ったがいいが、何処へ向かえばよいやら・・・・・・
そう考えていると、ふと、光が見えた。そこへ向かって進んでいると出口らしきものが・・・・・・
「よっと・・・・・・ってあれ?ここ何処の部屋かな?」
「誰・・・・・・?」
「えっ・・・・・・。」
驚いて恐る恐る振り向くとそこには少女がいた。大妖精は慌てて逃げようとするが、どうやら敵ではない雰囲気を持っている。
その少女はベッドに横たわり、頭にはバンダナ、体中に包帯が痛々しそうに巻いている。そして表情はどこか切ない。
「あ、あの・・・・・・。」
「・・・・・・始めまして・・・・・・。」
「あ、始めまして・・・・・・。」
しどろもどろになる大妖精にその少女はフフッと微笑み、挨拶をする。それに同じ様に挨拶する大妖精。
「私、エミリー・・・・・・貴方は?」
「え、あの、名無しの大妖精です・・・・・・。」
「ふふっ、面白い名前ね・・・・・・。」
「あの、エミリーさんは一体・・・・・・。」
「私?・・・・・・私、実は悪い人に捕まっているの・・・・・・。」
「え!?エミリーさんもですか!?実も私も捕まっていまして・・・・・・。」
「そうなんだ・・・・・・。」
「あの、エミリーさんはどうして捕まったのですか?」
「・・・・・・私ね、訳あって一人ぼっちだったの・・・・・・だけどある時、私を孤独から助けてくれた人がいたんだ・・・・・・その人は自分が人間じゃなくてクローンであるという事に悩んでいたらしくて、何か私と同じだなと思い、話し合ったら“お前は俺が守る”って言って、他のクローンには内緒で居候させてくれた・・・・・・だけど・・・・・・。」
「クローン・・・・・・も、もしかしてキリュウと言う方では?」
「いいえ、名前は東風谷薫・・・・・・それが私の大切な友達の名前・・・・・・だけどある時、そのキリュウと言う彼女よりも高い地位を持つ者にばれてしまって、私はこの独房に閉じ込められ、彼女は自分の責任だと感じているらしくてそれっきり会ってないの・・・・・・。」
「そうだったのですか・・・・・・(東風谷・・・・・・?聞いた事のある名前だけど・・・・・・?)」
寂しそうに言うエミリーに大妖精は同情する。なんだか悲しそうな人だ・・・・・・
その悲しみの表情がチルノと重なってしまい、慌てて振り払って辺りを見回す。
「?どうしたの?」
「私はここから逃げなくてはなりません・・・・・・友達のチルノちゃんがそのキリュウと言う人の言いなりになっているのです・・・・・・多分、私達を人質にしているからだと思います・・・・・・ですから、早く霊夢さんにその事を・・・・・・!」
「!(同じだ・・・・・・私の為にキリュウに逆らえない薫と・・・・・・)大妖精さん・・・・・・私も手伝っていい?」
「えっ!?いいんですか!?」
「実は、定期的にあのロボットが1体、私の世話や状態などを調べる為に入って来る事になっている・・・・・・。」
「そこを突いて脱出するのですね・・・・・・。」
「幸い、このベッドの下にあるモップに気付かなかったとすると、X線とかで透視できない様になっているから大丈夫よ。後は・・・・・・っ!来た!早くベッドの下に隠れて!」
「は、はい!」
エミリーにそう言われて大妖精は慌ててベッドの下に潜り込む。それと同時に機械人形が1体、入り込んで来た。
どうやら、様子見なのか機械人形はエミリーの方に近づき、センサーでエミリーの脈拍数等をチェックする。
少し心拍数が上がっているが、他は異常無しなので戻ろうとするとセンサーに何やら、別の動きを捕らえたその時!
「でやぁぁぁぁぁぁっ!!」
何とベッドの下から大妖精が飛び出したのだ!手にはエミリーが隠していたモップを持ってそれを一気に振り下ろす!
しかし、大妖精は中ボスで相手は量産型とは言え、機械人形。奇襲したもののすぐに片手でモップを掴んでしまう。
「くっ・・・・・・!」
「頭部・・・・・・取り分け、目を狙って!そうすれば、一時は脱出できる時間が出来るわ!」
「は、はい!」
モップを掴まれた事にたじろぐ大妖精だったが、エミリーの指示通りに頭部目掛けて弾幕を放つ。
すると運良く、機械人形の弱点の一つ、最も耐久度が低い目のセンサーの破壊に成功する。
「さ、エミリーさん!掴まって下さい!」
機械人形が後ずさると同時に大妖精はエミリーをおんぶして猛スピードで飛び立ち、部屋を出る。それと同時にブザーが
「えぇっ!?もう警報が・・・・・・!」
「多分、さっきの奴ね。私達が逃げた事をデータにして送信したかも・・・・・・そう言えば、他に捕まった人は?」
「レティさんがいますが・・・・・・この様子では救出は無理の様です・・・・・・。」
「そうね・・・・・・私も薫を説得したいけど・・・・・・私達が逃げた事でその人が危険な目にあうかもしれない・・・・・・となると、誰かにこの事を知らせて、何とかしなくては・・・・・・私の知り合いと言えば彼等ね・・・・・・今はここから出る事だけを考えましょう!」
「はい!・・・・・・っ!?」
そう返事をした瞬間、何と大妖精達の目の前の空間に一筋の線が引かれ、スキマが現れ、そこから女性が現れたのだ!
「スキマ・・・・・・けど、紫さんじゃない・・・・・・!」
大妖精は知らないが、彼女は勇者8号・四由美。妖夢に倒されて本部にやって来たのだった。
「あら・・・・・・?」「「っ!!??」」
四由美に発見され、固まる大妖精とエミリー。しかし、四由美は少し考えた後・・・・・・
「・・・・・・どうやら、ここから逃げたいのね~?ささ、遠慮せずにどうぞ~。」
そう言って四由美はスキマを弄って本部の外行きのスキマを作り出す。その光景にキョトンとなる2人。
「え・・・・・・何で・・・・・・?」
「あらあら~、貴方が大妖精ね?急がないと皆さんがここにも来ますよ~?後、一ついい?」
「???」
「妖夢ちゃんや博麗霊夢さん達に伝言、『キリュウちゃんは頑固だから止めるなら本気で止めてあげて』ってね♪」
「は、はぁ・・・・・・?」
ちょっと半信半疑ながらも味方っぽいのでスキマに恐る恐る入る大妖精とエミリー。それを見て、四由美は呟く。
「・・・・・・後は他の皆・・・・・・取り分け、薫ちゃんやチルノちゃんに説明ね・・・・・・大変だわ~。」
「キリュウッ!単刀直入に言っておくが、この本部にだけ何故、監視カメラとか付いていないのだ!」
数分後、大妖精達を逃がした帝国本部の会議室でザリクが忌々しそうにキリュウに言う。対するキリュウも言い返す。
「仕方ないじゃろう!ぬしらの基地とかに設置したら案の定、足りなくなっての・・・・・・まぁ、誰かさんのせいでパーじゃが?」
「ぐっ・・・・・・減らず口を・・・・・・それで?逃げたのはあの⑨妖精の仲間か?」
「報告によれば、1年前に本部に忍び込んだあの小娘も同行していたぞ。やっぱりじゃな♪」
「なっ・・・・・・!?エミリーが!?」
キリュウの報告に驚いたのはレグリンだった。あの時、自分の弾幕で傷ついた少女が・・・・・・
「やはり、あやつはスパイだったのじゃな・・・・・・これで奴を殺す口実はできたもんじゃ♪」
「ま、待て、キリュウ!第一、彼女は2号の知り合いだぞ!」
「ふ~ん・・・・・・それがどうかしたのかえ、レグリン?あやつの知り合いはわしらだけで十分じゃぞ?」
「もし、彼女に何かあったらまた2号が・・・・・・。」
「ほぉ、彼女を殺せば、今度こそあやつはわしを殺すのか?だったら、楽しみよのぉ、ククク・・・・・・。」
「っ!今何と言ったキリュウ・・・・・・貴様は奴に殺される事を楽しんでいるのか・・・・・・!?」
キリュウの言葉にザリク達はたじろぐ。そんな彼女達に対し、キリュウは不気味に笑う。
「わしも楽しみにしていたのじゃ・・・・・・殺される覚悟を・・・・・・そういうスリルを味わうと・・・・・・まさに快感じゃな♪」
「むむむ・・・・・・そう言うの、ハロウィン向きですね・・・・・・!」
「何とでも言え・・・・・・まぁわしはあ奴等を殺す事は考えておらんがな。何せ、あの2人はわしのお気に入りじゃから。」
「キリュウ、あの2人だけひいきしてずる~い!」
「スィガ、やかましっ!1号、2号はわしの娘みたいなものじゃぞ。ともかく、冬の妖怪がいる以上、あやつらが再び、ここにやって来る可能性は高くなったのじゃ・・・・・・んで、四由美、わしとの約束はバッチリかの?」
「勿論よ♪けど、妖夢ちゃんも強くなっているから、油断は禁物よ~?」
「まぁ良い、外部は2人に任せて、わしらは本部の防衛だけに努めれば良い。幸い、闇の巫女やAチルノもおるし。」
「・・・・・・その事を⑨に言ったか・・・・・・いや、この様子だと言っていないな・・・・・・。」
「当り前じゃ、わしの一番弟子じゃがな・・・・・・では、ぬしらもさっさと備えをせい。これにて解散じゃ。」
その言葉にバラバラと解散する勇者達。そんな中、1人だけ残っている者がいた。レグリンである。
「(・・・・・・これで・・・・・・これでいいのか・・・・・・?やはり、もう1人の鈴仙の言う通り、この戦いは正義も悪も関係ないというのか・・・・・・?この戦いで何を得られるというのだ・・・・・・?)」
「6号・・・・・・。」
振り向くと、そこには勇者5号・天玖だった。天子に壊されたバイザーは新調している。
「5号・・・・・・この戦いは激しくなるな・・・・・・だが、この戦いに意味はあるのか?」
「許して下さい・・・・・・旧式の天人が要塞を破壊する力を持っていたとは知りませんでした・・・・・・。」
「良いんだ・・・・・・彼女等も守るべきものの為に必死だからな・・・・・・私も彼女等と戦う覚悟が必要だな・・・・・・。」
そう言って、天玖に背を向けて去るレグリン。それを見ながら、天玖は溜息をついて呟く。
「正義にこだわるあの人には心底、ウンザリさせます・・・・・・。(ですが、私を打ち破ったあの天人の技・・・・・・かつてキリュウの書籍から見た、『伝説の夢想技』だとしたら・・・・・・紅とて、完全ではありません・・・・・・もし、彼女等と戦えば最低、ダメージを与える事が出来ます・・・・・・そしてどっちが勝ってもそのトドメは私が・・・・・・ふふふ・・・・・・我ながら完璧な計画ですね・・・・・・。)」
早苗の突然の大声に神影、文、にとりは驚いて彼女を見る。早苗は涙ぐみながらまくし立てる。
「皆さん、どうかしていますよ・・・・・・自分のせいだ、自分のせいだ、って思っているなんて・・・・・・皆さんは自らの罪を抱えているでしょうが、なら、もう2度と起こらない為に行動したらどうですか!そう言うのは逃げているのと同じなのです!」
そう言って、早苗はにとりの方を見る。
「にとりさんは自分が情報提供したから皆が死んだと思っておりますが、八坂様を殺したのは貴方ではなくてT‐Jです!」
「早苗・・・・・・。」
「私も八坂様や諏訪子様が死んだのは正直、悲しいです・・・・・・ですが、それをにとりさんのせいだとは思っていません。」
そして今度は文の方を見る。
「文さんもです・・・・・・椛さんが死んだのは貴方のせいではないのです・・・・・・何でも一人で抱え込まないで下さい・・・・・・。」
「・・・・・・ですが・・・・・・私の好奇心のせいで、椛が・・・・・・。」
「文さんの好奇心は記者として素晴らしいと思います・・・私はそんな文さんが好きです・・・椛さんもそう思っているのです。」
最後に早苗は神影の方を見る。
「・・・・・・神影さん・・・・・・本当に彼女の事を大切に思うのなら、何故、行かないのです?少しは彼女の話を聞く勇気はないのですか?」
「っ・・・・・・俺は・・・・・・。」
「言った筈です・・・・・・私は絶対に諦めません!どんなに現実が非常だろうと、最後まで諦めません!そしてキリュウさんの計画を止めて、2つの世界を救って見せます!霊夢さんや魔理沙さん達と一緒に!」
そう言って、早苗は怪我を物ともせず、折れた椛の剣を構えて強い意志を込めて言う。
「その為にも・・・・・・神影さん・・・・・・いえ、薫さん・・・・・・貴方を倒してこの装甲機関車を止めます!!」
そう言ったその時、早苗の体が光り出し、何処からかスペルカードが現れた。その光景に神影は驚いた。
「な、何だ、あのスペルカードは・・・・・・!?一体、どこから・・・・・・!?」
一方の早苗も突然の事態に驚いていた。慌てて浮いているスペルカードを手にとって良く見る。
「!これは・・・・・・!?・・・・・・一か八かやって見るしかないですね・・・・・・!」
そして躊躇わず早苗はスペルカードを発動させようとするが、文が慌てて止めようとする。
「早苗さん、駄目です!そんな体で見た事もないスペルを発動するのは危険そのものです!」
「大丈夫です、文さん・・・・・・私は信じます・・・・・・このスペルカードに全てを・・・・・・。」
「そんな・・・・・・流石に奇跡を起こすのは不可能です!精々、1%以下ですよ!」
「構いません・・・・・・99.9%以上が不可能でも・・・・・・私は1%以下の希望に賭けて見ます!」
そう言って、早苗は・・・・・・重症の体のまま、スペルを発動した。その時、奇跡は起きた・・・・・・!
「スペル発動!・・・・・・“夢想風神蓮”!!」
早苗がスペルを発動した瞬間、早苗の前方から神影の方へ何やら色鮮やかな線が飛び出す。それにそって走り出す。
「何っ!?」
「行きます!」
そう言って、早苗は線に沿って一気に神影に向かって高速で突っ込んでいく。神影も慌てて剣を構える。
「(突っ込んで来るか・・・・・・ならば、この剣に全てを込めて叩き斬るのみ!)」
そう思い、剣を構えて早苗の動きに注目したその時、何と早苗が赤と青、黄、紫、白に分かれたのだ。
「なっ!?!?(分身だと!?いや、幻か!?となると、どちらかが本物・・・・・・どれなんだ!?)」
5つに分かれた早苗に神影は動揺した。流石の彼女もこの光景には冷静に判断する事は出来ないのは無理もない。
「「「「「はぁっ!!」」」」」
その隙を付いて、5人の早苗達が弾幕や接近戦で攻撃する。驚く事にどれも実体の様だ。
そして、その攻撃の後、頭上から本物の早苗が折れた椛の剣を持って一気に振り下ろしたのだ。
「なっ・・・・・・!?」
「でやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
早苗が放った斬撃は分身で怯んだ神影に一撃をもたらしたのだ。
ピチュチュチュ―――ン!!!
そして、その攻撃は床をも破壊し、その下にある車軸を切り裂いた。たちまち、装甲機関車はバランスを失う。
「・・・・・・間に合いました・・・・・・。」
早苗がそう言った直後、倒れてしまう。どうやら、あの体でスペルを発動したのだ。問題は徐々に傾き始める機関車。
「うわわっ!装甲機関車が倒れるぞ~!」
「早苗さん、掴まって下さい!」
慌てて、文とにとりは早苗を抱えて脱出する。その直後、装甲機関車は脱線し、大爆発を起こした。
巨大な煙を出して炎上する装甲機関車。都心部まであと3時間位。確実に間に合ったのだった。
早苗を介抱しているにとりと文はそれを見ていた。もし、早苗がスペルを発動しなかったら今頃は・・・・・・
その時、煙の中から何かが飛び出した。驚く事にボロボロの状態の神影だった。
「薫さん・・・・・・!」
「くっ・・・・・・俺の剣があと少し早く防御すれば、完全に防げたものを・・・・・・だが、あのスペルは例え、完全に防いでいても無傷では済まない程の威力だった・・・・・・東風谷早苗・・・・・・これがお前の信じる奇跡というものなのか・・・・・・?」
「・・・・・・はい、そうだと思います・・・・・・どんな辛い事も信じればいつかは奇跡が起こるというのです・・・・・・。」
「そうか・・・・・・む?」
その時、神影は何かを察知したのか明後日の方を向いていた。見るとゴマ粒みたいなのが見えるが・・・・・・?
「あれは、チルノの妖精と・・・・・・っ!!・・・・・・エミリー・・・・・・エミリーなのか・・・・・・!?」
神影の表情が変わった所を見ると、彼女には椛同様、千里眼まで見る能力を持っている様だ。
「エミリー・・・・・・?もしかしてあの時、話した・・・・・・!?」
「・・・・・・どうやら、あの妖精が脱出する時に助けた様だな・・・・・・。」
「・・・・・・良かったです・・・・・・薫さん・・・・・・もう貴方はキリュウの言う事に従う事はないのでは・・・・・・。」
「いや・・・・・・俺は勇者のままでいる・・・・・・。」
「!?」
その言葉に早苗は絶句する。何故だ?エミリーが助けられたのに何故・・・・・・?
「俺は所詮、戦うだけのクローン・・・・・・その戦いにエミリーが巻き込まれたのだ・・・・・・故にもう会う事もない・・・・・・。」
「そんな・・・・・・それで・・・・・・それで、貴方は本当にそれで良いとお思いですか・・・・・・!?」
「・・・・・・これで良いんだ・・・・・・エミリーは心が同じだと言っていたが・・・・・・違う所は多過ぎるのだ・・・・・・彼女のおかげで俺は生きる術を見出せた・・・・・・だが、彼女を危険な目に合わせたくない・・・・・・彼女が幸せならそれでいい・・・・・・。」
「薫さん・・・・・・。」
「それに・・・・・・一つ、忠告しておく・・・・・・チルノを説得しても無駄だ・・・・・・もうあの時のチルノではない・・・・・・。」
「え?ど、どうしてですか?」
「あいつは俺達と違い、純粋に1人前の勇者になって強くなる、それだけを望んでいたのだ・・・・・・それに俺が出撃する前に・・・・・・あいつは模擬戦の頃を話していた・・・・・・その時、あいつは俺が弾幕を出さずに剣だけで戦った事に疑問を持っていた・・・・・・そしたら、俺が弾幕の出せない失敗作と言う事に気づかず、『あたいみたいな奴には弾幕を行う必要が無いんだ』、と勝手に納得した・・・・・・。」
「薫さん・・・・・・。」
「奇跡か・・・・・・俺も少しは可能性を信じるとしよう・・・・・・だが、所詮、俺とお前は敵同士・・・・・・それだけは変わらない故に次も戦場で会おう・・・・・・それから・・・・・・エミリーの事を頼む・・・・・・俺の分までな・・・・・・。」
神影は寂しそうにそう言うと、テレポート装置で瞬間移動した。それを見る事が出来ない早苗達。
「薫さん・・・・・・どうして・・・・・・。」
早苗は彼女のいた方へ歩こうとするが、足元がおぼつかず、よろめいてしまう。慌てて支える文。
「早苗さん、無理をしないで下さい・・・・・・全く、無茶にも程がありますよ・・・・・・。」
「すみません・・・・・・ですが、霊夢さん達もきっと頑張っていますし・・・・・・私も・・・・・・。」
「早苗さん・・・・・・?寝てしまいましたね・・・・・・早苗さんも何だかんだ言って私達の事を思っているんですね・・・・・・。」
「そうだね・・・・・・早苗は人一倍、思いやりがあるからそれが強さと繋がっているんだね・・・・・・。」
「私達も負けていられませんよ・・・・・・さて、それでは大妖精さん達を回収しましょうか?情報もありそうですし。」
「うん、分かった・・・・・・行こう!」
そう言い合って、にとりと文は早苗を抱えながら、遠くの大妖精と合流しようとした。
そして、朝日が立ち上り、彼女達を照らす。それが何らかの意味を持っているかは彼女達しか知らない・・・・・・
早苗達とはかけ離れている所・・・・・・そこにも朝日が昇っているがそれを見ている彼女の心は穏やかではなかった。
「御免・・・・・・小悪魔・・・・・・私が・・・・・・私が臆病だったせいで今度は貴方を・・・・・・!」
そう涙交じりに呟いているのは紅魔館のメイド、十六夜咲夜。しかし、彼女の状態は満身創痍だった。
自慢のメイド服は傷だらけ血だらけで、目も泣き続けているのか真っ赤だった。足元も何だか不安定だ。
彼女はフラフラと歩き、丘を登り切ると街が見えた・・・・・・だが・・・・・・
「なっ・・・・・・何よ・・・・・・これ・・・・・・?」
咲夜の眼に映ったのは・・・・・・・・・・・・荒れ果てた都市そのものだった・・・・・・
続く
次回:「勇者帝国と政府軍が引き起こした戦いにより、活気あって有名な都市は死の街へと変貌した。“主と同じ能力を持つクローンと戦いたくない”自らの迷いが原因で小悪魔が勇者1号に捕らわれた事にショックを受けている咲夜。自分の生きる気力を失った彼女が瓦礫の中で出会ったのは小さな命と最新鋭の武装を誇る特殊部隊。そして、慧音と霊牙は思い出す・・・・・・幻想郷を揺るがす忌々しき記憶を・・・・・・果たして、紅魔館のメイドは復活できるのか!?次回、『絶望の街 炎のさだめ』にご期待下さい!!」
キャラ紹介
「双神勇者:神影」
クローン2号で本名は「東風谷薫」。クールで、周りを冷静に捉えている。プロポーションの大半は多分、早苗。
かつて、親友のエミリーが傷ついた事により、奇跡等を信じず、現実は非常だと思っている。口癖は“弾幕しろよ。”
実はバグで能力は使えるものの、弾幕の出せない“失敗作”であり、その事を知っているのはキリュウと紅、他の勇者達だが、それを知らないAチルノからは尊敬されている。剣による戦い方を得意とし、勇者では上級の1人でキリュウに大事にされている。