Coolier - 新生・東方創想話

東方X15

2011/03/25 07:56:00
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東方X戦記



第15話「暴走!誰かの為に」
「貴方が・・・・・・勇者・・・・・・?」
謎の装甲機関車の上から現れた勇者らしき人物に早苗達は警戒した。
相手は自分と親しみのある者達の能力を持ったクローン。油断は決してできない、と・・・・・・!
「貴方は一体、誰ですか?何故、外の世界の者達に酷い事をするんですか?それとその機関車みたいなのは・・・・・・?」
色々と質問を出す早苗に対し、勇者は・・・・・・
「・・・・・・悪いが、少し黙ってくれないか?」
「っ!」
自分の質問を冷たく一蹴する勇者に早苗は戦慄した。これはまさに冷酷そうな人(?)だ・・・・・・!
「あ、貴方は一体、誰ですか・・・・・・!?」
「また、それか・・・・・・他の言葉を知らないのか?まぁ、いい・・・・・・俺の名は、双神勇者・神影だ・・・・・・」
「双神勇者・神影・・・・・・?あと一人称が“俺”って・・・・・・?」
「別に構わないだろう?幻想郷の中でも自分の事を“僕”って言っている奴もいるし。」
「は、はぁ・・・・・・神影さんは一体、何をしに・・・・・・?」
「俺が敵であるお前等に言うと思っているのか?」
「そ、それは・・・・・・!」
「・・・・・・まぁ、ここで出会ったのも何かの縁だな・・・・・・一応、話してやるか、止められないと思うしな・・・・・・俺達の部隊は俺達、勇者の総帥であるキリュウにある任務を頼まれて、行く事になった。その内容は・・・・・・こいつをこの地区の都心部にぶつける事だ。」
「「!?!?」」
装甲機関車に手を置きながら説明する神影に早苗達は絶句した。装甲機関車を都心部にぶつける?
「な、何故・・・・・・?」
「キリュウの命令だって言っているだろう?ここから約13時間後にこの地区の都心部がある。そこの市長が俺達の指示・・・まぁ、「エネルギー類を寄越せ」並みか?・・・を拒否したからだ。そこに多くの爆発物を詰め込んで、可燃性の高い燃料を取り込んだこいつを都市部にぶつけるのが俺達の部隊の任務だ・・・・・・被害はおよそ、そこの街や他の街2,3個が吹っ飛ぶ程度だと思う。」
淡々と説明する神影に噛み付いて来た者がいた。にとりだった。
「そんな・・・・・・そんなのひどいよ!そんな理由で街をふっ飛ばすなんて・・・・・・!」
神影は目を閉じてにとりの抗議を聞いているかと思いきや・・・・・・。
「河童・・・・・・T-Jを造ったあんたに・・・・・・俺達の事で文句を言う資格はない・・・・・・。」
神影の冷たい一言に押し黙るにとり。彼女の顔が真っ青だ。自分の“罪”を指摘されて1年前の事を思い出しているに違いない。
「に、にとりさんのせいじゃありません・・・・・・。神影さん!神影さんはどうしてキリュウさんの言う事を聞くのですか!?」
「俺だって、あんな奴の言う事なんか聞きたくない・・・・・・聞きたくないのだが、仕方ないんだ・・・・・・!」
早苗の詰問に神影はそう苦渋の表情で呟いた。何やら思い出したくない過去があるのだろうか?
「・・・・・・とにかく、だ。俺はこのままこいつを前進させる。邪魔するならお前等とて容赦はしない・・・・・・。」
そう言って、装甲機関車を前進させる神影。
「ま、待って下さい!」
慌てて、にとりと一緒に装甲機関車に飛び乗る早苗。あんな物をそのままにしておいたら街が吹っ飛ばされ、多くの罪なき者達の命が失ってしまう・・・・・・それだけは決して避けなければならない・・・・・・!そんな早苗の覚悟を予想したのか表情を変えずに神影は呟く。
「やはり、来たか・・・・・・さっき、“弾幕しろよ”と言ったが、本当にこいつの暴走を止める為に来るとはな・・・・・・。東風谷早苗・・・・・・あの巫女が奇跡の能力を酷使する以上、ここに来る事は確実、俺も本気で弾幕する必要があるな・・・・・・。」
そう呟き、神影は手袋の付いた左手で首にかけている星型のペンダントをなでた。今頃、あいつは大丈夫だろうか・・・・・・?



「あ、ウネウネのお姉ちゃん!あと、えーと・・・犬のお姉ちゃん!」
「ウ、ウネウネ・・・・・・。」
「いや、私は犬ではなくて白狼だけど・・・・・・。」
一方、謎の世界で衣玖と椛はこの世界の調査をレミリア達に任せ、自分達は謎の少女の監視をする事になっていた。
「私は衣玖と申します・・・・・・こちらは白狼の椛さんです。」
「ふ~ん、宜しくね♪それでコウモリのお姉ちゃんやお花のお姉ちゃんは?」
「レミリアさんと幽香さん達はこの世界を調べにグループごとに出掛けています。それとすみませんが、貴方のお名前は?」
「コウ!コウって言うの!宜しくね、衣玖お姉ちゃん、椛お姉ちゃん♪」
「こちらこそ、宜しくお願いします・・・・・・。」
「よ、宜しく・・・・・・。」
そう言い合ってお辞儀する衣玖、椛、少女・・・コウ。衣玖達はコウから何らかの情報を聞き出さなくてはならないのである。

一方、レミリア、フラン、美鈴は屋敷で地下への入り口を発見したので降りる事に。
「何か、長いですね・・・・・・。」
「そう?私の部屋への階段みたいだけど?」
「さて、鬼が出るか蛇が出るか・・・・・・。」
警戒しつつレミリア達は階段の終わりにある扉を開けると、何と多くの武器が部屋中に積んであった。
「すご~い!ねぇねぇお姉様、あれな~に?」
「どうやら武器庫みたいね・・・・・・まだ新しそうだけど・・・・・・まぁ正直、書庫の方が良かったのに・・・・・・戻るわよ、フラン。」
「は~い♪あれ、美鈴どうしたの?」
見ると、美鈴は多くの武器の中から何かを取りだした。良く見るとそれは棒の様だが・・・・・・。
「あ、いえ・・・・・・この三節根、何となくカッコいいな~って思いまして・・・・・・。」
「本当に好きそうね、三節根・・・・・・。」

魅魔、幽香、映姫、神奈子、諏訪子の5人は屋敷よりだいぶ離れた所に大きな建物を発見し、中へと入った。
中には多くの棚があり、その中には大量の本がギッシリ。どうやら、図書館の様だ。
「それにしても凄い量の本だね~紅魔館よりは多くないかい?」
「そうですね。本は多くの知識を宿っているという言葉を聞いた事がありますが・・・・・・おや?」
「どうしたの、閻魔?」
「これを見てください・・・・・・。」
映姫が皆に見せた本の中身は真っ白だった。どのページにも文字らしい物が見当たらない。
「どうなってるんだ?なんでページが真っ白の本が・・・・・・?」
「神奈子~こっちの棚の本も全部、真っ白だったよ~。」
諏訪子もとある棚の本を多く引っ張り出してみたが、やはり、どの本も全てのページが真っ白だった。
「どう言う事なの?真っ白な本が多くある図書館なんて聞いた事もない・・・・・・。」
「ひょっとしたら・・・・・・。」
「どうかしましたか、魅魔さん?」
映姫の問いに魅魔は少し考えたが、やがて意を決したかのようにこう言った。
「この世界はもしかしたら・・・・・・歴史があまりない・・・・・・仮初めの世界かもしれないねぇ・・・・・・。」

衣玖と椛はコウと一緒に話し合っていた。他愛のないお喋りみたいなものなので情報らしき情報がないが。
「所で、コウさん・・・・・・一つ、聞きたい事があるのですが・・・・・・?」
「な~に?」
「・・・・・・この世界では一体、何が起こっているんです?他の皆さん方はどうしたのですか?」
「・・・・・・やっぱり、この世界に私だけがいると怪しく思っちゃうんだね・・・・・・私がお姉ちゃん達を騙していると・・・・・・。」
「い、いえ・・・・・・あの、コウさん・・・・・・私の話を最後まで聞いてください・・・・・・。」
「い、衣玖?まさか・・・・・・!」
「お姉ちゃん?」
「私は・・・・・・いえ、私達は既に死んでいるのです・・・・・・。」
そして衣玖はコウに自分達の事を全て話した。R島の事、Zに騙され、T‐Jと戦う羽目になった事、自分以外がそのT-Jに殺された事、そして自分はT-Jを倒して、自殺した事を・・・・・・。コウは驚きながらも最後まで聞いてくれた。
「じゃあ、お姉ちゃん達は幽霊みたいなもの?」
「いえ、何と言うか、魂だけの状態になっているのです・・・・・・。」
「そうなんだ・・・・・・。」
「ですから、私達は貴方が期待している選ばれた者とかそういう類のものでは・・・・・・。」
「私の世界はもっと多くの人間がいて、平和に溢れていたんだ・・・・・・。」
「えっ?」
コウの言葉に衣玖達は驚いた。彼女は寂しそうな表情を見せながら話す。
「私達はいつも平和溢れる生活をして、幸せの毎日を送っていた・・・・・・私も家族はいないけど、近所の人達と楽しい事をしていたの・・・・・・だけどある時、空から変な物が現れて、そしたら気が付いたら皆、消えちゃった・・・・・・。」
「コウさん・・・・・・。」
「私ね、お姉ちゃんの話を聞いて、罰あたりだと思うけどやっぱりお姉ちゃん達が召喚の洞に現れて良かったと思うな。」
「えっ?それは一体・・・・・・?」
「きっと神様が悪い人に騙されて死んじゃったお姉ちゃん達を可哀そうだと思い、召喚の洞に呼び寄せたと思う・・・・・・きっと、私達の世界を救うために・・・・・・お姉ちゃん達に第2の人生を送らせる為だと思うな♪」
「神様が・・・・・・私達に第2の人生を・・・・・・?(と言うより、神様である方々もいるんですが・・・・・・)」
コウの話を聞いて少し戸惑った様子になる衣玖。その無邪気な笑顔だと本当らしくて困るのだが・・・・・・
そう考えているとふと、空が暗くなった。その時、衣玖は空気の乱れを感知し、空を見上げる。
「い、衣玖!?どうしたの?」
「何か・・・・・・何か来ます!」
「えっ!?」
「っ!!?」
衣玖が叫ぶや否や、空を覆う雲から・・・・・・何やら巨大な扉が降りて来たのだ。とてつもなく巨大である。
装飾は黄金色で何やら暗い雰囲気を持ち、何やら只ならぬ雰囲気を持っていた。
ふと、衣玖はコウの方を見る。見ると彼女は震えて縮まっているのだ。まさか・・・・・・
「コウさん・・・・・・?」
「やって来たんだ・・・・・・あれよ・・・・・・あのデカイのが現れ始めた時から皆が・・・・・・!」
やっぱりそうだ。あの巨大な扉がこの世界の異変の原因か・・・・・・一刻も早く何とかせねば・・・・・・
「椛さん、行きましょう!」
「わ、分かった!神奈子さん達もあれに向かっていると思うから急いだ方が良いかも!」
「お、お姉ちゃん!」
椛と共にあの扉の方へ行こうとすると、コウに呼び止められる。衣玖は振り向き、彼女を安心させる。
「大丈夫です。もしかすると、私達はこの異変を解決する為にここにやって来たかもしれませんし・・・・・・。」
「お姉ちゃん・・・・・・。」
「必ず、この世界の平和を取り戻した後に戻って来ます・・・・・・ですから心配しないで下さい・・・・・・。」
「・・・・・・絶対に・・・・・・絶対に帰って来てね!もう一人ぼっちは嫌だから!絶対だからね!」
涙ながらに言うコウに衣玖は確信した。やはり、この少女は孤独である故に私達が来る事を望んでいたのだ。
「分かりました・・・・・・約束です!」
そう言って、衣玖は椛と共に飛んで現場に向かう。その後ろ姿をコウは見送るしかできなかった・・・・・・。



一方の霊夢はハクレイと修行中であり、現在はちょっと早いが夕食中でもある。この修行を開始してはや、1日目が過ぎた。
自分の弾幕はギリギリながらもハクレイには避けられるし、ハクレイの弾幕にはギリギリしか避けれないし・・・・・・。
そう考えながら握り飯を食べている霊夢。その為、2,3粒ご飯粒が口元に付いている事さえも気が付いていない。
「・・・・・・霊夢・・・・・・。」
「ん?・・・・・・あ・・・・・・。」
ハクレイの声に反応した霊夢は一時、考えを中断するとハクレイが自分の口元に付いているご飯粒を取っていた。
「どうやら考え事しているらしいね・・・・・・何も夕食位、考えなくても~。」
「な、何でそんな事を!?」
「普通、ご飯粒が付いている事に気づかない程、考えているなんてあいつ以来だよ。」
「う、うるさいわね・・・・・・。」
ハクレイに指摘され、赤面する霊夢。ふと、彼女の言葉にハッと気がつく。
「そう言えば、あんたの言う“あいつ”って誰?私の過去の姿だから昔の魔理沙?」
「!・・・・・・そ、そうなの!あの時は魔理沙ったら新しい魔方陣とか作る事を考えているらしくて~。ははは・・・・・・。」
「・・・・・・あれ?昔、魔理沙にご馳走する事あったっけ?今は時折、やっているけど・・・・・・?」
「!!ほ、ほら!昔の事だから覚えていないでしょう!?魔理沙も昔から変わったし!」
「あ~・・・・・・あんたは私の昔の姿だからそう言う事も覚えているのね・・・・・・。」
「そうそう!ははは・・・・・・!」
「???」
そう陽気に笑うハクレイ。しかし、彼女の本心は決して笑っていなかった。
「(流石は霊夢ね・・・・・・だけど、今あの事は言ってはいけない・・・・・・今言ったら・・・・・・!)」
果たして、ハクレイが言う“あいつ”とは?そして、その事を隠す訳は・・・?



「はわわわわわぁぁぁぁぁっ!!」
情けない声を上げながら、装甲機関車にしがみ付く早苗。後ろには同じ状態でにとりもしがみ付いている。
それもそうだ。何せ、装甲機関車は猛スピードで走っているのだ。その為、襲い掛かる空気の圧力も凄まじかった。
早苗が(しがみ付きながら)調べた所、ここから目的地の都心部まで着くのには約39時間かかりそうらしい。
それを13時間で向かうこの装甲機関車は通常の電車の3倍のスピードで走っているのだ。
「にとりさ~ん、大丈夫ですか~!?」
「何とか~!」
「取り敢えず、機関室へ向かいましょう~!早くしないと・・・・・・!」
そう叫び、早苗は振り落とされない様にしながらも前進する。機関室へ向かえば止められる手段があるに違いない。
すると、早苗達の前方の屋根が開き、中から機械人形が現れて早苗達へ前進していた。
早苗達は気が付いていないが、この機械人形は上級クラスの特殊型であり、性能も高性能である。
それは神影と後1人の勇者が上級勇者である為で、戦況によっては様々な武装に変更できる仕組みになっている。現在は脚部に特殊吸盤付きの4脚で前進し、背中にはサブアームがあるが、武装には装甲機関車に飛び火させないのか大型の剣等を数本持っていた。
「機関車を止めさせない為でしょうか・・・・・・?」
「早苗、どうする?」
「弾幕では余り効果は薄い様ですが・・・・・・相手は機関車を爆発させない為か飛び道具を持っていない模様です。」
だから、と早苗は背中の剣を取り出す。かつて、椛が死ぬ間際にお守り代わりとして早苗に託した剣なのだ。
「(椛さん、力を貸して下さい・・・・・・)接近戦で対処します!・・・・・・おっとっと・・・・・・!」
「早苗~・・・・・・。」
バシッと決めて見たものの、バランスを崩しそうになって慌てる早苗。そんな彼女を心配そうに見る早苗。
そんな2人の状態とは関係なしに機械人形達は早苗達に襲い掛かって来た。



まず、先頭の機械人形が早苗に近づき、剣を数本振り下ろす。それに対し、片手で機関車にしがみ付いて片手の剣で受け止める。
そして、剣の押し合いで早苗が押されていると思いきや、早苗は剣を下にずらして機械人形の剣の下の方へ潜り込む。
相手はバランス良く数本の剣を持っているに対し、こちらはしがみ付きながら片手で戦っているのだ。押し合いでは勝てないだろう。
剣のバランスを崩した機械人形に早苗の剣が一閃!狙いは胴体等ではなく、機関車に付いている特殊吸盤付きの4脚の2本だった。
更に早苗は相手の隙を突いて残りの脚を斬る。4脚も失った機械人形は機関車から落ちてしまう。ひとまずは安心だろう。
「(とは言え、こっちは空気の圧力で進みにくい・・・・・・何とかして、中へ入らないといけません・・・・・・。)」
そう考えていると、残りの機械人形が早苗に近づきはじめる。恐らく、こちらの状況を理解しているだろう。
一時、後退しようかと考えたと思ったその時、自分の後ろからミサイルが飛び、機械人形の数体を倒した。
「にとりさん!?」
「ギ、ギリギリだった・・・・・・!」
驚いて後ろを振り返ると冷や汗を流しているにとりがいた。自分のミサイル自分達ごと吹っ飛んでしまう恐れがあるだろう。
「にとりさんのミサイルの効果を見る限り、どうやら固い装甲に覆われている様ですね・・・・・・。」
「じゃあ、安全な空からの弾幕で今の内に爆発させるのは難しいのか・・・・・・。」
ふと、よく目を凝らして見ると、滑車と滑車の間にドアらしき物を発見する。あれはもしかすると・・・・・・
「外からは無理ですが、中からの攻撃は意外と効きやすいと思います!行きましょう!」
そう言って、早苗はその扉を蹴破って入る。後ろからにとりも続く。
中には神影の言う通り、爆発物が大量に詰め込んでいた。とは言え、これらを捨てたとて本体は可燃性のある燃料で動いているので無駄に等しい。考えている暇もなく、護衛の機械人形が襲い掛かって来た。屋根のと異なり2脚で様々な武器を装備している。
「にとりさんは援護をお願いします!」
「早苗、気を付けて!」
にとりの援護を受けながらも早苗は剣で多くの機械人形に立ち向かう。早く、この機関車を止めなくては・・・・・・。



神影と出会ってから約4時間。早苗達は何とか護衛の機械人形を倒す事に成功する。都心部まであと9時間。
「急がないといけません。にとりさん、ここからの時間は分かりますか?」
「うん、ここから急いで行けば1時間位で先頭の機関室に辿り着くと思う。あ、あの早苗・・・・・・。」
「どうかしましたか?」
「早苗が戦った量産型T‐Jで何か変わった事なかった?」
「・・・・・・そう言えば、T‐J程ではありませんが、性能や武装が幻想郷の時よりも強くなっていた様な・・・・・・?」
にとりの言う通り、早苗はかつて幻想郷で量産型機械人形と戦った事があったが現在は全く異なっていた。
あの時とは戦い方や機動力、装甲等の性能と強力な武装が違っていた。早苗の言葉を聞いて考えるにとり。
「あの時は恐らくチルノの軍隊だし、もしかすると・・・・・・。」
「もしかすると・・・・・・って何ですか?」
「あの時の私達のデータを元に改良したのか・・・・・・元からあってチルノより位の高い勇者が使っているかもしれない。」
「どちらにしても、余り嬉しくない可能性ですね・・・・・・しかし、ここで立ち止まっている訳にも行きません。」
そう言って、早苗、にとりの両名は急いで機関室へと向かった。そこに待ち受ける勇者の実力は一体・・・・・・?



「お空!今まで何処に行ったんだ!?」
「うにゅ、勇者のいる所を探していたら、スキマがあったら・・・・・・勇儀、御免・・・・・・あと誰だっけ、隣の?」
「ふふ、相変わらずですねお空さんは・・・・・・。」
「貴方は花の異変や天人の異変の・・・・・・。」
「あぁ、白い兎じゃないか?久しぶりだねぇ。」
「あれれ~?鈴仙、妹紅と会ったって言ったけど本人は?」
「・・・・・・妹紅さんは勇者の攻撃で重傷を負っているの・・・・・・今は慧音さんが人里で看病しているけど・・・・・・。」
「人里で?大丈夫なの?慧音は一度、死んだんだけど・・・・・・。」
「あぁ、実は私がうっかり人里の皆に『慧音は訳あって他のハクタクの実家に帰っている』って話したから・・・。」
「天人、ナイスフォローだZE!」
「ゆ、紫様!?一体どうなされたのですか、その怪我は!?」
「ん。まぁ、ちょっと懐かしいあいつとね・・・・・・。」
一方、大神・天照の森ではお空や鈴仙等、勇者を倒した者達が一度、情報処理の為に集まっていた。
更に心強い事に、今まで行方不明だったお空や小町、妹紅も戻って来てくれたのだ。しかもお空も勇者を倒したと言う。
「残りは早苗チームと咲夜チーム、そして魔理沙チームね・・・・・・まぁ、魔理沙には神綺やアリス等の心強い方がいるから安心だけど問題は早苗と咲夜の2人ね・・・・・・妖夢が勇者達の居所を聞き出せたけど、大丈夫かしら・・・・・・。」
「と言うより、こっちも非常事態だけど・・・・・・やっと見つかったわ・・・・・・。」
「「「っ!?」」」
突然の声に一同は身構える。すると、何と依姫とリリーB、御供の月兎達が現れた。
「まさか、大神の神聖なる所があったなんて・・・・・・正直、伝説だと思ったわ・・・・・・。」
『貴方は・・・・・・神を降ろす能力を持つ月人の綿月依姫ですね・・・・・・。』
「貴方が大神・天照・・・・・・?それよりも八雲紫、他の人はどうしたの?吸血鬼とか白黒とか・・・・・・。」
「それよりも何故、貴方がここにいるかが聞きたいわね・・・・・・。」
そう言って睨み合う2人。依姫の事を知らない者達は首を傾げるばかり。何せ、月へ向かったのは少数であるからだ。
やがて、諦めた模様か依姫が溜息を吐く。
「まぁ、ここに来た理由は後で話すわ・・・・・・紫、闇の巫女と冥界四天王にレイセンが捕まったわ・・・・・・。」
「っ!!」
「えっ?私?」
「正確には2代目レイセンだけど・・・・・・久しぶりね、初代レイセン・・・・・・元気にしてた?」
「は、ハイィッ!オヒサシブリデスヨリヒメサマ!」
「相変わらずね・・・・・・はい、八意様とお姉様の命で渡す事となっていた桃のセットと薬品類。」
「あ、どうも・・・・・・。」
そんなやり取りをしている依姫と鈴仙に対し、紫は深刻そうな表情であった。
「ゆ、紫様・・・・・・闇の巫女と冥界四天王とは・・・・・・?」
「・・・・・・とうとう、この時が来るなんて・・・・・・それについては霊夢達が戻ったら話すわ・・・・・・。」
「は、はぁ・・・・・・。」
「そんな事より、八雲紫。私達はここ(幻想郷)から地上へ赴く為に貴方のスキマが必要なの。」
「あら?貴方のお姉さんの方が効率よくて?」
「お姉様より貴方の方が・・・・・・(いや、八雲紫にはT‐Jの情報収集の事は伏せておかなければ・・・・・・)輝夜様のいる所を知ってそうだから・・・・・・無論、貴方も行く事情がある様だし、不本意だけどここらで協力しない?」
「・・・・・・仲間が多いに越したことはないわ・・・・・・だけど、今は動けないわ・・・・・・せいぜい、2、3日は必要ね。」
「貴方だって急いでいるのでは・・・・・・!」
「相手は貴方の予想以上に強い方ばかりよ・・・・・・今はこちらも手負いを追っている者がいるから・・・・・・。」
「様は怪我の治療という事ね・・・・・・。」
「これで納得してもらえるかしら?」
「・・・・・・仕方がない。正直、2代目レイセンが気がかりだけど・・・・・・貴方の仲間の状態を見るに本当そうだから。」
「理解できて助かるわ。さて、聞いての通り貴方達も2,3日は怪我の治癒を重点にしっかりと休みなさい。特に空、小町、勇儀、鈴仙、天子、妖夢・・・・・・貴方達は殆ど怪我しているから無理はしないで・・・・・・あと、後で私の所へ・・・・・・話があるの。」
異存はない?と言う紫に対し、一同は納得したかの様に頷く。依姫もレイ2の事が気になるが今は焦ってもしょうがないと思ったのだ。
そして紫の指示の元、解散する一同。そんな中、「何で自分達だけ?」と不思議そうな表情の妖夢達が紫の後に付いて行った。
「ね~、ゆかり~ん。私達だけ何処へ行くの~?」
「そうね・・・・・・貴方達、聞く所、見た事のないスペルカードを持っているでしょう?見せてくれない?」
「別にいいけど・・・・・・。」
そう言って、渋々と例のスペルカードを渡す小町達。そのスペルカードを見、確信したかの表情になる紫。
「やはりね・・・・・・後は・・・・・・。」
紫はスキマを開け、手招きで付いて行くように指示する。果たして彼女は天子達を何処へ連れていくのだろうか・・・・・・?



「いました、神影さんですっ!」
約1時間半位かけた結果、遂に神影の姿を発見する早苗達。ここは機関室の様だがいかにも頑丈そうな設計だ。
「・・・・・・来たか・・・・・・なら、俺も覚悟が必要だな・・・・・・。」
そう言って、剣を抜く神影。早苗も剣を構えて神影の様子を見る。その瞬間、神影の姿が消えた!
「っ!何処に・・・・・・!」
「ここだ・・・・・・。」
「っ!?」
その言葉に振り向くと物凄い速さで神影が早苗の頭部目掛けて剣を振り下ろしたのだ。慌てて下がってかわす早苗。
今の高速・・・・・・まさか・・・・・・。
「文さんの能力・・・・・・!」
「どうした?お前の実力はそんなものか?」
「ま、まだまだです!スペルで決めます!」
そして早苗はありったけのスペルをセットして発動する。恐らく、自分達のクローンでは1枚は危険だと思ったからだ。
「成程、弾幕戦か・・・・・・無駄な事を・・・・・・。」
スペルが神影に当たるかと確信した次の瞬間、早苗は驚くべき光景を目のあたりにする。
神影は高速で避けたのではない・・・・・・持っていた剣で弾幕を斬り裂いたのだ。これは正に神技と言っても過言ではない。
「これで終わりか・・・・・・ならば、俺もこのスペルで決着を付ける・・・・・・!」
そう言って、自分オリジナルスペルを構える神影。その瞬間、機関室が揺れ始める。
「こ、これは・・・・・・。」
「・・・・・・東風谷早苗・・・・・・奇跡等は存在しないという事を・・・・・・この俺が証明してやる・・・・・・『大地・厄水斬』!!」
神影の放ったスペルはまさに自分の正面に向かって大量の斬撃型弾幕を発していた。早苗が気付いた時は既に着弾していた。
「痛っ・・・・・・!!」
かわし損ね、直撃を受けて倒れる早苗。剣の斬撃故か血が飛び散っている。
恐らく上級勇者の1人、神影のスペルは強力な一撃と恐るべきスピードをかけ備えたまさに完璧なスペルなのである。
これを破る者は・・・・・・恐らく幻想郷の者にはいないのだろう・・・・・・。だが・・・・・・
「さ、早苗・・・・・・!」
「大丈夫です、にとりさん・・・・・・まだやれます・・・・・・。」
そう言って、戦闘態勢を崩さない早苗。斬られた所から血が流れている。その状態に神影の表情も変わった。
「っ!何故だ・・・・・・何故、こうもまでして・・・・・・!」
「皆さんもきっと戦っているのです・・・・・・私だけこんな所で倒れる訳にはいきません・・・・・・!」
「仲間の為か・・・・・・!仲間の為に命をかけてやる必要があるのか・・・・・・!」
「貴方には分かりません・・・・・・仲間の為なら例え、この身がどうなろうと構いません・・・・・・貴方を倒す為に・・・・・・!」
「お前が自分の命を道連れにして俺を倒した事に誰が喜ぶ!?自己犠牲だけでは誰かを悲しむだけだ!」
「貴方が私達の能力を持った優秀なクローン勇者には理解できません・・・・・・誰かを守る為なら命をも賭ける事を・・・・・・!」
「!・・・・・・俺は・・・・・・俺は勇者でも何でもない・・・・・・!」
「・・・・・・えっ!?」
突然の神影の言葉に早苗は驚く。そんな彼女に対し、神影は苦渋の表情で思いもよらない言葉を放つ。
「・・・・・・俺は・・・・・・俺はお前達の能力が使えても弾幕を出せないクローンの失敗作なんだ・・・・・・。」



『始めまして。』
とある花畑で彼女と出会ったのは今から1年前の秋頃。
自分達が生まれたのは、キリュウが己の欲望の為だとほざいていた。だが、彼女の科学力も決して完璧ではなかった。
1号のクローンの成功にすっかり調子に乗ったキリュウはクローン2号、つまり自分を作り上げた時、バグが生じた。
早苗の奇跡や文の風を操る能力等は問題無いが、幻想郷の住人の特徴である弾幕が出ないのである。全くの失敗作だった。
失敗作。そんな言葉が自分の胸を突き刺している様な感じに対し、キリュウは慰めているつもりなのかこう言った。
“まぁ、わしもぬしと同じ失敗作として捨てられた境遇を持っておる・・・・・・。仲良くしようぞ♪”
だが、自分に何ができる?弾幕が出来ない自分に戦いなどできるのか?キリュウは相変わらずクローンを生み出そうとしているし。
そんな心情が堪らず、自分は研究所を飛び出した。そしてとある花畑で彼女と出会った。
『お前は・・・・・・?』
『私、エミリー。貴方は?』
『・・・・・・薫・・・・・・東風谷薫・・・・・・。』
『良い名前ねー。何処から来たの?』
『それだけは聞かないで欲しい・・・・・・。』
そして、彼女エミリーと自分はひょんな事から友達になってくれた。聞く所によると彼女も一人ぼっちらしい。
彼女の両親は交通事故で死に、両親の多額の遺産を巡る親族の醜い争いが耐えられずに家を飛び出したそうだ。
同じ境遇だな、と自分は思った。自分とエミリーは他愛のない話で楽しんだりした。
そして、自分が人間ではなく幻想郷の住人のクローンだと言う事を知っても彼女は全く気にしていなかった。
『何故だ・・・・・・?俺はクローンなんだ・・・・・・お前とは違う・・・・・・。』
『確かに、私達には違う所が沢山あるけど、一緒の所もあるわ。』
『それは、何だ?』
『“心”なのよ。』
『心・・・・・・?』
『貴方も私も全ての生命には喜んだり、悲しんだりする事ができる・・・・・・人間でもクローンでも心は一緒なの。』
『一緒・・・・・・?』
そして、エミリーは自分の首に何かをかけた良く見ると星型のペンダントの様だが・・・・・・
『お守り。お父さん達の形見だけど、貴方にあげる。』
『・・・・・・ありがとう・・・・・・』
その頃から、自分達の関係はより深くなっていた。彼女を何者にも守りたい。それが自分の只一つの心情だった。
エミリーの事はキリュウ達に内緒で自分の部屋に居候する事になっている。彼女とずっと一緒にいたい本心で。
ひょっとしたらこれは神が失敗作としてどん底の毎日を送っている自分にくれた奇跡かもしれないと思い始めたその時、
自分は奇跡がこの世には存在しない事を思い知らされた・・・・・・。

その悲劇の発端は勇者6号ことレグリン・フジワラが作り出された秋頃であった。
この時、レグリンは自分自身について悩んでおり、正義という志に迷いが生じていた。そこをキリュウは見逃さなかった。
その日、未だ幻想郷の住人と戦う事に躊躇いを感じているレグリンに喝を入れようとキリュウはある特訓を計画していた。
内容は至って簡単。高速で飛んでいく箱型の目標を弾幕で撃ち落とす事だった。まぁ、自分には関係ないが。
だがある時、自分は部屋に戻ってある異常に気付く。エミリーがいないからだ。
エミリーには一歩も部屋に出てはいけないと言ったし、彼女も同意してくれた。一体、何故?
そう考えた時、キリュウからの呼び出しを受ける。今はエミリーが気がかりだがキリュウの方も嫌な予感がする。
自分はそう思い、キリュウの元へ向かう。するとキリュウは何やら満足そうな表情で自分を待ち構えていた。
『おぉ、2号・・・いや、薫ではないか!よくぞ来てくれたの~♪』
『話は何だ、キリュウ?俺は今、忙しいが・・・・・・。』
『ほぉほぉ、忙しいか?忙しいと言うのは・・・・・・こやつを探す事か?』
そう言ってキリュウは窓のシャッターを開ける。そこには何やら深刻そうな表情の1号と・・・・・・
膝を付いて驚きの表情を隠せないレグリンと・・・・・・
『っ!?エミ・・・・・・リー・・・・・・?』
箱形の残骸の側で血まみれになって倒れているエミリーがいた。
『エミリー!!』
そう叫んでエミリーの元へ向かう自分。駆けつけて彼女の肩を揺さぶる。意識は無く、全くの重傷だった。
『・・・・・・っ!どう言う事だ、キリュウ!話していた内容では確か、的は空の箱ではなかったのでは!?』
1号がキリュウを睨んで叫ぶ。その隣ではレグリンが震えていた。まさか、彼女がエミリーを!?一体何故!?
そう多くの疑問で頭が一杯になっている自分にキリュウは何事も無かったかの様にこう言った。
『ん~?見れば分かるじゃろ?6号の喝入れとそこの人間のスパイ排除じゃ♪』
『なっ!?・・・・・・彼女が誰だかも分からないのに・・・・・・。』
『まぁ、わしらには知らないが、ぬしには知っておるのじゃろ薫・・・・・・♪』
不気味に微笑むキリュウに自分は動揺する。まさか、自分とエミリーの仲を知って・・・・・・!
『“壁に耳あり、障子に目あり”とはこういう事じゃ。まさかそいつを6号の喝入れに使うとはわしもなかなかの者じゃろ~?』
『私は・・・・・・取り返しのつかない事を・・・・・・取り返しのつかない事をしてしまった・・・・・・!』
『ぬぬ?』
それを聞いたキリュウは不満げに降り立ち、レグリンの前に近づいてこう吐き捨てる。
『ふん、敵ですら情けをかけるのか?らしくないの~。わしならば容赦なく殺すじゃがな。』
『敵・・・・・・彼女が敵・・・・・・!?』
『左様じゃ。わしらは幻想郷の住人のクローンじゃが、1人1人が素晴らしい能力を持つ優れた生物なのじゃ。その優れた生物に進化できなかったこの世界の人間共と幻想郷の住人共は皆、排除するのがわしらの義務じゃ。』
『しかし・・・・・・しかし、それでは・・・・・・それでは正しくない・・・・・・!』
『ぬぅ・・・ぬしも頑固じゃの・・・・・・所詮、命ある者は生物だろうとクローンだろうと何かを殺す為に生れた者じゃ。殺し合いに正義等と言う甘ったれたものは不要じゃ。わしらは只、殺せばいい。薫もそんな人間とイチャイチャしている場合ではないじゃろう?』
『っ!き・・・・・・貴様ぁぁぁぁぁ!!!』
エミリーをこんな目にあわせ、レグリンに人殺しをさせたキリュウにもはや、言葉等、無用だった。
キリュウを殺す。今の自分にはそれが頭で一杯だった。キリュウに向かって走り、腰の剣を抜いて斬りかかる。
この剣はかつて1号が弾幕を出せない自分に“弾幕は無理でも他の戦法で戦える筈だ”、と渡された剣だった。
『ほぉ殺すのか?わしを殺すのか?よいよい、来るなら掛かってこんかい!』
そう嬉しそうに言うキリュウに向けて自分は剣を振り下ろすが・・・・・・
『・・・いけない・・・。』
その言葉が頭に響き渡ると同時に・・・・・・巨大な光が何処からか飛び出し、自分の左腕を焼いた。
『ウアァァァァァァァァァァァァァァッ!!』
鋭い痛みが左腕に襲い掛かり、自分は剣を落としてうずくまる。一方のキリュウもこれに驚いていた様だ。
『ま・・・・・・まさか・・・・・・あやつか!?』
キリュウがそう叫ぶと同時に上空から何かが現れた。それは何か輝いている様な雰囲気だった。
彼女の名は“紅”。キリュウが言うに自分達の亡き主・Zが作り上げた絶対神と言われる存在。
『紅!何故、わしの邪魔をするのじゃ!?大体、ぬしは部屋から出るなとあれ程と・・・・・・!』
『・・・・・・キリュウ・・・あの人は誰・・・?』
『スルーかいな!まぁ、こやつは東風谷薫と言って・・・・・・』
『薫・・・貴方はどうして逆らうの?どうしてあの人の想いに答えてくれないの・・・あの人の想いに答えてくれないのは・・・悪い人。』
自分に近づき、右手を自分に向ける紅。殺られる・・・・・・!そう考えるが不思議と嫌ではなかった。
エミリーが死んでしまったのだ。どうせ生きていたとて、何の意味もないのだ。ここで殺された方が良いに決まっている。
そう覚悟を決めて目を閉じるが・・・・・・何と1号が自分と紅の間を割って入ったのだ。
『1号!?』
『貴方は・・・何をしているの?』
『もう止めろ、紅!薫を殺すのはどうか止めてくれ!』
『・・・どうして?』
『どうしてもだ!』
そう言って、土下座する1号。その姿にレグリンもキリュウも絶句する。
『後生だ・・・・・・どうか薫を許してくれ!かつての彼女の眼には生きる気力がなかった・・・・・・だが、それ以後から薫は一生懸命に自分なりの戦い方を研究していた・・・・・・その理由が今ハッキリと分かった・・・・・・その薫の命を奪うと言うなら私を殺すがいい!!』
そう真剣に紅に懇願する1号。しかし、それを聞いたキリュウがすぐさま1号に怒鳴りつけた。
『ちょう待てぃ!誰が勝手に殺して下さいって頼むのじゃ1号!ぬしはわしが生み出した中で最高傑作じゃぞ!この北方勇者帝国の希望じゃぞ!ぬしが勝手に死ぬような事は絶対に認めんぞ!それに薫はあの時、ロープで簀巻にして頭を冷やさせるつもりじゃが・・・・・・とにかくじゃ、紅!ぬしにわしのクローン達を殺す権利等は無い!第一、あの憎きZがいない以上、総帥はわしなのじゃ!』
『・・・キリュウ・・・貴方はあの人を貶しているの?そうなの・・・?』
『うっ・・・・・・と、とにかく今は薫の事はこれで許してやれ。正直、あやつに自らの義務を思い出させる為じゃ・・・・・・。』
紅は自分とキリュウを交互に見、考えているのかしばらく黙っていた。
『・・・分かった・・・許す・・・。』
そう言って、紅はふわりと浮かんで自分の部屋へ向かうのか去っていった。紅がいなくなった途端、キリュウが安堵する。
『ヤレヤレ・・・・・・あやつの我儘には付き合いきれんわい・・・・・・今日は疲れたので寝る。』
そう言って、何事も無かったかの様に欠伸をしつつ去るキリュウ。残るのは1号、レグリン、そして自分。
何故だ・・・・・・何故、私は生かされたのだ・・・・・・!そう思う自分に1号が駆け寄る。
『・・・・・・大丈夫か2号!?』
『俺に・・・・・・俺に触るな!』
あれ程までして自分を助けた1号に自分は1号の手を払いのけた。自分は死を覚悟したのだ。それなのに・・・・・・!
『何故、俺を助けた!?情けの為か!?あの時の俺は既に死を覚悟していた!エミリーが死んだのだ・・・・・・俺を絶望の淵から救ってくれたエミリーが・・・・・・!エミリーがいないこの世なんて死んだ方がマシなんだ!』
『落ち着くんだ2号!彼女はまだ生きている!』
『なっ・・・・・・今・・・何と・・・・・・?』
1号の言葉に自分は驚く。自分の表情を見て、1号は頷きながらこう続ける。
『意識は不明だが、まだ生命力は無くなっていない・・・・・・キリュウはスパイだと言っていたが、私は決してそうだとは思わない・・・・・・キリュウの部下に頼んで、すぐ治療させる様に説得させる・・・・・・だから、死ぬ様な真似はしないでくれ・・・・・・。』
『1号・・・・・・何故、俺を・・・・・・?』
『言った筈だ・・・・・・同志の生きるきっかけをここで失いたくないんだ・・・・・・。』
そう言って、1号は6号に近づき、宥める様に言う。
『6号・・・・・・6号は悪くない・・・・・・彼女がああなったのはお前のせいではない・・・・・・。』
『違う・・・・・・違うんだ1号!私はキリュウの言うままに撃ってしまった!そして2号の大切な彼女を・・・・・・!』
『6号・・・・・・。』
そして、何か意を決したのか6号は宣言するかのように吠える。
『私は必ず成し遂げる!自らの正義で誰もが殺し合わない・・・・・・誰かが傷つかない・・・・・・幻想郷の様な平和な世界を作り上げると言う事を!その為に私は・・・・・・キリュウを・・・・・・奴を討つ・・・・・・!』



「そ・・・・・・そんな事があったなんて・・・・・・!」
自らの辛い過去を語った神影を見て、早苗は絶句した。
失敗作と言うコンプレックス、勇者としての決めつけられた義務、そして大切な者を守れなかった罪悪感。
そんな彼女を見ながら神影は左手の手袋を脱ぐ。その下にはどす黒い色のひどい火傷跡だった。
「東風谷早苗・・・・・・あの時から、俺は思い知ってしまった・・・・・・お前の能力は偽りの奇跡だと言う事を・・・・・・。」
「っ!?な、何故その様な事が・・・・・・!」
「奴に・・・・・・紅にこの傷を負った時から俺は奴に勝てない事を思い知らされた・・・・・・そして奇跡等と言う事はこの世には存在しないと言う事も・・・・・・俺は彼女を救えなかった・・・・・・それだけが唯一の証拠・・・・・・。」
「では、“東風谷薫”と言う名前は・・・・・・?」
「あの名は既に捨てた・・・・・・今の俺はお前達、幻想郷の住人の特徴である弾幕を行う事ができずに、只、剣一筋だけで1号と同じ上級勇者になった者・・・・・・そして、俺を打ちのめした絶対神・紅の影・・・・・・それが今の俺・神影だ・・・・・・。」
「・・・・・・!」
「どんなに意思が強かろうと・・・・・・どんなに夢や希望があろうと・・・・・・所詮、現実は非常なものだった・・・・・・!俺はもはや奇跡など信じぬ・・・・・・もはやキリュウに・・・・・・否、紅に逆らう事が出来ぬ・・・・・・!俺は・・・誰一人として守れなかったのだから・・・・・・!」
そう嫌な過去を思い出すかのような表情で神影は言う。それに対し早苗は・・・・・・
「・・・・・・そのエミリーと言う人、今はどうなさいました?」
「む・・・・・・今は本部の特殊独房で治療している・・・・・・あれから、しばらく会ってない・・・・・・。」
「会ってない・・・・・・?一度も話した事はないのですか?あの時みたいに・・・・・・?」
「無論だ・・・・・・俺が彼女を殺したみたいなものだからな・・・・・・それがどうかしたのか?」
「・・・・・・悲しい人ですね・・・・・・!」
「何・・・・・・!?」
怒気を募らせて言う早苗に神影は戦慄した。これはまさしく・・・・・・殺気!?
椛の剣を支え代わりにして立ち上がる早苗。出血なのか顔は青白いが、その目はまだ活気に満ち溢れた。
「貴方は、お友達を救えなかっただけで諦めるのですか・・・・・・貴方にそのペンダントをくれた彼女を守って見せると言う本心はどうしたのですか!?それで勇者のつもりですか!?それでも私や神奈子様、諏訪子様等の方々のクローンですか!?」
「・・・・・・やはり、失敗作の俺が自分のクローンだと言う事に失望している様だな・・・・・・。」
「貴方が弾幕の出せない失敗作だからという理由ではありません!寧ろ、貴方の心情に失望しました!!」
「なっ!!?」
おののく神影に早苗は怒りを隠さずにまくし立てる。
「貴方は紅と言う方に殺されようとする時に“エミリーのいない世の中なんて死んだ方がいい”とお思いになったのですね!?何故、最後まで諦めないのです!?勇者1号さんの言う通り、最初から彼女を死んだ事を決めつけるなんて最低です!もし、私なら結果がどうであれ、重症でも生きているという事に信じて見せます!それ位が当然でしょう!?」
「早苗・・・・・・。」
「それに・・・・・・何ですか・・・・・・自分のせいでエミリーさんが重傷を負った理由でしばらく会ってないなんて、ふざけています・・・・・・どうして、お友達を酷い目に合わせたキリュウさんの所で悠々と従える気になったのですか!?」
それに・・・・・・、と早苗は腕の血を物とせずに神影を睨む。
「どうして一度、紅と言う方にやられただけで彼女に逆らわないのですか!?たった一度だけで彼女の恐ろしさを味わったなんてどうしてそう言う事が言えるのですか!?例え、体がどうなろうと最後まで戦うのは普通でしょう!?」
「っ!?お、お前に何が分かる!?紅の強さはお前達以上のものだぞ!お前達が束になった所で・・・・・・!?」
「やってみなければ分かりません!あの人は・・・・・・霊夢さんは黒幕が誰であろうと・・・・・・どんな強さを持っていようとも知らずに異変を解決しに行っていました・・・・・・そして相手が神だろうと諦めずに戦って勝ちました・・・・・・貴方は弾幕の出せない失敗作ではありません!お友達が傷ついているのに、傷つけた者の下にいて、死を諦める・・・・・・精神的に失敗作の人です!!」
「っ!?!?」
早苗の怒りの言葉に神影は反論できなかった。早苗の言う事が正論だと言う事だろう。
「私は絶対に諦めません!どんなに現実が非常だろうと、最後まで諦めません!そしてキリュウさんの計画を止めて、外の世界と幻想郷・・・・・・2つの世界を救って見せます!霊夢さんや魔理沙さん達と一緒に!」
「・・・・・・東風谷早苗・・・・・・どうやら、お前は1年前よりも強くなった様だな・・・・・・記憶によれば幻想郷に来た時は信仰の為だけにその力を使うだけなのが・・・・・・だが、過信は自滅を招くぞ!ならば、紅と戦う前に俺が現実を思い知らせてやる!」
早苗の覚悟に対し、神影もどうやら本気の様だ。スペルカードを取り出して発動する。
「っ!?さっきのスペルカードとは違う・・・・・・かと言って私達のでは・・・・・・。」
「俺はこの1年間、血も滲む訓練を自分なりにやった・・・・・・こいつは俺とあいつの第2のスペルカードだ!」
「オリジナルのスペルカードが2枚も・・・・・・!」
「行くぞっ!最終奥儀、『天地・疾風斬り』!!」
最初のが、大量の斬撃型弾幕を地面スレスレに放ったのに対し、このスペルは上空から斬撃型弾幕を放つ模様だ。
それに対し、早苗も覚悟を決めた表情でどう言う事か、全く動かずに剣で防御する。
「早苗―――――!避けるんだ―――――!!」
にとりの叫びを聞いた早苗はにとりの方を向いて・・・・・・
「大丈夫です!神影さんが本気のスペルでも椛さんの剣ならきっと防げます!私はそれを信じます!」
笑顔でにとりに言い、早苗は剣を防御の構えでそれに立ち向かう。そして弾幕が剣を押していった次の瞬間、
バギッ!!
「っ!!??」
「・・・・・・言っといた筈だ・・・・・・過信は自滅を招く・・・・・・と。」
何と椛の剣が神影の弾幕に耐えきらずにポッキリと折れてしまった!そして早苗の左肩に直撃して血が吹き出る。
「っ・・・・・・!わ、私の修行不足でした・・・・・・私のせい椛さんの大切な剣が・・・・・・。」
そう眼から涙を溢れさせ、早苗は吹っ飛んで壁に激突、壁を吹き飛ばして落ちていった・・・・・・
「さ、早苗―――――――――!!」
にとりが慌てて駆けつけるが、間に合わない。早苗は飛ぶ力も残っていないのか猛スピードの機関車から落ちていく。
このままでは地面に激突してしまう!もはや、万事休すか・・・・・・その時、早苗の体の周りに風が集まった。
そしてバビュンッ!という音と共に何かが早苗の方へ猛スピードで飛んで行き、早苗の手を掴んで神影とにとりのいる所へ放り投げる。その結果、早苗は元いた場所に転がるが、その“何か”の正体を見て神影とにとりは絶句する。
「ま、まさか・・・・・・そんな事が・・・・・・!」
「嘘でしょ・・・・・・生きていたなんて・・・・・・!」
早苗はにとり達の言葉を聞いて薄らと目を開ける。確か、自分は落ちた筈では・・・・・・?
そう疑問に思いながら何とか上半身だけ起き上がると頭上から懐かしい声が聞こえた。
「全く・・・・・・椛の剣とて、あれだけの弾幕を受ければ折れるに決まっているじゃないですか・・・・・・。」
「っ!あ、貴方は・・・・・・生き返ったのですね・・・・・・。」
「いや、まぁ・・・・・・どうして生きているのかは不思議ですけどね・・・・・・。」
そして早苗を助けた彼女は神影に営業スマイルでこう言った。
「どーもー、何故か生き返った、清く正しい射命丸文です♪」



続く


次回A:「大神・天照の力なのか慧音の次に復活した天狗、射命丸文!懐かしき者との再会に心から喜ぶ早苗。だが、弾幕は出せないものの、神奈子達の能力を持つ神影に高速を誇る文も苦戦する! その上、“自らの行動で椛を殺した”と言う神影の非常な言葉に文は悩み、戦意喪失してしまう。「私のせいで・・・・・・私のせいで椛を危険な目に・・・・・・なのに私だけ生き返るなんて!」罪悪感に苦しむにとり、そして文の悲しみの叫びに早苗が取った行動は・・・・・・そして奇跡が起こる!次回、『儚き力は皆の為に』!!」



次回B:「早苗達が勇者と戦っていると同時にレミリア達の戦いが始まっていた!突如、現れた謎の巨大門を守る謎の番人!その番人の圧倒的な力に苦戦を強いられる!その時、颯爽と駆けつけたのは・・・「キャーイクサーン!!」今、未知の世界での戦いが霊夢達との同時進行で行われる!戦え、永江衣玖!コウとの約束の為に!次回、『鬼・龍宮・吸血鬼 緊急大弾幕』にご期待下さい!」
ZRXです。本当は全20話辺りのつもりでしたが、少し長引きそうです。
尚、装甲機関車と言っても最新型のエンジンで動いている設定ですので、後で「装甲車」の方がいいという事に気づきました。
次回は早苗編の後篇と外伝を少しお送りいたします。
ZRX
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