◆ ◆ ◆
蒼い空、白い雲、眩いばかりの太陽。
広大な大地には緑が広がっており、時折吹くそよ風はまるで生命の息吹そのものだ。
この世界に生きる全ての生命に活力を与え、小さな悩み事などまとめて吹き飛ばしてしまうかのような――
そんな清清しい光景が窓の外に広がっている。
私ことレミリア・スカーレットは高貴に彩られた自室からその風景を眺め、ルビーのように紅い双眸を細めてこう呟くのであった。
「忌々しい……」
夜と共に生き、月の光を何よりも好む吸血鬼にとって、この朗らかな光景は目の毒でしかない。
……いや、毒というのは言い過ぎか。
いくら私が吸血鬼であるとはいえ、それがこの光景を忌み嫌う理由にはならない。
今のような天気の日でも、気分がいいときにはピクニックにだって出かけるし、テラスで優雅に紅茶を啜ったりもする。
執拗なまでに日光を避けたり太陽を忌避しているようでは、吸血鬼としてまだまだ半人前だと私は思う。
どれだけそれらを憎んだところで太陽はなくならないし、朝は必ずやってくる。
苦手な物を苦手なままにしてひたすら嫌悪し続けるのではなく、苦手な物ですら楽しめる度量を身に着けてこそ、
吸血鬼としても1つの生命としても一人前といえるのではないだろうか。
そんな自論を持っているにも拘らず、今の私には窓の外の光景が忌々しいものにしか感じられなかった。
その理由はなぜ?
答えは簡単、退屈だからだ。
「ほんっっとーに暇だわ……」
日光や太陽が嫌いだから「忌々しい」と言ったのではない。
、、、、、、、、、、、、、、、、、
退屈している私を無視して、勝手に楽しそうな空気に包まれている世界そのものに対して「忌々しい」と言ったのだ。
そんな外の光景を見飽きた私は、テーブルに突っ伏したまま窓から自分のベッドへと視線を移す。
上質な造りの部屋にマッチした高級感溢れる天蓋ベッド。
その上には僅かばかり皺くちゃになったシーツと共に、何十冊にもなる本の山が点在している。
それらの本は全て、図書館から借りてきた漫画本であった。
「図書館にある漫画も全部読んじゃったし……やることないわね」
私はここ最近、図書館で借りた漫画を自室に持ち込んで読み漁るという優雅な日々(?)を送っていた。
しかし今ベッドの上に散らばっている漫画の数々は、既にこの数日間で読み終えてしまったものだ。
漫画の内容自体は面白くとても有意義な暇潰しになったのだが、如何せん量が少なすぎた。
普段本を読まない私でも、さすがにこの程度の量なら数日もあれば読み切ってしまう。
読む漫画がなくなった今、私はこうして再び暇を持て余しているのであった。
「図書館にでも行ってみようか……」
ひょっとしたらまだ読んでいない漫画があるかもしれないし、最悪パチェとの雑談に花を咲かせるのもいいだろう。
あ、親友の名を引き出しておいて『最悪』なんて言い方は失礼か。
テーブルに預けていた上体を起こしつつ考えをまとめた私は、図書館に向かうべく自室のドアへと足を向けた。
「と、いうわけで他に漫画があったら貸してちょうだい」
「この前貸したので全部よ。それと、読み終わった本はちゃんと図書館に返却しなさい」
私の突然の来訪を、親友である魔女はいかにも面倒くさそうな顔をして出迎えてくれた。それが親友に向ける顔か。
しかし漫画が置いていないとなると、私の第1目的は早速打ち砕かれたことになる。
こうなったら仕方がない。第2目的であるパチェとの雑談を楽しむことにしよう。
「ねえパチェ」
「私は今忙しいから、話ならまた今度ね」
こいつ本当に親友か?
などと思わず自問してしまうほど、我が親友の返答は素っ気ないものであった。
「何もそこまで無碍にしなくたっていいじゃない……退屈で退屈で死にそうなのよ。死なないけど」
「死なないならいいじゃない。吸血鬼で良かったわね、人間だったら死んでたかもよ?」
「『退屈は人を殺せる』だっけ? 退屈如きで死ぬなんて、やっぱり人間は使えないわね」
「本当に死ぬわけじゃないと思うけど……とにかく、暇潰しに私を巻き込まないでちょうだい」
「パ~チェ~……」
「はぁ……そんなに退屈ならどこかに出かけたら?」
外出……その発想はなかったわ。
窓から見た外の光景があまりにも憎たらしくて、無意識のうちに外へ出ることを避けていたのかもしれない。
ただ問題が1つ。
「出かけるってどこに?」
生憎暇を潰せそうな行き先に心当たりなんてない。
神社は先日訪れたばかりだし、こんなに天気がいいと人里も混雑していそうであまり行きたいとは思えなかった。
「目的地がなくても、ただの散歩でいいじゃない」
「目的のない散歩は散歩じゃなくてただの徘徊よ!」
「どっちも一緒じゃない……そもそも散歩に目的なんてないでしょう?」
「散歩したいなーと思ってするのが“散歩”で、何もやることがないから散歩でもしよう……と思ってするのが“徘徊”よ」
「はいはい、じゃあ湖の周りでも“徘徊”してくれば?」
「うう……」
取り付く島がないとは正にこのことだ。
私という名の船はパチェという名の島に着岸することを拒絶され、沿岸をぐるぐると“徘徊”しているかのようであった。
「はぁ……せめて読んでない漫画があったら暇を潰せたのに」
「だったら“漫画を探す”という目的で出かけたら?」
「探すって言ったって、幻想郷で漫画がありそうな場所といったらここぐらいしかないじゃない」
他にあるとすれば、妖怪の山と人里の屋敷の2箇所ぐらいか。
前者には行けば確実に漫画が手に入る。
というのも、天狗は新聞だけでなく漫画も少なからず発行しているからだ。昨日読んだ漫画の中にも、天狗の描いた作品が混じっていたから間違いない。
だがしかし、山の連中は余所者に対して非常に排他的であり、とてもじゃないが中に入れてもらえるとは思えない。
(強引に押し入ってもいいのだが、後々面倒なことになるのでやめておくべきだ)
中に入るのは駄目でも漫画だけなら貸してくれるかもしれないが、あまり山の連中に借りは作りたくない。よって妖怪の山は行き先候補から除外される。
後者には大量の書物や文献が保管されていると聞いたことがある。
が、漫画などという近代的な娯楽本まで取り揃えている可能性は低いだろう。
そもそも漫画という文化自体が幻想郷でそこまで広く普及しているわけではないため、仕方がないといえば仕方がないのだが。
天狗が描いた漫画は無理。かといって天狗以外に漫画を描いている者など幻想郷には存在しない。
とするとアテになるのは外の世界の人間が描いた漫画だけなのだが、この図書館以外に外の世界の書物を保管している場所など……あ。
「あった」
「あったって何が?」
「漫画が置いてある場所よ! あそこなら外の世界の物も取り扱ってるし……そうと決まれば善は急げね!」
「本当に出かけるの? 咲夜はいないみたいだけど」
「咲夜なら人里に買い物に出かけたから夕方頃までは戻ってこないでしょ。たまには従者無しの外出もオツなものだわ」
「そ。せいぜい日光には気を付けることね」
「日光ぐらいどうってことないってーの。それとも私のことを心配してくれるのかしら? パチェったらやさしー」
「さっさと行きなさい。ロイヤルフレアで焼かれたいのかしら? 本物の日光を浴びるよりキツイかもね」
「おぉおぉ、魔女は怖いねぇ」
剣呑な表情で懐に手を忍ばせるパチェを尻目に、私はクスクスと笑いながら足早に図書館を後にした。
図書館を出て廊下を歩きながら、一時の思考に浸かる。
この私とあんなやり取りができるのは、世界広しといえどパチェぐらいのものであろう。
彼女以外の者とああいったやり取りができるとは思えないし、したいとも思わない。
もちろん咲夜は“従者”として信頼しているし、フランのことは“妹”として愛している。(決して口には出さないが)
美鈴は……まぁ信頼してる。やる時はやってくれるしね。
しかし、先のようなやり取りを交わせる対象は“親友”を置いて他にない。
こんなことを考えてしまっている以上、私は何だかんだ言ってパチェのことを“親友”と認めているのだろう。
そして多分、パチェの方も。
それはともかく今は漫画だ。
可及的速やかに、私は漫画が読みたいのだ。
そのために私が目指すべき場所は――
◇ ◇ ◇
「で、ここに来たというわけか」
「ええ、分かったら漫画を出しなさい。あるだけ全部よ」
尊大な言葉を放つ“お得意様”を目の前にして、僕こと森近霖之助は小さく溜息を吐いた。
珍しくレミリアが1人でやって来たかと思えば、開口一番「漫画を出しなさい!」である。
何でも、外の世界の道具を取り扱っている香霖堂になら、きっと漫画も置いてあるはずだと思ってここを訪れたらしい。
香霖堂をアテにしてくれたことは店主として素直に嬉しい……が、できればもう少し良識を弁えて欲しかった。
「君はドアの外に掛けられていた札が見えなかったのかい?」
「私はそのドアを開けて入ってきたのよ、見えたに決まってるじゃない」
「ほう、ではその札には何と書かれていたのかな?」
「『臨時休業』」
「ご名答。ではここでもう1つ質問だ。なぜ札に書かれていたことを無視して店に入ってきた?」
「客が来たら店を開けるが常識でしょ。ましてや私という上客が」
「どこの世界の常識だいそれは。店主である以上客は大事にするが、客の都合にいちいち振り回されていては店の経営など成り立たない」
「客を大事にねえ……あんたが言っても説得力ないわね」
「何を言うんだ。現にこうして今、君という“上客”の相手を真摯に努めているじゃないか」
「真摯に? この対応が?」
「十分真摯だよ。君がお得意様でなかったら、今頃回れ右を促しているところさ」
今日は久々に仕入れに行こうと思い、『臨時休業』の札をドアに掛けて出かける準備をしていた。
準備が整いさて出かけるかという時になって、この吸血鬼が勢いよくドアを開け放ってご登場なさったというわけだ。
これが霊夢や魔理沙だったら、今日のところは帰ってくれと言って追い返すこともできただろう。
しかし相手はレミリアなのだ。数少ない上客を無碍に扱うことなどできるはずがない。
そう思って仕方なく相手をしていたのだが、レミリアの態度があまりにも傲岸不遜であったため、
つい言葉の節々に皮肉めいた表現が混じるようになってしまっていた。
まぁこの程度なら問題あるまい。怒らせるようなことを言いさえしなければ大丈夫だろう。
「それで、漫画はあるのかしら?」
「あるにはあるが……量はそれほどなかったと思うよ」
「この際量は気にしないわ。そこまで期待してたわけでもないし、一時の暇を潰せればよしとしましょう」
期待していなかったなどと、どの口が言うのだろうか。
店に飛び込んできた時の快活な表情は、明らかに期待に胸を膨らませた子供のソレであった。
そこを指摘したら確実に機嫌を損ねるであろうから言わないでおくが。
「今取ってくるから大人しく待っていてくれ」
「なるべく早くお願いね」
「了解しました、お客様」
やれやれと言わんばかりに投げやりな言葉を返すと、お得意様の注文に応えるべく店の奥へと足を進めた。
◆ ◆ ◆
店主が漫画を取りに行ったことで、私は狭苦しい店内に1人取り残されることとなる。
何の気もなしに仄暗い店内を見渡すが、目に飛び込んでくるのは相変わらず訳の分からない品々ばかりだ。
ここが道具屋なのかゴミ置き場なのか、それすらも判断しかねるような有様である。
(そういえば、ここに1人で来るなんて初めてね)
この店に来るときはいつも咲夜を同伴していたため、単身で訪れるのは今日が初めてということになる。
とは言っても、元よりそう頻繁に訪れていたわけでもないため、大して感慨に耽るようなこともない。
(それにしても……)
何というか、埃臭い。
店内が薄暗いのはまだよしとしよう。私は吸血鬼だし。
しかしまた、どうしてこの場所はこうも埃臭く感じられるのだろうか。
陳列されている商品に古い物が多いから、というのもあるかもしれない。
あるいはこの店が放つ煤けた雰囲気が私に“埃臭い”という印象を植えつけているだけであり、実際はそこまで埃臭くないのかもしれない。
だがどちらにせよ、もう少し店内を綺麗にしておくべきではないだろうか?
私の屋敷と比べるのは流石にどうかと思うが、それにしたってもう少し整理整頓しようと思えばできるはずだ。
まったく、客を持て成す気があるのかどうか分かったものではない。いや、きっとないのだろう。
(店主も優秀なメイドを雇えばいいのに)
紅魔館には咲夜という優秀な掃除係がいるおかげで、常に埃1つ視認できないほどの清潔さを保っている。
店主も自分で掃除ができないのなら誰か優秀な人物を雇えばいいのだ。
では誰を?
咲夜は駄目よ。私の従者だから。
美鈴も駄目ね。門番がいなくなったら困るし……あんまり役に立たないのなら話は別だけど。
パチェは論外。掃除ができるような性質じゃない。
フランはもっと論外。いや、ある意味綺麗さっぱりするだろうけど。店ごと。
身近な人物を1人1人順番に挙げてみるが、こうして見るとまともなのが咲夜ぐらいしかいない。
館内の雑事は全て咲夜に任せっきりなのだから無理もないけど……もう少し休みを与えるべきかしら。
にしても他に有力な候補はいないものなのか。
咲夜以外で優秀な人物……優秀、優れた……優れた人物?
だったら私はどうだろう?
唐突に、メイド服を着こなして香霖堂の家事手伝いをする私の姿が脳内に浮かんでくる。
白いフリル付きのエプロンを身に纏った脳内の私は、テキパキと決められた仕事をこなしていき……
テキパキと……仕事を……
掃除。やったことがない。
料理。以下同文。
洗濯。以(略
駄目だ。
我が事ながら、メイドとしてバリバリ働く自分の姿が想像できない。
そもそもこの私がメイドだと?
私は誰かに仕える側の者ではない。仕えさせる側の者だ。
だから掃除や料理ができなくたって何の問題もない。ないったらないのだ。
と、その時。
まるで狙ったかのような絶妙のタイミングで、店の奥から件の店主が戻ってきた。
「やあ、待たせてしまったね」
「全くよ、おかげで余計な思考をする羽目になったわ」
「いや、君の思考回路の不備にまで責任は持てないんだが……」
「誰の頭の中が不備ですって?」
「失礼。そんなことよりご所望の漫画を持ってきたよ」
この私に対する失言をそんなこと扱いしてさらりと流すとは、中々にいい度胸をしている。
尤も、あまり過剰にへりくだられても鬱陶しいだけなので、これぐらい物怖じしない態度の方が好感が持てる。
無論、度を越した無礼を働くようであればそれに見合った懲罰を下してやるだけなのだが。
「これで全部? 思ったより少ないわね」
店主が運んできた漫画の量は、数にして10冊にも満たなかった。
これではせいぜい2時間もあれば読み切ってしまう。
「だから最初に言っただろう? 量はそれほどなかったと思う、って。漫画自体はそんなに珍しい品じゃないから、逆に在庫が少ないんだよ。
こんなことならもっとたくさん仕入れておくべきだったかな」
「使えないわね」
「君みたいに未来を予知できるわけじゃないからね。まさかかの吸血鬼が、漫画を求めてこんな辺境にまでやって来るだなんて思いもしないよ」
「それは私を馬鹿にしてるのかしら?」
「まさか。ただ君も漫画を読んだりするんだなと思ってね」
漫画と聞くとどうしても低俗な読み物という印象を抱きがちである。
少なくとも高尚な文学というイメージからは程遠く感じられるのが事実であろう。
どちらかといえば児童向けの読み物であることには違いないし、それも当然と言えば当然のことなのかもしれない。
店主は恐らく、500年以上生きた吸血鬼であるこの私がそんな書物を愛読していることについて疑問に思ったのだろう。
「漫画は低俗な文学だから貴族である私には似合わない、と?」
「誰もそこまでは言っていないさ。ただまあ、似合わないという点については否定できない」
「私たちの一生は人間と比べても遥かに長い。だから人間以上に“時間を潰せる娯楽”を求めるのよ。
低俗だとか高尚だとか、そんな小さなことに拘って自ら見聞を狭めていたら生涯を楽しめないでしょう?」
「……何と言うか、目から鱗だな。正直言って敬服したよ」
口先だけの褒め言葉を聞いても気分を害するだけだが、心から出た賛辞にまで気を悪くするほど私の器は矮小ではない。
私は自らの機嫌が少なからず良くなるのを感じた。
「じゃあこの漫画を全部読ませてもらうわよ」
「ああ。それで、その漫画はご購入かい? それとも貸すだけでいいのかな?」
「借りるだけにしておくわ。買ってあげてもいいのだけれど、あまり無駄な物を持ち帰ると咲夜がうるさいのよ。
『お嬢様、できるだけゴミを増やさないで頂けると助かります』って」
「その本はゴミじゃないんだがね……まあ君にはいつも贔屓にさせて貰っているし、漫画くらいなら快く貸し出そう」
「そ。ありがと」
適当に礼を述べると、近くにあった手頃な椅子に腰掛ける。
さて読むか、と漫画の表紙を開こうとしたところで、店主が不可解な視線をこちらに投げ掛けていることに気が付いた。
「何よ、どうかしたの?」
「いや……もしかして、ここで読んでいくのかい?」
この男は何を言っているのか。
そうに決まってるじゃないか。
「さっき言ったじゃない。無駄な物を持ち帰ると咲夜がうるさい、って」
「読み終わったら返してもらうんだし、ゴミが増えるわけじゃないからいいだろう?」
「いちいち返しに来るのも面倒でしょ。それに、これっぽっちの量ならすぐに読み終わるわよ」
「面倒って……どうせ返しに来るのは咲夜だろう? それにすぐ読み終わるからいいという問題では――」
「あら、そんなに邪険にしていいのかしら? 私はお得意様でしょう?」
“お得意様”
何だかんだ言って商売っ気のあるこの男に対し、最も有効だと思われるキーワード。
案の定この単語を口にした途端、彼の勢いは大きく削がれたようだった。
しかし思った以上に負けず嫌いな性格をしているらしく、それでもなお必死に食い下がろうとしてくる。
そんな些細な抵抗がかえって私の嗜虐心を刺激するとも知らずに、だ。
「お得意様だからといって何でも許されるわけじゃない」
「私がここにいるとそんなに邪魔? 大人しく本を読んでるだけでも?」
「それは……確かに君なら騒いだり店の物を壊したりすることはないだろうが……」
「ならいいじゃない。今後も贔屓にしてあげるから」
「……はぁ、それを言われたら無碍に追い返すこともできないじゃないか」
店主は観念したかのように溜息を吐いた。
それを見た私はわざとらしくニッコリと笑う。
「決まりね。あ、別に気を遣わなくてもいいわよ。勝手に読んで勝手に帰るから」
「そうかい。大人しくしててくれるなら何でもいいさ」
店主は諦観の言葉を放ち、私は上機嫌で読書を開始する。
ここに来たのは正解だったかもしれない。
まだ肝心の漫画を読み始めてもいないのに、私は何となくそう思った。
◇ ◇ ◇
レミリアが我が物顔で店内に居座り始めてから、既に一刻ほどの時間が経過した。
最初、ここで漫画を読んでいくと言い出したときは、我侭な彼女が何か問題を起こさないだろうかと危惧を覚えたものだ。
先刻の会話で彼女は思っていたよりも達観した人物なのだということが分かったが、
それでも僕の中に元より根付いていた“我侭なお嬢様”というイメージが完全に払拭されることはなく、
心配になった僕は店の作業をしながら横目で彼女の様子を窺っていた。
しかしどうやらそれは杞憂だったようで、漫画を読み始めてから今に至るまで彼女が何か問題を起こすような素振りは全く見られない。
いや、むしろその逆である。
視線の先。黙々と読書を続けているレミリア。
穏やかな表情で物憂げに椅子に腰掛ける姿は、まさに深窓の令嬢といった雰囲気を醸し出している。
かと思えば、端然とした姿勢やページを捲る際の一挙手一足投からは、洗練された貴族特有の風格も感じられた。
彼女が読んでいるのは漫画本で、腰掛けているのは古臭いボロ椅子のはずだ。
しかしそれらは彼女が持つ気品に中てられてか、漫画本は上品な詩集に、ボロ椅子は上等なロッキングチェアにも見えてくるから不思議である。
些か持ち上げすぎかもしれないが、要はそれほどまでに読書に耽るレミリアの姿が様になっていたということだ。
どうやら再び彼女に対する評価を改めなければならないらしい。
まさかこの僕が1日の内に2度も他人への評価を修正することになろうとは。
ちなみにレミリアに貸した漫画は、外の世界で“少女漫画”と呼ばれている代物だ。
その名の通り若い女性、有り体のない言い方をしてしまえば女児を読者対象にして描かれた漫画である。
レミリアの外見はどこからどう見ても“少女”であるため、傍から見ればそれを読んでいることについて何の疑問も持たない。
しかし実年齢は勿論、精神年齢を含めたとしても、彼女のことを本当に“少女”と言ってしまっていいものなのか……
つい今しがた彼女への評価を改めたばかりの僕には明確に判断できずにいた。
様子を見る限り、レミリアは少女漫画にすっかり没頭しているようだ。どうやらそれなりに楽しめてはいるらしい。
少女の読み物である少女漫画を楽しめるということは、やはり彼女は“少女”と呼べる存在なのではないだろうか。
……いや、そう結論付けるのはまだ早い。
傍目から見れば漫画の内容を楽しんでいるように思えるが、実際のところ何を思って読み耽っているのかは分からない。
彼女の感想を聞くまでは……彼女が漫画を読み終えるまでは、解答を先延ばしにした方が賢明だろう。
そしてその時はもう目の前までやってきていた。
「……ふぅ、これでお終いね」
レミリアはそう言って、たった今読み終わったばかりの漫画本を自らの膝上に置いた。
続いて両手を頭上で組み、「う~ん……」と大きく伸びをする。
たとえ吸血鬼といえど長時間にわたって読書をすれば体の節々が凝るのだろう。
レミリアが体をほぐし終わるを待ってから、僕は彼女に声を掛けた。
「お疲れ様。良ければお茶でも出そうか?」
「あら、気が利くじゃない。それじゃあ御言葉に甘えようかしら」
「了解。紅茶でいいね? 茶菓子は……たしか一昨日貰った苺大福があったはずだが」
「お茶は紅茶でも緑茶でもどっちだっていいわ。苺大福は絶対出しなさい」
どうやら彼女は苺大福が好物らしい。美味しいからな、苺大福。
お茶に関してはどちらかというと緑茶の方が淹れ慣れている。
だがまぁこういう時ぐらい紅茶の腕を振るってみるのもいいだろう。
彼女は常日頃から咲夜の淹れる一級品の紅茶を口にしているため、紅茶の味にはうるさいはずだ。
そんな彼女の舌に僕の淹れる紅茶がどこまで通用するのか、挑戦してみるのも悪くはない。
「じゃあ少し待っていてくれ」
「ええ……今度は『大人しくしているように』とは言わないの?」
「君に関してその心配は不要だと悟ったからね」
レミリアは一瞬きょとんとした表情を浮べたが、すぐにその顔はにこやかな笑みに変わった。
どうやら僕の賛辞を曲解することなく受け取ってくれたようだ。
「いい心掛けね。この私を前にして媚びへつらうことなく、かと思えば本心から敬意を表したり……今の時代では中々見られないわ、そういう態度」
「それはどうも。手放しに喜んでしまっていいのかな?」
「この私が褒めてあげたのよ、喜びのあまり踊り出すぐらいはしてみなさい」
「それじゃあただの狂人だろう」
「変人なのは間違いないけどね」
「幻想郷では変人じゃない人物を探す方が難しいと思うよ」
「自分が変人だということは否定しないのね」
そこで互いに会話を区切る。
数秒の間をおいて、どちらからともなく笑みがこぼれた。
一方は苦笑でもう一方は微笑。
どちらが僕のものかは言うまでもあるまい。
「それじゃあお茶と大福を持ってくるよ」
「ええ、待ってるわ」
今度は簡潔にやり取りを済ませると高貴な客人を少しでも持て成すべく、僕は若干張り切りながら台所へと向かった。
◆ ◆ ◆
「50点」
純白のカップに注がれた紅茶を一口飲んで、私はそう言い放った。
「満点中の半分か……やはり慣れないことはするものじゃないな」
「そうでもないわ。普段から淹れ慣れていないと言う割にはそれなりの出来よ」
これは本心だ。
正直言ってもっと酷い出来になるだろうと踏んでいたのだが、存外まともな紅茶が出てきたことに驚いたぐらいである。
無論、咲夜のそれと比べたら天と地ほどの差はあるが、彼女の淹れた紅茶と比較するなどあまりにも酷というものだ。
「そう言ってもらえると嬉しいよ。もし次があるとしたらその時までに精進しておくとしよう」
「せいぜい励むことね。あ、食べないなら苺大福貰うわよ」
「それは最後にとっておいただけで……はあ、まぁいい。紅茶の勉強代と思うことにするよ」
「そうそう。安い勉強代じゃない」
「その安い勉強代とやらを食べてずいぶんと満足そうな顔をするんだね」
「安さと質は必ずしも比例しないのよ」
店主から徴収した2つ目の苺大福を食べ終え、私自らが50点という評価を下した紅茶を口にする。
うん、苺大福の強い甘味と紅茶の程よい酸味が合わさって、中々にいい後味を生み出している。
これを見越して紅茶の酸味を強めに設定したと言うのなら、60点ぐらいに再評価してやってもいいかもしれない。
「そういえば――」
私がカップをソーサーの上に置くと同時に、店主が声を掛けてきた。
どうやら私が紅茶を飲み終えるのを律儀に待っていたらしい。
そういった細かい心遣いが出来るのなら、もっと大雑把な心遣いもできるはずだと思うのだが……
たとえば店内を綺麗にしておくとか、来訪者が誰であっても露骨に面倒臭そうな顔をしないとか。
「君が先ほど読んでいた漫画、あれは“少女漫画”というんだ」
「少女漫画?」
「そう、その名の通り少女を読者対象にして描かれた漫画さ」
なるほどね。道理でアクションやバトルといった展開が少ないと思った。
今まで読んだことのある漫画とはことごとく毛色が違っていたし、僅かながら違和感を感じていたのだ。
「それで、その漫画を読んで君がどんな感想を持ったのか、参考までに聞いておきたいと思ってね」
「感想ねえ……」
感想など求められても正直困ってしまう。
何故ならいまいち内容が理解できなかったからだ。
恋愛感情に起因する騒動や、それらを内包した日常生活を描いた物語――だというのは読んでいて理解できた。
私が理解できなかったのは恋愛感情そのもの、あるいはそれからなる登場人物の心理や行動についてだ。
好きなら好きとハッキリ言えばいいのに、なぜか躊躇して告白するのを先送りにしたり。
本当は両想いなのに、お互いがそれに気付かずに何度もすれ違ったり。
想いが上手く伝わらないというだけで、やたらと怒ったり、泣いたり、争ったり、後悔したり。
どれもこれも全く持って理解し難い。
私が人間ではなく吸血鬼だからだろうか。
あるいは500年以上の歳月を生きているからなのか。
もしくは……恋愛感情を抱いたことがないからか。
恐らくそのどれもが当てはまると思う。
吸血鬼だからこそ500年以上も生きているのだし、吸血鬼ゆえに恋愛などという感情からは縁遠い生涯を送ってきた。
そんな私にはあの漫画を楽しみながら読むことはできても、理解しながら読むことはできない。
だから感想などありはしない。
強いて言うなら「よく分からなかった」というのが感想だろう。
私は店主の質問に対し、そのことを率直に伝えた。
「ふむ、よく分からない、か」
「ええ、例えばこんなシーンがあったんだけど――」
――主人公である少女には意中の男がいた。
その男のことを考えるだけで自らの胸が高鳴るのを感じ、ただそれだけで幸せな気分に浸れるほどであった。
しかし、その男のことを愛していたのは少女だけではなかったのだ。
自分よりも容姿端麗で、尚且つ内面的にも成熟しきった大人の女性。
少女が男のことを想う気持ちは変わらない。しかし自分とその女性を比較したとき、果たしてどちらの方が彼の恋人として相応しいのだろうか?
考えるまでもなく、自分よりもその女性の方が彼の恋人となるのに相応しいだろう。周りの人間も皆そう思うはずだ。
そう考えた少女は自分の想いを押し殺し、自ら身を引くことを決めた――
「本当にその男のことを愛していたのなら、どんな手段を使ってでも自分のものにしようとするはずよ。
それを自分に自信が持てないから他人に譲るだなんて、愚かしいにも程があるわ」
気に入った物は全て己が実力で奪い取ればいい。
この場合の実力とは、何も野蛮な暴力のことだけを指し示すのではない。
美貌、財力、頭脳、知識、行動力。
生物として持ち得るありったけの力を駆使し、対象を虜にしてしまえばいいのだ。
容姿に自信がなければ化粧でも何でもして己を磨け。
財がなければ死ぬ気で働いて手に入れろ。
知恵が欲しいならひたすら勉学に励め。
考えている暇があったらすぐに実行しろ。
足りないものも欲しいものも、己の才能と努力で手中に収めてしまえばいい。
それなのに早々に見切りを付けて自分が渇望したものを他人に譲り渡すなど、呆れ果てて物も言えない。
もし私が漫画の世界に入ることができたなら、真っ先にあの少女にこう問い質してやりたい。
『お前は本当にあの男のことを心から愛していたのか』と。
簡単に諦めることができてしまうほど、大した想いではなかったんじゃないのか、と。
「実に君らしい考え方だね」
私が一通り語り終えた後、店主はカップを片手に苦笑を浮かべてそう言った。
「君ほどの実力と地位を持つ人物なら、確かにその少女の心理が理解できないのも無理はない」
金色に染まった瞳を緩やかに細めつつ、手にしたカップをソーサーの上に置く。
陶磁器同士が軽くぶつかり合い、小気味良い音を発した。
「少女の取った行動は実に消極的で後ろ向きなものだ。それに関しては僕も同じことを思う。実に愚かだ、とね」
店主も私と同じ考えのようだ。
だがしかし、目の前の男が言いたいことはそれだけではないらしい。
でなければ「それに関しては」などという言い方は選ばない。
敢えてその言葉を選択したということは、それ以外の点では私と意見の相違があるのだろう。
漫画の中の少女が取った行動に対し、この男がどんな見解を見出したのか。
興味をそそられた私は静かに次の言葉を待つ。
「ただ、少女はその男性のことを心から愛していなかったのではないかという疑念については、全面的には同意できないな」
「へえ、それはまたなぜ?」
試すような笑いを口元に浮かべ、目前の男の瞳を真っ向から見据える。
どうしてそう思ったのか、なぜ私の意見に完全には同意できないのか、彼の考えを聞いてみたい。
「君の意見はあくまで“自分”という存在を第一に考えた上でのものだ。
自分の欲求を満たすために自分の力を最大限に発揮し、自分の手で願望を叶えようと努力する――
そういう考え方だからこそ、自分に自信が持てないのを理由に自らの願望を簡単に諦めてしまった少女に対して否定的になる」
彼はそこで一旦言葉を区切り、しかし再び間髪いれずに語り出す。
「勿論その考え方が悪いとは思わない。むしろ好感が持てるといってもいいぐらいだ。
自分の力で自らの願いを叶えようとするのは、至極真っ当で立派なことだからね」
しかし――と彼は前置きし、
「もしも“自分”という存在ではなく、“相手”のことを第一に考えた場合、どうだろうか」
相手のことを……?
彼の言いたいことが今ひとつ理解できず、私は思わず眉根を寄せた。
そんな表情から私の疑念が伝わったのか、彼は先の言葉の意味をより詳しく解説し始める。
「少女は男性を本気で愛していたからこそ、自らの恋の成就よりも男性の幸せを願ったんじゃないかな。
『私なんかと結ばれるより、もっと相応しい人物と結ばれた方が彼も幸せなんじゃないか』とね」
「戯言ね」
「そういう見方もある、ということだよ。
“自分に自信が持てないから身を引いた”のか、“相手の幸せを思って潔く身を引いた”のか、
所詮は漫画ゆえに、少女の真意をどう取るかは読者である僕たち次第さ」
そう言って話を締め括ると、彼は再びカップを手に取って残りの紅茶を一気に飲み干した。
当然中身はすっかり冷め切っており、それを飲んだ彼はいかにも美味しくないといった表情で眉間に皺を寄せる。
そんな様子を見て思わず吹き出しそうになったが、口元を軽く綻ばせることで何とかそれを誤魔化した。
「あなたの考えは何となく分かったわ。でもやっぱり、私には少女の選んだ道が納得できない」
「それでいいと思うよ。人間の少女と吸血鬼の君とでは、自我も矜持もまるで異なるだろうからね」
それもそうだ。
どれだけ私が頭を悩ませたところで十数年程度しか生きていない人間の、それも空想の人物の思想に対し、理解が及ばないのも当然のことだろう。
「そうそう、理解が及ばないといえばもう1つ」
「ん? 他にもよく分からない表現が漫画の中にあったのかい?」
「ええ、クライマックスのシーンなんだけど――」
――物語の終盤。
あらゆる障害を乗り越えて精神的にも成長した少女は、ついに自らの想いを意中の男に打ち明ける。
『――あなたのことが、好きです』
夕暮れの校舎裏。
2人だけの空間に沈黙が訪れる。
口内は喉の奥までカラカラに乾き、自身の激しい鼓動の音だけがやけにハッキリと耳まで伝わってきた。
硬く握った両手は汗でびっしょりと濡れ、両足は今にも緊張で震え出しそうだ。
男からの返答は一向にやってこない。
駄目か……と、少女の心に諦めの念が湧き上がり、思わず両目を強く瞑ってしまう。
と、その時。
何の前触れもなく、男からの返答があった。
それは言葉ではなく、実体を伴って少女の体を包みこむ。
驚いた少女が目を開けると、すぐ目の前には男の姿。
自分は今抱きしめられているのだと気付くまで、それほど時間は有さなかった。
何がどうしてこうなったのか、少女が解答を導き出す前に男が口を開く。
『俺も、ずっと好きだった――』
瞬間、少女の五感はあらゆるものを拒絶した。
周囲からの喧騒はもちろん、風の吹く音さえ聞こえない。
目に映るのは男の姿だけで、周りの風景はただの真っ白な空間にしか見えなかった。
これが感極まるということなのか――と、少女はおぼろげながら理解する。
やがて2人は自然と見つめ合う形になる。
少女の瞳は感涙で潤み、男の瞳もまた力強い色で満ち溢れていた。
少しずつ、少しずつ、2人の顔の距離が縮まっていく。
そうして2人は夕焼けに祝福されながら、初めての口付けを交わしたのであった――
「めでたしめでたし、というわけか」
「ええまぁそれはいいんだけど……」
ハッピーエンドであることに対して文句があるわけではない。
より綺麗な形で物語が締め括られるのなら、それに越したことはないだろう。
私は別段捻くれているわけでもないし、大団円なら大団円で一向に構わない。
ただ気になったのは……
「たかが想いが伝わったぐらいで、よくもまぁそこまで一喜一憂できるのものだと思ってね」
身も蓋もない言い方だが、恋愛とはそんなにも心揺さぶられるものなのだろうか?
誰かを好きになったら想いを告白し、それが成就すれば嬉しいし、駄目だったら悲しい。
言ってしまえばそれだけだ。
告白するのに多大な勇気を要したり、いちいち緊張したりする必要があるとは思えない。
抱き合って口付けを交わしたぐらいで、そこまで幸福感に浸れるものなのか。
わからない。
少女漫画がというよりは、恋愛という概念そのものが分からない。
「――私には理解できないわ」
はっきりと、言葉に出してそう告げる。
別にそのことが悔しいだとか、恋愛を理解したいだとか、そういった思いは一切含まれていない。これは本当だ。
そこにあるのは疑問のみ。
ただ純粋に理解できないという、たったそれだけの思い。
その疑問に対する回答を、目の前の男は持ち合わせているのだろうか?
「――僕にもよく分からないな」
彼は静かにそう切り出した。
続けざまに彼の口から言葉が紡ぎだされていく。
「何分僕も恋愛沙汰には疎いものでね。残念ながら、恋愛感情について君に語れることはない」
――なんだ、彼にも恋愛が理解できないのか。
なぜだか知らないが、私は少なからず落胆を覚えた気がした。
すぐにそのことに気が付いて、自分の心理に疑問を抱く。
別に恋愛感情について知りたかったわけではない。
この男がどんな素っ頓狂な答えを返してくるのか、それを楽しみにしていただけだ。
「告白や口付けを交わしたぐらいでそこまで感情が揺れ動かされるのかどうか、君と同じく僕も疑問に思うよ」
「ふぅん、それじゃあもしあなたが誰かに告白したり、もしくはされたりした時はどんな反応を見せるのかしら?」
「さてね。少なくとも、そこまで感情は揺れ動かないだろうと自負している」
「随分な自信ね。その根拠は?」
「なに、根拠というほどのものでもないさ。こう見えてそれなりの年月を……それでも君の半分程度だろうが、まぁ色々な経験を積んできたからね。
多少のことでは動揺したりしないだろう」
涼しげな顔でそう言ってのける彼。
やはりこの男はどこか自信に満ち溢れているな、と私は思う。
何度も言うが、そういった態度が私の嗜虐心をそそるのだ――
「――多少のことでは動揺しない、ねぇ」
「ああ。と言っても、全く動揺することがないというわけでは……レミリア?」
私の声音がかつてない色を含んでいることに気が付いたのか、それとも生物としての本能が危機を察知したのか。
いずれにせよもう遅い。
ガタン、という椅子の倒れる音が2つ。
私の座っていた椅子は無人の状態で床に倒れ伏し、彼の座っていた椅子は彼ごと床に倒れこんでいた。
――その上に、私が覆いかぶさる形で。
「……っっ! レミリ――」
「――好き」
時が止まったかのような感覚。
彼の抗議の声を掻き消すかのように私が口にしたのは、愛の言葉に他ならなかった。
◇ ◇ ◇
これは一体どういうことだ。
なぜ僕がレミリアに押し倒されている?
そして今彼女は何と言った?
「――好きよ、あなたのことが」
「――――――」
2度目の告白。
今度は聞き逃すことがなかった。
いや、聞き逃せなかったというべきか。
椅子と共に仰向けに押し倒された僕の上に、レミリアが馬乗りになる形で覆いかぶさっている。
そんな状態のためか2人は自然と向き合う形になり、嫌でもお互いの表情が窺い知れることとなった。
レミリアは未だかつて見たことのない表情をしていた。
少なくともそれは僕の知る彼女の顔ではない。
人を小馬鹿にしたような笑みも、見下すかのような視線も、自信に溢れた顔付きも。
それらの内のどれ1つとして、今の彼女の顔には存在していなかった。
真紅の瞳は微かに潤んでいるのだろうか、いつもよりその輝きが増して見えた。
紫外線という名の毒に侵されたことのない肌は、紅い瞳と相反するかのようにどこまでも白く透き通っている。
まるで陶磁器のカップとそれに注がれた紅茶のようだと、先ほどまで飲んでいた紅茶のことを連想してしまう。
笑うでもなく泣くでもない彼女の表情は正に真剣そのものだ。
それでいて今にも笑い出しそうな気色の良さと、今にも泣き出しそうな儚さを併せ持っているのだから実に矛盾している。
(これが、吸血鬼の魅了――)
吸血鬼が持つと言われる魔性。
他人を惹きつけ虜にしてしまう力。
僕は今初めて、彼女が強大な力を持った吸血鬼なのだということを身をもって実感していた。
(――これは恐らく、レミリアなりの悪戯だろう)
波打っていた感情が次第に落ち着きを取り戻し、思考回路は正常な機能を回復させる。
いつまでも相手に振り回され、平常心を失い続けるなど僕らしくもない。
冷静に考えてレミリアが僕に好意を寄せるはずがないのだ。
仮に好意があったとしても、それはせいぜい友人止まりといったところだろう。
それまでの会話の流れからして、一連の行動は僕をからかうためのものだと得心がいった。
大方僕の涼しげな態度が気に食わなかったのだろう。如何にもレミリアらしい考え方だ。
それで僕を動揺させるためにこのような突拍子もない行動にでたのだ。きっとそうに違いない。
(さて、どうしたものか……)
これが冗談だと理解した上で「どいてくれ」と突っぱねるべきか。
それともここは1つ、彼女の悪戯に乗ってやるべきか。
僅かばかりの逡巡の末、僕は後者を選択することにした。
前者ではあまりにもノリが悪すぎる。
レミリアはそういった“ノリの悪さ”を嫌う傾向にあるだろうと、今日一日を振り返って僕なりに彼女のことを分析していた。
これが彼女なりのジョークだと言うのなら、それに応えてあげるのが最も正しい選択肢といえるだろう。
それに何より、やられっぱなしというのは僕の性に合わない。
レミリアは僕が動揺し、慌てふためく様を見たいがためにこのような行動を起こしたはずだ。
だとすれば何食わぬ顔で対応してやることこそが、この場においての最も有効な意趣返しに繋がるだろう。
そう考えた僕は、
「――ああ、僕も、君のことが好きだ」
と、レミリアの偽りの告白を受け入れた。
◆ ◆ ◆
は?
この男は今何と言ったのか。
恐らく私の聞き違いだろうが、あり得ない言葉が聞こえた気がする。
「――もう一度言おう。僕も、君のことが好きだ」
2度目の返答。
どうやら私の聞き違いではなかったらしい。
彼の口調はやたらとはっきりしており、聞き違おうにも聞き違うことなどできない。
彼が私の告白を聞いた瞬間、そこには明らかな動揺が見て取れた。
我ながらあの告白は名演技だったと思う。
表情、態度、声音、どれを取っても一級品だった。
このままひたすら狼狽し続けるか、それともコロッと騙されて本気にするか。
後者はさすがにないにしても、この男がどういった反応を見せるのかが楽しみで楽しみで仕方なかった。
それがどうだ。
今眼前にある彼の表情は、普段は見ることのできない誠実さで満ち溢れている。
少なくともそれは私の知る彼の顔ではない。
金色の瞳には明確な意志が宿り、全てを射抜くような力強い輝きを放っていた。
薄暗い中で一際目立つ白銀の髪は、金の瞳と互いに引き立てあって芸術的な美しさを演出している。
まるで雪降る夜空に浮かんだ月のようだと、見たこともない光景を連想してしまう。
先ほどまでの狼狽しきった様子はなく、かといってこちらの悪ふざけに気付いて憤っているわけでもないようだ。
(――ああ、なるほど)
さてはこの男、私にからかわれたことの意趣返しに今度は逆にこちらを動揺させようとしているわけか。
この男が本気で私に好意を寄せるところなど、とてもじゃないが想像できない。
彼の負けず嫌いな性格から考えても、これは彼なりの仕返しというやつだろう。そうに違いない。
(どうしてやろうかしら……)
そっちがその気ならこちらとしてもここで引くわけにはいかない。
とはいえ現状から更に彼を動揺させるためにはどうしたらいいものか。
なにせ『告白』という切り札は既に切ってしまった後なのだ。
(……言葉で駄目なら、次は行動で示すしかないわね)
私はゆっくりと瞳を閉じて、彼の胸元に両手を添える。
(――これでチェックメイトよ)
確信と共に、自らの唇を彼の口元へと少しずつ、少しずつ近付けていった。
◇ ◇ ◇
待て。
これはどういうことだ。
、、、、、、、、、、、
これではまるで、レミリアが僕に口付けしようとしているみたいじゃないか。
(まさか……いや、そんなはずが)
僕の脳裏を過ぎった1つの可能性。
まさか――
まさか先のレミリアの告白は、冗談でも何でもなく本心からのものだった……?
(――っっ! 落ち着け! そんなことがあるはずないじゃないか)
彼女との付き合いは長くもなく短くもない。
知り合った時期こそ数年前に遡るが、実際に言葉を交わした回数など数えるほどしかないというのが事実であった。
実際、これほど多く彼女と会話したのは今日が初めてなぐらいである。
それなのにレミリアが僕のことを好きになるはずがない。
好きになった理由、経緯、切欠、そのどれもがことごとく欠如しているからだ。
となるとこれもまた彼女の演技なのだろう。
よくよく考えれば分かることだった。
プライドの高い彼女が、自ら仕掛けた悪戯で返り討ちにされることなど許容できるはずがない。
ましてやその相手が一介の半妖である僕となれば尚更だ。
(だが、こちらとしてもここで引くのは癪なんでね)
こうなったら徹底抗戦といこうじゃないか。
僕と彼女、どちらが先に音を上げるのか。
彼女の悪戯に最後まで付き合ってやるとしよう。
そう決めた僕は手持ち無沙汰になっていた右腕を動かし、優しげな動作でレミリアの背中へと回す。
そうすることで、まるで僕がレミリアを体ごと引き寄せているかのような絵が出来上がる。
徐々に近付いていく2人の顔。
レミリアの幼くも端麗に整った顔が、文字通り眼前にまで迫ってきている。
――これはただの戯れに過ぎない。
頭ではそう理解していても、僕の鼓動は否応なく早まるばかりであった。
◆ ◆ ◆
え。
え、えっ?
なんで? どうしてそこで背中に手を回してくるわけ?
(もしかして、さっきの返答は冗談でも何でもなかったんじゃ――)
そんな馬鹿な。
これではまるで漫画の展開そのものだ。
違うのはこれが現実であるということだけ。
(店主が私のことを……? いえ、まさかそんな――)
そのような素振りは全くなかったはずだ。
仮に本当に惚れられていたとしたら、今日彼が見せた無愛想な態度の数々に説明がつかない。
とてもじゃないが、あれが想い人を前にした者の振る舞いとは思えないからだ。
通常意中の相手を前にしたら動作がぎこちなくなるか、または緊張のあまり落ち着きを失うはずである。
しかし今日彼が見せた態度は至って平静であり、まるでこちらのことを気に掛けている態ではなかった。
となるとやはり、これも意趣返しの一環ということなのだろう。
(――ふっ、ふふふふ。つくづく感心する男ね。ノリのいい人は嫌いじゃないわ)
いいだろう。
だったらそちらが音を上げるまでとことん演技を貫き通してやる。
たとえ戯れとはいえ、ここで引き下がるのは“スカーレットデビル”の名に恥じる。
私はそう決意すると、そのまま彼に引き寄せられるような形で顔を近付けていく。
◇ ◇ ◇
(……そろそろ音を上げてくれないと本当にまずいんじゃないか?)
僕は内心焦りを覚える。
2人の顔の距離は残り数センチ程度しかない。
このままでは、本当に――
◆ ◆ ◆
(……いい加減諦めなさいよ、この男)
私は僅かばかり焦燥に駆られる。
10センチ、9センチ、8センチと、2人の唇は確実に接近しつつある。
このままじゃ、本当に――
◇ ◇ ◇
7センチ、6センチ――
(ここに至ってまだ音を上げないということは、もしかして彼女は本当に僕のことが……いやだからそれはないと何度も――)
◆ ◆ ◆
5センチ、4センチ――
(――っ! さっさと降参しなさいよ! ――それともやっぱり、本当に私のことが……?)
◆ ◇
3センチ、2センチ――
(どうする? 本当にこのままでいいのか?)
(このままだと冗談でも何でもなく本当に店主と――)
1センチ――
(レミリア――)
(店主――)
ガタガタッ!
突如として大きな音が響きわたり、僕とレミリアの2人はビクッと背筋を震わせた。
音がした方向に2人揃って目を向けると、そこには何の変哲もない窓ガラスがある。
どうやら突然の強風に煽られて、建てつけの悪かった窓ガラスが悲鳴を上げたらしい。
途端に緊張の糸が切れ、どっと疲れが溢れ出す。
どうやらそれはレミリアも同じだったらしく、どことなくホッとしたような表情を浮かべていた。
「……ぷっ」
「……くっ」
そうして僕たちは互いに目を合わせると、どちらからともなく笑い出すのであった。
◇ ◇ ◇
『今日は中々に愉快だったわ。約束どおり、次に私が来るときまでに紅茶の淹れ方をマスターしておきなさい』
最後にレミリアはそう告げると、来たときと同じく意気揚々とした足取りで香霖堂を後にした。
紅茶の淹れ方をマスターしておけなどと、これまた随分と厄介な宿題を授かってしまったものだ。
というかそんな約束を交わした覚えはないのだが。
レミリアが飛び去るのを見送った後、店内に戻った僕は飲み干したカップと放置された漫画の片付けに取り掛かった。
そうしてたった今それらを終えて、1人きりになった店内でようやく一息つくに至る。
(中々に愉快だった、か)
確かに愉快と言えば愉快だったが、それ以上に疲れたという感想が僕の胸中の大半を占めていた。
レミリアが1人でこの店にやってきたこと自体、本来なら予測不可能なほどの出来事なのだ。
それがまさかあんな展開になるだなんて、運命を見通すというレミリア自身も予想だにしていなかっただろう。
(……それにしても今日はまた一段と珍しいものが見れた)
紅魔館の主にして偉大なる吸血鬼の末裔、レミリア・スカーレット。
彼女に対し伝聞と主観によるイメージしか抱いていなかった僕にとって、今日は驚きと発見の連続であった。
達観した自論の持ち主であり、気品溢れる動作の1つ1つからは貴族の誇りが感じられた。
かと思えばまるで子供のように漫画を読み耽ったり、お菓子を頬張るその姿はどこからどう見てもただの可愛らしい少女であった。
見た目相応な少女の面と、長い歳月を生きた吸血鬼の面。
それら2つの面をころころと使い分ける彼女には、僕らしくもなく随分と振り回されてしまったものだ。
――そして何より、あの戯れの際に見せた魅惑的な一面。
記憶に鮮明に焼き付けられた彼女の紅い双眸は、今なお僕の心を捉えて離さない。
あの時の彼女を思い返すたび、僕は自らの鼓動がどうしようもなく早まるのを感じた。
(あの時、僕はどうしてあんなことを思ったのか……)
今にも2人の唇が触れ合おうというあの瞬間。
僕は一体何を思った?
拒絶? ――違う。
諦観? ――惜しいが、若干違う。
期待? ――違う……はずだと思いたい。
いくら考えても思考は纏まらず、ひたすら堂々巡りを繰り返すばかりだ。
あの時のことを思い出すだけで体の芯は少なからず熱を帯び、羞恥心にも近い感情が頭の中を支配する。
そこで初めて僕の中にもこんな感情が眠っていたのかと気付かされ、己の未熟さに苦笑しながら頭を掻くのであった。
◆ ◆ ◆
「お帰りなさいませ、お嬢様」
紅魔館に帰り着いた私を、既に買出しを終えて戻ってきていた咲夜が恭しく出迎えた。
「1人で外出などなされて大丈夫でしたか?」
「私は子供じゃないんだから……」
どうにも咲夜には心配性なきらいがあり、今日のように私が1人で外出して帰ってくると決まって同じ言葉を投げ掛けてくる。
それも主人である私を思ってのことだと考えれば、そこまで悪い気もしないのだが。
「本日はどちらへ?」
「ん、ちょっと香霖堂まで。漫画を読みにね」
「香霖堂ですか?」
咲夜は少し意外そうな反応を示したが、すぐに納得したような顔付きになった。
確かに私が1人で香霖堂へ行くなど想像がつきにくいが、漫画を読むためだという理由を聞いて得心がいったのだろう。
咲夜は私以上にあの店を訪れる機会が多いため、あそこがどんな商品を取り扱っているのかそれなりに知り得ているからだ。
「あ、咲夜。今日の夕食はいつもより豪勢にお願いね。それから食後の紅茶はいらないわ」
今日はもう飲んできたからね、とは言わない。
言ったところで意味はないし、言う必要もないだろう。
決して隠しているわけではない。
「? 分かりました。夕食は普段よりも豪勢に、食後の紅茶は不要ということですね」
「ええ、よろしくね」
またしても咲夜の顔に疑問が浮かんだが、それについて私に問い質すような真似はしなかった。
無意味な質問を重ねて主人を煩わせるようでは一流の従者とはいえないからである。
話はこれで終わりだと言わんばかりに、私は咲夜に背を向けて歩き出す。
このまま自室に戻って夕食の時間まで少し体を休めるとしよう。
「あの、お嬢様」
しかし、そんな私を咲夜が呼び止めた。
別に主を呼び止めること自体は失礼に値する行為ではない。
だが、私に対して極力余計な詮索をしてこない彼女にしては、これは比較的珍しいことである。
そんな咲夜の呼び止めに対し、私は別段気分を害することもなく振り返った。
「何? 貴女が私を呼び止めるなんて珍しいわね」
「すみません、ですが……あの」
「?」
一体何だろう?
随分と歯切れが悪いみたいだけど……これも何だか咲夜らしくない反応だ。
「どうかしたの? 気になることがあるなら遠慮なく言って頂戴」
「はい。では、その……今日、何かいいことでもあったんですか?」
その言葉を聞いたときの私の表情を喩えるなら、『ハトが豆鉄砲を食らったような顔』という表現が最もしっくりくるだろう。
吸血鬼である私が実際に豆鉄砲を食らったら呆然とするどころではないのだろうけど。
「……どうしてそう思ったのかしら?」
詰問するわけでもなく、ただただ純粋に湧き上がった疑問を咲夜へとぶつける。
「いえ、ただ今日はいつもより機嫌が良さそうでしたので……」
咲夜は若干バツが悪そうにしてそう答えた。
別に怒っているわけではないのだから、そこまで気にしなくてもいいのだけれど。
それにしても、私の機嫌がいつもより良さそうだって?
「ふっ、ふふふふ……」
「お嬢様?」
――そうか、私は今機嫌がいいのか。
それも他人から見て容易に分かるぐらい、いつも以上に、だ。
思い起こすのは今日の出来事。
仕掛けたのは私の方からだったが、結果的につまらない意地の張り合いになってしまったあの茶番劇。
しかしその茶番劇の最後、私は一体何を思った?
あの男の顔を間近にして、私は何を考えた?
(恋愛感情なんて理解できないし、理解しようとも思わない)
その意見については今も変わらない。
私は夢見る人間の少女ではない。幾重もの歳月を重ねた高潔なる吸血鬼だ。
それでもだ。
それでも、もし――
もし私の中に、少女と呼べる一面が少しでも存在していたとしたら――
そうだとしたら、あの瞬間の私の思考にも納得がいく。
『小さなことに拘って見聞を狭めていたら、生涯を楽しめない』
それは今日、私が店主に語って聞かせた自論の1つだ。
、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、
そしてそれに習うのならば、私には理解できないと最初から諦めて理解しようとしないのは、自らの言葉を否定することになりかねない。
それは大変好ましくない。
自分で言ったことを曲げるなど、レミリア・スカーレットの名が廃るというものだ。
(私も“その感情”をもっとよく知れば、この生涯をもっと楽しめるようになるのかしら。ねぇ、店主?)
私は彼に何かを期待するかのように、ひそかに心の中で問いかけた。
やっぱり,お嬢様の魅力はいろんな面を見せてくれるところだなぁ.
オチらしいオチも無かったし、安定した作品でした。
あとパチュリーの『そんなに暇ならどこかに出かけてこれば?』は誤字でしょうか?
大妖怪あいてにここまでやれるのはこいつしかいない。
実に良かった^^
確かに少しおかしな表現だったかもしれないです…
というわけで若干修正させて頂きました!
ご指摘ありがとうございます m(_ _)m
これ射命丸あたりの仕業だったら綺麗にオチがつきそうだね
これで咲夜の絡みが有れば、見事な少女マンガ的展開でしょう。
魔理沙「うわぁぁぁぁぁぁぁ・・・」
文「キタコレ!ウッヒョー!」パシャパシャ
しかしなんとまぁ乙女レミィ。
良い物を読ませて貰いました。
数十年しか生きてない人間が、数百年を生きた人外の心情を描くのは難しいのですが……
貴方のレミリアはよく書けてる(もちろん霖之助さんもね)
次の作品も期待しています!!
眼福眼福
二人の思惑にニヤニヤが止まりませんでした。
オチもお見事、言うこと無しです
窓ガラスはスキマの仕業かと思ったんだが…
面白い
8888
きっと紫や幽香に色恋方面でも何度もからかわれて鍛えられたんだな。
無碍でなく無下かな
無碍については融通無碍を参照