ぎーこらばったんぎーこらばったん。
あたいはのんきな渡し屋さん♪ ってね。
鼻歌謡って船を漕ぐ。三途の河で船渡し。
さてさて今日もお仕事だ。お喋りでもして紛らわそう。
お客を相手に無駄話。さあさあの人でも語ろうか。
聞いとくれよお客さん。
あたいの上司はダメなひとでね。
なんでもかんでも背負い込んで、一つたりとも手放せない。
なんでもかんでも他人の為人の為。嫌われてんのにやめられない。
他人の為に嫌われる。そんなことさえよしとする。ちょいと困った頑固者。
あたいの苦労を聞いとくれ。
魂はなんにも喋らない。語るべき口が無い。
身を捩らせたそれは肯定か。ま、否定でも構いやしない。
勝手気ままに長々と、延々だらだら語ってやろう。
あたいのかわいいかわいい閻魔さま。
想い人の気苦労を。
兎にも角にもあの人は、万事において生真面目なのさ。
仕事場から出てこない。ほっときゃいつまでも出てこない。
そんであたいの苦労が始まる。聞くも涙語るも涙の忠臣譚。
お代は六文でいただこう。
ぎっこらばったん船を漕ぐ。語りながら船を漕ぐ。
あたいは通称サボりの泰斗。サボるのだけが自慢でね。
されどあたいは忠臣なのさ。そのわけを知りたいかい?
自慢できるこのサボり。何故なら全部上司の為さ。
気真面目一徹なあのお方、サボる部下居りゃ叱るよね。
そうなりゃ仕事ほっぽりだして、あたいを探さにゃいけないさ。
さすれば仕事を忘れるよ。あたいを叱ってストレス発散。
籠りがちなあの人に、お日様見せてあげようってんだ。
どうだいあたいは忠臣だろ?
ぎっこらばったん船を漕ぐ。語りながら船を漕ぐ。
それを何度も繰り返し、ついたあだ名がサボりの泰斗。
なんと名誉なあだ名かね。旗に掲げてみようかね。
流石にそいつはおこがましいか。気づかれたら意味が無い。
真面目なあの人気づいたら、二度とあたいを探してくれない。
さびしい上に困りもの。お日様見せてあげられない。
そうなりゃ名誉なあだ名も不名誉に。何もかもがおじゃんだね。
いやいやあたいはどうでもいい。あの人悲しむがよろしくない。
かわいいかわいいあのお方。花は陽の下で咲くもんだ。
暗いあの世に閉じ籠る。そんなさびしい話はない。
というわけだお客さん。船を降りたら忘れとくれ。
あたいの苦労はなかったことに。
そうすりゃ万事が廻るのさ。
ぎっこらばったん船を漕ぐ。語りながら船を漕ぐ。
聞いた話を忘れろなんて、無体な話もあるもんさ。
あの世の裁きもそんなもん。無体無体で泣きたくなるよ。
覚悟しときなお客さん。どんな裁きも受け入れな。
地獄の沙汰も金次第。
三途の六文見てみたけれど、どっこいあんたは微妙な線だ。
渡し守にゃわからない。閻魔さまの胸先三寸。
覚悟しといて損はない。
ぎっこらばったん船を漕ぐ。笑いながら船を漕ぐ。
どうかしたかいお客さん。随分長いだんまりだ。
脅しがちょいと過ぎたかね? 小さな親切大きなお世話。
あたいの悪い癖が出ちまった? そいつはすまない悪かった。
おやおや違うと仰いますか。そんなに首振っちゃ疲れちまうよ。
ん? どうかしたかいお客さん。
そんなにくちびる尖らせて。
魂はなんにも喋らない。語るべき口が無い。
だけど言いたいことは滲み出る。
そんなに気にかけているのなら、なんで好きだと伝えない。
聞こえないけど感じてしまう。
そんな文句が届いてしまう。
長年死神やってると、声なき声が聞こえてしまう。
聞こえないふりもみっともない。ちょいと真面目に答えよう。
……いやいやそいつはナシさお客さん。
あたいみたいな部下は要るけど、あたいみたいな伴侶はダメだ。
ダメなあの人がダメになる。今よりもっとダメになる。
息抜きガス抜きは必要だけど。
すっからかんはよろしくない。
え? あたいが真面目になればいい?
そいつは簡単。でもダメさ。
目くじら立てて青筋立てて、本気で怒れるあたいじゃないと。
あのひとの傍には居られない。
このままもダメ変わってもダメ。
ダメダメ尽くしでどうにもならない。
ぎっこらばったん船を漕ぐ。語りながら船を漕ぐ。
真面目と真面目じゃ相性悪い。真面目と不真面目揃ってこそだ。
あたいが真面目になったのならば、あの方いっしょに潰れちまうよ。
あの人不真面目なったのならば、仕事が出来ずに終わっちまうさ。
同じじゃ駄目さ違わなきゃ。あたいは不真面目あの方真面目。
これでバランス取れてんだ。
なんて顔してんだお客さん。あたいはこれでも幸せさ。
花は遠くで愛でるもの。手折れば萎れて枯れちまう。
あの人花に譬えたけれど、こんな幸せもあるんだよ。
ぎっこらばったん船を漕ぐ。語りながら船を漕ぐ。
そうだねあたいはあの方大好き。心の底から惚れてるよ。
だから好きだと言えないよ。
花を摘む度胸も無いさ。意気地無しだと笑っとくれ。
かわいいかわいいあのお方。あたいだけの閻魔さま。
愚かなまでに生真面目一徹さびしい花だ。だからあたいが見守るよ。
あたいは遠くで愛でれりゃ満足。こんな恋もあるんだよ。
ぎっこらばったん船を漕ぐ。笑いながら船を漕ぐ。
難儀な恋さまいっちまうよ。あんたは来世じゃいい恋しなよ。
今生の恋はどうだった? なんて風に聞きたいけれど、おっともう着いちまう。
さあさ閻魔の裁きだよ。地獄か極楽、あんたはどっちに行くのかね?
余裕があったら応援しとくれあたいの恋を。
あんたの分まで幸せをってね。
魂は船を降りて去っていく。
何度もこちらを振り向いて。
手を振り先を急がせる。あの世で迷うは困りもの。
見えなくなるまで手を振って、あたいは大きな溜息一つ。
今日は真面目に働いた。余計なまでに働いた。
さあてそろそろサボろうか。真面目に不真面目気取ろうか。
愛しい愛しいあのお方。愛しい花を咲かせよう。
お日様の下に連れ出して、語れぬ愛を語ろうか。
小町だろうと誰だろと俺の拳で沈めるぜ!(ヒットマンスタイルで
が信条の俺ですが、この小町と映姫はいいなぁ。
お道化る恋路も粋ってもんよ!
なんですかこの後書きは!その後を想像したらもう、あああ可愛いなぁ!
ちゅっちゅまでは未だ遠く。
GJ
なんだかやるせないねぇ…なんてしみじみしよいとしたらこの有り様だよ!
チクショー…チクショウメェェェ!!
こまえーきと猫井殿に幸多かれ!!
ありがとうございました。
ああ嫉ましや妬ましや、末永くお幸せに爆発しろ!!!
なんとも素敵な雰囲気のこまえーきでした。
リア充のくせして悲恋気取りやがってよお…。爆ぜろ!
俺の同情を返しやがれ!
あ、話は面白かったですよ、もちろん。