Coolier - 新生・東方創想話

ダウジング星!

2011/03/06 17:45:49
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「あれ~、宝塔が見つかりませんね。」
ご主人がなにか後ろでゴソゴソしている。
嫌な予感しかしないので現実逃避を兼ねて今の状況を教えよう。
今我々は聖救出の為に魔界へ向かっている聖蓮船に乗っている。
メタ語を使うなら東方星蓮船の始まる前といったところか。
「ふうむ、こりゃ完全に失くしましたね。ということでナズーリン。」
そらきた。
「探しに行ってきます!留守番頼みますよ!」
「待て!ご主人!」



皆もご存じのように、ご主人は物をよくなくす。
昔も同様、ご主人自身もそれに悩まれていた。
だが、ある時、確かあの時は槍を失くした時だったか、ご主人はその日ずっと寺にいなかった。
次の日、ご主人はボロボロな服装になって帰ってきた。槍と一緒に。
だが、それだけではなかった。

さて、ご主人の能力は財宝が集まる程度の能力である。
だが、ただ胡坐をかいているだけでは集まるわけでない。そんな便利な能力ではない。
自分から行動を起こさないと、財宝なんて手に入らない。

そう、ご主人が帰ってきたとき、槍を左手に、そして何故か盛大なる杯を右手に持っていた。
問い詰めたところ、どうやら槍を探しているうちに迷い込んだ森の中にあったとか。
お前はどんな辺境で槍を失くしたのかと突っ込みたかった。
聖も、「星は”だうじんぐ”の才があるのかもしれませんね。」など言ったので、
ご主人はさらに調子に乗り、何か自分が物を失くすとそれを口実にダウジングに行くようになった。
ご主人はよくものを失くす、そして、物を失くすと財宝と一緒に帰ってくる。
さて、これが続くとどうなるか、察しが付くであろう。
これが、ご主人の能力のいわれである。


ご主人のダウジングはすべて野生のカンである。これはもう天性である。
何を隠そう、私にダウジングを教えてくれたのはご主人である。
おかげで私にクソヒマな仕事の片手間に出来る暇つぶしができた。
あと、ご主人はたいてい忙しいし、それに上に立つ身分なので、そうそう動けなかったりすることもある。
だから、そういう時は私がダウジングに出かける。
例えば、そう…

「ご主人、今はとても重要な時なのだからこの船を外してはダメじゃないか。」
「いや、私がいなくても何とかなるでしょう。後から追いつきますから。」
「指揮官が不在でどうするんだ。」
「指揮などしなくても、ムラサのおかげで船は勝手に進んでいますよ。」
「そういう問題じゃない…。まあいい、私が探してくるから、ご主人は決してどっかいったりしないでくれ。」
「…はあ、分かりました。」
本当、ご主人は上に立つのに相応しくない性分だ。





無事ではないが聖救出も成功し、時は巡って、今。
相変わらずご主人はよく物をなくし、そして出かける。
まあ、一緒にとってくる財宝は全て森とか洞窟とかにある野生のものだから、盗みじゃないし、誰かが損するわけではないからいいが。


「魔理沙、頼むからあまり宝物の類を持っていかないでくれないかな。いやこれ割と本気で。」
「どうした霖之助、つれないな。」
「最近無縁塚でそういったものが見つからないんだよ。」
「それは大変だな、それじゃ持ってくぜ。じゃーなー!」
「あ、こら…ホントに火の車なのに…。」
「お兄さん、あたいを呼んだかい?」
「いや、今はまだ餓死するほどではないがね。」

「お嬢様、重要な話があります。」
「何だね、咲夜。」
「紅魔館が所有していた宝石の大半がなくなりました。」
「よし、わかった。あの能無し門番をココに連れてこい!」
「いえ、美鈴は悪くありません。彼女は対魔理沙以外は優秀です。」
「それじゃあ、なんで取られたのよ!」
「以前お嬢様が『木の葉を隠すなら森の中っていうじゃない。つまり森は最高の隠し場所なのよ!』などのたまって、全ての宝石を森に隠すように命じられました。」
「え…。」
「それでも私たちは努力したんですよ。思いっきり深く埋めたり、カモフラージュしたり。」
「あ、うん…。」
「場所選びにはあの八雲藍作成の、妖怪の賢者ですら予測できない乱数表、
通称『藍数表』を用いたので、あの八雲紫でも半分以上を見つけ出すのは至難の業のはず…。」
「そうだったの…。ってそれじゃ誰が見つけ出したっていうのよ。」
「分かりません。おそらくよほどの者かと。」

「なんてこった…。私が集めていたアイテムから、ご丁寧に”価値がある”モノだけ消えやがってる。」
「というか魔理沙、あなたどれだけこの家を放置していたのよ。」
「おいアリス、お前が盗ったんじゃないんだろうな!」
「私はそんなことしないわよ。ただ、何も知らない冒険者とかなら、ここならダンジョンとかに間違えて入ってくかもね。」
「そんなわけあるか、ここは私の家だぜ。」
「だから、それほど魔窟化しているってことよ。」

きっと誰も損はしていない筈。



さて、財宝がたくさん集まってくると、問題となるのはそれの使い方である。
そんな宝石とか、貴金属とか、よく分からない絵画など、寺にたくさんあったところで仕方がない。
あの古道具屋も、最近は金がないとかで、買い取ってくれないし。
また、ただ寄付としてばらまけばいいというわけではない。
例えば、金をばらまき続けたら、あそこの寺はなにか裏でもあるのか、怪しいぞ、とかなって
最終的にはまた命蓮寺かとかいうふうに言われてしまう。それは避けたい。
あと、必要以上の富は争いを生む。寄付のためこの里だけ豊かになると、ほかの里から強奪がくるかもしれない。
小難しくいったが、要するに、財宝は気軽にホイと渡せるものではないのだ。
渡すとしたら、卑しみがない純情な人などがいればいいのだが…。
…と悩んでいると、最近、宝石の処分先だけは決まった。
地霊殿の霊烏路 空というやつだ。あいつの目は澄んでいる。
宝石を権力の象徴でなく、ただ単に輝いているものとしか見ていない。
しかも、よく宝石を灼熱地獄に落とし、二酸化炭素に変化させているので、いくらやっても尽きない。最高のクライアントだ。




最後に一つ、いかにご主人がいろいろな意味ですごいかがわかるエピソードを紹介しよう。

ある日、ご主人はまた宝塔をなくした。
その日の夕食のとき、星が聖に言った。
「今回の探検は、きっと大きなものになります。しばらく、この寺を離れることになるでしょう。」
「そう、気を付けてくださいね。」
「えー、なになに、どっか行くのー。私も行っていい?」
「いけません、ぬえ。これは私の責任ですから、あなたまで危険な目に合わせるわけにはいかないのですよ。」
「星、生きて帰ってきてね!」
「星なら大丈夫よ。信じてるわ。」
「…。(お主なら成し遂げられるであろう)」
いや、失くし物を探しに行くだけなんだぞ。どうせ2,3日したら帰ってくるだろうに。皆、なんでそんなノリノリなんだ、と思っていた。

予想に反して、ご主人は1か月ぐらい帰ってこなかった。
最近はなにも大したことがない。一つあるとすれば、ご主人が旅たった数日後の晩、妖怪の山から爆音が起き、煙がたくさん出ていたことであろう。
そんなこと、妖怪の山ではよくあることである。核実験でもしているのだろうか。


ご主人失踪から50日目、何故か寺に八雲紫が来た。正直嫌な相手だ。
だが、今日の彼女は、いつもの嫌な雰囲気ではなく、なにかこう、少し縮こまっているようだ。
「あら、わざわざどうも。本日はどの様な用件で?」
「お構いなく。まあ、私にも責任があることだし。よっこいしょっと。」
「まあ、その機械は何ですか。」
「聖、貴方は触らないほうがいいぞ、きっと壊すだろう。」
「えー、こほん。これは、星さんと会話ができる機械です。」
「え!なになに!それ!」
「ぬえ!騒がないの。」
「さて、スイッチを入れますね。」

『ピー、ガガガガ』

皆がその機械に注目している。

『皆さん、こんばんは、あ、違うのか、こんにちは、寅丸星です。只今宝塔を発見しました!
いまからそっ…に帰ろう…思い…す。あ、電波…悪い。ちょっ…待って…くだ…い。
ココは一日が早…て、太陽…すぐに沈む…です。いまそっちの…うに向く…う移動し…すね。
ふう、大丈夫なようです。あ、今から帰路に入ります。たぶん紅魔館の湖に落ちる計算なので、迎えに来てくださいね!
さて、にとりさーん、もう出発するんで、お願いします。空さん、あともうひと頑張りですよ。火力お願いしますね。』

「彼女は今、とある小惑星にいるわ。私の計算だと、あと1か月と8日で帰ってくると思うわ。」


私はおめでとムードで熱狂している寺を抜け出して、外に出た。そして、ご主人がいるであろう方角の空へ向かって叫んだ。
「お前はどうやってそこで宝塔をを失くしたんだ!ご主人!」
「藍、たまには稽古でもつけましょうか。」
「大丈夫なのですか、急に激しい運動をすると、体に悪いですよ。」
「私を誰だと思っているのよ!いくわよ。外力「無限の超高速飛行体」!」
爆風が起きる。何かが衝突したような音がした。
「こんなのに当たるなんて、藍らしくないわねぇ。あなたこそ鈍ったんじゃないかしら。」
「甘いですよ紫様。」
「!!」
「それは私ではなく、そこに落ちていた何かを私の身代わりにしたものですよ。眼が衰えましたね。」
「フフッ、やるわね、藍。でも、次はないわよ。いくわ…」

宝塔、大気圏突破の瞬間であった。

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初めまして。初投稿で緊張してタイプミスばかりしている機械車輪です。
文字を書くって難しいですね。実際にやってみて、長編なんか書いている作者さんのすごさが身に染みてわかりました。

今回はかっこいい星ちゃんを書きたかったのですが、うっかりじゃない星なんて星じゃないと思い、
このような作品になりました。

なにはともあれ、読んでいただきありがとうございました。
機械車輪
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コメント



0.610簡易評価
1.90奇声を発する程度の能力削除
お空勿体無いぞ!!!
2.無評価名前が無い程度の能力削除
オチのナズの突っ込みが好きすぐる。
次回作も楽しみにしています。
3.90名前が無い程度の能力削除
点数つけ忘れ
6.無評価名前が無い程度の能力削除
「うっかり大気圏突破しちまった!」
…この突き抜けた感じが大好きです。
8.80鈍狐削除
しっかりとオチまでつけてしかし混沌具合を抜け出さない。
御見事にござります。
9.100名前が無い程度の能力削除
言えない!星がドヤ顔で「ナズーリン、たなびたいことがあるんです、チョット」で始まるかと期待していたなんて言えない!
19.100名前が無い程度の能力削除
つーか、大気圏突破までしてよく壊れないな。