「早苗……?」
「すー……」
呼びかけに応えたのは、静かな寝息。
緑の巫女は安らかな顔で、私の膝の上に頭を預けいる。
「寝ちゃった……?」
「すー……」
再び呼びかけても、僅かに姿勢をずらしただけで、起きる様子は無い。
全く無防備すぎる。妖怪の前で熟睡するなんて。
「起きないと、イタズラしちゃうよ……?」
「すー……」
膝の上の巫女は、あくまでも起きる気はないらしい。
寝息に合わせて、私の心臓がとくとく言うのが聞こえる。
「早苗が悪いんだからね……」
首筋に唇を当てて、跡が出来るように強めに吸い付く。
起きちゃうんじゃないかと、少しひやひやしたけど、口を離しても早苗はまだ眠ったまま。
吸い付いた場所を見ると、赤い跡――私のものって印がちゃんと付いていた。
「早苗は私のものなんだからね……?」
「どうしたんですか、その赤い……なんでしょう、痣?」
のんびりと何処へ行くでもなくブラブラと飛んでいると、急に後ろから声をかけられました。
振り返ってみると、逆さまになってこちらを覗き込む鴉天狗――文さんと目が合いました。
ちょっと気になって視線をスカートに持っていくと、逆さまになっているにも関わらず、めくれている様子は有りません。
どういう仕組みなんでしょう、これ。
「赤い? 何処でしょうか」
「首の右後ろの所なんですけど」
「流石にそれは見えませんね。どんな形ですか?」
「んー、丸っこい、楕円のような……まあ、虫刺されか何かでしょうかね」
結局自分で見ないと分からないと言うことでしょうか。
帰って鏡を見るしかないですね。
「虫刺されって……まあ、最近暖かくなってきましたけど」
「お互い気を付けましょう。……それではこれにて」
……風のように文さんは去っていきました。
何か用事でもあったんでしょうか?
まあ、とりあえず、神社に帰りましょう。
赤い痣が何か気になりますし。
……と、いうことで、家に帰って手鏡で覗いたですけど。
「これって、キスマーク……ですよね」
本当は違うのかも知れないですけど、一度そう見えてしまうと、もうキスマークにしか見えません。
いつどこでこんなの付けられたのでしょう。
心当たりがありすぎて、どれか分かりませんね!
イチャイチャするときは、隙あらばぬえちゃんにキスマークを付けていたので、真似したくなったのでしょうか。
でも、付けるなら、隠れる場所にしてくれた方が良かったですけど。
後ろめたいわけじゃないんですけど、まだちょっとバレると恥ずかしいというか……。
まさか、それを狙って、わざと隠れない場所に付けたとか、そんなことはないですよね……?
いや、まさか、そんなことはないですよね。
私、ぬえちゃんのこと信じてますよ?
「さなえー」
と、そこへ、噂をすれば何とやら。
ぬえちゃんのご登場です。
「あら、ぬえちゃんいらっしゃい」
ちょうど良く現れたとはいえ、面と向かって聞くのは、ちょっと躊躇います。
“キスマーク”の概念から説明しなければならないとなったら、ちょっと大変です。私の羞恥心的な意味で。
ええ、私たちはまだ健全な関係ですから!
あ、でも、キスぐらいはしますよ? 恋人ですし。
「えへへ」
「――っと、どうしたんですか、ぬえちゃん」
私を見つけるなり、パタパタと走ってきて――そのまま胸にダイブ。
危うく尻餅付くところでしたよ。気を付けて欲しいですね。
でも、ぬえちゃん可愛いから許します。甘えてくるぬえちゃん可愛いです!
「早苗は私の事好き?」
「ええ、もちろん好きですよ?」
「……あの天狗よりも?」
ああ、なるほど。さっき文さんと話してた所を見てたのですね。
それで嫉妬して……ますます可愛いです。
「もちろんです。私の恋人はぬえちゃんだけですよ」
言いながら、背中に手を回して、きゅっと抱きしめます。
「えへへ、私もだよ、早苗!」
無邪気な告白が、思いの外嬉しくて――胸がきゅーっとなります。
私が好きなのは、ぬえちゃんしか居ないって、実感します。
バレたら、バレた時でしょう。
正々堂々と、「ぬえちゃん」が好きって言ってやりますよ!
……多分きっと。努力はします。言えると良いなぁ。
……と、そんなことがあった翌日なのですけど。
いつもの様に朝食の準備をしていると、バタバタと廊下を走る足音が聞こえてきます。
間隔からして、神奈子様でしょう。
「早苗!」
「廊下を走っちゃダメですよ、神奈子様」
台所に顔を出したのは、予想通り神奈子様。
よほど慌てていたのでしょう、引き戸に手を付きながら息を切らしています。
「良いから、これはどういう事!」
そう言って、なにやら新聞紙の様なものを渡してきます。
タイトルは……「文々。新聞」。ああ、文さんの新聞ですね。
なにげに中身を見るのは初めてな気がします。
何が書いてあるんでしょうか……って、え……なにこれ。
「山の神社の巫女に熱愛発覚!?」なんて、仰々しい見出しに、後ろから撮った私の写真。
そこに写っているのは、紛れもなく昨日のキスマークで……
「あ――文さんっ!?」
「すー……」
呼びかけに応えたのは、静かな寝息。
緑の巫女は安らかな顔で、私の膝の上に頭を預けいる。
「寝ちゃった……?」
「すー……」
再び呼びかけても、僅かに姿勢をずらしただけで、起きる様子は無い。
全く無防備すぎる。妖怪の前で熟睡するなんて。
「起きないと、イタズラしちゃうよ……?」
「すー……」
膝の上の巫女は、あくまでも起きる気はないらしい。
寝息に合わせて、私の心臓がとくとく言うのが聞こえる。
「早苗が悪いんだからね……」
首筋に唇を当てて、跡が出来るように強めに吸い付く。
起きちゃうんじゃないかと、少しひやひやしたけど、口を離しても早苗はまだ眠ったまま。
吸い付いた場所を見ると、赤い跡――私のものって印がちゃんと付いていた。
「早苗は私のものなんだからね……?」
「どうしたんですか、その赤い……なんでしょう、痣?」
のんびりと何処へ行くでもなくブラブラと飛んでいると、急に後ろから声をかけられました。
振り返ってみると、逆さまになってこちらを覗き込む鴉天狗――文さんと目が合いました。
ちょっと気になって視線をスカートに持っていくと、逆さまになっているにも関わらず、めくれている様子は有りません。
どういう仕組みなんでしょう、これ。
「赤い? 何処でしょうか」
「首の右後ろの所なんですけど」
「流石にそれは見えませんね。どんな形ですか?」
「んー、丸っこい、楕円のような……まあ、虫刺されか何かでしょうかね」
結局自分で見ないと分からないと言うことでしょうか。
帰って鏡を見るしかないですね。
「虫刺されって……まあ、最近暖かくなってきましたけど」
「お互い気を付けましょう。……それではこれにて」
……風のように文さんは去っていきました。
何か用事でもあったんでしょうか?
まあ、とりあえず、神社に帰りましょう。
赤い痣が何か気になりますし。
……と、いうことで、家に帰って手鏡で覗いたですけど。
「これって、キスマーク……ですよね」
本当は違うのかも知れないですけど、一度そう見えてしまうと、もうキスマークにしか見えません。
いつどこでこんなの付けられたのでしょう。
心当たりがありすぎて、どれか分かりませんね!
イチャイチャするときは、隙あらばぬえちゃんにキスマークを付けていたので、真似したくなったのでしょうか。
でも、付けるなら、隠れる場所にしてくれた方が良かったですけど。
後ろめたいわけじゃないんですけど、まだちょっとバレると恥ずかしいというか……。
まさか、それを狙って、わざと隠れない場所に付けたとか、そんなことはないですよね……?
いや、まさか、そんなことはないですよね。
私、ぬえちゃんのこと信じてますよ?
「さなえー」
と、そこへ、噂をすれば何とやら。
ぬえちゃんのご登場です。
「あら、ぬえちゃんいらっしゃい」
ちょうど良く現れたとはいえ、面と向かって聞くのは、ちょっと躊躇います。
“キスマーク”の概念から説明しなければならないとなったら、ちょっと大変です。私の羞恥心的な意味で。
ええ、私たちはまだ健全な関係ですから!
あ、でも、キスぐらいはしますよ? 恋人ですし。
「えへへ」
「――っと、どうしたんですか、ぬえちゃん」
私を見つけるなり、パタパタと走ってきて――そのまま胸にダイブ。
危うく尻餅付くところでしたよ。気を付けて欲しいですね。
でも、ぬえちゃん可愛いから許します。甘えてくるぬえちゃん可愛いです!
「早苗は私の事好き?」
「ええ、もちろん好きですよ?」
「……あの天狗よりも?」
ああ、なるほど。さっき文さんと話してた所を見てたのですね。
それで嫉妬して……ますます可愛いです。
「もちろんです。私の恋人はぬえちゃんだけですよ」
言いながら、背中に手を回して、きゅっと抱きしめます。
「えへへ、私もだよ、早苗!」
無邪気な告白が、思いの外嬉しくて――胸がきゅーっとなります。
私が好きなのは、ぬえちゃんしか居ないって、実感します。
バレたら、バレた時でしょう。
正々堂々と、「ぬえちゃん」が好きって言ってやりますよ!
……多分きっと。努力はします。言えると良いなぁ。
……と、そんなことがあった翌日なのですけど。
いつもの様に朝食の準備をしていると、バタバタと廊下を走る足音が聞こえてきます。
間隔からして、神奈子様でしょう。
「早苗!」
「廊下を走っちゃダメですよ、神奈子様」
台所に顔を出したのは、予想通り神奈子様。
よほど慌てていたのでしょう、引き戸に手を付きながら息を切らしています。
「良いから、これはどういう事!」
そう言って、なにやら新聞紙の様なものを渡してきます。
タイトルは……「文々。新聞」。ああ、文さんの新聞ですね。
なにげに中身を見るのは初めてな気がします。
何が書いてあるんでしょうか……って、え……なにこれ。
「山の神社の巫女に熱愛発覚!?」なんて、仰々しい見出しに、後ろから撮った私の写真。
そこに写っているのは、紛れもなく昨日のキスマークで……
「あ――文さんっ!?」
あなたの作品は毎度ちらしの裏みたいでうんざりします
やばい悶える!キスマークで印をつけるのまぢでおいしい!
めっさおいしいさなぬえありがとうございました!
無邪気なぬえちゃんかわかわvv
一捻り二捻りを加えて、もう少し調理を施して欲しい、というのが正直な心境です。
ただ、もう少し膨らませることができたかなぁとは思います。先の人が指摘されたように。
個人的にはこのぬえの童貞っぽい思考回路を掘り下げたら面白そうだなー、とか
キャラが凄く可愛くかかれてて愛を感じます
これからも名前読みします