白玉楼の朝…妖夢の朝は早い。
「時間は…ちょうど五時ですね…さて、御飯の用意をしないと…」
妖夢は布団から起きると、着替えて台所へ向かった。
「今日の献立は…御飯、お味噌汁、焼き魚、山菜、漬物…でいいよね」
少女炊飯中…
「あ、そろそろ幽々子様を起こしにいく時間だ…起きてくれればいいけど…」
妖夢は幽々子の寝室へと向かった。
「幽々子様、起きて下さい。朝ですよ」
妖夢は毎日幽々子を起こしに来るのだ。
「ええ~っ、もうあさ~?あと五分寝かせて~」
まったくいつもこれですよ!起きてくれたためしがない!
「駄目です!せっかく作った朝御飯が冷めてしまいます」
「うう~…じゃあ、冷めたら温めて♪」
「駄目なんです!冷めてから温めると味が変わってしまい、栄養も変わってしまいます」
「うう~、しょうがないわね~、起きるから先に行ってて用意してて」
「本当ですか?」
妖夢はジト目で幽々子を見る。
「だ、大丈夫よ、もう、用心深いんだから」
「本当ですね…待ってますから早くしてくださいよ」
妖夢は茶の間へ戻っていった。
「さて、もう少し寝ましょう…」
「ZZZ…」
バターン!
「やっぱりそうきましたか!考える事はだいたい分かります!」
「えへへ…ばれてた?」
「さっさと起きて!一緒に朝御飯食べましょう!幽々子様が着替え終わるまでここにいますので」
「妖夢のえっちー」
「う…では、後ろを向いていますので…これでいいでしょう?」
「じゃあ、ちょっと待っててね」
「ZZZ…」
「幽々子様!」
妖夢は怒声を上げる。
妖夢は楼観剣を抜き…
「幽々子様…いいかげんにしてください。毎日これを繰り返すこっちの身にもなってください!」
「あ…はは…妖夢、その剣を締まって…ね?」
「……………」
「わかったわよ、おきるわよ」
「では、先にいってますよ。もし、起きてこなかったら…」
「こなかったら…?」
「これからの御飯は抜きです!」
ピシャン!
妖夢は障子を大きな音を立てて閉め、再び茶の間へ向かった。
「そんな~、ようむ~」
後ろから幽々子様の嘆きの声が聞こえるも無視した。
「はい、起きてきました」
「じゃあ、早めに朝御飯食べましょう」
幽々子と妖夢は御飯を食べはじめた。
「妖夢…」
カコーン←(獅子嚇し)
「冷たいわ」
バキッ
妖夢の箸が折れた。
「全部幽々子様の所為じゃないですか!」
「あ…ごめん、ごめんね」
幽々子様は両手を合わせて謝っている。
「まったく…あっためてくるのでちょっと待っててくださいね…
ふぅ…毎日こうだと疲れる…」
「はい!これでいいですか?」
「ちょうどいい温かさね、ありがと、妖夢」
「これが食べ終わったら次は剣の稽古ですからね」
「は~い」
朝御飯を食べ終えた二人は…
「幽々子様、次は剣の稽古です」
「はーい」
道着に着替えた二人は道場に向かった。
「まずは精神集中です、さあ正座して身を引き締めましょう」
二人は正座をして目を閉じ、精神を集中し始めた。
「…………」
「…………」
その状態でしばらく…
「さあ、幽々子様、稽古を開始しますよ」
「……………えっ、はっ、はい」
(危なかったわ~…少し眠っていたわ)
「まずはこれを持ってください」
妖夢は木刀を幽々子に渡した。
「まずは上段の構え…」
「せいっ!」
「えーと、こう構えて…」
「えいっ!」
「幽々子様、上段の構えには胴ががら空きになります」
「どうしてこんな構えがあるの?」
「上段は受身の構えです…相手が強いと感じた時は使ってください」
「次は中段の構え…」
「これは相手の出方を伺います。
よく相手と打ち合いになる時がだいたい中段です」
「中段の使い道は?」
「相手の攻撃を受け流して隙が出来たところに打ち込みます」
「ようは…幽々子様私に打ち込んでください」
「いいの?」
「大丈夫です。こう使うんですよ、という見本ですから」
「いくわよ…たああ~!」
ガキンッ
「うっ、わっ…」
幽々子は打ち払われ、バランスを崩した。
「ここに…打ち込む!」
妖夢は隙が出来たところに打ち込む…そして、そこで寸止めする。
「このような感じです、わかりました?」
「わかったわ…これを使うには反射神経が必要ね」
「基本の最後、下段の構えです」
「妖夢、なんでこの構えはこんな地面につきそうな構えなの?」
「この下段はカウンターを狙います。
相手の上段に対しては、横に弾く…
中段に対しては、中段で返す…
下段に対しては、もう持久戦です。
諦めた時点で結果がわかります」
「へぇ~、剣の稽古も奥が深いのね…」
「これからも精進するようにお願いしますよ」
「わかったわ」
「もうこんな時間ですか…お昼御飯にしましょう」
「わーい、お昼御飯だー」
「それでは準備しますので、茶の間にいて待っていてください」
「わかったわ、先にいってるね」
妖夢は台所へ、幽々子は茶の間へと向かった。
「昼食は…まあ御飯、味噌汁はあるとして…冷奴、煮干でいいかな」
少女炊飯中…
「はい、幽々子様、できましたよ」
「早く食べようよ~」
「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」
二人は席につき食べ始めた。
「妖夢、この煮干…ちゃんと味がついているわね」
「わかります?結構な時間漬けていましたから…」
「それにこの冷奴…通常とは違うわね」
「それもわかるんですか!?…そうです、この冷奴は根元から違います。
大豆から製造方法まで一新した冷奴ですから」
「最近の調理方法は変わっているのね」
二人はそう思いながら昼食をとった。
「幽々子様、次は琴の稽古です。
私は身を清める為に滝に行きますので…時間になったらまた来ます」
「そう…それじゃ練習してくるわ」
「では…」
妖夢は滝へ、幽々子は琴の練習をしに部屋へ向かった。
「ふう…琴の準備をして…」
「…」
幽々子を琴を弾き始めた。
「桜の~影には~蝶が舞い~あがる~♪」
幽々子は自分の弾いてる音にあわせて歌を唄う。
「友にあわせ~響きを~送る…
永久な~紫の~境界♪…」
それは…共に送る…永遠なる詩…
場所が変わり妖夢は…
ザアアアアアァァァァァァァ
「……………」
「……………」
(お爺様…私はこのままでいいのでしょうか?
幽々子様を甘やかしていて…)
―妖夢…―
(そ、その声はお爺様!)
―妖夢よ…今はお前の心に話しかけている
幽々子殿を甘やかしていたのは私も同じだ―
(そうだったのですか…お爺様も…)
―しかし、それでこそ我らの幽々子殿ではないかと私は思うのだ…
ああしていても私達の事を考えておられる―
(そうですか…お爺様の言う事です…私もそれを維持するために…)
―そうか、それでこそ私の娘だ…―
(それで…聞きたい事があるのですが…)
―どうした…そのような悲しい眼をして…―
(幽々子様は…幽々子様はなぜあのような悲しい眼をしているのですか!?)
―妖夢…お前も、気付いたか…―
(はい…あのような眼は…精一杯振舞っても眼だけは悲しいままなのです)
―幽々子殿は…幽々子殿は辛い運命を背負っておられる―
(辛い…運命…?そのようなことは私はまだ…)
―私も長年幽々子殿に使えていてようやく話してもらったのだ
妖夢にはまだ早いという事なのだろう―
(そうですか…いずれ話してもらえる時があるかな…)
―あるさ…必ず…では妖夢、ではな―
(はい、お爺様も…)
「……………」
ザアアアアアァァァァァァァ
「ふぅ…久々にお爺様の声を聞いた…
昔から変わらず…いろいろな事を教えてくれる
今も、白玉楼のどこかに…?」
「うん…そろそろ幽々子様のおやつの時間ですね
呼びにいかないと…幽々子様は琴だけは飽きずに練習してるから…」
「全ての~死の成り行きは~常に~
隣り合わせの~冥府の門~♪」
コンコン
「幽々子様、そろそろお時間です」
スゥ…
幽々子は弾くのを止めた。
「あら、もうそんな時間?」
「そろそろおやつの時間ですよ」
「それじゃあ休憩しましょう」
「はい、おやつです」
今日一回目のおやつは、みたらし団子3串、柏餅3個だ。
「やっぱり甘いわね~、みたらしは」
「よく食べられますね…」
妖夢は目の前で食べている幽々子を見て言う。
「妖夢、人に大事なのは食べる、寝る、よ」
「何か足りない気もするんですが…」
「まあ、そんな事はどうでもいいのよ」
「じゃあ、柏餅頂きますね」
パクッ
もぐもぐもぐ…
「うん、おいしいですね」
じーーーーーっ
「…なんですか?」
「頂戴」
「まだあるじゃないですか」
「妖夢のそれがいいの、それが一番甘いのよ」
「そうなんですか?」
「そ、味が皆違うのよ。ためしに他のも食べて見なさい」
「そうですか…」
妖夢は他のを一つ食べた。
「あ、確かにちょっと違いますね。
なんていうか…甘みが…違うような気が…」
「あ、やっぱりわかる」
「幽々子様、そろそろ舞踊の時間です」
「わかったわ…それじゃあ、行きましょうか」
妖夢と幽々子は舞踊をするために部屋へと向かった。
「さあ妖夢、今日はね…」
妖夢は慣れない袴姿になり、扇子を持たさせていた。
「うう…やっぱり舞踊は苦手です」
「堅い事言わないの、さあやりましょ」
「うう…やっぱり慣れない」
妖夢は普段、剣を持っているが舞踊の場合は扇子なので違和感がかなりある。
「慣れないのは私が剣を持つのと同じよ、
さ、ちゃんと構えて」
「はい…」
「私に合わせて踊ってね」
幽々子は幽雅に踊り始めた。
「えっと…うっ、わっ」
バターン
妖夢はその場へ倒れてしまった。
「妖夢、駄目じゃない」
「駄目と言われましても…」
「だから…」
幽々子は妖夢の後ろについて…
「こうするのよ」
幽々子は妖夢の手取り足取り教え始めた。
「ちょ…幽々子様…」
「ほら、恥ずかしがらずに…」
「うう…」
幽々子様がこんなに近くに…
「……………」
「あら、どうしたの?黙っちゃって…」
「あの、その…ありがとうございます…教えてくださって」
「改めてどうしたの?」
「いえ、毎回教えてもらっているのに、全然上達しないので…」
「気にしないで、上達するまで教えてあげるから…」
「でも、上達するでしょうか…」
「妖夢!」
幽々子様の怒声が響いた。
「はっ、はいっ!」
「妖夢、剣士は決して諦めないのではなかったのか!?」
「幽々子様…」
「剣士は一度決めたことは最後までやり遂げる意志があるはずよ!
そのことは妖忌もわかっていたわ…
この舞踊は妖忌から教わったのよ…」
「お爺様から…」
「妖忌の舞踊は、それはそれは幽雅な物だったわ…
私が見ていても、眼を奪われていたわ」
「そうだったのですか…お爺様も…」
「妖夢!妖夢は諦めるの!?」
「わかりました!私は…私は、諦めません!お爺様に追いつきます!」
「そうよ、それでこそ妖夢よ!」
「では続きをお願いします」
「どんどんいくわよ、妖夢!」
その後も幽々子様に妖夢は手取り足取り教えられた…。
「ふぅ~~~…疲れた…」
「まだまだね、あれくらいでへこたれてちゃ…」
「剣の稽古より辛いですよ…全身を絶え間なく動かすんですから…
やっぱり自分の得意な事は楽ですけど苦手な物は辛いですよ」
「妖夢、そろそろ二回目のおやつの時間よ」
「え?もうそんな時間ですか?では準備いたしますのでちょっと待ってて下さいね」
妖夢はおやつを取りにいった。
「あ、妖夢」
「なんでしょうか?」
取りに行く妖夢を幽々子が呼び止めた。
「おやつは縁側に持ってきて」
「わかりました」
妖夢は再び取りにいった。
「桜餅と…お煎餅でいいかな?」
妖夢は持って幽々子の場所へと向かった。
「はい、幽々子様」
「ありがと」
「あ、それと…はい、お茶です」
「ん…あ、そうだ」
「なんです?」
「このまま夕飯にしない?」
「月見しながらですか?」
「そう、久々にね」
「いいですね、では用意してきます」
「お願いね」
妖夢は夕飯の準備をしにいった。
「夕飯は…何にしよう…
そういえば昨日漬けておいた甘露煮があったな…
それにしよう…」
妖夢は夜にあまり食べるのはよろしくないのを知っているので、軽くすませる事にした。
「ふぅ~、妖夢も来てから結構時が経ったわね」
―幽々子殿、お久しぶりです―
「あら、妖忌じゃない。久しぶりね」
―今日の昼間、妖夢と話をしましてな…―
「あの子は成長してる?」
―まだまだ精神面がまだまだですな…まだ成長段階ですが―
「でも、妖忌がここに連れて来たときはもっと小さかったわよ」
―さすがにあれから300年程経っていますから…―
「300年ね、長いようで短かったわ」
―我々死の無いものは時間の概念がないですから…―
「それより…妖忌、ここに戻って来る事はないの?」
―戻りたいのはやまやまなんですが、私が幽々子様を妖夢に任せたのは、
私がいると妖夢が成長しないが為なんです―
「確かにね…妖忌がいる時はなにがあっても妖夢は妖忌に引っ付いていたものね」
幽々子はクスクスと笑う。
―そうだ、幽々子殿…これを妖夢にわたしてやってくれませんか?―
幽々子が天をみると手紙と剣がゆっくりと降りてきた。
「これは?」
―妖夢が頑張っているという事で私からの土産です。手紙は伝えたいことが書いてあります―
「わかったわ、ちゃんと渡しておくわ」
―では、宜しくお願いしますよ―
「はい…」
「幽々子様~出来ましたよ」
「待ちくたびれたわ」
「あれ、その剣はなんです?」
「妖忌からのお土産だって」
「お爺様が来たのですか!?」
「来てはいないわ…伝わってきたのよ」
「そうですか…」
「悲しんじゃだめよ、手紙もあるから」
「手紙があるのですか!?」
「ほら」
幽々子は妖夢に手紙と剣を渡した。
「これが…」
「妖夢…とりあえずそれは後にして、夕飯食べましょう」
「そ、そうですね」
幽々子と妖夢は夕飯を月を見ながら食べた。
「幽々子様とりあえず私はお爺様の剣と手紙を部屋に置いてきます」
「わかったわ」
「それと…先にお風呂に入ってもいいでしょうか?」
「ん、いいわよ」
「ありがとうございます」
妖夢は部屋へ向かい、浴衣を持ってお風呂場へと向かった。
「ふぅ~…やはりお風呂は疲れが取れる…」
妖夢は既に脱力感溢れている。
ガラガラガラ
「妖夢っ」
幽々子がいきなり入ってきた。
「ゆっ、ゆっ、幽々子様!?」
妖夢は大慌てだ。
「なに、慌ててるのよ」
「で、ですが…」
妖夢は自分の胸と幽々子様の胸を見比べている。
「じゃあ、入っちゃおうっと…」
ザバァァーーーン
「気持ちいいわね」
「……………」
妖夢は湯船の角でちっちゃくなっている。
「妖夢…」
だきっ
「ゆっ、幽々子様…」
幽々子は妖夢にうしろから抱きついた。
「妖夢、時には無になることも必要よ。
私の胸を貸してもいいから…」
「はい…」
妖夢は力を抜き、幽々子に身を任せた。
「あ、そろそろのぼせてしまいそうです…では、そろそろあがらせてもらいます」
「あ、私もあがるわ」
二人はお風呂を上がり寝る前の挨拶を交わして、それぞれの部屋に戻った。
「妖夢、無理しちゃって…
あの子は………意志が強すぎるから、自分の身を削ってまでも
無理しようとするのよね…それがあの子の悪いところだわ…
でも、そこがいいのよね…妖忌」
「この剣は…」
剣に手紙がついていた。
『この剣の名は桜華狂咲…
その者が護る気持ちで強さが変わる剣だ』
「この剣を私に…
これは…なんだろう…禍々しい感じがする」
妖夢は剣を鞘におさめた。
「ふぅ、さて…お爺様の手紙を拝見します」
『妖夢よ…
久々に手紙を書く
常日頃修行を行っているか?
幽々子殿の我侭に付き合っているか?
実際はそのような事を伝えようとするわけではない
これと一緒に幽々子殿に渡した…剣があるだろう…
あの剣は私がそこを出てから打ってもらった剣の一つだ
妖夢ならその剣の恐ろしさが分かるだろう…
妖夢よ…魂魄の剣士は…志を強く持ち、主をなんとしてでも護り通すのが定めだ
私にはそれが出来なかった…だから私は幽々子殿をお前に預け去ったのだ
いずれ戻るかもしれないが、いつになるかはわからない…
お前が一人前になったとき今日渡した剣を天高く掲げるのだ…
その合図で私は戻る…
それまで、会う事はしばらくないが、幽々子殿を思う気持ちは常に一つだ
では、な…
我が最愛なる妖夢へ』
「うっ…ううっ…お爺様。
わかりました!この魂魄妖夢!
一人前になり、必ずやお爺様の適う剣士になってみせます!」
妖夢はまた志を一つ心に決めた。
そして、妖夢は眠りについた。
「時間は…ちょうど五時ですね…さて、御飯の用意をしないと…」
妖夢は布団から起きると、着替えて台所へ向かった。
「今日の献立は…御飯、お味噌汁、焼き魚、山菜、漬物…でいいよね」
少女炊飯中…
「あ、そろそろ幽々子様を起こしにいく時間だ…起きてくれればいいけど…」
妖夢は幽々子の寝室へと向かった。
「幽々子様、起きて下さい。朝ですよ」
妖夢は毎日幽々子を起こしに来るのだ。
「ええ~っ、もうあさ~?あと五分寝かせて~」
まったくいつもこれですよ!起きてくれたためしがない!
「駄目です!せっかく作った朝御飯が冷めてしまいます」
「うう~…じゃあ、冷めたら温めて♪」
「駄目なんです!冷めてから温めると味が変わってしまい、栄養も変わってしまいます」
「うう~、しょうがないわね~、起きるから先に行ってて用意してて」
「本当ですか?」
妖夢はジト目で幽々子を見る。
「だ、大丈夫よ、もう、用心深いんだから」
「本当ですね…待ってますから早くしてくださいよ」
妖夢は茶の間へ戻っていった。
「さて、もう少し寝ましょう…」
「ZZZ…」
バターン!
「やっぱりそうきましたか!考える事はだいたい分かります!」
「えへへ…ばれてた?」
「さっさと起きて!一緒に朝御飯食べましょう!幽々子様が着替え終わるまでここにいますので」
「妖夢のえっちー」
「う…では、後ろを向いていますので…これでいいでしょう?」
「じゃあ、ちょっと待っててね」
「ZZZ…」
「幽々子様!」
妖夢は怒声を上げる。
妖夢は楼観剣を抜き…
「幽々子様…いいかげんにしてください。毎日これを繰り返すこっちの身にもなってください!」
「あ…はは…妖夢、その剣を締まって…ね?」
「……………」
「わかったわよ、おきるわよ」
「では、先にいってますよ。もし、起きてこなかったら…」
「こなかったら…?」
「これからの御飯は抜きです!」
ピシャン!
妖夢は障子を大きな音を立てて閉め、再び茶の間へ向かった。
「そんな~、ようむ~」
後ろから幽々子様の嘆きの声が聞こえるも無視した。
「はい、起きてきました」
「じゃあ、早めに朝御飯食べましょう」
幽々子と妖夢は御飯を食べはじめた。
「妖夢…」
カコーン←(獅子嚇し)
「冷たいわ」
バキッ
妖夢の箸が折れた。
「全部幽々子様の所為じゃないですか!」
「あ…ごめん、ごめんね」
幽々子様は両手を合わせて謝っている。
「まったく…あっためてくるのでちょっと待っててくださいね…
ふぅ…毎日こうだと疲れる…」
「はい!これでいいですか?」
「ちょうどいい温かさね、ありがと、妖夢」
「これが食べ終わったら次は剣の稽古ですからね」
「は~い」
朝御飯を食べ終えた二人は…
「幽々子様、次は剣の稽古です」
「はーい」
道着に着替えた二人は道場に向かった。
「まずは精神集中です、さあ正座して身を引き締めましょう」
二人は正座をして目を閉じ、精神を集中し始めた。
「…………」
「…………」
その状態でしばらく…
「さあ、幽々子様、稽古を開始しますよ」
「……………えっ、はっ、はい」
(危なかったわ~…少し眠っていたわ)
「まずはこれを持ってください」
妖夢は木刀を幽々子に渡した。
「まずは上段の構え…」
「せいっ!」
「えーと、こう構えて…」
「えいっ!」
「幽々子様、上段の構えには胴ががら空きになります」
「どうしてこんな構えがあるの?」
「上段は受身の構えです…相手が強いと感じた時は使ってください」
「次は中段の構え…」
「これは相手の出方を伺います。
よく相手と打ち合いになる時がだいたい中段です」
「中段の使い道は?」
「相手の攻撃を受け流して隙が出来たところに打ち込みます」
「ようは…幽々子様私に打ち込んでください」
「いいの?」
「大丈夫です。こう使うんですよ、という見本ですから」
「いくわよ…たああ~!」
ガキンッ
「うっ、わっ…」
幽々子は打ち払われ、バランスを崩した。
「ここに…打ち込む!」
妖夢は隙が出来たところに打ち込む…そして、そこで寸止めする。
「このような感じです、わかりました?」
「わかったわ…これを使うには反射神経が必要ね」
「基本の最後、下段の構えです」
「妖夢、なんでこの構えはこんな地面につきそうな構えなの?」
「この下段はカウンターを狙います。
相手の上段に対しては、横に弾く…
中段に対しては、中段で返す…
下段に対しては、もう持久戦です。
諦めた時点で結果がわかります」
「へぇ~、剣の稽古も奥が深いのね…」
「これからも精進するようにお願いしますよ」
「わかったわ」
「もうこんな時間ですか…お昼御飯にしましょう」
「わーい、お昼御飯だー」
「それでは準備しますので、茶の間にいて待っていてください」
「わかったわ、先にいってるね」
妖夢は台所へ、幽々子は茶の間へと向かった。
「昼食は…まあ御飯、味噌汁はあるとして…冷奴、煮干でいいかな」
少女炊飯中…
「はい、幽々子様、できましたよ」
「早く食べようよ~」
「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」
二人は席につき食べ始めた。
「妖夢、この煮干…ちゃんと味がついているわね」
「わかります?結構な時間漬けていましたから…」
「それにこの冷奴…通常とは違うわね」
「それもわかるんですか!?…そうです、この冷奴は根元から違います。
大豆から製造方法まで一新した冷奴ですから」
「最近の調理方法は変わっているのね」
二人はそう思いながら昼食をとった。
「幽々子様、次は琴の稽古です。
私は身を清める為に滝に行きますので…時間になったらまた来ます」
「そう…それじゃ練習してくるわ」
「では…」
妖夢は滝へ、幽々子は琴の練習をしに部屋へ向かった。
「ふう…琴の準備をして…」
「…」
幽々子を琴を弾き始めた。
「桜の~影には~蝶が舞い~あがる~♪」
幽々子は自分の弾いてる音にあわせて歌を唄う。
「友にあわせ~響きを~送る…
永久な~紫の~境界♪…」
それは…共に送る…永遠なる詩…
場所が変わり妖夢は…
ザアアアアアァァァァァァァ
「……………」
「……………」
(お爺様…私はこのままでいいのでしょうか?
幽々子様を甘やかしていて…)
―妖夢…―
(そ、その声はお爺様!)
―妖夢よ…今はお前の心に話しかけている
幽々子殿を甘やかしていたのは私も同じだ―
(そうだったのですか…お爺様も…)
―しかし、それでこそ我らの幽々子殿ではないかと私は思うのだ…
ああしていても私達の事を考えておられる―
(そうですか…お爺様の言う事です…私もそれを維持するために…)
―そうか、それでこそ私の娘だ…―
(それで…聞きたい事があるのですが…)
―どうした…そのような悲しい眼をして…―
(幽々子様は…幽々子様はなぜあのような悲しい眼をしているのですか!?)
―妖夢…お前も、気付いたか…―
(はい…あのような眼は…精一杯振舞っても眼だけは悲しいままなのです)
―幽々子殿は…幽々子殿は辛い運命を背負っておられる―
(辛い…運命…?そのようなことは私はまだ…)
―私も長年幽々子殿に使えていてようやく話してもらったのだ
妖夢にはまだ早いという事なのだろう―
(そうですか…いずれ話してもらえる時があるかな…)
―あるさ…必ず…では妖夢、ではな―
(はい、お爺様も…)
「……………」
ザアアアアアァァァァァァァ
「ふぅ…久々にお爺様の声を聞いた…
昔から変わらず…いろいろな事を教えてくれる
今も、白玉楼のどこかに…?」
「うん…そろそろ幽々子様のおやつの時間ですね
呼びにいかないと…幽々子様は琴だけは飽きずに練習してるから…」
「全ての~死の成り行きは~常に~
隣り合わせの~冥府の門~♪」
コンコン
「幽々子様、そろそろお時間です」
スゥ…
幽々子は弾くのを止めた。
「あら、もうそんな時間?」
「そろそろおやつの時間ですよ」
「それじゃあ休憩しましょう」
「はい、おやつです」
今日一回目のおやつは、みたらし団子3串、柏餅3個だ。
「やっぱり甘いわね~、みたらしは」
「よく食べられますね…」
妖夢は目の前で食べている幽々子を見て言う。
「妖夢、人に大事なのは食べる、寝る、よ」
「何か足りない気もするんですが…」
「まあ、そんな事はどうでもいいのよ」
「じゃあ、柏餅頂きますね」
パクッ
もぐもぐもぐ…
「うん、おいしいですね」
じーーーーーっ
「…なんですか?」
「頂戴」
「まだあるじゃないですか」
「妖夢のそれがいいの、それが一番甘いのよ」
「そうなんですか?」
「そ、味が皆違うのよ。ためしに他のも食べて見なさい」
「そうですか…」
妖夢は他のを一つ食べた。
「あ、確かにちょっと違いますね。
なんていうか…甘みが…違うような気が…」
「あ、やっぱりわかる」
「幽々子様、そろそろ舞踊の時間です」
「わかったわ…それじゃあ、行きましょうか」
妖夢と幽々子は舞踊をするために部屋へと向かった。
「さあ妖夢、今日はね…」
妖夢は慣れない袴姿になり、扇子を持たさせていた。
「うう…やっぱり舞踊は苦手です」
「堅い事言わないの、さあやりましょ」
「うう…やっぱり慣れない」
妖夢は普段、剣を持っているが舞踊の場合は扇子なので違和感がかなりある。
「慣れないのは私が剣を持つのと同じよ、
さ、ちゃんと構えて」
「はい…」
「私に合わせて踊ってね」
幽々子は幽雅に踊り始めた。
「えっと…うっ、わっ」
バターン
妖夢はその場へ倒れてしまった。
「妖夢、駄目じゃない」
「駄目と言われましても…」
「だから…」
幽々子は妖夢の後ろについて…
「こうするのよ」
幽々子は妖夢の手取り足取り教え始めた。
「ちょ…幽々子様…」
「ほら、恥ずかしがらずに…」
「うう…」
幽々子様がこんなに近くに…
「……………」
「あら、どうしたの?黙っちゃって…」
「あの、その…ありがとうございます…教えてくださって」
「改めてどうしたの?」
「いえ、毎回教えてもらっているのに、全然上達しないので…」
「気にしないで、上達するまで教えてあげるから…」
「でも、上達するでしょうか…」
「妖夢!」
幽々子様の怒声が響いた。
「はっ、はいっ!」
「妖夢、剣士は決して諦めないのではなかったのか!?」
「幽々子様…」
「剣士は一度決めたことは最後までやり遂げる意志があるはずよ!
そのことは妖忌もわかっていたわ…
この舞踊は妖忌から教わったのよ…」
「お爺様から…」
「妖忌の舞踊は、それはそれは幽雅な物だったわ…
私が見ていても、眼を奪われていたわ」
「そうだったのですか…お爺様も…」
「妖夢!妖夢は諦めるの!?」
「わかりました!私は…私は、諦めません!お爺様に追いつきます!」
「そうよ、それでこそ妖夢よ!」
「では続きをお願いします」
「どんどんいくわよ、妖夢!」
その後も幽々子様に妖夢は手取り足取り教えられた…。
「ふぅ~~~…疲れた…」
「まだまだね、あれくらいでへこたれてちゃ…」
「剣の稽古より辛いですよ…全身を絶え間なく動かすんですから…
やっぱり自分の得意な事は楽ですけど苦手な物は辛いですよ」
「妖夢、そろそろ二回目のおやつの時間よ」
「え?もうそんな時間ですか?では準備いたしますのでちょっと待ってて下さいね」
妖夢はおやつを取りにいった。
「あ、妖夢」
「なんでしょうか?」
取りに行く妖夢を幽々子が呼び止めた。
「おやつは縁側に持ってきて」
「わかりました」
妖夢は再び取りにいった。
「桜餅と…お煎餅でいいかな?」
妖夢は持って幽々子の場所へと向かった。
「はい、幽々子様」
「ありがと」
「あ、それと…はい、お茶です」
「ん…あ、そうだ」
「なんです?」
「このまま夕飯にしない?」
「月見しながらですか?」
「そう、久々にね」
「いいですね、では用意してきます」
「お願いね」
妖夢は夕飯の準備をしにいった。
「夕飯は…何にしよう…
そういえば昨日漬けておいた甘露煮があったな…
それにしよう…」
妖夢は夜にあまり食べるのはよろしくないのを知っているので、軽くすませる事にした。
「ふぅ~、妖夢も来てから結構時が経ったわね」
―幽々子殿、お久しぶりです―
「あら、妖忌じゃない。久しぶりね」
―今日の昼間、妖夢と話をしましてな…―
「あの子は成長してる?」
―まだまだ精神面がまだまだですな…まだ成長段階ですが―
「でも、妖忌がここに連れて来たときはもっと小さかったわよ」
―さすがにあれから300年程経っていますから…―
「300年ね、長いようで短かったわ」
―我々死の無いものは時間の概念がないですから…―
「それより…妖忌、ここに戻って来る事はないの?」
―戻りたいのはやまやまなんですが、私が幽々子様を妖夢に任せたのは、
私がいると妖夢が成長しないが為なんです―
「確かにね…妖忌がいる時はなにがあっても妖夢は妖忌に引っ付いていたものね」
幽々子はクスクスと笑う。
―そうだ、幽々子殿…これを妖夢にわたしてやってくれませんか?―
幽々子が天をみると手紙と剣がゆっくりと降りてきた。
「これは?」
―妖夢が頑張っているという事で私からの土産です。手紙は伝えたいことが書いてあります―
「わかったわ、ちゃんと渡しておくわ」
―では、宜しくお願いしますよ―
「はい…」
「幽々子様~出来ましたよ」
「待ちくたびれたわ」
「あれ、その剣はなんです?」
「妖忌からのお土産だって」
「お爺様が来たのですか!?」
「来てはいないわ…伝わってきたのよ」
「そうですか…」
「悲しんじゃだめよ、手紙もあるから」
「手紙があるのですか!?」
「ほら」
幽々子は妖夢に手紙と剣を渡した。
「これが…」
「妖夢…とりあえずそれは後にして、夕飯食べましょう」
「そ、そうですね」
幽々子と妖夢は夕飯を月を見ながら食べた。
「幽々子様とりあえず私はお爺様の剣と手紙を部屋に置いてきます」
「わかったわ」
「それと…先にお風呂に入ってもいいでしょうか?」
「ん、いいわよ」
「ありがとうございます」
妖夢は部屋へ向かい、浴衣を持ってお風呂場へと向かった。
「ふぅ~…やはりお風呂は疲れが取れる…」
妖夢は既に脱力感溢れている。
ガラガラガラ
「妖夢っ」
幽々子がいきなり入ってきた。
「ゆっ、ゆっ、幽々子様!?」
妖夢は大慌てだ。
「なに、慌ててるのよ」
「で、ですが…」
妖夢は自分の胸と幽々子様の胸を見比べている。
「じゃあ、入っちゃおうっと…」
ザバァァーーーン
「気持ちいいわね」
「……………」
妖夢は湯船の角でちっちゃくなっている。
「妖夢…」
だきっ
「ゆっ、幽々子様…」
幽々子は妖夢にうしろから抱きついた。
「妖夢、時には無になることも必要よ。
私の胸を貸してもいいから…」
「はい…」
妖夢は力を抜き、幽々子に身を任せた。
「あ、そろそろのぼせてしまいそうです…では、そろそろあがらせてもらいます」
「あ、私もあがるわ」
二人はお風呂を上がり寝る前の挨拶を交わして、それぞれの部屋に戻った。
「妖夢、無理しちゃって…
あの子は………意志が強すぎるから、自分の身を削ってまでも
無理しようとするのよね…それがあの子の悪いところだわ…
でも、そこがいいのよね…妖忌」
「この剣は…」
剣に手紙がついていた。
『この剣の名は桜華狂咲…
その者が護る気持ちで強さが変わる剣だ』
「この剣を私に…
これは…なんだろう…禍々しい感じがする」
妖夢は剣を鞘におさめた。
「ふぅ、さて…お爺様の手紙を拝見します」
『妖夢よ…
久々に手紙を書く
常日頃修行を行っているか?
幽々子殿の我侭に付き合っているか?
実際はそのような事を伝えようとするわけではない
これと一緒に幽々子殿に渡した…剣があるだろう…
あの剣は私がそこを出てから打ってもらった剣の一つだ
妖夢ならその剣の恐ろしさが分かるだろう…
妖夢よ…魂魄の剣士は…志を強く持ち、主をなんとしてでも護り通すのが定めだ
私にはそれが出来なかった…だから私は幽々子殿をお前に預け去ったのだ
いずれ戻るかもしれないが、いつになるかはわからない…
お前が一人前になったとき今日渡した剣を天高く掲げるのだ…
その合図で私は戻る…
それまで、会う事はしばらくないが、幽々子殿を思う気持ちは常に一つだ
では、な…
我が最愛なる妖夢へ』
「うっ…ううっ…お爺様。
わかりました!この魂魄妖夢!
一人前になり、必ずやお爺様の適う剣士になってみせます!」
妖夢はまた志を一つ心に決めた。
そして、妖夢は眠りについた。
しかし、スパルタな幽々子様……是非とも一度みてみたいですね。
また、各構えの補足など細かく書いてあり、すごいですねー感心しました。わたしなんて、剣道は叩いていただけでしたからw