Coolier - 新生・東方創想話

ポッキーゲーム

2005/05/13 06:47:34
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「こんにちわ、霖之助さん」
「やぁ、良く来たね」
ここは香霖堂、食料から妖しい物質まで何でも揃う『幻想郷のよろず屋さん』。
良く言えば幻想的、悪く言えば胡散臭い。そんな香霖堂には私の見たこともない品物がいつも所狭しと並べられている。
「たまに私はここでノンビリと無駄な時間を過ごすことにしているの」
「今日も冷やかしかい?霊夢」
「まぁね」
「はっきり言うな君は。もうちょっと思いやりの心を持ったほうが良いぞ」
「品物を強奪していかないだけ、魔理沙よりも思いやりの心は持ち合わせているつもりよ」
売り言葉に買い言葉。いつものように会話を交わしつつ私はまったりと適当に品物を眺める。
そんな私の目に映った箱、これはどうやらお菓子のようね。
私はこういった洋風のお菓子はあまり好まないのだけど、このときに限ってはなぜか食べたくなってしまった。
「あ、これ美味しそうね」
「おお、お目が高い霊夢嬢!」
「な、なんですか急に!」
霖之助さんの目の色が変わった。なんだろうこの品物…
「それは『ポッキー』というお菓子だ。つい先日入荷した品物さ。美味しいぞ」
「へぇ、お茶菓子に戴こうかしら。ひとつくださいな」
私は生まれてこのかた香霖堂で衝動買いをしたのは、コレが初めて。
それほどまでにこの『ポッキー』というものには直感に訴える何かがあった。
「食 べ な い か」
「お菓子ですから、そりゃいただきますよ」
「いや、だからその…」
「お代、ここに置いて行きますね」
私はさっそくお茶請けにポッキーをいただくべく、香霖堂を後にした。
「どんな味がするのかしら」
「あああああああ、霊夢ぅ~~~!!!」



「はぁ~、この時の為に生きてるわ私」
お茶をすすりながらお菓子を食べる。まさに至福の時。
「…霖之助さんもたまには良い仕事するのね。これ大ヒットだわ」
ポッキー。それはプレッツェルにチョコレートをかけただけの単純なお菓子なのだが、その単純さ故に美味しい。
一つ一つのサイズが小さいのでどんどん食べてしまう。
あっという間に買って来た小箱の中身はカラッポになってしまった。
「あら、もう無くなっちゃった。また買いに行こうっと」
至福の一時を終えた私はお茶を片付け、境内を清掃することにした。
そこで見つけた一つの違和感。
「…結界がほころんでる。誰か来たのかしら?」
辺りを見回しても妖怪の気配はない。どうせまた悪戯かなんかだろうと気に止めないことにした。



翌日、私は境内の掃除もそこそこにして香霖堂にやってきた。
「霖之助さん、昨日のお菓子もうないの?」
私の目的はポッキー。あまりの美味しさに虜になってしまったみたい。
「ようこそ霊夢、大量入荷しておいたよ…の予定だったんだが、売り切れてしまったようだ」
「えー、売り切れなの~?」
「昨日の夜だったかな、在庫が切れたので入荷したんだよ。ところが直後にお客が殺到してね、10分で売切れてしまった」
「なんてこと、虜になったのは私だけじゃなかったのね!」
「かもしれない…それがちょっと不思議な光景だったんだよ」
「どういうこと?」
「ある人は顔を赤らめ、またある人は鼻息を荒げて買っていったんだ。なかにはダンボールごと買い占める客までいたんだぞ」
「うはっ、異常に流行ってるわね」
「お陰で僕の野望は打ち砕かれてしまったよ」
「霖之助さんの野望?」
「…おっと、喋りすぎたようだ。気にしないでくれ」
残念だけど売り切れじゃあ仕方がない。私はいつもの和菓子を買って帰った。




香霖堂から出たところで、ばったりととアリスに出会った。
偶然にしては出来すぎてるし、もしかして私が店から出てくるのを待ってたのかしら。
「あ、霊夢発見~」
「あらアリスじゃない、どうしたの?」
「ねぇ霊夢、うちでお茶していかない?おいしいお菓子もあるし」
お菓子、その魅惑の言葉を聞いてしまっては引き下がるわけには行かない。
「そうね、たまにはアリスとお茶でも飲んで話すのも良いわね」
「では、さっそくご案内しまーす」
今日のアリスはなんだかハイテンション。いつもと一味違うわね。
アリスの家は魔法の森の奥にあり、清潔感漂う西洋風の一般的な作りになっている。
久しぶりに踏み込むアリスの家。中に入るとそこは綺麗に掃除がしてあり。棚には人形が所狭しと鎮座している。
「レイムダー」
「イラッシャーイ」
「こんにちは、あなたは…何人形だっけ?」
「はい、自己紹介」
「シャンハーイ」
「ホラーイ」
「ごめんね、たまにしか会ってないから区別がつかなくて」
「気にしないでいいわよ。今お茶入れてくるから待っててね」
アリスがお茶の準備をする間、私は人形を眺めて待つことにした。
いつもながらここの人形の凄さには驚かされる。精密に作られ、それでいて一つ一つに心が篭っているのが私でも分かる。
アリスは「人形を売るなんてとんでもない!」と言い張るが、コレほどまでのクオリティならば一体で賽銭一年分は下らないだろう。
「アラ、ワタシガオコノミ?」「ナニミテンダヨ」
でも喋るのはなんとも微妙。それぞれ個性が出てて面白いけど、コレは人を選ぶわ。
「おまたせー霊夢」
「あ、すごく良い香りね」
「新茶~」
アリスが入れてくれた紅茶はかなりの上物。お客様用なのだろう。
だがそれ以上に私の鼻は『お茶菓子』のほうに反応した。まさかここでお目にかかれるとは!
「やったぁ、ポッキーじゃないの」
「霊夢も好き?私もこれ大好きなのよ」
しかもアリスの手作りポッキーだ。香霖堂で買った既製品よりも数段美味しいのは間違いない。
私はさっそく一つ戴いてみることにした。
「!?、おいしいっ!」
「そうでしょ、私の自信作なんだから」
なるほど、冷やして食べると更に美味しくなるのか。また一つ賢くなったわ。
紅茶をすすりながら、ひたすら手作りポッキーを食べる私に対してアリスが声を掛ける。
「…でもね霊夢、もっと美味しい食べ方があるのよ」
「もっと美味しい食べ方?」
食べ方一つで更に美味しくなるのだろうか、もしそうなら是非教えてもらわなくては!
「どうするの?」
「これは私と霊夢だけの秘密よ…」


「こうやって、こうするのよ」
「なんか恥ずかしいわ」
チョコレートがかかっているほうをアリスが、かかっていないほうを霊夢が口にくわえる。
顔と顔が接近して恥ずかしいけど、未知の美味しさのためならなんとやら。
「こうやって、二人同時に食べていくのが良いのよ」
「んっ…」
たしかに美味しい。この味は格別。でも凄く恥ずかしい。
何より相手の口に入ったポッキーを食べるのだから人前では絶対に出来ない。
というか…これアリスの味がする。甘くて切ない少女の味。
なんかアリスの目が逝っちゃってる気がするんだけど、美味しいからいいや。見なかったことにする。



「ごちそうさま、いろいろと楽しかったわ」
「ナンノオカマイモ、デキマセンデ」
「マタコイヨー」
「それじゃあね、バイバイ」
私はアリスの人形に見送られつつアリス邸を後にした。
最後に食べたポッキーの味。あれは忘れられないかもしれない。
そもそもポッキーの味なのかアリスの味なのか区別つかないし。
でも、思い出すと顔が真っ赤になるほど恥ずかしいのは何故だろう…?
「たまには二人でお茶を飲むのも良いものね。でもアリスったらお客の前で倒れるなんて働きすぎよ」
すっかり暗くなってしまった帰り道、私はアリス風味ポッキーの余韻に浸りながら博麗神社へと急いだのだった。





「おい香霖!ポッキーだ、ポッキーはないのか!?」
「残念ながら品切れだよ」
「ちっ、一歩遅かったか」
「それに君に売るだけの余裕はないね。これは僕の大事な大事な道具なんだ」
「それなら心配要らないぜ、いつもの様に貰っていくからな!」
「な、なにをする魔理沙ー!!!」
ねんがんの アイスポッキーを てにいれたぞ!

どうもこんばんわ。最近SS書きさんが増えて賑やかになったと思う今日この頃のさしみです。
絵版でポッキーゲームが密かに開始されたみたいなので創想話にも持ち込んでおきますよ。
何があったのかはご想像にお任せしますね。
(想像爆発のキッカケとなった絵版のポッキーゲーマーの皆さんに感謝)
刺し身
http://www.icv.ne.jp/~yatufusa/
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コメント



0.3460簡易評価
1.60名前が無い程度の能力削除
アイスポッキーはアリスポッキーという洒落か!?
そして創想話には甘いポッキー大流行という暗喩なのか!? ・・・瀟洒だッ!
7.50Hodumi削除
 ポッキー一つとってもこの有様。……何て幻想郷な。
 そして霖之助、ポッキーに対する卿の能力の使用結果は、著しく卿らし過ぎるんだが。
 ともあれ程よい笑いを得られました。良い話をありがとう御座います。
15.70ヨヒノリ削除
絵版のネタから、このようなSSになるとは…素晴らしいです。
霖之助の野望、実行した途端に吹っ飛ばされるに一票(ぇ
21.70シゲル削除
アリスの幸せそうな顔が想像できますね♪
ありがとうございました♪
32.無評価AG削除
ア、アリス風味ー!?
しかも手作りとは・・・!!
33.60名前が無い程度の能力削除
殺してでも うばいとる GJ
36.70名無し毛玉削除
軽いノリで見させていただきました。
そしてオチで吹雪吹いたw
41.70おやつ削除
アリスもいい…霊夢もいい。
しかしっ! なんだかとても個性あふれるお人形さんに一番萌えた私は、一体どうすれば!!
45.80AG削除
あ、すみません点数入れ忘れてました
この点数なのは・・・続きを!さぁ続きをー!!
82.100名前が無い程度の能力削除
アリス味ってどんな味だろう味わってみたいですねハァハァ