博麗神社の巫女、博麗霊夢は現在最大の危機に直面していた。
珍しく、うんうんと悩み考え込む彼女の前には、数日前まで貴重な収入源の一つだった「賽銭箱」だった物体がある。
先日の大風の為に、かなりガタがきていた賽銭箱は天寿を全うしてしまい今や見る影も無い。
「はぁー、明日は春祭りで絶好の稼ぎ時なのに、これじゃどーしよーも無いわねー」
「おいおい霊夢、何悩んでるんだ。明日は恒例の春祭りだぜ。」
呼ばなくてもちょくちょく遊びに来る黒い服を着た魔女に、ため息混じりに霊夢は答える。
「これ見たら何を悩んでるかわかるでしょ。いっそ祭りも中止にしようかしら」
半壊した賽銭箱を見て魔理沙が呆れ気味に答える。
「賽銭が少ないから八つ当たりしたのか。でもそれで祭りを中止にするなんて大問題だぜ」
「逆よ、賽銭箱が壊れたから悩んでるの」
「ふむふむ、ならそれが直れば万事解決する訳だ」
「言っとくけど、咲夜には断られたからね。大工まがいの事なんて私にはできないとかなんとか。昨晩は新月だったから、泣きべそかいてるレミリアを連れて逃げてったわ」
そして、隣にいる魔女をジト目で睨む。
「それから、魔理沙にも頼まないわよ。あんたじゃ賽銭箱を消滅させるのがオチだしね」
「残念だな、これでも大工の序の伍段なんだぜ。今作ったが」
ふーん、と友人の悩みを解決する方法はないかと思考する魔理沙。そこで神社に来る途中で見たものを思い出した。
「いい事思いついた。ちょっと助っ人を呼んでくるぜ」
そう言い残し魔理沙は箒に跨ると、舞い上がりつつ里の方へ飛んでいく。
「里の大工さん達も、壊れた建物の修繕で来られないって言って・・・・・・。人の話を最後まで聞けー!! 」
飛び去り、いまや豆粒ほどの大きさの魔女に向かって霊夢は悪態をついた。
「おまたせだぜ」
お茶をすすりながら、ぼけーっと縁側に座っていた霊夢の前に魔理沙が戻ってきた。
彼女の後ろには、霊夢も知っている二人の人影が立っている。
一人は殺しても死なない人間、藤原妹紅。そして、もう一人は。
「この姿で会うのは初めてだったね、博麗霊夢さん」
二ヶ月ほど前から幻想郷に住み着いた、白い不死身の鬼。
彼は博麗神社を通過して、ついでに賽銭も入れて幻想郷に入った。その時はまだ人間の姿だったのだが、姿は変わっても霊夢には誰だか分かった。
「剣・・・・・・。今は浪鬼だったっけ。魂の根っこは同じだからわかるわよ。あなたのバイク、霖之助さんが大事に保管してるわ」
霊夢は魔理沙に振り返りたずねる。
「で、この二人が助っ人なの」
「そうだぜ、よろず承りますって看板掲げて、二人で歩いてたのを見たんで思いついたぜ」
そこで、今まで話に参加しなかった妹紅が割り込んだ。
「で、用件はここに来るまでに魔理沙に聞いたけど、壊れた賽銭箱を直せばいいのね。この後も壊れた建物の修繕の予定があるから、早速始めようか浪鬼」
問われた白い鬼はうなずき答える。
「ああ、とりあえず壊れた賽銭箱を見せてくれないかな」
霊夢は、悩みの種の目の前に二人を案内した。現物を見て妹紅が浪鬼にたずねる。
「どう、なんとかなりそう」
「そうだな、大丈夫だ。皆少し離れてくれないか」
浪鬼の指示を受け、妹紅が霊夢と魔理沙の手を引き返事をする。
「いいわよ、お願い」
妹紅の合図を聞き、浪鬼は立ち上がりその姿を変える。
そこに立つのは金色の鎧を付けた騎士。騎士は賽銭箱の壊れた部分に手をかざす。柔らかい光と共に、壊れた木材が再生していく。数分後、賽銭箱は壊れる前より二割五部ほど立派になって再生した。
騎士は再び鬼の姿に戻る。
「はい、これで良いかな」
浪鬼は霊夢にたずねた。
霊夢は再生した賽銭箱に近寄り、まじまじと見る。
完璧だった。
「正直びっくりね、ここの連中は壊すのは得意だけど、直すのは苦手な奴ばかりだし」
霊夢はジト目で魔理沙と妹紅を見る。
「最近、こんな事もできるようになったんだ。」
霊夢と浪鬼の間に妹紅が混じる。
「だから私が提案したの。その力を人の為に役立ててみないかって」
「それで始めたのがよろず屋か。本当は、楽して食い物を調達したかっただけなんじゃないか、妹紅は」
魔理沙が皮肉を五分増しして問いかける。
神社の下に止めてある彼女達の荷車には、報酬代わりの野菜などが山のように積んであった。
「失礼ね、それよりも御代をいただきましょうか」
ずいと手を差し出す妹紅に対して、霊夢はさらりと言い返す。
「悪いんだけどツケにしてくれないかしら。連日、呼びもしないお客のせいでスカンピンなのよ。それにあんた、何もしてないじゃない」
「だーめ、いつもニコニコ現金払い。これは商売の鉄則よ」
どんな鉄則だそれは。と、霊夢は心の中で突っ込みを入れる。
彼女は巫女服の袖をふわふわと振りながら愛想無く返答した。
「無い袖は振れないわ。それに、明日の祭りが終われば必ず払うわよ。たぶん」
「たぶん、じゃダメ。今、即、すぐに」
一触即発な雰囲気になってきたので二人の間に浪鬼が仲裁に入った。
弾幕ごっこが始まるかと、期待して傍観していた魔理沙はがっかりしたが。
「祭りの事なら慧音さんにも聞いてるし、オレも子供達の警護を頼まれている。それに霊夢さんはオレにとっては恩人だ。幻想郷に入れてくれたからな。今回は無料で良いよ、オレは人から感謝されるだけで十分だ」
妹紅はまだ何か言いたげだったが、結局折れる事にした。
実際、浪鬼は何も食べなくても平気な体なので、報酬代わりの食べ物は全て妹紅の腹に収まる事になる。
利用しているつもりは無いが、人の好い相棒の機嫌を損ねたくなかった。
「今回は折れる事にするわ。今回だけだからね」
妹紅が首を振りながら引き下がる。
「ところで、あなた達。今日の仕事の後って暇かしら」
霊夢は浪鬼のゴツゴツした手をガシッと掴みながらたずねる。
何か企んでいそうな彼女に興味を持ち、彼は答えた。
「あと五件くらい回れば終わりだから、夕方には暇になるね」
「そう、ボランティアで祭りの飾りつけとか、お願いしたいんだけど」
「わかった。外にいた時、色々やってたから得意だよ」
反対しようとする妹紅を制止しながら浪鬼は答える。
じゃあ、また。
と、不死身の鬼と人の、奇妙なよろず屋は帰っていった。
「ふー、激しいドンパチが見られると思ったんだが残念だぜ」
そう言う魔理沙の襟首を、霊夢はガッシリと捕まえ鬼の様な形相で告げた。
「あんたも手伝うの」
命が危ういと思う程の表情で迫られ、魔理沙は己の不運を呪った。
次の日の夕暮れ時、人間の里から祭りに参加するの為に、大勢の人々が博麗神社への道を歩いている。
先頭は大勢の子供達に囲まれながら提灯を下げ歩く浪鬼。最後尾には襲ってくる妖怪達を監視する為に妹紅がいる。
残念ながら慧音は里を守る為にお留守番。
「妹紅とお祭り、妹紅とお祭り、妹紅とお祭り、モコウとおまつり・・・うわあああああん」
ワーハクタクの嘆きが夜の里に聞こえたとか聞こえなかったとか。
博麗神社は祭りの準備も整い、後はやって来るお客を待つだけとなった。
いつも、呼ばれもしないのにやって来る客人達はこき使われてへとへとだったが。
そこへ霊夢が大きな箱を抱えて現れた。
中には神社代々伝えられてきた楽器が入っている。
「さて、もうひと働きしてもらうわよ」
そこにいる者の気持ちを代表して魔理沙は思った。
こいつこそ鬼だぜ。
神社の境内の中は、めったに見る事ができない程の人々でごったがえしていた。
全員が入ったことを確認し、霊夢は神社全体を強力な結界で包む。
鳥居から下げられた垂れ幕には、「博麗神社春祭り開催。なお、人食い妖怪はお断り」の文字が書かれていた。
結界に阻まれて、八雲一家、紅魔館組(主、メイド長除く)はすごすごと帰っていく。
レミリアだけは、結界の効果範囲外の神社の上空から下界を眺めていた。
「こんな時は、吸血鬼の自分が恨めしいわね。まあ、たまにはいいかしら」
彼女は一人つぶやく。
境内の中央には大きなステージの様なやぐらが立てられ、霊夢から渡された楽器を手にして立つ数人の人影が見える。
縁側に腰掛けながら山積みの饅頭をほうばっている幽々子が、やぐらの上の妖夢に手を振り声をかける。
「がんばりなさいよー。もぐもぐ」
照れ笑いを浮かべ、横笛を振る妖夢の隣には咲夜がいる。
「お嬢様、咲夜の魂の調べ届けます」
彼女は神社の上空で見ているだろう主に誓い、三味線をひと撫でする。
そのやぐらの上空にはプリズムリバー三姉妹。
「たまになら、こんな演奏会もいいよねー」
「ねー」
「早く終われば良いのに・・・」
霖之助は鼓を抱え、大きな陣太鼓の前には浪鬼が待機する。
全ての準備が整い、霊夢が魔理沙に合図する。
「じゃあ、お願いね」
「まったく、やれやれだぜ」
魔理沙は箒に乗り神社の上空から、色とりどりの星を降らす。ちなみに触れても害は無い。
そして神社の主、博麗霊夢は祭りの開催を告げる。
「博麗神社、春の宴を開催いたします」
それと同時に、やぐらから浪鬼による力強い太鼓の音が響き始めた。
続いて、妖夢が、咲夜が、プリズムリバー三姉妹が、霖之助が、自分達に割り当てられたパートを演奏し始めた。
どこか陽気ながらも、幸せを願う気持ちが込められた様な音が響き渡る。
「博麗神社祝詞。現代風味」作曲は霊夢。
複数の音が混じりあい、にぎやかな協奏曲が出来上がる。そこに人々の歓声や歌声が加わり、大宴会が始まった。
その音は結界を越え、外の世界にまで届いたとか。
その日、博麗神社の賽銭箱が過去最高記録を塗り替えたのは、巫女だけが知っている秘密である。
「終」
珍しく、うんうんと悩み考え込む彼女の前には、数日前まで貴重な収入源の一つだった「賽銭箱」だった物体がある。
先日の大風の為に、かなりガタがきていた賽銭箱は天寿を全うしてしまい今や見る影も無い。
「はぁー、明日は春祭りで絶好の稼ぎ時なのに、これじゃどーしよーも無いわねー」
「おいおい霊夢、何悩んでるんだ。明日は恒例の春祭りだぜ。」
呼ばなくてもちょくちょく遊びに来る黒い服を着た魔女に、ため息混じりに霊夢は答える。
「これ見たら何を悩んでるかわかるでしょ。いっそ祭りも中止にしようかしら」
半壊した賽銭箱を見て魔理沙が呆れ気味に答える。
「賽銭が少ないから八つ当たりしたのか。でもそれで祭りを中止にするなんて大問題だぜ」
「逆よ、賽銭箱が壊れたから悩んでるの」
「ふむふむ、ならそれが直れば万事解決する訳だ」
「言っとくけど、咲夜には断られたからね。大工まがいの事なんて私にはできないとかなんとか。昨晩は新月だったから、泣きべそかいてるレミリアを連れて逃げてったわ」
そして、隣にいる魔女をジト目で睨む。
「それから、魔理沙にも頼まないわよ。あんたじゃ賽銭箱を消滅させるのがオチだしね」
「残念だな、これでも大工の序の伍段なんだぜ。今作ったが」
ふーん、と友人の悩みを解決する方法はないかと思考する魔理沙。そこで神社に来る途中で見たものを思い出した。
「いい事思いついた。ちょっと助っ人を呼んでくるぜ」
そう言い残し魔理沙は箒に跨ると、舞い上がりつつ里の方へ飛んでいく。
「里の大工さん達も、壊れた建物の修繕で来られないって言って・・・・・・。人の話を最後まで聞けー!! 」
飛び去り、いまや豆粒ほどの大きさの魔女に向かって霊夢は悪態をついた。
「おまたせだぜ」
お茶をすすりながら、ぼけーっと縁側に座っていた霊夢の前に魔理沙が戻ってきた。
彼女の後ろには、霊夢も知っている二人の人影が立っている。
一人は殺しても死なない人間、藤原妹紅。そして、もう一人は。
「この姿で会うのは初めてだったね、博麗霊夢さん」
二ヶ月ほど前から幻想郷に住み着いた、白い不死身の鬼。
彼は博麗神社を通過して、ついでに賽銭も入れて幻想郷に入った。その時はまだ人間の姿だったのだが、姿は変わっても霊夢には誰だか分かった。
「剣・・・・・・。今は浪鬼だったっけ。魂の根っこは同じだからわかるわよ。あなたのバイク、霖之助さんが大事に保管してるわ」
霊夢は魔理沙に振り返りたずねる。
「で、この二人が助っ人なの」
「そうだぜ、よろず承りますって看板掲げて、二人で歩いてたのを見たんで思いついたぜ」
そこで、今まで話に参加しなかった妹紅が割り込んだ。
「で、用件はここに来るまでに魔理沙に聞いたけど、壊れた賽銭箱を直せばいいのね。この後も壊れた建物の修繕の予定があるから、早速始めようか浪鬼」
問われた白い鬼はうなずき答える。
「ああ、とりあえず壊れた賽銭箱を見せてくれないかな」
霊夢は、悩みの種の目の前に二人を案内した。現物を見て妹紅が浪鬼にたずねる。
「どう、なんとかなりそう」
「そうだな、大丈夫だ。皆少し離れてくれないか」
浪鬼の指示を受け、妹紅が霊夢と魔理沙の手を引き返事をする。
「いいわよ、お願い」
妹紅の合図を聞き、浪鬼は立ち上がりその姿を変える。
そこに立つのは金色の鎧を付けた騎士。騎士は賽銭箱の壊れた部分に手をかざす。柔らかい光と共に、壊れた木材が再生していく。数分後、賽銭箱は壊れる前より二割五部ほど立派になって再生した。
騎士は再び鬼の姿に戻る。
「はい、これで良いかな」
浪鬼は霊夢にたずねた。
霊夢は再生した賽銭箱に近寄り、まじまじと見る。
完璧だった。
「正直びっくりね、ここの連中は壊すのは得意だけど、直すのは苦手な奴ばかりだし」
霊夢はジト目で魔理沙と妹紅を見る。
「最近、こんな事もできるようになったんだ。」
霊夢と浪鬼の間に妹紅が混じる。
「だから私が提案したの。その力を人の為に役立ててみないかって」
「それで始めたのがよろず屋か。本当は、楽して食い物を調達したかっただけなんじゃないか、妹紅は」
魔理沙が皮肉を五分増しして問いかける。
神社の下に止めてある彼女達の荷車には、報酬代わりの野菜などが山のように積んであった。
「失礼ね、それよりも御代をいただきましょうか」
ずいと手を差し出す妹紅に対して、霊夢はさらりと言い返す。
「悪いんだけどツケにしてくれないかしら。連日、呼びもしないお客のせいでスカンピンなのよ。それにあんた、何もしてないじゃない」
「だーめ、いつもニコニコ現金払い。これは商売の鉄則よ」
どんな鉄則だそれは。と、霊夢は心の中で突っ込みを入れる。
彼女は巫女服の袖をふわふわと振りながら愛想無く返答した。
「無い袖は振れないわ。それに、明日の祭りが終われば必ず払うわよ。たぶん」
「たぶん、じゃダメ。今、即、すぐに」
一触即発な雰囲気になってきたので二人の間に浪鬼が仲裁に入った。
弾幕ごっこが始まるかと、期待して傍観していた魔理沙はがっかりしたが。
「祭りの事なら慧音さんにも聞いてるし、オレも子供達の警護を頼まれている。それに霊夢さんはオレにとっては恩人だ。幻想郷に入れてくれたからな。今回は無料で良いよ、オレは人から感謝されるだけで十分だ」
妹紅はまだ何か言いたげだったが、結局折れる事にした。
実際、浪鬼は何も食べなくても平気な体なので、報酬代わりの食べ物は全て妹紅の腹に収まる事になる。
利用しているつもりは無いが、人の好い相棒の機嫌を損ねたくなかった。
「今回は折れる事にするわ。今回だけだからね」
妹紅が首を振りながら引き下がる。
「ところで、あなた達。今日の仕事の後って暇かしら」
霊夢は浪鬼のゴツゴツした手をガシッと掴みながらたずねる。
何か企んでいそうな彼女に興味を持ち、彼は答えた。
「あと五件くらい回れば終わりだから、夕方には暇になるね」
「そう、ボランティアで祭りの飾りつけとか、お願いしたいんだけど」
「わかった。外にいた時、色々やってたから得意だよ」
反対しようとする妹紅を制止しながら浪鬼は答える。
じゃあ、また。
と、不死身の鬼と人の、奇妙なよろず屋は帰っていった。
「ふー、激しいドンパチが見られると思ったんだが残念だぜ」
そう言う魔理沙の襟首を、霊夢はガッシリと捕まえ鬼の様な形相で告げた。
「あんたも手伝うの」
命が危ういと思う程の表情で迫られ、魔理沙は己の不運を呪った。
次の日の夕暮れ時、人間の里から祭りに参加するの為に、大勢の人々が博麗神社への道を歩いている。
先頭は大勢の子供達に囲まれながら提灯を下げ歩く浪鬼。最後尾には襲ってくる妖怪達を監視する為に妹紅がいる。
残念ながら慧音は里を守る為にお留守番。
「妹紅とお祭り、妹紅とお祭り、妹紅とお祭り、モコウとおまつり・・・うわあああああん」
ワーハクタクの嘆きが夜の里に聞こえたとか聞こえなかったとか。
博麗神社は祭りの準備も整い、後はやって来るお客を待つだけとなった。
いつも、呼ばれもしないのにやって来る客人達はこき使われてへとへとだったが。
そこへ霊夢が大きな箱を抱えて現れた。
中には神社代々伝えられてきた楽器が入っている。
「さて、もうひと働きしてもらうわよ」
そこにいる者の気持ちを代表して魔理沙は思った。
こいつこそ鬼だぜ。
神社の境内の中は、めったに見る事ができない程の人々でごったがえしていた。
全員が入ったことを確認し、霊夢は神社全体を強力な結界で包む。
鳥居から下げられた垂れ幕には、「博麗神社春祭り開催。なお、人食い妖怪はお断り」の文字が書かれていた。
結界に阻まれて、八雲一家、紅魔館組(主、メイド長除く)はすごすごと帰っていく。
レミリアだけは、結界の効果範囲外の神社の上空から下界を眺めていた。
「こんな時は、吸血鬼の自分が恨めしいわね。まあ、たまにはいいかしら」
彼女は一人つぶやく。
境内の中央には大きなステージの様なやぐらが立てられ、霊夢から渡された楽器を手にして立つ数人の人影が見える。
縁側に腰掛けながら山積みの饅頭をほうばっている幽々子が、やぐらの上の妖夢に手を振り声をかける。
「がんばりなさいよー。もぐもぐ」
照れ笑いを浮かべ、横笛を振る妖夢の隣には咲夜がいる。
「お嬢様、咲夜の魂の調べ届けます」
彼女は神社の上空で見ているだろう主に誓い、三味線をひと撫でする。
そのやぐらの上空にはプリズムリバー三姉妹。
「たまになら、こんな演奏会もいいよねー」
「ねー」
「早く終われば良いのに・・・」
霖之助は鼓を抱え、大きな陣太鼓の前には浪鬼が待機する。
全ての準備が整い、霊夢が魔理沙に合図する。
「じゃあ、お願いね」
「まったく、やれやれだぜ」
魔理沙は箒に乗り神社の上空から、色とりどりの星を降らす。ちなみに触れても害は無い。
そして神社の主、博麗霊夢は祭りの開催を告げる。
「博麗神社、春の宴を開催いたします」
それと同時に、やぐらから浪鬼による力強い太鼓の音が響き始めた。
続いて、妖夢が、咲夜が、プリズムリバー三姉妹が、霖之助が、自分達に割り当てられたパートを演奏し始めた。
どこか陽気ながらも、幸せを願う気持ちが込められた様な音が響き渡る。
「博麗神社祝詞。現代風味」作曲は霊夢。
複数の音が混じりあい、にぎやかな協奏曲が出来上がる。そこに人々の歓声や歌声が加わり、大宴会が始まった。
その音は結界を越え、外の世界にまで届いたとか。
その日、博麗神社の賽銭箱が過去最高記録を塗り替えたのは、巫女だけが知っている秘密である。
「終」
でもやっぱり人が多いと、その中に妖怪が入っていくのは危険ですかね。
八雲一家やレミリアにも祭りの雰囲気を
味わって欲しかったなぁ、と思ったり。
DADDY MULK、いいですよね~。
ご感想ありがとうございます。例えが悪いですが、羊の群れの中に狼を放すようだと感じたので、今回は遠慮してもらいました。
ZUNTATAは、メタブラの曲からハマりました。そのうち「首都高アーバントレイル」とかいう、ふざけた話を作るかもしれません。
あと保管されてるバイク・・・幻想郷だと飛びそう!w
ご感想ありがとうございます。4回目の投稿なので、できる限り今まで出番の無かった人達に出演してもらいました。今後もがんばります。でわでわ。
>咲夜さんかっこいい なんかかっこいい!
ご感想ありがとうございます。作者は咲夜スキーな人なので、例大祭にエプロンつけた響鬼の人形を「命怒ライダー咲夜」と名付けて飾ろうとした位のうつけです。実現しませんでしたが。保管されているバイクは、今後のお楽しみという事で。でわでわ。
ウェオォォォ、ウェイ。たびたび貴重なご意見ありがとうございます。次回の例大祭には、命怒と弐我士ライダーが並び立つかも。でも、先日の例大祭の状況を考えると、そんな物出したら速攻で冥界送りにされそうですね。でわでわ。
とか、昔の某少年漫画雑誌の柱みたいな事を言ってみるテスト。
どうせなら、「鬼」達も招待していたら、太鼓とか笛とか三味線とかで、もっと賑やかだったろうなぁ~
とか、昔の某少年漫画雑誌の柱みたいな事を言ってみるテスト。
いや、そんな頓珍漢な事考えるの俺だけですからって答えてみたりなんて。
まず、ご感想ありがとうございます。春の次は夏が来るわけでして、またなんか素っ頓狂な事やろうと考えています。と、言ってみるテスト。でわでわ。