ズドォォォォォ………――――――――――――ン
体が、宙を舞った。
砂埃が視界を染めている。
どうやら私はあの人の攻撃を受けたらしい。
いや、でも、一体何故?
恨みとかを買った覚えはないし、叩きのめされるにも思い当たる理由がない。
なのに、どうしてこんな事に――――――――――――――――
◆―――― 限りなく、ゼロに近い世界での最強 ――――◆
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――1//
「こんにちは♪」
「……こんにちは」
突如、廊下の天井に開いたスキマから見慣れた顔が飛び出した。
湖と番人達に護られた赤い要塞、紅魔館。
しかし、いかなる守りであろうと目の前の妖怪には無意味なものなのだろう。
「いい加減、不法侵入はやめてくれません?」
「今日は良いお酒が手に入ったのよ」
咲夜が不快感を露にする、も、件の妖怪は全く意に介さない。
幻想郷最強とも言われる大妖怪「八雲紫」
何が気に入ったのかは分からないが、彼女は最近よく紅魔館に入り浸っていた。
帰れと言っても帰らない。
だからと言って、マトモにやりあっても勝てるかどうか怪しいものだ。
そもそも、屋敷の中で全力で暴れる訳にはいかない。
そして何より、勝手にスキマを作って入ってくるから浸入を妨害する事も出来ない。
つまり、彼女は咲夜にとってこれ以上ないほど厄介な来訪者であった。
「レミリアは居る? あとパチュリーと…
えっと、あの門番の子」
「……美鈴」
「そうそう、あの弱い子。
皆で飲まないと損するくらい良いお酒なのよ」
影の薄さ故か。
名前を思い出してもらえなかった美鈴に咲夜は同情した。
「人の家の門番を随分貶してくれるわね」
「あら、起きてたの」
廊下の向こうから館の主が現れた。
寝起きなのか眠そうなレミリアは、眼をぐしぐしと擦りながら歩いてくる。
「貶したつもりはないわ」
「名前を忘れたわ、弱いわ、影が薄いわ。散々じゃない。
これじゃ、あの子を雇ってる私の目まで疑われかねないわ」
「一番最後のは言った覚えないけど」
全く、散々に言われている。
「…そうね。そういえば、前々から疑問だったのだけど。
なんであの子を雇ってるの?」
直球。
あまりにも直球な質問。
横で傍観していた咲夜も一瞬ぎょっと目を見張った。
そこには、触れてはいけないような気がしていたからだ。
だが、
「――――――――――――ふ、」
赤い悪魔は笑って答えた。
「あの子、強いわよ」
にやにやと笑いながら、レミリアはそう言い切った。
少しの間、二人はあっけにとられていた。
「それは、買いかぶっているのかしら?
それとも、本当に見る目が無いの?」
「嘘だと思うならちょっとやってきたら?
ただ、恥かいても責任はとらないけど」
「く―――――――ふ、ふふふふ……」
とうとう紫も吹き出した。
気を使う程度の駄妖怪風情が、最強と謳われた自分を負かす。
こんな面白い話、彼女が逃す筈もなかった。
「いいわ。借りていくわよ」
「ええ、ごゆっくり」
持ってきた酒を置いて、紫は門の方へ向かった。
後には不適に笑うレミリアと、呆れ顔の咲夜。
「いいんですか、あんな事言って?
美鈴、本気で殺されかねませんよ」
「あぁ――――、咲夜は美鈴より後に来たんだっけね」
「?」
「まぁまぁ、見てれば分かるわよ」
それだけ言うと、レミリアは咲夜を連れて紫の後を追った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――2//
「ねぇ、貴女」
「はい?」
いつの間にか後ろに立っていたその人に声をかけられ驚いた。
私はこの人を知ってはいたものの、面識は殆ど無かった。
「あ… えと、八雲さんですよね」
その言葉に答えるように彼女は笑い、そして――――――――――
「遊びましょう」
「は?」
くるりと宙を舞うと、突然、無数の弾を撃ち放った。
ババババババババッ!!
「な――――――――ッ!?」
何も考えずに横に飛び退く。
と、さっきまで私が居た場所に無数の弾が襲いかかった。
まずい、洒落にならない。
今の一撃には確実に殺気が込められていた。
「何をするんですか八雲さん!?
私達が争う理由は無い筈で――――――――」
「理由ならあるわ」
その言葉が聞こえた時には、無数の弾幕にすっかり取り囲まれていた
「!?」
「――――だって、貴女は私を楽しませてくれるそうだから」
『 弾 幕 結 界 』
ズォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
いきなりの大技。
逃亡を阻むが如く円を描く弾、弾、弾。
それらは少しずつ、そして捻り切るように私に迫ってきて――――――――――――
「ちょっ――――」
――――呑み込んだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――3//
もうもうと煙が立ち込めている。
紅魔館の庭はボロボロに荒れ果て、門は原型を留めていない。
「―――――」
煙のあちこちから惨状が覗く。
草は千切れ、地面は抉れ、砕けた塀の残骸があちらこちらに散らばっている。
「美鈴ッ!?」
館の中からメイド長が飛び出してきた。
およそ能力を持つものなら分かるのだろう、あの門番の気配も魔力も感じない。
落胆したような顔で崩れる咲夜。
そして、その横で―――――――――――――――うっすらと笑う紅い悪魔。
「――――――――――どこに、居る?」
分かっている。
手応えがなかった。
なのに、気配を全く感じないのは何故か。
この私にさえ全く気取られないような隠匿術を、あんな門番如きが行使できるというのか?
「昔の話、なんだけど」
レミリアが何やら呟き始めた。
でも、そんなものを聞いている余裕はない。
完全に気配を消しているあの駄目門番を、無意識の内に私は敵として認めていた。
「一人の妖怪を拾った事があるの。
彼女は魔力も弱くて、弾幕も綺麗だけど普通で。
どうにもこうにも使えない奴だったわ」
探れ探れ探れ探れ。
風の音、空気の揺らぎ、周囲の魔力、どんな些細な変化も見逃すな。
「だけど、彼女は力は無いけど技を持っていた。
知ってるでしょ? 技っていうものは弱者が強者に立ち向かう為にあるもの。
彼女は自分の弱さを知っていたからこそ、其れを補う技を身に着けた」
探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ探れ。
木の葉が揺れる音、分子の動き、魔力の流れ、どんな微細な変化でも感じ取って―――――――――――――――
「――――――彩光、」
「ッ!!?」
「彼女の身に着けた技は、気を操る能力を極限まで昇華したモノ。
自己の内側の操作に関して、彼女より秀でた存在を、私は知らないわ」
レミリアの言葉は聞こえたけど、その意味を頭が理解するより先に
「乱舞ッ!!」
虹色の弾幕が目の前に―――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――4//
一体、何が、起こっているのか。
駆けつけた時、既に庭は焦土と化していた。
何かを呟き続けるお嬢様、辺りを見回す紫。
そして、目で追えない程の速さで紫に飛び掛った美鈴。
目の前の3妖はいたって冷静だった。
あぁ、厭になる。
こんな形で、まだ自分が人間である事を思い知らされるなんて――――――――
「咲夜」
「ッ――――お、嬢様」
「見ておきなさい。あの子の本気を。
何故私があの子を置いているかを。」
諭され、視線を戻す。
直撃だったにも関わらず、紫は全くと言って良い程無傷だった。
「へぇ、なかなかやるわね貴女。
少しは見直したわ」
「完全に受け止めておいて、何を……」
衝撃の瞬間、紫は四重結界を発動させていた。
ありとあらゆるモノを弾く境界。
いかに力を振り絞ろうと、美鈴の力でそれを砕く事は出来なかった。
「自己の操作、ねぇ」
「―――――――」
「自分の力を最大限引き出す。
集中力を高め、判断力引き上げる。
そして――――――――――――――龍」
「ッ!!」
美鈴の表情が曇る。
流石と言うものか。
たった一撃で、紫は相手の手の内を全部見透かしたらしい。
「龍。 精神を魔力に換えるコンバーターみたいなものでしょ。
確かチャクラとか言ったかしら?
だ、け、ど――――――――――――――」
紫はゆっくりと手を挙げた。
「持久戦は、私も苦手じゃないのよ?」
『第一種永久機関』
冷たい風が吹き始めた。
崩れた岩の破片がカラコロと踊りだす。
煙は再び巻き起こり、轟々と音を立てて紫の周りを取り巻く。
「さて、教えてあげようかしら。
10の力を最大限駆使しても、100の力には敵わない――――――――――って、ね!!!」
紫が本気を出す。
相手の力量を再確認し、これ以上は楽しめないと判断したのだろう。
だから、終わらせる気だ。
でも、お嬢様はなんで―――――――――――――
「――――――――――――――ッ」
――――――――笑って、いるのだろうか。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――5//
――――――――――――ガ ン
何も分からないまま、私は堅い地面におもいっきり叩きつけられる。
幸い傷は浅い。
まずは状況を把握して体制を立て直――――――――――――
『二重黒死蝶』
――――せなかった。
身を起こすと同時に飛び跳ねる。
数え切れないほどの死蝶は、相変わらず殺気を帯びて襲いかかって来た。
ヒゥン―――…
死蝶の一匹が胸を掠める。
認識は出来るものの、反応は出来なかった。
やはり、格が違うのか。
次々に繰り出されるスペルカードを、私はただ避ける事しか出来なかった。
「ほらほら、どうしたの?
逃げてばっかりじゃどうにもならないでしょ?」
「あわ、あわわわわッ」
一瞬前に私が居た場所が抉られる、砕け散る、蒸発する。
幻想郷最強の妖怪の攻撃はあまりにも破壊力が凄まじくて、反撃に転ずる暇さえ与えてくれない。
もう、戦う理由なんてどうでもいい。
やらなきゃ殺される。
まったく、私は平和主義者なのに何でこんな目に合っているのだろうか。
「それっ!!」
「ひあぁあ!?」
でも、反撃の糸口なんて掴める筈もない。
チャクラで気を回復しながら立ち回った所で、じっくり弄り殺しにされるのが関の山だろう。
あぁ、そういえば咲夜さんとお嬢様が居たような。
とりあえず、あの二人に助けを求――――――――――――――――――
美鈴、
遠くに立つお嬢様の目を見た途端、言葉が。
許す。『勝ちなさい』
胸に、響いた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――6//
「ほらほらほら―――――――って、あら?」
気が付くと、また美鈴は姿を消していた。
「もう、また隠れんぼ?」
神経を研ぎ澄ます。
荒れ果てた庭に身を隠せる物陰はない。
だが、矢張り彼女の気配は探る事が出来ない。
「ふん、いいわ。
どうせ貴女如きの力じゃ私を下す事は出来ないもの」
先ほどとは違う。
深く構え、攻撃に備える。
相手の一撃を制し、止めの深弾幕結界を打ち込んでやろう。
あの子の攻撃では私に傷を付けられないのは、さっきの一合で既に分かっ―――――――――――――――待て。
それは美鈴だって同じ筈だ。
自分の攻撃が相手に通じない事が分かっていて、やすやすと懐に飛び込む馬鹿はいないだろう。
ならば、何故今一度身を隠したのか。
逃げる為?
いや、それもおかしい。
元より此処は彼女の棲家。
そして主が見ているこの場で、逃げる場所など在る筈もない。
「―――――――――――――――」
よもや、まだ何か隠し玉があるのだろうか。
――――――そうだ、きっとそうに違いない。
そうでなかったら――――――――――
「―――――クク…」
あの紅い悪魔の笑みの、説明がつかない。
瞬間、背中に敵の気配を感じた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――7//
――――――――あれは、いつの事だったか。
「お嬢様ッ! 私もスペルカードを使えるようになりましたッ!!」
――――――瀕死の私を気紛れで救ってくれた悪魔に、私は忠誠を誓うようになっていた。
「名づけて『華符芳華絢爛』です!」
―――――――――――――お嬢様は私のスペルを一通り見ると、落胆したようにとんでもない事を言った。
「駄目ね、貴方」
「えぇえッ!!?」
「美しさだけじゃ弾幕ごっこは勝てないわよ?」
「うぅう……」
――――――― 一生懸命頑張ってスペルを考えたのに、主には冷たい言葉であしらわれてしまった。
「貴方にはこの館の警護にあたってもらおうかと思ってたのだけれど…
考え直す必要があるかしらねぇ」
「えぇえええッ!?」
――――――――――――――――無情な言葉。
「くすくす… 冗談よ」
――――――――自分にとっては結構笑えない冗談だったが、お嬢様は楽しそうに笑っていた。
「貴女はこれからもっと強くなるわ。
でも、気を使う力はあまり弾幕ごっこには向いていないの。
だから――――――――」
―――――――――――――あの日、私は主と契約をした。
「私が許した時のみ。
貴女の力の全てを以って、障害たる者を破壊なさい。
弾幕は要らない。派手に立ち回る必要もない。
貴女が貴女の力を1000%発揮できる一撃で、相手を葬り去りなさい」
「1000%とは、言ってくれますね………」
「あら?
もし貴女の力が10で、敵の力が100だとしらたら、そうでもしないと勝てないでしょ?」
「それはそうですけど……」
「ちなみに、相手の力が1000だったら、10000%の力を出すのよ」
「うわぁ…」
「返事は?」
――――――――今思えばとんでもない約束だ。
だけど、それでも何故か、私はその誓いを誇りに思えている――――――――
「―――――はい!」
――――――――そう、今でも――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――8//
ドンッ………
「―――――あ? ―――――、は……」
「――――――――終わり、ね。」
決まった。
私の弾は確実に、美鈴の胸を貫いた。
何か奥の手があったのかもしれないが、先手必勝。
何も出来ない内に、トドメを刺した。
あれ、私の目的は遊ぶ事だったのだから、この最後の一撃ぐらい受けてもよかったのかもしれない。
いつの間にかつい本気になってしまっていたようだ。
まぁ、それだけ楽しかったという事で―――――――――――――――
「――――――――――そう、ですね」
声に驚いて振り返ると、そこには今にも拳を突き出さんと構えている美鈴が居た。
馬鹿な、効いていない?
そんな筈はない。
服は血で紅く染まり、今にも崩れそうな姿で。
「はぁあああああああああああああああああああああああああ!!!」
それでもなお拳を握り締め、最後の一撃を繰り出そうとしていた。
強烈な魔力の渦が見える
これが、あの門番のチカラなのだろうか?
馬鹿な、ありえない。
こんな威力、こんな力、どこぞの黒いのの魔砲や下手するとそこの紅い悪魔のスペルより強いチカラを感じる。
「あなた、一体――――――――――」
「うおぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
力の気配は大きくなる。
だが、何か妙な感じだ。
力は強大なものの、とても小さいようなそんな不思議な感覚――――――――――
「紅符…………ッ!!」
「くっ… 境界!!」
『紅極尖錐!!』
『永夜四重結界!!』
あまりに強いチカラとチカラのぶつかり合いに、目が、眩んだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――9//
私の能力は、気を操る程度の能力。
私はそれを昇華して自己内面の操作という技を造り上げた。
でも、足りなかった。
あまりにも格の違う、驚異的な存在の前では、いくら潜在能力を活性化させようと意味のない事だからだ。
でも、私は主人の為に負ける訳にはいかない。
……そりゃ、私は強い方ではないから普段はあの白黒や紅白には勝てない。
それでも、主の身が危険な有事の時には、この身を挺してでも敵を破壊しなくてはならない。
―――――力と力がぶつかる。
結界は境界。 世界を二つに分けるもので、力ではその境界を越える事は出来ない。
だから、きっと、一撃がいい。
自分の全てを一撃の破壊に込めて、相手に放つ。
それで勝てそうになければ、破壊の時間を短縮する。
2秒の破壊を1秒に圧縮すれば、破壊の力は二倍になる筈だ。
そして、それでも届かなければ、さらに制約をかける。
破壊する範囲を拳程に絞り、駄目ならさらに指先程に絞る。
そうして時間も、空間も、極限まで狭めていく。
そんな、錐のような私の破壊は、頑張れば必ず相手に届く筈だ。
―――――だけど、例外はある。
物事には限界があるように、境界の強度も無限ではない。
簡単な話だ。 境界の強度を越える破壊を行えば、結界は崩れ去る。
出来る。
きっと、出来る。
私は、自分の内側に事なら誰にだって負けない。
そう、負けない。
――――――――――もっとも、そんな力はこの世には存在しないかもしれない。
境界というものは途方もなく頑丈で、そう簡単に壊せるようなものではないのだから。
でもまぁ、それも、この世界での話
時間と空間がゼロに近い、この極限の世界でのみ―――――
私は、
最強となる――――――――――――――――!!
――――――――――「彼女の世界」なら、もしかすると―――――――――――――――――――――
パキィィィィ……ン
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――10//
「き、ゃあぁあああああああああああああああああああああああああ!!?」
砕け散った。
最強を誇った結界『永夜四重結界』は、術でも呪いでもなくただひたすら純粋な『破壊』に敗れた。
油断もあった。
たかが駄妖怪ごときが、自分を倒す術を持っているなど夢にも思っていなかっただろう。
でも、確かに。
紅魔館門番の紅美鈴は、幻想郷最強の妖怪八雲紫に、勝った。
「お嬢様、あれが……」
「美鈴の奥義。
ただし、一発撃てば丸一日動けないから実戦向けの技じゃないんだけど」
「それでもまさか、あのスキマ妖怪を倒しちゃうなんて…」
美鈴の攻撃は、たった一撃だった。
チャクラで魔力を作って、拳の一点に圧縮。
それを直接打ち込むというシンプルと言えばシンプルすぎる一撃。
だが、それは力の弱い彼女が自分より強い者を倒す為に造り上げた、究極の一撃。
「弱いから、工夫と努力を重ねるって事ね。
あぁ……、そういえば似たような奴、もう一人居たような――――――――――――」
「お~いメイド、何の騒ぎだ?」
唐突に空から黒いのが現れた。
こいつは地獄耳なのだろうか?
「ご覧の通りよ」
「……スキマと門番が血流して倒れてるのを見せられて、『ご覧の通り』って言われても困るぜ……」
「咲夜、とりあえず手当てしてあげたら?」
「あぁ……。 そう、ですねぇ………」
「紫様ーーーー!!」
また変なのが出てきた。
あぁ、紫の式と式の式だっけ。
「わー!? どうしたんですか紫様ーーー!?」
「紫さまー!? 大丈夫ーー!!?」
なんだか騒がしくなってきた。
何だか五月蝿いので放っておくと、ふと庭の惨状が改めて目に入った。
無惨、としか言い様が無い程に荒れに荒れた庭は、一体誰が直すのだろうか?
「はぁ………」
全く。
気が、重くなって仕方が無い。
まぁ、災難と言えば災難だし、いいものも見せてもらった。
だから、今回はあんまり咎めないでおいてあげよう。
あんまり、ね。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――11//
「こんにちは♪」
「あ、こ、こんにちは…」
突如、砕けた門のスキマから見慣れた顔が飛び出した。
湖と番人達に護られた赤い要塞、紅魔館。
しかし、いかなる守りであろうと目の前の妖怪には無意味なものなのだろう。
「怪我の具合はどうですか?」
「私は大丈夫だけど、むしろ貴女の方が心配よ…」
あの一戦で、美鈴と紫は大きな怪我を負った。
でも三日ほど養生したせいか紫の傷は綺麗さっぱり無くなっていた。
それに引き換え美鈴は―――――――――
「なんか、ミイラみたいね」
「えーッ!?」
全身を白い包帯でぐるぐる巻きで働いていた。
「…それにしても。
貴方、そんな重症だったっけ?」
「…ギクリ」
美鈴が厭な汗をかいている。
紫はそれで大体の状況が掴めた。
「つまり、この庭の惨状は全部貴女責任って事になって、傷も治ってないのにタダ働きって所かしら?」
「うぐっ… そんなハッキリと言わないで下さいよ…
私は悪くないのに、お仕置きとか言ってナイフを何本も投げられたし…
何か、楽しそうにナイフ投げるんですよ!? 信じられます!!?」
ムキーと暴れる美鈴。
と、それが傷に響いたのかすぐにもがき苦しみ始めた。
「うふふ…
まぁまぁ、厭な事は飲んで忘れましょう。
ほら、今日は良いお酒が手に入ったのよ?」
「え、ちょっと待って下さい、まだ私仕事中で…」
「固いこと言わない言わない♪
どうせだから、レミリアや咲夜、パチュリーも呼んでこようっと」
「ちょっと、八雲さん~!」
人の事などお構いなしで、紫はずかずかと館に入っていった。
と、一度だけ立ち止まり――――――――――
「『紫』で、いいわよ」
「え…?」
「さ~、今日は飲むわよ~~~!」
何か、いつの間にか友達が一人増えたみたいです。
だけど、その友達は間違いなく大のトラブルメーカーで、まともに付き合ったら身が持たない気がします。
でも……
「ほら、美鈴!
早く早く~!」
「だから、仕事中なんですってば~…」
でも、それでも彼女は今まで私が積み重ねて来たモノを認めてくれた気がして、
それが凄く嬉しくて。
あぁ、今日からまた、いつも以上に過酷で楽しい毎日が始まりそうです。
終劇
まさか俺設定が被るとは…
しかも自分より上手く使われてりゃ世話ないな……。
だけど㌧デモコンセプトは大好きです。
これからもオーエンしてます。
紫をも倒しきれる美鈴。でもやっぱり扱いは以下略な美鈴。良い話でした。これからも頑張ってください。
うぅん、めーりん蝶彩虹ー。
結局、扱いは……(w
夢想天生、弾幕結界、ザ・ワールド……いろいろございますなァ………………
ただ―――――たった一つだけというのならやはり……………
中 国 拳 法 でございます
こんな設定大好きです。これからも頑張ってください。
それもさることながらかっこよかったです。
レミリア様。(おい
だから、「最大威力、最小範囲、最高圧縮」って言ったらそれしか…
そんな感じで想像してました。(形は円錐ですが)
でも最高。中国最強!