朝。春の日差しが私の顔を照らす。
「ん~、今日も良い天気だ」
私は十六夜咲夜、ここ紅魔館のメイドになって一週間の新米メイドです。
ひょんなことから幻想郷に迷い込み、たまたま出会った九尾の狐に拾われてここにやってきました。
まさか私がメイドになるだなんて外の世界にいたときには考えもしてません。
それが「貴方は見た感じ、メイドに見える」と言うだけでここに連れてこられ、わけもわからず面接開始。
面接官も「はい、採用」と5秒で即決してしまったんですから。
ホントはイヤだったんですけど妖怪が跋扈する屋外で暮らすのは危険すぎるので、住み込みで働かせてもらうことにしちゃいました。
まずは日課である朝の館内清掃に取り掛かります。今日は週一度の全館清掃の日
「よしっ、気合い入れていくかぁ!」
私の仕事が清掃であると告げられた時「ラッキー♪」と思いました。
料理・洗濯はまぁ人並みにこなせるんだけど、掃除をさせたら私の右に出る人はいませんよ。
なぜかと言うと…
「ザ・ワールド!」
こうやって時を止めてその間に掃除をしてしまいます。頑固な汚れも止まった時の中では私に抗うことはできません。
初日にあまりに完璧な清掃を行ったために、なんと採用初日にして『清掃隊チーフ』に指名されちゃいました。
当然先輩達の中にはこのことを良く思わない人も少なくないみたい。次の日の朝は靴に画鋲が入ってました…
チーフ級になると個室が与えられるので、他の人に気を使わなくて済みます。
私はモソモソと着替えを取り出し、パジャマからメイド服へと着替えることに。
ゆっくりゆっくり着替えてたら、急にドアが開いたからビックリ。
「こら咲夜っ、着替えはチャッチャと済ませる!」
「うわっ、着替え中に入ってこないでくださいよメイド長!」
この人は紅魔館のメイド長、私の採用を決めたのもこの人。
「いいですか、メイドたるものテキパキと行動をしなければなりません。あなたにはその心構えが出来ていないようですね」
「す、すみません」
私はこのメイド長さんが苦手です。ちょっと生理的に合わない…
「…お説教はこのくらいにして、本題に入ります」
「本題?」
「30分以内に掃除が終わらせ、30分後きっかりに4階の大広間に来なさい」
「さ、さんじゅっぷんで!?」
「それが出来なければおしおきです。さぁ作業に取り掛かるのです、15秒経過してしまいましたよ!」
「は、はいッ!!!」
…滅茶苦茶な事を押し付けてくれたわね。時間に細かすぎるのよ!
時を止めても1時間はかかる全館清掃作業、それを30分でこなせって?
「さーて、どうしたものやら」
清掃隊は一応20人のメイドで構成されているんだけど、そのほとんどが私の言うことなんて聞いてくれません。
命令なんかしたらあとで陰湿なイジメを受けちゃう。そんなことされたら後々面倒だし。
「一人でやったほうが早いね、そうと決まればパワー全開で時を止めなくちゃ!」
私は死力の限りを尽くし掃除に励む、右手に雑巾、左手にモップ。その体はきっと箒で出来ていた。
数回にわたる長時間の時間停止のおかげで辛うじて掃除完了。クソがっ!
「な、何とか終わった…」
さすがに一人で紅魔館全部の掃除をこなすのは無理があった。
時間を止めすぎて体中がミシミシ言ってる。こんなの続けてたら身が持たないって。
階段を上るのもシンドイ。動かぬ体を引きずって4階の大広間へと向かう。
「時間きっかりね。やれば出来るじゃないの」
「やるときゃやりますよ、あたしゃ」
「それじゃあ、ついてきなさい」
メイド長の後についていくと、そこは厨房だった。
「あれ、料理でもするんですか?」
「何寝ぼけてるんだい咲夜、作るのはあんた。メイドなら料理くらいできないと困るのよ」
「なーんだ、料理なら私にもできますって」
ということで、簡単な料理を作ってみた。
「どれ、毒見をさせてもらうわ」
「どうですか?」
「…」
「…あのー、毒なんて入ってませんけど」
メイド長は料理の入った皿を私に投げつけ、真っ赤な顔で叫んだ。
「いたっ!」
「なんだいこの料理は!基本がまるでなってないじゃないの!」
「そ、そんなに不味かったですか?」
「美味しい不味い以前の問題!心が全く篭っていない!!手抜きにも程があるわ!!!」
その後一日中、深夜まで説教と料理の特訓を受けることになってしまった。
途中で「メイド長に食べさせるような料理に込める心なんて持ち合わせておりません」と言いかけたけど殺されるのでやめた。
それにしても、なんで今日は料理の練習なんてさせられたんだろう?
それから毎日のように料理の特訓は続きました。朝の清掃が終わると厨房に缶詰の日々。
さすがに次の日からはコック隊のチーフが指導役だったんだけど、この人も結構細かいところに五月蝿い人なんだよね。
でも料理ってのは私が思ってたよりも遥かに奥が深い。火加減一つでまったく別の料理になっちゃうこともある。
最初は「なんで私が料理しなくちゃいけないの?」でイヤイヤやってたんだけど、目覚めたみたい。
異動願いでも出そうかな。今は料理が楽しくって仕方がない。
この前も清掃隊の先輩に料理を振舞ったら、これがなんと大好評。対人?関係もすごく良くなって仕事がしやすくなるし。
その人その人に合ったお茶の入れ方まで習得、案外才能があったのかな。
私が紅魔館に来て3ヶ月、仕事にも慣れ、先輩からも信頼されるようになってきました。
午後3時のお茶を終えた私は今日も厨房へと向かう。
「今日もお料理お料理♪」
「あー咲夜、今日は貴方に頼みたいことがあります」
「げ…メイド長」
「げ、とはなんですかッ!!!」
少女反省中……説教は30分にも及んだ。
「…ふぅ、時間がないので本題に入りますよ」
「今のが本題だとばかり思ってましたが、何か」
「咲夜、あなたにはこの後」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「…あなたのとっておきの料理を一人前作って頂戴」
私は鉄拳が飛んでくるかと思ったけど、メイド長には聴こえてなかったみたい。
「え、一人前で良いんですか?」
「良いのよ、ただし夕食ではなく朝食を。制限時間は夕方4時まで!」
「夕方4時って、あと15分じゃないですか!」
「あなたの心構えが自分の首を絞めたのです。時間を守れないようなものはメイド失格ですよ、はい始め!」
「もうちょっと早く言ってくれれば良いのに~」
私は全速力で厨房に飛び込み、なぜか朝食の準備を始めたので周りの料理隊から白い目で見られてしまった。
「いった~、指切った」
「咲夜ぁ、それじゃ朝食じゃなくて夕食になっちゃうよ?」
こいつはマリス、私と同時期にメイドになった親友。おせっかい焼きだけど、いつも私のピンチを助けてくれる。
「メイド長お得意の難題なの、まったく訳がわかんないわ」
「朝食はシンプルイズベスト、これが常識」
「なるほどっ、ヒントさんきゅー!」
手早くパンを焼き上げ、レタスとハムを切りスクランブルエッグを作りそれをパンにはさむ。サンドウィッチの出来上がり。
さすがにこれだけでは一品足りないので紅魔館自家製ストロベリーヨーグルトをデザートにして出来上がり。
「って、すごい手抜きじゃない?」
「何言ってるの、このスクランブルエッグは計算され尽くした温度で作り上げられた絶品よ。って今何時!?」
時間はすでに午後3時59分30秒、後30秒しかない。厨房から4階の大広間までは走っても3分はかかる。
「ぎゃああああああああ、時間がなーい!、時よ止まれェェェェい!ザ・ワールド!!!」
私は止まった時の中を4階目掛けて疾走した。途中階段を踏み外して左足から人体から発してはいけない音が生じた気がする。
時が再び動き出すまでに私は4階大広間の入り口へたどり着いた。しんど~
「そして…時は動き出す」
何事もなかったかのように私はドアを開けて中に入る。これがメイドのたしなみ。
「さすがは咲夜ね、秒単位で時間を守るなんて流石だわ」
「それでメイド長、言われたとおり朝食を一人前作ってきましたけど…」
私はサンドウィッチとヨーグルトの乗った盆をメイド長に見せる。
「ほぅ…咲夜、あなたこれ自分で作ったの?」
「そうですけど、何かマズイですか?」
「いえ、十分よ。ついてきなさい」
そう言うとメイド長は大広間から出て5階に向かう。
「え…5階に行くの!?」
私達一般メイドは5階への立ち入りを禁止されている。5階に立ち入ることが出来るのはごく限られたメイドのみ。
紅魔館の中でもここだけは空気が違う。興味本位で立ち入ったメイドがその後帰ってこなかったこともしばしばあるらしいし。
私は恐る恐るメイド長の後をついていくことにした。このフロアにあるのはメイド長と親衛メイド隊の個室、そして…
「メイド長、もしかしてここって…」
「失礼いたします」
「うわ、ノーリアクションなの!?」
メイド長は5階のフロアの中でも一番荘厳な扉を開ける。レミリアお嬢様の部屋だ。
初めて踏み込むお嬢様の部屋、柄にもなく足が震えてるし。
「し、しつれいしま~す」
「お嬢様、お食事をお持ちしました」
「ありがとう、さっそくいただきまーす」
あれ、なんかイメージと違う。子供の声だ。年齢は495歳って聞いてたからもっと凄い妖怪かなんかだと思ってた。
お嬢様の顔がメイド長の背中で見えない。もうちょっと右か左かにどけっつーの!
「あ、このサンドウィッチのたまごが凄く美味しい!パンにも隠し味かなにか入ってるのかな?」
「作ったものに聞いてみますか?後ろに控えておりますので」
「おねがいー」
体が動かない。私すっごく緊張してる。
「今日の調理係、メイドの咲夜です」
「さ、さくやでございます。おはつおめにかかり…」
「顔がみえないよー、顔を上げてちょうだい」
「は、はいっ」
私が顔を上げたその直後、レミリア様と目が合った。
それが私とレミリア様の衝撃的な出会いだったの。
かかかかわいいッ!れみりあ様かあいいよ!!!!
つぶらな瞳、やわらかそうな肌を含めてモロモロ全部かあいいよ!!!!一生お嬢様の元で働きたいよ!!!!!!
…という感情を必死に押し殺し、気合で体裁を取り繕う。
「ねぇ、このスクランブルエッグあなたが作ったの?」
「は、はいっッ!」
「火かげんとか最高~。すこし血の風味もあってすごく美味しかったよ!また作ってね」
ほめられた…?私がお嬢様に褒められた!?
「ま、毎日作らせてもらってもいいですか!?」
「うん!」
私の心が幻想郷へ旅立っているうちに、お嬢様の食事が終わったらしい。
「それでは失礼いたします。咲夜、戻るわよ」
「…あ、はいっ」
「またきてね~」
「是非ッ!!」
「こら咲夜っ、さっさと下がりなさい!」
その時の私の目は、いままでの人生の中で一番輝いていた。間違いないって。
でも、左足がやたら痛いのはなぜかしら…
「咲夜、あなた親衛メイド隊の試験うけるんだって?」
「親衛メイド隊にならなくて、何になるのよ!」
お嬢様とのファーストコンタクトから1ヶ月、私は親衛メイド隊の入隊試験を受けさせてもらえることになった。
試験は三日後に迫っているけど、お嬢様の身の回りの世話なら完璧にこなしてみせる!
「まぁ咲夜ならお嬢様のお世話系は完璧こなせるでしょうけど」
「系?まだほかに系統があるの?」
「咲夜、あなた戦闘の心得ある?」
「…カッとなってやった。今は反省している」
「そんな過去があったのね、十分じゃないの」
「でも不意打ちだったから、わたし真っ向勝負とかで叩く技術ないよ!?」
まさか戦闘技術まで試験されるとは…私大ピンチ!
「咲夜でも出来そうな戦い方と言えば…あなたナイフとか得意よね?」
「まぁ料理にも使うし、タネなし手品とかでも良く使うよ」
「その手品を上手いこと使うのよ。とりあえず今回は付け焼刃ででも試験に受かっちゃえば後で練習してごまかせるし」
「で、どうするのマリス?」
少女検討中……
「うわ、えげつなっ!」
「そうでもしないと試験に受からないわよ?」
というわけで、私は3日間その手品を完成させるべく部屋に引きこもることにした。
「今回も選りすぐりのメイドが集まったわね」
「親衛隊にふさわしい人物がいるかしら?」
メイド長と親衛隊長が審査をする親衛隊採用試験、これは親衛隊に欠員が出た時のみ開催される。
この試験は毎回倍率が20~30倍という狭き門、でも親衛隊になれればいつでもお嬢様に会うことが出来るの。
「今回の募集は1名、それに対し志願者は44名よ咲夜」
「あ、私に対する説明だったのね」
「いい、まずは筆記試験から始まって次が世話試験、最後が護衛実技試験よ」
「分かってるから大丈夫よ」
まずは筆記試験、これは大体のメイドが楽勝でパスするはずなのだが…
(ヤバイヤバイヤバイ、こんなのわかんないッッ!!!)
お嬢様の好みやクセなんて、一回会ったきりじゃ普通わかんないわよ。
前日の一夜漬けでなんとかなる問題ではなかったようね…なんとかしなくちゃ。
(カンニングだッ!)
時を止めて周りの回答を盗み見ることでなんとか筆記試験を切り抜けられた。次はお世話実技。
「これは、さすが咲夜ね」
「すごく…親衛隊に欲しいです」
周囲からの視点では炊事洗濯掃除あらゆるものが同時進行で完璧にこなされてゆく。
まさに完全で瀟洒な立ち振る舞い、自分で自分に酔ってしまった。私はこの試験を満点で通過~。
次はいよいよ難関・護衛実技試験。
ここまで残ったメイドは8人、人数が多いこともあってか試験方法が変わる。
「あなたたちには、これから殴り合いをしてもらいます」
いきなりのバトルロワイヤル方式、ギブアップか死んだら負け。殺したら反則負けらしい。
なんかアヤシイのやらゴッツイのやらいるんだけど、ここまで来て負けるわけにはいかない!
「はじめっ!」
私はマリスの助言に従い両手にナイフを持ち、他の7人の出方を伺う。
極力自分からは仕掛けない。なるべく戦闘回数を減らすことが勝利への近道、ってめーりんが言ってた。
開始から3分、なんか気がついたら3人ほど退場してた。実はこの作戦ビンゴ?
さすがにここから先は戦わなくちゃいけないみたい。傷だらけのメイドがこっちに向かってくる!
「咲夜!アレを使うのよ!」
「まかせてっ!」
私は向かってくる敵に対してナイフを投げる、当然へなちょこなのであっさりと叩き落されてしまうのだが計算済み。
ここで私お得意の種無しマジック発動。時を止めてナイフを回収し、もう一度投げる。
はじかれたナイフが再び相手に向かって飛んでいく。そんなイレギュラーナイフに対応できないまま一人撃沈、OK。
だが安心してはいられない。次はでっかい剣を携えたメイドが私の背後から襲いかかってくる。
「咲夜ァーーーー!!!!!」
「時よ止まれェェェェェェい!」
私は連続して時を止め、以前やっちゃった時のように相手を刺す。なんかイヤな気分になるけど仕方がない。
「い、いつの間にやられたんだ…?」効果はバツグンだ!殺しはしないけど。
遂に私は最後の二人のうちの一人まで残った。あと一人!
「残ったのはサクヤか…予想外だな」
「ふんっ、あんたなら心置きなくぶちのめせるわ」
相手は私が紅魔館に入りたての頃に散々苛めてくれた先輩メイド・ハクロウ。いまこそ逆襲の時。
「私に斬れないものなど、無い」
アイツの両手には刀が握られている。いちおうこちらも二刀流だけど獲物はナイフ。
「ケリをつけてあげ…」
私が身構える間もなくハクロウは私の懐に飛び込んできた!
「死ね!サクヤ!!!」
「だばぁああああ!」
間一髪ハクロウの薙ぎ払いをスウェーで回避。こいつ殺る気マンマンだ!
ヤツは二刀流、そのままもう一つの刀で私の体を両断しようと切りかかってきやがります。
私は気合と怨念のこもったナイフでハクロウの斬撃を受け止める。
が、当然のようにナイフは壊れてしまった。
「何でこんなヤツがメイドなんだぁぁぁぁぁーーーーー!!!」
その剣さばきから、相当の使い手だということは素人の私でも分かる。紅魔館のメイドはこんなのばっかりなのか。
ナイフ使いの達人なら戦えるかもしれないけれど私は素人。とてもじゃないけどマトモに戦り合ったら死ぬ。
しかもついさっき連続して時間を止めちゃったので、一瞬だけしか時間が止められそうにない。
(私はこんなところで死ぬわけにはいかないの!)
あのレミリアお嬢様のお世話をするまでは死んでも死に切れない。そのためにこの試験を受けたのだ。
でも正直、こんな殺し合いみたいなことまで試験されるなんて思ってもみなかった。
次に接近されたら絶対に斬られる。未来予知能力なんかなくても分かる。
「にぎゃーーーー!!!!!」
「行くぞっ!」
次の瞬間、先程と同じくハクロウは一直線に私の懐に飛び込んでいた。
発狂した私は一瞬だけ時を止め、ありったけの力を込めた拳をカウンターで叩き込んだ。もうどうにでもなれっ!
左手に激痛が走る、どうやら斬られてしまったみたい。もう一歩踏み込まれたら十六夜咲夜の人生も終わりね。
ああ、お嬢様にもう一度会いたかった…
「むぎゅう」
だが、私のパンチが効いたのかハクロウは動かない。白目を剥いて気絶している。
「勝負あったようね。お見事よ咲夜」
勝者・咲夜。ここに親衛メイド隊採用試験は終了した。
「あー手が痛い。完全に折れてるわこりゃ」
「素人があんなムチャするからよ」
「しかたないでしょマリス、手品のネタは切れてたんだから」
試験から3日たったけれど右手の腫れは一向に引く気配がない。左手もあの時斬られた傷が癒えていない。
私は念願の親衛メイド隊に加入でき、お嬢様に会うことも出来るようになったのだが両手が治るまでは何も出来ないっぽい。
あー、もどかしいったらありゃしない!
「せっかく親衛隊になれたのに、これじゃあお嬢様のお世話が出来ないわ」
「その心配はないわよ咲夜」
「うはっ、メイド長!」
相変わらずこのメイド長は人の部屋に勝手に入り込んでくる。この性根をいつか叩きなおしてやらねば…
「お嬢様が貴方をお呼びよ。さっさと行きなさい」
「お嬢様が?」
「あなたの親衛メイド隊としての役割分担を言い渡されるわ。さあ行きなさい」
コレは一大事、私は『いざ鎌倉!』と言わんばかりにお嬢様の部屋へと急ぐ。
「失礼しまーす」
そのとき、目の前が真っ暗になった。敵襲!?
「だーれだ?」
「レ・レミリアお嬢様ですか?」
「あたり~」
手が退けられると、私の目の前にお嬢様の可愛い顔がある。
これはとんでもない破壊力だ。頑張れ咲夜、正気を保つのよ!
「な、な、なんのごようでしょうか???」
「あなたの役目がきまったから、おつたえするの」
私の脳髄に緊張が走る。私の役目は何だ…?
「わたしの身の回りのお世話係になってくれる?」
お嬢様直々のご指名。私の脳みそは博麗神社の例大祭並に混乱してしまった!
「ま゛っ、まぢですか!?」
「だめ?」
気合だ咲夜。死力を尽くして返事をするんだ咲夜!!
「よ、よろこ…ん…で……」
「さ、さくやっ!?」
そこまで言うと、私は嬉しさのあまり気を失ってしまったみたい。気がついたらベッドの上でした。
後から聞いた話によると、鼻からの出血多量で危なかったらしいです…。
なにはともあれ私は念願のお嬢様専属メイドになることが出来ました。
これから色々大変なこともあると思うけど、お嬢様への愛と気合で乗り切っていこうと思う。
まずはお嬢様の前で平静を保つことから…
それはそうと、私もあの絵師様には妄想力刺激されまくってます。
しかも藍さまに拾われてですかー!?
衝撃を受けたとはありがたい限りです(ぇ
愛と萌えと笑顔のために~~。