とあるいつもと変わらない日常の普通の日。
そんな普通の日、ここ幻想卿の人があまり訪れないひっそりとした土地にある博麗神社には
いつもやることがなく、そしてやる気もあまりない神社の巫女霊夢、とりあえず暇だから
遊びに来たぜという魔理沙、霊夢にあいたくて遊びに来たレミリア計3人の特に珍しくもない
3人の面子が神社に集まっていた。集まった時間はお昼時であり太陽が出ているので吸血鬼で
太陽が苦手なレミリアの事を考え木々の陰などに作られた日の光が当たらなく、そしてこれは
レミリアだけでなく霊夢や魔理沙の三人のことを考えて寒くない程度に心地よく
ひんやりとした縁側にお茶請けを運び3人一緒にまったりとした静かな時を過ごしていた
そんな時、魔理沙が霊夢をじっと見て言った。
「霊夢、お前、少し背が伸びたんじゃないか?」
魔理沙が霊夢の方を見て言う。
「え?そう?」
特に魔理沙の振ってきた話を気にすることもなく、霊夢は手に持っている煎餅をおいしそうにほおばる。
「ああ、間違いないぜ。よし、背比べしてみよう。ほら、煎餅食べてないでちょっと立ってみろよ」
そういうと、魔理沙はすっと立ち上がり、霊夢の前に自分の手を差し伸べる。
立つの?面倒くさいわね、と霊夢は口では言わなくとも顔に少し出しながら食べかけの煎餅を
皿に置き差し出された魔理沙の手を掴み、グっと腕に力を入れ立ち上がる。レミリアは煎餅を食べ
ながらとりあえず霊夢と魔理沙のやりとりを見ている。魔理沙は頭に被っていた帽子を床に置き
霊夢の背中に自分の背中を向け、それからペタンと背中をくっつけ背筋をぴっとさせる。
「ねぇ魔理沙?背を比べるのはいいけど、私元々あなたより背が高いから正直こうやって背を比べても
自分が背が高くなったとかあんまりよくわからないんだけど?」
と自分と背比べをしている魔理沙に言葉を投げかける。
「う・・・まぁ、そうかもな。だけどお前はわからないかもしれないが私にはわかるぜ・・・
霊夢は背が高くなってるよ」
と少し悔しそうに霊夢の問いに魔理沙は答えた。
霊夢はその魔理沙の答えを聞いてもやはりピンとくるものがなく、特に意味もなく
自分の頭を手でぽんぽんとたたいた。でも良く考えてみれば確かに魔理沙の言うとおり背が伸びたよう
な気もする。この前、紅魔館のメイド長であり、お嬢様万歳な十六夜咲夜に「お嬢様の扱い方について」
という講座を無理に受けさせられた時、私よりも背が高いはずの咲夜の目線と咲夜よりも
背の低いはずの私の目線の高さが一緒だった。なぜ目線の高さが一緒だったかと覚えているかというと
咲夜に思い切り両手で左右のほっぺたを固定され、目をそらすことを許されなかったからである。
あれは苦痛だった。
「そっか、私背が伸びたのね」
霊夢は自分の成長に何となく気づきまた意味もなく、しかし今度は少し笑顔でさっきよりもちょっと
速い速度でまた頭をぽんぽんとたたく。そんな霊夢を見て魔理沙は悔しそうに
「ちぇ、気づいてないかもしれないけど私だって伸びたんだぜ」
自分だって背が伸びたんだということに気づいてもらえなかったのが悔しかったのか霊夢にぶーぶー言う。
そんな魔理沙を見て、霊夢はくすっと笑い
「あら、気づいてるわよ。お互い背を比べて特に差がついていないということはお互い同じくらいの
スピードで成長しているってことよね」
「気づいているならいい。まぁ、ほとんど同じくらいのスピードでお互い身長が伸びてるから
霊夢を抜くこともできないしおいてかれることもない・・・結局あまり変わらないけどな」
そう言い、霊夢の笑みとは違った苦笑を魔理沙は浮かべながら床においていた帽子を被る。
「それにしても・・・・」
これは霊夢も魔理沙もほぼ同時に言った言葉で、お互いの目はお互いの胸の辺りを見ている。
「ここだけは・・・全然変わらない・・・か」
とお互い声を下げ両手で顔を覆ってしくしく泣きながら悲しみを分かち合っていた。
そんなやりとりを、レミリアは静観し見ているだけで会話に参加することができなかった。
成長をするということを捨てる代償に長生きをすることを選んだレミリアには成長するという嬉しさなどが
わからないのである。付け加えているならレミリアの場合、早い段階でその長生きをする道を選んでしまった
ためその分余計に成長の嬉しさなどがわからない。別にだからといって現状を後悔しているわけではない。
そのおかげでちゃんと500年くらい生きてきているしこれからもまだまだ生きられるであろう。
それにこうやって成長でなく長生きを選んだからこそ霊夢たちに会えたしこれからも一緒の時を過ごせるの
だとも思っている。
しかし、霊夢や魔理沙の成長したという話を聞いているうちに今まで考えてもいなかった成長についてを考え
始め、レミリアは何故か気持がもやもやとしていた。
しかしそこで成長などの話が終わりその後はまた3人まったりしたり違った雑談をした。
そんなこんなで夕刻頃、神社での集まりはお開きになり各々がそれぞれ場所へ戻った。
レミリアが紅魔館に帰った時には夜になっていた。自室に戻ると椅子に腰を下ろした。いつもならここで咲夜を
呼びつけ紅茶でも飲みながらまたゆっくりとした一人の時間を過ごすのだが今日は違っていた。
部屋に戻り、ふと昼のあの話題「成長」ということを思い返していた。思い返していくうちに胸に昼間の時と
同じもやもやした気持がふくらんでいく。
成長とはどういう感じなのか?自分がもし成長していたりしたら?と考えると心の中のもやもやはもっと大きく
なっていった。
・・・・私も・・・霊夢や魔理沙・・いや、霊夢のように成長をしてみたい・・・・
「ああ~、もうっ!」
とうとうレミリアがイライラしてか、バンっと大きな足音を立て椅子から立ち上がる。
「このまま考えていても意味がないわ。困った時はやっぱりパチェよね」
そういうとレミリアは勢いよく自室を飛び出し、パチュリーのいるヴワル魔法図書館へと向かった。
図書館の前についたレミリアは扉を開け、目的の人物パチュリーを探す。
パチュリーは簡単に見つかり、いつものように図書館内の椅子に座り本を黙々と集中して読んでいた。
「パチェ、ちょっといいかしら?」
本を読んでいる姿を見ても気にせず、レミリアはパチュリーとテーブルを挟んだ向かいの席に座り声をかける。
「何かしら?レミィが図書館に用があるなんて珍しいわね」
パチュリーはレミリアに話かけられ答えはするものの目は本を見たままだ。
「図書館に用はないわ。あなたに頼みごとがあるのよ、あなたなら何でも頼みごとを叶えてくれる気がしてね」
「レミィにそこまで信頼してもらえるのは嬉しいわ。だけどその頼みごとを叶えてあげられるかどうかはその
頼みごとというのを聞いてからでないとわからないわ」
キリが良いところまで本を読み終えたのか、パチュリーは目を本から向かいのレミリアに向ける。
「わかってるわ。頼みごとというのはあなたの力で私に成長するというのを体験できるようにしてほしいの」
「・・・え?」
パチュリーはレミィ何を言っているの?みたいな顔をした。
そんなパチュリーの反応を気にせずレミリアは言葉を続ける。
「ちょっと思うところがあってね。私も少しずつ成長してみたりしてみたいのよ。どうにかできないかしら?
お願い!あなただけが私の頼りなのよ」
そういうとレミリアは自分の顔の前に両手を合わせお願いのポーズをする。
そんなレミリアの頼みごとを聞いてパチュリーはため息を吐き、目線をレミリアからまた手元の本に戻す。
「レミィそれは無理よ。あなたの頼みごとならそれなりに叶えてあげる私でも、そのお願いだけは叶えられないわ」
「どうしても無理なの?」
「無理よ。決して意地悪で言っているのではないわ。あなたはもう随分前に成長するということを放棄し長生きを
することを選んでいるわ。一度自分でそうして放棄したのを私の魔法でどうにかするというのは無理なのよ」
「・・・・そう」
パチュリーの返答を聞き、レミリアはあわせていた手をゆっくりと離し椅子から立ち上がる。
「私の話を聞いてくれただけでも嬉しいわ。ありがとう。邪魔したわね」
そう言うと、レミリアはパチュリーに背を向け図書館から出ようと出入り口に向かい歩く。
「・・・あなたの言う少しずつ成長をする体験をさせてあげるのは無理だけれど」
パチュリーは本のページをめくり、図書館を出ようとしているレミリアに向かって言葉を続ける。
「あなたの体格を大きくすることぐらいならできるわよ」
歩いていたレミリアはそこで足を止め、クルっと振り向きパチュリーに目を向ける。
「できるの?そんなこと」
「あなたに嘘は言わないわ」
そういうとパチュリーは、また目を本からレミリアに移しほのかに笑いかける。
「パチェ!」
パチュリーの名前を叫ぶと、レミリアは駆け出し一気にパチュリーとの距離をつめ飛びついた。
「きゃっ!やだ、レミィ」
子供のように飛びついてきたレミリアをパチュリーは顔を赤くして受け止めた。
「パチェ、だからあなたは大好きよ」
レミリアは本当に幼い子供のようにパチュリーに擦り寄る。そんな言葉を聞きパチュリーは顔をもっと赤くなる。
「わ、私も好きよ、レミィ」
さりげなくそう言うと擦り寄っているレミィに腕を回し力を少し込める。
「でも・・・」
これは喜んで浮かれているレミリアにはきっと聞こえない本当に小さな声で
「私はきっとあなたの一番の大好きにはなれないのよね・・・」
と悲しそうに呟いた。
図書館には本棚や椅子や机が置かれていない、少し開けたエリアがある。そこはパチュリーが本を読んで
学んだりしたことをすぐに試したりできるように作った空間だ。同じ図書館内であるがパチュリーとレミリア
は先ほどの本を読む場所からこちらへと場所を移した。そこでパチュリーが人一人が立てるくらいの大きさの
魔法陣を床に描きそこにレミリアを立たせた。
「じゃあ、はじめるまえに簡単なことを言っておくわね。この魔法は数時間しか効果が続かないこと。
あと私の魔力をレミィに注いで大きくするから効果中は大きな力を使わないこと。力を使った分だけ
折角注いだ魔力が減っていき元に戻るのも早くなってしまうわ。今着ている服とかはあなたに合わせて
大きくなるからそのあたりの心配はしなくていいわ。あと・・・・」
「?」
突然パチュリーの声が下がり、一拍入る。
「ごめんなさい・・・私の力を持ってしても何故か・・・胸だけは大きくしてあげることができないわ・・・
・・くっ!」
そういってパチュリーは悔しそうに唇をかんだ。
「・・・わかっているわ。この世界でそれを望むのはきっと・・・罪なのよね」
レミリアは全てを悟ったようにフっと笑った。
「じゃあはじめるわよ。レミィ目を瞑っていて。その魔法陣光るからまぶしいわよ」
「わかったわ」
返事をしてレミリアは目を閉じる。それを確認しパチュリーも目を閉じ、そして詠唱を始める。
「のびーる、のびーる・・・・」
「ちょっとまって!?」
レミリアが詠唱を止める。
「何?どうしたの?」
「いえ・・その・・別にどうでもいいことなのかもしれないけど、この魔法ってそんなに簡単な詠唱なの?」
「そうよ、問題ないけど・・・なんで?」
「いえ、なんでもないわ、ごめんなさい。詠唱ってかっこよかったり意味深い言葉が普通だと思っていたから」
「大丈夫よ、今回の魔法はこんな詠唱。じゃあ、続けるわね。のびーるのびーる・・・」
再び魔法の詠唱が始まる。パチュリーが大丈夫というのだから大丈夫なのだろう。レミリアはパチュリーを信じ
魔法発動を待つことにした。あと少しで大きくなれる。そう思うとレミリアの胸は少し高鳴った。
「のびーるのびーる・・・のびてーーー!」
パチュリーがひときわ大きい声でのびてと叫ぶ。
その瞬間レミリアの立っている魔法陣が眩しく輝きレミリアを包む。
レミリアは目を閉じていてもわかるくらい視界が強い光によって少しの間真っ白になったのに少し驚いたが
その数秒が過ぎた後また目の前は元の暗い視界に戻っていた。
「パチェ、もう目を開けていいかしら?」
「え・・・あ、い、いいわよ」
少し反応が変だったがパチュリーのお許しも出たのでレミリアは目を開ける。
するとさっきまでと違った世界がレミリアの目には映し出されていた。少し離れたところにテーブルと
椅子が見える。その椅子はともかくテーブルの高さは私の目線と同じくらいの高さのはずなのだが今は
私のほうが高いような気がする。少し離れたところにあるし遠近感のせいか?と思ったが目の前にいる
パチュリーを見て遠近感のせいではないというのがわかった。私より背が高かったはずのパチュリーを
今の私は見下ろす事ができたのである。
少しずつレミリアは今の事態を把握していき自分の手や脚に目をやる。以前より明らかに腕や脚はすらっと
伸びていて、手を広げると手のひらや指も大きくなっているのがわかった。羽根が何かにくすぐられる。
何かと思って後ろに手を回すと髪の毛であった。髪も伸びているのか、髪はどうでもよかったが伸びてしまった
なら伸びてしまったでいいかと適当に後ろ髪を振り回した。胸は特に変化はないようだった。そして最後に顔を
ぺたぺたと触ってみる。なんとなくであるが顔が前の幼い顔とは違ったピシッとした顔つきになっているような
気がした。鏡を見ても吸血鬼は鏡には映らないので確認できないのが残念だ。まぁ、顔もあまり気にしなくて
いいだろう。魔法はちゃんと成功したのだというのをわからせるのには十分なことだった。
「パチェ、ばっちり成功ね!」
レミリアは何故か顔が赤らんでいるパチュリーに声をかけた。
「あ、いえ、あ、うん、成功ね」
レミリアを見ずに顔を真っ赤にして俯いて言った。
パチュリーはレミリアを見ることができなかった。予想以上に魔法が上手くいき、直視することができないほど
レミリアがバランスよく大きくなっていて、そして綺麗になっていた。それにプラス自分はレミリアに好意がある。
胸がどきどきしてしまい口も上手く回らないのだ。
「パチェ、ありがとう。本当にあなたには感謝しきれないわ」
パチュリーと違った意味で舞い上がっているレミリアは、顔を真っ赤にして俯いているパチュリーを抱きしめた。
「じゅぅぅぅぅぅ・・・・」
パチュリーは変な声を出すとゆでだこになりその場に倒れた。
「パチェ?顔を真っ赤にして・・・疲れてしまったのかしら。咲夜~?」
レミリアは咲夜を呼ぶ。不思議なことだが紅魔館内でなら私が咲夜と呼べば大抵は呼び声を聞きつけて
駆けつけてきてくれる。便利なメイドだ。案の定すぐに見知ったメイドがこちらに駆けつけてきた。
「お嬢様、お呼びになりま・・し・・・お嬢・・・様・・・ですか?」
咲夜は大きくなったレミリアを見て固まる。
「何を言っているの当たり前じゃない。あ、そうか。どう?私大きくなったのよ咲夜」
そういうと笑いながら咲夜の前で見せるようにくるくる回る。回ると同時に長くなった髪の毛はさらさらと
なびき大きくなったスカートもふわっと舞う。回り終えるとしっかりとお姫様らしくスカートの両端を掴み
咲夜に向かってお辞儀をする。そんな姿を見て咲夜もパチュリーと同じくただ固まっていた。やはり理由は
レミリアが綺麗に変身してしまったことと、咲夜もレミリア大好き娘であるからだ。そんな固まった咲夜にレミリア
は近づいて咲夜の頭に手を置く。
「私たち、今は同じくらいの身長ね」
そう言って手を置きながら咲夜の目の前でクスリと笑う。
自分とほぼ目線が一緒であり、綺麗なお嬢様に手を置かれ、目の前でクスリと笑われる。咲夜の中のブレーカーが
落ちるには十分すぎる負荷現象だった。
「ぷすーーーん」
パチュリーと同じように変な声を出しその場に倒れる咲夜。ただ少しパチュリーと異なるところは、パチュリーは
血などが出ていないのに対し、咲夜のほうは倒れこんだと同時に滾々と血が出ているということだった。
「咲夜!?どうしたの咲夜?」
目の前で倒れた咲夜に、あんたを呼んだのは倒れてもらうためではないわ!と言いながらゆすり起こそうとするが
返事がない。困ったわと思っているところに
「どうしたんですか?」
とてこてことこちらに向かって歩きながら声をかけてきた小悪魔。良いタイミングにと小悪魔をそのまま捕まえ
簡単に自分のことと二人のことを説明した。
そして二人を任せることにした。小悪魔も最初はレミリアの姿に驚いていたが特に前の2人のように倒れることもなく
レミリアに言われた仕事を任された。
「じゃあ、頼むわね」
そういうとレミリアは図書館から駆け出して出て行った。
「ふー、少し長湯しすぎたわ」
夜の博麗神社。霊夢はお風呂でのぼせたらしく、涼もうとおいしい水とコップを手にし、神社の石段まで歩き
そこで腰を下ろして遠くに目をやる。空は綺麗な月が出ていて星がたくさん散りばめられている。神社の
周りは見渡す限り木々に囲まれており特にその他に映るものはない。霊夢以外の人は神社の周りに住んでいなく
参拝者も少ない。まぁ、こんな神社に住んでいて前はちょっと退屈なような寂しいようなという気持になることが
あったが、今は呼びもしないのにいろんな輩が神社に集まる。そのおかげで最近は退屈や寂しいというような気持は
生まれないがそういう状況になったらなったで今の騒がしいより状況よりも前の環境の方がよかったなと思って
しまうこともある。いろいろキリが無くて困ったものだ。
周りの木々が風に揺られさらさらと音を立てる。その風が火照った体を吹き抜けていき気持良い。
霊夢は持ってきた水をコップに入れ、コクコクとそれを飲み干す。
そして霊夢は今日あった出来事、背比べのことを思い出していた。
「はぁ・・・やっぱりレミリア、成長とかのこと気にしてたかな?」
霊夢は呟く。霊夢は気づいていた。霊夢と魔理沙が背比べの話題をしてから何かを考え始めたことを。
永遠に紅い幼き月・・・・・彼女レミリア・スカーレットの二つ名である。
その名の通り、彼女はこの先ずっと幼いままから成長をしない。そんな彼女は自分達が成長したことを喜んでいる
姿を見てどう思ったのだろう?羨ましいとでも思っただろうか?
いや、もしかしたらくだらない話をと思っていたかもしれない。
「まぁ、今更考えても仕方ないわよね」
もう一杯水を飲もうとコップに水を注ぎ、それを口に入れたとき後ろ辺りから声がした。
「ここは綺麗だし景色も静かで落ち着くわ。やっぱりいいところね」
もう聞きなれた声だった。とりあえず口にしている水を飲み干し、一息入れ
「ありがとう。で、昼にも来たのに何の用かしら?忘れ物とか?」
と立ち上がらず首をひねり声のした方に顔を向け、そして固まった。
「違うわよ。あなたに私を見てもらいたくて来たわ」
と顔を向けてきた霊夢に笑顔を向ける。
「・・レミ・・・リア?」
霊夢は顔を向けたまま固まった状態でレミリアに問いかけた。レミリアはその問いにうなずきそのまま歩いて
霊夢の隣に立ちそして座った。
「あんたどうしちゃったの?なんで・・・・突然変異?でっかくなってるし・・なんか大人になっちゃって」
「ふふ。私もあなたみたいに成長してみたくてね。パチェに頼んで大きくしてもらったのよ」
レミリアはそう答えて笑った。
「そ、そうなの・・・」
霊夢はそんな笑いながら答えるレミリアをまじまじと見ながら返事した。
「身長は咲夜と一緒くらいだったからきっと霊夢とも同じ位ね」
「そ、そうなの・・・」
「さっきからそうなのばかりね。そうだわ、霊夢。私を見て感想はどんな感じかしら?特に顔なんだけど触って
みた感じいつもと少し違う感じがするのよ。顔を確認したくても鏡に映ったりしないから確認できなくてね」
そういって霊夢に自分の顔を見てもらおうと近づける。
「どんな感じといわれても・・・・」
霊夢はレミリアを見て困った。正直な感想は綺麗だった。以前というか昼会った時までは永遠に紅い幼き月という
二つ名の通り幼さがあり、綺麗とかよりかわいいというイメージがあったが今のレミリアはそれを逆転して綺麗と
しか言いようがなく、本当にお嬢様というような感じだ。レミリアの問いにどう答えるか長考しているとさっき
より強い風が吹く。その風に長くなったレミリアの髪はふわりと舞い少し乱れる。
「もう、飛んでる時もそうだったけどやっぱり髪が長いと少しやかましいわね」
そういうと本当にやかましかったのか後ろ髪を適当にまとめ、そのまとまった髪を帽子の中に隠した。
顔を見たりそんな仕草を見ていて、霊夢は少し顔を赤くした。そしてこのまま素直に綺麗だというのもなんか恥ずかし
かったし何か悔しかった。
「で、どうかしら?」
「別に。確かに背丈は伸びたみたいだけど、あなたが思っているほど顔は変わってないわよ」
「そうなの?残念ね」
と言葉では言うものの特に残念そうな素振りを見せず霊夢に笑いかけた。
このあと霊夢はコップを神社からもうひとつ持ってきてレミリアに渡し、二人で水を飲みながらレミリアの大きく
なるまでの経緯や胸が何故大きくならないのか?について、それが終わるといつもと変わらないような雑談を始めた。
最初はどうしても今のレミリアを見て硬くなっていた霊夢だったが、そんないつもどおりの雑談をしていくうちに
徐々に今のレミリアに慣れていった。外見が変わってもやっぱり喋っているとどこか憎らしいしどこかかわいい。
普段と変わらないのだ。
どれくらい話し込んだだろう?話に少し区切りがつきお互い静かに遠くを眺めはじめた。
「私は今霊夢と同じ世界を見てるのね・・・」
「あんた、何を大袈裟な・・・ただ目線の高さが一緒なだけじゃない」
「ふふ。霊夢にはそれだけのことだと思うかもしれないけれど、私にとっては大きいのよ」
そういうとレミリアは空に浮かぶ月を見上げ目を細めた。
「・・・・白状するとね、私はきっと少し寂しかったのだと思うわ」
レミリアは月を眺めたまま自分の気持を霊夢に話しだす。
「今日、霊夢と魔理沙が背丈のことで話をしてたわよね?そして自分達の成長を喜んでいる姿を見て
私も大きくなって成長すれば霊夢と一緒に成長のことで話たり喜んだりできると思って・・・だからこうして
大きくだってなったわ」
「・・・・」
「でもこうやって大きくなって霊夢に会って、そして話をしていてわかったわ。結局成長することを捨てた私には
成長のことで霊夢と笑うことなんてできないのよね。今の体だってあと少しでまた元の大きさに戻るし。これは成長
ではなくただの魔法の力・・・」
レミリアは顔を空から地上に戻し、遠くの木々に目をやる。
「私は成長ができないのが悔しいわけじゃないの!霊夢がしている成長が私にはできなくて、成長しているのを一緒に
感じることができなくて、それを一緒に笑うことができないから悔しいの!!」
レミリアは少し声を強く張り上げ、目線を遠くから自分の足元へ移した。
霊夢はそんなレミリアを見て息をはく。
「レミリア、あなたわかってないわね」
霊夢もレミリアと同じく自分の足元を見ながら喋り始めた。
「あなたは確かに成長を捨て長生きをすることを選んだ。だから今あなたは永遠に紅い幼き月の二つ名を持ってる。
成長を捨てあなたは身長とかはもう大きくはならないけれど、だけど成長するって背丈とかが伸びることだけを
成長というのかしら?」
そして霊夢は顔を上げ、視線を足元からレミリアに向ける。
「あなただって、今も私と同じように成長してるじゃない。わからない?」
その言葉を聞いたときレミリアも顔を上げ、そして霊夢の方へ視線を向ける。
「ここよ、あなたはここが成長してるわ」
そういうと霊夢は手を伸ばし隣のレミリアの胸をポンポンとたたく。
「・・・胸?」
「・・・バカ!?ちがうわよ、心よ、こ・こ・ろ!」
「心・・・」
「そうよ。前と比べてあなた随分変わったでしょ?今も子供っぽくてひねくれてるけど、前と比べると随分
成長してきてると思うわよ、大人になってきてるっていうか・・・・それに・・・」
そういって霊夢は一息置いて、少し恥ずかしそうに言う。
「その・・・なによ?人間である私に夢中でしょう?あなた私に会う前、咲夜は除くとしても人間のことなんて
自分の食事と思う以外これっぽっちも考えたことなかったでしょ?だけど今はきっと違うでしょ?そうやって人間に
興味を持ったことだって心の成長だと思うわ!だから目には見えないけどいつだって私たち一緒に成長してるじゃない」
「それって成長といえることなのかしら?」
「いえるわよ!きっと!ええ、たぶん・・・」
実際のところ霊夢も何が成長と呼べるのか、よくわからなかったし考えてみたこともなかった。
決して身の丈が大きくなることだけが成長では無いと思うし、知識がついてくることが成長とも思えない。だから
心が豊かになったりすればそれが成長なのか?と言われればそれも違うような気がする。だからレミリアにもこんな
言い方でしか言うことができなかった。
「・・・霊夢が強気で言った後に悪いのだけれど、私今も別に人間に興味なんてないわよ。やっぱり人間は食事以外の
何者でもないし・・・・何より霊夢、何で私があなたに夢中だと思うわけ?」
レミリアは真顔になって霊夢に不思議そうに質問する。
「は?え・・・もしかして私の全部思い違い!?」
思い違いだったのか?そう考えると自分はただの勘違いちゃんではないか。いや、でも私と同じ体験をしたいとか
云々とか言ってたし・・わけがわからない。パニックになった霊夢はさっきよりも赤くなり、本当に頭のてっぺん
辺りから湯気がでるのでは?と思うほど体が熱くなった。
レミリアはそんな霊夢を見て、からかっている事がばれない様に笑いつつ、霊夢が言ってくれたことを
心の中で繰り返していた。霊夢は上手く私に伝えられてないと思っていそうだが、レミリアには十分に霊夢の
言いたいことを感じられたような気がした。
そして霊夢がたたいた自分の胸に手を置き、宝物を確認し手に取るようにゆっくりと手のひらを胸に置きその手を
固く握る。
「霊夢、ありがとう・・・・大好きよ」
「勘違いなのーー、あーーー、もーーー・・・・はい?」
パニックに陥っていた霊夢は、レミリアの「大好きよ」の言葉を聞いてちょっと間の抜けた声を出した。
そんな間の抜けた声出し、フリーズしてる霊夢にレミリアは、にかっと悪戯っぽく笑いかけるとすっと立ち上がった
かと思えば素早く隣の霊夢の後ろに回りこみ、立てひざの姿勢になり後ろから両手で霊夢の両肩を抱いて引き寄せた。
「人間にしておくのがもったいないくらいよ?」
「ちょっと!?やっぱり私の言ってたことあってたんじゃない!?というかあんた首に牙突き立てたら許さないわよ!」
そういって後ろから自分を抱いているレミリアに顔を向けると
「あら、残念ね。じゃあ今日はこっちにしておくわ」
そういうとレミリアは自分に顔を向けてきた霊夢にウィンクを一回して、そのまま霊夢のほっぺたにキスをした。
余談ではあるが場所は変わり紅魔館
「レミィ・・・私をぎゅっと抱くなんて・・・これが本に載っていない世界なのね・・」
「お嬢様・・・私の頭をぽんって・・・ああ・・・」
「あの・・・二人とも・・・そろそろお開きにしませんか?」
レミリアに頼まれた事を守り、パチュリーと咲夜を介抱したのはいいがそのあとずっと立ったまま
二人は妄想の世界に入りその場から動こうせずぼけーっとしていた。
「えーーっと、ごめんなさい。私はもう休みますね?」
そういって小悪魔は困り果てた結果、二人を諦めて放置して寝床へついた。
こうしてまた何も変わらない・・・いや、ちょっとだけ変わった今日は過ぎ去っていった。
そんな普通の日、ここ幻想卿の人があまり訪れないひっそりとした土地にある博麗神社には
いつもやることがなく、そしてやる気もあまりない神社の巫女霊夢、とりあえず暇だから
遊びに来たぜという魔理沙、霊夢にあいたくて遊びに来たレミリア計3人の特に珍しくもない
3人の面子が神社に集まっていた。集まった時間はお昼時であり太陽が出ているので吸血鬼で
太陽が苦手なレミリアの事を考え木々の陰などに作られた日の光が当たらなく、そしてこれは
レミリアだけでなく霊夢や魔理沙の三人のことを考えて寒くない程度に心地よく
ひんやりとした縁側にお茶請けを運び3人一緒にまったりとした静かな時を過ごしていた
そんな時、魔理沙が霊夢をじっと見て言った。
「霊夢、お前、少し背が伸びたんじゃないか?」
魔理沙が霊夢の方を見て言う。
「え?そう?」
特に魔理沙の振ってきた話を気にすることもなく、霊夢は手に持っている煎餅をおいしそうにほおばる。
「ああ、間違いないぜ。よし、背比べしてみよう。ほら、煎餅食べてないでちょっと立ってみろよ」
そういうと、魔理沙はすっと立ち上がり、霊夢の前に自分の手を差し伸べる。
立つの?面倒くさいわね、と霊夢は口では言わなくとも顔に少し出しながら食べかけの煎餅を
皿に置き差し出された魔理沙の手を掴み、グっと腕に力を入れ立ち上がる。レミリアは煎餅を食べ
ながらとりあえず霊夢と魔理沙のやりとりを見ている。魔理沙は頭に被っていた帽子を床に置き
霊夢の背中に自分の背中を向け、それからペタンと背中をくっつけ背筋をぴっとさせる。
「ねぇ魔理沙?背を比べるのはいいけど、私元々あなたより背が高いから正直こうやって背を比べても
自分が背が高くなったとかあんまりよくわからないんだけど?」
と自分と背比べをしている魔理沙に言葉を投げかける。
「う・・・まぁ、そうかもな。だけどお前はわからないかもしれないが私にはわかるぜ・・・
霊夢は背が高くなってるよ」
と少し悔しそうに霊夢の問いに魔理沙は答えた。
霊夢はその魔理沙の答えを聞いてもやはりピンとくるものがなく、特に意味もなく
自分の頭を手でぽんぽんとたたいた。でも良く考えてみれば確かに魔理沙の言うとおり背が伸びたよう
な気もする。この前、紅魔館のメイド長であり、お嬢様万歳な十六夜咲夜に「お嬢様の扱い方について」
という講座を無理に受けさせられた時、私よりも背が高いはずの咲夜の目線と咲夜よりも
背の低いはずの私の目線の高さが一緒だった。なぜ目線の高さが一緒だったかと覚えているかというと
咲夜に思い切り両手で左右のほっぺたを固定され、目をそらすことを許されなかったからである。
あれは苦痛だった。
「そっか、私背が伸びたのね」
霊夢は自分の成長に何となく気づきまた意味もなく、しかし今度は少し笑顔でさっきよりもちょっと
速い速度でまた頭をぽんぽんとたたく。そんな霊夢を見て魔理沙は悔しそうに
「ちぇ、気づいてないかもしれないけど私だって伸びたんだぜ」
自分だって背が伸びたんだということに気づいてもらえなかったのが悔しかったのか霊夢にぶーぶー言う。
そんな魔理沙を見て、霊夢はくすっと笑い
「あら、気づいてるわよ。お互い背を比べて特に差がついていないということはお互い同じくらいの
スピードで成長しているってことよね」
「気づいているならいい。まぁ、ほとんど同じくらいのスピードでお互い身長が伸びてるから
霊夢を抜くこともできないしおいてかれることもない・・・結局あまり変わらないけどな」
そう言い、霊夢の笑みとは違った苦笑を魔理沙は浮かべながら床においていた帽子を被る。
「それにしても・・・・」
これは霊夢も魔理沙もほぼ同時に言った言葉で、お互いの目はお互いの胸の辺りを見ている。
「ここだけは・・・全然変わらない・・・か」
とお互い声を下げ両手で顔を覆ってしくしく泣きながら悲しみを分かち合っていた。
そんなやりとりを、レミリアは静観し見ているだけで会話に参加することができなかった。
成長をするということを捨てる代償に長生きをすることを選んだレミリアには成長するという嬉しさなどが
わからないのである。付け加えているならレミリアの場合、早い段階でその長生きをする道を選んでしまった
ためその分余計に成長の嬉しさなどがわからない。別にだからといって現状を後悔しているわけではない。
そのおかげでちゃんと500年くらい生きてきているしこれからもまだまだ生きられるであろう。
それにこうやって成長でなく長生きを選んだからこそ霊夢たちに会えたしこれからも一緒の時を過ごせるの
だとも思っている。
しかし、霊夢や魔理沙の成長したという話を聞いているうちに今まで考えてもいなかった成長についてを考え
始め、レミリアは何故か気持がもやもやとしていた。
しかしそこで成長などの話が終わりその後はまた3人まったりしたり違った雑談をした。
そんなこんなで夕刻頃、神社での集まりはお開きになり各々がそれぞれ場所へ戻った。
レミリアが紅魔館に帰った時には夜になっていた。自室に戻ると椅子に腰を下ろした。いつもならここで咲夜を
呼びつけ紅茶でも飲みながらまたゆっくりとした一人の時間を過ごすのだが今日は違っていた。
部屋に戻り、ふと昼のあの話題「成長」ということを思い返していた。思い返していくうちに胸に昼間の時と
同じもやもやした気持がふくらんでいく。
成長とはどういう感じなのか?自分がもし成長していたりしたら?と考えると心の中のもやもやはもっと大きく
なっていった。
・・・・私も・・・霊夢や魔理沙・・いや、霊夢のように成長をしてみたい・・・・
「ああ~、もうっ!」
とうとうレミリアがイライラしてか、バンっと大きな足音を立て椅子から立ち上がる。
「このまま考えていても意味がないわ。困った時はやっぱりパチェよね」
そういうとレミリアは勢いよく自室を飛び出し、パチュリーのいるヴワル魔法図書館へと向かった。
図書館の前についたレミリアは扉を開け、目的の人物パチュリーを探す。
パチュリーは簡単に見つかり、いつものように図書館内の椅子に座り本を黙々と集中して読んでいた。
「パチェ、ちょっといいかしら?」
本を読んでいる姿を見ても気にせず、レミリアはパチュリーとテーブルを挟んだ向かいの席に座り声をかける。
「何かしら?レミィが図書館に用があるなんて珍しいわね」
パチュリーはレミリアに話かけられ答えはするものの目は本を見たままだ。
「図書館に用はないわ。あなたに頼みごとがあるのよ、あなたなら何でも頼みごとを叶えてくれる気がしてね」
「レミィにそこまで信頼してもらえるのは嬉しいわ。だけどその頼みごとを叶えてあげられるかどうかはその
頼みごとというのを聞いてからでないとわからないわ」
キリが良いところまで本を読み終えたのか、パチュリーは目を本から向かいのレミリアに向ける。
「わかってるわ。頼みごとというのはあなたの力で私に成長するというのを体験できるようにしてほしいの」
「・・・え?」
パチュリーはレミィ何を言っているの?みたいな顔をした。
そんなパチュリーの反応を気にせずレミリアは言葉を続ける。
「ちょっと思うところがあってね。私も少しずつ成長してみたりしてみたいのよ。どうにかできないかしら?
お願い!あなただけが私の頼りなのよ」
そういうとレミリアは自分の顔の前に両手を合わせお願いのポーズをする。
そんなレミリアの頼みごとを聞いてパチュリーはため息を吐き、目線をレミリアからまた手元の本に戻す。
「レミィそれは無理よ。あなたの頼みごとならそれなりに叶えてあげる私でも、そのお願いだけは叶えられないわ」
「どうしても無理なの?」
「無理よ。決して意地悪で言っているのではないわ。あなたはもう随分前に成長するということを放棄し長生きを
することを選んでいるわ。一度自分でそうして放棄したのを私の魔法でどうにかするというのは無理なのよ」
「・・・・そう」
パチュリーの返答を聞き、レミリアはあわせていた手をゆっくりと離し椅子から立ち上がる。
「私の話を聞いてくれただけでも嬉しいわ。ありがとう。邪魔したわね」
そう言うと、レミリアはパチュリーに背を向け図書館から出ようと出入り口に向かい歩く。
「・・・あなたの言う少しずつ成長をする体験をさせてあげるのは無理だけれど」
パチュリーは本のページをめくり、図書館を出ようとしているレミリアに向かって言葉を続ける。
「あなたの体格を大きくすることぐらいならできるわよ」
歩いていたレミリアはそこで足を止め、クルっと振り向きパチュリーに目を向ける。
「できるの?そんなこと」
「あなたに嘘は言わないわ」
そういうとパチュリーは、また目を本からレミリアに移しほのかに笑いかける。
「パチェ!」
パチュリーの名前を叫ぶと、レミリアは駆け出し一気にパチュリーとの距離をつめ飛びついた。
「きゃっ!やだ、レミィ」
子供のように飛びついてきたレミリアをパチュリーは顔を赤くして受け止めた。
「パチェ、だからあなたは大好きよ」
レミリアは本当に幼い子供のようにパチュリーに擦り寄る。そんな言葉を聞きパチュリーは顔をもっと赤くなる。
「わ、私も好きよ、レミィ」
さりげなくそう言うと擦り寄っているレミィに腕を回し力を少し込める。
「でも・・・」
これは喜んで浮かれているレミリアにはきっと聞こえない本当に小さな声で
「私はきっとあなたの一番の大好きにはなれないのよね・・・」
と悲しそうに呟いた。
図書館には本棚や椅子や机が置かれていない、少し開けたエリアがある。そこはパチュリーが本を読んで
学んだりしたことをすぐに試したりできるように作った空間だ。同じ図書館内であるがパチュリーとレミリア
は先ほどの本を読む場所からこちらへと場所を移した。そこでパチュリーが人一人が立てるくらいの大きさの
魔法陣を床に描きそこにレミリアを立たせた。
「じゃあ、はじめるまえに簡単なことを言っておくわね。この魔法は数時間しか効果が続かないこと。
あと私の魔力をレミィに注いで大きくするから効果中は大きな力を使わないこと。力を使った分だけ
折角注いだ魔力が減っていき元に戻るのも早くなってしまうわ。今着ている服とかはあなたに合わせて
大きくなるからそのあたりの心配はしなくていいわ。あと・・・・」
「?」
突然パチュリーの声が下がり、一拍入る。
「ごめんなさい・・・私の力を持ってしても何故か・・・胸だけは大きくしてあげることができないわ・・・
・・くっ!」
そういってパチュリーは悔しそうに唇をかんだ。
「・・・わかっているわ。この世界でそれを望むのはきっと・・・罪なのよね」
レミリアは全てを悟ったようにフっと笑った。
「じゃあはじめるわよ。レミィ目を瞑っていて。その魔法陣光るからまぶしいわよ」
「わかったわ」
返事をしてレミリアは目を閉じる。それを確認しパチュリーも目を閉じ、そして詠唱を始める。
「のびーる、のびーる・・・・」
「ちょっとまって!?」
レミリアが詠唱を止める。
「何?どうしたの?」
「いえ・・その・・別にどうでもいいことなのかもしれないけど、この魔法ってそんなに簡単な詠唱なの?」
「そうよ、問題ないけど・・・なんで?」
「いえ、なんでもないわ、ごめんなさい。詠唱ってかっこよかったり意味深い言葉が普通だと思っていたから」
「大丈夫よ、今回の魔法はこんな詠唱。じゃあ、続けるわね。のびーるのびーる・・・」
再び魔法の詠唱が始まる。パチュリーが大丈夫というのだから大丈夫なのだろう。レミリアはパチュリーを信じ
魔法発動を待つことにした。あと少しで大きくなれる。そう思うとレミリアの胸は少し高鳴った。
「のびーるのびーる・・・のびてーーー!」
パチュリーがひときわ大きい声でのびてと叫ぶ。
その瞬間レミリアの立っている魔法陣が眩しく輝きレミリアを包む。
レミリアは目を閉じていてもわかるくらい視界が強い光によって少しの間真っ白になったのに少し驚いたが
その数秒が過ぎた後また目の前は元の暗い視界に戻っていた。
「パチェ、もう目を開けていいかしら?」
「え・・・あ、い、いいわよ」
少し反応が変だったがパチュリーのお許しも出たのでレミリアは目を開ける。
するとさっきまでと違った世界がレミリアの目には映し出されていた。少し離れたところにテーブルと
椅子が見える。その椅子はともかくテーブルの高さは私の目線と同じくらいの高さのはずなのだが今は
私のほうが高いような気がする。少し離れたところにあるし遠近感のせいか?と思ったが目の前にいる
パチュリーを見て遠近感のせいではないというのがわかった。私より背が高かったはずのパチュリーを
今の私は見下ろす事ができたのである。
少しずつレミリアは今の事態を把握していき自分の手や脚に目をやる。以前より明らかに腕や脚はすらっと
伸びていて、手を広げると手のひらや指も大きくなっているのがわかった。羽根が何かにくすぐられる。
何かと思って後ろに手を回すと髪の毛であった。髪も伸びているのか、髪はどうでもよかったが伸びてしまった
なら伸びてしまったでいいかと適当に後ろ髪を振り回した。胸は特に変化はないようだった。そして最後に顔を
ぺたぺたと触ってみる。なんとなくであるが顔が前の幼い顔とは違ったピシッとした顔つきになっているような
気がした。鏡を見ても吸血鬼は鏡には映らないので確認できないのが残念だ。まぁ、顔もあまり気にしなくて
いいだろう。魔法はちゃんと成功したのだというのをわからせるのには十分なことだった。
「パチェ、ばっちり成功ね!」
レミリアは何故か顔が赤らんでいるパチュリーに声をかけた。
「あ、いえ、あ、うん、成功ね」
レミリアを見ずに顔を真っ赤にして俯いて言った。
パチュリーはレミリアを見ることができなかった。予想以上に魔法が上手くいき、直視することができないほど
レミリアがバランスよく大きくなっていて、そして綺麗になっていた。それにプラス自分はレミリアに好意がある。
胸がどきどきしてしまい口も上手く回らないのだ。
「パチェ、ありがとう。本当にあなたには感謝しきれないわ」
パチュリーと違った意味で舞い上がっているレミリアは、顔を真っ赤にして俯いているパチュリーを抱きしめた。
「じゅぅぅぅぅぅ・・・・」
パチュリーは変な声を出すとゆでだこになりその場に倒れた。
「パチェ?顔を真っ赤にして・・・疲れてしまったのかしら。咲夜~?」
レミリアは咲夜を呼ぶ。不思議なことだが紅魔館内でなら私が咲夜と呼べば大抵は呼び声を聞きつけて
駆けつけてきてくれる。便利なメイドだ。案の定すぐに見知ったメイドがこちらに駆けつけてきた。
「お嬢様、お呼びになりま・・し・・・お嬢・・・様・・・ですか?」
咲夜は大きくなったレミリアを見て固まる。
「何を言っているの当たり前じゃない。あ、そうか。どう?私大きくなったのよ咲夜」
そういうと笑いながら咲夜の前で見せるようにくるくる回る。回ると同時に長くなった髪の毛はさらさらと
なびき大きくなったスカートもふわっと舞う。回り終えるとしっかりとお姫様らしくスカートの両端を掴み
咲夜に向かってお辞儀をする。そんな姿を見て咲夜もパチュリーと同じくただ固まっていた。やはり理由は
レミリアが綺麗に変身してしまったことと、咲夜もレミリア大好き娘であるからだ。そんな固まった咲夜にレミリア
は近づいて咲夜の頭に手を置く。
「私たち、今は同じくらいの身長ね」
そう言って手を置きながら咲夜の目の前でクスリと笑う。
自分とほぼ目線が一緒であり、綺麗なお嬢様に手を置かれ、目の前でクスリと笑われる。咲夜の中のブレーカーが
落ちるには十分すぎる負荷現象だった。
「ぷすーーーん」
パチュリーと同じように変な声を出しその場に倒れる咲夜。ただ少しパチュリーと異なるところは、パチュリーは
血などが出ていないのに対し、咲夜のほうは倒れこんだと同時に滾々と血が出ているということだった。
「咲夜!?どうしたの咲夜?」
目の前で倒れた咲夜に、あんたを呼んだのは倒れてもらうためではないわ!と言いながらゆすり起こそうとするが
返事がない。困ったわと思っているところに
「どうしたんですか?」
とてこてことこちらに向かって歩きながら声をかけてきた小悪魔。良いタイミングにと小悪魔をそのまま捕まえ
簡単に自分のことと二人のことを説明した。
そして二人を任せることにした。小悪魔も最初はレミリアの姿に驚いていたが特に前の2人のように倒れることもなく
レミリアに言われた仕事を任された。
「じゃあ、頼むわね」
そういうとレミリアは図書館から駆け出して出て行った。
「ふー、少し長湯しすぎたわ」
夜の博麗神社。霊夢はお風呂でのぼせたらしく、涼もうとおいしい水とコップを手にし、神社の石段まで歩き
そこで腰を下ろして遠くに目をやる。空は綺麗な月が出ていて星がたくさん散りばめられている。神社の
周りは見渡す限り木々に囲まれており特にその他に映るものはない。霊夢以外の人は神社の周りに住んでいなく
参拝者も少ない。まぁ、こんな神社に住んでいて前はちょっと退屈なような寂しいようなという気持になることが
あったが、今は呼びもしないのにいろんな輩が神社に集まる。そのおかげで最近は退屈や寂しいというような気持は
生まれないがそういう状況になったらなったで今の騒がしいより状況よりも前の環境の方がよかったなと思って
しまうこともある。いろいろキリが無くて困ったものだ。
周りの木々が風に揺られさらさらと音を立てる。その風が火照った体を吹き抜けていき気持良い。
霊夢は持ってきた水をコップに入れ、コクコクとそれを飲み干す。
そして霊夢は今日あった出来事、背比べのことを思い出していた。
「はぁ・・・やっぱりレミリア、成長とかのこと気にしてたかな?」
霊夢は呟く。霊夢は気づいていた。霊夢と魔理沙が背比べの話題をしてから何かを考え始めたことを。
永遠に紅い幼き月・・・・・彼女レミリア・スカーレットの二つ名である。
その名の通り、彼女はこの先ずっと幼いままから成長をしない。そんな彼女は自分達が成長したことを喜んでいる
姿を見てどう思ったのだろう?羨ましいとでも思っただろうか?
いや、もしかしたらくだらない話をと思っていたかもしれない。
「まぁ、今更考えても仕方ないわよね」
もう一杯水を飲もうとコップに水を注ぎ、それを口に入れたとき後ろ辺りから声がした。
「ここは綺麗だし景色も静かで落ち着くわ。やっぱりいいところね」
もう聞きなれた声だった。とりあえず口にしている水を飲み干し、一息入れ
「ありがとう。で、昼にも来たのに何の用かしら?忘れ物とか?」
と立ち上がらず首をひねり声のした方に顔を向け、そして固まった。
「違うわよ。あなたに私を見てもらいたくて来たわ」
と顔を向けてきた霊夢に笑顔を向ける。
「・・レミ・・・リア?」
霊夢は顔を向けたまま固まった状態でレミリアに問いかけた。レミリアはその問いにうなずきそのまま歩いて
霊夢の隣に立ちそして座った。
「あんたどうしちゃったの?なんで・・・・突然変異?でっかくなってるし・・なんか大人になっちゃって」
「ふふ。私もあなたみたいに成長してみたくてね。パチェに頼んで大きくしてもらったのよ」
レミリアはそう答えて笑った。
「そ、そうなの・・・」
霊夢はそんな笑いながら答えるレミリアをまじまじと見ながら返事した。
「身長は咲夜と一緒くらいだったからきっと霊夢とも同じ位ね」
「そ、そうなの・・・」
「さっきからそうなのばかりね。そうだわ、霊夢。私を見て感想はどんな感じかしら?特に顔なんだけど触って
みた感じいつもと少し違う感じがするのよ。顔を確認したくても鏡に映ったりしないから確認できなくてね」
そういって霊夢に自分の顔を見てもらおうと近づける。
「どんな感じといわれても・・・・」
霊夢はレミリアを見て困った。正直な感想は綺麗だった。以前というか昼会った時までは永遠に紅い幼き月という
二つ名の通り幼さがあり、綺麗とかよりかわいいというイメージがあったが今のレミリアはそれを逆転して綺麗と
しか言いようがなく、本当にお嬢様というような感じだ。レミリアの問いにどう答えるか長考しているとさっき
より強い風が吹く。その風に長くなったレミリアの髪はふわりと舞い少し乱れる。
「もう、飛んでる時もそうだったけどやっぱり髪が長いと少しやかましいわね」
そういうと本当にやかましかったのか後ろ髪を適当にまとめ、そのまとまった髪を帽子の中に隠した。
顔を見たりそんな仕草を見ていて、霊夢は少し顔を赤くした。そしてこのまま素直に綺麗だというのもなんか恥ずかし
かったし何か悔しかった。
「で、どうかしら?」
「別に。確かに背丈は伸びたみたいだけど、あなたが思っているほど顔は変わってないわよ」
「そうなの?残念ね」
と言葉では言うものの特に残念そうな素振りを見せず霊夢に笑いかけた。
このあと霊夢はコップを神社からもうひとつ持ってきてレミリアに渡し、二人で水を飲みながらレミリアの大きく
なるまでの経緯や胸が何故大きくならないのか?について、それが終わるといつもと変わらないような雑談を始めた。
最初はどうしても今のレミリアを見て硬くなっていた霊夢だったが、そんないつもどおりの雑談をしていくうちに
徐々に今のレミリアに慣れていった。外見が変わってもやっぱり喋っているとどこか憎らしいしどこかかわいい。
普段と変わらないのだ。
どれくらい話し込んだだろう?話に少し区切りがつきお互い静かに遠くを眺めはじめた。
「私は今霊夢と同じ世界を見てるのね・・・」
「あんた、何を大袈裟な・・・ただ目線の高さが一緒なだけじゃない」
「ふふ。霊夢にはそれだけのことだと思うかもしれないけれど、私にとっては大きいのよ」
そういうとレミリアは空に浮かぶ月を見上げ目を細めた。
「・・・・白状するとね、私はきっと少し寂しかったのだと思うわ」
レミリアは月を眺めたまま自分の気持を霊夢に話しだす。
「今日、霊夢と魔理沙が背丈のことで話をしてたわよね?そして自分達の成長を喜んでいる姿を見て
私も大きくなって成長すれば霊夢と一緒に成長のことで話たり喜んだりできると思って・・・だからこうして
大きくだってなったわ」
「・・・・」
「でもこうやって大きくなって霊夢に会って、そして話をしていてわかったわ。結局成長することを捨てた私には
成長のことで霊夢と笑うことなんてできないのよね。今の体だってあと少しでまた元の大きさに戻るし。これは成長
ではなくただの魔法の力・・・」
レミリアは顔を空から地上に戻し、遠くの木々に目をやる。
「私は成長ができないのが悔しいわけじゃないの!霊夢がしている成長が私にはできなくて、成長しているのを一緒に
感じることができなくて、それを一緒に笑うことができないから悔しいの!!」
レミリアは少し声を強く張り上げ、目線を遠くから自分の足元へ移した。
霊夢はそんなレミリアを見て息をはく。
「レミリア、あなたわかってないわね」
霊夢もレミリアと同じく自分の足元を見ながら喋り始めた。
「あなたは確かに成長を捨て長生きをすることを選んだ。だから今あなたは永遠に紅い幼き月の二つ名を持ってる。
成長を捨てあなたは身長とかはもう大きくはならないけれど、だけど成長するって背丈とかが伸びることだけを
成長というのかしら?」
そして霊夢は顔を上げ、視線を足元からレミリアに向ける。
「あなただって、今も私と同じように成長してるじゃない。わからない?」
その言葉を聞いたときレミリアも顔を上げ、そして霊夢の方へ視線を向ける。
「ここよ、あなたはここが成長してるわ」
そういうと霊夢は手を伸ばし隣のレミリアの胸をポンポンとたたく。
「・・・胸?」
「・・・バカ!?ちがうわよ、心よ、こ・こ・ろ!」
「心・・・」
「そうよ。前と比べてあなた随分変わったでしょ?今も子供っぽくてひねくれてるけど、前と比べると随分
成長してきてると思うわよ、大人になってきてるっていうか・・・・それに・・・」
そういって霊夢は一息置いて、少し恥ずかしそうに言う。
「その・・・なによ?人間である私に夢中でしょう?あなた私に会う前、咲夜は除くとしても人間のことなんて
自分の食事と思う以外これっぽっちも考えたことなかったでしょ?だけど今はきっと違うでしょ?そうやって人間に
興味を持ったことだって心の成長だと思うわ!だから目には見えないけどいつだって私たち一緒に成長してるじゃない」
「それって成長といえることなのかしら?」
「いえるわよ!きっと!ええ、たぶん・・・」
実際のところ霊夢も何が成長と呼べるのか、よくわからなかったし考えてみたこともなかった。
決して身の丈が大きくなることだけが成長では無いと思うし、知識がついてくることが成長とも思えない。だから
心が豊かになったりすればそれが成長なのか?と言われればそれも違うような気がする。だからレミリアにもこんな
言い方でしか言うことができなかった。
「・・・霊夢が強気で言った後に悪いのだけれど、私今も別に人間に興味なんてないわよ。やっぱり人間は食事以外の
何者でもないし・・・・何より霊夢、何で私があなたに夢中だと思うわけ?」
レミリアは真顔になって霊夢に不思議そうに質問する。
「は?え・・・もしかして私の全部思い違い!?」
思い違いだったのか?そう考えると自分はただの勘違いちゃんではないか。いや、でも私と同じ体験をしたいとか
云々とか言ってたし・・わけがわからない。パニックになった霊夢はさっきよりも赤くなり、本当に頭のてっぺん
辺りから湯気がでるのでは?と思うほど体が熱くなった。
レミリアはそんな霊夢を見て、からかっている事がばれない様に笑いつつ、霊夢が言ってくれたことを
心の中で繰り返していた。霊夢は上手く私に伝えられてないと思っていそうだが、レミリアには十分に霊夢の
言いたいことを感じられたような気がした。
そして霊夢がたたいた自分の胸に手を置き、宝物を確認し手に取るようにゆっくりと手のひらを胸に置きその手を
固く握る。
「霊夢、ありがとう・・・・大好きよ」
「勘違いなのーー、あーーー、もーーー・・・・はい?」
パニックに陥っていた霊夢は、レミリアの「大好きよ」の言葉を聞いてちょっと間の抜けた声を出した。
そんな間の抜けた声出し、フリーズしてる霊夢にレミリアは、にかっと悪戯っぽく笑いかけるとすっと立ち上がった
かと思えば素早く隣の霊夢の後ろに回りこみ、立てひざの姿勢になり後ろから両手で霊夢の両肩を抱いて引き寄せた。
「人間にしておくのがもったいないくらいよ?」
「ちょっと!?やっぱり私の言ってたことあってたんじゃない!?というかあんた首に牙突き立てたら許さないわよ!」
そういって後ろから自分を抱いているレミリアに顔を向けると
「あら、残念ね。じゃあ今日はこっちにしておくわ」
そういうとレミリアは自分に顔を向けてきた霊夢にウィンクを一回して、そのまま霊夢のほっぺたにキスをした。
余談ではあるが場所は変わり紅魔館
「レミィ・・・私をぎゅっと抱くなんて・・・これが本に載っていない世界なのね・・」
「お嬢様・・・私の頭をぽんって・・・ああ・・・」
「あの・・・二人とも・・・そろそろお開きにしませんか?」
レミリアに頼まれた事を守り、パチュリーと咲夜を介抱したのはいいがそのあとずっと立ったまま
二人は妄想の世界に入りその場から動こうせずぼけーっとしていた。
「えーーっと、ごめんなさい。私はもう休みますね?」
そういって小悪魔は困り果てた結果、二人を諦めて放置して寝床へついた。
こうしてまた何も変わらない・・・いや、ちょっとだけ変わった今日は過ぎ去っていった。
惜しむらくは序文に目立つ妙な改行具合と、そこここに見られる句読点の足りなさでしょうか。といっても、この辺りは(やってみると面倒ですが)自力で読み返せば改善できる程度の事ですので、頑張れば問題ないかと思います。
……等と偉そうに吹きましたが、何にせよ、とても楽しめました。また機会があれば、つぼみんさんのお話を読みたいです。
またの機会をお待ちしてますよ~
また機会があれば、頑張ってください。
パチュリーの詠唱でなぜか教育番組の全身タイツのオッサンを思い出してしまいました。
あと、『博霊』は間違いで『博麗』が正解です。
最後まで楽しく読ませてもらいました。