Coolier - 新生・東方創想話

幸せということ

2005/05/01 23:51:59
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「……?」
十六夜咲夜は、ふと誰かに見られているような気がした。
ここは紅魔館。不審者などいないはずだが?
いや、あの門番は役に立たない。また進入を許したのかもしれない。
そう思って辺りを見渡してみるが、それらしい人影はない。あるのは自分を映している少し大きめの姿見だけだ。
鏡の中の自分から何かを感じた気がした。
鏡に映る自分を見つめる。鏡の中の虚像が自分を見つめ返す。
注意を払ってよく見てみる。
ただ、胸元にある月時計が光を反射して光っているだけで、特に異常はない。
(気のせいだったのかしら?)
鏡に映った自分の気配に敵意を感じたのだろうか……?
少し疲れているのかもしれない。そういえばここ最近まったくといっていいほど休んでいない。
相変わらずお嬢様の気まぐれには振り回されてばかりだし、門番は役に立っているのかいないのか、屋敷への侵入者は後を絶たない。
時間を止めて休んでもいいのだが、時間を止めるのにも少なからず力が必要だ。
根本的な回復にはならない。結局のところ実際に休むのが一番良い。
「今日は早めに仕事を切り上げて休もうかしら」
メイド長として最後まで仕事をしなくてはという気もするが、休息も必要だ。
何しろ、自分は人間なのだ。仕事仲間のような底なしの体力はない。
それでも完璧で瀟洒な従者であることを自分に課している。
ここで働く以上は『人間だから』という言い訳はできないし、咲夜自身したくはない。
……が、
(このままではまずいかしら)
疲れがたまったまま仕事をすれば、いつミスをするかわからない。
紅魔館で働く大勢のメイド達の長として、ミスをするわけにはいかない。
正直に休みたいと言えば、お嬢様も多少は大目に見てくれるだろう。
そう思い、一通りの仕事を終わらせた後、咲夜はレミリアの部屋へと向かった。


「―――というわけで今日は早めに休ませてもらいたいのですが……」
「……」
一通り説明したのだが、レミリアは訝しげな顔をして聞いていないようだった。
レミリアの目は咲夜に焦点が合っている。しかし心ここにあらずと言った感じだ。
何か不快な事でもしてしまったのだろうか?
「あの、お嬢様? どうかなさいましたか?」
「えっ、あぁ……いえ、なんでもないわ」
「そうですか、なら良いのですが……」
「で、何の話だったかしら?」
「いえ、ですから今日は早めに休ませていただこうかと……」
「あら、あなたから休みたいと言うのは珍しいわね。いつもは私が休めといっても聞かないのに……」
「申し訳ございません」
「いいわ、よほど疲れているのでしょう?明日からのためにも今日は早く休みなさい」
「ありがとうございます。では失礼します、お嬢様」
そう言うと咲夜は一礼してレミリアの部屋から出て行った。



「まったく……」
常日頃から彼女は働きすぎなのだ。
しかし、咲夜本人から『休みたい』というセリフがでるとは思ってもいなかった。
実際最近の咲夜はレミリアの目からみても働きすぎだった。まぁ実際のところ責任の半分は自分にあるのだろうが……

ただ、咲夜のことで今しがた気になったことがあった。そのことを気にしていたから咲夜の話を聞いていなかったのだ。
レミリアの能力は「運命を操る程度の能力」である。当然ながら、運命を操るためには運命を視なくてはならない。
そして、レミリアはこれまでひとつの例外もなく、視ようと思った相手の運命を視てきた。
そう、“例外なく”である。
それなのに先ほどは咲夜の運命が見えなかった。
運命が視えない。こんなことは初めてだった。
よく考えてみる。
自分の能力から言って、運命が視えないということはありえない。
自分は吸血鬼だ。吸血鬼も一般の悪魔と同様に月の影響を受ける。
新月の夜なら力が弱まり、運命が視えにくくなることもあるかもしれない。
しかし、今夜は新月ではない。
まして、新月だからといって運命が視えなかった事など無い。
ということは……
(視えなかった、というより咲夜の運命が消えていたということ?)
それこそありえない様に思う。
可能性としては低いが、視落とした、ということならあるかもしれない。
咲夜だけではなく自分も疲れているのだろうか?
確かにここ最近はよく博霊の神社に日傘をさして通っている。
吸血鬼として本来休むためにあるはずの時間で遊んでいるのだ。
(疲れるのは当然、か……)
疲れていて、咲夜の運命を視落とした。
考え方によってはあながち外れてはいないような気もする。
今夜は夜寝でもして休もう。
そして、明日もう一度咲夜の運命を良く視てみよう。
それでも視えなかったら、それから考えればいい。
考えて駄目ならば図書館に引きこもっているパチュリー・ノーレッジに相談してみるのもいい。
彼女の知識は膨大だ。伊達にノーレッジ(知識)という名を背負ってはいない。
どうするにせよ今考えても詮無きことだ。
(全ては明日になってから……)
そうやって思考を完結させると、彼女はベッドへと向かった。



疲れを取るために、わざわざ休みを取っていつもよりかなり早くベッドに入ったのだが……
(眠れない……)
何故だか目が冴えている。
まるで体が眠る事を拒んでいるような気がする。
まだ自分にはしなくてはならないことがあるような、そんな錯覚さえ覚える。
(何なのかしら、一体)
こうしてベッドの中に入って寝ようとしても、物思いにふけってしまう。
考えることといったら仕事のことばかりだ。
紅茶の葉がもうじき切れそうだとか、明日の朝食は何にしようか?とかである。
他愛もない事だといえばそのとおりなのだが、なんだか気になってしまう。
それでも、せっかく早くベッドに入ったのだ。
このまま起きたままでいて、明日になってまだ疲れが取れていないということになったら、お嬢様になんと言われるかわからない。
そう思い、目を閉じ、思考をやめる。
……人間というものは得てして、何もしなければ眠くなるものだ。
咲夜も御多分に漏れず、20分もしないうちに眠気を覚えていた。
こうなればもう時間はかからない。
唯でさえ疲れていたのだ。結局ベッドに入ってから30分ほどで咲夜は眠りについた。
きちんと閉まっていなかったのだろうか、窓のカーテンの隙間から入ってくる月光が咲夜の月時計を照らしている。



翌日、咲夜はカーテンの隙間からの日光で目が覚めた。
まだ寝たりないのか、それとも寝すぎたのか頭がぼうっとしている。
それでも何とかベッドから抜け出し、時計を見る。
すると、もう5時半を少し回っている。
(……しまった)
ぼんやりした頭でそう思う。
紅魔館のメイドの朝は早い。
なにしろとんでもなく広い屋敷である。しなくてはならない事は山ほど在る。
(……少し寝坊した……)
眠気眼をこすりながら、まだ覚めやらぬ頭でそう考える。
そしてもう一度時計を見る。
そのとき、咲夜は自分の目が信じられなかった。
自分の血の気が引くのがわかる。
咲夜の思考が凍りつく。
と同時に、一瞬のうちに咲夜の脳が完全に覚醒した。
(――なっ、……えっ? も、もう7時半???!!!)
さっきは寝ぼけて長針と短針を見誤っていたようだ。
……などと冷静に分析している時間などない。
マズイ。
これは、非常にマズイ。
時間を止める。急いでいつものメイド服に着替える。
そして、――いつもは絶対にしないのだが――廊下を全力で走ってお嬢様の部屋へと向かった。


「申し訳ございません、お嬢様」
「……?何のことを謝っているのかしら、咲夜?」
レミリアはまるで解らないといった顔をしている。
それに対して咲夜は、
もしかして怒っていないのだろうか?
などと考えながら答える。
「えっ、いや、その……寝坊してしまった事に対して謝っているのですが……」
それを聞いてレミリアは合点がいったのか、笑顔で言葉を返す。
「ああいいのよ、別に。咲夜だって疲れがたまっていたのでしょう?」
その言葉を聴いて咲夜はほっとする。
どうやらレミリアは怒ってはいないようだった。
むしろ咲夜の体の調子を気遣うようなセリフまでかける。
その心遣いに対して、
「ありがとうございます」と感謝の意を伝えようとした、その時である。
「別に咲夜が寝坊してしまって毎朝楽しみにしていた貴重品入りの貴重でとても美味しい紅茶が飲めなくてとてもがっかりした、……何て事はなかったから咲夜は気にしないで頂戴」
などと、まるで絵に描いたような笑顔でレミリアは言ってくる。
……ただし、目だけは笑ってはいない。
前言撤回。お嬢様はとても、たいそう、これ以上無いくらいに怒っていらっしゃるようだ。
「そんなあからさまな……」
「あら、咲夜。何を言っているの?私はただ単にとてもがっかりした事を伝えたかっただけなの」
「……わかりました、今すぐ紅茶を淹れてきます」
「そうして。あと、寝坊するならすると前日に報告を入れてくれると嬉しいのだけれど?」
「そんな無茶苦茶な事を言われましても……寝坊については一番最初に謝ったじゃないですか」
「あぁ、早く紅茶が飲みたいなぁ」
棒読みである。
そんなレミリアに対し咲夜は「はぁ、」とため息をつくと、紅茶を入れに部屋を出て行った。

やはりオカシイ。
やはり、視落としてなどいなかった。
昨晩は珍しく休息をとったのだ。
そんな自分に疲れが残っているはずが無い。
今日は万全だったはずだ。
なのに、“視えなかった”。
……咲夜の運命が。
(どうする?)
レミリアは自問する。
その問いに対する答えは昨日のうちに出している。図書館にいるはずの彼女に聞いてみるのが最善だろう。
紅茶を飲み終えたら自分で彼女を探さなくてはいけない。
いつもなら咲夜に探させるのだが、このことは咲夜本人にはなるべく知られたくない。

「お嬢様、紅茶を入れてきました」
考えをめぐらせていると咲夜が紅茶と茶菓子を持って部屋に入ってきた。
「ご苦労様、やっぱり朝は咲夜の紅茶がないとね?」
「?私の、ということは今朝は一応紅茶を飲まれたのですか?」
「えぇ、門番に淹れさせたわ。味は……言わないでおくけど」
「そうですか……あれに紅茶を淹れるのは無理でしょうね」
「失敗だったわ。もう二度と淹れさせない」
「そんなに酷かったのですか?」
「……思い出したくないからこの話題はおしまいよ」
「……わかりました」
少しの間談笑する。そしてレミリアが紅茶を飲み終えると咲夜は自らの仕事に戻っていった。



(さてと、図書館へ行かなくちゃ)

図書館へ行くのは難しくは無い。問題はパチュリーの居場所である。
何しろ図書館は無駄に広い。
(いつも同じ所にいてくれればいいのに)
そんなことを思いながら、この図書館の主を探す。

結局、彼女を見つけるのに2時間ほどかかってしまった。

彼女はレミリアが近づくと読んでいた本を閉じ、少し驚いた様子で声をかけてきた。
「あら、珍しいこともあるものね。あなたが咲夜を連れずにここに来るなんて」
「たまには二人っきりで世間話でも、と思ってね」
「……で、本題は何?」
「あら、ばれた?私が世間話をしに来たのではないということ」
「何十年の付き合いになると思っているの?」
「そうね、では単刀直入に聞くわ。咲夜の運命が視えない。その理由、何か知らない?」
いつに無く真剣なレミリアにパチュリーも真剣に応える。
「……思い当たる節が4つあるわ」
「どんなの?」
「1、咲夜が運命、つまりは未来から断絶されている」
「ありえないわ。この世界には時間が流れている。つまり、この世界にいる限り‘死ぬという運命’も含めて未来から断絶されることはない」
「2、運命がまだ何も決まっていない。あなたが運命を視る場合、視ているのはこれから起こるであろう可能性。要するにその可能性すらまだ決まってはいない」
「可能性としては否定できないわね。でも限りなくゼロに近い」
「そうね」
パチュリーが首肯する。
「次は?」
「3、あなたの能力が消えている。もしくは消されている」
「それは無いわ。咲夜以外の者の運命は視えるもの。……4つ目は?」
「4、何者かによって運命を隠されている、あるいは消されている」
「その何者かって言うのは誰?」
「誰かわからないから‘何者か’なのよ」
「あっそ。……あなたはその4つの中でどれが原因だと思う?」
「2か4、でしょうね。もっと言うなら、4だと私は思うわ」
「私も4を推すわ。問題は……」
『誰が、何故、何のために、どうやってそんなことをしたのかということ』
レミリアとパチュリーの声が重なる。
「ありがとう、やっぱりあなたに聞いてよかったわ」
「お礼はいいわ。それより、これからどうするつもり?」
「様子を見るわ」
「いいの?そんなのんびりして」
「あまり良くは無いだろうけれど、今はそれしかできないから」
「そぅ、何かあれば言って。なるべく力になるわ」
レミリアは笑顔を返し、
「ありがと」
そう言ってレミリアは図書館から出て行った。
先ほどは力になると言ったが正直レミリアが助けを求めてくることは無いだろう。
いや、その必要が無いといったほうが適切か。
それに何かあると決まったわけではない。
もし何かあってもレミリアのことだ、上手く事を治めることができるだろう。
彼女の力は強大だ。幼きデーモンロードの二つ名は伊達ではない。
それでも、万が一ということはある。一応心構えはしておくべきだろう。
考えをまとめると、パチュリーは読みかけの本を開いた。


レミリアは自分の部屋へ戻る途中、安堵のため息をついた。
咲夜の運命が視えない原因を予想することができた。
はっきりと分かったわけではないが、パチュリーの予想は、ほぼ間違いないだろう。
敵の姿が見えなくとも存在の可能性を知ることができた。
ということは、少なくとも備えができるということだ。
後は敵が行動を起こすまで爪を研いでおけば良い。



咲夜は仕事を終え、紅茶を持ってレミリアの部屋へと廊下を歩いていた。
今朝、寝坊して遅れたことに関しては一応メイド達に謝っておいた。
皆、
(咲夜さんが寝坊するなんて……)
と、目をぱちくりさせていた。
あまりにビックリしたのか、
(世界の終わりよ)
などと、微妙に失礼なことを言っている者もいた。
釈然としなかった。
寝坊した手前怒ることはできなかったが、普段自分がどのように見られているのか何となく解った気がした。
それにしても、
(眠い……)
昨日は十分すぎるほど睡眠をとった。仕事の量はいつもどおり。侵入者もいなかった。
なのに、すごく疲れている。
なんというか、体力が何かに吸われているような感じだ。
(バカバカしい)
そんなことがあるハズが無い。
やはり疲れている。
(今日も早く休もうか?)


そんなことを考えているうちに、レミリアの部屋に着いた。
「お嬢様、失礼します」
「何、咲夜?」
「紅茶をお持ちしました。」
「ご苦労様。……あら?顔色が少し悪いわね」
「少し疲れているようです」
「そう、なら今夜も早く休みなさい」
「そうさせて頂きます」
「そういえば、今夜は満月ね」
「?……満月がどうかしましたか?」
「いえ、特に意味は無いわ。だた、そう思っただけよ」
「はぁ、そうですか……」
「満月というのは悪魔、妖怪、妖精、幽霊、人間に問わず何らかの影響を及ぼすわ」
「はい、それは知っていますが……何か?」
「知っているのならいいわ。言いたかったのはそれだけよ」
咲夜は怪訝な顔をしていたが、レミリアが紅茶を飲み終えたのでカップを片付けに行った。
「では、おやすみなさいませ」
「えぇ、おやすみ」

レミリアは窓から夜空を見た。今夜は満月だ。
咲夜の運命に何かした者がいるとしたら、おそらく動くのは今夜だろう。
満月というだけで理由になる。
満月とはそういう存在なのだ。
一応咲夜にもそれとなく伝えたつもりだ。
(ちゃんと警戒くらいするわよね?)
唯、あのメイドはたまに惚けることがある。
こちらの意図をまったく理解しないことが間々ある。
まぁ、自分がしっかりと警戒していれば大丈夫だろう。
それに役に立たないとはいえ、門番もちゃんといる。
彼女の技はとにかく派手だ。ここからでも見落とすことは無いだろう。
門番が侵入を防ぐことは出来ないだろうが……まぁ、要するに門番は囮だ。
何か異変があれば、自分が飛び出せばいい。



咲夜が自室のベッドの中で眠りにつこうとしていると、ふと窓から月が見えた。
いつもなら月が見えたところでどうということもないのだが、その夜に限って月に見とれた。
そういえば、今夜は満月だとお嬢様は言っていた。そのせいもあって変に意識してしまう。
まるで今夜何かが起きると言っているようだった。
一応何かあったときの為にナイフの準備だけでもしておくか……。
ナイフの準備の最中に月時計が無いことに気づいた。
どこかに落としたのだろうか?
(明日、朝一番に探さなくちゃいけないわね)
そんなことを考えながらナイフの準備を終え、再度ベッドに入り、今度こそ眠ろうとする。
しかし満月が気になってしょうがない。
気づいたら窓から空を見上げている。
月を見る以外に何もできそうにない。する気になれない。そして、月を見る意外に何もしていない。
窓から見える満天の星空には、紅く満月が輝いている。
咲夜は自室の窓から、夜空を見上げていた。
ただ、魅入られたように満月を見上げていた。



(あぁーー暇だなーー何か起こればいいのに)
門番である自分がこんな事を考えるのは少し不謹慎な気がした。
……でも暇なものはしょうがない。
(今夜は満月か)
何か、いつもよりも紅く輝いている気がする。
満月を見て紅美鈴は気を引き締める
(こういう時はいくら暇でも警戒しなくちゃ)
どうせ今夜も何も起こりはしない。しかし満月、警戒は必要だ。
満月の夜は何が起こってもおかしくない。
門番としての経験上、満月の夜は異常が起こる確率が高いことを十分理解している。
そして、周囲に気を張り巡らせる。
すると、遠くで 「がさり」 と微かに物音がしたような気がした。
確認するために音がした方向へ向かう。
(侵入者か?)
警戒しながら音がした方向へ行く。
すると、紅魔館の庭にある森の中の人影に気づいた。
やはり侵入者のようだ。
周囲に気を張り巡らしても気配に気付けなかった。
侵入に気づいたのは 「がさり」 という物音が聞こえたからだ。
相当腕の立つ輩に違いない。紅魔館の庭にある森は館から遠いということもあって、手入れがされていない。
よって地面にはよく乾燥した小枝が大量に落ちている。
そこを通って来たのに侵入者は物音をほとんど立ててはいなかった。
気を引き締めていなかったら、気づかずに進入を許していただろう。
「あなたは誰?何か用?」
そう問いかける。
すると、人影が無言で近づいてきた。
よく見ると、そこに現れたのは良く見知った人物だった。
「あ、咲夜さんじゃないですか。こんな時間に何をしているんですか?」
問いかけるも返事は無い。
紅美鈴は、何か違和感を感じた。いつもの彼女とは何かが違う。
「あなたは……誰?」
「……何を言っているんですか?私は紅美鈴ですよ。…………一応言っときますが決して‘中国’という名ではありません」
「そう、貴女、紅美鈴というの。悪いけど通してくれないかしら?」
そこで紅美鈴は違和感の正体に気づいた。
彼女の髪の毛が“黒い”のである。
自分の知っている咲夜さんの髪の毛の色は紫がかった銀髪である。
(こいつは咲夜さんじゃない!?)
「お前は……誰だ?」
もう一度尋ねる。
てっきり返事は無いものだと思っていたが、侵入者からの返事は帰ってきた。
「私の名前は“咲夜”よ。“十六夜咲夜”。そこをどいてくれないかしら?紅美鈴さん」
その瞬間、紅美鈴は戦闘体勢に入った。
自分の中で警報が鳴り響く。
(こいつは敵だ)
「あら、私と戦う気?」
そのセリフとともに莫大な量の殺気が周囲にあふれる。
紅美鈴の体が自然と固まる。殺気に当てられているのだ。
自身を“十六夜咲夜”と名乗った侵入者はおそらく……いや、確実に自分より強いだろう。
(でも、引くわけには行かない。)
紅魔館を背に侵入者に告げる。
「ここは紅魔館。我が主、レミリア・スカーレットの領域よ」
侵入者が答える、
「だからなんだって言うの?私は道を開けろと言っているの」
さらに殺気の密度が濃くなる。
「私は紅魔館の門番だ。侵入者を許すわけにはいかない!!」
「……そう。道を開けるつもりは無いのね。残念、……なら、力ずくで通してもらうわ」

そうして紅魔館の庭で戦闘が始まった。

相手は自分より格上だ。相手の出方を見ているとそのままやられかねない。
ならば……
(先手必勝!)
紅美鈴がスペルカードを発動させる。
「華符、『セラギネラ9』!!」
虹色の弾幕が周囲にあふれる。もちろん標的は侵入者だ。
しかし、“黒髪の咲夜”には当たらない。掠ることすらしなかった。
紅美鈴のスペルカードが解ける。
(くっ、まさか掠りもしないなんて……!)
次は“黒髪の咲夜”がスペルカードを宣言する番だ。
「幻在、『クロックコープス』 」
(なにっ!?)
紅美鈴は耳を疑った。
侵入者から放たれたスペルカードは、本物の十六夜咲夜のスペルカードとまったく同じ物だった。
(まさか、本当に咲夜さんなの?)
迫りくるナイフを必死で避ける。
しかし、いくつものナイフが紅美鈴の服を切り裂いていく。
スペルカードが解けた時には体中が傷だらけになってしまっていた。
(これは……まずい!!)
“十六夜咲夜”と名乗り、“十六夜咲夜”のスペルカードを扱う敵。

はっきり言って咲夜には勝てる気がしない。

一度、初めてあの少女が紅魔館に来たときに本気でやりあったことがある。
はっきり言って完敗だった。
パチュリー様でも止めきれずに、彼女はお嬢様の部屋までたどり着いた。
そして、繰り広げられる文字通りの死闘。
自分は遠巻きに見ていただけだったが、恐怖に打ちひしがれた。
あのスカーレットデビルに本気を出させ、ほぼ互角。
あの少女は本当に人間なのか?
そんな疑問が自然とこみ上げてきた。
そしてこう感じた。
あの少女に自分は絶対に敵わない。

あの時初めて、悪魔や人間といった種族の壁を超越する「強さ」があると知った。

……そして、その強さを持つであろう敵が自分の前に存在する。
あのときから自分はどれくらい強くなったのか?自分はあの少女に少しでも近づけたのか?
目の前の敵が答えを知っている。
……しかし、勝てないと解りきっている敵を相手にして勝負を挑み、ただ負けるだけでは門番として失格だろう。
自分は紅魔館の門番なのだ。ここは格闘家としての自分を殺して、応援を呼ぶほうが先決だろう。
(ならば……!することは1つだけ……)
自分のスペルカードはとにかく目立つ。
「虹符、『虹色の風鈴』!!」
気付いてもらえるまで、スペルカードを唱え続ける!!
が、目の前に“黒髪の咲夜”が現れる。
(しまった……!!)
長考し過ぎた。“咲夜”は時間を操れるのだ。
時間を止めて近づき、一気にケリをつけるつもりだ。
そして自分はその攻撃を避けることは叶わない。
(くそっ、ここまでか!?)
そう思って思わず目を瞑る。
……しかし予想された攻撃はいつまで経っても当たらない。
恐る恐る目を開けてみると、目の前には紅魔館の主たるレミリア・スカーレットの姿があった。
“黒髪の咲夜”の攻撃が当たる一瞬前に助け出されたのだろう。
「なっ、お嬢様!?……なんで、こんな所に……」
「礼を言うのが先なんじゃないの?まぁいいわ、私はあなたのスペルカードを見て急いで来たのよ。今夜誰かが来ることは予想していたから」
「……おっしゃる意味がよくわからないのですが?」
「気にしないで。あなたに説明する気も、その時間も無いわ」
“黒髪の咲夜”がこっちを見ている。
「かなりやばい敵です、お嬢様。あいつ“十六夜咲夜”と名乗っているんですよ」
「そう、咲夜の偽者なのね?」
「いえ、それがそうとも言い切れなくて……」
「どういうこと?」
「それが……あいつ、咲夜さんのスペルカードを使うんです!!」
「……そう、それは厄介ね。……あなたは遠くへ避難しなさい」
「えっ?しかし、お嬢様?」
「邪魔なの。早く行きなさい」
「はっ、はい!」
紅美鈴がレミリアの言うとおりに遠くへ逃げていく。
それを見届けた後、レミリアがつぶやく。
「……なるほど、“十六夜咲夜”か」
レミリアがにやりとする。
それを見た“黒髪の咲夜”がレミリアに話しかける。
「はじめまして、貴女がここの主?」
「えぇ、そうよ」
「そこをどいてくれるかしら?私が用があるのは貴女じゃない」
「えぇ、解っているわ。貴女は本物の咲夜に用がある、そうでしょ?」
「本物の咲夜?……残念、私も本物なのよ」
「……?」
「貴女に言ってもわからないかしら?」
「そのようね、でもここは通らせないわよ?」
「無理やりにでも通らせていただくわ。吸血鬼のお嬢さん」
“黒髪の咲夜”の目が紅く煌めく。
「………今夜は長くなりそうね。久しぶりに……初っ端から飛ばしていくわよ!!」
先手はレミリアがとった。
「冥符、『紅色の冥界』 」
紅い弾幕が当たり一面に展開される。
しかし、“黒髪の咲夜”は難なく避ける。
レミリアが、スペルカードが解ける瞬間に次の攻撃を仕掛ける。
「獄符、『千本の針の山』 」
先ほどの弾幕に倍する密度の弾幕が“黒髪の咲夜”を襲う。しかし当たらない。涼しい顔をして優雅に避けている。
それを見てレミリアは動揺するどころか、「やるわね」と笑みをこぼす。
そして、
「紅符、『スカーレットマイスタ』 」
大小さまざまな弾幕。
そして先の2つのスペルカードより遥かに速い弾幕が“黒髪の咲夜”を襲う。
そこで初めて、“黒髪の咲夜”が焦りをあらわにした。
先の2つのスペルカードは、レミリアのスペルカードの中でも弾速が最も遅い物を選んで出した。
そして直後の『スカーレットマイスタ』は最も弾速が速いスペルカードだ。
当然遅い弾幕に目が慣れ、その後の高速の弾幕はとても避けきれるものではない。
……が、“黒髪の咲夜”は無傷でレミリアの目の前に立っていた。
(高速の弾が来るとわかった瞬間に時間の流れを遅くしたか)
咲夜の能力は時間を操れる。
時間の流れを遅くされては小細工はほぼ通用しないと考えていい。
相変わらず厄介な能力だ。
「幻象、『ルナクロック』 」
“黒髪の咲夜”がスペルカードを発動させる。
多量の‘ナイフ’と‘時間’がレミリアを襲う。
(攻撃自体は問題ない)
これくらいは余裕で避けれる。
本当の問題は本物の咲夜同様に“黒髪の咲夜”の運命も視えないことだ。
つまり、“黒髪の咲夜”の運命を操れない。
数年前に咲夜が紅魔館に来たときは咲夜の運命を操って半ば強制的に勝利を手にした。
能力を使っていなければ、負けてしまっていたかもしれない。
それほどまでに咲夜は手強い相手だったのだ。
そして目の前にいる、“黒髪の咲夜”も同等の強さを持っているに違いない。
(まいったわね、あいつの運命を操れないのはさすがにきつい)
動揺を顔には出さずに思案する。
どうする?
その瞬間“黒髪の咲夜”がスペルカードを唱えた。
「幻幽、『ジャック・ザ・ルビトレ』 」
続けざまにもう1つスペルカードを発動させる。
「奇術、『幻惑ミスディレクション』 」
レミリアの周囲に異常なほどに溢れかえる‘ナイフ’と‘苦無’。
「くっ、……『紅の幻想郷』 」
苦渋の表情からレミリアがスペルカードを放つ。
‘紅い弾幕’と‘ナイフと苦無’が相殺する。
その時、レミリアの頭の中ではもうすでに勝負がついていた。
身体能力では自分は人間を遥かに凌駕している。
この弾幕をやり過ごした後、一気に近づきありったけの弾幕を打ち込んで片をつける。
双方のスペルカードが切れたときレミリアは安堵し、そして思った。
(これで、私の勝ちよ!)
その思い込みがいけなかった。



双方のスペルカードが切れる。
その瞬間、
勝利を確信し、“黒髪の咲夜”に近づこうとしたレミリアの目の前に“黒髪の咲夜”が現れた。
その手にはナイフが握られている。
(しまった、……油断した)

いつもなら相手の運命を視て、相手の行動が予め解っていたのだが、この“黒髪の咲夜”の運命は視えない。
よって行動の先読みが出来ない。
これまでの運命が視える相手の場合、相手の行動を先読みした上で戦略を立てていた。
が、今回は違う。
レミリアは相手の行動の先読みが出来ないことを失念していたのだ。
戦闘がもう終わったつもりになっていたので“黒髪の咲夜”の行動を考えていなかった。

“黒髪の咲夜”は時間を止めてレミリアに近づいたのだろう。
そしてレミリアに向かってナイフを振り落とす。
レミリアは無駄と知りながら、膝を着き、ナイフを避けようとする。
しかし、避けきれない。ナイフがレミリアを襲う。
――が、スペルカードの詠唱がそれを遮る。

「日符、『ロイヤルフレア』 」

レミリアと、“黒髪の咲夜”の間に灼熱の弾幕の渦が生まれる。
言うまでも無くパチュリーだった。

「まったく、紅魔館の主が膝を着いてちゃ駄目でしょ」
「まったくだわ」
「少し見てたけどあいつ、強いわ。ここは一旦引くわよ」
「……分かったわ」

「その必要はありませんよ」
「!?」
声の方向にレミリアが向く。
「私が侵入者を、仕留めます」
「咲夜、来るのが少々遅いんじゃないの?」
「申し訳ございません、パチュリー様」
「勝てるの?」
パチュリーが訊ねる。
「あいつはレミィに膝を着かせたのよ?」
「問題ありませんよ。お嬢様が膝を着いたのは油断が原因です。実力では比べるまでも無いでしょう」
「その自信はどこから来るの?」
「私のことは私が一番解っているつもりです」
笑顔で咲夜が答える。
「そう、……あいつは貴女なの?」
レミリアが訊く。
「さぁ、どうでしょう?」
「とぼけないで答えなさい」
「私はここにいますし……似た能力を持つ別人だと思いたいですね」
「そう、……ところで貴女、いつも身に着けている懐中時計はどうしたの?」
「それが……どこかで失くしてしまったようで……」
「……あいつを仕留めれば見つかるかもしれないわね」
パチュリーが何か合点が行ったような顔をして言う。
「そうだといいのですが……」
「じゃぁ、任せたわよ」
パチュリーが言う。
「はい、任せてください」
「レミィ、館へ戻るわよ」
「えぇ、……咲夜、負けることは許さないわよ」
「解っています、私は負けませんよ」
咲夜が笑顔で答える。

二人の姿が館に消えたのを確認して侵入者と向き合う。
今この場にいるのは“銀髪の咲夜”と“黒髪の咲夜”の二人だけ。
「はじめまして、偽者さん」
「偽者じゃないわ。私も本物の咲夜なのよ」
「そんなのどうだっていいの、とにかく私は貴女を仕留める」
“銀髪の咲夜”から殺気が零れる。
それに反応してか、“黒髪の咲夜”が笑みをこぼす
「やれるものなら、やってみて!!」

『 幻幽 「ジャック・ザ・ルビトレ」 』

二人が同時に、同一のスペルカードを発動させる。
二人の間におびただしい数のナイフが現出する。
が、二人の“咲夜”は事も無げに避けきる。

「幻象、『ルナクロック』 」

二つ目を先に発動させたのは“黒髪の咲夜”。
それに対して咲夜は回避のためのスペルカードを発動させる。
「時符、『プライベートスクウェア』 」
咲夜の周りの時間が止まる。動かない弾幕など怖くは無い。
それに、自分のスペルカードと同じものなのだ。ナイフの軌道は簡単に読める。
尤も、それは相手にも言えそうだが。
咲夜は停止した弾幕の間を抜けていく。と同時にナイフを懐から出す。
弾幕を抜けると同時、『プライベートスクウェア』の効果が切れる。
その瞬間に懐から出したナイフを相手に向けて、放つ!
しかし、目の前にいる“黒髪の咲夜”も既にナイフを抜いて構えている。
時間が再び動き始める。
「キーン」という高い音とともに、ナイフとナイフが交差し、激しく火花を飛ばす。
互いに、一撃一撃を必殺の間合い、必殺の威力で討ちあう。
その必殺の攻撃を双方紙一重で避け、或いは自分のナイフでベクトルをそらす。
見る見るうちに衣服にナイフで切り裂いた後が増えていく。
まさに身を削る戦い。
その中で感じる高い高揚感。
思わず口元が緩む。
何十合か斬りあってからどちらからとも無く間を空ける。
“黒髪の咲夜”が口を開く。
「あなたはなぜここで働いているの?それだけの力があれば上に立つのも難しくは無いでしょう?」
「そんなのあなたに関係ないでしょう?」
「関係なくても興味があるわ。答えて、なぜ?」
「私の勝手よ」
「こっちは真面目に訊いているの。だから貴女も真面目に答えてくれないかしら?」
侵入者の戯言だ。答える必要は無い。
しかし、咲夜は口を開いた。
「お嬢様が私を受け入れてくれたから。こんな能力を持った私を……だから私はここにいる」
“黒髪の咲夜”が笑みを浮かべて言う
「そう、なら私はその関係を壊すわ」
咲夜がピクッ、と反応する。
「この屋敷にあるもの全てを壊してあげる」
「なぜ?」
「だって、面白そうじゃない。ここを壊せばあなたの居場所は無くなる」
「……そんな事は絶対にさせない」
自分の中で何かがはじける。
(もう二度と自分の居場所を失いたくは無い!)
「私の居場所を壊そうとする者は、誰だろうと許さない。誰だろうと容赦しない。誰だろうと生かしておかない」
“銀髪の咲夜”からの殺気が周囲に充満する。
それに対して、戦闘体勢をとりながら“黒髪の咲夜”が言う。
「ひとつ教えてあげる。私は貴女、貴女は私。私は貴女の影なのよ」
「そんなこと私には関係ない!!」
「私の望みはイコール貴女の望み」
「だから、何が言いたい?」
「要するに、これは貴女が望んでいるという事よ」
“黒髪の咲夜”にナイフを投げつつ“銀髪の咲夜”が言う。
「私もひとつ教えてあげるわ。少なくとも今の私は、そんな事望んではいない!!」
“銀髪の咲夜”の両の目が蒼から紅に染まる。
「幻符、『インディスクリミネイト』 」
周囲にあるもの全てを無差別に、大量のナイフが襲う。
これは相手を仕留めるためのスペルカードではない。次を出すための時間稼ぎ。
ナイフの壁を通して、“銀髪の咲夜”が笑みを浮かべながら言う。
「貴女の髪、黒いわね」
「それがどうかしたの?」
「私には紅魔館で得たものがたくさんある。でも貴女には無い」
「戯言ね」
「そうかしら?私と貴女の差を見せ付けてあげるわ」
そして、互いに最強のスペルカードを発動させる。
「メイド秘技、『殺人ドール』 」
「幻符、『殺人ドール』 」
双方の力が真正面からぶつかる。
ナイフとナイフがぶつかり合い、落ちる。
だが、明らかに圧しているのは“銀髪の咲夜”だった。
そして、止めの一撃を放つ。
「メイド秘技、『操りドール』 」
『操りドール』によるナイフが“黒髪の咲夜”を襲い、血の色に染める。

「これが紅魔館の‘メイド’の力よ。唯の咲夜さん」
血の海に横たわる“黒髪の咲夜”に向かって言う。
「まさかこんなに差があるなんてね」
「当たり前よ、今の私は昔の私が持っていなかったものをたくさん持っている」
「一つだけ、いいかしら?」
「何?」
「あなたは今幸せだと言える?」
「えぇ、自信を持って言えるわ。私は今幸せよ」
「そう、なら良いの」
「……?」
「最近貴女の顔色が良くなかったから、少し気になってたの。それだけ」
そう言うと、“黒髪の咲夜”は消えてしまった。
後には咲夜の月時計が落ちていた。



「結局なんだったんですかね?」
ここは紅魔館のテラス。
テーブルの上には紅茶と茶菓子が並んでいる。
居るのはレミリア、パチュリー、咲夜と門番の四人。
「何が?」
「だから、あの黒い髪の咲夜さんのことですよ」
「私が思うに彼女は咲夜の懐中時計が化けてたのよ」
「だから終わった後にこの時計が落ちていた、と?」
パチュリーの推測に咲夜が応える。
「咲夜にどうしても伝えたい事があったんじゃないの?それは言わば貴女の分身なわけでしょ?」
「えぇ、そうかも知れませんね」
思い起こすのは「あなたは今幸せ?」という問い。
もちろん私は幸せだと言い切った。
「どっちにしろ咲夜の運命も視えるようになったから私はどうだっていいわ」
「……?何のことです、お嬢様?」
レミリアはしまった、という顔をしている。
「こっちの話よ、咲夜には関係ない」
「あらあら、咲夜の運命が見えなくなったからって血相変えて相談しに来たのはどこの誰だったかしら?」
「パチュリー!!余計なことは言わなくていいの!!」
レミリアの顔が赤く染まる。
「咲夜、紅茶のおかわりを頂戴」
「はい、ただいま」
レミリアのあからさまな照れ隠しにパチュリーが思わず吹き出す。


紅魔館での何気ないひと時。
もちろん天気は青空一つ見えない曇り空。
紅茶は自分の特別製。

咲夜は改めて今の幸せをかみ締めていた。




fin .
おはようさんorこんにちはorこんばんは
初めまして、他人四日といいます。
これが初めてのSSとなります。
何はともあれ
 まずは陳謝を。
最後まで私の駄文にお付き合いくださり、ありがとうございました。
自分の文章レベルでは、満足してもらえるような物が書けたかどうか非常に疑問ですが
もし満足していただけたのなら僥倖です。
これからもチョクチョク投稿させていただこうかと思っていますので、どうぞよろしく。


補足:満月なのにレミリアが無敵でないのは紅魔境と同じノリ、ということで
   どうかお許しを・・・・・だめ?

意見、感想、批判、校正などがありましたら、ビシバシ書き込みお願いします。
では、次の機会に。
他人四日
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コメント



0.3150簡易評価
10.80刺し身削除
読みやすいし、戦いの緊張感が脳に直接伝わってきました。
テンポも良いし、ホントに初SSですかという作品ですね。

一番伝わったのは永夜抄咲夜さん単体の厳しさでs(ry
28.90名無し毛玉削除
最後まで呼称が「門番」だった中華娘に敬礼! (;´Д`)ゞ
29.90名前が無い程度の能力削除
すばらしい~
こいつはすばらしいですよ~
紅魔館ってホント良いですね~