宵闇深くとも、空を見上げれば光を放つ月と満天の星空。
何処に何の星があるのかさえ分かるならば、夜空を飛び目的の場所を目指すこともさほど難しくは無い。もっとも、そんな心配は夜目のきかぬ人間にしか関係ないことであるが。
「お嬢様ぁ~、怒られますってばぁ。あたっ」
咲夜が情けない声を出しながら、拝殿の階段で足を踏み外した。
「咲夜、階段もまともに登れないの?」
レミリアが拝殿から、咲夜を見下ろしながら言った。闇夜の中に紅玉のような瞳が光る。
二人とも小声で喋り、足音は忍ばせている。
「お嬢様と違って、人間は夜目、そんなきかないんですよ」
「言い訳をしない。霊夢に気が付かれたらどうするのよ」
どうもこうもない。咲夜はここへ着く前からずっと 「やめましょうお嬢様」 と諌めていたのだ。
「そんなことを仰られても…」
青みがかった瞳が困ったように揺れる。
霊夢が既に寝入っているなら、この程度の音で目を覚ますとは思わなかったが、どうせ計画が上手く行こうがいくまいが、とばっちりは自分にやってくるんだろうなぁ、そう咲夜は思っていた。
(あぁ、途中で帰れば良かった)
胸中で呟くが、この我侭お嬢様を野放しにするわけにはいかない、そんな使命感めいたものが彼女をここまで来させていた。まぁ、もっとも咲夜が何を言ったところでレミリアが行動を覆すことなど有り得ないのだけど。
賽銭箱の裏手に回り、扉をゆっくりと開ける。
月明かりが内部へ入り込み、僅かにその様を照らし、流れ込む夜気が静謐な空間を揺らす。
敷かれた一つの布団。枕は一つで、当然そこで寝ている姿も一つ。紅白の衣装は枕傍に畳まれて置かれている。察するに、今は巫女の白い寝巻きでもその身に付けているのだろう。
「ふふふ、相変わらず無防備に寝てるわねぇ。あの顔がこれから…うふふふふ…夢にまで見た…じゅるり」
ぐっすりと夢の世界を満喫しているであろう、霊夢の安らかな顔を見たレミリアは、目を煌々と光らせる。口の端からはちょっと涎が出ていて、心は恍惚。背中の羽は、それに呼応するかのようにビンビンと痙攣気味の勢いで勃ちまくりである。完全にあっち側へ行ってしまっている。かえってこーいレミリア。
そんな主の姿を見つつ、こりゃやっべー、まじとめれねーよ。さよなら霊夢、貴方のこと嫌いじゃなかったわ。と心の中で咲夜は十字を切ってみた。
十字を切ったのは、
(何で私じゃダメなのかしら…くすん)
という、悲しみと嫉妬が混じったものである。もっとも、レミリアに十字架は効かないのであるが。
館で霊夢と弾幕プレイという初めての邂逅を果たして以来、レミリアお嬢様は、霊夢に夢中だった。兎や馬がニンジンを見たらどこまでも追いかけ走るかのように、アル中の人が酒を欲しがるの如く、どこまでも夢中だった。日差しの中を、日傘を片手に博麗神社まで毎日出かけるほど、恋する乙女モードに入っていた。
その姿に嫉妬を覚えた咲夜が、
「五百年も生きたのに、何を今更恋に恋する乙女みたいなことを」
はんっ、と鼻でちょっと笑いながら口走ったら、咲夜は五発ほど本気でレミリアに殴られた。何気に肉体派である、レミリアのパンチを五発喰らっても死なない咲夜はすごいのであるが、その時の様子を咲夜さんは次のように語る。
「あれは凄い形相でした。鬼のような、っていうのはああいう時に使う表現なんだと思います。いえ、実際お嬢様は吸血鬼ですから、鬼であるんですが。
着ている服が乱れるのを厭うことなく、『わたしの、わたしの霊夢(何気に所有物宣言してました。私ではダメなんですかね?)!! 馬鹿にするなぁーー!(別に馬鹿になどしていないのに)』 と叫びながら拳を振り回し、今にも霊夢お姉さま(うっとり)とか言いそうでした。
霊夢と出会って以来、私を構ってくれる時間と回数は日ごとに減っていき、不安を覚えた私はある日お嬢様に尋ねたのです」
「私ではダメなんですかお嬢様!!?」
『だめ』
速攻でした。返答まで0.5秒もありませんでした。オマケに何故か平仮名でした。
時間を止めることが出来る私が言うのもなんですが、あの瞬間、間違いなく世界の時が止まりました。
霊夢のことが憎いと思いました。彼女自身のことは嫌いではありませんが、私のお嬢様を取るんじゃないと、そう言いたくなりました。毎夜毎夜、殺しに行こうかどうか迷いました。けれど、彼女を殺したら、お嬢様に私が殺されることは目に見えていました。
そこで、私は失われたお嬢様の信頼(愛情)を取り戻すべく、お屋敷の仕事を以前にましてせっせとこなしました。来る日も来る日も、メイド長なのに、新人メイドなんかと比にはならないくらい働きました。
そんなある日、お嬢様が私に相談事を持ってきました。
話を聞く限りによると、霊夢にはそっちの気が無いとのことなのです。
仕事振りを微塵にも褒めてくれなかったことが寂しかったですが、これはグッドニュースでした。
我儘なお嬢様のことです。事が上手く行かないと分かれば、すぐに諦めると思いました。そして、いつかまた私に―
そう思ったのです。
ですが、ここでお嬢様は予想外の行動を取りました。
自室に篭ったのです。引き篭もりです。今風に言うとヒッキーです。
それだけならまだ良かったのですが、食事は取らず、睡眠も取っていないご様子でした。時折、部屋の中からぶつぶつと声が聞こえてきましたけれど、扉で隔てられていて何を言っているのかまでは聞き取れませんでした。多分、霊夢関係の独り言だと思うのですけど。
引き篭もりになられてから、丁度一週間目の夜。お嬢様は唐突に自室から出てきました。
「お腹すいた…」
そう仰って。
メイド長以下、皆感激です。世界三大料理だろうが、フカヒレスープだろうが、ウミツバメの巣のスープだろうが、何でも材料を集めて作ってやるぜと、私達は意気込みました。
しかし、一番の候補としては、血を使ったブラッドタングソーセージ辺りでしょうかね。
「……みたい」
「えっ?」
「…飲みたい」
お嬢様は、私達には決して作れないものをご所望でした。
「霊夢の血が飲みたい!!!」
一週間の断食は、お嬢様の吸血鬼の本能を増進させてしまったようです。
私は何とか諌めようとしました。そんなこと(しようと)したら霊夢に嫌われますよ? とか、どこぞの吸血鬼は「好きだから、吸わない」とか言ってましたよ、とか言って。
「えーい、うるさいっ! 好きだから吸うの! 吸いたいの!! 吸うしかないの!!!」
よく分からない三段活用を行使するほどお嬢様は興奮していて、残念ながら私の説得は火に油でした。
「吸って…私のモノに…うふ……ふふふふふ」
その時の表情は、五百年の時を生きながらえてようやく恋に目覚めたピュアラブな少女にはとても見えず、よく言って彼方の世界へトリップをかました危ない人でした。
でも、そんなお嬢様もプリティです。
「あ、相手に気持ちとかそういうものもお考えにならないと…」
「昔の偉い人は言いました」
お嬢様の手には一冊の本。引き篭もる際に図書館からきっと持ち出したのでしょう。タイトルは「欲しいものの手に入れ方」。
タイトル見た瞬間に、あともうお嬢様を止めることは出来ないのだと、そう確信しました。そして、叫ぶお嬢様。
「欲しいものは力づくで手に入れろ! 私のものは私のもの。霊夢のものも私のもの。霊夢は私のもの!」
お嬢様は吸血鬼らしく、ジャイ○ニズムに目覚めたようです。
それで、せめて付いて行こうと思い、今に至るわけです。
道すがら興奮が徐々に冷めてきてはいたのですが、生の霊夢を見た途端、あの状態に逆戻りしました。止めれることなら止めたいのですが、私も自分の命が惜しいので、残念ながら横でそっと霊夢の貞操が奪われる様を見届けたいと思います。
「おいしょ、おいしょ」
何故かほふく前進で室内に侵入するお嬢様。その行動は慎重を期しているのか、単に興奮状態でおかしな行動を取っているのか咲夜には分かりかねた。
咲夜としては、室内に結界が張ってあったり、にんにくが転がっていればいいなぁ、最良としては鰯の頭。とか思っていたのだが、それらは一切ないようだった。
(この馬鹿霊夢。これじゃお嬢様を誘ってるようなもんじゃない! ちょっとは危機感覚えろよ、この脳内日和紅白!!)
咲夜は胸中で毒づくが、自分の置かれている状態を露とも知らない巫女さんは、
「やっぱり緑茶は玉露が一番よねー」
とか言いながら、幸せそうな寝顔を見せている。
そんな寝言を聞きながらほふく前進を続けているレミリアは、「うふふふ、私がもっと幸せな気持ちにしてあげる」とか言いつつ、ゆっくりではあるが着実に霊夢に近づいていく。
霊夢の真横に到着し、その間抜けであると共に、幸せそうな寝顔を10秒きっかり凝視したあと、横になったままゆっくりと掛け布団を捲った。ゆっくりと霊夢の指を手に取る。
流石お嬢様である。興奮しているといえども、いきなり首筋にガバッ、とかいかないのである。まずは指からチュパチュパ。これが貴族の嗜み。
いやまぁ、ツェペシュの血とか別に引いてないんだけどね。
口をかぱっと開け、吸血鬼です私、と言わんばかりの犬歯でその指に傷を付けようとして、レミリアはその寸前で思い留まった。
(歯じゃ、やっぱり痛いよね)
慈悲の心である。好きな人に痛い思いをさせるのは忍びない。そう、レミリアは思ったのである。
でも、血は欲しい。恋する吸血鬼は複雑だ。
どうしたものかなぁと思って、咲夜を振り返る。そして、レミリアの顔が歓喜に染まった。
そう、そこには投げナイフ及び、刃物全般(包丁とか)の扱いに長けた自分のメイドが居たことを思い出したのである。
ちょいちょい、と可愛らしく手を振り、自らの傍に咲夜を呼び寄せる。
「どうしたんですか、お嬢様?」
「咲夜。貴女の持っているナイフで霊夢を起こさないように指を切り裂きなさい」
声色は優しく、表情は慈愛に満ち溢れていたが、物騒すぎる言葉である。だが、それが吸血鬼の愛。ピュア ラブ ヴァンパイア レミリア。そこには欲望などなく、ただ愛があるのだ。
「えっ、いやでも…」
躊躇う咲夜。
「いいから、とっとと霊夢が起きないように指切れっつってんだろ。メイド風情が口答えすんじゃねぇよ」
愛があるのだ。……多分。
たった数秒前とは似ても似つかないレミリアの顔を目の当たりにした咲夜は、心の中で何かを諦めつつ、手に銀ナイフを取る。
後に咲夜は語る。
「あの時のお嬢様の顔は、僅かな月明かりに照らされて青白く、幽鬼も真っ青な迫力でした。あの時、私は確信しました。お嬢様はもう戻ってこない。そして、その毒牙にかかってしまう霊夢も―」
まぁ、それは別の話となるのでさて置く。
闇夜に銀線が閃く。
咲夜は、料理後も数分間、水槽で魚が泳ぐことが出来る活け造りを作れるほどの腕前である。痛みを感じさせず、人の指から血を流させることなど造作も無かった。
薄く、ほんの僅かだけ切り傷が付けられた指から血が溢れ出す。大量出血というには程遠いが、鋭利に裂かれたその傷は一晩はその流出を止めることは無い。
これからどうなるだろうか、翌朝にはどうなっているだろうか。結果を思い浮かべるのは難しく無かった。
自分が仕える主は何者だ? その事実だけで咲夜には充分過ぎる推測が出来た。そして、その推測は咲夜の中で確信に近いものだった。故に、時を操る彼女は、文字通り足音も気配もさせぬまま、そこから立ち去った。
見届けは必要なく、また自分はこれから起こるであろう光景を見るべきではないと、そう思ったから。
彼女の主はそれに気が付かなかったけれど、去り際、彼女は僅かに微笑を見せた。
心配事など何一つ無い。自分が仕えている主は吸血鬼などではなく、レミリア・スカーレット。そして、レミリア様を自分は信じている。
誰にも見られることなく闇夜に消えた微笑が意味するのは、それだけである。
咲夜が去った静謐な和の空間には、指先から紅の血を零す少女と、それを見つめる、血よりも更に紅い瞳をした少女が月明かりに照らされて浮かんでいた。
目が覚めると、真っ赤な目が闇の中に浮かんでいた。そいつは私の手を取って、指をその口へ持っていこうとしてる。
……のかな?
寝起きの頭は真面目に仕事をしてはくれない。
考えるのが面倒だったので、そいつに直接尋ねてみた。
「ねぇ、何してるの?」
そいつは、ビクっと身を震わせた。暗くてよく分からないけど、多分背中の羽もピンっとなっているんだろう。
「えーと、指チュパ?」
何で疑問系なんだろう。
「それは楽しいの?」
まぁ、誰かに迷惑を掛けてなければ、別に何をしていようが構わないんだけど。
「楽しい…気はする」
言って、そいつは私の手を離した。僅かな月明かりに照らされて闇に浮かんでいた白い自分の手が、ぽすんと布団の上に落ちる。
「ふーん」
まぁいいや。とりあえず眠いし、ちょっと寒い。
私は布団を捲って、自分の横をぽんぽんと叩いた。
そいつは首を傾げる。
あーもう、めんどくさいなぁ。私は眠いの。脳味噌は半分眠ってるの。言葉にして説明するのが面倒だ。
だから、今度はさっきより早く、強めにばんばんと叩いた。
早くしなさい、という意思表示だ。
布団が捲られて、薄手の白い生地の霊夢の寝巻き姿と、そこから伸びる白い手足、艶めかしい肌。それを見て心臓が跳ねた。
そこに、牙を突き立てたい。
衝動にかられる。
今なら出来る。間違いなく、その行為は成功する。相手は無防備、しかも人間。一度、組み敷けばそれでこちらの勝ちは揺ぎ無い。
そんな事を思っていたら、霊夢は自分の横をぽんぽんと叩いた。
頭に疑問符を浮かべて、首を傾げてしまう。霊夢の意図が分からない。もっとも何か寝惚けているように見えるけれど。
ちゃんと起こしてやったほうがいいんだろうか。そんな事を思い始めたら、今度は苛立たしげに、自分の横をばんばんと霊夢は強めに叩いた。
よく分からないけれど、そこへ膝立ちのまま移動して、ちょこんと座った。
「横」
一言どころか、一単語である。
何が横なのだろうかと思ったが、布団の上で横と言ったら、横になれ、ということなんだろうなぁ。そう思って、身を布団の中に滑り込ませた。
「ん」
霊夢は満足そうに布団を掛け直す。で、「寒い」と言いながら、私を手招きする。もっと近う寄れ、ということだろうか。
いきなりそんなことをされても、いろいろと心の準備とかがなくてあれなのだが、そうしないと霊夢が怒り出しそうだったから、身を寄せた。
最初、何が起きたのか分からなかった。
人間と違って、完全に夜目がきく自分の視界が真っ暗になって、布団に入っても僅かに感じていた寒さが消えた。
私は、霊夢に抱え込まれるようにして抱きしめられていた。きゅっと、すっぽりと、親猫が子猫を外敵から守るみたいに。
「んー、あったかい」
そして、何を思ったのか私の頭を撫で始めた。間違いない、霊夢は寝惚けている。
牙を突きたて、その血を啜るのなら、これとない千載一遇のチャンスだった。修行はしない、努力はキライ。でも、それを補って余りあるだけの霊力と、その扱いに長けた才。そんな彼女が寝惚けているとはいえ、その身に人間の血を啜る生き物を抱き寄せることなど、これから二度とあるとは思えない。
けど、その身に抱かれて、吸血衝動など何処かへ飛んで行ってしまった。
そんなの、どうでもいいや。
霊夢にされるがままに私は抱きしめられ、頭を撫でられた。
「何で泣いてるの?」
「泣いてなんていない」
「だって目が真っ赤だったよ」
笑いそうになってしまう。私は吸血鬼だ。そりゃ目は赤いだろう。霊夢は自分が抱いているのが夜中に神社に迷い込んできた、どこかの子供とでも思っているのだろうか。
「ねぇ霊夢。私は誰?」
聞くべきではないと自分でも思った。
知らない、とか、人間の子供。とか言われたら、胸の奥で眠りについた衝動はきっと目を覚ます。先程よりも、ずっと獰猛に猛狂うだろう。そして、それに逆らえず私はその首に牙を突き立てるだろう。私のことだ、どうせ同属になるまで血を啜ることは無いだろう。けれど、それをした私のことを霊夢は一生許すことは無いだろうし、私自身も自分を許せないだろう。
そう思ったのに、聞いてしまった。放たれた言葉は、矢と同じように決して戻ってはこない。その言葉は、自身の身を焼く聖水になる。
返事が帰ってくるまで数秒と無かった。けれど、私にとってその数秒の静謐は、壁に磔にされ、心臓に杭を打たれる待ち時間のようなものだった。
「何言ってんの? 寂しがり屋のレミィでしょ」
心臓に杭を打たれた。銀のナイフでこの身は八つ裂きだ。心に十字架が降ってきた。今なら神に祈りを捧げる愚かな人間の気持ちが少し分かる。驚きのあまり、背中の羽はピンと伸びることすら忘れている。
何故呼び方が愛称なのか、とか、寂しがり屋は私なんかよりむしろアリスだろう、とか突っ込み所があったのだけれど、私はただ頷いた。その時、瞳から何かが零れた。
「あーもう、寂しがり屋の上に泣き虫だなぁ」
よしよしと撫でる手と、抱きしめる腕に力が込められた。
霊夢は私だと分かっていた。寝惚けているから、どうせ朝になって目が覚めたら何も覚えていないのだろうけれど、霊夢は私だって分かっていた。
嬉しかった。だというのに、その霊夢に自分は何をしようとしていたのか。
私は自分を恥じた。最低だ、と呟いた。吸血衝動なんて糞喰らえだと思った。
そこから先は、よく覚えていない。
しきりに謝ったのか、ただ泣き続けたのか。それすら分からない。
その日のことで、私に残った事実はたった一つだ。
私は、霊夢のことが更に好きになったということ。
飲まなければ死ぬという状況に陥ったとしても、私は霊夢に牙を突き立てることは無いだろう。また、立ててはならない。
月と夜が許しても、私自身が許さない。そんなことをするのなら、自身に牙を突きたてる。
例え霊夢が覚えていなくとも、今日の日のことを私は生涯忘れることは無いだろう。
レミィと呼ばれ、抱かれ、涙したこの日を。
何処に何の星があるのかさえ分かるならば、夜空を飛び目的の場所を目指すこともさほど難しくは無い。もっとも、そんな心配は夜目のきかぬ人間にしか関係ないことであるが。
「お嬢様ぁ~、怒られますってばぁ。あたっ」
咲夜が情けない声を出しながら、拝殿の階段で足を踏み外した。
「咲夜、階段もまともに登れないの?」
レミリアが拝殿から、咲夜を見下ろしながら言った。闇夜の中に紅玉のような瞳が光る。
二人とも小声で喋り、足音は忍ばせている。
「お嬢様と違って、人間は夜目、そんなきかないんですよ」
「言い訳をしない。霊夢に気が付かれたらどうするのよ」
どうもこうもない。咲夜はここへ着く前からずっと 「やめましょうお嬢様」 と諌めていたのだ。
「そんなことを仰られても…」
青みがかった瞳が困ったように揺れる。
霊夢が既に寝入っているなら、この程度の音で目を覚ますとは思わなかったが、どうせ計画が上手く行こうがいくまいが、とばっちりは自分にやってくるんだろうなぁ、そう咲夜は思っていた。
(あぁ、途中で帰れば良かった)
胸中で呟くが、この我侭お嬢様を野放しにするわけにはいかない、そんな使命感めいたものが彼女をここまで来させていた。まぁ、もっとも咲夜が何を言ったところでレミリアが行動を覆すことなど有り得ないのだけど。
賽銭箱の裏手に回り、扉をゆっくりと開ける。
月明かりが内部へ入り込み、僅かにその様を照らし、流れ込む夜気が静謐な空間を揺らす。
敷かれた一つの布団。枕は一つで、当然そこで寝ている姿も一つ。紅白の衣装は枕傍に畳まれて置かれている。察するに、今は巫女の白い寝巻きでもその身に付けているのだろう。
「ふふふ、相変わらず無防備に寝てるわねぇ。あの顔がこれから…うふふふふ…夢にまで見た…じゅるり」
ぐっすりと夢の世界を満喫しているであろう、霊夢の安らかな顔を見たレミリアは、目を煌々と光らせる。口の端からはちょっと涎が出ていて、心は恍惚。背中の羽は、それに呼応するかのようにビンビンと痙攣気味の勢いで勃ちまくりである。完全にあっち側へ行ってしまっている。かえってこーいレミリア。
そんな主の姿を見つつ、こりゃやっべー、まじとめれねーよ。さよなら霊夢、貴方のこと嫌いじゃなかったわ。と心の中で咲夜は十字を切ってみた。
十字を切ったのは、
(何で私じゃダメなのかしら…くすん)
という、悲しみと嫉妬が混じったものである。もっとも、レミリアに十字架は効かないのであるが。
館で霊夢と弾幕プレイという初めての邂逅を果たして以来、レミリアお嬢様は、霊夢に夢中だった。兎や馬がニンジンを見たらどこまでも追いかけ走るかのように、アル中の人が酒を欲しがるの如く、どこまでも夢中だった。日差しの中を、日傘を片手に博麗神社まで毎日出かけるほど、恋する乙女モードに入っていた。
その姿に嫉妬を覚えた咲夜が、
「五百年も生きたのに、何を今更恋に恋する乙女みたいなことを」
はんっ、と鼻でちょっと笑いながら口走ったら、咲夜は五発ほど本気でレミリアに殴られた。何気に肉体派である、レミリアのパンチを五発喰らっても死なない咲夜はすごいのであるが、その時の様子を咲夜さんは次のように語る。
「あれは凄い形相でした。鬼のような、っていうのはああいう時に使う表現なんだと思います。いえ、実際お嬢様は吸血鬼ですから、鬼であるんですが。
着ている服が乱れるのを厭うことなく、『わたしの、わたしの霊夢(何気に所有物宣言してました。私ではダメなんですかね?)!! 馬鹿にするなぁーー!(別に馬鹿になどしていないのに)』 と叫びながら拳を振り回し、今にも霊夢お姉さま(うっとり)とか言いそうでした。
霊夢と出会って以来、私を構ってくれる時間と回数は日ごとに減っていき、不安を覚えた私はある日お嬢様に尋ねたのです」
「私ではダメなんですかお嬢様!!?」
『だめ』
速攻でした。返答まで0.5秒もありませんでした。オマケに何故か平仮名でした。
時間を止めることが出来る私が言うのもなんですが、あの瞬間、間違いなく世界の時が止まりました。
霊夢のことが憎いと思いました。彼女自身のことは嫌いではありませんが、私のお嬢様を取るんじゃないと、そう言いたくなりました。毎夜毎夜、殺しに行こうかどうか迷いました。けれど、彼女を殺したら、お嬢様に私が殺されることは目に見えていました。
そこで、私は失われたお嬢様の信頼(愛情)を取り戻すべく、お屋敷の仕事を以前にましてせっせとこなしました。来る日も来る日も、メイド長なのに、新人メイドなんかと比にはならないくらい働きました。
そんなある日、お嬢様が私に相談事を持ってきました。
話を聞く限りによると、霊夢にはそっちの気が無いとのことなのです。
仕事振りを微塵にも褒めてくれなかったことが寂しかったですが、これはグッドニュースでした。
我儘なお嬢様のことです。事が上手く行かないと分かれば、すぐに諦めると思いました。そして、いつかまた私に―
そう思ったのです。
ですが、ここでお嬢様は予想外の行動を取りました。
自室に篭ったのです。引き篭もりです。今風に言うとヒッキーです。
それだけならまだ良かったのですが、食事は取らず、睡眠も取っていないご様子でした。時折、部屋の中からぶつぶつと声が聞こえてきましたけれど、扉で隔てられていて何を言っているのかまでは聞き取れませんでした。多分、霊夢関係の独り言だと思うのですけど。
引き篭もりになられてから、丁度一週間目の夜。お嬢様は唐突に自室から出てきました。
「お腹すいた…」
そう仰って。
メイド長以下、皆感激です。世界三大料理だろうが、フカヒレスープだろうが、ウミツバメの巣のスープだろうが、何でも材料を集めて作ってやるぜと、私達は意気込みました。
しかし、一番の候補としては、血を使ったブラッドタングソーセージ辺りでしょうかね。
「……みたい」
「えっ?」
「…飲みたい」
お嬢様は、私達には決して作れないものをご所望でした。
「霊夢の血が飲みたい!!!」
一週間の断食は、お嬢様の吸血鬼の本能を増進させてしまったようです。
私は何とか諌めようとしました。そんなこと(しようと)したら霊夢に嫌われますよ? とか、どこぞの吸血鬼は「好きだから、吸わない」とか言ってましたよ、とか言って。
「えーい、うるさいっ! 好きだから吸うの! 吸いたいの!! 吸うしかないの!!!」
よく分からない三段活用を行使するほどお嬢様は興奮していて、残念ながら私の説得は火に油でした。
「吸って…私のモノに…うふ……ふふふふふ」
その時の表情は、五百年の時を生きながらえてようやく恋に目覚めたピュアラブな少女にはとても見えず、よく言って彼方の世界へトリップをかました危ない人でした。
でも、そんなお嬢様もプリティです。
「あ、相手に気持ちとかそういうものもお考えにならないと…」
「昔の偉い人は言いました」
お嬢様の手には一冊の本。引き篭もる際に図書館からきっと持ち出したのでしょう。タイトルは「欲しいものの手に入れ方」。
タイトル見た瞬間に、あともうお嬢様を止めることは出来ないのだと、そう確信しました。そして、叫ぶお嬢様。
「欲しいものは力づくで手に入れろ! 私のものは私のもの。霊夢のものも私のもの。霊夢は私のもの!」
お嬢様は吸血鬼らしく、ジャイ○ニズムに目覚めたようです。
それで、せめて付いて行こうと思い、今に至るわけです。
道すがら興奮が徐々に冷めてきてはいたのですが、生の霊夢を見た途端、あの状態に逆戻りしました。止めれることなら止めたいのですが、私も自分の命が惜しいので、残念ながら横でそっと霊夢の貞操が奪われる様を見届けたいと思います。
「おいしょ、おいしょ」
何故かほふく前進で室内に侵入するお嬢様。その行動は慎重を期しているのか、単に興奮状態でおかしな行動を取っているのか咲夜には分かりかねた。
咲夜としては、室内に結界が張ってあったり、にんにくが転がっていればいいなぁ、最良としては鰯の頭。とか思っていたのだが、それらは一切ないようだった。
(この馬鹿霊夢。これじゃお嬢様を誘ってるようなもんじゃない! ちょっとは危機感覚えろよ、この脳内日和紅白!!)
咲夜は胸中で毒づくが、自分の置かれている状態を露とも知らない巫女さんは、
「やっぱり緑茶は玉露が一番よねー」
とか言いながら、幸せそうな寝顔を見せている。
そんな寝言を聞きながらほふく前進を続けているレミリアは、「うふふふ、私がもっと幸せな気持ちにしてあげる」とか言いつつ、ゆっくりではあるが着実に霊夢に近づいていく。
霊夢の真横に到着し、その間抜けであると共に、幸せそうな寝顔を10秒きっかり凝視したあと、横になったままゆっくりと掛け布団を捲った。ゆっくりと霊夢の指を手に取る。
流石お嬢様である。興奮しているといえども、いきなり首筋にガバッ、とかいかないのである。まずは指からチュパチュパ。これが貴族の嗜み。
いやまぁ、ツェペシュの血とか別に引いてないんだけどね。
口をかぱっと開け、吸血鬼です私、と言わんばかりの犬歯でその指に傷を付けようとして、レミリアはその寸前で思い留まった。
(歯じゃ、やっぱり痛いよね)
慈悲の心である。好きな人に痛い思いをさせるのは忍びない。そう、レミリアは思ったのである。
でも、血は欲しい。恋する吸血鬼は複雑だ。
どうしたものかなぁと思って、咲夜を振り返る。そして、レミリアの顔が歓喜に染まった。
そう、そこには投げナイフ及び、刃物全般(包丁とか)の扱いに長けた自分のメイドが居たことを思い出したのである。
ちょいちょい、と可愛らしく手を振り、自らの傍に咲夜を呼び寄せる。
「どうしたんですか、お嬢様?」
「咲夜。貴女の持っているナイフで霊夢を起こさないように指を切り裂きなさい」
声色は優しく、表情は慈愛に満ち溢れていたが、物騒すぎる言葉である。だが、それが吸血鬼の愛。ピュア ラブ ヴァンパイア レミリア。そこには欲望などなく、ただ愛があるのだ。
「えっ、いやでも…」
躊躇う咲夜。
「いいから、とっとと霊夢が起きないように指切れっつってんだろ。メイド風情が口答えすんじゃねぇよ」
愛があるのだ。……多分。
たった数秒前とは似ても似つかないレミリアの顔を目の当たりにした咲夜は、心の中で何かを諦めつつ、手に銀ナイフを取る。
後に咲夜は語る。
「あの時のお嬢様の顔は、僅かな月明かりに照らされて青白く、幽鬼も真っ青な迫力でした。あの時、私は確信しました。お嬢様はもう戻ってこない。そして、その毒牙にかかってしまう霊夢も―」
まぁ、それは別の話となるのでさて置く。
闇夜に銀線が閃く。
咲夜は、料理後も数分間、水槽で魚が泳ぐことが出来る活け造りを作れるほどの腕前である。痛みを感じさせず、人の指から血を流させることなど造作も無かった。
薄く、ほんの僅かだけ切り傷が付けられた指から血が溢れ出す。大量出血というには程遠いが、鋭利に裂かれたその傷は一晩はその流出を止めることは無い。
これからどうなるだろうか、翌朝にはどうなっているだろうか。結果を思い浮かべるのは難しく無かった。
自分が仕える主は何者だ? その事実だけで咲夜には充分過ぎる推測が出来た。そして、その推測は咲夜の中で確信に近いものだった。故に、時を操る彼女は、文字通り足音も気配もさせぬまま、そこから立ち去った。
見届けは必要なく、また自分はこれから起こるであろう光景を見るべきではないと、そう思ったから。
彼女の主はそれに気が付かなかったけれど、去り際、彼女は僅かに微笑を見せた。
心配事など何一つ無い。自分が仕えている主は吸血鬼などではなく、レミリア・スカーレット。そして、レミリア様を自分は信じている。
誰にも見られることなく闇夜に消えた微笑が意味するのは、それだけである。
咲夜が去った静謐な和の空間には、指先から紅の血を零す少女と、それを見つめる、血よりも更に紅い瞳をした少女が月明かりに照らされて浮かんでいた。
目が覚めると、真っ赤な目が闇の中に浮かんでいた。そいつは私の手を取って、指をその口へ持っていこうとしてる。
……のかな?
寝起きの頭は真面目に仕事をしてはくれない。
考えるのが面倒だったので、そいつに直接尋ねてみた。
「ねぇ、何してるの?」
そいつは、ビクっと身を震わせた。暗くてよく分からないけど、多分背中の羽もピンっとなっているんだろう。
「えーと、指チュパ?」
何で疑問系なんだろう。
「それは楽しいの?」
まぁ、誰かに迷惑を掛けてなければ、別に何をしていようが構わないんだけど。
「楽しい…気はする」
言って、そいつは私の手を離した。僅かな月明かりに照らされて闇に浮かんでいた白い自分の手が、ぽすんと布団の上に落ちる。
「ふーん」
まぁいいや。とりあえず眠いし、ちょっと寒い。
私は布団を捲って、自分の横をぽんぽんと叩いた。
そいつは首を傾げる。
あーもう、めんどくさいなぁ。私は眠いの。脳味噌は半分眠ってるの。言葉にして説明するのが面倒だ。
だから、今度はさっきより早く、強めにばんばんと叩いた。
早くしなさい、という意思表示だ。
布団が捲られて、薄手の白い生地の霊夢の寝巻き姿と、そこから伸びる白い手足、艶めかしい肌。それを見て心臓が跳ねた。
そこに、牙を突き立てたい。
衝動にかられる。
今なら出来る。間違いなく、その行為は成功する。相手は無防備、しかも人間。一度、組み敷けばそれでこちらの勝ちは揺ぎ無い。
そんな事を思っていたら、霊夢は自分の横をぽんぽんと叩いた。
頭に疑問符を浮かべて、首を傾げてしまう。霊夢の意図が分からない。もっとも何か寝惚けているように見えるけれど。
ちゃんと起こしてやったほうがいいんだろうか。そんな事を思い始めたら、今度は苛立たしげに、自分の横をばんばんと霊夢は強めに叩いた。
よく分からないけれど、そこへ膝立ちのまま移動して、ちょこんと座った。
「横」
一言どころか、一単語である。
何が横なのだろうかと思ったが、布団の上で横と言ったら、横になれ、ということなんだろうなぁ。そう思って、身を布団の中に滑り込ませた。
「ん」
霊夢は満足そうに布団を掛け直す。で、「寒い」と言いながら、私を手招きする。もっと近う寄れ、ということだろうか。
いきなりそんなことをされても、いろいろと心の準備とかがなくてあれなのだが、そうしないと霊夢が怒り出しそうだったから、身を寄せた。
最初、何が起きたのか分からなかった。
人間と違って、完全に夜目がきく自分の視界が真っ暗になって、布団に入っても僅かに感じていた寒さが消えた。
私は、霊夢に抱え込まれるようにして抱きしめられていた。きゅっと、すっぽりと、親猫が子猫を外敵から守るみたいに。
「んー、あったかい」
そして、何を思ったのか私の頭を撫で始めた。間違いない、霊夢は寝惚けている。
牙を突きたて、その血を啜るのなら、これとない千載一遇のチャンスだった。修行はしない、努力はキライ。でも、それを補って余りあるだけの霊力と、その扱いに長けた才。そんな彼女が寝惚けているとはいえ、その身に人間の血を啜る生き物を抱き寄せることなど、これから二度とあるとは思えない。
けど、その身に抱かれて、吸血衝動など何処かへ飛んで行ってしまった。
そんなの、どうでもいいや。
霊夢にされるがままに私は抱きしめられ、頭を撫でられた。
「何で泣いてるの?」
「泣いてなんていない」
「だって目が真っ赤だったよ」
笑いそうになってしまう。私は吸血鬼だ。そりゃ目は赤いだろう。霊夢は自分が抱いているのが夜中に神社に迷い込んできた、どこかの子供とでも思っているのだろうか。
「ねぇ霊夢。私は誰?」
聞くべきではないと自分でも思った。
知らない、とか、人間の子供。とか言われたら、胸の奥で眠りについた衝動はきっと目を覚ます。先程よりも、ずっと獰猛に猛狂うだろう。そして、それに逆らえず私はその首に牙を突き立てるだろう。私のことだ、どうせ同属になるまで血を啜ることは無いだろう。けれど、それをした私のことを霊夢は一生許すことは無いだろうし、私自身も自分を許せないだろう。
そう思ったのに、聞いてしまった。放たれた言葉は、矢と同じように決して戻ってはこない。その言葉は、自身の身を焼く聖水になる。
返事が帰ってくるまで数秒と無かった。けれど、私にとってその数秒の静謐は、壁に磔にされ、心臓に杭を打たれる待ち時間のようなものだった。
「何言ってんの? 寂しがり屋のレミィでしょ」
心臓に杭を打たれた。銀のナイフでこの身は八つ裂きだ。心に十字架が降ってきた。今なら神に祈りを捧げる愚かな人間の気持ちが少し分かる。驚きのあまり、背中の羽はピンと伸びることすら忘れている。
何故呼び方が愛称なのか、とか、寂しがり屋は私なんかよりむしろアリスだろう、とか突っ込み所があったのだけれど、私はただ頷いた。その時、瞳から何かが零れた。
「あーもう、寂しがり屋の上に泣き虫だなぁ」
よしよしと撫でる手と、抱きしめる腕に力が込められた。
霊夢は私だと分かっていた。寝惚けているから、どうせ朝になって目が覚めたら何も覚えていないのだろうけれど、霊夢は私だって分かっていた。
嬉しかった。だというのに、その霊夢に自分は何をしようとしていたのか。
私は自分を恥じた。最低だ、と呟いた。吸血衝動なんて糞喰らえだと思った。
そこから先は、よく覚えていない。
しきりに謝ったのか、ただ泣き続けたのか。それすら分からない。
その日のことで、私に残った事実はたった一つだ。
私は、霊夢のことが更に好きになったということ。
飲まなければ死ぬという状況に陥ったとしても、私は霊夢に牙を突き立てることは無いだろう。また、立ててはならない。
月と夜が許しても、私自身が許さない。そんなことをするのなら、自身に牙を突きたてる。
例え霊夢が覚えていなくとも、今日の日のことを私は生涯忘れることは無いだろう。
レミィと呼ばれ、抱かれ、涙したこの日を。
ありがとうございました!
吸血鬼たる彼女はこうして少しづつヒトになっていくのですね。
だいじょぶ、らくどちんはデキル子だと信じてるから。
まさに邪推でした。
ステキな月夜をありがとう。
ご馳走様でした