Coolier - 新生・東方創想話

神蝶華~ZIN CHO GE~ 序章

2005/04/29 00:58:03
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             あれから幾星霜の刻が流れただろうか…
         生まれ出でてより、永遠とも思えた唯独りの時間を過ごし
          常に襲い来る孤独から逃げるかの如く、式神を手に入れ
           刹那とも思えた刻の間に、親友と呼べる朋友を得
         その友の最期を看取り、『失う』事の悲しさに打ちのめされ
          悲しみを引き摺るうち、何時しか私の周りには『友』が、
             そして『家族』が、私を支えてくれていた
             悲しみの余り気付かなかったのだろうか?
            無意識のうちにそれらを求めていたのだろうか?

                   それとも…   

                …また、あの華が咲く季節だ…
              …私はもう二度と、何も失いたくは…
                    …ない…


                    神蝶華
                 ~ZIN CHO GE~

                    序章


「らんさまー、らんさまー、また符咒の書き方教えてー」
台所で昼食の後片付けをしていた藍の元に、式である橙が駆け寄って来た。
「ん、そうさなぁ…昨日は土の符を教えたから、今日は水の符を教えてやろうかな」
「ぅえーっ!?水ぅ!?ボク水嫌いだよぅ;」
式は水に浸かると落ちてしまう為、水気や水場を嫌う
その上橙は化け猫。元来が猫である橙は、式神のそれに輪をかけて水や風呂が大嫌いだ
「だが、五行の理を完全に習得出来ねば、まともなスペルはおろか、下手をすれば自分の首を絞める事になるぞ?」
「むぇ~;それはヤだよぅ~;でもなぁ…ブツブツ…」
己の主である藍の言葉に、橙は苦虫を噛み潰した様なしかめっ面をしてみせる
「カカカ、そう腐るな、修練の後で美味い鯵を焼いてやるからな」
「ほんと!!?やたーーーー!!あじー☆あじー☆」
二月も終わりに近づく幻想卿、今日もマヨヒガは平和な時間を過ごしている
時々博麗神社の紅白巫女や、黒白のはしっこい魔法使いも遊びに来る
紅き館の主やその御付きのメイドの訪問も珍しくは無い。館の門番も、橙の良い遊び相手になってくれる
何時の間にか近場に住み着いた酒飲みの鬼も、今では良いご近所さんだ
去年の月の一件が縁で永遠亭の面々や、半獣と不死鳥の娘が遊びに来る事もある
そして
馴染み深い白玉楼の主と、元来は庭師の筈が、今やすっかり従者兼世話係になってしまった半幽霊も、時々顔を見せに来る
昔は寂れ、あばら家か幽霊屋敷にしか見えなかったマヨヒガも、今ではすっかり賑やかになっていた
白玉楼の結界修繕で事を発した弾幕騒ぎが、総ての始まりだったかもしれない
何処ぞの鬼に萃められ、どんちゃん騒ぎをやらかした事もあった
真の満月隠しに始まり、肝試しと称して刺客にされたりもした。
刹那とも思える僅かの間に沢山の事が起こり、その度に一人、また一人と『友』が増えていった
『此処も…昔とは比べ物にならない程、明るくなったものね…』
ふと、マヨヒガの主、八雲紫は一人、縁側で日向ぼっこをしながらそんな事を考えていた
最近紫は昼間に起き、寝間着のままこうして日にあたってうつらうつらするのが気に入っているらしい
「…そういえば、そろそろ『あの季節』…ね…藍、橙、ちょっとおいでなさいな」
何かを思い出し、一人ごちた紫は居間に居る藍と橙を呼んだ
「我が主よ、御呼びで?」
「ゆかりさま、何かお買い物ー?」
何時の間に着替えたのだろうか、既に紫は寝間着ではなく、導師服に身を包み、隙間の上に腰掛けていた
「藍、橙、私はこれから出掛けるわ、マヨヒガを二、三日空ける事になるでしょうから、留守をお願いね」
「御意に、マヨヒガの留守は御任せを…道中御気をつけて行かれませ、我が主」
藍は何かを察したのか、それ以上何も言わなかった
何時もなら、紫はこのマヨヒガでごろ寝を決め込み、梃子でも動こうとはしない程だ
その紫が急かされる事も無く、自ら出掛けるのは非常に珍しい事なのだ
「ゆかりさまーおみやgえええぇぇ!いらいいらい!あんひゃまいらい!!」
「阿呆、同じ家族とて卑しい真似をするな、橙」
出掛ける紫に土産をせがむ橙の頬を、藍は叱咤しながら引っ張った
「ふふっ、わかったわ、ちゃんとお土産を持って来てあげるわよ」
「やたーーーー!!!おみやげオミヤゲ!」
むくれる藍を尻目に、橙ははしゃぎながら藍の周りをくるくると走りまわった
「我が主よ、余り橙を甘やかしては…」
「あら?何処かの誰かさんみたいに『まいすうぃーとえーんじぇーるちぇーんー(はぁと)ハァハァ』とか言って頬擦りs」
「ん゛に゛ょわ゛ぁぁぁっっ!!に゛ゃーーーっ!!あ゛ーーーっ!!!聞いてない!ボク何も聞いてないよっ!!」
「ソーデース!キイテナーイ!ナーモキイテナーイ!!ハーイ!イーテラシャーイマーセー!!」
素っ頓狂な奇声を放つ橙と、変な似非外人調に話す藍に半ば追い出される様な形で、紫はマヨヒガを後にした
「うふふっちょっとからかい過ぎたかしらねぇw」
暫く上空を飛翔して後、ぺろりと舌を覗かせて、紫は『失敗失敗』と苦笑いをこぼした
「でも面白いのよねぇ…あの二人をからかうと…」
『あの娘と過ごしていた時を思い出す』
後の言葉は紫の口から発せられる事は無く、その顔は酷く曇った表情を浮かべた
決して曇る事の無かった、八雲紫の表情が
「…嫌ねぇ…また思い出しちゃったじゃないの…」
帽子を何時もより目深に被り、手に持つ日傘で顔を隠し、紫はそう呟いた
「…でも…私は『あれ』を忘れちゃいけないのよ…決して…ね…」
まるで自分に言い聞かせるかの様に、続けて紫は呟いた
「…ふふっ…私も…まだ未熟なのかしら…ね…まだ『あれ』から逃げようとするなんて…」
自嘲とも後悔とも取れるその言葉は、誰に届く事も無く、眼下の景色と虚空に消えた

向かうは白玉楼。思い出と悲しみが今尚も息衝く、最も親しき友の住まう死者の摩天楼…

――その途の片隅で、一輪の沈丁花が、ぽつん、と、その華を咲かせていた
何時の頃からか、常世と現世の境目には、沈丁花の香りがすると云う

お初にお目にかかります、不破龍馬という者です。
文才が無いくせに、「前々から書きたいな~」と思っていたゆあきんSSです
しかも新参の癖にシリーズで連作をしようという無為無策生意気極まりない事をやらかしてますOTZ

ああっ!皆さん石を投げないでっ!!・。゜( ⊃ДT)

こんなヘタレの文書き初心者ですが、どうか生暖かい目で見守って下さい

因みに橙タソの一人称が『ボク』になってたり、藍タソの口調が古めかしくなってるのは、
俺っちの脳内で勝手にデフォルト指t
ああっ!!御免なさい!御免なさい!!だから石を投げないでぇっ!!・。゜( ⊃ДT)
不破龍馬
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