東方X戦記
第13話「一人ぼっちのデュエット」
イースター島。モアイが多く並んでいるこの島は今では北方勇者帝国の拠点の一つとなった。
白玉楼の半人半霊の庭師、魂魄妖夢は只1人、そこにいた。
最も、クジ運が悪かったのかたった1人となっていたが今となってはしょうがない。
「ここが敵の拠点の一つ・・・・・・他の皆さんは大丈夫でしょうか・・・・・・?」
彼女は他のメンバーを心配しつつも周りを見る。ここは敵地の中。いつ敵が出てきてもおかしくはない状態である。
今の彼女の装備は剣1本。1年前、もう片方はキリュウに奪われたのだ。それを取り返さなくてはならない。
「それにしても外の世界の人間はどうしてこんな大きな人の顔を作ったのだろう?不思議だな・・・・・・。」
そう言って、妖夢はモアイ像を不思議そうに見る。そして紫からもらった『世界の不思議事典』のページをめくる。
「何々・・・・・・モアイは“ストーンヘンジ”や“ピラミッド”、“万里の長城”、“死海”、“ナスカの地上絵”と同じく世界の謎に包まれており、異星人が作った説があると言われる・・・・・・って観光している場合か!!おっとと・・・・・・。」
『世界の不思議事典』の内容に感心したかと思いきや、1人ツッコミをして本を地面に叩き付け、はっとなって紫からもらった本を大事そうに拾う妖夢。他人から見ると色々と忙しい人(半人?)だと思われるだろう。
「とは言え、ここは慎重に行かなくては・・・・・・ここは勇者の仕切る場所だからな・・・・・・。」
そう言い、妖夢は辺りを警戒しながら先へと進む。だが、その様子を1羽の鴉が見たという事は全く知らなかった。
霊夢とハクレイの修行弾幕はまだ続いていた。しかし、最初の頃とは幾段と違った様子を見せていた。
前回は霊夢の弾幕はハクレイに当たらず、霊夢自身も焦っている様子を隠せなかった。
しかし、今は彼女の弾幕は相変わらずなものの、ギリギリでハクレイに当たりそうになり、霊夢自身も落ち着いていた。
そんな彼女の変化をハクレイも楽しそうに霊夢に言う。
「へ~結構、やれるじゃん♪」
「まぁね。まぁ、当たらないのは相変わらずだけど・・・・・・。」
「それでいいのよ。さぁて・・・・・・こちらも行きますか!」
そういった直後、今度はハクレイの弾幕が霊夢に襲い掛かる!だが、霊夢は何とかかわせる様になっていた。
「・・・・・・霊夢・・・・・・それが、博麗の巫女の義務なんだよ・・・・・・。」
そんなハクレイの表情は何気に寂そうだが、今の霊夢に気づく由はなかった。
一方、北方勇者帝国の本部でも模擬戦の弾幕を行っていた。闘技場(?)の中央にいるのは謎の巫女、博麗霊牙。
対するのはザリク、美優、スィガ、レグリン。いずれも幻想郷の者に負けたものの、実力のある勇者だ。
何せ、たった1年で1対1や1対多数の戦いにおいても無類の強さを誇っているのだ。その実力はまさにプロである。
じりじりと近づく4人の勇者に対し、霊牙は腕を組んだまま、立ち構えている。
「?何故、動こうとしないのです?」
「我の運動はまだだ。貴様等のターンに回してやる。」
「へ~?結構、自信満々だね~?」
「ふん、その過信が自滅をも招くかもしれないぞ・・・・・・我々は皆、プロの実力を持つ者だからな。」
「だが、油断はできない・・・・・・油断は禁物だ・・・・・・。」
緊迫した様子の中、こちらも同様の雰囲気を放っている観客席にはキリュウ、Aチルノ、亜魅だった。
「さて、見せてもらおうかの・・・・・・闇の巫女の能力とやらを・・・・・・。」
「・・・・・・(ゴクリ)」
Aチルノがゴクリと唾を飲み込むや否や、4人の勇者はそれぞれの戦闘態勢を取る為、散らばる。
「先手必勝!我らの実力を侮った貴様の愚かさを悔やむがいい!」
先に先手を打ったのはザリクだった。パワータイプであるが故に一気に弾幕を霊牙に放つ。このままでは完全に当たる・・・が
「ふぅむ・・・・・・なかなかの弾幕だが・・・・・・片腹痛いわ!!」
そう言って、霊牙が手を払うと何とザリクの弾幕が消えたのだ!この光景に流石のザリクも驚愕する。
「な、何!?私の弾幕が・・・・・・!?」
「はっはー☆」
「貴様・・・・・・何をした!?」
「ふぅむ、我は自分の能力を自慢する様な輩ではないからな・・・・・・一つだけ言える事は既に勝利は我の手中に収まった事だけだ。」
「何・・・・・・?どういう事だ!?」
「まぁ、待て。今に分かる。」
霊牙の挑発に対し、4人の勇者は一斉に得意のスペルを発動する。
「真・『地獄の太陽』・10連弾!!」
「恐符・・・・・・『ダークハロウィン』!!」
「鬼符・・・・・・『鬼神の嘲笑』!!」
「最終奥儀、『ジャスティスムーンバスター(ノーマルver.)』!成敗!!」
それぞれの放たれるスペルが霊牙に襲い掛かり、大爆発する。だが・・・・・・
「ふぅむ・・・・・・その程度か・・・・・・?」
「「「!!!???」」」
「ななななぁにこれぇ!?」
4人が改めて見ると煙の中から無傷の霊牙が。その表情は不敵に笑っている。
「教えてやろう・・・・・・貴様らと我の徹底的な差と言うやつを・・・・・・!」
そう言って、霊牙はスペルカードを取り出し、発動する。その瞬間、周りの雰囲気が張り詰める様に。
「スペル発動!喰らえぇ!邪気の、邪気の、じゃじゃじゃ邪気の・・・・・・ダークスプリーム!!!」
少し、詰まっていたが霊牙が叫ぶや否や、極太のレーザーの様な4人に襲い掛かり・・・・・・
ピチューン!ピチューン!ピチュチューン!!
それぞれ、ヒットしてしまった。
(略)
「えぇいっ!何故だ!?何故、奴に攻撃が効かない!」
模擬戦が終わり、ザリクは優雅にスポーツ飲料を飲んでいる霊牙に憎悪の視線を送る。
「ほぉ?貴様はまだ、分からぬようだな?」
「何?」
「貴様らは、既に頂点に立っていると思っているだろうが、そうではない。世界は広い。その世界の中に我の様な強き者がいるものだ・・・・・・貴様らの戦いのロードはまだ、ほんの少しに過ぎん。たった1年で全ての戦いを知り尽くしたなどとほざくとは甘いな・・・・・・。強さの真の意味が理解できないならば、貴様らなど秋葉原のコミケの長蛇の列の中にでも埋まっていろ!」
「「「「(・・・・・・何故にコミケ????)」」」」←勇者達
「(・・・・・・コミケって何だろう・・・・・・?)」←Aチルノ
「これにて、模擬戦は終了する。おい、そこの機械人形、我をパソコンのある部屋へと案内しろ!全速前進ダ!!」
そう言い捨てて、霊牙は機械人形と共に奥の向かいへと去って行った。
「くっ・・・・・・偉そうにしおって・・・・・・!!」
悔しげに呻くザリクはタオル等を持って来た亜魅を押しのけ、私室へと戻る。
「・・・・・・と言う事は総帥?私の給料は?」
「賭けの通り、わしの勝ちじゃからもう少し待てい♪(本当はすっかり忘れておったが)」
「とほほ~・・・・・・。」
給料の賭け(本当はキリュウの言い逃れ)に負けた美優は頭を項垂れ、亜魅を無視して私室へ。
「ちぇ、つまんないな~。あの黒巫女、生意気~。」
つまんなそうにスィガは亜魅の周りをグルグルと3周し、何事もなかったかの様に私室へ。
「・・・・・・・・・・・・。」
「あ、あの・・・・・・・・・お怪我は・・・・・・?」
「あ、いや、いい。大丈夫だ・・・・・・ありがとう。」
そうレグリンは亜魅の言葉に丁寧に断り、私室へ。
残るのはAチルノ、キリュウ、亜魅の3名になっていた。
「・・・・・・何だか、大変な事になったね・・・・・・。」
「そ、そうですね・・・・・・。」
「じゃが、これはいい戦力になりそうじゃの~。まさに掘り出し物の戦力じゃな♪」
「(おかしい・・・・・・おかし過ぎる・・・・・・。いつ、機械人形が出てもおかしくない状況なのに、一向に現れない・・・・・・?)」
数時間も歩いているのに何も現れない状況に妖夢は不審に思った。
「(確かに大神・天照殿の言う通りでは、ここは勇者達の拠点の筈・・・・・・だとしたら防衛の機械人形も出る筈。)」
暫く、そう考えていると妖夢はふと、変わったものを見つける。それは・・・・・・
「鴉・・・・・・?何故、こんな所に・・・・・・む?」
そう不審に見つめていると鴉は一声挙げて奥へと飛んで行ってはチョコンと遠くの場所へ降りて妖夢を見つめる。
「案内してくれるのか・・・・・・?罠かもしれないが・・・・・・?」
不審に思いつつも鴉に付いて行く妖夢。果たして、その先には吉が出るか、凶が出るか・・・・・・?
「(ここは一体・・・・・・む?何だか良い匂いが・・・・・・?)」
そして匂いを元に辿り着いた先は・・・・・・
「いらっしゃ~い♪」
辿り着いた先が台所らしき場所であり、エプロン姿で何かを揚げている勇者だった。
「・・・・・・・・・・・・は?」
現在の状況を目の当たりにして妖夢は正直、目を疑った。何せ、目の前にいる勇者らしき人物が料理しているのだ。無理もない。
目の前にいる勇者は銀髪と紫色の混じった髪形であり、狐と猫の尻尾を生やしており、目は少しトロンとしている様だ。
その何処かで見たような特徴を見て、妖夢は本能的に察知した。この者は敵である勇者である・・・と。
「貴方は一体・・・・・・?」
「あらあら~?そんな所で立ちっぱなしも何ですから、ささ、どうぞ。」
「あ、これはどうも・・・・・・って!」
勇者に勧められて妖夢はとっさに座ろうとするが、すぐに警戒する。もしかしたら罠では・・・・・・?
「あらあら、別に警戒しなくても~?」
「警戒しますよ・・・・・・(何だ、この感じ・・・・・・あの勇者に対して敬語を使うのに躊躇いがなかったが・・・・・・?)」
そう不思議がる妖夢に勇者はフフッと微笑むと何かを差し出す。それは鳥の足を揚げたものだった。
「・・・・・・・・・・・・何ですかこれ?」
「フライドチキンよ~たくさん揚げているから遠慮なくドンドン食べてね~♪」
「はぁ、それはどうも・・・・・・ってそうじゃありません!貴方は一体・・・・・・!?」
「私?私は勇者8号で、冥府勇者の四由美(よゆみ)よ。宜しくね~♪」
成程・・・・・・勇者8号・・・・・・四由美の名を聞いて妖夢は確信した。彼女は幽々子様達のクローンだという事。
「(確かに、幽々子様と同じ雰囲気だな・・・・・・しかし何故、敵である私に食べ物を?)」
フライドチキンを少し食べながら妖夢は考えた。毒は入っていない模様だが、正直うまい。
「・・・・・・貴方は一体、何を考えているんです・・・・・・私がここに来たのを知っているんでしょう?」
「そうね~・・・・・・貴方は幻想郷の人(半人半霊)で、私達の計画を阻止する為にここに来たのでしょ?」
「でしたら・・・・・・!」
妖夢はとっさに立ち上がるが、突然、口にさっきのフライドチキンを放りこまれる。
「モガモガ・・・・・・!」
「まぁまぁ、落ち着いて~。そうね・・・・・・貴方達にとっては私達の主であるZや私達の総帥のキリュウちゃんは許せない存在でしょ?けど、私はそんな2人を感謝してるわよ。だって、あの2人のおかげで私達が生まれたもの♪」
「モガ・・・・・・(ゴクン)しかし、北方勇者帝国のやっている事は・・・・・・!」
「確かに、他の勇者達のやっている事はいけないわね~。だって、外の世界の人達を酷い目に合わせるなんていけない事だと思うけど、私みたいなのは例外みたいなの。中には、自分の生い立ちについて悩んでいる娘もいるし・・・・・・。」
「・・・・・・。」
四由美の言葉に妖夢は絶句した。彼女は明らかに他の勇者と違うらしい。だったら・・・・・・
「四由美さん、少しお願いがあるのですが・・・・・・。」
「あら、何かしら?フライドチキンならいっぱいあるわよ♪」
「そうではなくて、貴方も良心があると言うなら・・・・・・キリュウの・・・・・・貴方達の本部を教えてくれますか・・・・・・?」
「・・・・・・そうね・・・・・・。」
妖夢の言葉に四由美は分かっていたような表情で考えたが、やがてパッと顔を上げ、こう答える。
「だったら、私に勝ったら教えてあげるわよ♪あっ、今じゃなくてもいいからジャンジャン食べてね♪」
「なっ!?何故!?」
「妖夢ちゃん、私だってキリュウちゃんが好きであんな事をやっているとは思えないの・・・・・・。きっと、あの子は一人ぼっちで苦しんでいると思う。正直、その苦しみを解放させたい・・・・・・けど、自分の仲間を売るなんて真似は絶対にできないの・・・・・・。」
悲しそうに妖夢を見る四由美の表情からするとあくまで本気の様だった。
「どうしてもやるというのですね?」
「えぇ・・・・・・その代わりに貴方が勝ったら、ちゃんと教えてあげるから・・・・・・ね?」
そう答える四由美に妖夢はキッと四由美にこう言う。
「分かりました・・・・・・すぐに始めましょう・・・・・・。」
一方、T-Jの魔の手によって命を落とした衣玖達は謎の少女の案内によって彼女の家に着いたのだが・・・・・・。
「家というより・・・・・・。」
「屋敷そのものね・・・・・・。」
そう、少女の家はレミリア以上に大きい屋敷だったのだ。それもどこか古臭い感じの。
「な、ななな・・・・・・何という事でしょう・・・・・・!」
「お、お姉さま落ち着いて!?」
後ろではレミリアがいかにも泡を吹きそうな表情でショックを受けているが、無理もない。それ程に大きいのだ。
「ここだよ。ここが私のお家なの♪」
「家って・・・・・・貴方の他に誰かいないのですか?」
「ううん、お家は広いけど、私1人で住んでいるんだよ?」
「1人・・・・・・でしたら、ここで偉い方はいらっしゃいませんか?」
「偉い人~?う~ん?」
映姫の言葉に少女は首を傾げるが、やがて横に振る。
「いないよ。最初はいた気がするけど、気が付いたら皆いなくなったの・・・・・・。」
「皆、いなくなった?その時に何か気になる事はないのかい?」
「分かんない・・・・・・でも、今はお姉ちゃん達が来たから、きっと上手くいくと思う。」
そう言って、少女は「入って、入って♪」と入口へと消え、衣玖達も付いて行く。
そんな中、神奈子とさとりの2人が残って話し合う。
「さとり、どうだ?あの子の・・・・・・。」
「彼女の心の中を読もうとしましたが・・・・・・やはり、無理ですね。」
「するとまさかと思うが、あの子も・・・・・・?」
「R島の住人達と同じ・・・・・・と言いましょう。しかし・・・・・・。」
「しかし?」
神奈子の問いにさとりはこう答える。
「彼女の周りにとてつもない雰囲気が纏っているのです・・・・・・まるで、神にも勝る存在かの様に・・・・・・。」
そして外の広場に出た妖夢と四由美の2人は1対1の決闘をする事になった。
主である幽々子様や幻想郷一最強と言われている紫様のクローンである四由美に対し、こちらは剣一本の妖夢。
しかし、ここで諦めたら他の地域で戦っている皆に申し訳がない。自分も死ぬ気で頑張らなければならない。
一方の四由美は由良先の刀の二刀流でゆるやか~に構えている(多分?)緊張感のない方だと思う。
「準備はいいかしら~?」
「いつでも・・・・・・。」
「では・・・・・・始めましょうか♪」
そう四由美が言うと同時に妖夢は素早く跳躍し、四由美の頭部に向かって剣を振り下ろす!
「あ、あら~?」
しかし、一瞬驚いたものの、四由美は左の刀で受け止め、右の刀で妖夢に攻撃する。それに対しかわす妖夢。
「う~ん、先手必勝かしら~びっくりしたわ~。」
「くっ・・・・・・!」
「じゃ、私はこうして・・・・・・どうかしら~?」
そう言って、四由美は妖夢の周りに弾幕を張る。何とかしてかわす妖夢。
「(この弾幕・・・・・・まるで私を狙っておらず、わざと避けさせる様な・・・・・・まさか!?何らかの時間を稼ぐ為の!?)」
その弾幕の意味に勘づき、妖夢は全てのスペルカードを発動して弾幕を消滅させる。しかし・・・・・・
「あらあら~?凄いわね~でも、どうやら何とかなりそうね~。」
そう言った四由美は見た事もないスペルを持って妖夢の背後に回って行った。恐らく、紫様のスキマで瞬間移動したのだろう。
そのオリジナルの能力を惜しげもなく使う四由美に妖夢はただ、圧倒されるしかできなかった。
「御免ね、妖夢ちゃん・・・・・・。」
そう寂しそうに言いながらも四由美は至近距離でのスペルを発動する。
「私にも守りたい物やこの世の中を変えたい事を手放せないの・・・霊符『陰陽百鬼界』。」
そのスペルが発動した瞬間、妖夢の周りに多数のスキマが現れ、そこから光が発せられた・・・・・・。
一方、こちらは幻想郷。Aチルノが解き放った封印の扉から禍々しい妖気が立ち上る。
その妖気が数か所へと集まり、やがて4つの人の形へと変わり、地面に降り立つ。
「・・・・・・遂に・・・・・・遂にうちらの封印が解かれたで―――――!!これでこの幻想郷はうちらとご主人たまのものや―――!!」
長い間、封印の扉の中にいたのか、体をストレッチしつつ、白い妖気を纏った小柄な人影(仮に白妖気と呼ぼう)が関西弁で吠えた。それを呆れつつ、赤い妖気を纏った長髪の人影(赤妖気)が蔑むような口調でぼやく。
「全く、元気が取り柄ですのね貴方は・・・・・・そういう思想だから足を滑らして闇冥界入りしたのではありません?」
「ちょちょちょ、何言うてんやあんたは!うちは過去に拘らない主義やからな。あ、そや!記念撮影しとこか?記念撮影!」
はしゃぎまくりの白い妖気の者に今度は青い妖気を纏い、剣を持った人影(青妖気)が考える様に言う。
「こうして、我々が封印から解かれたのは確かだが、何故、我らの封印が解かれたのかが気になる・・・・・・。」
「あ・・・・・・た、確かにせやなぁ・・・・・・誰やろ?なぁ□□は何か分かったんか?」
白妖気が見た先は封印の扉を隈なく調べている黒い妖気を纏い、右腕が義手らしい人影(黒妖気)は無表情に囁く。
「調査結果・・・・・・封印の扉を解いたのは98.4%の確率でキリュウと判定・・・・・・。」
「「「キリュウ!!??」」」
キリュウの名を聞いて、他の人影達が驚いた様に言う。感じ方は違うが皆、キリュウに対しては良い印象を持っていないらしい。
「まさか・・・・・・キリュウが・・・・・・自分の欲望の為にわたくし達を封印した人物が何故・・・・・・?」
「キリュウの奴め―――!せっかく殺しのテクニックを教えてあげたうちらを封印するなんて、とんだ恩知らずやー!」
「大方、何かの為に再び我らを利用しようと企んでいるだろう・・・だが、今度はそうはいくまい・・・・・・!」
赤妖気は髪を弄りながら苛立ちを隠さず、白妖気は暴れまくり、青妖気はキリュウに対する憎悪を露わにする。
そんな中、黒妖気は何かを感じたのかハッと顔を上げる。目には僅かながら驚きが感じられる。
「この先、北1000メートルに空間の乱れあり・・・・・・そこからマスターの妖気を感知・・・・・・!」
「何、主が!?」
「何やて、ご主人たまが!?」
「な、御姉様が!?」
その言葉に他の妖気達も驚く。マスター、主、ご主人たま、御姉様・・・その名で呼ばれる人物が復活したなんて・・・・・・!?
「ちょ、ちょっと待ってぇなぁ!確か、ご主人たまはスキマ妖怪に封印されたんじゃあらへん!?」
「だが、□□のセンサーは高性能だ、××。そうか、我が主がとうとう・・・・・・。これで我らが生きていく活路が見いだせた・・・。」
「封印された時、あの忌々しい魔界神をどうしようかと思っておりましたが、御姉様が復活しておいでなら良かったですわ・・・。」
「愛しのマスター・・・・・・・・・・・・。」
黒妖気の呟きに突如、白妖気が口を挟む。
「ちょっと待てぇい!誰が□□(受け)×ご主人たま(攻め)を認めても良いと言った!?ご主人たまはうちのものや!」
「・・・・・・××は所詮、ペット・・・・・・(ボソッ)」
「へぇ、さよでっか♪・・・・・・って納得できんやろがぁ、ゴルァ!ご主人たまはうちの事が大好きなんや!」
「何を言いますの!?御姉様とイチャイチャLOVEでヘブン状態ができるのはこの華麗なる△△ですわ!」
「何勝手に妹設定しとんねん阿呆!ダッシュ格闘しながら帰りなはれ!」
「腐女子の冥界少女はステップ格闘しながらお帰り下さい・・・・・・。」
「き~!何ですって―――!!」
「お、落ち着け皆!今は仲間割れしている時ではない!(本当は自分が主の事を日夜想って興奮しながら寝ているが・・・・・・)」
どちらが“あの人”のお気に入りかでもう少しで揉み合いになろうとしている所を青妖気が心中、毒づきながら止める。
「とにかく我らと主が復活したのなら、主と合流するのが先決だ。話は主から聞いておく事に。異存はないな?」
青妖気の言葉に異存を述べる妖気達はいなかった。そして微かな妖気を頼りに移動しがらこう思っていた。
「(我が破滅の人生から救い出した、愛すべき主・・・・・・その主の頼りになる存在になるのがまさに我が目標・・・・・・!)」
「(うち、拾ってくれたあの日からご主人たまと約束したんや・・・・・・ご主人たまの次に最も強くなる約束を・・・・・・!)」
「(マスターの計画を叶えさせる為に敵と戦い、排除する・・・・・・それが私の戦闘マシーンとしての誇り故に・・・・・・!)」
「(私の孤独を癒してくれた御姉様と幸せになる・・・・・・この夢さえあればわたくし、他なんていりませんわ・・・・・・!)」
目標、約束、誇り、夢。それぞれの思想を持ちながら、4つの妖気は封印の扉を去っていった・・・・・・。
続く
次回:「勇者8号、四由美のスペルに瀕死の重傷を負う妖夢。降伏を願う四由美に対し、最後まで戦おうとする妖夢。そんな彼女の覚悟を感じたのか、妖夢の前に奪われたある物が帰って来た!一方で依姫とリリーB達の前に謎の人物達が!?次回、『桜散る時』」
第13話「一人ぼっちのデュエット」
イースター島。モアイが多く並んでいるこの島は今では北方勇者帝国の拠点の一つとなった。
白玉楼の半人半霊の庭師、魂魄妖夢は只1人、そこにいた。
最も、クジ運が悪かったのかたった1人となっていたが今となってはしょうがない。
「ここが敵の拠点の一つ・・・・・・他の皆さんは大丈夫でしょうか・・・・・・?」
彼女は他のメンバーを心配しつつも周りを見る。ここは敵地の中。いつ敵が出てきてもおかしくはない状態である。
今の彼女の装備は剣1本。1年前、もう片方はキリュウに奪われたのだ。それを取り返さなくてはならない。
「それにしても外の世界の人間はどうしてこんな大きな人の顔を作ったのだろう?不思議だな・・・・・・。」
そう言って、妖夢はモアイ像を不思議そうに見る。そして紫からもらった『世界の不思議事典』のページをめくる。
「何々・・・・・・モアイは“ストーンヘンジ”や“ピラミッド”、“万里の長城”、“死海”、“ナスカの地上絵”と同じく世界の謎に包まれており、異星人が作った説があると言われる・・・・・・って観光している場合か!!おっとと・・・・・・。」
『世界の不思議事典』の内容に感心したかと思いきや、1人ツッコミをして本を地面に叩き付け、はっとなって紫からもらった本を大事そうに拾う妖夢。他人から見ると色々と忙しい人(半人?)だと思われるだろう。
「とは言え、ここは慎重に行かなくては・・・・・・ここは勇者の仕切る場所だからな・・・・・・。」
そう言い、妖夢は辺りを警戒しながら先へと進む。だが、その様子を1羽の鴉が見たという事は全く知らなかった。
霊夢とハクレイの修行弾幕はまだ続いていた。しかし、最初の頃とは幾段と違った様子を見せていた。
前回は霊夢の弾幕はハクレイに当たらず、霊夢自身も焦っている様子を隠せなかった。
しかし、今は彼女の弾幕は相変わらずなものの、ギリギリでハクレイに当たりそうになり、霊夢自身も落ち着いていた。
そんな彼女の変化をハクレイも楽しそうに霊夢に言う。
「へ~結構、やれるじゃん♪」
「まぁね。まぁ、当たらないのは相変わらずだけど・・・・・・。」
「それでいいのよ。さぁて・・・・・・こちらも行きますか!」
そういった直後、今度はハクレイの弾幕が霊夢に襲い掛かる!だが、霊夢は何とかかわせる様になっていた。
「・・・・・・霊夢・・・・・・それが、博麗の巫女の義務なんだよ・・・・・・。」
そんなハクレイの表情は何気に寂そうだが、今の霊夢に気づく由はなかった。
一方、北方勇者帝国の本部でも模擬戦の弾幕を行っていた。闘技場(?)の中央にいるのは謎の巫女、博麗霊牙。
対するのはザリク、美優、スィガ、レグリン。いずれも幻想郷の者に負けたものの、実力のある勇者だ。
何せ、たった1年で1対1や1対多数の戦いにおいても無類の強さを誇っているのだ。その実力はまさにプロである。
じりじりと近づく4人の勇者に対し、霊牙は腕を組んだまま、立ち構えている。
「?何故、動こうとしないのです?」
「我の運動はまだだ。貴様等のターンに回してやる。」
「へ~?結構、自信満々だね~?」
「ふん、その過信が自滅をも招くかもしれないぞ・・・・・・我々は皆、プロの実力を持つ者だからな。」
「だが、油断はできない・・・・・・油断は禁物だ・・・・・・。」
緊迫した様子の中、こちらも同様の雰囲気を放っている観客席にはキリュウ、Aチルノ、亜魅だった。
「さて、見せてもらおうかの・・・・・・闇の巫女の能力とやらを・・・・・・。」
「・・・・・・(ゴクリ)」
Aチルノがゴクリと唾を飲み込むや否や、4人の勇者はそれぞれの戦闘態勢を取る為、散らばる。
「先手必勝!我らの実力を侮った貴様の愚かさを悔やむがいい!」
先に先手を打ったのはザリクだった。パワータイプであるが故に一気に弾幕を霊牙に放つ。このままでは完全に当たる・・・が
「ふぅむ・・・・・・なかなかの弾幕だが・・・・・・片腹痛いわ!!」
そう言って、霊牙が手を払うと何とザリクの弾幕が消えたのだ!この光景に流石のザリクも驚愕する。
「な、何!?私の弾幕が・・・・・・!?」
「はっはー☆」
「貴様・・・・・・何をした!?」
「ふぅむ、我は自分の能力を自慢する様な輩ではないからな・・・・・・一つだけ言える事は既に勝利は我の手中に収まった事だけだ。」
「何・・・・・・?どういう事だ!?」
「まぁ、待て。今に分かる。」
霊牙の挑発に対し、4人の勇者は一斉に得意のスペルを発動する。
「真・『地獄の太陽』・10連弾!!」
「恐符・・・・・・『ダークハロウィン』!!」
「鬼符・・・・・・『鬼神の嘲笑』!!」
「最終奥儀、『ジャスティスムーンバスター(ノーマルver.)』!成敗!!」
それぞれの放たれるスペルが霊牙に襲い掛かり、大爆発する。だが・・・・・・
「ふぅむ・・・・・・その程度か・・・・・・?」
「「「!!!???」」」
「ななななぁにこれぇ!?」
4人が改めて見ると煙の中から無傷の霊牙が。その表情は不敵に笑っている。
「教えてやろう・・・・・・貴様らと我の徹底的な差と言うやつを・・・・・・!」
そう言って、霊牙はスペルカードを取り出し、発動する。その瞬間、周りの雰囲気が張り詰める様に。
「スペル発動!喰らえぇ!邪気の、邪気の、じゃじゃじゃ邪気の・・・・・・ダークスプリーム!!!」
少し、詰まっていたが霊牙が叫ぶや否や、極太のレーザーの様な4人に襲い掛かり・・・・・・
ピチューン!ピチューン!ピチュチューン!!
それぞれ、ヒットしてしまった。
(略)
「えぇいっ!何故だ!?何故、奴に攻撃が効かない!」
模擬戦が終わり、ザリクは優雅にスポーツ飲料を飲んでいる霊牙に憎悪の視線を送る。
「ほぉ?貴様はまだ、分からぬようだな?」
「何?」
「貴様らは、既に頂点に立っていると思っているだろうが、そうではない。世界は広い。その世界の中に我の様な強き者がいるものだ・・・・・・貴様らの戦いのロードはまだ、ほんの少しに過ぎん。たった1年で全ての戦いを知り尽くしたなどとほざくとは甘いな・・・・・・。強さの真の意味が理解できないならば、貴様らなど秋葉原のコミケの長蛇の列の中にでも埋まっていろ!」
「「「「(・・・・・・何故にコミケ????)」」」」←勇者達
「(・・・・・・コミケって何だろう・・・・・・?)」←Aチルノ
「これにて、模擬戦は終了する。おい、そこの機械人形、我をパソコンのある部屋へと案内しろ!全速前進ダ!!」
そう言い捨てて、霊牙は機械人形と共に奥の向かいへと去って行った。
「くっ・・・・・・偉そうにしおって・・・・・・!!」
悔しげに呻くザリクはタオル等を持って来た亜魅を押しのけ、私室へと戻る。
「・・・・・・と言う事は総帥?私の給料は?」
「賭けの通り、わしの勝ちじゃからもう少し待てい♪(本当はすっかり忘れておったが)」
「とほほ~・・・・・・。」
給料の賭け(本当はキリュウの言い逃れ)に負けた美優は頭を項垂れ、亜魅を無視して私室へ。
「ちぇ、つまんないな~。あの黒巫女、生意気~。」
つまんなそうにスィガは亜魅の周りをグルグルと3周し、何事もなかったかの様に私室へ。
「・・・・・・・・・・・・。」
「あ、あの・・・・・・・・・お怪我は・・・・・・?」
「あ、いや、いい。大丈夫だ・・・・・・ありがとう。」
そうレグリンは亜魅の言葉に丁寧に断り、私室へ。
残るのはAチルノ、キリュウ、亜魅の3名になっていた。
「・・・・・・何だか、大変な事になったね・・・・・・。」
「そ、そうですね・・・・・・。」
「じゃが、これはいい戦力になりそうじゃの~。まさに掘り出し物の戦力じゃな♪」
「(おかしい・・・・・・おかし過ぎる・・・・・・。いつ、機械人形が出てもおかしくない状況なのに、一向に現れない・・・・・・?)」
数時間も歩いているのに何も現れない状況に妖夢は不審に思った。
「(確かに大神・天照殿の言う通りでは、ここは勇者達の拠点の筈・・・・・・だとしたら防衛の機械人形も出る筈。)」
暫く、そう考えていると妖夢はふと、変わったものを見つける。それは・・・・・・
「鴉・・・・・・?何故、こんな所に・・・・・・む?」
そう不審に見つめていると鴉は一声挙げて奥へと飛んで行ってはチョコンと遠くの場所へ降りて妖夢を見つめる。
「案内してくれるのか・・・・・・?罠かもしれないが・・・・・・?」
不審に思いつつも鴉に付いて行く妖夢。果たして、その先には吉が出るか、凶が出るか・・・・・・?
「(ここは一体・・・・・・む?何だか良い匂いが・・・・・・?)」
そして匂いを元に辿り着いた先は・・・・・・
「いらっしゃ~い♪」
辿り着いた先が台所らしき場所であり、エプロン姿で何かを揚げている勇者だった。
「・・・・・・・・・・・・は?」
現在の状況を目の当たりにして妖夢は正直、目を疑った。何せ、目の前にいる勇者らしき人物が料理しているのだ。無理もない。
目の前にいる勇者は銀髪と紫色の混じった髪形であり、狐と猫の尻尾を生やしており、目は少しトロンとしている様だ。
その何処かで見たような特徴を見て、妖夢は本能的に察知した。この者は敵である勇者である・・・と。
「貴方は一体・・・・・・?」
「あらあら~?そんな所で立ちっぱなしも何ですから、ささ、どうぞ。」
「あ、これはどうも・・・・・・って!」
勇者に勧められて妖夢はとっさに座ろうとするが、すぐに警戒する。もしかしたら罠では・・・・・・?
「あらあら、別に警戒しなくても~?」
「警戒しますよ・・・・・・(何だ、この感じ・・・・・・あの勇者に対して敬語を使うのに躊躇いがなかったが・・・・・・?)」
そう不思議がる妖夢に勇者はフフッと微笑むと何かを差し出す。それは鳥の足を揚げたものだった。
「・・・・・・・・・・・・何ですかこれ?」
「フライドチキンよ~たくさん揚げているから遠慮なくドンドン食べてね~♪」
「はぁ、それはどうも・・・・・・ってそうじゃありません!貴方は一体・・・・・・!?」
「私?私は勇者8号で、冥府勇者の四由美(よゆみ)よ。宜しくね~♪」
成程・・・・・・勇者8号・・・・・・四由美の名を聞いて妖夢は確信した。彼女は幽々子様達のクローンだという事。
「(確かに、幽々子様と同じ雰囲気だな・・・・・・しかし何故、敵である私に食べ物を?)」
フライドチキンを少し食べながら妖夢は考えた。毒は入っていない模様だが、正直うまい。
「・・・・・・貴方は一体、何を考えているんです・・・・・・私がここに来たのを知っているんでしょう?」
「そうね~・・・・・・貴方は幻想郷の人(半人半霊)で、私達の計画を阻止する為にここに来たのでしょ?」
「でしたら・・・・・・!」
妖夢はとっさに立ち上がるが、突然、口にさっきのフライドチキンを放りこまれる。
「モガモガ・・・・・・!」
「まぁまぁ、落ち着いて~。そうね・・・・・・貴方達にとっては私達の主であるZや私達の総帥のキリュウちゃんは許せない存在でしょ?けど、私はそんな2人を感謝してるわよ。だって、あの2人のおかげで私達が生まれたもの♪」
「モガ・・・・・・(ゴクン)しかし、北方勇者帝国のやっている事は・・・・・・!」
「確かに、他の勇者達のやっている事はいけないわね~。だって、外の世界の人達を酷い目に合わせるなんていけない事だと思うけど、私みたいなのは例外みたいなの。中には、自分の生い立ちについて悩んでいる娘もいるし・・・・・・。」
「・・・・・・。」
四由美の言葉に妖夢は絶句した。彼女は明らかに他の勇者と違うらしい。だったら・・・・・・
「四由美さん、少しお願いがあるのですが・・・・・・。」
「あら、何かしら?フライドチキンならいっぱいあるわよ♪」
「そうではなくて、貴方も良心があると言うなら・・・・・・キリュウの・・・・・・貴方達の本部を教えてくれますか・・・・・・?」
「・・・・・・そうね・・・・・・。」
妖夢の言葉に四由美は分かっていたような表情で考えたが、やがてパッと顔を上げ、こう答える。
「だったら、私に勝ったら教えてあげるわよ♪あっ、今じゃなくてもいいからジャンジャン食べてね♪」
「なっ!?何故!?」
「妖夢ちゃん、私だってキリュウちゃんが好きであんな事をやっているとは思えないの・・・・・・。きっと、あの子は一人ぼっちで苦しんでいると思う。正直、その苦しみを解放させたい・・・・・・けど、自分の仲間を売るなんて真似は絶対にできないの・・・・・・。」
悲しそうに妖夢を見る四由美の表情からするとあくまで本気の様だった。
「どうしてもやるというのですね?」
「えぇ・・・・・・その代わりに貴方が勝ったら、ちゃんと教えてあげるから・・・・・・ね?」
そう答える四由美に妖夢はキッと四由美にこう言う。
「分かりました・・・・・・すぐに始めましょう・・・・・・。」
一方、T-Jの魔の手によって命を落とした衣玖達は謎の少女の案内によって彼女の家に着いたのだが・・・・・・。
「家というより・・・・・・。」
「屋敷そのものね・・・・・・。」
そう、少女の家はレミリア以上に大きい屋敷だったのだ。それもどこか古臭い感じの。
「な、ななな・・・・・・何という事でしょう・・・・・・!」
「お、お姉さま落ち着いて!?」
後ろではレミリアがいかにも泡を吹きそうな表情でショックを受けているが、無理もない。それ程に大きいのだ。
「ここだよ。ここが私のお家なの♪」
「家って・・・・・・貴方の他に誰かいないのですか?」
「ううん、お家は広いけど、私1人で住んでいるんだよ?」
「1人・・・・・・でしたら、ここで偉い方はいらっしゃいませんか?」
「偉い人~?う~ん?」
映姫の言葉に少女は首を傾げるが、やがて横に振る。
「いないよ。最初はいた気がするけど、気が付いたら皆いなくなったの・・・・・・。」
「皆、いなくなった?その時に何か気になる事はないのかい?」
「分かんない・・・・・・でも、今はお姉ちゃん達が来たから、きっと上手くいくと思う。」
そう言って、少女は「入って、入って♪」と入口へと消え、衣玖達も付いて行く。
そんな中、神奈子とさとりの2人が残って話し合う。
「さとり、どうだ?あの子の・・・・・・。」
「彼女の心の中を読もうとしましたが・・・・・・やはり、無理ですね。」
「するとまさかと思うが、あの子も・・・・・・?」
「R島の住人達と同じ・・・・・・と言いましょう。しかし・・・・・・。」
「しかし?」
神奈子の問いにさとりはこう答える。
「彼女の周りにとてつもない雰囲気が纏っているのです・・・・・・まるで、神にも勝る存在かの様に・・・・・・。」
そして外の広場に出た妖夢と四由美の2人は1対1の決闘をする事になった。
主である幽々子様や幻想郷一最強と言われている紫様のクローンである四由美に対し、こちらは剣一本の妖夢。
しかし、ここで諦めたら他の地域で戦っている皆に申し訳がない。自分も死ぬ気で頑張らなければならない。
一方の四由美は由良先の刀の二刀流でゆるやか~に構えている(多分?)緊張感のない方だと思う。
「準備はいいかしら~?」
「いつでも・・・・・・。」
「では・・・・・・始めましょうか♪」
そう四由美が言うと同時に妖夢は素早く跳躍し、四由美の頭部に向かって剣を振り下ろす!
「あ、あら~?」
しかし、一瞬驚いたものの、四由美は左の刀で受け止め、右の刀で妖夢に攻撃する。それに対しかわす妖夢。
「う~ん、先手必勝かしら~びっくりしたわ~。」
「くっ・・・・・・!」
「じゃ、私はこうして・・・・・・どうかしら~?」
そう言って、四由美は妖夢の周りに弾幕を張る。何とかしてかわす妖夢。
「(この弾幕・・・・・・まるで私を狙っておらず、わざと避けさせる様な・・・・・・まさか!?何らかの時間を稼ぐ為の!?)」
その弾幕の意味に勘づき、妖夢は全てのスペルカードを発動して弾幕を消滅させる。しかし・・・・・・
「あらあら~?凄いわね~でも、どうやら何とかなりそうね~。」
そう言った四由美は見た事もないスペルを持って妖夢の背後に回って行った。恐らく、紫様のスキマで瞬間移動したのだろう。
そのオリジナルの能力を惜しげもなく使う四由美に妖夢はただ、圧倒されるしかできなかった。
「御免ね、妖夢ちゃん・・・・・・。」
そう寂しそうに言いながらも四由美は至近距離でのスペルを発動する。
「私にも守りたい物やこの世の中を変えたい事を手放せないの・・・霊符『陰陽百鬼界』。」
そのスペルが発動した瞬間、妖夢の周りに多数のスキマが現れ、そこから光が発せられた・・・・・・。
一方、こちらは幻想郷。Aチルノが解き放った封印の扉から禍々しい妖気が立ち上る。
その妖気が数か所へと集まり、やがて4つの人の形へと変わり、地面に降り立つ。
「・・・・・・遂に・・・・・・遂にうちらの封印が解かれたで―――――!!これでこの幻想郷はうちらとご主人たまのものや―――!!」
長い間、封印の扉の中にいたのか、体をストレッチしつつ、白い妖気を纏った小柄な人影(仮に白妖気と呼ぼう)が関西弁で吠えた。それを呆れつつ、赤い妖気を纏った長髪の人影(赤妖気)が蔑むような口調でぼやく。
「全く、元気が取り柄ですのね貴方は・・・・・・そういう思想だから足を滑らして闇冥界入りしたのではありません?」
「ちょちょちょ、何言うてんやあんたは!うちは過去に拘らない主義やからな。あ、そや!記念撮影しとこか?記念撮影!」
はしゃぎまくりの白い妖気の者に今度は青い妖気を纏い、剣を持った人影(青妖気)が考える様に言う。
「こうして、我々が封印から解かれたのは確かだが、何故、我らの封印が解かれたのかが気になる・・・・・・。」
「あ・・・・・・た、確かにせやなぁ・・・・・・誰やろ?なぁ□□は何か分かったんか?」
白妖気が見た先は封印の扉を隈なく調べている黒い妖気を纏い、右腕が義手らしい人影(黒妖気)は無表情に囁く。
「調査結果・・・・・・封印の扉を解いたのは98.4%の確率でキリュウと判定・・・・・・。」
「「「キリュウ!!??」」」
キリュウの名を聞いて、他の人影達が驚いた様に言う。感じ方は違うが皆、キリュウに対しては良い印象を持っていないらしい。
「まさか・・・・・・キリュウが・・・・・・自分の欲望の為にわたくし達を封印した人物が何故・・・・・・?」
「キリュウの奴め―――!せっかく殺しのテクニックを教えてあげたうちらを封印するなんて、とんだ恩知らずやー!」
「大方、何かの為に再び我らを利用しようと企んでいるだろう・・・だが、今度はそうはいくまい・・・・・・!」
赤妖気は髪を弄りながら苛立ちを隠さず、白妖気は暴れまくり、青妖気はキリュウに対する憎悪を露わにする。
そんな中、黒妖気は何かを感じたのかハッと顔を上げる。目には僅かながら驚きが感じられる。
「この先、北1000メートルに空間の乱れあり・・・・・・そこからマスターの妖気を感知・・・・・・!」
「何、主が!?」
「何やて、ご主人たまが!?」
「な、御姉様が!?」
その言葉に他の妖気達も驚く。マスター、主、ご主人たま、御姉様・・・その名で呼ばれる人物が復活したなんて・・・・・・!?
「ちょ、ちょっと待ってぇなぁ!確か、ご主人たまはスキマ妖怪に封印されたんじゃあらへん!?」
「だが、□□のセンサーは高性能だ、××。そうか、我が主がとうとう・・・・・・。これで我らが生きていく活路が見いだせた・・・。」
「封印された時、あの忌々しい魔界神をどうしようかと思っておりましたが、御姉様が復活しておいでなら良かったですわ・・・。」
「愛しのマスター・・・・・・・・・・・・。」
黒妖気の呟きに突如、白妖気が口を挟む。
「ちょっと待てぇい!誰が□□(受け)×ご主人たま(攻め)を認めても良いと言った!?ご主人たまはうちのものや!」
「・・・・・・××は所詮、ペット・・・・・・(ボソッ)」
「へぇ、さよでっか♪・・・・・・って納得できんやろがぁ、ゴルァ!ご主人たまはうちの事が大好きなんや!」
「何を言いますの!?御姉様とイチャイチャLOVEでヘブン状態ができるのはこの華麗なる△△ですわ!」
「何勝手に妹設定しとんねん阿呆!ダッシュ格闘しながら帰りなはれ!」
「腐女子の冥界少女はステップ格闘しながらお帰り下さい・・・・・・。」
「き~!何ですって―――!!」
「お、落ち着け皆!今は仲間割れしている時ではない!(本当は自分が主の事を日夜想って興奮しながら寝ているが・・・・・・)」
どちらが“あの人”のお気に入りかでもう少しで揉み合いになろうとしている所を青妖気が心中、毒づきながら止める。
「とにかく我らと主が復活したのなら、主と合流するのが先決だ。話は主から聞いておく事に。異存はないな?」
青妖気の言葉に異存を述べる妖気達はいなかった。そして微かな妖気を頼りに移動しがらこう思っていた。
「(我が破滅の人生から救い出した、愛すべき主・・・・・・その主の頼りになる存在になるのがまさに我が目標・・・・・・!)」
「(うち、拾ってくれたあの日からご主人たまと約束したんや・・・・・・ご主人たまの次に最も強くなる約束を・・・・・・!)」
「(マスターの計画を叶えさせる為に敵と戦い、排除する・・・・・・それが私の戦闘マシーンとしての誇り故に・・・・・・!)」
「(私の孤独を癒してくれた御姉様と幸せになる・・・・・・この夢さえあればわたくし、他なんていりませんわ・・・・・・!)」
目標、約束、誇り、夢。それぞれの思想を持ちながら、4つの妖気は封印の扉を去っていった・・・・・・。
続く
次回:「勇者8号、四由美のスペルに瀕死の重傷を負う妖夢。降伏を願う四由美に対し、最後まで戦おうとする妖夢。そんな彼女の覚悟を感じたのか、妖夢の前に奪われたある物が帰って来た!一方で依姫とリリーB達の前に謎の人物達が!?次回、『桜散る時』」
できれば、一行改行して読みやすくお願いします
読まないけど頑張って続けて下さい