Coolier - 新生・東方創想話

冬季合祀大祭

2011/02/25 23:05:14
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《冬季合祀大祭》

 冬の寒風が身を削る。
 人里の一角で佇むその巫女は、どこか遠くを見つめながらぽつりとつぶやいた。
「こんな日は炬燵の中で丸まって、みかんを食べながらお茶をすするのが常套よね…」
 それが何故こんなことになってしまったのか。
 手に持つ紙束が風で煽られるのも構わず、巫女はその失敗の原点を思い返していた。

「私は少し固定観念に囚われすぎていたと思うんですよ」

――また始まった。
 ぴっと指を立て、真剣そのもののまなざしを向けるその巫女(本人いわく『風祝』は巫女と別物らしいが、彼女にはその違いがどうにもよくわからない)に対して、幻想郷の本家巫女が思ったのはそんなことだった。
 二人の巫女――東風谷早苗と博麗霊夢は、博麗神社の住居部分で二人きり、とりとめもないことを語りながら時間を過ごしていた。それは何も珍しいことではない。特に博麗神社の横に守矢神社の分社が出来てからは、その定期確認とやらを兼ねて早苗がよく霊夢のところに顔を出しに来るのだ。最初は追い返したりもしていたが今ではこの有様だった。
 霊夢は聞き返そうか少しだけ悩んだ後、無言で茶をすすった。聞かなかったことにするのが無難だと結論付けたからだ。
「人間の信仰があてに出来ないなら妖怪から信仰を、とやってきた幻想郷ですが。
 それは何も人間からの信仰を諦めることとイコールじゃないんです」
それに聞き返さなくても勝手に話しだすのはわかりきっている。
「ね、霊夢さんもそう思いますよね?」
 みかんを剥きながら無視を押し通すことも考えた霊夢だったが、ここで無視して無言の承諾扱いされても後々面倒なことになる。
「……何が言いたいの?」
 ぱっ、と早苗の顔が喜色に染まった。
「実はですね――」

 そして時は今に至る。
「なんだ、誰かと思えば博麗の巫女じゃないか」
 呼び止められ、かすかに眉をひそめて振り返る。
「あんたは…」
 見覚えがある。それは偽物の月が中天に輝き、明けぬ夜の細工を施した異変の頃。
 名を、上白沢慧音と言ったか。
「なに? また里に何かしようとしたら、今度は容赦しないわよ?」
「あの夜、先に細工を施したのはお前達の方だろう。私から争いの種を撒く気はないさ」
 それより、と、
「さっき向こうでお前とよく似た格好とすれ違ったぞ」
「早苗でしょう、東風谷早苗。山の巫女よ、ついでに厄介者」
「なるほど、あれが……何やら配り歩いていたようだったが」
「私も持ってるわよ。ほしいなら全部あげるわ、今なら送料も無料よ」
 慧音は霊夢の手から『それ』を一枚だけ抜き取った。小さく舌打ちしたが黙殺され、
「……何だ、これは?」
「それは私が聞きたい」
「なら私は誰に聞けばいいんだ」
「常識を捨てた巫女にでも聞いてよ」
「だから聞いてるだろう」
「……読んで字のごとくよ」
 これ以上は付き合いたくないとばかりに、霊夢は慧音に背を向けた。

 慧音が受け取った紙には、大きな見出しでこう書いてあった。

『博麗神社・守矢神社 冬季合祀大祭のお知らせ
 ――博麗の巫女 vs 守矢の風祝―― 冬の陣』


「冬季合祀大祭?」
「はい、つまりこの神社とうちの神社を合わせたお祭りです」
 聞いたことのない祭りだった。外の世界特有のものだろうか。
 ――霊夢が知らないのも無理はない。合祀とは祀られる2つ以上の祭神を束ねることを指す。これまで幻想郷に一つしかなかった神社の巫女である霊夢にわかるはずもない。
 そしてさらに霊夢は知る由もなかったが、そもそも合祀大祭なるものは存在しない。完全に早苗の思いつきだった。
「例大祭まではまだ時期がありますし、お祭りって夏のイメージが強いじゃないですか。だからこそ、そんな常識を打ち破る冬季大祭をここで開けば、多くの人たちが興味を持ってくれて、一気に信仰アップ! ……ね?」
 にこりと笑う早苗に、霊夢は思った――そんなにうまくいくわけがない、と。
 そしてそれは早苗もわかっているだろう。その程度のことで人々から信心が得られるのなら、そもそも彼女達が信仰を失って幻想郷に来ることもなかったはずなのだから。
 しかし霊夢はあえてそれを口にはしなかった。
 代わりに軽く苦笑し、
「とか適当にそれっぽい言葉を並べ立てて、またうちの神社を乗っ取ろうとしてるんじゃないの?」
 早苗の動きが止まった。
 何か考えるように視線を明後日に逸らし、しばし、
「……やだなぁ、そんな昔の話を持ち出さないでくださいよ」
「なら今の間は何よ!」
 早苗の頭をそばにあった大麻でぶっ叩いた。
「まったく…この前の怨霊異変といい、やっぱり守矢は信用できないわ」
「――信じてください」
 言って、早苗は満面の笑みを浮かべた。
「守矢を支える御柱は、決して信じる者を裏切ったりはしませんから」
 ――それも、どこか誇らしげに。

「で、信じた結果がこれ? 守矢の風祝さん」
「え? 今何か言いました?」
 里人に笑顔で手を振る早苗は、それは楽しそうだった。
 博麗神社の境内前で、二人は対峙していた。
 里で配った紙(早苗によるとビラと言うらしい)とそこに書かれた煽り文句に惹かれたのか、博麗神社には珍しく大勢の人が集まっていた。
 その煽り文句――博麗の巫女 vs 守矢の風祝――を果たすためにと、霊夢は半ば早苗に引き摺られる形で連れ出されたのだった。
 霊夢は無意味に人に囲まれるのが好きではなかった。
 それに引き換え、早苗はこの状況を楽しんでいるようだ。
 この人当たりの良さ――あるいはノリの良さ――は、あるいは見習うべきところなのかもしれない。
「非想天則を覚えていますか?」
「非想天則? …あぁ、あのデカいのね」
「ええ。あれを見て思ったんです――巨大ロボットに憧れるのは、幻想郷でも変わらないんだって」
「そういやあんたは嬉々として追いかけてったわよね」
「だってかっこいいじゃないですか」
 語尾にハートマークでもついていそうな声を上げる早苗に、霊夢は半眼で無言。
「幻想郷でも外の世界と変わらない価値観がある。それなら、楽しめるものも外の世界と変わらないものがあるんじゃないかなって」
「それが、これ?」
「はい!」
 やはり霊夢にはよくわからない。
 が、おそらく早苗の考えは当たらずとも遠からずなのだろう。実際にここに集まった人々を見れば、それがわかる。
「しかしこれがどう信仰と繋がるんだか……」
「さぁ、行きますよ霊夢さん!」
 早苗はすでにボルテージ全開のようだ。始終そうだという見方もあるが。
 対する霊夢は、やはりあまり乗り気ではない。
 乗り気では、なかったが。
「……まぁ、ここまで早苗に好き勝手させてあげたんだし」
 懐に手を入れ、
「このあたりで少し、ストレス発散させてもらいましょうか!」
 口元をかすかに歪める。

 その目つきが――変わった。

 二人の声が唱和する。
『セット、スペルカード!』

 ――霊符「夢想封印」
 ――奇跡「白昼の客星」


 2枚のスペルカードは、ちょうど2人の中心で壁にでも遮られたようにぶつかりあい、消滅した。
 霊夢が軽く空を仰ぐ。
 真意を悟った早苗は、軽く頷いてから宙を飛んだ。
 博麗の巫女と現人神の衝突は、余波だけでも無辜の民を傷つける。
 後から空へと昇った霊夢は、それ故に早苗の指が高速で桔梗印を結んでいることに気づくのが遅れた――致命的と言えるほどに。
「この幻想郷で研鑽を積んだ真の奇跡を見せてあげましょう!」
 反対の手には、すでにスペルカードが握られている。

 ――秘術「一子相伝の弾幕」

 わずかに、霊夢の顔が引きつる。
 スペルカードは、間に合わない。

 中天を埋め尽くすほどに展開された桔梗紋は、そのすべてが無慈悲な暴力と化して霊夢を呑みこんだ。
相手は神や吸血鬼さえも打ち負かす最強の巫女だ、油断や慢心を抱くつもりはなかったが、しかしこの近距離であの弾幕をかわしきれはしまい。
 こちらへのほんのわずかな油断。それはかつて早苗を破ったものとしての、ある意味必然としてつきまとう弱点だろう――そして早苗は、最初からそこを攻めるつもりでいた。
 その策は見事に決まった。決まったが。
 ――これで終わりでしょうか。
 早苗の胸中に生まれるのは、軽い落胆。
 早苗が信奉する八坂の神を――たとえスペルカードルールという制約の上でとは言え――破った相手が、この程度で敗れてしまうとは。

 ふと、いつかもこんな思いを抱いたことを思い出す。
 いや、いつかどころではない。

 それはまさに、初めてあの博麗の巫女と相対した時のこと――

「早苗。まさか、これで終わりとか思ってる?」

 全身が総毛立った
 早苗の放った弾幕はすべて消え去っている。時間切れだ。
 だが、そこには一人の巫女が中空に立っている。
 巫女服にこそ多少の切れ目が入っているが、完全に無傷の姿が。

「まさか、かわせるわけが……」
 じっとりとした冷や汗が背中を伝う。
 対する霊夢は完全に無表情だった。
 あの時と同じ――異変を解決する『博麗の巫女』としての相貌。
「かわせない弾幕を作るのはルール違反になるもの。生真面目なあんたがそんなスペルを作るわけがない。だから、かわせないなんてあり得ない」
「それは、そうですが……」
 それは理屈の上での話だ。
「早苗。大分こっちに染まってきたって自分から言ってた割に、まだあんたの言う『常識』が抜けてないんじゃない?」
 その手捌きはあまりに自然で、早苗は頭で理解するのに数瞬を要した。
 その数瞬で、霊夢の周囲に夥しい数の符が展開される。
「油断や慢心がない代わりに余裕もない現人神に、私は余裕満点で相対してあげる」
 中空に描き出されるのは、幾何学文様を象った符の檻。
「龍をも絞め殺す符の結界――逃げ切りなさいよ? じゃないとどうなっても知らないわ」
 掲げられるスペルカード。そして、

 ――神技「八方龍殺陣」

「酷いです、強すぎます。反則です」
 巫女服のあちこちを焦がした早苗は、地面に伸びた姿でぶつぶつ文句を言っている。
「奇襲を仕掛けて返り討ちにあった奴が何言ってんの」
 ぺし、と額を叩く。
「うたっ 叩かないでください、痣になっちゃいます」
「……今度から、敗者には墨で顔に落書きしても良し、とかルールを追加してみましょうか。きっと盛り上がるわよ。あぁ、今度と言わず、今からでも」
「まだ……私は、負けてませんよ」
 2人を囲んでいた群衆から、どよめきが上がる。
 誰もがこれで決着は着いたと思っていたのだろう。それだけに、立ちあがらんとする早苗の姿に盛り上がりが増していく。
「八坂の神を崇め奉る守矢の眷族は、奇跡の風を以って人々を救う」
 それはまるで祝詞のように。
 どよめきの中でも沁み渡るように広がる早苗の言葉が、
「東風谷の姓は――決して凪ぐ事なく! 遍く人々のために立ちあがります!」
 立ちあがった。
 その姿に、霊夢は何とはなしに理解した――早苗の真意を。
「……悪役に仕立て上げてくれちゃって」
 ぽつりと、つぶやく。そして、
「ならば、私は博麗の巫女として、あなたの覚悟を見定めましょう」
 二人は距離を置き、それぞれスペルカードを構えた。
 これが――最後。

 ――大奇跡「八坂の神風」
 ――大結界「博麗弾幕結界」

 2枚のカードが掲げられる、その瞬間。

「――その勝負、私が預かろう」

 二人の間に、巨大な柱が突き立った。

「これは、御柱……」
 霊夢は即座にその正体を看過した。
「親玉の登場ってわけね」
 博麗神社の屋根の上に、一柱の神が立っていた。
 その右手には、たった今二人の間に突き立てられたのと同じ大きさの御柱が無造作に握られている。「握る」と言ったが、その大きさは優に人の体の数十倍はある。威風堂々という表現がここまで似合う姿もそうはないだろう。
 八坂の神の、顕現である。
「かつて私を打ち負かした猛き麓の巫女よ。まずは私の風祝の非礼を詫びよう」
「……今回は随分と殊勝じゃない。前はあれだけ尊大n」
 びくっ、と霊夢の体が震える。
 ――足を何かに掴まれた。
 恐る恐る下を見ると、地面から特異な帽子を被った顔がほんのわずかに突きだされている。遠巻きから彼女達を眺める群衆にはおそらく見えないだろう。
 その顔は声を出さずに唇を動かした後、にこりと笑って姿を消した――地面の下に。
 曰く――ここは話を合わせろ。
「……で? そのお詫びにどうしてくれるって?」
「見せてやろう。乾と坤を司る八坂が示す、真の奇跡を」
 地面の下から聞こえてくる「坤は私の担当だってのに」というつぶやきは無視。
「一体、何を……っ!?」
 霊夢はたたらを踏んだ。
 地面が揺れている――地震だ。
「ちょ、神社壊したら承知しないわよっ!」
 いつかの天人が起こした騒動を思い出し、思わず霊夢はそう叫ぶ。
「仮にも土着神を統べる神の御業よ? そんな無様な真似はしない」
 先程地面の下から覗いていた顔が、すぐ横にあった。
 周囲の人々はみな地震に驚き、こちらを見る余裕などないようだった。だから出てきたのだろう。
「あんたっ……」
 何する気、と言う前に坤を司る八坂のもう一柱――洩矢諏訪子は場にそぐわぬ気楽な調子で言った。
「神奈子が営業担当で、私が実務担当。昔から変わらない、信仰集めの一環よ」
 地震に立っていることも出来ず、思わず霊夢は宙に浮き上がる。
 激しく揺れる地面の上に、諏訪子だけが平然と立っていた。
「まさか人間に手を出すほど落ちぶれたとは思わなかったわよ」
「勘違いしてほしくないけど、私はミシャグジという『恐怖』を以って国を統治した荒ぶる大地の顕現よ? 人間は力で支配するのが一番簡単なの」
 とは言え、
「私は神奈子に負けた身だから、今さら力を振りかざしてどうこうする気はないけどね」
 そして諏訪子は、その容姿によく似合う満面の笑みを浮かべて言った。
「これも神遊びよ。人間から見たら、奇跡と呼ぶものなのかもしれないけどね」
 力が発現するその瞬間。
 霊夢は文字通り、「天地がひっくり返る」様を見た。

「……ん」
 頭を振って立ちあがる。どうやら気を失っていたらしい。
 見回すと、そこは見なれた博麗神社の境内ではなかった。
「ここは……」
 だが、見覚えはある。
 そこは守矢神社の麓にある、八坂の湖のほとりだった。
 どうやら、諏訪子の力で博麗神社からここまで吹っ飛ばされたらしい。
 だがそれだけではもちろん地面に激突するので、神奈子の力で風の緩衝材を張って勢いを殺したのだろうが。
 ――それにしても、
「まさかこれが奇跡だとでも言うんじゃないでしょうね……」
「霊夢さん、そして皆様。ようこそいらっしゃいませ、守矢の社、その湖のほとりに」
 声のした方には、長い髪を風にたなびかせた早苗が立っていた。
 そこで気づく――皆様とは、
「お祭りに来てた観客まで……っ!?」
 守矢神社の境内は、人で溢れ返っていた。
 戸惑うもの、泣きだすもの、興奮するもの――反応は三者三様だったが、みな今自分の置かれている状況に驚いているようだった。
 それはそうだろう。
 守矢神社が妖怪の山の頂に存在するのは周知の事実だ。
 それ故に、普通の人間では決して訪れることは適わない。
 霊夢と早苗を除く誰もが、初めて守矢神社の境内――ひいては妖怪の山に足を踏み入れたのだった。
「皆様、ご安心を。八坂の神は、信仰の篤い方を須らく守るべしと仰っています」
 その穏やかな笑みに、徐々に騒ぎは静まっていく。
 しんとなる湖のほとり、群衆に囲まれてなお陶然としている早苗は、その指を湖の彼方に向けて皆の視線を誘った。
 そこには、冬の冷気に凍りついた八坂の湖が広がっている。御柱が幾本も連なるその水平線の先に、ふと小さな亀裂が走った。
 最初はかすかな音。
 しかし、それはすぐに世界を遮るほどの大音へと変わる。
 水平線の向こうから走る亀裂は、激しくぶつかりあい、氷上に山を連ねていく。
 あたかも、一本の道のように。

 誇らしげに響く、風祝の声。

「これが山坂と湖の権化、八坂神奈子様の御業である乾坤の奇跡――御神渡りです」

 二人の巫女は、炬燵に入りながら向かい合っていた。
 一人はにこにこと嬉しそうに。
 一人は心底から不満そうに。
「で、東風谷さん家の早苗ちゃん? あんたは結局何がしたかったの?」
「八坂の湖と言ったら『御神渡り』、これは外の世界ではちょっとしたイベントだったんですよ。それを幻想郷風にアレンジして威厳を出してみたら、きっと信仰度が上がるんじゃないかと思いまして」
「えぇ、そうね。確かにあんたの言うとおりだわ」
 実際、ここ博麗神社の傍らにある守矢神社の分社には、目に見えて参拝客の数が増えた。
 ――人間は力で支配するのが一番簡単なの
 諏訪子の言った言葉が思い出される。まさに、それはその通りになったのだから。
 幻想郷の住民なら誰もが抱いている、妖怪の山への畏怖。
 それを逆手にとって信仰へ結びつけるという策は、いささか乱暴ではあったものの里人には受け入れられたようだ。
「けど、おかげでうちは完全に悪役扱いよっ」
 炬燵越しから早苗の頬を思いっきり引っ張る。
「いひゃいいひゃい、れいむひゃんいひゃいですっ」
「何が『守矢を支える御柱は、決して信じる者を裏切ったりはしませんから』よ! 思いっきり私のことをダシにして、ちゃっかり自分のところだけ信仰増やして!」
 ぺちんと、引っ張っていた頬から手を話す。
 早苗は涙目で頬をさすりながら、
「そんなことないですよ。実際、霊夢さんのところにだって参拝客が増えてるじゃないですか」
「あんたのところのついででしょう」
「違いますよ。皆さんは知ってるんです――あれだけ威厳のある八坂様を、博麗の巫女は一度打ち負かしてるんだって」
 そういえば神奈子はあの時、霊夢のことを「かつて私を打ち負かした猛き巫女」と呼んでいた。
「これで八坂様と霊夢さんの神社、両方の信仰が増えてみんな幸せです。ね?」
 小首を傾げてにこりと笑う早苗。
 だが、霊夢にはまだ腑に落ちない点が残っている。
「なら、あの茶番みたいな決闘はなんだったの? 客寄せのためのパフォーマンスにしたって、わざわざ衆目の前で弾幕ごっこをすることもなかったんじゃない?」
「力を誇示するのって、意外と難しいんですよ。一歩間違えばただの暴力になってしまいますから。それを鑑みると、相手を極力傷つけることなく力を示せる弾幕ごっこほど、信仰の手段に都合のいいものはないんですよ」
 全部神奈子様の受け売りですけどね、と苦笑。
「それに」
「それに?」
 早苗は小さく舌を出し、
「今なら、霊夢さんに勝てるんじゃないかなぁって」
「……やっぱり、あんた自身のためじゃないの!」
 早苗の頭をそばにあった大麻でぶっ叩いた。

「やっぱり、守矢は信用できないわ」
レイサナ大好きです。守矢一家も大好きです。
あす
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守矢一家の洗脳講座?
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