“幻想郷最強の妖怪”こと私風見幽香は鍋を火にかけつつ、考えた。
いつからであろうか。こんなに料理を作るようになったのは。
多かれ少なかれ例外はあるにしろ、妖怪は人間でも捕って暮らしていればそれでいいのである。
だが今の私にはそんなことは必要ない。こんな肩書きも。
・・・昔はやんちゃをしたものだけど、そう思うと自然と笑みがこぼれる。
・・・そうか・・・初めはあの頃だったか・・・
―――あなたはだあれ?
―――私は風見幽香よ。貴方は?
―――わたし?わたしは―――
あれはどれほど前の話であろうか。
その少女は光のない目で静かに話した。
―――わたしは・・・メディスン。
―――何故此処に居るの?
―――わたしはずっとここにいるの。
そこは薄暗い空、咲きわたる鈴蘭。
瘴気に誘われたどり着いた、無名の丘。
―――何故此処に居るの?
―――わからないわ。
―――何時から此処に居るのかしら?
―――わからないわ。
長い間その暗い空間に一人孤独に暮らしていたその子に情が移ったのか。
それともその少女に個人的に興味があったのか。
―――貴方、私のところに来ない?
―――・・・?
その少女はじっとこちらを見て、静かにうなずいた。
その少女から、何かを感じたからそうしたのか?
違う。何も感じなかったからだ。敵意もなかった。生気もなかった。
変えたかったのかもしれない。でも何をすればいいのか分からなかった。
そのまま数日間はメディスンと、メディといっしょに暮らしていた。
その少女は、ときたま「スーさん」と話をしていた。私にはそれが誰なのか、わからないが。
そうして暮らしていたある日のことであった。
ふと紫との会話を思い出した。あれはいつかの晩餐に誘われたときだった。
「悪いわね。わざわざご招待いただいて。」
「いいのよ。たまには貴方と話もしたいしね。」
「ところで、紫は何故わざわざ料理を食べているのかしら。」
「変な事を聞くのね。そうね・・・一人なら、何を食べてもいいのだけれど。ほら。藍と橙が居るじゃない。」
「・・・それで?」
「ふふふ。そういうことよ。」
そのときには理解できなかったが、たしかに彼女たちの晩餐は、にぎやかで、楽しそうなものだった。
なるほど。つまり。
食事は妖怪たちにはコミュニケーションツールなのだ。
・・・これか。
そう思って。そうだその日からである。料理を作り始めたのは。
果たしてそれのおかげなのだろうか。今となっては分からないが、メディは心を開いてくれた気がする。
ちょうどそのとき、ドアが開いた。
「コンパロコンパロ~♪ゆーか、ただいま!」
とにかくゆうかりんのエプロン姿はとても似合うと思うんだ。
しかし、もっとボリュームが欲しいなw