Coolier - 新生・東方創想話

鴉天狗が光速で飛んだらどうなるの

2011/02/14 16:35:34
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 幻想郷に、冬がやってきた。神社の境内、竹林、人里、ありとあらゆる場所が白く染まった。もちろん、ここ妖怪の山も例外ではない。文の家の窓から見える景色も、夜の間に降った雪で真っ白になっていた。

「うわ、寒いわけです……」

布団にくるまったまま窓のそばへ這いずっていった文は、顔をしかめた。
 冬はあまり好きではない。寒い中を飛び回れば、冷たい風に体温が否応なく奪われるし、高度を上げれば体に霜がつく。それに、

「はあ、嫌ですねえ。こんなに白いと、原稿用紙を思いだしてしまうじゃないですか」

白紙の原稿。それは、文のもっとも嫌いなものの一つだった。昨晩も遅くまで原稿用紙と格闘していた。

「って、もしかして今日……」

文机の手帳を取り、手早くめくる。あるページで手を止めると、猛然と時計を振り返った。

「うわ……まじですか……」

呆然と呟く。時計の針は無情にも、印刷所に予約を入れた時間を数分だけ、回っていた。

「よりによって、何で今日……!」

 普段は空いている河童の印刷所も、新聞大会の前だけは別だ。新聞をぎりぎりまで書きたい天狗たちは、締め切りの直前に印刷所に予約を入れる。
その結果、印刷所は輪転機が止まる時間も無いほどの過密スケジュールで運転される。つまり、数分でも遅れると予約は強制的にキャンセル扱いになってしまうのだ。

 文は布団に倒れ込んだ。もう終わりだ、その現実で頭がいっぱいだった。文とて、ほとんど一夜漬けで書かれた新聞で優勝できるとは思っていない。
しかし、中身は違う。自分の足で、翼で、目で見つけてきたネタがお蔵入りになるのは、耐え難い苦痛だった。

「はあ、時間とか戻らないかなあ……」

 起き上がって、没になったばかりの新聞をぺらぺらとめくる。
その中のある記事が、文の目に止まった。

『河城 にとり氏、情報伝達の未来を語る!』

「何でしたっけ、これ。ああ、外じゃ光でやり取りするとかって話か」

ほら見てよ、この本! ここに、「光ケーブル」って書いてあるでしょ!

──どうやって情報を伝えるのよ? 光なんて、点いてるか点いてないかの二つしかないじゃない。

だーかーら、それで十分なんだって! さっきも言った通り、これはモールス信号みたいなもんで、

──あーはいはい、分かりました。でも、なんでそんな面倒な方法を使ってるの?

光が地球上で一番速い物質だからだよ!

──速いって、どのくらい?

もしかして、勝とうなんて思ってる? あはは無理無理、物体の速度が光速に近づくとね、物体はどんどん重くなるから、絶対光より速くはならないのさ!
ちなみに、仮に光より速く移動したら、時間だって戻っちゃうんだよ!


「……戻るじゃない、時間!」

 文は立ち上がった。手早く着替え、新聞を掴んだ。
幻想郷最速の名に懸けて。

「負けませんよ、光!」

射命丸 文は、翔び発った。

 文はそのまま、博霊大結界の近くまで飛んだ。計画は簡単だった。幻想郷の内側ぎりぎりを旋回し、光速に到達したところで進路を徐々に妖怪の山、河童の印刷所へ向けるというものだ。

「さて、行きますか」

呟くと文は、一瞬でトップスピードに乗った。眼下の景色が、どんどん後ろに流れていく。

(もっと速く)

さらに羽に力を込める。身体に感じる風圧が、また少し増す。

(まだ!)

文は知っていた。自分は一度だけ、この先に行った。ある速度に達した瞬間、全身に強い衝撃を感じたことがある。だから、自分はもっと速く飛べる。そう思った。
風が邪魔だと気付いた。普段は風を感じながら飛ぶのが好きだったが、今は別だ。抵抗は、できるだけ少ない方がいいはずだった。
自らの風を、身体に纏った。空気を切り裂く刃をイメージし、形にした。また速度が上がったように感じた。

(──くる!)

唐突に、そう思った。姿勢を崩さないよう、覚悟を決めた。衝撃が襲った。予想と違い、それは長く続いた。たまらず、速度が落ちた。衝撃はあっさり消えた。まるで、ここから先は生物の領域ではないと、人知を超えた何かに言われているような気がした。
歯を食いしばった。笑顔を浮かべていたかもしれない。文はまた、速度を上げた。先ほどと同じように、衝撃が襲った。さらに歯を食いしばった。奥歯が割れた感触があった。さらに速度を上げた。
突然、衝撃が嘘のように消えた。勝った。そう思った。
どんどん速度が上がっていく気がした。
そのまま、進路を妖怪の山に向けた。速すぎて細かい地点は狙えないが、着地してから歩けば良いだろう。さらに速度を上げる。前から後ろへ、線のように流れていく景色が一瞬、目の前の一点から出てくるように見えた。目を擦ろうとしたが、腕は重く、ぴくりとも動かせなかった。
視界の中心にに白い点が見える。印刷所だろうか。そこから全てが、放射線を描いて背後へ流れていく。

(ああ──綺麗)

その感想を最後に、文の意識は途切れた。


『原因不明! 妖怪の山で、謎の大爆発』
 一二月十日午前、妖怪の山中腹で、突如大きな爆発が起こった。爆心地付近は当時大勢の天狗たちで賑わっていたが、不思議なことに、爆発の瞬間を見た者はいなかった。
ただ一匹の河童が、スキマに連れ込まれる鴉天狗を目撃しており、また、「全く幻想郷だからって無茶してくれちゃって!」等と言う声を聞いている事から、この鴉天狗が何らかの関係があるものとみて、行方を追っている。
 ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 ジャンルが良く分かりません。

 読んでくれてる方が、文と一緒にいつの間にか歯を食いしばっているような文章が書けてたらいいな。
さとうとしお
sugarwithsalt@gmail.com
http://twitter.com/sugarAsalt
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コメント



0.1660簡易評価
8.100yunta削除
リアルな話すると
多分天狗の住んでる山が消し飛ぶ
光速で少女ほどの質量(約40~45キログラム)の
物体が動いたら想像を絶する衝撃波が発生する
ましてそれがスキマと激突したら紫がヤバイ
光速の射命丸で幻想郷がヤバイ
9.100奇声を発する程度の能力削除
何だか凄いぞww
13.100名前が無い程度の能力削除
山の前に服が消し飛んでただろうなぁw
スッパ天狗ww
16.100名前が無い程度の能力削除
なるほど天狗の頭巾はこのためか
19.100名前が無い程度の能力削除
さらにリアルな話すると光は秒速30万km
運動エネルギーの式は
0.5×質量×速さ×速さ(単位、質量はkg、速さm/秒)
大体40kgの天狗が光の速さで動いてる時のエネルギーは
約180京0000兆0000億0000万0000
大体60kgの人間が秒速約10mで走ったとしたらそのエネルギーは3000

要約すると普通に走ってる人とぶつかった時の600兆倍の衝撃があるわけだ

そんな事があったら妖怪の山がヤバイ
それどころか大結界突き抜けて地球がヤバイ
光速の天狗で地球がヤバイ
21.100名前が無い程度の能力削除
元ネタは〇〇〇ってのを思い出すと不思議と笑いが
文の〇〇〇で地球が(ry

何言ってるんだろ…


臨場感が伝わってきました
23.無評価さとうとしお削除
yunta 様
コメ20 様
コメ22 様

  コメントありがとうございます。お察しの通り、それを元にして作りました。
 物理法則よりも幻想郷補正の方が強いんじゃないか、という希望的観測を胸に書きました。
  臨場感を感じて(重複表現?)もらえたみたいで、良かったです。
 普通の人とぶつかった衝撃の600兆倍って訳が分かりませんね
 1000kgの自動車が80km/hでぶつかってきた時の衝撃の5625億倍ですか、ちょっと分かりやすくなりました
 結局想像も出来ませんが

奇声を発する程度の能力 様

  コメントありがとうございます。光速ですから、すごいです。鴉天狗やべえ

コメ14 様

  コメントありがとうございます。結局誰も視認できなかったのが残念でなりません。
 というか肝心の新聞が既に粉々に……

コメ17 様

  ロケットの先端部分みたいなものですかね?
 NASAのロケットの先端と同じように、北島絞製作所の職人さんたちが一つ一つ丁寧に手作りしたんでしょうか?
 そう考えるとなんだか面白いですねw
42.703削除
勢いで最後まで読んでしまいました。
真っ白なところから原稿用紙を連想する、その発想がいいですね。
44.80名前が無い程度の能力削除
「ただ時間を戻したかっただけなんです」とか言っている文を想像したら笑ってしまった。
俺も空を飛んでみたいな。
48.90名前が無い程度の能力削除
面白かったけど光速と音速が若干ごっちゃになってるような…?