Coolier - 新生・東方創想話

Bar, On the Border ~Prelude~

2011/02/13 13:50:19
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「Bar、ですか……?」

「そう、Bar, On the Border…」



 紫様は、それはもう美しい発音でそうおっしゃった。
私と言えば、また気まぐれに振り回されるのかという予感に、心中では肩を落とす思いだった。


「それはまた、どうしてですか?」

「ふふ……あなたの精神修行のためよ」

「そう、です、か……」


 いかにも深謀遠慮を張り巡らせているとばかりの、底の知れない笑み。
実際にそうであることも多いのだが、長年の主従関係で、この方は真面目なことに対しては、それなりに真面目な態度を見せるものだと知っている。

だから、こういう風なお顔のときは、たいていおふざけか気まぐれに過ぎないのだ。
もちろん、この功あって讃えられること少ないお方の、息抜きになれると思えば、従者としては本望なのだが。


「場所は魔法の森に近い、最も大きな人里。その囲いのすぐ外に置くわよ」

「御意に。……そのお心は?」

「だって、Borderですもの」

「はあ……」


 不遜と知りつつも、少々呆れた返答を返してしまう。
とはいえこういう時は、紫様も素直な反応を返されるのを好む。

というわけもあり私は、胡乱な言葉遊びはやめてくれという心情を、やや表情に表していた。


「ふふ、冗談よ。理由は簡単。人妖の交流が目的だからよ」

「交流、ですか?」

「そう。スペルカードルールの制定で、人妖の共存は大きな前進を迎えうる状況だわ。けれど、相互理解に関してはまだまだ不十分。特に、普通の人間にとって妖怪は、周囲に当たり前のように見かける存在といっても、親しい存在ではないわ」

「はあ」



 紫様の幻想郷における理想。
それは、人妖問わず全ての存在が楽しく暮らせること。

しかし、人に畏れられる必要のある妖怪は、必定人との関わり方は攻撃的なものとなる。
そも妖異は人を喰らいたいものだし、幻想郷の人間の生は悲惨なものだ。

一方で、そのような状況がある以上、人里の退治屋や博麗の巫女の討伐も苛烈を極め、妖怪は結果として我が身を滅ぼす。
これでは誰も幸せになれない。


そこで妖怪に、人間を襲うことを固く禁ずれば、今度は妖怪が力を失い、己を見失う始末。
幻想郷という仕組みには、大きな亀裂が存在したのだ。



 それをスペルカードルールが一新した。
弾幕を一種の競技化することで、妖怪同士の力試しが活性化。

幻想郷に異変が生じ、それを退治されるというあり方も、スペルカード方式に則った一種の遊戯化し、人妖の関わり方も変わった。

妖怪は弾幕の華麗さをもって人間に畏怖を感じさせ、かつ安全も保障される。
また競技であるが故に、そこには交流が生まれ、新しい関係のあり方も見え始めている。


「実際に弾幕を操れる人間は限られるわ。けれど、その限られた人間との交流をきっかけとして、人と関わりあうという生き方が、妖怪の側に存在するようになった。最近では少なくない妖怪が、人里と交流を持っているようだし、ほぼ人妖の境をなくした付き合いをしているものも存在するわ」

「そのようですね。まったくもって、喜ばしいことです」

「けれど、それはまだ、理由が存在する付き合いであって、純粋に親身なものとは言い難いわ。ほとんどが何らかの利便性・必要性からなされているもので、交流としては浅いものよ」



 そう言われて私は、人里に出入りしている妖怪の顔ぶれを思い出す。
例えば私などは、生活用品を購入するためであるし、竹林の妖兎は、薬売りという経済上の理由だろう。
騒霊3姉妹や人形遣いなどは、努力の成果を発表する場を持ちたいのかもしれない。

確かに人妖の交流が大きく進んだ印象のある昨今だが、親しい付き合いかと言われれば、そうとも言いがたい。
夜雀の屋台などは、人妖問わず交流が進む場らしいが、あれは例外だろう。


「だから藍」

「はい」

「人里の境界にBarを設置し、人妖の交流の場とするのよ。洋酒を扱う店は幻想郷にないから、きっと多くの人妖が集まるわ」

「御意」



 とはいえ、それでもなお私の頭には、強い疑念が残っていた。
交流の場を設ける。
それはいい。

しかしそのBarが、紫様の目論見通り機能したところで、その成果は微々たるものではないか?
それこそ人里で宴会でも企画して、多くの人妖を集めたほうがよほど合理的と思われる。

その上その実行者が………まあ自分で言うのもなんだが、八雲に連なる右腕たる私が、わざわざすることなのか。
主の意図は、いよいよ推し量りがたい。

やはり、私をこき使っての息抜きなのだろうか。
ならば別に構わないのだが……


「ふふ、……納得しかねる様子ね」

「いえ……」

「まあ、やってみれば分かるわよ。……それに、第一の理由は、あくまであなたの精神修行だから」

「はあ」



 精神修行、か。
客との交流を通して何かを学べということか……

まあ、なくはないとは思うが、私も齢3000年の妖怪だ。
今さらどうしろというのだろう。


「あなたも、そろそろ素直になってもいいと思うのよねぇ」



 このなんとも形容しがたい流し目を向けてくる主のお考えは、やはり掴みがたい。




――――――――――




 建設は棟梁こそ鬼の萃香様に依頼されたが、人員は人里から集められた。
人間の親方がそれで納得するかと思われたが、紫様が気前良く謝礼を払ったこともあり、そう問題ともならなかった。

むしろ、人懐こい萃香様の性格もあり、鬼の建築技術を学ぶという感じに、最終的にうまくいったようだった。



 細々とした必要な道具は、紫様がどこからか持参した。
そして店が立てられているその間、私はというと、きっちり紫様に稽古をつけられていた。

知識として習得しても、意識の上では不慣れでしかない、西洋の言葉遣いから既に違和感を覚えてしまう。
ビルド・ステア・シェイクという、洋酒を作るうえでの必要技能に、カクテルと呼ばれる酒を混ぜ合わせる飲み方。

多くのカクテルの混合表を覚え、さらに味見をさせられた。
いくら私でも、ここ数日は記憶が飛んでいる夜も少なくない。




 そして私は今、黒のパンツに折り目正しい白のシャツ。
さらには蝶ネクタイまでさせられて、カウンターに立っているのだ。

寒かったら着てもいいのよ、と、黒の薄手のベストを渡されたが、今日は着ていない。
ちなみに普通のネクタイも渡されているが、私はどちらかというと、蝶ネクタイのほうが好みだ。



 開店からしばらくの間は、店は非常に繁盛した。
興味本位で多くの人妖が集まり、隔日オープンながら常に満席だった。

ただ、その流れも収まり、ここ数日はやや暇な営業が続いている。
だがそれでも、なんとなく客足が途絶えることはないのが不思議でもあった。




 ……と、また客がやって来たようだった。
私は姿勢を正し、斜め30度、意識してお辞儀をする。

目上の人に対するお辞儀は、もう少し深々とやるものだが、客商売の場合は違うらしい。
むしろ角度はやや浅く、素早く頭を下げ、少ししてゆっくりとあげる。

毎度思うのだが、紫様はこのような知識をどこで身につけられたのだろう。




 顔を上げると、入り口に立っていたのは、幼い少女の外見。
しかしその体に巻き付く赤い管と、腰元の大きな瞳が異様な、人でない存在


「さとり様ですか。どうされましたか?」

「いえ、お酒の配達に来たのですが、せっかくですから、一杯飲んで行こうかと思いまして」

「さとり様がお届けくださったのですか! ……それはまた、本当にお世話になっております」



 意外な繋がりだと思うが、このBarが扱う酒の生産は、地霊殿が請け負ってくれた。
それも、こちらが提供する原材料の原価と、そう変わらない破格の値段で。

―――手も余っていますし、土地もありますし、なにより暇ですから――

と、この地霊殿の主は言ったが、そういうわけでもあるまい。
なんといってもこのお方は、齢こそ私の半数程度だが、地底を任される大妖なのだ。


「いえいえ、最近はきちんと暇を頂くようにしているんですよ。ペットの内で優秀なものや、鬼の実力者と分担いたしまして」



 心の呟きまであまさず受け答えてくれるのが、この方の語りの特徴だ。
嫌がる御仁 も多いが、その実私は、会話が効率的で好感を抱いてたりする。


「それはどうも」


しかし、いくら分担したといっても、商品のボトルをわざわざ届けるほど暇ではないだろう。
普段は彼女のペットが届けてくるのだが、いったい今日はどうしたのか。


「まあ私用で地上に出ておりまして、ついでなので持ってきたのです。所定の場所に、置いておきましたから」

「感謝いたします」



 とにもかくにも私は、契約の上とはいえ届けて頂いたお礼として、今度は深々と頭を下げた。
すると、上のほうから抑えた笑い声が聞こえる。


「ふう……マスター、そして今日の私は、商売相手の地霊殿の主ではなく、この店にちょっと訪れた、古明寺さとりというただの妖怪です」

「なるほど………かしこましました、お客様。そして、いらっしゃいませ」



 紫様からの指令として、あくまでマスターとして振舞うようにと仰せつかっていた。
知り合いが来店しても、藍と呼ばれるのでなく、マスターと呼ばれるようにしなさいと。
カウンターの向こうに座った人間は、みな平等に扱えということか。



 それにしてもふと思ってしまうのは、この目の前のカウンター席に、一手間掛けて座らざるを得ない、小柄な大妖の雰囲気の変わりようだ。
地底と地上が結ばれた際、紫様を通じて何度か会っているが、その時はもっと険の強い方のように思われた。

恐ろしいというわけではないが、どこか厳格で、落ち着いた物腰のうちに、他者を寄せ付けない姿勢が垣間見られたのだ。



 それがここ最近、Barの開店に伴って何度か顔を合わせているが、どうにも柔らかくなった。
顔つきも微笑が絶えずに、素朴な優しさがにじみ出ているといった態だ。

なお力のある存在としての貫禄はあるが、それもどちらかというと好感を抱かせるもので、以前の畏怖を呼び起こすものではない。
かくも変わるのだろうかという変化だが、いったい何があったのだろう。


「聞こえていますよ、マスター。お客様をそんなに観察するなんて……とはいえ、そうしなければ、適切な接客は出来ませんからね」

「あ、申し訳ありません」

「いいですけどね。結局は心を読み取ってしまう、私の責任ですから」




 そしてさとり様は、カウンターに両腕を乗せ、こちらを見上げて笑って見せる。
うん、やはり変わられた。


「ではマスター。ブルームーンをお願いします。よかったらジンを強めで」

「かしこまりました」



 お客様の要望には、可能な限り応える。
最近は原価表通りでしかお酒を出さないバーテンダーが多くて悲しいわ、とは、紫様のおっしゃりようだ。
そもそも採算が取れる程度でしか経営を考えていないし、そこのところは割と自由だった。



 冷蔵庫から縦長の三角錐の形をした、スクーナーグラスを取り出し、シェーカーを用意する。
ついで、バック・バーからビーフィーター・ジンとパルフェ・タムール バイオレットフィズを取り出し、最後にカクテル用のレモン・シロップも準備する。



 メジャーを左手の人差し指と中指で挟み、ジンを注ぐ。
30mを計測すること2回、シェーカーに注ぎ終わったその一瞬は、手元を一度しなやかに上下して、全て滴ったことを示す。

同様にバイオレットを30m、レモンを30m。
そしてシェーカーに隙間無く氷を詰め、シェイクは1サイクルを6回。
ジンの風味を好むお客様に配慮した、少なめの回数だ。


 トップを外して冷えたグラスに注げば、薄紫色の液体が滴り落ちる。
それもそうで、このスミレのリキュールを用いたカクテルは、カウンターの前に座る人物の髪と同じ色をした、その辛さからは想像できない繊細な色合いをしているのだ。

私はお客様の風貌に対する遊び心として、真っ赤に熟れたチェリーを取り出し、グラスの中に沈めた。



「どうぞ、ブルームーンです」

「このチェリーは第三の目のモチーフですか。ふふ、面白いことをしますね」



 さとり様はグラスを心持ち掲げると、その色合いを光に透かして、ほんの少しだけ表情をほころばせる。
そのまま指先で、わずかにグラスを回せば、パステル・パープル色に漏れた光が、微かに揺れたような気がした。

そしてグラスの縁へと唇を近づけ、まずは一口。
その目が細められ、小さく一息ついたことを確認して、私も心中で安堵した。



「おいしいです。ジンの風味が強いですし」

「ありがとうございます」



 客からの賛辞には、素直にほおが緩んでしまう。
そういう感情の動かし方を、多くの領域において失ってしまって久しいが、このような不慣れなことに際してみれば、まだまだ私も老成しきったわけではないらしい。



 さとり様はそのまま、2口目でグラスを半分ほど空けると、何か考え事をするかのように、ぼおと中空を見つめていた。
肉付きの薄い繊細なあごに、一度も日に侵されたことのないような白い肌。

そんな幼い外見とは裏腹に、ゆったりと頬杖を付き、伏目がちに思いに耽る様子は、年齢相応の艶を感じさせる。
他者の深淵をのぞきて、その淀みにひたされ続けた妖怪の心の深みとは、いかほどのものだろう。
そんな興味がわいた。



 興味といえば、この地底の最高管理者たる大妖は、いかなる理由でこの店とかかわりを持とうと思ったのだろうか。
何の関連も無ければ、利害の対立も無い。

ただただ地縁的に遠いばかりのこの店に、どうして協力しているのか。
謎というものだった。



「ところでマスター」

「はい」


 呼ぶ声に向き直ると、さとり様はいつの間にかこちらに視線を転じていた。
まるで眠たげな両眼と、カウンターに乗せられた大きな赤い瞳が、こちらに向けられている。



「お店の調子はどうですか?」



 悩み深い質問だった。



「あ、さっきは単にマスターと客という関係を願いましたのに、結局このような話題を選んでしまうのとは……。私も肩の力を抜けない妖怪ですね」

「いえ」



 それは構わないのだが、しかし…



「そう、です、ね……難しいところです」



 私は浮かんだままの言葉を正直に答えた。
そしてさとり様はというと、そんな一言で済む内容でなく、さらなる説明を望んでいるようだった。

こちらに顔を向けたまま、ゆっくりと小首をかしげる。
微笑も2、3雫ほど、追加で表面に垂らされたようだった。



「客足は悪いわけではありません。採算も原価が安いおかげで十分に取れています。けれど、何と言いますか……」

「?」

「紫様の仰る、誰かの心をいかばかりか支えられるような場所を提供できているかというと、自信がありません」

「なるほど」



 それが最大の問題だった。
調子はどうかと言われれば、上々と答えるだろう。

けれど、それだけでしかないのだ。
人妖の交流の発展だとか、私の精神修行だとか、なにより訪れる客に対して、会話することすらめったに無いのだ。

皆それぞれの表情があり、しぐさがあり、注文がある。
だからといって、それに何か口を挟もうとは思わないし、相手もそれを望んでないだろう。

紫様のお言葉を借りれば、今の私はせいぜいのところ、“カクテルメイカー”でしかないのだ。



「ふ~む……難しいことですね」



 言葉以上の内容を、その第三の目で見ただろうさとり様は、頬杖の上で小さく首を傾ける。
そんな彼女の右手では、彼女が最後に食したチェリーのへたが、くるくると遊ばれていた。



「確かに実際の接客業で、そのようなことは難しいかもしれません」



 そう言って、少しの思案。
店内が静寂であることを、しばし思い出す。



「けれど、少し背中を押すくらいは、できるかも知れません」



 頬杖を解いて、晴れた表情を浮かべるさとり様。



「相手に正面から向き合う。そんなことは不可能だと思われます。友人においてでさえ、慎重を要するのですから。けれど、相手にそうなりたいという自分があって、だけどそうなることは大変で、そんな人の背中をほんの少しだけ押してあげる。そういうことなら、可能なのかもしれません」



 しかし、問題はいかにしてそれを為すかというところにあるのだ。
相手にちょっとした偏向を加える。
その姿勢が肝要であることは分かる。

ただ、それをどのような流れで行えばいいのか、話せば良いのか、それが分からないのだ。
あるいは、忘れてしまったのか…。



「ええ、実践は案ずるよりも難し、です。そこばかりは、自分で掴むしかないでしょう。今はできる限りやってみる、それでいいのではないですか」



 そうまとめてさとり様は、もう一度笑って見せた。
穏やかでいて、心中が引き寄せられるような表情。
なんとなく、そうか、頑張ってみるかと、納得させられるような気がした。
これも意識を司る、サトリ妖怪の力だろうか。



「何はともあれマスター」

「はい」

「おかわりを。ギムレットでお願いします」

「かしこまりました」



 まずは目の前のオーダーか。

冷えたカクテルグラスにシェーカー、半月ライムを準備する。
用いるジンは、宝石のようなボトルの色が美しい、ボンベイ・サファイアを選んだ。

最初にライムを搾って、準備をしておく。
果肉を潰し過ぎないように、けれど皮も潰さないようにして、にがみが出ないよう注意する。
中心から外側に向けて、少しずつならしていくように、そっとだ。


 ライムをシェーカーに投じて、ジンを45ml、カリブ・シロップを5ml
シェイクは軽めに手早く。
トップをはずしてグラスに注げば、やや白濁した液体が流れ出て、ギムレットの完成だ。



「どうぞ」

「ありがとう」



 さっそくの一口。
円柱の先に、浅い逆三角錐を取り付けたような、特徴的なグラスが傾く。



「おいしいです」

「ありがとうございます。材料は非常にシンプルですが」

「だからこその腕前ですね」



 味わいは極力ドライに。
ジンのほのかに柑橘を感じさせる酸味に、ライムの風味が加わって、抜けるような爽やかさがある。

ライムジュースを用いるほうが基本だが、それではこの人の舌には、きっと甘すぎるだろう。
さとうきびの粘着質な甘ったるさのある、カリブも入れなくてよかったかもしれない。



「とにかく、こんなおいしいお酒を作れるのですから、自信を持っていいと思いますよ」

「ありがとうございます」

「いいお酒の周囲には、いいお話が集まるものですから」








 んっ。
空気の圧が変わる。

入り口の方へと目を向けると、人間の青年が入店したところだった。
年の頃は20と少しといったところか。
どうにも浮かない表情に、うつむき加減の顔。



「いらっしゃいませ」

「こんばんは」



 礼儀は知っているようだ。
顔つきは理知的であるし、動作の角も取れている。

ただ、溜息と一緒に深々と座り込む様子を見るに……



(自棄酒か……)



 見るからにそうだった。
とはいえ、お客様であることに変わりはない。
私は青年の正面に立ち、注文をしばし待った。



「とりあえず何か……強いものを」

「かしこまりました」



 あまり褒められたことではないと思いながら、まあそのような時もあるだろう。
強めのカクテルのレシピを、頭の中に並べる。

飲みすぎないよう注意はするし、チェイサーと一緒に提供するくらいはしよう。
そんなことを考えながら、左手で棚の最前列のボトルを前に傾け、その奥のスピリタス・ウォッカに手をかけた。



「まあまあ待ちませんか。いきなる強いものを飲むと、すぐに味が分からなくなりますよ」



 横から差し込まれる言葉。
他に誰もいない。さとり様だ。



「見たところ、何かお悩みのようです。もしよかったら、話して頂けませんか」



 あっけにとられたのは、私だけでも、青年だけでもなかった。
少ないながら、7つのうちの4つの視線が、さとり様に集中する。
さとり様はというと、グラスを揺らめかして、余裕の表情を浮かべていた。



「いえ、私は人の悩みと関連の深い妖怪でして。少し気になったのですよ。見ての通り、今のところ同伴もおりません。飲酒のお供に、話して頂ければ幸いというだけです」

「………………はあ」



 青年はもちろんのこと、狐に包まれたような表情をしていた。
もっともそれをもたらしたのは、妖獣であるこの私ではなく、地底のサトリ妖怪なのであるが。


少しの沈黙。
けれど、一向さとり様は構わないという様子で、青年が語りだすのを待っていた。
青年もその雰囲気に呑まれてしまったのか、しばしの逡巡の表情の後、重々しく口を開いた。



「………たいした話じゃないんですよ」

「誰だって自分の悩みは、そうやって卑下しがちなものです。自分では地底まで引きずり込まれそうなほどの重荷なのに、そうと思うことすら難しい」

「確かにそうですね」



 いったいさとり様はどうしたというのだろう。
口にするままの理由なのか。
それとも何だろう、もしかして私に、お手本のようなものを示そうと?

頭の中ではこのように、あれやこれや考えながら、注文を中途でやめられた私は、何をすることも出来ず直立していた。
しかしそんな私を置いたまま、話は深まっていく。



「親友の女の子が、いたんですよ」

「はい」

「波長が合って、一緒にいて楽しくて、安心感があって、それはもう強烈な喧嘩も何度もしましたが、その度に仲直りして」

「羨ましい関係ですね……」

「そんな子のことを、………好きになってしまったんですよ」

「………そうですか」



 さとり様は少し悲しげな表情で、静かに相槌を打ち続けている。
それもそうだろう。

話の展開は既にだいぶ明らかになっている。
さとり様の第三の目には、もっと詳細な内容が見えているだろう。

語らせるまでもない。
バーにはお似合いの、よくあるけれど、よくあるが故に深刻な、すれ違いの話だ。



「けれど、彼女はそうは思いませんでしてね。想いを告げても特に関係も変わらず、ただし友人だけとは言い切れない、中途半端でべったりとした関係が続いていました。仕事の同僚で、相棒でもありましたから」

「ふむ」

「それでずっと続いて………なんだかんだ穏やかで、悪くないかな、とも思っていたんです。ただ……」



 青年はそこでいったん区切って、物憂げに瞳を閉じる。
鼻でする小さな溜息。
疲れて動けないことに、情けなさを感じているというような苦笑い。



「そんな気持ちを相談している。仕事の上では自分にないものを持っていて、尊敬していたような友人がいて………いつの間にか、その2人が契っていたんです」



 ああ、そんな話か。
いつの時代も繰り返される、友情と愛情の相克。

誰もが友情を尊ぶ。
それ以外にも名声を尊ぶ。
徳を尊ぶ。

けれど、その実態はこうだ。



「ある日呼び出されて、完膚なきまで叩き伏せられました。ああいえ、言葉の上でです。2人は好きあっているんだから、お前の入る余地はない。気持ちを捨てなきゃいけないんだって。おまけに仕事の上でも、なかなか嫌な扱いを受けまして。周囲に陰口を流布したり……なんというか、友情って、愛情には勝てないもんですね」

「………そんな時もあります」



 恐ろしく脆いものなのだ。
しょせん利害対立が生じるまでの、暫定的な相互扶助に過ぎないといってもいい。

なぜなら私は、何度もそれを見て来た。
そう、この目の前で、見て来たのだから―――



「仕事の楽しさは変わらないはずです。女の子との友人関係も、からくも修復しました。周りも優しくしてくれます。………だというのに、何でしょうね、ぜんぜん楽しくないんです。ただ辛いばかりで。本当はそんなことじゃないのに」

「………」

「まるで豊かに収穫された籠に紛れ込んだ、1つの腐った林檎です。たったその痛み、それだけで他の全てを悪くして、意味のないものにしてしまうような………あいつのこと、ただそれだけで、全てが色あせてしまったようで―――」

「はい」

「そりゃあいつはいつも冷静で、強くて、憧れを抱けると思いますよ。そいつは。けれど自分だって、ずっと一緒にいて、支えあって、安らぎを与えていたと思うのに……なんて、こんな風に考えていると、お酒を飲みたくなってしまうんです」



 そして最後に青年は笑って見せた。
ただそれは、どこまでも虚勢で、本人の落ち着きで抑えていても、拭いきれない落胆が見て取れた。

信じていた友人の裏切り。
疑っていなかった穏やかな恋路の破綻。

はたから見れば陳腐な話だ。
けれど、きっとあまりにも、日常に深く根ざしすぎていたのだろう。

愛を巡って国が滅ぶことだってある。
ちっぽけな人間の人生を台無しにしてしまう程度には、深手となりうることなのだ。



「話してくださり、ありがとうございます。こんな言い方はなんですが……たいへん興味深かったです」

「それはなによりです」

「ふふ。せっかく話してくださったのですから、何かお礼をしなければいけませんね。マスター」

「はい」

「トリニティを」

「……かしこまりました」



 珍しい注文に、一瞬照合が遅れる。
それにしてもこの人は、ジンばかり飲む。

取り出すのは、ビーフィーター・ジンに、ドライベルモット、スウィートベルモット。
冷えたカクテルグラスに、ミキシンググラスも準備する。



 大きく口が開いたミキシンググラスに、氷を詰めて、3つのボトルからそれぞれ20mlずつ注ぐ。
メジャーを不必要に動かさないように、ボトルの持ち替えも淀みなく、魅せることに注意する流れだ。

バースプーンを差し込み、親指と人差し指の腹で先の方を固定して、三角錐を描くように、薬指と中指でそっと混ぜ合わせる。
水っぽくならないように、手早い8回のステア。
グラスの中で氷が滑る、独特の音がした。

ストレーナーと呼ばれる蓋をかぶせて、注ぎ口からグラスに中身を垂らしていく。
細い糸のような液体がすっと延び、真冬の夜明けの後のような、朱を数滴だけ落としたようなおぼろげな光の色が、グラスに満ちる。

清々しい朝の空気のような味わい、トリニティの完成だ。
結局強いカクテルじゃないかという思いは、バーテンダーのスキマに納めておいた。



「どうぞ、トリニティです。よろしければチェイサーとご一緒にどうぞ」

「あ、どうも」



 青年は一度さとり様の方を伺い、遠慮がちな態度を見せた後、やっと手を伸ばした。
グラスの柄をつまんで、一口。



「強い風味なのに………さっぱりとしていて、少しだけ甘いです」

「ええ、そうでしょう。おいしいですよね。飲みやすいですし」



 そう言ってさとり様は、自らのギムレットに口をつけると、ここで飲み干してしまった。
そして、しばしぼんやりとした視線を正面に向けると、頭の中を整理しながらとでも言うように、ゆっくりと語り始める。



「トリニティは、マティーニというカクテルのアレンジになります」

「……はい」

「マティーニはジンを基本として、ベルモットという、白葡萄酒に香草や香辛料を加えたお酒を混ぜ合わせるカクテルです。混ぜ合わせる比率によって、味が大きく変わるので、カクテルはマティーニに始まりマティーニに終わるとも言われるそうです。曰く、カクテルの王様だと」

「はあ」

「ただここで問題となるのは、ドライとスウィート、辛口と甘口の、どちらを投じるかということです。いわば、シンを中心として、2つのベルモットが取り合いをすると」

「………」

「かつてはスウィートを投じるほうが一般的だったそうです。甘味は安らぎ。貴いものですから。しかし最近では、ドライと組み合わせる方が人気だそうですね。なんと言いますか、格好はつきますし、憧れを抱かせるような品がありますし」



 あくまで外の世界の噂ですが、そうさとり様は断って、なんでもないことのように話を続ける。



「こんな風に、味の選択は移り変わるもの。そして、どっちつかずのようなトリニティもまた、味わい深いものです。であれば、その時その時の混合比を楽しんで、飲み干してゆけばいいのではないでしょうか」



 そう言ってさとり様は、青年の方へと向き直り、穏やかな笑みを浮かべてみせた。
相手に安心感を与えるような、上物といえるものだった。

対する青年は、長い語りにめんくらい、最後の笑顔にとまどい、落ち着かない様子だった。
けれど、言われた内容を吟味して、少し考えて、ぽつりと返し始める。



「味わう………か。それでいいんでしょうか。そんな、距離を置いたような向かい方で」

「構わないのですよ。正面から向かい合っても、辛いばかりのこともあります。けれど、上司と想い人の逢引に、アパートの鍵貸しますとばかりに、諦める必要もありません。邪魔したいのなら、その権利だってあります。思うがままあるがまま。我慢する必要はないのですよ」

「そう、か………そう、かもしれません」



 青年は思うところがあったのか、そのほおに少し柔らかみが増したように思えた。
顔を上げて、さとり様に顔をむける。
その表情はいまだ陰っているけれど、絶望の色は潜めて、前へ進んでもいいのかもしれないという強い思いが、少しだけ見て取れた。



「妖怪さん、ありがとうございます。少しだけ、頑張れるかもしれません。どうすればいいのかは、まだ分かりませんが」








 青年はその後、しばしさとり様と世間話をした後、早いうちに帰って行った。
善は急げ、したいことがあるらしい。
何でも仕事に関することらしいが、さとり様もそこまでは聞こうとしなかった。



「それにしてもさとり様」

「なんですか? まあ既に読んでいますが」

「どうしてあのようなことを」



 それが不思議だった。
さとり様ほどの大妖からすれば、あのような悩みは些細なこと。

ましてや何の面識もなく、それもかつて自身を迫害した人間という種族だ。
親身に話を聞く理由は、どこにもない。



「そう、あなたが推理しているように、差し出がましい上に未熟な身の上ながら、手本となれればというところです」



 やはりそうだったか。
まさにあのような会話の直後だったのだから、それは容易に想像できる。
しかしそれだけだろうか。



「それに加えてもちろん、人間との交流というのもありますよ」



 さとり様ほどのものが?



「私はそんな大層な存在じゃありませんよ。ただ、地底と地上、妖怪と人間、色んな人妖がもっと分かり合えるならば、そういう幻想郷を望むというだけです」



 驚いた。
目の前に座る、この小柄な少女が、枷に縛られ嫌忌されし地底の管理者が、そのようなことを考えていたとは。

この幻想郷を想う気持ち。
身勝手極まる、よくて身近な親切に精一杯という者が多いなか、そのような感情を実際の行動に移しているのは、紫様だけではなかったということか。



「だから、そう買い被られると、照れてしまいますよ。それに何より、ただ、酔って説教をしたかっただけなのかもしれませんし」

「さとり様が、ですか?」

「ええ、もしかすると……」



 さとり様はそう言って、少し間を置くと



「ギムレットには、早すぎたのかもしれませんね」



 そう、締めくくった。










 革靴が床を叩く音がして、新たな来客を告げる。
ただ、反応は目の前の客の方が早かった。



「雛。遅かったじゃないですか」

「ごめんなさい、さとりちゃん。ちょっと厄集めに熱中しちゃって」

「……ふむ、ならばいいです。雛が一番したいことを、していたのですから」

「ふふ、ありがとう。その分今から、ゆっくりしましょうね」



 扉から入ってきたのは、これは珍しい、流し雛の厄神様だった。
幾重ものフリルのついた紅いドレスに、特徴的な大きなリボン。

やや重い緑の豊かな髪を、胸元で結んでいる。
見る度に不思議と思われる纏め方だった。



「はて、さとり様は待ち合わせですか?」

「ええ」

「それは、その……」



 失礼な内容に言いよどむ。
と、澱んだところで、この人には伝わってしまうのだったか。



「珍しい組み合わせですか? 否定は出来ませんね。実は地霊異変直後に知り合いまして、懇意にしているのですよ」

「そうだったんですか。それはそれは、雛様もどうぞゆっくりしていってください」

「ありがとう。そうさせてもらうわね」



 しかし懇意か。
並んで2人、まず笑顔を交し合う様子は、そればかりの関係とも思われない。

少し照れたような表情も含めて、もしかしてこの2人。



「私のような嫌われ者にも、雛のような人が現れるのですから、ましてやあの青年ですよ。頑張っていれば、辛いときはおいしいお酒でも飲んでふんばっていれば、いいことはあります」



 それが答えということか。
なーに、と状況を尋ねる雛様に、実はですねと、嬉しそうに先ほどのことを話し始めるさとり様。

―――あなたも、そろそろ素直になってもいいと思うのよねぇ――

どうしてか、紫様がおっしゃられた言葉が、ふと、頭に過ぎった。



「マスター」

「は、はい、なんでしょう」

「タンカレーをロックで」

「私はカシスオレンジをお願いしようかしら」

「かしこまりました」



 ……まあ構うまい。
そんなことは続けていれば分かること。

今は自分も、目の前のこととばかりに、私は再びボトルに手をかけるのだった。





























洋酒が大好きです。
皆さんはどうですか?
私はジンとハイボールばかり飲んでいます♪

けれど東方のキャラクター達は、日本酒党ですよね。
そこで洋酒を飲ませるためには、どうすればいいのか……
そんなことを考えていたら、こんな作品になりました。

あと、不定期連載のようなものを書きたいというのもあります。
書きたい時にぱっと手短に書けるような設定。
そんな感じで、時々Bar On the Borderを描ければと思っています。


なお作中ではさとりと雛が仲良しですが、気になった方はどうぞ拙作の<さと雛はやくそくされた悟り>を読んで頂ければ、喜びのあまり祝杯をあげると思われます。

それではまたお会いしましょう。
Rスキー
[email protected]
http://blog.livedoor.jp/ryoskii-review/archives/4718963.html
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コメント



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3.100名前が無い程度の能力削除
幻想郷に洋酒は少し違和感がありますが、いい雰囲気だったので。
4.100名前が無い程度の能力削除
日本酒を飲み騒ぐ少女達も良いけど、洋酒を嗜む少女達もまた良し。
6.100奇声を発する程度の能力削除
素敵な雰囲気でした
14.80名前が無い程度の能力削除
バーに行ってみたくなりますね。
16.100名前が無い程度の能力削除
とてもいい話を頂きました
酒は甘味派の自分は、ジンはあまり飲みませんが、たまには飲んでみようかと思いましたw
19.100名前が無い程度の能力削除
幻想郷の連中は酒飲んでなんぼですよね。さとり様がジン好きなので嬉しいです。
21.100名前が無い程度の能力削除
こういうしっかりしたカクテルを飲むことって殆どないな…
創作と称して洋の東西を問わずウォトカとか焼酎とかテキーラとかを数種類をごちゃ混ぜにした外道カオスカクテルを一杯創って飲む(or呑ませる)ことは偶にやるけどw
大概アルコールだけどごく稀にとんでもなく美味いのが出来るからやめられんwww

幻想入りした洋酒か…どんなのがあるだろうな
23.100名前が無い程度の能力削除
読むのが辛い……下戸の身としては。
ですが、雰囲気で酔えたと思います。
25.100スポポ削除
私はストリチナヤ・ウオッカが好きですね。
あとジャック・ダニエルとか。安酒ばかりよくよく飲むわ
27.100名前が無い程度の能力削除
雰囲気も話の流れもとてもよかった。シリーズ化大歓迎です。
美味い洋酒はいろいろありますが、一番をつけるならウイスキーですね。煙い風味のやつをロックで。
28.100名前が無い程度の能力削除
また目を離せないシリーズが・・・!
29.100名前を忘れた程度の能力削除
本当にジンばっかりだな・・・w
最後にタンカレーが出てきて一安心。
なお、そのタンカレーのウォッカは地味に絶品ですので一度お試しあれ。
31.80四十九院削除
初めの辺りにでてきたブルームーンの単位がmlではなくmになっていますよ。

カクテルのことは詳しく無いのですが、とても面白かったです。
32.80名前が無い程度の能力削除
求めるのは間違っているかもしれませんが……

なんだか、物足りない感じがしました。
人間に語る場面も、さとりがメインに思えて仕方が無いのです。
藍が影薄い……

そしてラストのアレ。
失礼ながら私は、作者様がさと雛を書きたかっただけなんじゃないかと思っ(殴

それはそうと、バーテン藍様の脳内補完、楽勝でした。
尻尾はどうしておられるのだ。
33.100名前が無い程度の能力削除
お酒は人間関係の潤滑油とはよく言ったものですね。
まさか妖怪にも通用するとはw

さとり様はいつもは聞いているばかりなのにお酒の力を借りれば言う方になれる,
そんな雰囲気が最高ですね。

そして藍様がこれからどう成長していくのかwktk
36.90名前が無い程度の能力削除
>「なるほど………かしこま し ました、お客様。そして、いらっしゃいませ」
噛んでるよ藍様w

ゆったりとした大人の雰囲気。
あまり見かけないので新鮮でした。
また、みかけたら立ち寄らせていただきますね。
37.80名前が無い程度の能力削除
大人っぽい落ち着いたさとりさまが素敵
カクテルが飲みたくなりました
38.100名前が無い程度の能力削除
雰囲気を味わえる作品は大好物です
しかし尻尾が気になる……
44.100名前が無い程度の能力削除
大人の幻想郷、ちょっとほろ苦い味わいでとてもよかった。
藍はバーテンダーが似合うなあ。
このお話、是非続きが読みたいです。シリーズ化希望。
52.100名前が無い程度の能力削除
遡って読ませていただきましたが、これは素晴らしい。
ありそうでなかった感覚です。
58.90葉月ヴァンホーテン削除
これは……なんとスタイリッシュな作品でしょうか。
ジンのように爽やかで、ほんの少し舌が痺れるような、癖になる後味です。
楽しませていただきました。
68.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい、粋なお話で読んでいてのめり込んでしまいました。