博霊神社の境内。
普段は参拝客も殆ど訪れないような場所だが、今日は随分と賑わっていた。
この場所がこんな喧噪に包まれる理由と言えば、基本的に一つしかない。勿論、いつもの宴会である。
そこに居るのはやはり、殆どが妖怪。数えられるほどに人間の姿は混じっている物の、人間の範疇で考えてよいのか疑問の残る者ばかり。
いずれにしても信仰や賽銭には結びつかない連中だった。
境内ではそんな人間や妖怪達が、狂ったように騒ぎ立てている。そしてその輪から離れたところ、水を打ったように静かな一角があった。
ゴザを敷かれたその場所には、青い顔をした妖怪達が死屍累々と転がっている。
酒に呑まれた者達の避難場所。言わゆる『敗者席』だ。
「う、うう……」
そこに転がっていた物の一人が、ゆっくりと体を起こす。痛む頭を押さえながら、傍らに置かれていた星飾り付きの帽子をかぶり直した。
プリズムリバー三姉妹の三女にして、騒霊楽団のキーボード担当。リリカ・プリズムリバーである。
「あーもう。ようやく冷めてきたかな」
宴会の余興としていつものライブを行った後、テンションが上がりきった状態で、勧められるままに酒を呑んだのがいけなかった。
しかも杯を受け取った相手が、幻想郷で酒を付き合ってはいけない種族の代表格である、鬼。当然一杯や二杯で見逃してくれるはずもない。
気がつけば御覧の有様だ。さすが鬼の酒、幽霊の身にもしっかりと効いてくれる。
姉達はどうしたかなと回りを見渡せば、いまだに輪の中で妖怪達と酒を酌み交わしていた。
下の姉は浴びるように酒を飲みながら、トランペットを振り回して騒いでいる。上の姉はいつも通りの沈んだ様子だが、手にした酒瓶の中身があっと言う間に消えていくのが見えた。
どうやら潰されたのは自分だけか。体が小さいせいか、回りが早いのかもしれない。
「に、しても」
酔っぱらいの飛び交う夜空を眺めながら、誰に言うわけでもなくリリカは呟く。
「どーなるかなあれ」
リリカの言うあれとは、現在進行中のビッグプロジェクト―――――プリズムリバー三姉妹のソロデビュー計画である。
三人がそれぞれ作った曲を、外界の道具である『カセットテープ』とやらに音を込めて販売する。個人のプロマイドやサイン色紙などのファングッズも制作、さらにはソロライブも開催し、それらの売り上げや入場者数で人気を競うという試みだ。
姉妹仲が悪いわけでもないし、騒霊楽団が解散するわけでもない。だが、自分一人の力でどこまで通用するのか試してみたいという思いはあった。
ついでに言えば、末っ子ということで何かと立場の弱い自分にとって、またとない下克上のチャンス。今回の評判が姉妹間での新たなヒエラルキーとなるかもしれない。
もう下の姉にカレーの肉と人参をトレードさせられる日々はたくさんだ。自分がプリズムリバーの頂点にたった暁には、同じ眼にあわせてやる。上の姉はジャガイモで勘弁してやろう。
心の中でそう決意を燃やすリリカではあったが、同時に不安な気持ちも拭えなかった。
姉達の司る鬱と躁の音に対し、自分はそれらの音を調律して曲として纏めあげる幻想の音。
安全で無難な音ではあるが、故にインパクトにかける。自分では最高傑作とも言える曲を作ったつもりだが、それが受け入れられるだろうか。
手元に花でもあればそれを使って占ってみたいところだが、あいにく回りに使えそうな花は無い。ちょうど宴会に来ている花を司る妖怪に頼めば用意してくれるだろうが、彼女の前で花びらを引きちぎる度胸は無かった。
なにか適当な方法はないだろうか。
「えーと。次にここに来たやつが……」
酔いの残る頭から出てきたアイデア。それを何の推敲もなくそのまま口に出した。
「私より乳が小さければ成功する!!」
そう口にしてから、思わず自分の言葉に吹き出した。
「なんてね~」
われながら馬鹿なことを思いつくものだ。まだ酔いが冷めていないらしい。
間抜けなことを考えるのはやめて、もう少し休ませてもらうことにしよう。
と、リリカが思っていると。
「すいませーん。お邪魔しますよー」
気の抜けるような間延びした声が響く。へらへらとした気安い笑顔と共に現れたのは、大陸風の衣装を纏った女性。気を使うのが上手いと評判の門番、紅美鈴だ。
仕事柄、宴会に出てくることは珍しい彼女ではあるが、今日は主の気まぐれかなにかだろうか。珍しがる鬼や天狗達に捕まって、次から次へと呑まされていたはずだ。
「いやーさすがにまともに付き合うのきっついですよー。あはは」
いつも以上に緩い笑顔を浮かべながら、リリカの側に腰を下ろす。
「聞いてくださいよ~~膝枕してくんないんですよ~~~忙しいからここで寝てろって~~~」
なれなれしい様子で美鈴が話しかけてくる。そういえば先ほど、紅魔館のメイド長に抱きついて蹴飛ばされていたのが見えた。
「あのさ、頭なんか生えてるよ」
「へ?」
きょとんとした表情で答える美鈴に、リリカは無言で頭頂部あたりを指してやった。
そこにそびえ立つのは、銀の刀身を半ばまで沈めた一本のナイフ。
人間なら当然、幽霊のリリカとしても遠慮したくなるような惨状である。
「あはは。おやつ用意してくれるなんて~~なんだかんだでツンデレだな~~」
頭から引き抜いたナイフを見て、やたらとうれしそうに美鈴が呟く。酔っぱらいの目と頭には何か別の物に見えているらしい。
「いっただっきまーす!!」
手に持ったナイフを、そのまま口に放り込んだ。
その光景はよくある大道芸のひとつにも見える。口元から金属を砕き、潰す耳障りな音が聞こえなければだが。
挽き潰された金属をごくりと飲み込むと、口の回りについた滓を指で拭う。最後に指をペロリと一舐め。
「んじゃ、おやすみなさー」
そう言い残すとゴザの上に倒れ込んだ。程無くしてすぴーすぴーと規則正しい寝息が聞こえてくる。さすが睡眠においても評判の門番だ。
「騒々しい門番だなー」
幸せそうな寝顔を眺めながら、リリカはふと思い出す。美鈴が現れる直前に、自分が考えていたことを。
馬鹿らしいと思いながらも、なんとなくそれに従って視線を移した。
美鈴の寝顔から、少し下。ちょうど胸のあたりへと。
「……うわっ」
リリカの口から、反射的にそんな声が漏れた。
仰向けになった美鈴の上で、巨大な固まりが揺れているのを見たからだ。服の上からでもわかる物が、寝息にあわせてふるふると。
試しに手を這わせてみると、柔らかいだけでなく確かな弾力が返ってきた。ただの脂肪の塊でできているとは思えない感触が。
天使の羽で羽毛布団を作れば、こんな感触になるのだろう。
さすがにこれでは、自分と比較する気も起きない。
「まあ、こいつは……」
紅魔館の門番といえば、そのよくできた乳でも有名である。腕試しを挑む人間の何割かは、この乳目当てで戦っているに違いない。
うめき声をあげる美鈴の乳を揉みながら、リリカはそんなことを考えた。
「ま、今のは無しってことで」
思う存分、乳の感触を楽しんでから、その手を離す。
今更ながら、自分でも馬鹿なことを考えたものだ。乳がどうだろうと売り上げには関係ないだろうに。
酔いが醒めるまで、ここでゆっくりしておこう。
「ちょっと邪魔するわよ」
声のした方に目を向ければ、ピンク色をした煙のようなものが漂っている。
そしてその中心にあるのは、巨大な親父の顔面だった。
「ひっ!?」
「ああ、悪いわね。驚かせた?」
親父の顔面の陰から、一人の女性がひょっこりと顔を出す。
頭巾を被った尼僧姿という、地味な装いをした妖怪。
最近人里に降り立ったという寺の一員、入道使い雲居一輪だ。
「いくら姐さんでも、あのペースはつきあいきれないわ……気持ちわる」
頭を押さえながら、腰を下ろす一輪。その姿を眺めながらリリカは思う。
こいつなら勝てんじゃね、と。
あの寺には住職や御本尊をはじめ、見た目の派手な美女、美少女連中がそろっている。それに比べてこいつは、自分の操る入道の陰に隠れてしまうような地味さだ。
きっとそれに見合う地味で貧相な乳をしているに違いない。
心の中でガッツボーズをとる。ソロデビューに向けて、幸先の良いスタートになりそうだ。
「うー…あっつ……もうこれ脱ご」
すぐ側のリリカにそんな感想を持たれていることなどつゆ知らず、一輪が自分の頭に手を伸ばす。
トレードマークとも言える頭巾を掴むと、そのまま脱ぎ捨てた。
頭巾の下に隠れていた髪の毛が、ふわりと宙を舞う。合わせるように、心を震わせる甘い香りがリリカの鼻をくすぐった。
「え」
気がつけばそこにいるのは、気だるそうな表情で彼方を見つめる一人の美女。酒で上気した頬と、潤んだ瞳が何とも言えぬ色気を醸し出している。
頭から胸まで隠していた頭巾が取り払われ、鎖骨まで露わになった胸元。ほんのりと赤みがかった肌の上には、ウェーブのかかった髪の毛が重なり、そのコントラストがまた絶妙と言える。
予想外の色気に、リリカは同性ながら思わずゴクリと唾を飲んだ。
(う、美しい……はっ!?)
いや、落ち着け。意外な美しさなど、この場では何の意味も無い。
問題は乳だ。乳のサイズさえ勝っていれば、自分の未来は安泰なのだ。
自身にそう言い聞かせると、リリカは持論を証明するために動き出した。
「う~~ん、気持ちわる~~~」
わざとらしく頭を押さえながら、一輪のすぐ側へと近づくと、
「おおっとよろけたあ!!」
「きゃっ!?」
酔いが回ってふらついた風を装い、顔から一輪へと飛び込んだ。狙いは当然、その胸である。
さあ、その無様な乳の感触を晒すがいい。
ぽにょにょん
自分の頬を優しく受け止めるのは、期待していたような硬くみすぼらしい感触ではない。天に浮かぶ雲のイメージをそのまま当てはめたような、ふんわりと柔らかな感触だ。
当然そのボリュームも、入道の如きスケールである。
(な…なにィ!?)
リリカは思い出す。
闇に生き、闇に死すと言われる幻の戦闘部族。幻想郷の伝説に語り継がれる『忍者』というものの存在を。
今自分の顔を優しく包む双球には、彼らと同じ『隠密』としての息吹が感じられた。
(こいつ……『隠れ巨乳』か!!)
あの寺で巨乳といえば、殆どの者はあの住職を連想するに違いない。そうやって注意を引いて油断させてから、全く予想外の方向から攻撃をしかけるというわけだ。
まさに忍の暗殺技術を色濃く伝える手口だと言えよう。
人里では新しくできた寺に人気が集まっていると聞く。きっと多くの男達がこの戦法に陥落したことだろう。
「ちょっと、大丈夫?」
一輪の声によって、妄想から現実へと引き戻される。
「ああ、うん……極楽だったね」
「はあ?」
きょとんとした表情を浮かべる一輪から離れ、元の場所に腰を下ろす。
ほぅ、と軽く息を吐いてから、心の中でぽつりと呟いた。
これも無し、と。
伝説の忍者が相手では仕方がない。
そもそも美鈴も一輪も、根本的に自分と体格が違うのだ。同じ土俵で比べようとすること自体に無理があったのだ。
むしろそんな不利を抱えても立ち向かおうとした、自身の勇気を誇るべきだろう。試合に負けて勝負に勝ったとも言える。
そう結論づけたリリカだったが、ふと気がついた。
周囲に漂う、甘く香ばしい香りに。
「邪魔するよ~~」
食欲をそそる、焼芋の香りを纏い現れる少女。
八百万がうちの一柱、豊穣の神、秋穣子である。
「いや~やっぱうちの芋焼酎は最高だね。つい飲み過ぎちゃったわ」
裸足をぺたぺたと慣らしながらリリカの側までやってくる。
「どうよ? ぶどう酒もあるけど、一杯やっとく?」
「いや、休憩中だからさ……」
「なによーつれないわねー」
不満げな顔のまま、手に持ったワインをラッパ飲み。
ゴクゴクと喉を鳴らして呑んでから、ぷはーと酒臭い息をまき散らした。
「あ~~冬とかマジ超ウケるんですけど―――!!」
真っ赤な顔でそう叫んだ直後、ゴザの上に倒れ込んだ。
「ちょ、ちょっと?」
「冬~~死ね~~~えへへ~~」
何やらやたらと幸せそうな顔で、豊穣の神が呻いている。
まあ仮にも神なのだから、急性アルコール中毒でお亡くなりということは無いだろう。このまま寝かせておこう。
今はそんなことよりも、取り組むべき問題がある。
「ふむう」
隣で転がる秋神を見て、リリカは思う。
今度こそ勝った、と。
美鈴や一輪と違い、穣子の体格は自分とそう変わらない。
同じロリなら自分の方がマシなはず。
芋臭いカントリー娘が、幻想郷のトップアイドルの一人である自分にかなうはずがないのだから。
では、今からその事実を証明してやるとしよう。
確信と決意を胸に、リリカは三度目の挑戦を始めた。
「んむ~~~」
穣子の頬をペタペタと叩く。返ってくるのは訳の分からぬ呻き声のみ。
完全に酒で潰れているようだ。起きていてもこの状態ならマグロ同然だろう。
それを確認すると同時、リリカは穣子の胸元へと手を伸ばす。
さあ、その野暮ったい服の下に隠れたつまんない物を晒すがいい。
心の中の叫びと同時、リリカの手が胸元を捉えた。
ぷにぽよーん
「っ!?」
返ってきたのは確信していたはずの感触ではない。リリカの指に捉えられ、そして押し返してきた柔らかな弾力だ。確かに存在するその感触は、服や詰め物による物ではない。
紛れも無い、乳―――――いや巨乳。
さすがに美鈴、一輪ほどではない。だがこの体躯から考えると、不釣り合いな程に大きいと言えるだろう。
さらに言うなら、そのアンバランスさが逆に淫美な印象を与えている。そういった観点から目の前の秋神を見直せば、芋臭いカントリー娘から麗しき聖母へと早変わりだ。
(ま、まさかこいつ……!?)
リリカは思い出す。幻想郷に存在する、一つの法則を。
それは『乳と歳は比例する』といったものだ。
簡単に言えば少女は小さく、ババアはでかいといったものである。それは幻想郷の実力者達の存在が証明しているだろう。
美鈴や一輪は比較的若々しいが、彼女らとて絶妙なバランスの上に綱渡りのように存在しているだけであり、その法則から逃れられたわけでは決してない。
だが、ここに一つの例外がある。炎と水、生と死、光と闇、そして乳と若さ。
相反するはずの二属性を合わせ持つ、矛盾許容の概念を。
伝説に語り継がれるその名は。
「ロリ巨乳……!!」
実在すら疑問視されていたはずの物が、今この目の前に存在していた。
「馬鹿な……完成していたというのか!!」
驚愕に身を震わせながら、その手を揉み込む。その度にぷにぷにぽよぽよとした感触が掌を楽しませてくれた。
夢、幻などではない。今ここに存在する確かなリアルだ。
「んあ~~~お姉ちゃん、そこ芋挟むとこじゃないってば~~」
穣子の寝言と共に、リリカは我に返る。
そして知った。自分はまた負けたのだ、と。
裏切りの屈辱に震えるリリカであったが、ふとある考えに思い立つ。
もしや、自分の乳が一番小さいのでは、と。
考えると同時、いやそんなことはないと自身の考えを否定する。だが、一度浮かんだ疑念はそう簡単には晴れてくれない。
周りにいる連中全てが、自分の乳の無さを嘲笑っているかのような気がしてくる。
例えばあそこでゲラゲラと笑いながら呑んでいる連中も、リリカの乳を肴にしているのではないか。ほら、今なんかこっちを見ていたような。
そもそもこの宴会が、最初からそういう目的で催されたものなのでは。さしずめ、第7回リリカちゃんのがっかり貧乳祭とか。
「クソが!!」
自身の妄想に追いつめられるかのように、リリカは立ち上がった。
そもそも、ここで貧乳を待つという受け身の考え方が悪いのだ。こうなれば自らの手で、自分より乳の小さな者を探し当ててやる。
すでにソロデビューの行く末を占うという当初の目的からは外れているが、極限まで追いつめられたリリカにとってはどうでもいいこと。
宴会に興じる大勢の神や妖怪、そして人間や妖精達。それらのうち一匹も見逃さないとでもいうように、鷹のような目でリリカは睨みつけた。
あからさまに乳のでかい大妖達は最初から除外。そうでない連中も不確定要素が大きすぎる。
やはり狙い目は、自分より体の小さな妖精連中だろうか。さすがに人間の幼児ほどの大きさしかない彼女が、自分より大きな乳を持っているなどあり得ないだろう。常識的に考えて。
だが、つい先ほど手痛い裏切りを受けたリリカにとっては、そんな常識的な考えですら信用できない。
やつら全員がその服の下にぷりんぷりんてぃんした物を隠し持っていて、陰で自分を見下しているのではないか、とすら思えてくる。
探せば探すほど、リリカは自身が追いつめられていくのを感じていた。今一歩でも後ろに下がれば、たちまち崖下に真っ逆様という気分だ。
全く当てになりそうにない自身の目玉に絶望しそうになる。
(待て……逆に考えろ!!)
絶望のさなか、リリカは気がつく。
こんな風に見た目で判断しようとするから、あんな屈辱を味わう羽目になったのだ。
問題は見た目ではない。ただ乳ひとつ、いやふたつだけである。
実力だの体躯だの服装だの、余計な情報にとらわれるな。ただひたすら、乳に集中するのだ。
姉達の鬱と躁の音を聞き分け、幻想の音を加えて一つの音楽として纏めあげる、幻想郷でも随一の判断力と集中力。
それら全てを駆使し、リリカは探す。
全てを見通す真理の目と化した眼光で。
ただひとつ、自分より乳の無い奴を。
そして見つけた。
「とったああああ!!」
叫びと共に、リリカは走る。
目標は約十メートル先の人型生物。
体型は小さくない。むしろこの面子の中では大きい方だ。
だが、自身の全能力をつぎ込んだ眼が教えてくれる。
その乳には何も無い。未来も夢も希望も
これまでリリカを苦しめてきた、ぷにぷにぽよぽよした物など、一切含まれていないということを。
「は!?」
突然迫ってきたリリカに、目標が驚いたような声を上げる。当然、今の彼女に細かな理由を説明する気など無い。
自分の小柄な体躯を生かし、低い姿勢から相手の胴へと飛び込んだ。
目標を地面へ押し倒すと、そのまま腹に腰を落とす。
あっという間に見本とでもいうべき美しいマウントポジションの完成だ。
「な、なんのつもりだ!?」
「うるせー!!」
目標が何か言ったようだが、それを怒号一発で黙らせる。
「じっとしてなさい!! 痛い目にあいたくなきゃなー!!」
「ひっ!?」
怯える目標の襟元に手をかけ、大きく胸元を開く。
開いた胸元の下からでてきたアンダーシャツを掴み、その手に力を込めた。
「ぐふぉふぉふぉ!! その無様な物を晒すがいいわ――――!!」
これまで受けてきた数々の屈辱の恨みを晴らすかのように、ビリビリとシャツを引き裂いていく。
直後、その下から白く美しい肌が現れた。
「おらあっ!!!」
「いだっ!?」
その肌に、掌を叩きつける。
返ってきたのは、今までのような柔らかな感触ではない。
自信の手が痛むほどの硬い感触だ。
つるつるぺたぺたのかっちかち。まるで皮膚の下に筋肉と骨しかないというような、みすぼらしい感触である。
揉み込んでみても、ただ肌の上を指が滑るのみ。その手に掴むのは、ただの空虚な空間のみだ。
いや、ただ一つだけリリカが掴んだ物があった。
勝利という名の栄光である。
「勝ったぞーーーーーーー!!」
戦国の武将の如き、勝利の雄叫びをあげるリリカ。
無理もない、数々の屈辱に堪え忍び、今ここにようやく勝利を手にすることができたのだから。
これで自分の乳が一番小さいなどということが、ただの世迷い言に過ぎないことが証明された。いや、ここまでの艱難辛苦を考慮すれば、むしろ大きいと言ってしまって良いのではないか。
気になっていたシングルデビューの行く末についても、これで栄光が約束されたようなものである。
スーパースター、リリカ・プリズムリバー(巨乳)爆誕というわけだ。
さあ愚民ども、この私に賞賛の声を浴びせるが良い。
そんな思いを込め、リリカは周囲の妖怪達を見回した。
次の瞬間、気がついた。
周りの妖怪達が、自分に注ぐ視線について。それは期待していたような憧れの視線ではない。
まるで化物を見るような恐怖の視線である。妖怪以上の。
「え……?」
もしや股下の相手のみすぼらしい乳を哀れんでいるのだろうか。そう思ったが、明らかに視線が注がれているのは自分である。
そういえばこの乳、いくら貧乳でも無さ過ぎじゃないだろうか。胸囲自体は大きいのに、ここまで膨らみが無いなんてあり得るのだろうか。
そんなリリカの疑問に答えるかのように。
「な、なんでこんな真似を……」
乳の上から声が響いた。
つられるように視線を向ければ、脅えた表情でこちらを見上げる顔が一つ。
乳にしか集中していなかったため、その顔をよく見るのは今が初めてだ。
そして気がついた。
眼鏡をつけた人相の悪い銀髪頭。
古道具屋「香霖堂」店主、森近霖之助である。
どちらかといえば、『男の子』だった。
なお、このリリカのロックでパンクでヘビーメタルなプレイが評判を呼び、ソロデビューシングルは幻想郷の歴史に残るほどの大ヒットを記録したそうな。
どっとはらい。
想像以上に酷かったw
オチの前にもう二、三人くらい楽しみたかった
色々なキャラの胸を揉んでた、リリカが可愛いかったです。
次はルナサでお願いします。
ぷにぽよーん等の効果音も魅力的でした…
ちなみに自分のイメージも同じです。
神タイトルに惹かれてホイホイ読んでみたら中身も面白いじゃないですかっ!
ナイフ投げた人h(串刺
けど誤字報告
1行目の博麗の字が違います
なんだやっぱり最下位じゃ……おや、誰か来たようだ。
ちいさいやつに
あいにく・・・
・・・銀髪? 萃香じゃないな、まさか、咲夜さんか・・・!?
・・・眼鏡・・・?
まぁ、文々。新聞をにぎわす程度で済んで何よりw
一輪が隠れ巨乳なのは全力で賛成します!