Coolier - 新生・東方創想話

私にとって必要なもの

2011/02/11 02:20:32
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 夏。夏祭りが催されていた。

 あっ……。

 夕闇の中で漏れた声は一歩先を行く慧音の耳に届いてしまった。

「…なぁ妹紅……何度も言っているのだが…」

 分かってるよ。慧音…。確かに私も慧音も命がある以上、大切なものがあるんだ。それは命が有限だろうが無限だろうが共通するものもある。しかしな慧音。永遠の命だからこそ大切にしたいものもあるんだよ…!それは確かに私にとって大切なものであり、必要なものなんだ!今の私にはそれがないと…‼

「妹紅!」

 聞きたくないよ‼もう…

「妹紅……だから言っているだろう?もう……禁煙したらどうだ?」

 凛。日本製の煙草であり、最近幻想郷の雑貨店である香霖堂にちょくちょく入荷している。私が愛用している煙草だ。
 もう少し残ってるんだと思っていたが、どうやらさっきの最後の一本だったらしい。

「だいたい不死だ何だと言っても煙草を吸っていい理由には――」

 あぁ!ほら!寺子屋の生徒じゃないか!?慧音を呼んでるぞ!

「…まぁいい。これを機に禁煙を考えるんだぞ?妹紅」

 そう言って慧音は足早に去ってしまった。
一人取り残されると煙草を吸えないことの口寂しさと、もどかしさが込み上げてくる。

 あぁ…吸いてぇ……

 吸いたいのに吸えないとこう、イライラもしてくるな……

あぁそうだ…気晴らしに輝夜と殺し合いでもするか…

 と、丁度いいところにいるじゃないか、永遠亭の奴らが。

「あら、妹紅じゃない?どうしたのわざわざ私達に話し掛けてくるなんて……」

 分かってんだろ新参ホイホイ?って、輝夜はどうした?

「姫様なら見たいアニメがあるとかで帰ったわよ?」

 あんだとぉ!?

「どうせ殺し合いしたいとかそんなんでしょ?また明日でいいじゃない?」

 五月蠅い!今やり合いたいんだよ!!…くそう帰ったらあの馬鹿に伝えとけ!この前永遠亭に忍び込んで撮り置きのアニメを消したのは私だと!!

「あれあんたの仕業か!!あれのせいで姫様、一週間くらいずっと機嫌悪かったんだから!!」

 はっは!んじゃあここで私とやり合うかい?

「うぐぐ…まぁいいわ…今日はもう帰る予定だったし…姫様に伝えといてやるわよ!!」

 そう言って鈴仙も去ってしまう。また一人残された…。
 祭りもそろそろ終盤となり、一人佇む私も行き場を探す。

 縁日で楽しむつもりもない…。かと言ってこの気持ちのまま帰りたくもない…。

 どうしたいんだかね?私は……。

「飲みたくはないですか?」

 私の言葉を掬い取って、隣でミスティア・ローレライが微笑む。

「今なら貸し切りですよ?」



「ごめんなさい。煙草は置いてないですね…」

 あぁいいよ。あれは死を受け入れる身には毒でしかないことくらい百も承知さ……。

「でもあなたは違う…だからこそ必要だった。ですよね?」

 最近は幻想郷で楽しいことが立て続けに起こるじゃないか?紅霧、訪れない春、明けない夜、地震、間欠泉、宝船……。そんなことがあるとねぇ、当事者でなくっても楽しくなるんだよ。どこかでこう、心が躍るのさ。

「楽しいですよね。博麗の巫女の活躍は置いといても……」

 そう。楽しいよ。でもそう思えば思うほど恐くなるんだよ。そいつらがいなくなっても私は残る。残されてしまう…。
今まではこんな楽しいことなんてなかった…でももう私は知ってしまった……世界は、幻想郷は、こんなに楽しいものなんだと。もう私はそれなしには生きていけないとまで思う…死ぬことなんて出来ないのに……。
 もしかしたら、煙草は私の体を蝕み死なせてくれるのかもしれない。そんな一縷の望みに縋るように、煙草を吸っていたんだよ……。

 まぁ今やただの中毒者の戯言だがね……。

「大丈夫ですよ…根拠は無いですけど…幻想郷はいつだって幻想郷です。それにあなたには輝夜さんだっている」


 飲んだな…

屋台を後にし一服しようとしても、煙草がない…。

 やっぱりただの中毒者か……。

「あぁ妹紅、こんな所に……探したぞ」

 あれ?霖之助…どうしたの?

「そろそろきれる頃だろう?」

 優しい笑顔の霖之助が右手に差し出すは、私の愛する凛!!

 なななな何で?

「って勘違いするなよ?ちゃんと代金は払ってもらうぞ?これはあくまで宅配サービスだ」

 霖之助!!

「もう祭りも終わってしまったか……まぁ一服でもどうだ?」

 私が霖之助の持つパッケージに手を伸ばした刹那の事だ。
 金色の光の弾が霖之助をかすめ、その手のボックスが地に落ちる。
 私が拾おうとするも、今度は紅の弾がボックスを直撃し吹き飛ばした。

 わ…私の凛が……。

 哀しみ怒りをこもごもに、弾の飛んできた方向を振り返る。

 ブチン。と頭の中で何かが切れる音がした。

 輝夜ぁぁぁ……。

「私のアニメを消した怨みを思い知るが良い……!!」

 霖之助が後ずさるのを傍目に私は火炎の翼を身に纏い、輝夜も枝を取り出す。

「あのさ…二人とも、もう祭りは終わったことだし、また今度にしないか?」

 あぁ、確かに祭りはもうお開きだな……だが!!

「えぇそうね…でも!!!」

『私達の祭り(戦い)はこれからだぁ!!!』
読んで下さりありがとうございます。kichigai(キチガイ)です。
二回目の投稿です。
前回コメくれた人ありがとうございます。なんかプレッシャー感じながらの投稿です…。
今回は完全コメディですけどまたいつかパチュマリ書きたいな…。
kichigai
http://
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コメント



0.540簡易評価
1.80名前が無い程度の能力削除
あ、だめだわこの妹紅。
いや、まぁ、……やっぱだめだわ。
2.70奇声を発する程度の能力削除
何ていうか、二人らしいなw
3.70ワレモノ中尉削除
ギャグというよりも、妹紅の切なさが伝わってきましたねえ…。うーん。死ねないのも辛いものだよね。
こういう雰囲気の作品、嫌いじゃないです。にしても、霖之助さん不憫だw
9.無評価名前が無い程度の能力削除
百歩譲っても・・・いや譲れない。
どこで妹紅は煙草吸うなんて考えるのか・・・。
「またか」って感じです。
17.80名前が無い程度の能力削除
酒飲んでるんだからタバコぐらい吸ってもいいじゃないか