夏。夏祭りが催されていた。
あっ……。
夕闇の中で漏れた声は一歩先を行く慧音の耳に届いてしまった。
「…なぁ妹紅……何度も言っているのだが…」
分かってるよ。慧音…。確かに私も慧音も命がある以上、大切なものがあるんだ。それは命が有限だろうが無限だろうが共通するものもある。しかしな慧音。永遠の命だからこそ大切にしたいものもあるんだよ…!それは確かに私にとって大切なものであり、必要なものなんだ!今の私にはそれがないと…‼
「妹紅!」
聞きたくないよ‼もう…
「妹紅……だから言っているだろう?もう……禁煙したらどうだ?」
凛。日本製の煙草であり、最近幻想郷の雑貨店である香霖堂にちょくちょく入荷している。私が愛用している煙草だ。
もう少し残ってるんだと思っていたが、どうやらさっきの最後の一本だったらしい。
「だいたい不死だ何だと言っても煙草を吸っていい理由には――」
あぁ!ほら!寺子屋の生徒じゃないか!?慧音を呼んでるぞ!
「…まぁいい。これを機に禁煙を考えるんだぞ?妹紅」
そう言って慧音は足早に去ってしまった。
一人取り残されると煙草を吸えないことの口寂しさと、もどかしさが込み上げてくる。
あぁ…吸いてぇ……
吸いたいのに吸えないとこう、イライラもしてくるな……
あぁそうだ…気晴らしに輝夜と殺し合いでもするか…
と、丁度いいところにいるじゃないか、永遠亭の奴らが。
「あら、妹紅じゃない?どうしたのわざわざ私達に話し掛けてくるなんて……」
分かってんだろ新参ホイホイ?って、輝夜はどうした?
「姫様なら見たいアニメがあるとかで帰ったわよ?」
あんだとぉ!?
「どうせ殺し合いしたいとかそんなんでしょ?また明日でいいじゃない?」
五月蠅い!今やり合いたいんだよ!!…くそう帰ったらあの馬鹿に伝えとけ!この前永遠亭に忍び込んで撮り置きのアニメを消したのは私だと!!
「あれあんたの仕業か!!あれのせいで姫様、一週間くらいずっと機嫌悪かったんだから!!」
はっは!んじゃあここで私とやり合うかい?
「うぐぐ…まぁいいわ…今日はもう帰る予定だったし…姫様に伝えといてやるわよ!!」
そう言って鈴仙も去ってしまう。また一人残された…。
祭りもそろそろ終盤となり、一人佇む私も行き場を探す。
縁日で楽しむつもりもない…。かと言ってこの気持ちのまま帰りたくもない…。
どうしたいんだかね?私は……。
「飲みたくはないですか?」
私の言葉を掬い取って、隣でミスティア・ローレライが微笑む。
「今なら貸し切りですよ?」
「ごめんなさい。煙草は置いてないですね…」
あぁいいよ。あれは死を受け入れる身には毒でしかないことくらい百も承知さ……。
「でもあなたは違う…だからこそ必要だった。ですよね?」
最近は幻想郷で楽しいことが立て続けに起こるじゃないか?紅霧、訪れない春、明けない夜、地震、間欠泉、宝船……。そんなことがあるとねぇ、当事者でなくっても楽しくなるんだよ。どこかでこう、心が躍るのさ。
「楽しいですよね。博麗の巫女の活躍は置いといても……」
そう。楽しいよ。でもそう思えば思うほど恐くなるんだよ。そいつらがいなくなっても私は残る。残されてしまう…。
今まではこんな楽しいことなんてなかった…でももう私は知ってしまった……世界は、幻想郷は、こんなに楽しいものなんだと。もう私はそれなしには生きていけないとまで思う…死ぬことなんて出来ないのに……。
もしかしたら、煙草は私の体を蝕み死なせてくれるのかもしれない。そんな一縷の望みに縋るように、煙草を吸っていたんだよ……。
まぁ今やただの中毒者の戯言だがね……。
「大丈夫ですよ…根拠は無いですけど…幻想郷はいつだって幻想郷です。それにあなたには輝夜さんだっている」
飲んだな…
屋台を後にし一服しようとしても、煙草がない…。
やっぱりただの中毒者か……。
「あぁ妹紅、こんな所に……探したぞ」
あれ?霖之助…どうしたの?
「そろそろきれる頃だろう?」
優しい笑顔の霖之助が右手に差し出すは、私の愛する凛!!
なななな何で?
「って勘違いするなよ?ちゃんと代金は払ってもらうぞ?これはあくまで宅配サービスだ」
霖之助!!
「もう祭りも終わってしまったか……まぁ一服でもどうだ?」
私が霖之助の持つパッケージに手を伸ばした刹那の事だ。
金色の光の弾が霖之助をかすめ、その手のボックスが地に落ちる。
私が拾おうとするも、今度は紅の弾がボックスを直撃し吹き飛ばした。
わ…私の凛が……。
哀しみ怒りをこもごもに、弾の飛んできた方向を振り返る。
ブチン。と頭の中で何かが切れる音がした。
輝夜ぁぁぁ……。
「私のアニメを消した怨みを思い知るが良い……!!」
霖之助が後ずさるのを傍目に私は火炎の翼を身に纏い、輝夜も枝を取り出す。
「あのさ…二人とも、もう祭りは終わったことだし、また今度にしないか?」
あぁ、確かに祭りはもうお開きだな……だが!!
「えぇそうね…でも!!!」
『私達の祭り(戦い)はこれからだぁ!!!』
あっ……。
夕闇の中で漏れた声は一歩先を行く慧音の耳に届いてしまった。
「…なぁ妹紅……何度も言っているのだが…」
分かってるよ。慧音…。確かに私も慧音も命がある以上、大切なものがあるんだ。それは命が有限だろうが無限だろうが共通するものもある。しかしな慧音。永遠の命だからこそ大切にしたいものもあるんだよ…!それは確かに私にとって大切なものであり、必要なものなんだ!今の私にはそれがないと…‼
「妹紅!」
聞きたくないよ‼もう…
「妹紅……だから言っているだろう?もう……禁煙したらどうだ?」
凛。日本製の煙草であり、最近幻想郷の雑貨店である香霖堂にちょくちょく入荷している。私が愛用している煙草だ。
もう少し残ってるんだと思っていたが、どうやらさっきの最後の一本だったらしい。
「だいたい不死だ何だと言っても煙草を吸っていい理由には――」
あぁ!ほら!寺子屋の生徒じゃないか!?慧音を呼んでるぞ!
「…まぁいい。これを機に禁煙を考えるんだぞ?妹紅」
そう言って慧音は足早に去ってしまった。
一人取り残されると煙草を吸えないことの口寂しさと、もどかしさが込み上げてくる。
あぁ…吸いてぇ……
吸いたいのに吸えないとこう、イライラもしてくるな……
あぁそうだ…気晴らしに輝夜と殺し合いでもするか…
と、丁度いいところにいるじゃないか、永遠亭の奴らが。
「あら、妹紅じゃない?どうしたのわざわざ私達に話し掛けてくるなんて……」
分かってんだろ新参ホイホイ?って、輝夜はどうした?
「姫様なら見たいアニメがあるとかで帰ったわよ?」
あんだとぉ!?
「どうせ殺し合いしたいとかそんなんでしょ?また明日でいいじゃない?」
五月蠅い!今やり合いたいんだよ!!…くそう帰ったらあの馬鹿に伝えとけ!この前永遠亭に忍び込んで撮り置きのアニメを消したのは私だと!!
「あれあんたの仕業か!!あれのせいで姫様、一週間くらいずっと機嫌悪かったんだから!!」
はっは!んじゃあここで私とやり合うかい?
「うぐぐ…まぁいいわ…今日はもう帰る予定だったし…姫様に伝えといてやるわよ!!」
そう言って鈴仙も去ってしまう。また一人残された…。
祭りもそろそろ終盤となり、一人佇む私も行き場を探す。
縁日で楽しむつもりもない…。かと言ってこの気持ちのまま帰りたくもない…。
どうしたいんだかね?私は……。
「飲みたくはないですか?」
私の言葉を掬い取って、隣でミスティア・ローレライが微笑む。
「今なら貸し切りですよ?」
「ごめんなさい。煙草は置いてないですね…」
あぁいいよ。あれは死を受け入れる身には毒でしかないことくらい百も承知さ……。
「でもあなたは違う…だからこそ必要だった。ですよね?」
最近は幻想郷で楽しいことが立て続けに起こるじゃないか?紅霧、訪れない春、明けない夜、地震、間欠泉、宝船……。そんなことがあるとねぇ、当事者でなくっても楽しくなるんだよ。どこかでこう、心が躍るのさ。
「楽しいですよね。博麗の巫女の活躍は置いといても……」
そう。楽しいよ。でもそう思えば思うほど恐くなるんだよ。そいつらがいなくなっても私は残る。残されてしまう…。
今まではこんな楽しいことなんてなかった…でももう私は知ってしまった……世界は、幻想郷は、こんなに楽しいものなんだと。もう私はそれなしには生きていけないとまで思う…死ぬことなんて出来ないのに……。
もしかしたら、煙草は私の体を蝕み死なせてくれるのかもしれない。そんな一縷の望みに縋るように、煙草を吸っていたんだよ……。
まぁ今やただの中毒者の戯言だがね……。
「大丈夫ですよ…根拠は無いですけど…幻想郷はいつだって幻想郷です。それにあなたには輝夜さんだっている」
飲んだな…
屋台を後にし一服しようとしても、煙草がない…。
やっぱりただの中毒者か……。
「あぁ妹紅、こんな所に……探したぞ」
あれ?霖之助…どうしたの?
「そろそろきれる頃だろう?」
優しい笑顔の霖之助が右手に差し出すは、私の愛する凛!!
なななな何で?
「って勘違いするなよ?ちゃんと代金は払ってもらうぞ?これはあくまで宅配サービスだ」
霖之助!!
「もう祭りも終わってしまったか……まぁ一服でもどうだ?」
私が霖之助の持つパッケージに手を伸ばした刹那の事だ。
金色の光の弾が霖之助をかすめ、その手のボックスが地に落ちる。
私が拾おうとするも、今度は紅の弾がボックスを直撃し吹き飛ばした。
わ…私の凛が……。
哀しみ怒りをこもごもに、弾の飛んできた方向を振り返る。
ブチン。と頭の中で何かが切れる音がした。
輝夜ぁぁぁ……。
「私のアニメを消した怨みを思い知るが良い……!!」
霖之助が後ずさるのを傍目に私は火炎の翼を身に纏い、輝夜も枝を取り出す。
「あのさ…二人とも、もう祭りは終わったことだし、また今度にしないか?」
あぁ、確かに祭りはもうお開きだな……だが!!
「えぇそうね…でも!!!」
『私達の祭り(戦い)はこれからだぁ!!!』
いや、まぁ、……やっぱだめだわ。
こういう雰囲気の作品、嫌いじゃないです。にしても、霖之助さん不憫だw
どこで妹紅は煙草吸うなんて考えるのか・・・。
「またか」って感じです。