紅美鈴は悩んでいた。
自分が止められなかった……
門番である自分が、霊夢や魔理沙を止められなかったせいで、主人に迷惑をかける結果となってしまったのだ。
「私はまだまだ、未熟です」
「美鈴……」
彼女の横に座る、メイド服の少女は慰めの言葉を探し、声をかける。
「仕方ないわよ……」
相手が悪かった、そう、悪かったのだ。
霊夢は持ち前の運で、魔理沙は持ち前の勢いを以て駆け抜けていった。
「だって、私が、私が悪いのにっ! 私だけでなく紅魔館のみんなに迷惑を」
「……あなたがそんな風に悩んでいたなんて思わなかったわ」
意外そうな顔で美鈴の顔を覗きこむ。
見開かれた目はやがて柔和な眼差しに変わり、咲夜は言った
「あなたの次は一体誰が待っていると思ってるの?」
「……咲夜さんです」
「あなた、私が信じられない?」
「いや! そんなことは!」
「なら……」
信じてくれてもいいのよ、と。
─10─
「さて」
美鈴との会話を終え、咲夜は悩んでいた。
(私の後には、お嬢様が控えている)
問題は、そこなのだ。
自分がなりふり構わず全力でいけば、全てを解決する程度のことはできる。
だが、それによってレミリアの安全は保障されたとして、それが主人に対する本当の忠義となるのだろうか、と。
たとえ主人を危険に晒してでも、主人が満足感を得るために楽しんでもらうのが従者としての務めではないのかと、そう考えるのだ。
「咲夜」
その時、咲夜の隣で渦中の人物が語りかけた。
「何も気負うことはないわ。 私は、もう二度と負けないもの」
「お嬢様……」
「私が信じられない?」
ふっと微笑むレミリア。
先ほど、自らが美鈴に発したその言葉。 自分に向けられると意味が変わる、その言葉。
「信じられない、などということはあり得ません、しかし……しかしっ!!」
「例えば、よ? もし咲夜が、私に嘘をついたとしても咲夜を責めることはしないわ」
えっ、という顔をする咲夜に満足し、レミリアは続ける。
「咲夜、あなたに責任を問い、罰を与えようとすることは私にも少なからずリスクが発生するのよ」
咲夜とて、それは知っていた。
自分の負担が増えるということ、それは主人をもリスクを抱えることとなり、諸刃の剣に他ならないのだ。
「もっとも、私が本当に必要だと判断した時、その時は咲夜、たとえあなただろうと容赦しないわ。 それだけは覚えておいて」
「……はい」
「これは主従関係において大切なこと……私は咲夜が駄目だと思ったらすっぱりと切り捨てるだろうし、咲夜が私を見限ったなら、私はそれまでの存在というだけよ」
─9─
咲夜との会話後、一人で思索していたレミリアに二つの影が接近した。
「やー、涙の出る演説だったねぇ……お嬢様」
「……挑発なら余所でやりなさい、私は忙しいのよ」
「はっはっは、駄目だよ神奈子、邪魔しちゃ」
洩矢諏訪子、八坂神奈子その両人である。
「今のうちにせいぜい笑っておくがいいわ、次はあなた達よ」
「明日は我が身ってかい」
「怖い怖い」
「くっ」
イライラさせる。
そうさせるのが目的だとわかっていても、挑発に乗ってしまう自分をまだまだだと思った。
「いっぺん、痛い目を見ないとわからないみたいね」
「お、やるのかい」
「ふふ」
レミリアは答えた。 そんなことはしない、と。
「生憎と、勝手に自爆してくれる輩に売るほど喧嘩の在庫はないのでね」
─8─
「どう思う?」
「どう思うって、そりゃあ」
レミリアが最後の捨て台詞を吐いた時、その双眼は明らかに神奈子を捉えていた。
なにかがある。 そう思わせる"重さ"があの言葉尻にはあった。
「打って出るか、静観か……」
「ま、今回私は何も助言しないよ」
「ちょ、ちょっと、ここに来てその態度はひどいんじゃない?」
「ふふ、忘れちゃいけないよ神奈子。 いまでこそ早苗の為に丸くなっているけど、私達は基本的に敵対しているんだから」
この時、神奈子は焦っていた。
挑発に行ったつもりが、挑発で返され、それが気になって仕方ない。
「ちっ、たかだか500そこらの吸血鬼風情が調子に乗ってくれるね……」
打って出るのはいい、それもまた面白い、が。
「失敗した時の被害が大きすぎる……か」
万に一つ、そうなるとあの吸血鬼はここぞとばかりに嘲笑し、それは周囲に伝染するだろう。
神としての威厳、カリスマ性は保たねばならない。
「保守的、いつからこうなったか」
神奈子は自嘲的な笑みと共に、審判の時を待つ。
─7─
「あーうー、これは困ったことになったねぇ」
結局、神奈子は動かなかった。
それは間接的に、自分への脅威が増したことを意味する。
神奈子が打って出てくれた場合、どちらに転んでも自分は"美味し"かったのだ。
「まさかあの神奈子が静観なんて……うーん…………」
困った困ったと連呼する彼女の顔は、笑っていた。
「楽しい、楽しいねこれは」
逆境、絶体絶命、背水の陣。
一歩間違えれば破滅、だがそれさえも、彼女を止める楔とはならない。
むしろ、高揚さえ感じていた。
「そこの悟りさん、聞いてるよね?」
返答は、ない。
「……ま、いいや。 これは私の大きなひとりごとなんだけど、これから私は"切り札"を使わせてもらうよ。
誰も、そう例え神でさえ、邪魔することのない、文字通りの切り札……」
彼女は片手を大きく上げ、"覚悟"を込めて振り下ろした。
「邪魔しようってんなら止めないけど、忠告はしたかんね!!」
─6─
「不味い……」
不味いまずいマズイ。
洩矢諏訪子を観察し、その出方を窺っていたいたが、完全に裏目に出た。
「なんてこと……あいつ、この期に及んであんなもの温存しているなんて」
諏訪子は大きな独り言と言っていたが、"それ"を心で読みとった時、さとりは驚愕した。
見た目とは裏腹に、あの計算高さ……この場面でまだ切り札を隠し持っていたとは、看破できなかった。
それもそのはず、あの切り札が切り札でありえる為には、樹木の枝のように複雑に分かれた未来のうち、たった一本の先にある未来を見据えなければならないのだ。
よくもまぁ、そのような賭けに出たものだ。
「くっ……」
この真実を知っているのは、恐らく現時点で自分のみ、だが、それを誰かに伝えることは叶わない。
これは厳然たるルール、いくら地底の主とて変えられない取り決め。
人の心を読む、その能力により彼女は人の嘘を暴くことを封じられていた。
むろん、さとり本人が承諾したことである。
それが幻想郷にて、ことこの時、この瞬間には特に守らねばならなかった。
「お燐……は大丈夫、問題はあの子ね……」
いま、自分にできることは身内の誰かが暴走してしまわないうちに、厄災を片付けること。
「お燐、後は頼んだわよ」
諏訪子の切り札を唯一知る者。
自らもまた、切り札を以て対抗すべく、さとりはその手札を切った。
─5─
「うーん……」
主人、さとりは言った、『後を頼む』、と。
燐本人とて、それは重々承知だった。
なんせ自分の後に控えるのは"あの"お空である。
信用していないわけではない、むしろその逆だ。 この上なく信用している。
だが残念なことに、信用と信頼は違うのだ。
「例えばブラフをかまして、それに気付いてほしいとか、そんなことはお空には無理かな……無理かも…………無理だ」
ならばいっそ、ど正直に行ってみるか?
「……さとり様」
どう選択をしても、お空か自分、どちらかが危険に晒される。
その決断を自分がしなければならない。
というか、お空の場合、どちらを選択してももれなく自爆してしまいそうな気がする。
それが燐にとって唯一最大の懸念材料だった。
─4─
「うにゅ?」
─3─
「はぁ……お姉ちゃんはさぁ、色々、こう、心配しすぎだよね」
お空の逆鱗(むしろパンドラの箱?)に触れるには、みんなの勇気が足りなかったのかな。
危なすぎるから触れられなかったのか、はたまた危険がなさすぎて誰ぞ触れようともしなかったのか……
「なぁんて、ね」
無意識に私のところまで来るように仕組んであるから、お空に誰も干渉できないのは当たり前だ。
こういう時無意識とは便利なもので、無意識なので誰も不思議に思わないし、感知することもない。
いつの間にかお空の出番は過ぎ去り、私にたどり着く、そしてそれはごくごく自然なことであると思う。
「なんというか、張り合いがないよねぇ、みーんなこんな簡単に騙せちゃうと」
ま、だからと言ってタネあかしをする気はさらさらないんだけど。
「私って博打の才能あるなぁ……」
この発言とて、誰も聞くことも、認識することもできない。
だってそうだろう、誰も道端にあるこいしに耳を傾けたりはしないのだから。
─2─
「そろそろ、潮時ね」
いま、彼女こと八雲紫の目の前には多くの思惑が集まっていた。
それらは混ざりあい、凝縮し、膨大な量となっている。
過去に疑念であったもの、信頼であったもの、執念であったもの。
それらは全て、いまや意味をもたず、ただただそこに存在していた。
八雲紫は扇子で自らの顔を半分隠し、その口元が見えないようにする。
勝利の確信した笑みを隠すためか、敗北を認めたくない苦悩を隠すためか。
「私の最後の一手は、これよ」
─1─
「ダウト」
「な……」
周囲がざわめき、喧騒が喧騒を呼び収拾がつかなくなる。
「おおおおおおお膣きなsいみんな!!」
お前が一番落ち着けというツッコミを一身に受けた紫が、渦中の人に問いかける。
「あなた、いまなんて?」
「ダウトと言ったぁぁぁぁぁ!!」
ここぞとばかりに立ち上がり腕を組んだのは、レミリア・スカーレットその人である。
「残念だったわね、実は1、エースは全て…………ここにあるのよ!!」
ババァーンという効果音と共に、レミリアが公開した四枚のカード、それは紛れもなく全て【A(エース)】であった。
「だからあなたの出したカードがAであるはずがない……ふふ、我ながら完璧な推理だわ」
「ちょ、ちょおおおっとおおおお!! そんなのなしよ! ずるだわ! 認められないいぃぃい!」
「お嬢様、さすがのメイドもそれはドン引きですわ……」
「門番でもドン引きしますねこれは……」
「うにゅ?」
「まぁ、ルール上は問題ないけどねぇ……」
「汚いさすが吸血鬼汚い」
「にゃあああああ!! 勝てばいいのよ勝てば!! だって私まだ一回も勝ててないもん!!」
「レミリアは顔に出過ぎなんだよなぁ」
これまで十三回連続ビリのレミリアが暴れ出した頃、藍と橙は目の前のトランプの山を仕分ける作業に入っていた。
「やれやれ、負け犬共が騒いでるぜ」
「毎回私達でワンツーフィニッシュするのも飽きてきたし、次は負けてあげようかしら」
博麗神社の夜は、更ける。
自分が止められなかった……
門番である自分が、霊夢や魔理沙を止められなかったせいで、主人に迷惑をかける結果となってしまったのだ。
「私はまだまだ、未熟です」
「美鈴……」
彼女の横に座る、メイド服の少女は慰めの言葉を探し、声をかける。
「仕方ないわよ……」
相手が悪かった、そう、悪かったのだ。
霊夢は持ち前の運で、魔理沙は持ち前の勢いを以て駆け抜けていった。
「だって、私が、私が悪いのにっ! 私だけでなく紅魔館のみんなに迷惑を」
「……あなたがそんな風に悩んでいたなんて思わなかったわ」
意外そうな顔で美鈴の顔を覗きこむ。
見開かれた目はやがて柔和な眼差しに変わり、咲夜は言った
「あなたの次は一体誰が待っていると思ってるの?」
「……咲夜さんです」
「あなた、私が信じられない?」
「いや! そんなことは!」
「なら……」
信じてくれてもいいのよ、と。
─10─
「さて」
美鈴との会話を終え、咲夜は悩んでいた。
(私の後には、お嬢様が控えている)
問題は、そこなのだ。
自分がなりふり構わず全力でいけば、全てを解決する程度のことはできる。
だが、それによってレミリアの安全は保障されたとして、それが主人に対する本当の忠義となるのだろうか、と。
たとえ主人を危険に晒してでも、主人が満足感を得るために楽しんでもらうのが従者としての務めではないのかと、そう考えるのだ。
「咲夜」
その時、咲夜の隣で渦中の人物が語りかけた。
「何も気負うことはないわ。 私は、もう二度と負けないもの」
「お嬢様……」
「私が信じられない?」
ふっと微笑むレミリア。
先ほど、自らが美鈴に発したその言葉。 自分に向けられると意味が変わる、その言葉。
「信じられない、などということはあり得ません、しかし……しかしっ!!」
「例えば、よ? もし咲夜が、私に嘘をついたとしても咲夜を責めることはしないわ」
えっ、という顔をする咲夜に満足し、レミリアは続ける。
「咲夜、あなたに責任を問い、罰を与えようとすることは私にも少なからずリスクが発生するのよ」
咲夜とて、それは知っていた。
自分の負担が増えるということ、それは主人をもリスクを抱えることとなり、諸刃の剣に他ならないのだ。
「もっとも、私が本当に必要だと判断した時、その時は咲夜、たとえあなただろうと容赦しないわ。 それだけは覚えておいて」
「……はい」
「これは主従関係において大切なこと……私は咲夜が駄目だと思ったらすっぱりと切り捨てるだろうし、咲夜が私を見限ったなら、私はそれまでの存在というだけよ」
─9─
咲夜との会話後、一人で思索していたレミリアに二つの影が接近した。
「やー、涙の出る演説だったねぇ……お嬢様」
「……挑発なら余所でやりなさい、私は忙しいのよ」
「はっはっは、駄目だよ神奈子、邪魔しちゃ」
洩矢諏訪子、八坂神奈子その両人である。
「今のうちにせいぜい笑っておくがいいわ、次はあなた達よ」
「明日は我が身ってかい」
「怖い怖い」
「くっ」
イライラさせる。
そうさせるのが目的だとわかっていても、挑発に乗ってしまう自分をまだまだだと思った。
「いっぺん、痛い目を見ないとわからないみたいね」
「お、やるのかい」
「ふふ」
レミリアは答えた。 そんなことはしない、と。
「生憎と、勝手に自爆してくれる輩に売るほど喧嘩の在庫はないのでね」
─8─
「どう思う?」
「どう思うって、そりゃあ」
レミリアが最後の捨て台詞を吐いた時、その双眼は明らかに神奈子を捉えていた。
なにかがある。 そう思わせる"重さ"があの言葉尻にはあった。
「打って出るか、静観か……」
「ま、今回私は何も助言しないよ」
「ちょ、ちょっと、ここに来てその態度はひどいんじゃない?」
「ふふ、忘れちゃいけないよ神奈子。 いまでこそ早苗の為に丸くなっているけど、私達は基本的に敵対しているんだから」
この時、神奈子は焦っていた。
挑発に行ったつもりが、挑発で返され、それが気になって仕方ない。
「ちっ、たかだか500そこらの吸血鬼風情が調子に乗ってくれるね……」
打って出るのはいい、それもまた面白い、が。
「失敗した時の被害が大きすぎる……か」
万に一つ、そうなるとあの吸血鬼はここぞとばかりに嘲笑し、それは周囲に伝染するだろう。
神としての威厳、カリスマ性は保たねばならない。
「保守的、いつからこうなったか」
神奈子は自嘲的な笑みと共に、審判の時を待つ。
─7─
「あーうー、これは困ったことになったねぇ」
結局、神奈子は動かなかった。
それは間接的に、自分への脅威が増したことを意味する。
神奈子が打って出てくれた場合、どちらに転んでも自分は"美味し"かったのだ。
「まさかあの神奈子が静観なんて……うーん…………」
困った困ったと連呼する彼女の顔は、笑っていた。
「楽しい、楽しいねこれは」
逆境、絶体絶命、背水の陣。
一歩間違えれば破滅、だがそれさえも、彼女を止める楔とはならない。
むしろ、高揚さえ感じていた。
「そこの悟りさん、聞いてるよね?」
返答は、ない。
「……ま、いいや。 これは私の大きなひとりごとなんだけど、これから私は"切り札"を使わせてもらうよ。
誰も、そう例え神でさえ、邪魔することのない、文字通りの切り札……」
彼女は片手を大きく上げ、"覚悟"を込めて振り下ろした。
「邪魔しようってんなら止めないけど、忠告はしたかんね!!」
─6─
「不味い……」
不味いまずいマズイ。
洩矢諏訪子を観察し、その出方を窺っていたいたが、完全に裏目に出た。
「なんてこと……あいつ、この期に及んであんなもの温存しているなんて」
諏訪子は大きな独り言と言っていたが、"それ"を心で読みとった時、さとりは驚愕した。
見た目とは裏腹に、あの計算高さ……この場面でまだ切り札を隠し持っていたとは、看破できなかった。
それもそのはず、あの切り札が切り札でありえる為には、樹木の枝のように複雑に分かれた未来のうち、たった一本の先にある未来を見据えなければならないのだ。
よくもまぁ、そのような賭けに出たものだ。
「くっ……」
この真実を知っているのは、恐らく現時点で自分のみ、だが、それを誰かに伝えることは叶わない。
これは厳然たるルール、いくら地底の主とて変えられない取り決め。
人の心を読む、その能力により彼女は人の嘘を暴くことを封じられていた。
むろん、さとり本人が承諾したことである。
それが幻想郷にて、ことこの時、この瞬間には特に守らねばならなかった。
「お燐……は大丈夫、問題はあの子ね……」
いま、自分にできることは身内の誰かが暴走してしまわないうちに、厄災を片付けること。
「お燐、後は頼んだわよ」
諏訪子の切り札を唯一知る者。
自らもまた、切り札を以て対抗すべく、さとりはその手札を切った。
─5─
「うーん……」
主人、さとりは言った、『後を頼む』、と。
燐本人とて、それは重々承知だった。
なんせ自分の後に控えるのは"あの"お空である。
信用していないわけではない、むしろその逆だ。 この上なく信用している。
だが残念なことに、信用と信頼は違うのだ。
「例えばブラフをかまして、それに気付いてほしいとか、そんなことはお空には無理かな……無理かも…………無理だ」
ならばいっそ、ど正直に行ってみるか?
「……さとり様」
どう選択をしても、お空か自分、どちらかが危険に晒される。
その決断を自分がしなければならない。
というか、お空の場合、どちらを選択してももれなく自爆してしまいそうな気がする。
それが燐にとって唯一最大の懸念材料だった。
─4─
「うにゅ?」
─3─
「はぁ……お姉ちゃんはさぁ、色々、こう、心配しすぎだよね」
お空の逆鱗(むしろパンドラの箱?)に触れるには、みんなの勇気が足りなかったのかな。
危なすぎるから触れられなかったのか、はたまた危険がなさすぎて誰ぞ触れようともしなかったのか……
「なぁんて、ね」
無意識に私のところまで来るように仕組んであるから、お空に誰も干渉できないのは当たり前だ。
こういう時無意識とは便利なもので、無意識なので誰も不思議に思わないし、感知することもない。
いつの間にかお空の出番は過ぎ去り、私にたどり着く、そしてそれはごくごく自然なことであると思う。
「なんというか、張り合いがないよねぇ、みーんなこんな簡単に騙せちゃうと」
ま、だからと言ってタネあかしをする気はさらさらないんだけど。
「私って博打の才能あるなぁ……」
この発言とて、誰も聞くことも、認識することもできない。
だってそうだろう、誰も道端にあるこいしに耳を傾けたりはしないのだから。
─2─
「そろそろ、潮時ね」
いま、彼女こと八雲紫の目の前には多くの思惑が集まっていた。
それらは混ざりあい、凝縮し、膨大な量となっている。
過去に疑念であったもの、信頼であったもの、執念であったもの。
それらは全て、いまや意味をもたず、ただただそこに存在していた。
八雲紫は扇子で自らの顔を半分隠し、その口元が見えないようにする。
勝利の確信した笑みを隠すためか、敗北を認めたくない苦悩を隠すためか。
「私の最後の一手は、これよ」
─1─
「ダウト」
「な……」
周囲がざわめき、喧騒が喧騒を呼び収拾がつかなくなる。
「おおおおおおお膣きなsいみんな!!」
お前が一番落ち着けというツッコミを一身に受けた紫が、渦中の人に問いかける。
「あなた、いまなんて?」
「ダウトと言ったぁぁぁぁぁ!!」
ここぞとばかりに立ち上がり腕を組んだのは、レミリア・スカーレットその人である。
「残念だったわね、実は1、エースは全て…………ここにあるのよ!!」
ババァーンという効果音と共に、レミリアが公開した四枚のカード、それは紛れもなく全て【A(エース)】であった。
「だからあなたの出したカードがAであるはずがない……ふふ、我ながら完璧な推理だわ」
「ちょ、ちょおおおっとおおおお!! そんなのなしよ! ずるだわ! 認められないいぃぃい!」
「お嬢様、さすがのメイドもそれはドン引きですわ……」
「門番でもドン引きしますねこれは……」
「うにゅ?」
「まぁ、ルール上は問題ないけどねぇ……」
「汚いさすが吸血鬼汚い」
「にゃあああああ!! 勝てばいいのよ勝てば!! だって私まだ一回も勝ててないもん!!」
「レミリアは顔に出過ぎなんだよなぁ」
これまで十三回連続ビリのレミリアが暴れ出した頃、藍と橙は目の前のトランプの山を仕分ける作業に入っていた。
「やれやれ、負け犬共が騒いでるぜ」
「毎回私達でワンツーフィニッシュするのも飽きてきたし、次は負けてあげようかしら」
博麗神社の夜は、更ける。
カードゲームだとは思ってましたが、うん面白い。
中盤、山から地底まで巻き込むなにやら大きな陰謀が…
4、お空はかわいいな
ラスト、カードかよ!結局カードなのかよ!
以上、俺の心象
なるほど…霊夢は運で、魔理沙は思い切りで上がったわけか
5回読んだ
俺もまだまだだな
ダウトとは気づきませんでした
準備が整ったら一気に畳みかけるのって割と定石だよね