Coolier - 新生・東方創想話

科学世紀の魔法少女

2011/01/31 22:53:32
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 どこまでも現実的な現実と、どこまでも幻想的な現実。
 どちらかを選ぶことは今のあたしにはできないし、そのどちらも現実として存在しているのは事実だ
 もしもあたし以外にそれを理解する人がいないのだとしても。




 それはやっぱり寒いある日のことだった。
 ゆっくりと、できるだけ静かに扉を閉める、忘れずに鍵をかけて、そのままポケットの中へ退避させる。
 階段もできるだけ静かに降りていく、断っておくが、やましいことがあるわけじゃない、時間を考えてのことだ。
 吐く息は、白い。冬の深夜なのだから当然と言えば当然なのだけれど、寒いのはあまり歓迎できることじゃない。私は少しだけ不満を漏らす。
 階段を降りきって、地面を踏む、最近雨は降っていないし、凍結の心配はなさそうだ。と自転車置き場へ目をやると、結露してしまったのか、白く凍った水分がサドルに吸い付いていた。
 あーあ。と声を漏らしてしまう。タオルか何かでふき取れば、快適に走ることが出来る些細な問題なのだが、大きな問題として、タオルも何も持っていなかった。
 部屋に取りに帰るのはすこし億劫だし、気にせず乗るのは……スカートとタイツに水がしみこみそうで嫌だ。そんなふうに悩んで、私は徒歩を選択した。そもそもそんなに離れた場所じゃないし。決めて私は歩き出す。
 もし世界このあたりの星空選手権とかがあったら、私は多分優勝できる。この狭い地域の中で、どこが一番きれいに星を見られるかを競う大会で、地元の私は大幅有利、年季が違うと勝者コメントも用意できている。
 そんなどうでもいい妄想をしながら歩く、星空を見るのが好きで、そのことには苦痛も何もあったものじゃないが、観測場所まで行くのはやはり疲れる、汗もかく。冬だからと着込みすぎると大変だ。何故タオルを取りに行かなかった数分前の自分。
今向かっている丘も私の知る観測ポイントの一つなのだが、片側は勾配のきつい坂、もう片側は崖に近い状態と人を遠ざけるような場所にある。そのおかげもあるのか人口の光が薄い場所で観測することが出来る。引き換えがこの運動というわけだ。そうとでも考えないとやっていられない。
 何度上っても辛い坂道をひぃひぃ言いながらのぼる、ここは自転車でもあんまり変わらない辛さだ、きっと。
 小さな登山のような感覚を感じていたら、月の光が迎えてくれた。少し遅れて星達が視界一杯に広がっていく、のぼりきったごほうびと考えていいよね。
 息をついて立ち止まると、かいた汗が冷えてきたことを自覚させられる、上着を羽織って防寒対策、夜空に目を向けて時間の確認。癖になっているようなもので、なんとなくやってしまう。
 0時21分46秒。予定よりは遅れた時刻だったので、帰る時間を早めにと逆算をする。だけれどそう頭が動くよりも先に私の目は見慣れないものを捉えていた。
 ちょうど夕闇が降りた直後の月のような大きさで、視界の端にぼんやりと浮かぶ赤い光。だけれど距離とすれば月よりも明らかに近い。目を凝らすとそれが人の形をしているように見え、見間違いか、最近疲れているからなー。と思考をつむいだ瞬間、その人はこちらを見た。目が合った。気がした。
 あわてて目をそらしたけれど、どうやら気のせいではなかったらしく、赤い光を纏った人はこちらに向かって、飛んで来ていた。明らかに宙に浮いているのにそれが当然だとでもいうように、目の前にゆっくりと降り立つ。
それは少女だった、多分まだ中学生とかそのあたりの、深夜に歩いていたら何事だとなりそうな感じだったけれど。その衣装を見ると、普通の時間でも何事だとなりそうだ。ピンクを基調とした衣装は全体的にひらひらしていて、半袖、スカートからは生足が覗いているし、大分寒そうに見えた。それなのに彼女の表情はそれを感じさせない、そんなことを考えていたら、花のように笑みを浮かべて話しかけられた。
「こんばんは、お姉さん」
「はじめましてこんばんは」
「目が合ったと思ったので飛んで来たんですけど……」
「えぇ、そうみたいね、ところであなたは」
「あ、ごめんなさい、白紙涼香。白い紙とかいてしろしです。魔法少女ってやつをやっています」
「宇佐見蓮子よ」
 茶色い髪を揺らして彼女は言った、まだ子供のような声だけれど、夜の空気を震わせるはっきりした声だった、こちらも自己紹介を返す。
 こちらにもさまざまな付帯属性があるのだけれど、相手の名乗りを上回るものがなかったので、多くを語る気にはなれなかった、というより驚きが先に来て、上手く頭が廻らなかったかもしれない。
 それでも何とか冷静に挨拶を交わしたことはほめられるべきだと思う、涼香ちゃんも、こんな一般人が非常識な場面に立ち会って、ここまで冷静だということを感じ取って欲しかった。
 何はともあれ、ある冬の日、私は魔法少女に出会った。




「ってことがあったのだけれど」
「蓮子、あなた疲れているのよ。もしくは私疲れているのだけれど」
 昼下がりの学生食堂、ちょうど一番の賑わいを見せる時間で、雑音が飛び交っていた、私はどちらかというと賑やかなところでする食事が好きだ。そのにぎやかさに私たちは加担していないけれど。
 私の話を聞いた相棒、マエリベリー・ハーンの反応は冷ややかだった、本当に全くどうしようもないといった仕草で、紅茶を口に運び、やれやれと首を横に振る。
 ちょっと悲しい。でもこのぐらいは想定内だ、もし私がメリーの立場だとしても懐疑的にならざるを得ない話題だし、いや懐疑的になるというよりも、全力で否定するかな。
 それでも事実は事実だ、知らぬ間にヴァーチャルの世界に迷い込んだということは考えにくいし、帰宅した後に汗を吸った服を着替えたあとも残っている。
 だから必死に真剣であることをアピールする。することと言えば真剣な表情をするぐらいだけど。
数秒の沈黙の後、私の涙ぐましい努力が実を結んだのか、メリーはしばらく宙に視線を彷徨わせていたが、こちらを向いてつぶやいた。
「百歩以上譲歩するとして……魔法ねぇ」
「譲歩しすぎじゃない?」
「いいえ、これぐらいでちょうどいいのです。この科学世紀に魔法なんて事をのたまうということはそれほどのことよ」
「まぁ、殆どありえないことよね」
「えぇ、経験上、存在しているのが信じられないわ」
 彼女はカップの持ち手を細い指でなぞりながら、目を瞑り言葉を紡いでいく。長い文をすらすらと、原稿があるんじゃないかと疑うぐらいになめらかに。
「問題は、今回これを持ち込んだのが蓮子、貴女だって言うこと。何よりも宇佐見蓮子が宇佐見蓮子であるゆえんは、このあたりの問題に対して適当なものを持ち込んだりはしない、と私は考えているの。これはいわば信頼というものね、これまでにだって荒唐無稽な話は何度かあったのだけれど、それらも全て一応の裏づけがあったわ、弱い強いは別にしてね。だから私は今回も信頼し、信用して立ち上がりたいと思う」
「そう嬉しいわ。でも随分長い前振りがあるのね」
「だから、もし今回なんでもなかった、単なる悪戯とかだったら……覚悟をしてもらうわ」
「具体的には?」
「ケーキバーとアイスバーと、その他もろもろ」
 財布が悲鳴を上げることになりそうだ。いやいやメリーをきっちり涼香ちゃんにあわせることが出来れば問題は無いはず。
 問題はどうやって彼女を見つけ出すかということぐらいだ。それを伝えると呆れたように苦笑しながら、大問題じゃない。と一言。ごもっともだと思う。
 こうして少しだけ先になる予定を立てて、食事は終った、あんまり居座ってしまっては食堂の回転率などにいい影響を与えないので私たちは席を立つ。
 食器をかたして入り口兼出口から退出する、午後の予定を復習しながらメリーに尋ねてみた。
「メリー今日の午後は?」
「きっちり授業が埋まっているわね、暇なのは休日くらい」
「むぅ、それじゃ一緒に探しに行くのは難しいじゃない」
「学校が終った後なら、大抵夕方になっちゃうけど」
「夕方か、夕方ね……」
 なんとなく、それでいいような気がした。彼女に会うとしたら夕方か、夜の時間帯だと、勘が告げている。中学生が夜ふらふらとは中々不健康的であるけれど。
そんな予定を立てたにも関わらず、それから数日間、あの日の私は何故次に会う約束をしなかったのかと悔しくなるぐらいに、彼女の姿を見かけることさえ、出来なかった。殆ど毎日のように散歩に出て、時間を視ようともせず夜空に視線を彷徨わせたというのに。
 メリーは会う度(ほぼ毎日だ)にどんなケーキとか、どんなアイスとか、想像をめぐらせているようだった、くそう、ふくよかになってしまえ。
 こうなってくると、ほんの少しだけ幻を見てしまったのではないかと考える、それは流石に悲しい、主に財布が。他の可能性もあるけれど……そちらはあまり考えたくなかった。
「で、未だに足跡すらたどれず……と」
「返す言葉もございません……」
 思わずテーブルに顔を伏せてしまう、私が悪いことをしたわけじゃないけど、約束を取り付け忘れたこと以外は。
 しかしこれほどまでに人探しが難しいとは思わなかった。どちらかというと人を探すのはメリーの得意分野で、自分では殆どしたことが無い、それならメリーに彼女の特徴を伝えれば良いとも思うのだけれど、なんとも恥ずかしいことに、きっちりとしたイメージが描けないのだ。それこそ特徴的な衣装を忘れたわけではないけれど、もし街中にあの衣装で彼女が居たとしたら、私は話しかけるのをためらうだろう。
 故におぼろげな記憶をたどって、横顔やら雰囲気が似た人が居ないかと散策していて、今の状況がある。
 そんな風に、親友からのプレッシャーと焦りの間で板ばさみになりながら探しまくった結果。幸運は私の元へと転がり込んできた


 ある日の日が落ち始めて闇が降りてくるころ、メリーをつれて夕食の買い物に出たとき、涼香ちゃんに出会うことが出来た。
 書店で立ち読みをしている彼女は、あの日よりずっと地味な印象で、ずっと厚着だった。ほんの少しだけ、あの姿で居たらどうしようと思っていたけれど。ほかにも、髪の毛の色が変わっているとかそういうことはなかったのが幸いだった。
 私は喜びを悟られないようにして彼女に近づいていくと、どこと無く残念そうなメリーを後ろに再開の挨拶をした。
「どうも、おひさしぶり」
「あ、宇佐見さんお久しぶりです、そっちの人はお友達ですか?」
「えぇ、親友のメリ……」
「マエリベリー・ハーンよ。蓮子は発音が下手でねぇ」
「白紙涼香です、あたしもあまり発音得意じゃないですけど……」
 朗らかに笑って会話に割り込んできたメリーは悪戯っぽく笑って、彼女と握手を交わした、古い挨拶だし割り込むのは良くないと思う。もう、そのうちきっちり発音してあげるから。
 握手を解いた二人はその後他愛のない話をしていて、初対面なのによくやると思わせるぐらいだった、もちろん若干の緊張は漂っていたけれど、いきなり殴りあうということも無く。そういうことをしばらくしていた後で、涼香ちゃんのほうからそろそろ帰宅すると告げられ、私たちは分かれた。
 今度は次に会う約束を忘れなかったけれど。でもそれよりも重要なことを確認するため私は問いただす。
「どうかしら?」
「……残念ながらケーキもアイスもお預けみたい」ため息を一つついて、メリーは本当に残念そうに続ける。
「今すぐに消えてもおかしくない量の結界よ、それこそ結界を着た人間みたいな感じね」
 予想できた言葉がそこに転がってきた。




 科学世紀。科学が人々の心に根付いて、不思議はないとまで言い切れるようになった時代。
 それでも私たちは解明できない謎があることを知っているわけで、そのぶん大衆よりは賢いかもしれない、表には表れない差だけど。
 さて、そんな私たちの前に転がった問題は神隠しの予兆であって相対的に見るとこの問題に対して、私たちはエキスパートと言える。他に比べる相手が居ないのが原因だ。
 神隠しの原因として、結界が槍玉にあがるのだけれど、調査結果(そこまで大仰なものではないけれど)によると開いた結界に飛び込んでしまうのが大半。残りの少数は自ら結界を開けてしまうパターンだ。
 少数なのは、自ら結界に関わろうとする奇特な人間が少ないこと、またこの時代に普通に生きているだけでは結界と関わるようなことが少ないこと。
 更に非公式(これまでのもまったく公式ではない)のデータによると、結界と関わりやすいというのは、なんらか普通じゃない必要があるみたい。ものすごく曖昧な話だけれどね。
 メリーの存在しているのが信じられないって言葉はここに端を発するところがあったりするんじゃないかな。私も魔法少女が現存するなんてこと考えもしなかったけど。
 私たちがすることはそういう人に対して、あなた消えますよ。まぁこんな直接的な言い方じゃないけれど、アドバイスすることだ。誰だっていきなりこの世から消えたくは無いだろうし、残してしまう事柄への抵抗もあるはずで、そういうことがないように注意する、それが私たちのしていることになる。
 中にはこちらの注意を怪訝な顔で受け取って、全く理解できないというような人も居るのだけれど。
ただ、今回ははっきりとものを言っても大丈夫だと思う。神隠しなんて魔法少女に比べたら十分に現実的だし、彼女にとっても受け入れやすい内容じゃないかな。
 だから、はっきりと告げる物事を決めて、私たちは三度目の邂逅を果たした。
 日が落ち、寒さが加速していく時間帯に喫茶店で三人。
親御さんごめんなさい、と形の上で謝って、なるべく人が寄らない席を選ぶ。さすがに漏れ聞かれた会話で、珍妙な三人組と噂が立つのはごめんだ。
 それぞれの飲み物と甘味が用意され、ちなみにここの勘定はメリーがすることになっている、テーブルが落ち着いたところで私から話を切り出した。
「今日来てもらったのは、ちょっと大事な話があるからなんだけど」
「大事な話……ですか?」
「えぇ、涼香ちゃんが魔法少女って事に関係する話」
「……?」
 首を傾げる彼女、一拍置いて続ける。
「はっきり言って、このままだと貴女は神隠しにあうわ」
「神隠し……、ですか?」
「えぇ。言葉の意味はわかるわよね」
「そうですね」
「突然のことでびっくりすると思うんだけれど、私たちにはそういうのがわかるのよ。これまでにも、何人かこういう風に忠告をした事もある」
「なるほど、それで……」
「えぇ、ただ心配しなくても、変身しないで普通に日々を過ごしていれば、問題は無いはずよ」
 あまり驚きが感じられない表情で、彼女はこちらの話を聞いていた、冷静なのはいいことだけれど、少し拍子抜けだ。
 解決策として異常である部分を少なくするということは、これまでにも有効だった、だから今回もそれに準じて案をだす。
 彼女はすこし考えている様子だったけれど、こっちの目を見ると、微笑して言った。
「ご忠告ありがとうございます。……ただ、あたしはこれを辞めるわけにはいかないんです、たとえ消えてしまうのだとしても」
「……え?」
 思わず間抜けな声を出してしまう、いま何と言った? 視線を合わせたメリーも困惑の表情を隠せないようだった。思わず声が大きくなってしまう。
「い、いや。だって、消えちゃうんだよ? 戻ってこられる保証も無い、結界の向こう側に!」
「そう……ですね。あの……魔法少女なんてこの時代居てもいないようなものじゃないですか? 確かにあたしは普通の生活もしていますし、友達もいます。でも、戦っているあたしのことを知っている人は一人も居ないんです。いえ、戦いすら知っている人は居ないんですよ。今はもう戦うこともないけれど、命がけで戦ったことを誰一人知らないんです、何も無い。まるで夢、幻想の類のような……。でもあたしには両方現実なんです、空を飛ぶことも、学校で勉強することも、全部現実。ただ自分しか知らない現実が確かにあるんです、ならあたしはそれを全力で守らないといけないと思うんです、誰一人見て無くても、誰一人気づかなくても、誰一人そばに居なくてもっ!」
 最後の方は言葉を荒げるようにして、彼女は言い切った。その目はどこまでも真剣で、一瞬こちらが言葉を失うぐらいだった。若干ざわつく空気を感じたのか、彼女は頭をさげ、取り乱しました。と謝罪する。
「だから……その、本当にごめんなさい。あたしなんかを助けてくれようとしたのは嬉しいんですけど、その忠告を聞くわけには行かないんです」
 彼女が冷静にそういうと場に沈黙が降りる。
 何もいえない私はメリーが彼女を見つめる視線を、ただただ見ているだけだった。


「あぁもうっ!」
 部屋に帰るとついつい大きな声を上げてしまった、彼女の覚悟は本物だ、だけれどそれは残される人々に対して、あまりにも軽い覚悟だ。
 確かに、自らが生きる現実が幻想のようなものとして他者から認識すらされないのは辛い。だけれども、普通に生きているという現実を棄てるようなことだろうか、はっきり言って子供の浅はかな考えだと私は思った。
「……」
「ちょっとメリー、どうしたの?」
 メリーはずっと黙っていて、何か考え事をしているかのようだった。こちらの苛立ちを知ってかしらずか、難しい顔を崩しはしない。
 こういうときはあまりものを言っても無駄になることが多いので、メリーのほうから話し始めるのを待つことにする、冷えている部屋に暖をいれ、好みの分量でコーヒーを入れる、一連の普段しなれた動作が頭をゆっくりさましていき、二人分のコーヒーをテーブルに並べたとき、彼女が口を開いた。
「……たぶん、嘘をついているわ」
「へ?」
「彼女のことよ」
「何が……嘘なの?」
 メリーが発したすこし意外な言葉に驚きながら、先を聞いてみる。
「何が、というところまではいかないけれど。たぶんだし、ただね、辞める訳にはいかないといったあと、彼女は理由を話したけれど、自分しか知らなくても現実は現実。でも、皆が知っている現実のことも認めていたわ、ということは、そちらに関して何も考えてないような態度がおかしいのよ」
「つまり、消えてしまっても別に構いませんよっていう姿勢が変だって事?」
「そう。自分ひとりの感覚でしかない現実を大事にするのに、もう一つをないがしろにするのはあまりに不自然。だけれど、世界が視ないことに関して、異議を持っているあたりは本気に見えたわ、だから……完全な嘘ってわけじゃないのでしょうけれど」
 メリーの言葉を聴いて、思考を走らせる。だとしたらなんだろう。現実を大切にする上で、それでも辞めない理由……。
「きっと、別の理由があるんだ」
「あら、意見があったわね」
 つぶやきにメリーが返事をして悪戯っぽくわらう、じゃあ別の理由とは何か。
 特定には彼女の人となりを知る必要がある、だけれど今ここに彼女はいないのだから想像するしかない、これまで与えられた情報の中から推測を始める。
「彼女のイメージは?」
「うーん、今日までは魔法を使う意外は普通の娘、だと思っていたんだけれど、やっぱり強情って所かしらね、自分に迫る危機を知らされてさ、それを受け取っているのに自分の行動をやめようとはしない」
「強情か。私は書店の……初対面のときね。弱気というか、自分に対してあまり自信がないような感じを受けたわ。ただそれとは別に、人を値踏みするような視線、そんなイメージ」
「あんまり良くないのね」
「私の考えすぎなのかもしれないんだけれど、握手したときに、じっと目を見たのよね、その視線が印象的だったわ」
 値踏み……か。
 人を見るような癖があるとしたら、私との初対面時も、そういう視線を投げていたのだろうか、そういった印象はなかったけれど、その上で自分の正体をばらした……?
 あ、と短く声を漏らす。メリーが視線をこちらに向けたのを片手で制止、思考の海へと潜行していく。
 違和感がある、私は彼女と目が合ったような気がして、そうしたら彼女のほうからこちらへと近づいて話しかけられた。
「私は魔法少女です、って言われてどう思う?
「どうって……蓮子みたいに状況がそろっていなければ、鼻で笑うわよ」
当たり前だ、彼女のことを知っている人は一人もいない。それは彼女が言ったことで、それならば何故私は知っているのか。それは彼女に言われたからだ。
 何故他人の私に話しかけるのか、目が合った。……そう、目が合ったからだ、それだけのはず。
 ……それだけ? 目が合ったということはどういうことだ? お互いの視線が絡んだって事だ、それはつまり互いに見えたということ。
 仮説が降りてくる。
 仮に互いに見えたことが大事だとするならば……誰も知らないもう一人の彼女、つまり誰にも見えないもう一人の彼女だ。
「見えないんじゃ……ないかしら?」
「え?」
「彼女が魔法少女をしている間、一般の人間には見えないのではないのかってことよ。私に話しかけた理由は、私と目が合ったから……つまり互いを認識したと感じたからじゃないかしら」
「そうすると、私のときはこの人は見えるのだろうか? ということでああいう視線をしたってこと?」
「仮定だけれどね、見える理由としたら、私には該当するものがある」
「だとしたら、世界が視ないじゃなくて、世界から見えないってことよね」
「それを認識しているかはわからないけれど、いや多分わかっているかな、他人であるはずの私に近づいたのは、見えることが意外だったからとすれば」
「なるほどね。だとすれば見られないことに孤独を感じていたのかしら、世界に放っておかれる疎外感と一緒に」
 もしその気持ちを持っていたのだとすれば、少し過去に戻った私と一緒だ。他人に相談できない悩みや問題に、自分ひとりで立ち向かう気分は、不安なものだった。
 だとすれば彼女は仲間を探しているのだろうか……それは少し微妙だ。自分の経験だけれど相談できなくても友人などとの談笑で心が癒されることはあった。彼女の申告が嘘でないとすれば、嘘で無いと願いたいところであるけれど、友人はいるという。
 秘密を知った人が欲しいとしたら、私の忠告に対してあぁも頑固に断る必要は無いのではないだろうか。
だが、この議論を決着するのにはあまりに情報が少ない、だからそれよりも先に。
「ま、とりあえずどうやって彼女を止めるか考えましょう」
「強引ねぇ」
「何言っているのよ、これまでだって、話が通じないなら実力行使、だったでしょ?」
「私はそんなに野蛮なことをした覚えはありませんわ、全部蓮子が勝手に」
「……そうだっけ? でもいくつか考えがあるんでしょ?」
 彼女の表情は見慣れている、だからなんらかの策が頭の中にあるということもわかった。
「でも、蓮子怒るわよ」
「え、何で私が怒るのよ?」
「彼女蓮子に似ているわよね」
「えーどこ、可愛いところとか?」
「強情で、人の話を聞いても自分の考えを押し通そうとするところとか」
「あんなに酷くないわよ!」
 怒ってしまった。
 いやでも、もし私が同じ状況だとしたら、忠告は聞き入れると思う、そのいまだ不明の理由が何であれ、消えることによって、起こることを理解できないはずはない。そこまで考えて、あ、これは私だから考えることだと思った。
 人生経験が少ないから、あそこまで強情なのか、だとすればやはり浅い考え……。
「続けていいかしら?」
「あ、失礼」
「まぁそういう貴女みたいなタイプ……だとしたら、勝負を持ちかけるのが一番ね」
「勝負? 具体的には?」
「内容は全然考えていないわ、相手が乗りそうで勝てそうなもの……そういうのを考えるのは、蓮子。貴女の役目でしょ?」
 私はそこまで勝負事に熱くなるタイプだろうか、自分ではそうは思わない、球技祭で全5種目に参加して暴れまわったぐらいしか、そういうエピソードは無い。
 だが発言したのは人の心を語らせれば大学1かもしれないこの少女だ。一時を除けば人の心は殆ど彼女が解き明かしてきた。ならば私は彼女を信頼して、私たちが勝てる勝負を考えることが役目なんだろう。
 温くなってしまったコーヒーを一気に飲んでカップを置く、やってやるぞと自らを奮い立たせる、相手は魔法少女とはいえど中学生だ、負けてたまるか!
 こうして白紙涼香対策の一歩目がスタートした。




 意気込んではじめたことが、最初から万事順調で終わりまでいってしまうということはかなり珍しい、私が何かに取り組むときは、それがやけに困難だったり、難解だったりすることが多くて、自分でそれらを選択しているのだとしたら、自分はマゾなんじゃないかという疑惑すら涌いてくる。
 今回もその例に漏れず、メリーに言われた勝負の内容を考えることに随分と難航している。授業の合間や、お茶の時間などにも知恵を絞るけれど中々これだ、というものが出てこない。
 原因は二つあった。
 一つに、こちらが勝たなくてはいけない、ということ。これは当然なのだけれど、勝負して負けてしまえばこちらの要求は通せない。故にあまりに可能性が薄いものはダメだ、勝率という段階にまで持ち込める必要はある
 次に相手に受けさせないといけない、ということ。例えば計算問題を解くとかこっちに大幅に有利なものは全く話にならない、相手とすれば、考えを曲げさせる勝負。勝利が見えない形で受け入れるとは思えない。
 この二つのバランスが難しく、勝負を受け入れさせる意味では相手に有利を感じさせる必要があって、こちらはその有利を上回るだけの策が無ければならない。
 そんな風に悶々としていたら、いつの間にか昼食の時間になっていた。体が食事を欲するほどではなかったけれども、この時間ならばメリーも暇だろうしと、連絡を入れて食堂で落ち合うことにした。
 いつもどおりの盛況を見せる食堂で、紅茶とコーヒーを受け取ってテーブルへつく、先に席を取ってくれていた相棒に紅茶を渡して、私もコーヒーを味わうことにする。
 一口すすると、豊かな芳香と心地よい苦味が口内に広がって、頭が覚醒する気がする、新しいひらめきが出そうな……気がする。
 とはいえちょっとはまじめに脳に栄養を与えるためにスティックシュガーを二本投入。かなり甘くなってしまうけれどまぁしょうがない。
 メリーはゆったりとした動作で、紅茶の香りを楽しんだ後ちびちびすすっている、あの日言ったとおりに、こちらの悩みに関しては全く考えが無いらしく、何気なくたずねても曖昧な返事しかしてくれない。思わずため息をついたら、慰めの言葉はくれたから気にしてはくれているらしいけれど。
 おかわりのコーヒーを運んできて、スティックシュガーの封を切ったら、手が滑って抜け落ちた。
 あ。と短い声をあげてキャッチしようとしても失敗、メリーも手を出してくれたけれど、結局テーブルの上に、紙袋ごと落ちてしまった。幸いあまり零れなかったのでよかった。……ん?
「ごめんね、ちょっとあわててた」
「いいえ、被害が少なくてよかったわ」
 彼女は手をひきながら、そういって微笑んだ。無意識とはいえ素早い動きで惜しかった、もしかしたら結構運動神経いいんじゃないだろうか。
 そんなことを考え、拾い上げた砂糖をコーヒーに投入する。液体と固体が混ざり、新しい液体になる様子を眺めながら、頭の中に引っかかった何かを探る。
 溶ける砂糖、小さな波紋、カップの中身がゆったりと静かになって、そのときには頭の中に一つの結論が出来ている。
「メリー!」
「ど、どうしたの? 蓮子」
「ひらめいたわ、勝てる方法っ!」
 いきなり大きな声を出したため、彼女を驚かせてしまう、回りもこちらを注目している。でもそんなことは気にならないぐらいに、私の前に答えは転がっていた。
 メリーに謝って、食堂を飛び出した私は図書館へと急いだ、欲しいのは周辺の地図。頭の中にも納まっているけれど、イメージを膨らませるためにも、必要だと考えていた。
 机を一つ占領して地図を広げた。
 流石の記憶力と自画自賛するほどに、殆ど頭の中と同じような図が目の前に広がっている、その中をイメージで走りながら、このひらめきが本当に使えるものかどうかを調べていく。
 一つずつチェックをしていって、不安のある点がいくつか出てきたけれど、目をつぶることにした。綱渡りの作戦でも、彼女に残された時間が長いものだとは思えない。ならば、少しでも見えたこの光明に、すがらずしてどうするというのか。
 つい、ため息をついた。フル回転した頭脳は先ほど与えたブドウ糖を、きっちり食いつぶしてしまったのではないかと思う。覗かれれば焦点のあっていないであろう瞳で、備え付けられた時計を見た。なんか見覚えのある時間だった、なんだろうと考える。
 その答えは直ぐに降ってきた、三時限目を告げるチャイムが図書館を包み込んでいた。


 昼から夜の時間に変わるころ。私は彼女へと電話を入れた。
 もしかしたら出てくれないかも知れない、という一抹の不安を吹き飛ばすように、すぐさま明るい声で応じた彼女は、突然の申し出にも、いやそうな気配を見せず簡単に了解してくれた。
 待ち合わせに選んだ書店で、本棚に並ぶ本と顔を突き合わせながら、待つこと十五分。あの日とは逆に彼女のほうから話しかけられた。
「こんばんは、宇佐見さんお話ってなんでしょうか?」
「まぁ、見当はついているだろうけれど、あのことについて」
「……あたしの考えは変わりませんよ?」
「変えてもらわなくちゃ困るのよ」
 断定的にいう、困ったような表情を見ながら、確かに出来ることなら、したいようにさせてあげたいと思う
ただこちらとしても、そう簡単に引き下がるわけにはいかない。どんな理由があろうとこの若さで消えてしまうなんていうのは早すぎる。
 睨み合いが数秒続いて、私は持ってきた策を彼女に披露する。
「だから、勝負をしましょう」
「勝負……ですか?」
「えぇ、この勝負で負けたら、勝った方の要求を一つ呑むって事で」
「……勝負の内容は?」
 意外なことを言われたという顔で、彼女はこちらに尋ねてくる、軽く頷いてから私は言った。
「勝負は鬼ごっこ。さぁ、受けるかしら?」
 あっけに取られた表情はどういう感情の表れだろう、少しの沈黙の後、笑いながら彼女は言う。
「まさか、大人から鬼ごっこなんていわれるとは思いませんでした」
「わかりやすくていいじゃない、それでどうする?」
「詳しいルールは?」
「範囲はそれなりに限定するけれど、魔法を使うことは別に構わない。その代わりこっちは二人がかり、時間一杯逃げ切れれば、そっちの勝ち、こっちは触れれば勝ち」
「なるほど、大体判りました」
 彼女はこちらの表情をじっと見ていたけれど、そういって勝負に乗った。勝ったときの要求は考えておくとの事で、言葉の端々に、負けるはずが無いという自信が表れていた。
 勝負の日時をなるたけ人がいないときに決めて、私たちは分かれた。
 さて、メリーに作戦を話さなくちゃ。独断でここまで取り付けてしまったけれど、作戦を成功させるためには、相棒の頑張りを欠かすことは出来ない。
 私は携帯電話を開くと、何度もかけている彼女の番号をコールした。




 しん。とした空気を纏った夜はこの季節特有のものだ、刺すような寒さとからりと乾いた空気。
 私たちは二人、相手は一人
 制限時間は2時間
 道具の使用はあり、だが自転車・バイク・車は禁止
 彼女は魔法の使用可、制限無し
 範囲は私の良く知る半径5キロの一帯
 こちらに有利な要素は殆ど無いように見え、それは事実だった。だからこそ頭を使う、詰め将棋のように順序だてた作戦が決まるかどうか。
 勝利の決め手は、全てそこにあった。
 三人で集合した後で、コピーした地図を渡す、範囲から出れば失格、とはいえ見ながら移動となれば、捕まる危険性はあるし、取り逃がすことにもなりえるから、大雑把に頭に入れるぐらいだろう、というのがこちらの読み。
 涼香ちゃんは黒のスカート、コートを羽織って、マフラーまでしている。とりあえず今のところは私服だった。勝負を始める前に変身するらしいけれど。
 メリーはいつもの紫色の服に着込んだ形。靴だけは運動靴で、みるからにやる気がみなぎっている……というか、私がメリーにお願いした役はやる気がないと厳しい役柄なのだけれど。
 ちょうど円の端に近いあたりで足を止めて、ここからスタートするという意思表示をする。
「それじゃあ、このあたりからはじめるわ」
「判りましたそれでは」
 彼女は頷いて、何事かつぶやく、やわらかい光が舞って、一瞬視界を支配する、数秒して、光が収まると魔法少女としての彼女がそこに立っていた。
 変身するところを見たのは初めてだし、メリーにいたっては、変身後を見たのも始めてだ。思わず声を上げると、彼女は恥ずかしそうに笑った。
「そんなに見ないでください」
「いいじゃない減るものでもないし」
「案外恥ずかしいものですよ」
 柔らかい表情をまじめに戻して、軽く準備運動を始めている、こっちはメリーに目配せして確認する。
「それじゃあよーい……スタート!」
 脱兎の如く駆け出す彼女、数秒後、メリーが後ろを追う形で追いかける。私はそちらへは行かず、少しだけずれた方向へと走り出す。
 月は出ている。年甲斐もない遊びに全力を出す二人と、一人の幻想に近い少女を見つめている。
 私は今日の勝利を見つめる衛星へと祈った。


「まったく……若い娘は元気……ねぇっ! 蓮子」
「出来ることなら右に曲がらせてちょうだい」
「努力するわ……よし、オーダーのとおりよ」
 携帯電話から聞こえてくる、疲労含有量の高い声を聞きつつメリーに返事を返す。
能力を考えた上での分担とはいえ、かなり無理をさせていると感じていた。彼女は涼香ちゃんを追いかけつつ、数秒ごとに、月をカメラに捉え位置情報を送ってきてくれている、こっちはそれに対して、指示を出しながら、外側を大きく動いていている。
 運動量でいえばこちらのほうが多いのだが、不意に動かれた場合などを考えれば、情報をもらってから動けるので助かっている。だがこのままだと最終段階に入る前にメリーが潰れてしまわないかとすら考える。
 荒削りな作戦だったかな……。
 それでも彼女を打倒するのに、これ以外の策が浮かばなかったのも事実だ、心配を押し殺してメリーへと新しい指示を送りつつ、突き当たりを右折した。
 闇が落ちきった町は人の姿は殆ど見られない、直線的に走っても問題がないぐらいで、こちらに有利だと考える、もちろん向こうにも有利な点はあるが、こっちが利することが多い。
 何しろチャンスは一回だ。しかもそのチャンスを得るために、いくらかの準備が必要になるという細い線。それを遂行するために、邪魔になる要素は出来るだけないほうがいい。
 不意に、メリーの慌てた声が鼓膜を叩いた。
「蓮子、外れたっ!」
「了解。フォローするわ」
 こちらは出来るだけ冷静に返す、身体的な無理をさせているのだから、これ以上負担を増やしたくはない。自分のギアを一つ上げるつもりで加速し、彼女を待ち受ける形をとる。
 ほんの数秒で涼香ちゃんは目の前に現れた、こちらを確認すると目をむいて、今来たほうへと走り去る。……もし無理やり抜かれていたら、作戦は破綻していたかもしれない。思わず安堵のため息を漏らしたあたりで、横から来たメリーと合流した。
 あまり体力があるとはいえない彼女は、やはり息を切らしていて、今にも倒れそうだった、声を掛けるのをためらっていると先に口を開く。
「な、何とかなったかしら?」
「ええ、大丈夫、メリーは……」
「平気よ。蓮子……。平気、貴女につなぐまでは、大丈夫」
 相棒は明らかに無理をしているのだが、笑ってそういった。ならば私がすることは一つだ。今回の状況を成功させる。それだけだ。
ほんの数秒会話を交わしただけで、メリーは走っていった。
 闇の中に消えて行く彼女を見送って、私は少し立ち止まり、頭の中の地図を整理して、また大回りの進路をとる。
 メリーを信用するとはいえ、先ほどの邂逅は少し早くて、彼女がどのように感じたかを考えなくてはならない。特定の場所へと誘導しているのを察せられれば、私たちの敗北が決まる。
 だがたまたま挟撃の形になったことを狙いだと読んでくれれば、策を遂行しやすい。今のところはどのように転んだか断定できないが、都合のいいように解釈をして思考を進める。背水の陣は前しか向けないから強い。
 月の画像、本物の月、頭の中の地図、私と思考が走る。驚くほどクリアになった頭の中でメリーが走っていく様さえ見えるようだった、成功するイメージのみを練り、夜の街を走る。
 言葉に言葉を返し、地図に線を引き、走っていく。状況は時間の分だけ進んでいく。分刻みの時刻表を時に修正し、時にそのままで、時計が時間を刻むように私たちは進む。
 そうしてメリーと二度目に会うときは全て予定通り、最終局面の直前だった。
 もはや幽鬼のようにふらふらのメリーに肩を貸し、壁に寄りかからせる、椅子か何かがあればよかったのだけれど、そこまで都合のいい話では無いようだった。とりあえず頑張りきった彼女を抱きしめ、たすきを受け取る。後は私が頑張るだけだ。
「蓮子……」
「あとは任せてメリー。ここまでの頑張り、無駄にはしないわ」
「……」
「え?」
 メリーが発した細い声を、私ははっきり聞き取れなかった。それを聞きなおしたとき、勝負の根底が揺らぐのを感じた。


 出会った日と同じように、私は丘を駆け上がっている、違うところといえば、あのときより急いでいること、あの時は居なかった他人が待ち受けて居るだろう、ということぐらいか。
 一本道ではあるけれど、傍らの闇にも注意を払う。ただ一度の光明はきっちり状況がはまらなくては見えすらしない。
 星の光に時を見ながら走る。私だって汗をかいているし疲れてもいる、だがここを外すわけには行かない。宇佐見蓮子はこういう場面で失敗をしない。
 息が上がりきる前に上りきった頂上で、月の光、星の姿、魔法少女の笑顔、それらが順に視界へ飛び込んできた。
「そろそろ時間……ですよね?」
「そうね、ここさえしのげば貴女の勝ちよ」
「……いや、もうあたしの勝ちでしょ」
 それは事実を告げる口調だった、状況を冷静に見て、こちらの手札を見据え、自らの手札と比較しての自信。その中にほんの少しだけ、失望が混じっているのを私は感じ取る。
 彼女から見れば私なんかは十分に一般的なのだろう、そりゃそうだ、一般人は魔法を使うことなんて出来ない、空を飛ぶことなんてできない。彼女に関わることなんてできやしない。
 それでも私はまだこちらに分があることを、知っている。
 ぐっと姿勢を低くして彼女と相対する。呆れたようにため息をついて、仕方ないとばかりに相手もこちらを見据える。
「落っこちないでくださいよ?」
「心配には及ばないわ」
 いきなり走り出して、一気に間合いをつめる、彼女は触られまいとステップして避けていく、メリーに任せていたから判らなかったが、反応も良くてすばしっこい、普通にやっていたのでは埒が明かないだろう。
 故に上手いこと誘導する必要がある、そんなこちらの思惑を知ってかしらずか、彼女は余裕たっぷりにそれに乗ってくる。小細工は必要ないというばかりだ。
 じりじりと間合いを計りながら、彼女が崖側へと立ったのを確認する。そこは彼女にとってもっとも安全な場所だ。もし捕まりそうになれば空中へと飛べばいい、相手だって落ちたくは無いのだから、無理な特攻は出来ない。判っているのだろう、ひらひらと空中を指し示して彼女は笑う。
 でもそれは私の読みの上だ、気にせず突っ込んでいく。
 驚愕に顔をゆがめるが、直ぐに冷静になり端に追い込まれる前に飛び立つ。そのラインなら、こちらもブレーキをかけられると読んでいるのだろう、優しい子だと思う。
「これであたしの……」
「とりゃあっ!」
 そんなことは完全に無視で、私は端まで走り彼女へと向かって跳躍した。
 今度こそ表情が驚きから復帰することは無かった、もう下には地面まで何も無い、出来るだけ手を伸ばしてつかもうとするが、反射的に回避される。目線が交差して、私の身体は何も無い闇の中へと重力に誘われて落ちていく。その中で
「っ!」彼女の真剣極まりない表情を見た。
 浮かんでいただけのところから、空を蹴るようにしてこちらに向かって加速し、私の手をとる。不意に重力加速度から開放され、生身で飛ぶ感覚が少しわかった。それはともかくとして。
「……ふぅ」
「……私たちの勝ちね」
 安堵のため息を漏らす彼女の耳に、とても意地悪な声で、そういってやるほうが大事に思えた。
 

 丘を二人で降りていったら、メリーは殆どへたり込むようにして壁に身を預けていた、それでも私たちが近づいていくと、ゆっくりと手を上げて反応する、良かった、死んでなかった。
「勝った?」
「えぇ、完勝よ」
「……」
 思いっきり笑顔で言ってあげる、メリーはそれを聞いて安心した様子だったが、すぐにどこか気の毒そうに、無言の彼女へ視線を向けた。
 涼香ちゃんはというと、ふくれ面でものすごく拗ねている。さっきまで随分罵倒されたものだ、敗者の遠吠えほどむなしいものは無いというのに、と慈悲のかけらも無く考えていたわけではない。
計画は全て予定通りに行われ、目的のとおり思い知らせることは出来た。ただ、方法としてはほめられたものではないし、若干卑怯だ。
 こちらとしては、理解の無い子供に教えるやり方として、悪くは無かったと思う。自らの無謀を悟らせるのに、こちらの無謀を見せた、効果があったかどうかはまだわからないけれど。
 ただまだこれで終わりじゃない、メリーの目に視えたものが推測どおりなのか確かめなくてはいけないし、今回の件は十分に話し合う必要もあるだろう。
 考えて出した結論は部屋に帰って、お茶をすすりつつということだった。日を跨いで中学生を喫茶店に連れ込めない、とかいう配慮もある、普通は部屋に連れ込むこともまずいけれど。
 それを二人に告げるとメリーは極あっさり、涼香ちゃんはすこしためらったようだったけれど頷いた。後日でも良いよと言ったけれど、少しなら大丈夫との事。
「あの、変身といたほうがいいでしょうか」
「あー……そうね、一応」
 思い出したように彼女が言って、私はそれに同意する。今の姿を見慣れてしまって、つい忘れていた。
 光があふれて、彼女はスタート時の姿に戻った。
 メリーがじっと彼女をみて、こちらに視線を送って、首を横に振る。あぁやっぱりと、ほんの少しだけ、残念な気持ちになった。骨折り損かー、折れてないけど。
 どっと身体と頭に疲労が襲ってきた、心まで蝕まれる前に、さっさと歩き出す、マンションまでの道のりは10分以上かかる、風邪をひかないとも限らない。
「あの、宇佐見さん」
「なーにー?」
「あたし、もう変身しちゃいけないんでしょうか」
 痛いところを突いてくる、多分彼女は知らないだろうけれど、今さっき、私たちの間でその結論が出たところだ、こっちにとってはあまりありがたくない結論が。思わず黙ってしまう私に、もう一度彼女が質問する。
「宇佐見さん?」
「あーもう! そんなことは無いわよ、むしろ逆!」
「へ……?」
「だから、変身はしなくちゃならないの! ペースは落とし気味にしてもらいたいけれど、しなくちゃならないのよ。だから今日の勝負はあんまり意味が無かったってことになっちゃうわけ、わかる? まったくこんなことになるなんて……神様が居たら殴っているとこだわ!」
 おもわず、激情に任せて言葉を吐いてしまった、メリーが苦笑してこちらを見ている、涼香ちゃんは、ぽかんとした表情だった。私はちょっとだけ泣きそうだった。




 暖房が機能し始めて、部屋が暖かくなってきていた。
 流石に三人が同じ部屋に居ると狭く感じる。取り囲むようにして設置した本棚も、それに拍車をかけているようだった。メリーは台所に入って、お茶の準備を始めている、疲れているのは間違いないのに、おもてなしの心には感心してしまう。
 もてなされるほうの彼女はと言うと、本棚に興味を持ったようで、細かく動きながら蔵書を調べていた。手つきを見ていると一冊十秒もかからずあきらめている様子だったけれど。
 私はそれを見ながら、頭の中を整理していた、先ほどはかなり決め付けた発言をしてしまったが、あくまで観測の上での推測にすぎない。正しい情報を集めて組み立てなければ、物事の正しい姿は見えてこない。彼女のプライベートな部分に踏み込まなくてはいけないのが問題といえば問題だ。
 こうしてお茶をすることになったとはいっても所詮は他人。その他人に随分と関わっている気はするけれども、と思わず苦笑してしまう。
 とはいっても真実の探求をするという前提があるからで、彼女が喋ることを拒否するのなら私達にそれを聞きだす権利は無い。
 メリーが紅茶を持ってきたので、ティータイムに入る、一杯目は香りを味わう……だっけかな、涼香ちゃんがこっちを伺っているので、メリーの作法を見習うようにあごをしゃくった。
 お手本にされた彼女は、どこまでも正確に紅茶を味わっている、乱れることの無いその動作は私には無いもので、教本なんかにモデルとして載ってもいいぐらいだ。
 それをまねて行う魔法少女。堅い動きだけれどどこかかわいらしさがある、まあこれもこれでいいんじゃないかなとおもう、私はあまり気にせずに飲んでいたら、メリーに咎められた。一応おもてなしの形としてこだわっているらしい。
 二杯目が注がれて、今度はしっかり味わう、二人はやっぱり順番に動く関係。雰囲気を大事にするのだろうかこの二人。
 ゆったりとした時間が過ぎていたけれど、涼香ちゃんの時間をあまり無駄に使ってはならないと、メリーを急かす。紅茶の時間は何より大事と咎められた、私が悪いのかな……?
 メリーは紅茶の余韻に浸っていたけれど、さて。とつぶやくと彼女へと向き直り、話を切り出す。
「いくつか話さなくちゃいけないわね……とりあえず、貴女がどうするべきなのか話しましょうか」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「うん、じゃあ変身して」
「……はい?」
「今さっき解除してもらったけれど、もう一回」
 メリーに促されて彼女は承知する、なんだかんだで疲れるらしい、さっきの解除には理由もあったから、仕方が無いといえるけれど。
 今日二度目の、と日付が変わっていたから初だった。光があふれて彼女は姿を変える。
「これでいいんですよね」
「ええ、それじゃあちょっと動かないでね」
 変身した彼女にメリーが近づいていく、表情は真剣そのものなのだが、その視界に何を捉えているかは推し量れない。少なくともさっき聞いたものを探しているのだと思うけれど。
 涼香ちゃんの方は直立不動で緊張した表情、そのすぐ近くをメリーが目を凝らしてみている、とても怪しい図だ。
「……多分これね」
 メリーは手で私を呼んで、それを指差す、彼女では結界に隠れて見えにくいものを私がかわりに見ると、スカートの装飾の一種で、他がピンク色の中、かすかに蒼の混じった宝石がある。小さくて目立たないけれど、注目すれば別のものだとわかる。それについて涼香ちゃんに聞く。
 蒼い宝石を見た彼女は目を大きくし、ためらう表情を見せたけれど、考えがまとまったようで口を開いた。
「友達の……形見です」搾り出すように出した声。続けて。
「あたしより先に、消えた魔法少女の形見です」
 なるほどと思う。最初に貴女は消えるといったときにあまり驚かなかったのはこういうことか。きっと、彼女が魔法少女をやめられない理由の一つでもあるのだろう。
「これが、どうかしたんですか?」
「私の見立てでは、これが消えていない理由よ」
 メリーが質問に答える、結界に関しての話ならば彼女に任せるしかない。
「結界に飲み込まれる力が10あるとして、この宝石がこの世界に留まらせようとする力が15ぐらい働いている……そう考えてくれて構わないわ。もちろん数字は適当に出したものだけれど、結界の力より、その宝石の力のほうが強いことは間違いないわ
さて、通常時の貴女はそれでも魔法少女であることに変わらないわけで、そのときも結界は貴女を幻想の側に引き込もうとしている、その力は変身時に比べれば微々足るもので、その蒼い宝石を出現させたときに打ち消されるぐらいのもの。ただずっと変身していれば結界は力を増して行き、上回るときがきてしまうかもしれないのだけれど」
 途中で少しの休憩を入れて、メリーは喋り終える、涼香ちゃんは何故そんなことが判るのだろうという表情だけれど、どうやら今の話を整理している様子。助け舟を出そうと私が横から口を出す。
「だから、時折変身してその力を打ち消さないといけないのよ、やりすぎは禁物だけれど」
「あの。それじゃあ……」今度は泣き出しそうな表情で彼女は言う。
「これをあたしに渡したから……彼女は消えたんですか?」
 冷たいものが背を伝ったように感じた、メリーの表情が凍る、違う。貴女のミスじゃない。
 必死に言葉を探す、だけれど彼女の言葉を否定するだけの材料は私に無い、回答不能という結果だけが転がってくる。言葉で否定するのは簡単だ、だけれどそれにどのぐらいの説得力があるのだろう?
「わからないわ」結局私の口から出たのはその程度の言葉で、これほど彼女の心をえぐるものも無いだろうと思った。
 沈黙が落ちる。誰一人として口を開こうとはせず、重苦しい空気に加湿器の蒸気が溶け込んでいる。
 正確には非常に短い時間、だけれど、どこまでも続くように思えた沈黙を破ったのは私でもメリーでもなかった。
「はは、あはははっ!」
 彼女は笑っていた。空虚な笑みでも、自虐的な笑みでもなく、思わず顔を見合わせる私たちに悪戯っぽく微笑んで言う。
「ひっかかりましたね、鬼ごっこのお返しです」
 頭が働き、だまされた! とわかるころには手が出ていた、でも軽くはたこうとした手はひらりとかわされる。
 嘘は言ってませんけどね! と涼香ちゃんは元の位置に戻った。どこか無理に明るく振舞っているような空気で、言葉を続けていく。
「彼女が消えてしまってから、何度も自分の所為じゃないかっていうのは考えたんです、だから簡単には絶望したりしないですよ」
「それって、何か心当たりがあったってこと?」
「ん……いえ心当たりというほど、はっきりしたものじゃないんですけど、あのころのあたしは現実、えぇと普通の生活のほうを重視して生きていたんですよ。こっちのことがいまひとつ現実に思えなくて。でも彼女はこっちも大事に……いやどっちかっていうとこっちを大事に生きていました。学校では目立たない子……だったんだと思います」
「だと思うっていうのは?」
「クラスが違いましたし、二人で会ったり、遊んだりすることはありましたけれど、他の誰かを含めて遊ぶって事は無かったんです。だから交友関係とかは、さっぱりわからなくて……友達なんだから、それぐらい気づけないといけないんですけどね」
 長いため息をついて、彼女は遠い目をした、少し時間をかけて次の言葉を話す。
「そんな関係の中、ある日もらったのがこの宝石です、お守りって言っていました。もしかしたら、危うい存在だということを、気づいていたのかもしれません、それから数日後。彼女からの連絡をあたしは見落とし、彼女は一人で夜の街に出ました。遅れて探しにいったあたしは、そこで異世界に消える彼女を、見ました」
「……」
「来てくれてありがとう、と彼女は笑いました。笑って消えてしまいました」
 絶望したりしない。と言った彼女の声は震えている、淡々と話しているようで、言葉の端々が少しずつ、涙声が混じった音に置き換えられていく。
「あたしは、なんで、あの日見落としたんだろうと、彼女が頼れるのは、あたしぐらいじゃなかったのかなって、そのあと、まるで、何事も無かったように日常が廻り始めて、彼女だけが抜け落ちていて……」
 あふれ出るものを隠しもせず、言葉を吐き続ける。
「さがして、さがして、わかったことは、だれにも、たよれ、ないことの、こころ、ぼそさで、あた、あたしは、なん、で、みおとしたのか、って、なやん、で、でも、もう、おそくてっ!」
 嗚咽を繰り返し、涙を流し続ける彼女の頭を抱くようにする、抵抗も無く私に寄りかかったまま、小さいからだをさらに小さくして、彼女は泣いた。大声を上げるわけでもなく、内から出てくる悲しみを押し殺すように、震えながら延々と泣いていた。
 科学や大人の力でどうにもならないもの、それを社会はどうすることも出来ない、結界にとらわれ神隠しにあった人に対して出来ることは、無事を祈ることぐらいなのだ。
 誰にも頼れない状況で、自分だけを頼りに生きていくのはどこまでも続く階段を上るような辛さがある、今何段目かもわからず、ただ前に進んでいるのを信じなければ、途中でひざが折れる。
 それでも彼女は今まで続けてきた、私たちの忠告を聞いても、辞めようとしなかった。それは自分を大事にしない間違った行為であるとおもうけれど、彼女の立場で考えるならば簡単に否定することも出来ない。
 結局私たちに出来るのは、これまでどこに発露されることの、発露できることの無かった彼女の感情を受け止めることぐらいだ。
踏み込んでしまえば、救いの道を与えることは出来るかもしれないけれど、酷く曖昧な勝率をさも必勝のように語ることは許されない。
 だからこそ冷静に、ただありえることだけを語る。
「……結界に飲まれた人間は、そのまま死んでしまうわけではないわ」
「……」
「結界の向こうにも確かに世界があって、戻ってくることも、無いわけじゃない。別の世界からこちらにまぎれることもあるわけだしね」
「……」
「私の資料があれば、結界が開きやすい場所がわかるかもしれない。メリーなら結界に干渉することが出来るかもしれない。もちろん……確実じゃないけれど」
「……」
「どちらにしても、あなたはもう一人で悩む必要は無いのよ」
 彼女のシャツをつかむ力が一際強くなったような気がして、涙と鼻水がしみこんで来たのがわかった。
 頭を抱いたままメリーに苦笑を向ける、これで彼女を救うことが出来るかはわからないけれど、それなりに上手くやったかなと思う。
 しばらくその状態が続いて、涼香ちゃんは私から離れる、くしゃくしゃになって、真っ赤になった目からまた涙がたれ、それを手袋でぬぐって一言。
「泣いてませんよ!」
「いやボロボロ泣いてたよ、私のシャツにもついたし」
「それは汗です、目と鼻から汗が出ました」
 あまりかたくなに否定するので、それでいいやと思った。事実は変わらないけど、写真にとっておこうかな。
 メリーがちらりと時計をみやって、言葉を発する。
「まぁ、とりあえず今日はこのあたりでお開きにしないかしら?」
「……そうね、流石に遅くなったし」
「あぁっ明日学校なのにっ!」
 私たちも学校だけれど、朝一番から確実にある中学校はつらいなーなんて思う、焦る彼女をなだめつつ。着替えてから三人で家を出る。
 厳しいはずの寒波が、少しだけ緩んだように思えた。


 涼香ちゃんを家まで送り(自宅前まで来ると彼女は二回へ飛んで窓から侵入していった)私たちはマンションへと戻った。
 あんまり寒くないと感じても、実際には相応に寒く、直ぐに暖房を入れる羽目になる。メリーはキッチンに走って紅茶の準備をしている、ありがたい。
 疲れが出てきたので椅子に座ったまま目を瞑る、眠くは無いけれど、安らぎを求める本能ってやつだろうか。
 紅茶を出してもらうほんの少しの時間だけ、と考えた間に彼女の感情を思い出していた。誰かに頼ることは一つの救いになるはずだ、自分の過去の体験と照らし合わせても、間違っていないはず。
 カップを置くかすかな音を聞き取って、私は目を開く。メリーが穏やかな表情で対面に座っていて、お礼をいって微笑みかける。
 彼女はこちらをじっと見つめて言葉を出した。
「彼女の告白、思い出しちゃったんじゃない?」
「……まーねー」
「泣きそう?」
「泣かないわよ」
「あら残念、泣きそうなら慰めてあげようと思ったのに」
「うわぁ、泣きそうだ」
「もう駄目よ」
 舌を出して笑うメリー、友人と過ごす当たり前の光景が、彼女にもまた訪れるのだろうか。
 私は電灯の下で、せめて彼女の未来が照らされているようにと、言葉の無い祈りを夜に向けていた。
三作目になります。ジェネもあわせてですが。
最後まで読んでいただけたのならば多謝。

少数派の孤独を書きたかった、とプロットに書いてありました。
投稿予定から二、三週遅れてしまいました、一月に間に合いましたが

この作品で感じた問題は次の作品で解決できるように私は祈った。
実はこの前の話も祈るところで終っているので、次は違うパターンにしたいなと、画策しております。
なんにせよ最後まで読んでいただけるようなものを書かなくてはなりませんね……

推敲とコメ返し

>7
コメントと評価ありがとうございます。
どことなく陳腐な感じになってしまったのは、プロットの上を走らせることを意識しすぎた所為かと私は考えています。
秘封物といいつつ、秘封が薄いのはかなりまずいと思うので、そのあたりをもっと良く出来ればなと思いますご指摘ありがとうございます。
感情の揺れ動きが見られないのは、心理描写をきっちり出来ていないからで、以前より改善したいなと考えている点だったりします、練習積むしかないのでしょうが
次の作品はこれを書く前から大筋が出来ていて、ただあらすじは完成しないという現状です、面白いものが提供できるといいのですが
余談なりますが、この設定で相手を変えたパターンも考えていました。故に設定面でお褒めいただけたのはかなり嬉しかったです
評価とコメントありがとうございました、長くなってしまい申し訳ありません。
赤錆びたトタン屋根
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コメント



0.350簡易評価
7.100名前が無い程度の能力削除
こういう風に掘り下げると、幻想郷の外がなんだかどこぞのラノベの世界みたいに見えてきますね。
あまり見ないタイプの作品なんでしょうけど、どこか陳腐な感じがしてしまうのはそのせいでしょうか。オリキャラが濃いだけに、秘封の気配が薄くなっている気もしましたし。
あと、蓮子とメリーに関しては、割いた文章量が多いわりには、感情の揺れ動きなど全体的な動向が掴みづらくて、作戦が上手くいったときのカタルシスもいまいちこなかったのが個人的な感想です。
けれど、個人的に好感を持てる、よく練られた秘封倶楽部の世界を一つ提案してもらい、世界に想像を膨らませて楽しめたので、十分に面白い作品だったのだと思います。次の作品も楽しみにしています。