弥生の一番初めの日の幻想郷
賑やかでも騒がしくも無い普通の季節だ
しかし春になって桜が咲くと、とたんに周りが騒がしくなる。
騒がしくなる前の準備期間なのだろう。
しかし、この季節でも騒がしい生き物がいた。
「ねえ、ルナ、スター、明後日はなんの日か知ってる?」
「明後日・・・3日の日?」
「そういえば明後日は盆栽をちゃんと手入れしなければいけない日だったわ」
3妖精の一匹が目を輝かせて質問をしている
が、他の二匹は特に興味が無いようだ。
「違うわよ、まぁ3日の日はある意味あってるけど
とにかく明後日は雛祭りという行事らしいわ」
「雛祭り・・・確か本に書いてあったような」
「そういえばそうねぇ、でも私達は今まで雛祭りをした事ないけど
今回はなんで興味を持ったの?」
得意げな表情をして話し始めようとしている、
その間にもう一匹は本を探し出したようだ。
「雛祭りの日には白酒という特別な日に出されるお酒があるらしいのよ
で、その雛祭りの日には、そのお酒を神様にお供えするらしくて
そんな特別なお酒は、きっと美味しくて気分のいいものに違いないわ!」
「確かに美味しそうね・・・流石サニーだわ
じゃあそのお酒をいただくのは、いつもの神社で決まりね♪」
楽しそうに話しているそんな中、本を探しに言ってた妖精が戻ってきた。
「今の話聞いてたわよ、だったら準備が必要なんじゃないかな
だからこの本見て色々準備するものを集めようよ
何事も雰囲気が大事でしょ?」
四季折々のことが載っている本を開き始めた。
その中に雛祭りの事が載っている。
「なになに雛祭りとは、人形を飾って小さい女の子の成長を祈る行事」
「小さいって言っても私達それなりに生きてるしねぇ」
「大きさは小さいけどね」
「また花を飾って白酒等で飲食を楽しむ行事」
「花なんてあったっけ?」
「私の盆栽でいいんじゃない?」
「元は、流し雛という行事であり人形を流して穢れを祓う行事でもある・・・
大体大まかはそんな感じかな」
説明し終わった後に少し考え始めたようだ
そして何か思いついたらしい
「そうだ!じゃあその流し雛もやって私達の穢れを落としてもらいましょうよ
穢れが無くなって飲むお酒は更に美味しいはずだわ」
「そうね、じゃあこれから出かけて準備するものを調達しましょう」
「事前の準備が大事だもんね」
そういうと三匹ともうきうきしながら出かける準備を始めようとした。
・・・そんな中で疑問が1つ
「あれ?この白酒の横に書いてある甘酒ってなんだろう?」
本の白酒の所の横に書いてある書いてある甘酒の所を指差した。
「甘い気持ちになるお酒の事じゃない?」
そう聞くと活発な妖精の一匹は、目を輝かせてパーッとした表情になった。
「それよ!じゃあ白酒も含めてその甘酒も一緒にいただきましょう
きっとそのお酒も特別なお酒に違いないわ」
「そうなのかなぁ、でも美味しそうだよね」
「何事も飲んでみなければわからないわよね、楽しみだわ」
改めてうきうきした気分になり、疑問も晴れた(?)所で
今度こそ出かける準備をして、意気揚々と歩き始めた。
・・・そんな中またしても疑問が1つ
「そういえば準備するものはどこから仕入れればいいんだろう」
「いつも通り人里から戴いちゃう?」
「食材とお酒はともかくいつもと同じように戴いても面白くないよ
折角いつもと違う行事なんだから、いつもと違う準備の仕方をしなくちゃ」
「準備するものといったら・・・人形かな?」
「人形といえば・・・じゃあアリスさんの所に行ってみようよ!」
「そうね、一番詳しそうだもんね」
そうして魔法の森を目指しアリスの家に着いて
雛祭りの為に人形を分けて欲しい事を説明した。
「あいにくだけど私のところでは雛祭りに飾る為の人形は作ってないわよ
流し雛用の人形ならあるけど、作ってる量は自分の量だけだわ」
「そこをなんとかお願いできませんかね?」
少し呆れた表情で妖精達を見た。
「あのねぇ、ただで物が貰えるほど甘くは無いわよ
それとも何か交換条件になるようなものは持ってるのかしら?」
「ねぇ、ルナ、スター、なにか私達持ってたかしら?」
「え?特に何も持ってないわね・・・」
「私も同じく・・・」
ますます呆れた表情になった。
「はぁ・・・仕方ないわね、それなら人里に行って分けてくれる人を
探すしかないんじゃない?今の時期なら雛祭りの道具も賑わってるし
分けてくれる良心的な人間もいるかもしれないわよ」
「人里ですか、まぁ・・・とりあえずこの流れで行ってみる?」
「仕方ないんじゃないの?」
そうしてアリスにお礼を言い魔法の森を後にし
しかし、まだ納得の言ってない部分があるようだが
色々考えながら歩いて人里に向かう事にした。
「う~ん、アリスさんは駄目かぁ、結局人里に向かう事になっちゃったけど
これじゃあ当初の目的と違うわよねぇ」
「雛祭り用の人形や流し雛用の人形を特別に手に入れられるところは
他にないからなぁ」
「う~ん、やっぱり食材と一緒でいつも通りにする?
あんまり特別身がないけど」
そんなこんなを話しながら歩いていたら
緑色の髪に赤いリボンの少女とすれ違った。
「きゃあ」
それと同時に石ころに転んでしまった。
「また転んだの?も~ルナはいつでも鈍くさいんだから」
「悪かったなぁ」
「あらあら大丈夫?変ねぇ集めた厄は当たらない距離だと思ったんだけど」
さっきすれ違った少女が気にして話しかけてきた。
「大丈夫よね、ルナ転んだだけだし」
「うん」
少し申し訳ない顔で服の中から3体人形を取り出した。
「貴方達さっき流し雛の話をしてたわよね?
お詫びとしてこの人形に厄を封じてあげるわ」
「え?いったいどうやって」
そういうと三妖精の体から何かが飛び出しそれぞれ人形の中に
収まっていった。それをそれぞれに手渡された。
「私は鍵山雛、厄を集めて回ってるの、そろそろ雛祭りの日が
近いから色んなところで厄を集めて回ってるの
だからさっき私の周りについた厄でこけてしまったんだと思うわ」
「(単にルナが鈍いだけだと思うんけどなぁ)」
「ということは私達の厄はこの人形の中に入ったって事ですか?」
「そうよ、後私は雛祭りの日は、人里で厄を集めて回ってるから
なにか困った事があったら、その日に人里にいらっしゃい
私は忙しいからそろそろ失礼するわ、じゃあね」
そういうと去っていってしまった。
「とにかく、これで人形は手に入ったわね!」
「怪我の巧妙ってやつね」
「怪我したのは私だけどね」
「なんか体が楽になった気がするわね
そうだ!折角だからこの人形を飾った後に流し雛として流しましょうよ
そうすれば一石二鳥だわ、この人形のデザインも悪くないし」
体が楽になった時は、突然なアイディアを思いつくのは
たまにあることだ。
「そうね!それがいいわ、じゃあ後は食料とお酒だけね
まずは人里に向かいましょうか」
「家の中に厄が充満しないかなぁ・・・
まぁ、それより食料よね」
そうして人里に向かい、食料を持ち帰ってきた。
家に戻ってから、メインの白酒と甘酒を明後日に神社で奪う計画を立てた。
そして2日が経ち、神社の傍へと向かった。
「ふっふっふ、霊夢は今外で、魔理沙さんと一緒に話してるわ
いただくなら今がチャンスね」
「待って、なんか雛祭りの事を話してるみたいよ」
外で話している2人の会話に耳を済ませた。
「でさぁ今日の雛祭りなんだが、あのお酒は用意してるか?」
「白酒の事でしょ?用意してるけど自分でも用意しなさいよ」
「こういうところで飲む複雑な味が私は好みなんだよ
こういう特別な日でもないとそういう感覚は味わえないからな」
「だったら甘酒もあるわよ、お酒とは別の感覚も味わえるでしょ?」
「甘酒かぁ・・・悪くはないんだがそこまで好きなものでもないな」
「私もそこまでだけど、まぁこういう時の行事は形が大事なのよ」
この会話を聞いて確信を得たように
「やっぱりこの神社では両方共用意してたようね」
「それにあの2人は甘酒はあんまり好きじゃなさそうじゃない
それを私達が楽しく飲んであげるんだから、お酒にとってもありがたいことよね」
「話し込んでる今がチャンスだわ!行きましょう!」
そういって神社の中に忍び込んだ。
作戦とは、サニーとルナが姿と音を消しつつ
スターが誰か来ないか察知すると言う作戦をとった(いつも通り)
とりあえず神棚に向かった。
「あった!白酒って書いてあるわ」
神棚に置いてある白酒を指差した。
「でも甘酒はどこかしら?一緒に飾られてるんじゃないのね」
「あ!あれは何だろう、瓶に入っててお酒みたいだけど」
卓袱台に置いてある瓶を指差して卓袱台に向かった。
「甘酒って書いてあるわ、ふ~ん、見た目は似たようなのね
じゃあ目当てのものは見つかったし飾ってあった白酒もいただいて・・・」
甘酒を抱えて神棚にもう一度向かおうと思ったその時
「あ、誰か来るわよ!」
「げげ、まだ白酒は取ってないのに」
「甘酒抱えたままだとばれるわよ、早く逃げようよ!」
「うう、楽しみにしてたのに・・・」
白酒を奪えないまま、三妖精はそそくさと逃げていった。
「あー!甘酒がなくなってる!やられたわ」
「あーあ、ちゃんと管理しておかないからだぜ」
「こうなったら白酒だけ、盗まれないうちに早く飲んじゃいましょう!」
「早く飲める分私としては都合がいいけどな」
兎にも角にも甘酒だけを奪う事に成功した三妖精は
雛祭りの準備をしていた。
「うー、白酒楽しみにしてたのに~」
「まぁまぁ、とりあえず今回は今ある甘酒だけで我慢しましょうよ
ほら、おつまみも出来たわよ」
「貰った人形も飾ったよ、ほら、サニーは料理運ぶ方を手伝ってよ」
人形も飾り終え食事も出来、甘酒をコップに入れ
雛祭りを祝う事にした。
「それじゃあ、かんぱ~い」
コップをカチッとあわせ、ぐびっと飲んだ。
「結構甘いお酒だね、味も変わってるし」
「う~ん、確かに変わった味よね、あんまりお酒臭くないし」
「この味が特別なお酒なのかな?」
「まあでも、この後甘い気分になれるはずよ
今は楽しい話をしながら食事を楽しみましょう」
そうして話し始めて数十分後
「う~ん、中々甘い気分にならない・・・
というかいつものお酒飲んだ時みたいな気分にもならないね」
「お酒臭くなかったしお酒じゃないのかしら?
でも酒っていう字が書いてあるし・・・」
「ねえ、後で雛って人のところに聞きに行ってみない?
なんかこのままだとスッキリしないし」
「そうだね、じゃあ後で聞きに行ってみよっか」
食事が終わり、一休みした後
人里へと降りて行き雛を見つけた。
「え?甘酒じゃ酔っ払えないわよ
お酒飲めない人が飲むものが甘酒なのよ」
「なんだそうだったのかぁ・・・折角今までに無い甘い、いい気分に
なれると思ったのに・・・」
がっかりした3妖精を見て雛は懐から中くらいの大きさの瓶を取り出した。
「しょうがないわねぇ、特別にこの白酒をあげるわ
量は少ないけどいい気分になりたいならこれで十分なはずよ
私へのお供え物だけど少し分けても問題ないわ」
「わあ、ありがとうございます!・・・って自分へのお供え物って
もしかして雛さんは神様?」
「そうよ、私は厄神なの、だからそのお酒も神聖なものよ」
「だったら格別美味しいに違いないわね!
2人とも!早く帰って飲み直しするわよ!じゃあ雛さんありがとう!」
「あっちょっと待って、そういえば・・・」
何か話そうと思った頃には既に姿が見えなくなっていた
よほど嬉しいものだったのだろう
「前に渡した人形は今日中に払わないと厄が漏れ出すって
言おうと思ったのによっぽど嬉しかったのかしら?まぁ大丈夫よね」
家に帰った3妖精は早速飲んでいた。
もうお酒も回ってきたようだ。
「やっぱり陽気になるお酒が一番ねぇ、気分が良くならないお酒なんて
お酒として飲む意味が無いわよねぇ、それに神様から貰ったお酒だから
益々美味しく思えるわね」
「雛さんが神様だったなんて驚きよねぇ
ルナが転んだおかげで色んなものを貰っちゃったわね」
「色んなものを貰ったといえば、何か忘れてるような・・・」
「どうせ食事の後方付けかなんかでしょそんなの後々、
今日は昼間から飲んでるんだから1日気分よくいて
面倒くさい事は全部後回しにしちゃおうよ」
「そうよそうよ!今日1日元々合ったお酒も合わせて
飲んで食べて楽しみましょう♪」
「それもそうだね、じゃあ飲もう飲もう」
雛に貰った厄がつまっている人形を流し雛するのを忘れ
話を聞かなかったために雛祭り中に厄を流さなければ
いけないことを知らず。1日中ほったらかしにしてしまった。
その翌日三妖精の住む家の中に厄が充満して
大変な事になったそうな・・・めでたしめでたし
お酒は20歳になってからほどほどに
ほのぼのしてますね~。
ほっこりと暖かい気分になりました。