Coolier - 新生・東方創想話

冬の始まりには

2011/01/24 15:31:11
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「ふぅ……」

幻想郷の、とある場所。
人間ならば未踏の地、妖精は寄り付かない、妖怪ならば気まぐれで辿り着くかも知れない、そんな場所。
冬の化身、レティ・ホワイトロックはそこにいた。

「ようやく、過ごしやすい季節になってきたわね」

彼女には心地よく感じる風も、人間をはじめ多くの者にとっては身を切られるような思いをするものなのだろう。
とある妖精を除いて、は。

「そろそろ行かなきゃね」

ふわり、と宙に浮かび、目指すべき場所へと飛び立つ。

「きっとあの子、待ちくたびれているわ――」





「それでは神奈子様、諏訪子様、行って参りますね」
「あー……」
「うー……」
「な、何でそんなに元気が無いんですか?」

守矢神社の風祝である私、東風谷早苗は死んだ魚のような目をして畳の上に倒れ伏している、守矢の二柱、八坂神奈子様と洩矢諏訪子様にそう声を掛けた。

「……」
「……」

お二柱からは、特に反応はなかった。
一体どうしたというのだろう。
と、そこで私はお二柱が転がっている部屋の隅に、原因と思しき物を発見した。
それは、空になった大量の酒瓶だった。

「はぁ、またこんなにお飲みになってたんですか? 倒れるまで飲んで得することなんて一つもないじゃないですか……」

お酒が原因だとわかると、途端に心配ではなくなってしまう。むしろげんなりだ。
何故なら、お二柱の散らかした部屋の片付けをするのは、私だから。
しかし、今日ばかりはそんな事をしている余裕はないのだ。
まったく、こんなことで足止めされると時間が勿体なく思える。

「神奈子様、諏訪子様、私もう時間が無いので出ますけど、きちんと片付けして下さいね」

相変わらず反応は無いけど、確認している時間も無いので、私はそのまま振り返り出て行こうとした。

「……早苗ぇ~……」

威厳もへったくれもないような、ひどく力のない声がまたも私の出鼻を挫く。
私はため息を一つ吐いてから振り返る。声の主は神奈子様だった。

「もう……こんなところを天狗なんかに見られてしまったら、信仰心ガタ落ちですよ? ……それで、何でしょうか?」

そのまま神奈子様の近くまで寄る。神奈子様は何故かとても疲れた顔だったが、それでも決して一縷の希望を捨てずに生きる、と思わせるような瞳を私に向け話しかける。

「早苗……今日は、ちゃんと、帰ってくる……よな? が、がが、外泊……なんて、しない、よな……?」

神奈子様の言葉に、私は一瞬頭の上に「?」を浮かべる。
外泊? 何を言っているのだろうか、この神様は。
と、今度は諏訪子様もぐぐぐ、と歯を食い縛りながら起き上がり、

「そんなことは許さないかんねぇ~……お前にはまだ早いんだからね~……」

などと言うのだ。
私はいよいよもって盛大にため息を吐かざるを得なかった。
そうか、二柱とも今日の私の予定のことで、酔い潰れていたのか……。
まったく……心配性な神様たちである。
しかし、私が原因で自棄酒めいた行為に走ってしまったのならば、私はこの過保護だけどとても優しい神様たちを安心させてあげなければならない。

「もぅ……大丈夫ですよ、神奈子様、諏訪子様。早苗は今日もちゃんとここに帰ってきますよ」
『ほ、本当かい!?』

綺麗にハモった。本当に仲が良い。二柱はそう言っても嫌そうな顔をするけど。

「ええ、本当ですとも」

ぱぁっ、と二柱の表情に灯が点る。
神から救いの言葉でも貰ったかのようだ。神様なのに。まぁ、私も現人神なんだけれども。

「今晩は、お鍋にしようかと思っているんです。いいでしょうか?」
『もちろんですとも!』

またもハモる。妬いちゃうくらい仲がいい。そう言うと殴り合いの喧嘩を何故か始めるけど。結局それもまた微笑ましく思えてしまうのだが。
それにしても、あっという間に元気になった。
こんなにも立ち直りが早いと、まだまだ子(?)離れは望めないだろうなあ、と感じてしまう。

「ですから、散らかしたお部屋の片付けは、お願いしますよ?」
「おうともさ!」

と、神奈子様が威厳たっぷりに腕を組めば、

「部屋どころか神社中、綺麗に掃除しちゃうよ!」

と、諏訪子様は両腕を天へ伸ばして応える。
そんな二柱の変貌振りに思わず苦笑してしまったのだが、とりあえずは一安心。

「ふふ、あんまり張り切り過ぎて物を壊さないで下さいよ? では、私も時間がありませんので、もう行きますね」
「ああ、行ってらっしゃい」
「神社は任せろー」

ととと、と小走りで私は境内を進む。
たん、と踏み込んで空へと飛翔する。
そこで、一度神社へと振り返り見上げる二柱に、言ったのだった。
よもや、二柱が再び凍りつくことになるなんて、少しも思わずに。

「今日は『小傘さんも一緒の晩御飯ですから』、いっぱい買い込んできますよ~!ちゃんとお腹空かして待っててくださいよ~!」
「えっ!?」
「ちょっ!?」
「それでは、行って参ります~!」
「ま、待って待って待って!」
「早苗さん? 嘘でしょ早苗さん!?」

悲しき哉、二柱の声は既にご機嫌の風祝の耳にはもう届いておらず。
代わりとばかりに返事をしたのは、冷えた風のみであった……。

『早苗ぇぇぇええぇぇええええ~~~~!!!!』

神々の歓喜は、あっさりと憂鬱に姿を変えたのだった。



そんな二柱の悲痛な叫びなんて露知らず。
急ぎ目でしばらく飛行していた私は、人里を視界に捉えた。
そのまま300Mほど離れた場所で降下する。ここからは徒歩だ。
人里の上空を飛ぶことを特に禁止されているわけでもないのだが、何だかんだで目立ってしまうことに抵抗があるので、人里を訪れる際はいつもこうしている。
それにしても――。

「う~寒い寒い。やはり飛んでいくと、寒さがより身に染みますねぇ……」

身を縮こまらせ、掻き抱くような格好で体を擦りながら、小走りで人里を目指す。
流石にこの時期、いつもの巫女服を身に纏い続けるのにはつらいものがある。
時折思うのだ。巫女服にしては露出が多いのではないか、と。
その事について神奈子様と諏訪子様に話してみたら、半泣きしながらこの服のタクティカル・アドバンテージについて力説された。
お二柱曰く――、

――全ての信仰は腋から集まるッ!!

――だそうだ。
あの二柱はたまに真面目な顔をしてふざけた事を言うのだ。
また、そんな時だけ息ぴったりなのだ。
そしてそんな時は、何を言ってもよくわからない理論武装で攻め込んでくるので、私が折れるしかないのだ。
その結果が、冬でもこんな服を着ている原因なのだ。
でも、カイロでも忍ばせておけば、割と何とかなるので、まぁいいや、とも思っている。
いやいや、私の事はいいのだ。
それよりも小傘さんの事だ。
こんな寒さの中、あの子もきっといつも通りの格好をしているに違いない。
生足を惜しげもなく晒して闊歩する姿が、ありありと想像できる。
健康的で、ふにふにした感触。足の指の可愛さなんて反則級だ。あ……ぴこぴこ動かさないで!

「はあああぁぁあぁ……本当に綺麗な足してますねぇ……って!!」

危ない危ない。人里の中でこんな事口走ったら変態扱いされてしまうところだった。
私は非常識と呼ばれることに抵抗はないが、変態呼ばわりはされたくない。
そう、小傘さんとは極めて健全な関係だ。
私が小傘さんをLikeで、小傘さんが私をLike。そんな関係だ。
私と小傘さんがじゃれ合っている姿は、「微笑ましいなぁ」ともっぱらの評判なのだ(評:上白沢氏)。
そうだ。不純な想いなんてこれっぽちも無い。
極めて純粋な気持ちで小傘さんの髪の毛とか、ほっぺたとか、二の腕とか、胸とか、お尻とか、太腿とか、ふくらはぎとか、足の裏とか触っているのであって、そこに一切の邪な気持ちなど無いのだ。

「ようし。今日もいっぱいじゃれ合っちゃいますよー」

待ち合わせ場所は、人里の大体中央付近に位置する広場だ。
そこには、素朴で和風な人里には似つかわしくない西洋風の噴水があり、待ち合わせ場所だけでなく、子供の遊び場、憩いの場として利用されている。
不定期だけど、アリスさんがここで人形劇を披露しているらしい。タイミングが悪いのか、私は未だ鑑賞できていないのだが。いつか観てみたい。
目的地までの道程は、入り口から伸びている大通りを真っ直ぐ歩いていればじきに着くので、迷いようは無い。
私が入ったエリアは、大通りに沿ってずらーっと八百屋やら米屋やら、農作物を取り扱う小売店が立ち並ぶ、人里の食を支えている地区だ。
一度大通りから外れれば、農家を営む人々の住まいがそこかしこにある。
ここいら一帯に集中して農家があるのは、一重に豊穣神の普段の住まいの関係上、妖怪の山側に近いこのエリアの方が、農業に適しているという単純な理由から来ている。
今日の晩御飯の食材を調達する時に、また来ることになるので、私はひとまず待ち合わせ場所へと向かう。
と、そこで視界の端に見覚えのある人物を捉えた。
どうしたものかと一拍考えたが、神社から人里まで飛ばしてきたおかげで、比較的時間に余裕のあった私は、彼女に声を掛けることにした。

「幽香さんー!」
「ん?」

私の声に反応して、こちらを振り向く。

「あら、あなた。山の上の……」
「はい、早苗です」

風見幽香。博麗神社での宴会で一度だけ会ったことのある、花の妖怪。
私はあまりお酒には強くないので、霊夢さん、魔理沙さん、萃香さんといったお酒に強い人たちとは少し離れてちびちび飲んでいたところを、幽香さんが声を掛け自己紹介を含め、軽くお話をしただけなのだが、その僅かな会話だけでも彼女がとても優しい妖怪だと私が感じるには充分なものだった。
同時に、あまり飲めない私に無理矢理お酒を飲ませようとした酔っ払い数名(魔理沙さん・文さん・鈴仙さん)を一蹴する強さも見せたりと、一度だけの邂逅だったが非常に強く印象に残ったのだった。

「そうそう、確か風祝……だったかしら? あの時は災難だったわね」

どうやら幽香さんも私の事を憶えていてくれたようだ。

「いえ、幽香さんに助けて頂いたので大丈夫でした。こちらこそ、あの時はありがとうございました」
「気にしなくていいわ。魔理沙と天狗はいつもの事だけれど、まさか永遠亭の兎まで絡み酒だとは思わなかったわ。まぁ、迷惑な酔っ払いが一人増えたところで、さして手間が増えるわけではないのだけれど」
「ああ……鈴仙さんやたら目が据わってましたね。むしろあの中で一番危険そうでした……」

ネクタイを頭に巻きつけて、見事なまでに酔っ払いオヤジだった。実際にそんなオヤジは見たことなかったけど。
手をワキワキしながら迫ってきたが、一体何をしようとしていたのか、考えるのも嫌だった。

「ところで幽香さん、お夕飯の買い物ですか?」

思い出してしまって、少し怖気がしたので話の時間軸を過去から現在に戻した。
私たちが今立っているのは、大通りに数ある八百屋の一つの前だ。ちら、と店のほうへ目を向ける。店の規模としては、中の下といったところで、えらく年季の入った顔つきのおじさんが、他のお客さんを相手に「この大根に目ぇ付けるたぁ奥さん、さては目利きだねぇ!」と見た目のイメージ通りの張りのある声で話していた。
あの顔と声でそんな事言われ始めたら、私なら確実に押し負ける。
……うーむ。私の苦手なタイプだ。
視線を幽香さんへと戻すと、彼女は肯定と示す頷きをして答えた。

「ええ、今日はおでんにしようかと思ってね」

幽香さんは手に持っていた手提げを持ち上げた。向日葵のイラストが散りばめられた、可愛らしいデザインの手提げだ。
まさに花の妖怪たる彼女に相応しいアイテムだと思った。

「あー、惜しいですね。ウチはお鍋なんですよ」

何が惜しいのか、自分でも良く分からないが。でも何となく惜しい。

「ふふ、そうね。確かに惜しいわね」

この気持ち、幽香さんも感じ取ってくれたようだ。何故か安心感が湧く。
それにしても、おでんとは……確か幽香さんって――。

「お一人で暮らしているんでしたよね?」
「普段はそう。基本的に妖怪は群れて行動しないしね。ただ――」
「ただ?」
「鍋物を独りで食べるほど、孤独が好きというわけでもないわね」

なるほど。今日は誰かと鍋を囲むのか、と得心したが、よくよく考えれば「一人暮らしなのにおでん食べるんですか?」とも捉えられかねない、ひょっとしてスゴイ失礼な物言いをしてしまったのではないか、と自責の念にも囚われた。普通に考えれば、誰かの家に行ったり、自分の家に招いたりくらいするだろうに……。
心の中で悶々としている私を、幽香さんは不思議そうな顔で見ていた。

「どうかした?」
「へあっ!?」

一人で勝手に考え事をしているところに、声を掛けられたので思いがけず変な声を上げてしまう。恥ずかしい……。
幽香さんは今度はきょとんとした顔をしている。
あー、今絶対変な奴って思われてるー!

「な、何でしょう?」

もうこれ以上間抜けなところは見せられないと、必死の建て直しを図り、何とか取り繕うことに成功した……おそらく。

「いえ、今何時か聞きたくてね。時計持ってるでしょう?」
「時間ですか、ええと……」

腕時計を見る。

「12時50分ですね」
「ありがとう」
「いえ……」

幽香さんと話をしていたら、結構いい時間になっていた。
先程の私のうっかり発言も、さほど気にしていないか、気付いていない風なので、少しほっとした。
今度からは、気をつけよう。
さて、小傘さんとの待ち合わせ場所に行かないと……。

「幽香さん、私そろそろ……」
「そう。じゃあ私も買い物の続きに戻りましょうかね」
「すいません、途中お邪魔しちゃって……」
「いいのよ、楽しかったし」
「そう言って頂けると助かります。それでは、失礼します」
「ええ、御機嫌よう」

幽香さんと別れ、再度私は待ち合わせ場所へと進路を向ける。
それにしても幽香さん……余裕たっぷりというか、なるほど強いわけだ、と納得させられるような貫禄を感じながら、私は目的地へ歩いていった。





買い物客でそれなりに賑わう大通りを歩いていく早苗の後姿をある程度まで見送ると、私は彼女から視線を外して八百屋の店頭に並ぶ野菜へと移す。
早苗はどうやら私に言った言葉が気になっていたようだ。
まぁ、一人で鍋を囲む、なんて真似は確かに寂しいことこの上ないだろうが、鍋を食べてはいけないという決まりもない。
早苗にも言った通り、妖怪は基本的に群れない。元々が孤独なのだ。鍋どころか、普段の食事でさえ一人で摂るのが常だ。
一人でいることを、寂しいと感じる精神回路をそもそも持ち合わせていないわけだ。
そこら辺について、彼女に言ってもよく分からない、といった顔をすることだろう。
故に、あの子には特に何も言わなかった。この感覚は、きっと共有できないだろうから。
妖怪の山の天狗や河童どもは例外だが。連中は人間以上に群れていると感じる時がままある。
特に天狗の連中だ。あの腹の底に何を飼っているのかわからないタヌキどもを、いつか叩き潰してみるのも面白い、などと不穏な考えに頭を廻らせていると――。

「よぉ、幽香ちゃん、いらっしゃい! 俺に会いに来てくれたのかい?」

ニカッと爽やかな好青年を髣髴とさせる笑顔を私に向ける店主。

「残念。今日も夕飯の食材と逃避行よ」

こちらもお返しとばかりに淑女の微笑を店主にプレゼントする。
すると、店主はオーバーな動作で私に袖にされたことを悲しむ。

「あちゃー、揃いも揃ってハンサムばかりじゃねぇか! 幽香ちゃん、俺は君のために身を引くが、最後にそのハンサムボーイの名前を教えちゃくれないかねぇ……?」
「そうね……白菜と大根とじゃがいも、それにゴボウね」
「はいよォ!!」

威勢のいい声とともに、自慢の美男子たちをかき集め始める店主。
妖怪相手に、こんな茶番劇を演じられる人間も珍しい。
もちろん、最初からこんなやり取りをしていたわけではないが。
『客に貴賎なし』が店のモットーとのことで、そこにある種の好感を覚えて以来、贔屓にしている。

「はい、幽香ちゃん」
「ありがとう」
「お前たち! 幽香ちゃんを幸せにしなかったら許さねぇからなァ!!」
「仕事熱心も良いけれど、あなたもそろそろ誰かを幸せにしてあげても良い頃合じゃないかしらね?」
「ぐぉッ! 幽香ちゃん、痛いところ突かないでくれよ~!」
「うふふ、それじゃあ失礼するわね」
「毎度ありィ!!」

仕事一辺倒の店主に別れ際、軽い言葉のジャブを入れてその場を後にする。
彼は里の女性には人気が高いのだが、如何せん今現在の恋人が仕事だと公言しているところが実に勿体無い。
まぁ、いつかそんな日が来たら、花束の一つでも贈ってやろうか。

「さて、と……」

必要な食材は揃ったので、これから私の目的地である博霊神社に向かうとしよう。
人里の中央から東西南北に伸びている大通りの、東の果て。
目指すべき博麗神社への道程は、今目の前にある人里東の出口から街道沿いに歩いていく。途中から見通しの悪い整備の行き届いていない獣道を進まなければならない。
この獣道が、普通の人間にとっては神社へ辿り着くことを困難にさせている。
理由は単純明快。妖怪が出没するからである。
その上、その先にある肝心の神社が『妖怪神社』呼ばわりされているものだから、参拝に来る人間などそうそういるはずもない。
が、所詮は人間の目線からの話である。
私には丁度良い散歩程度にしかならない道程だ。
無論、飛んで行けばもっと早く着く。
しかし、この場合早過ぎる。
ゆっくりと、移り変わっていく季節の風景を眺めながら向かった方が数倍良いと判断して、私は徒歩を選択した。



既に人里は視認出来ない位置まで来ていた。
もうしばらく街道を歩けば、神社へと続く獣道の入り口が見えてくる。

「雪が降り始めそうな雲行きね……」

これといって目に付く景色がない地上に飽いて、私は天を仰ぎ見ていよいよ冬の到来を感じていた。
鉛色のどんよりした雲が視界に広がる。冷え込み次第だが、遅くとも今晩には降り出すだろう。
同時に、雲以外の景色を発見した。
折角なので話でもしようかと掌をそれに向けてかざし、レーザー状の弾幕を放つ。
高速で放たれた弾幕は、一直線に対象へ伸びていき――。

「うわぉっ!?」

――すんでのところで回避された。
ちっ。
そして当然の如く、私に抗議の意を表しながら地へと降り立った。

「ちょっと、危ないじゃないのー」

本当にそう思っているのか、さほど怒っているようには見えない。
まぁ、彼女はいつもこんな感じだ。
温和で柔和なのだ。レティ・ホワイトロックは。

「雪女なのにねぇ……」
「ん?」
「なんでもないわ」
「そう?」
「ええ、そうよ」
「そう。で、何の用かしら?」
「今年も冬がやってきたかと思ったら、つい嬉しくなっちゃって」
「相変わらず恐ろしい奴ねぇー……」

幻想郷の良心たる私に対して、よくもまあそんな不当な評価をしてくれるものだ。

「あなたが現れたってことは、冬になった、ということよね?」
「そうよ。冬ですよー」

そう言ってレティは両手を広げる。春告精の真似事だろうか。

「随分はしゃいでいるわね」
「はしゃぎもするわ。冬だものー」

両手を広げたまま、くるくると回るレティ。

「まるで子供ね」

見た目、20代の女性の姿である彼女が、このはしゃぎっぷりだ。
たとえ彼女が純真無垢・天真爛漫で通っていたとしても、その動きは子供っぽすぎた。
という思いを率直に伝えてみたら、レティは緩やかな回転動作をぴたりと止め、こちらに向き直る。

「そう、子供!」
「……は?」

いきなり何だ。
彼女の妙なハイテンションっぷりに思わず気圧されてしまう。

「私を待っている子がいるのよ」
「あなたを待っている……? あぁ、あの子か」

幻想郷において、冬を待ち焦がれる奴はごくわずかだ。
見当はすぐについた。

「あの子のことだから、きっと何日も前から待っているに違いないわ。早く行かないと」
「あら、それなら引き留めてしまった形になるわね。悪かったわ」
「今度は弾幕じゃなく、声で呼び止めてくれればそれでいいわー」
「肝に銘じておくわ」
「それじゃーねー」

レティはそう言って勢い良く飛翔していった。

「急いでいる割に、随分とのんびりな速度ねぇ……」

まぁ、見当は大体ついているが。本調子ではないのだろう。難儀な体をしているものだ。
ゆっくりと遠ざかるレティの姿を眺めながら、私もひょっとしたら待っているのかもしれないあの子がいる、神社への道のりを再び歩き始めた。
少しだけ、歩く速度を上げて。





「うーん、いまいち本調子じゃないわねー」

私としては、もっとスピードを出しているつもりなのだが、眼下を流れていく景色がそうではないことを教えてくれる。
冬になるまであまり動かないのが災いしているのか、どうしても始動直後は動きが鈍くなってしまう。
毎年の待ち合わせ場所にしている、霧の湖をおぼろげながらに捉え、今出せる最大速で進む。



人里が見えてきた。
人間のための里だが、妖怪も平気で闊歩する、おそらく幻想郷で一番平和な場所だと思う。
今は人の時間、いわゆるお昼時なので里を歩く妖怪の数は多くはないだろう。
だが一旦逢魔ヶ刻を過ぎれば、その数は増し、妖怪専用の店が開かれる。
昼も夜もない、賑やかな場所だ。
つくづく感じるのだ。

「平和になったものねぇー……」

昔は随分荒れていたが、大結界騒動を経てから、特にスペルカードルールが成立して以降は平和感がより一層増しているように感じる。
大結界騒動の時分は大変だった。まぁ、今のこの平和さを見てしまうと、懐かしくさえ思えてしまう。

「あの時の『戦友』は相変わらずだったわねー。ま、息災で何より、ってとこかしら?」

チラ、と目だけ後方へ向ける。

「たまには一緒に飲むのも悪くはないかしらねー」

十中八九、博麗神社に向かっているだろう彼女に向けて言う。当然聞こえやしないだろうけど。
そうしている間に、人里の上空を通り過ぎて魔法の森に到達。この森を抜ければ霧の湖だ。
その規模は中々のものだ。
内部は特に道が整備されているわけでもないので、素人がうっかり奥にでも踏み入ってしまえば、たちまち迷子になってしまう。
迷子になるという意味では、迷いの竹林の方がやっかいなのだが、この魔法の森は、竹林と違い空気が非常に悪いのだ。
その空気の悪さは、妖怪でさえあまり立ち寄りたくないほどのもの。
そんなところで、例えば人間が迷子になったとしたら、運が悪いと命に関わるレベルだ。
ただ一度馴染んでしまえば、存外どうにでもなるらしい。
人間の魔法使いなぞ、森に自生している茸を求め、森中を飛び回っても平気な顔をしていたりもする。
それを幽香から聞いた時は、何故か感心してしまった。幽香は「本当、よくやるわ」と呆れ顔だったが。

「森の終わりが見えてきたわねー」

視界に湖を捉えた。
相変わらず霧が出ていて視界状況はよろしくないようだ。
それほど大きくない湖なので、この霧が無ければ吸血鬼の棲家である紅魔館まで見通せるはずなのだが。
まぁ、行く予定もないので見えなくても構わないのだけれど。
私が目指すべき場所は、森を抜けたすぐにある、そこそこに大きい石。
そこが、チルノとの待ち合わせ場所だった。

「やーっと到着だわー」

さてさて、あの子はどこかしら。
待ち合わせ場所自体、チルノのテリトリー内なので毎年私が遅れて到着する形になる。
そして言われるのだ。「レティ、おそい!」と。

「あ、いたいた」

目印の石の上に膝を抱えて座っている。
ぼーっと湖の方を眺めている辺り、結構待っていたのだろう。
今年は暑い日が長く続いたせいもあってか、季節の廻りが遅れ、例年より動き出すのが遅れてしまっていた。
自然の流れとは言え、待たせてしまったことへの罪悪感を抱きつつ、降下していく。
……もしあまりにも機嫌が悪そうだったら、幽香のせいにしておこう。
ストン、とチルノの背後でわざとらしく着地音を出し、石の上に降り立つ。
当然の如く、音に対してチルノが振り向く。
そして私であることを認識すると、チルノの顔にぱぁっと笑顔が生まれる。
私はこの瞬間がたまらなく好きだ。
例えるなら、そう。向日葵のような笑顔だ。
昔に見た、幽香の住む太陽の畑に広がる、一面の向日葵。
風に揺れる黄色の海が、太陽の光でキラキラと輝く、あの眩しいまでの光景。
今目の前に生まれた笑顔は、それくらいに、それ以上に輝いている。
さしずめ私は太陽なのかな。

「おっとっと……」

立ち上がり勢い良くチルノが飛びついてきたのを抱きとめる。
私の胸にぐりぐりと顔を押し付けている。
まるで本物の私かどうか確かめているようだ。
納得したのか、満足したのか、チルノは埋めていた顔を上げ、私の顔を覗き込む。

「レティ、おそいよ! あたい、まちくたびれちゃったんだから!」

予想通りの言葉を言われた。



昨年の冬の終わりからの、久しぶりの再会をひとしきり味わった後、私とチルノは湖の辺を歩いている。
目的地は森だ。
森、と言っても魔法の森よりは規模もかなり小さく、名前も無いような幻想郷のそこかしこにあるような変哲のない森。
チルノとの待ち合わせ場所から大体北北東に位置しているその森には、私たちが冬の間暮らす家がある。
隠れ家という名目で造ったわけではなかったが、結果的に目立たない場所にあるためにその存在はあまり知られていない。
ご近所には、騒霊三姉妹の住まう屋敷がある。耳を澄ませば、彼女たちの演奏が家まで響いてくる。
特に長女のヴァイオリンは、夜に聴くととても心が安らぐ。
私の冬の楽しみの一つだ。
三姉妹の屋敷を遠巻きに眺めていると、ぐい、と引っ張られる感覚とともに、チルノの声が聞こえてくる。

「ねー、レティ、ちゃんとあたいのはなしきいてるの?」

その声には、不満の色がこもっている。

「ちゃーんと聞いてるわよー」
「ほんとに?」
「勿論よ。チルノの話を聞くのは毎年の楽しみだもの。聞き逃すなんてそんな勿体無いことしないわよー」
「えへへ……じゃあつづきをいうね? あのね! それでね!」

チルノは、私がいない間に起こった出来事を話してくれる。
冬以外はろくに活動できずに、世情に疎くなりがちな私のために話してくれるのだ。
それは異変の話であったり、チルノの身の回りで起きた話であったり。
とても楽しそうに、嬉しそうに話すチルノ。
3月は毎年恒例の博麗神社でのお花見。今年も桜が綺麗だったそうだ。毎年言われるのが「レティにもみせたい」である。
4月はポカポカ陽気でしょっちゅう博麗神社の縁側で霊夢とお昼寝していたそうだ。巫女は相変わらず平時はぐうたらしているようだ。
5月は妖怪の山に棲む妖怪たちに5月病という病が流行したらしい。チルノと仲の良い天狗・射命丸文も5月の間家から一歩も出なかったとか。
6月は蛙を凍らせて遊んでいたら、妖怪の山の神が襲い掛かってきて大変だったらしい。ここも毎年恒例だ。
7月は人里に近い林道を歩いていたら、後ろからいきなり「うらめしやー!」と叫ぶ妖怪と出会ったとか。「あめもふってないのにかさをさしているなんてへんなやつ!」と言ったら肩を落としてとぼとぼ林の中に消えていったという。それにしても、そんな古典な妖怪がまだいたのか。
8月、チルノにとって受難の月である。今年は特に酷暑だったから、彼女の能力を求める輩が多かったようだ。そんな数多の曲者からチルノを救ったのは、幽香だった。チルノの窮地を救った彼女は「この時期外に出ると、何かと苦労するでしょう? あなたさえ良ければ、夏の間私の家に匿ってもいいのだけれど」と言ったらしい。もっともらしいことを言って、彼女は優雅にこの夏を過ごしたことだろう。
9月には永遠亭でお月見をしたそうだ。まんまるお月様を見ながら、まんまるお団子を食べるのは「とってもふうりゅう!」とのこと。私も食べたい。
10月には魔理沙と紅魔館でハロウィンをしたそうだ。しかし話を聞くと、どうやら魔理沙からは「ハロウィンはひたすら悪戯していい日なんだぜ」と間違った知識を伝達されていたらしく、チルノが紅魔館中を悪戯による混乱に陥れている最中、魔理沙は図書館の本を大量に奪って夜空に消えていったのだとか。彼女はいつか痛い目をみると思う。
そして11月、例年通りなら中旬ごろに私が動き出す。今年は少し遅れてしまったが。

「ことしもちゃーんときれいにそうじしたんだからね!」
「ありがとうね、チルノ」

11月になると、チルノは私の家の掃除をしてくれる。
きっと私が来る日が待ち遠しくて仕方がない――当然、私もチルノに会うのが待ち遠しい――のだろう。遊ぶことも忘れて掃除に没頭するらしい。
折角張り切って掃除をして準備をしてくれたのに、いつもより遅れて到着する形になってしまったことを、本当に申し訳なく思う。
その分、目一杯遊ぼう。
幻想郷中を飛び回って冬をばら撒こう。
湖に、冥界に、竹林に、無縁塚に、山に、地上と地底の間で交流が取れるようになってきたから地底に行くのも面白い。
調子に乗って人里にちょっかいをかけて、巫女に退治されるのも悪くないかもしれない。

「ねぇ、チルノ――」

この素敵な遊びをチルノと共有しようと声をかけると。

「ん~……むにゅ……」

とっても眠たげに眼をこすっているチルノがいた。

「チルノ、眠いの?」

しゃがみこんで問う。

「……ねむくない」

ふらふらしている。今にも寝てしまいそうだ。
しゃべり疲れたというよりは、おそらく――。

「ひょっとして、私が来るまで寝ていなかった?」
「……そんなことない……ちゃんとねてたよ……2かまえくらいに」
「……来るのが遅くてごめんね、チルノ」

まったく、つくづく今年の季節の廻りが恨めしい。
そしてその廻りに従って生きる自分にも――。

「チルノ、今日はもう寝なさい」
「……やだ。レティともっとおしゃべりする」

ぐわんぐわん、と首をゆらゆら大きく振って拒否の意思を示すチルノ。

「……だって……ふゆなんてあっというまにおわっちゃうもん」
「チルノ……」

今年は夏が長かった。だからといって、冬がその分ずれ込むわけではない。
チルノにとって、私にとって、ただでさえ時間の流れが速く感じられる冬という季節が、今年はもっと短いものかもしれない。
それはお互いにとって一緒にいられる時間が、その分だけ短くなるということだ。
チルノにとって、今年の冬は一分一秒でも惜しいのだろう。
だけど――。

「チルノの気持ちは、分かるわ。私だって少しでも長くチルノと一緒に居たい……でもね、無理をしてもし体調を壊してしまったら、今よりもっとおしゃべりする時間も、遊ぶ時間も減ってしまうわ」
「……」
「……今年の冬は、きっと短い。そう、いつもより。だからこそ、時間を大切にしたい。短いなりにも長くチルノとこの冬を楽しみたいの……チルノは、どう?」
「……うん。あたいも、ちょっとでもながくレティといっしょにあそびたいよ」

とすん、と私の肩に顔を埋めるチルノ。

「……あしたから、いっぱいあそぼうね」
「うん」

私はチルノの小さな身体を優しく抱きしめる。

「チルノ、眠る前に聞かなきゃいけないことがあるの」
「……んぅ?」
「おんぶとだっこ、どっちがいい?」
「……だっこ」

チルノはそう答えて、私の両肩に腕を乗せる。
チルノの身体を持ち上げる。妖精は身体も小さいので簡単に持ち上がる。
ポンポン、と背中を優しく叩いてあげた時には、チルノはもう既に静かに寝息を立てていた。
空を見上げる。

「もうすぐ降るわねー……」

来年は長い冬であって欲しい。ただただそう願う。





「うーん、降りそうですねー……」

私は人里中心部の噴水広場に設置されているベンチから、空を見上げている。
いかにも、といった空模様だ。
隣には小傘さんが座っている。
この噴水広場で待ち合わせをした私たちは、夕食の材料を買いつつデートをしていた。
今はひとしきり歩き回って、スタート地点であるこの場所に戻ってきていた。
私と小傘さんの手には石焼いも屋さんで買った、アツアツのおいもが握られている。
冷えた手に、焼いもの熱が心地良く広がっている。
一方の小傘さんは、夢中で焼きいもを口に運び、ハフハフ言いながら口の中で転がしている。かわいい。
やがて熱が下がったのか、じっくり咀嚼し始める。ほっぺたの動きが、ぷにぷにでとても柔らかそうなものであることを教えてくれる。かわいい。
咀嚼を終え、名残惜しそうに飲み込む。その際に見せる喉の動きの、何と愛らしいことか! かわいすぎる!
小傘さんが、何かに気付いたようにこちらを見る。

「早苗、熱でもあるの? 何だか息が荒いけど……」

心配そうな顔をしている小傘さん。
何て心優しい娘なのでしょう。本当に妖怪なんですかね。

「大丈夫ですよ、小傘さんが焼きいも食べている姿がかわいすぎて悶えていただけですから」
「ふぇ……!?」

面と向かってかわいいと言われたことに赤面し始める。
みるみる顔の温度が上がっているのが見て取れたが、手に持っている焼きいものように湯気が出るまでには至らなかった。

「も、もー! 早苗ったら、変なこと言わないでよー!」
「いえいえ、変なことないですよ? 小傘さん本人のことですから自覚はないでしょうけど、小傘さんのあらゆる動作から溢れ出るかわいさ、その破壊力はうっかり妖怪の山を崩壊させてしまうほどのものなのです」
「えぇっ!? わ、わちきにそんな力が……」
「はい。大変危険な力です。そして、そんな力を抑え込むのが、私の奇跡を起こす程度の能力なのです」
「おぉー! 早苗すごい!」
「えっへん! ……と胸を張りたいところなのですが、私の力にも限界がありまして……」
「え……そうなの?」

私が表情を少し暗くして告げると、小傘さんも笑顔だった顔に陰りを見せた。
もちろん、小傘さんのかわいさに物理的破壊力は皆無なのだが――精神的破壊力はある。私がその可愛さにハートブレイクした一人である――、小傘さんは簡単に信じてしまっている。
つまり私は一芝居打っているのだ。それは、ある目的を達成させるためだ。
私は、ありもしない自分の力におろおろしている小傘さんに救いの手を差し伸べるべく、一転して表情を明るくして話し始める。

「でも、大丈夫なのです! 今日は小傘さんの力を限定的に留める画期的なアイテムを持って来たのです!」

私の発言に、小傘さんの顔に再び灯が点る。

「ほ、ほんとっ!?」
「はい、これなんですけど……」

私はバッグの中を漁り、それを取り出して小傘さんに見せる。
目の前に現れたそれに、小傘さんは首を傾げて私に問う。

「早苗、これなに?」
「これはマフラーです」
「まふらー?」
「そうです。こうやってですね……」

私は取り出したマフラーを小傘さんの首に巻いてあげる。

「はい、どうですか?」

ポン、と一度マフラーを叩いて小傘さんに具合を聞く。

「おぉー……あったかい!」

小傘さんは率直に感想を述べると、両手で軽く掴んだり、撫でたりして初めて見るマフラーの感触を楽しんでいる。
しかし――。

「ねー早苗ー、マフラーってこんなに長いのー?」

初めてのマフラーとは言え、流石の小傘さんも疑問に思ったようだ。
その長さは一般的な男性用よりも、若干長めに編んであった。
だが、それも計算の内。

「小傘さんの言う通りです。しかし思い出してください。このアイテムは小傘さんの溢れんばかりの可愛さによる無秩序な破壊を限定的なものに留めるものだということを」
「うん」
「つまりこのマフラーの真の使い方はこうなのです!」
「うわわっ!」

私はそう言って小傘さんに巻いてあげたマフラーを一度解く。
そして今度は――。

「これで完成です」
「さ……早苗……」
「何ですか?」
「……顔……近いよぅ……」

それはそうでしょう。
解いたマフラーを今度は二人の首に巻きつけているのですから。

「あはは、小傘さん顔真っ赤」
「うー……これ、さっき早苗が言ってたことと本当に関係あるの……?」
「大アリですよ。だって――」

小傘さんに寄りかかる。
私のほっぺたが、もちもちぷにぷにの小傘さんのほっぺたとくっつく。

「これで小傘さんを独り占めしたも同然ですからね」
「~~~~っ!」

今の一言で小傘さんのほっぺたから、彼女の体温がさらに熱が上がったことが伝わってくる。

「限定的に抑えて、その上小傘さんのかわいさを私が独占することによって、私の幸せ指数は天井知らず。私なら小傘さんのかわいさを全て受け止めることなんて造作もないですからね。奇跡の力を使って抑え込む必要もありません。さぁ小傘さん、思う存分かわいいところを見せてください」

小傘さんのほっぺたにすりすりと頬擦りしながら抱きつく。

「やぁ……早苗、みんなこっち見てるからぁ……!」

抵抗の意思を示す小傘さん。
しかし、それも言葉だけで私を手で押し退ける、といった行動にまではいかない。
これ幸いにと、私は小傘さんを抱きしめる腕の力を強くする。

「いいじゃないですか。むしろ皆さんに見せつけてあげましょう。あっ、キスもしちゃいましょうか?」
「キ、キス!? さ、流石にダメだよぉ!」
「大丈夫ですよ……衆目なんて鳥除けのアレみたいなものだと思えば……」
「むっ、無理だよそんなのー!」
「もー、何にも気にしなくていいんですよ。だって、私たちの仲はもう幻想郷公認なんですから」
「えっ、そ、そうなの……?」
「そうですとも」

嘘ですけど。でもいずれはそうなりたい。

「ですから、私たちがイチャイチャしたりキスしたりするのは、至って自然な行為であって、それを咎められる理由なんてどこにも存在しないのです」
「でも、恥ずかしいよ……」
「小傘さんは目を瞑っているだけで大丈夫です。周りが見えなければ恥ずかしくないでしょう? さ、眼を閉じてください……」
「あう……ちょっとだけ……だよ……」

強引な論理に多少納得はいってないようだったが、小傘さんは半ば観念したように俯き、ぎゅっと眼と唇を閉じて顔を上げた。
とってもかわいいです。写真に残して永久保存するべきかわいさだったが、手元に写真もなければ携帯もなかった。
まぁきっと、これからいくらでも見ることが出来るかもしれない、と考えれば今は脳内メモリに焼き付けておけばいいかな。
それよりも、小傘さんが唇を真一文字に結んでいるので、ねっとり濃厚なちゅっちゅっが出来ないのが問題だ。
何とかしたいところだが、何だかこれ以上は許してくれなさそうな意思表示にも受け取れたので今回は断念することにした。
焦り過ぎてもダメですね。時間なんていくらでもある。じっくり仲を深めていこうじゃないか。

「さ、いきますよ……」

すっ、と両手を小傘さんの頬へ当て、キスしやすい角度まで持ち上げる。
手が触れた瞬間、小傘さんの身体がビクッと小さく跳ねる。
小傘さんのこれ以上ない赤面顔を堪能しつつ徐々に顔を近づける。
私の吐息が届いてお互いの距離を確認したのか、ぎゅっと閉じられた眼にさらに力が入る。
あぁ……最高にかわいいです、小傘さん。
いよいよ私も眼を閉じて、多数の人々の好奇の視線から逃れて、二人だけの世界、唇と唇が触れ合うことによって生じる甘酸っぱい小宇宙へと飛びた――!

「昼間っからやめんか、馬鹿ども!」

――離陸後、外部からの衝撃に伴うエンジントラブルによりスペースシャトル「ちゅっちゅっ」は墜落しました。

「だ、誰ですかっ! 私と小傘さんのラブラブイチャイチャタイムを邪魔する罰当たりは!」
「私だ」

気配のする方へと顔を向けるとそこには慧音さんが立っていた。
普段の慧音先生は、半分人間半分妖怪という不安定な立ち位置にいるにも関わらず、人里のために子供たちの教育を買って出たり、自ら先頭になって戦ったりして、人里の発展のために日夜尽力しているまさに人間の里の顔と呼ぶべき人物である。
幻想郷に来たばかりの頃、人里で右往左往していた私に気さくに声をかけ、それ以降何度か相談に乗ってくれたりした。
口調は若干男勝りだが、常に優しさを内包している。そのせいか、『頼れるお姉さん』という印象が私の中にある。
しかし、まだ見たことはないのだが、満月になると妖怪の部分――ハクタクになるらしい。
その時の慧音さんには、何と角が生えているのだとか。
何でもハクタク化している時は、平時とは比べものにならないくらい気性が荒くなり、下手に近づくと問答無用の頭突きをお見舞いされるというのを、人づてで聞いたことがある。
おかしいなぁ、今は満月どころか、月すら出ていないというのに。いや、そもそも今は曇り空で日光すらろくに拝めていない現状で、何故慧音さんはハクタク化した時のような、怒気というべきオーラを身に纏って私の前に仁王立ちしているのでしょうか。まぁ、ハクタク状態の慧音さん、見たことないですけどね。

「私からもいいか? この辺りに人里の公序良俗を著しく乱している痴れ者がいると聞いたのだが……早苗は知らないか?」
「……私たちです」

その後、私たちは頭突きを一発ずつ貰い、小一時間ベンチの上で正座させられたまま、慧音先生のお説教を受けた。



「いたた……」

小傘さんが頭突きを貰った自らのおでこをさすっている。

「大丈夫ですか?」
「大丈夫……じゃないかも」

目尻には、未だに光るモノが。
ちなみに、私も大丈夫じゃない。
これ、ヒビくらい入っちゃっているんじゃないでしょうか?

「うー……早苗があんなことしなければこんな目には……」
「あー、はいはい。確かに私が悪かったです、ごめんなさい」

恨めしそうにこちらを見る小傘さんを、平謝りであしらう。先程からこればかりだ。

「もぅ! 誠意がこもってないよ!」
「同じことを10回も繰り返せば、適当にもなってしまいますよ」
「もー! もー!」
「あー、じゃあ一体どうすれば、許してくれるんですか!」
「約束! 約束して!」

びっと小指を目の前に差し出す小傘さん。

「約束って、一体何をですか?」
「これから人里であんな恥ずかしいことしないって! わちきすっごく恥ずかしかったんだからね!」
「う……」

思い出したのか、少しだけ顔を赤らめている。
慧音さんにも言われたことだが、確かに良識を欠き過ぎた行動を取ってしまったと思ったし、その際小傘さんにも無理強いしてしまった。
小傘さんに対する好きが行き過ぎて、結果彼女に嫌われてしまっては元も子もない。
今回の件は大いに反省しなくてはならない。
スッと、私も小指を差し出し小傘さんの小指と絡める。

「……今回は私が常識に囚われなさ過ぎました、反省しています。だから約束します。もうあんなことはしません」
「……うん。ありがとう」

指切りをして、小指を離す。

「……でもね、あのね……」

もじもじと、自分の人差し指と人差し指を突っつき合い、私に何かを伝えそうにしている小傘さん。

「?」

私が続きを待つように小首を傾げると、何故か耳まで真っ赤にした小傘さんがとんでもないことを言ってきた。

「ふっ、二人っきりの時ならっ! 別にいいよっ!」
「へ? そ、それって……もしかして」

コクン、と黙って頷きそのまま俯いてしまう小傘さん。
私はただただ、「神様ありがとうございます!」と心の中で叫び続けた。

「ならば善は急げです! さぁ、そろそろ神社に帰りましょう!」
「うわわっ!」

私は小傘さんの手を取り立ち上がる。
その時――。

『あ……』

声が重なる。
私たちの目の前に、白くて丸いものがふわりと落ちてきた。

「雪だ……」

二人で空を見上げれば、チラチラと空から無数の雪が地上に舞い降り始めてきた。

「あー、降ってきちゃいましたね」

降るとは思っていたけど。少しばかりのんびりし過ぎたか――ここは慧音さんの説教のせいにしておこう――。

「本格的に降り始めると面倒ですから、行きましょ――」

言葉を途中で止めたのは、小傘さんが得意気に傘を開いて立っていたから。
そういえば、唐傘お化けだったねこの娘。
ふふん、と鼻を鳴らしてベロ付き目玉付きのお世辞にも素敵とは呼べない傘に入れてくれる。
どうやら、のんびり帰っても大丈夫そうだ。
神奈子様と諏訪子様には少しばかり我慢してもらう必要がありそうだ。

「感謝するといいかも?」
「ありがとうございます」
「えへへ……ねぇ早苗」
「何ですか?」
「これって、相合傘って言うんだよね?」
「ええ、そうですね」
「らぶらぶ?」
「ラブラブです」

また少し顔を赤く染めた小傘さん。
そして私も、相合傘なんてムズかゆいことをしていることを思って、顔に熱が帯びるのを感じたのだった。





「やれやれ……予想より早く降ってきちゃったわね……」

はらはらと落ちてくる雪を、日傘を差して防ぐ。
もう神社まで大した距離ではないし、降ってくる雪もそれ程ではないので傘を差す必要も無いといえば無いのだが。

「折角霊夢に会いに行くのだから、多少たりともみっともない姿を晒すわけにはいかないしね」

のんびりと人里からここまで歩いてきて、ようやく博麗神社の石段まで辿り着いた。
時間が余ったとはいえ、流石にのんびりし過ぎただろうか。
生憎の天気ということもあり、既に辺りは暗くなりつつあった。
これだけ暗いと、霊夢のことだからもう神社に引っ込んで熱いお茶でも啜っていることだろう。
そう思うと、石段を上るスピードも知らず知らずの内に速まる。
妖怪なのでこの程度の冷え込みはものともしないのだが、霊夢の淹れるお茶が無性に飲みたくなった。
早々に石段を踏破する。さぁ、霊夢が居るだろう居間にさっさと向かおうとしたが――。
意外なことに、鳥居の柱に寄りかかっている霊夢がそこにいた。
石段を上がってきた私を見るや。

「いらっしゃい。遅かったわね」
「それは、人里から歩いてきたから」
「人里から? どんだけ時間を持て余しているのよ、あんたは……」

私の答えに、呆れたように言う。
頭を掻きながら鳥居から身体を離す霊夢。
私が手から提げている買い物袋の中身を覗き込み、満足したように頷く。

「うん、ちゃんと買うものは買ってるから、私を待たせたことは許してあげる」

そのまま振り返り、神社へと歩き出す。
私は買い物袋を石畳に置き、霊夢の手首を掴む。
霊夢が何事か、とで振り返る。

「ごめんなさい。ずっと待っていてくれたのに」
「別にいいわよ。暇だっただけだし」

霊夢の手に触れる。

「こんなに冷たいじゃない」

日傘も閉じ、霊夢の両手を私の両手で包み込む。
持ち上げて、息を吐きかけ、手で擦る。

「んっ……ちょ、ちょっと幽香、大丈夫だって……!」
「ダメよ、私のせいなのだし、せめてこれくらいはさせて頂戴」

そう言うと、霊夢はしばらくの間、されるがままでいてくれた。



「くしゅんっ」

霊夢の手に温度が戻りつつあったところで、彼女からくしゃみが出た。
くしゃみが出たことで気が付いたが、いつもと変わらぬ巫女服を着ているのだから、屋外で手だけ温めてもしょうがないのでは……。

「……ごめんなさい」

霊夢は鼻を啜りながら、解放された手で「別にいい」のジェスチャーを示す。
ならば今度は抱きしめて温めようと、両手を広げてアピールするも――。

「流石に中に入った方がいいわ」

丁重にお断りされた。

「違いないわね」

私は苦笑する。

「では早速晩御飯の準備をしましょうかね」
「あ、お酒だけこっちに頂戴」

くいっとお猪口であおる真似をして霊夢が要求する。

「ダーメ。ご飯が出来るまで我慢しなさい」
「ケチー」

要求を一蹴されてブーイングを上げる霊夢。
そんな彼女をなだめるように頭を撫でてあげる。

「一緒に飲みましょ、ね?」
「んー……」

私に頭を撫で回されるのを、眼を閉じて甘んじる霊夢。

「しょうがないわねー。私も一緒に手伝うわ。二人でちゃっちゃっと終わらせれば早く飲めるし」
「そうね。じゃあすぐに支度しましょうか」
「よーし、今日は飲むわよー!」

私はまた苦笑して、霊夢と二人で台所に向かっていった。



「は~~~! お酒おいし~~~!」

お酒を飲んでこの上ない笑顔を見せている霊夢。
どうやら、ここのところ飲酒を控えていたらしく、私が持って来るだろうお酒を楽しみにしていたそうだ。
既におでんの具は空となり、私たちは食後の酒を楽しんでいる最中だった。

「あんまり飲みすぎてはダメよ?」
「あ~?」

あからさまに不満気な返事と眼を向ける霊夢。

「幽香こそ、ちゃんと飲んでるの~? 飲みすぎもよくないけど、私はまだ大して飲んでないけど、逆に飲まなすぎもダメなんだからね!」
「ちゃんと飲んでるわよ? 外の雪を楽しむことが出来るくらいにはね」

夕方から降り始めた雪は、今ではうっすらと地面に積もり始めていた。

「あ~、雪ね。私も雪を肴に程々に飲んでいたわ。程々に」

そう言っていつの間にお猪口いっぱいに注いだお酒を一口にあおる。

「くぁ~~~!!」

まだまだこの娘は花より団子、雪より熱燗のようだ。

「はぁ……」

やれやれと思う反面、それをどこかで安心している自分がいたりする。
ずっとこのままでいて欲しい。もっと欲を言うのなら、いつか花を愛でる時が来たとしたら、それは私であって欲しい。
だが、現状一番それとは縁遠い位置にいるのが、私なのだろう。
霊夢にとっては、私は姉のようなものだから。
それはそれで、もちろん嬉しいのだけど。
霊夢を見ながらそんな思いに耽っていると、彼女と目が合った。

「ちょっと幽香ぁ~、さっきから全然飲んでないじゃないの~」
「私は私のペースで楽しんでいるからいいのよ。というか霊夢、明らかにあなたが飲みすぎなのよ」
「なにをぉ~」

霊夢は、再び勢いよくお猪口をあおって、ずりずりと足を引き摺って私の隣まで這い寄ってきた。
私のお猪口を覗き見るや、いっぱいになるまで注ぎ足す。
そして私に飲むように手に持たせる。

「ほらっ! 飲みなさい!」
「もう無茶苦茶ね……」

大きくため息を吐いて、仕方なしにとあおる。
スッと喉を通って、胃の腑に落ちる。
そこから体中に熱が広がり、くまなく温める。
ほぅ、と一息吐いてお猪口を置くと、いきなり霊夢が抱きついてきた。

「はい! よくできました~!」
「きゃっ!」

実に満足そうな顔をした霊夢が、私の胸に顔を埋めてスリスリしている。
まるで猫みたいだ。

「ふぁぁ……幽香の匂い、好き……。何だか甘い、花の匂い……」
「そ、そう? あ、ありがとう」

普段は、私の方から霊夢にアクションを起こすのだが、今日に限っては全く逆の展開に。
疑う余地なく彼女が酔っ払っているからなのだが、いつにない展開に何だかもう色々とぎこちなくなってしまった。
どうしたものかとしばらく所在なく腕を動かしていたが、そう言えば霊夢が小さかった頃はいつもこんな感じだったことを思い出した。

――こんな時はいつも頭を撫でてあげると喜んでいたわね。

記憶の通りに優しく撫で始めると、霊夢は蕩けたような表情を見せる。

「んぅ……気持ちいい……」

記憶の中にいた霊夢が、今目の前にいる。
あるいは、これが彼女の本心なのかもしれないと思った。これは都合のいい解釈だろうが。
ただ、霊夢がこうしてかつてのように甘えてくれている、その事実が私には嬉しくてしょうがなかった。
私は未だ所在ないもう一方の腕を、霊夢の腰に回して少し抱き寄せ、彼女が眠るまでの間頭を撫で続けた。



「よいしょ……っと!」

簡単に洗い物を済ませた後、私は眠りに落ちた霊夢を抱き上げて、用意した布団に入れてあげた。

「流石に重くなったわね……」

妖怪の私にはこの程度の重さは物の数にも入らないが、霊夢の重みが過去のそれとは違うということを、しっかりとこの手が感じ取った。
霊夢の顔を覗き込む。

「ふふっ、相変わらずだらしのない顔してるわねぇ」

ここは昔と変わっていない。
何だか安心してしまう。
それにしても可愛い寝顔だ。

「あんまり可愛過ぎると添い寝しちゃうわよー……」

もう夢の中だから届いてはいないだろうが、思ったことを口にして囁いてみる。
昔は当たり前のように添い寝していたものだが、今やったら霊夢は「な、何やってんのよ!」と御札を投げつけてくるかもしれない。
でも、もしかしたら。
先程酔った状態で見せた昔のように甘えてきたあの行動が、霊夢の心のどこかに秘めた感情なのだとしたら。

「お姉ちゃん、頑張っちゃうけどいいかしら?」

ぐっすり寝ている霊夢に、そう宣言する。

「むにゃ……」

そんな勝手なことを言われていることなど露知らず、霊夢は夢の世界を楽しんでいることだろう。

「私、本当にあなたのこと大好きだから、覚悟しなさいよ?」

覆いかぶさるように霊夢を真正面から見据える。
そのまま顔を近づけ――。

ちゅっ。

私は愛しい霊夢の額に口付けし、決意と誓いを染みこませた。
そのまま霊夢と同じ布団に潜り込む。
こうしてくっついて寝れば、霊夢と同じ夢を共有できるのだろうか。
もしそれが可能ならば、四六時中霊夢と居られることになるのかと思うと、胸が高鳴るのが止められずしばらく寝付けなかった。





そっと、唇を離す。
すぐ目の前で眠っているチルノが変わらず一定のリズムで寝息を立てている。
あれから30分もしないうちに家に辿り着き、チルノをベッドに入れ、適当に時間を潰して、もう寝てしまおうかとチルノに添い寝する形でベッドに入った私の眼前に、寝返りを打ったチルノの、まさに天使とも言うべき寝顔が現れたものだから、条件反射的に額へキスをしていた。

「レティ……」

寝言で私の名を呼ぶチルノ。
そう呟くと同時に、チルノの瞳から涙がすぅーっと頬を伝ってシーツを濡らした。
夢の中で私を探しているのか、それとも待っているのか。

「本当にごめんね、チルノ。遅れちゃって。でも大丈夫よ、私はもうここにいるから。だって――」

私は夢で泣いているチルノを安心させてあげようと、彼女のウェーブのかかった柔らかい髪を撫でる。
窓を見る。
しんしんと降り続ける雪が目に映る。
明日には早速積もることだろう。
徐々に幻想郷が白に染まっていく。
一面の銀世界。

「―冬が始まったのだから」
ここまでお読みいただきありがとうございました。サジィーです。3作目です。

この話を、本当なら2作目に、そして12月中に書き上げるつもりだったのですが、年越しちゃいました!
だから冬真っ只中なのにこんなタイトルに!

今回は3組のカップリングのお話を書きました。
カップリングが切り替わるたびに、シチュエーションをそのまま繋いで場所だけ移動させてみましたが、いかがでしたでしょうか?
いつものゆうかれいむに加えて、レティチル、こがさなといったこれまた好きなカップリングを書けて個人的には満足しています。

それでは、今回はこれにて失礼致します。次作以降も宜しければお付き合い頂けますと、飛び上がるほど嬉しいです。

さりげなく誤字修正しました。
サジィー
http://noutei.blog75.fc2.com/
http://
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コメント



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ヒャッハー、レティチルだぁー!!

それとは別に八百屋の店主にうっかり惚れそうでした。
5.100名前が無い程度の能力削除
さでずむ控え目
6.100名前が無い程度の能力削除
どれも好みです
8.100奇声を発する程度の能力削除
どれも素晴らしかったです!
13.100名前が無い程度の能力削除
三組三様それぞれに見所があって楽しく読ませて頂きました。
場面の切り替えも自然でスラスラ読めます、良作ね!
21.100名前が無い程度の能力削除
ヒャッハァー!!ゆうかれいむだ!ゆうかれいむさえあれば私は生きていける!!
22.100名前が無い程度の能力削除
なんという姉妹なゆうかれいむ…
これはご飯三杯は余裕でいける
31.100名前が無い程度の能力削除
みんな仲良しで良い事です。
35.100名前が無い程度の能力削除
一人称リレー形式……そういうのもあるのか……と感動させて頂きました。そして甘い!鍋もおでんも口付けも!もしそれらが知らない食べ物ならスイーツ(と勘違いしているところでしたw。微笑ましい物語をありがとう。
39.100Admiral削除
冬の1日を切り抜いた素敵なお話、ご馳走様です。
さなこがれてぃちるゆうかれいむとは…温かい気持ちになりますね。
レティさんのせいで寒かったのか^^頑張りすぎです><
42.100名前が無い程度の能力削除
ゆうかれいむゆうかれいむゆうかれいむ……!!
44.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしい。他に言葉がありません
場面の切り替えも素敵でした
46.100名前が無い程度の能力削除
イイネ