Coolier - 新生・東方創想話

文は友達が少ない

2011/01/24 08:44:58
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「霊夢さん、私最近気付いたことがあるのですが」

 例によって例の如く唐突に博麗神社に現れた天狗少女はやはり唐突に言い放った。

「気付いたこと? あんたの新聞の内容の無さだとか? 良く自分で気付けたわね、偉い偉い」

 庭掃除をしている途中の博麗霊夢は取りあえず投げやりに返答してみた。それに唾を撒き散らす勢いで突っ込む射命丸文。

「違います! 後、私の新聞には色んな内容や思いが詰まっています! 夢一杯胸一杯、咲夜さんの胸くらいには詰まってますよ!?」

 それって見せ掛けだけで実は中身がスカスカだってことじゃないのかなと霊夢は思ったが突っ込むのはやめておいた。ナイフとか飛んでくると困るし。

「だったら何だって言うのよ。先に言っておくけど、つまらないことだったら夢想封印ぶっ放すから」
「つまらないことだったらどんなに良かったことか……」

 すげない霊夢の言葉に、はぁ、とわざとらしく溜め息を吐きながら文は続けた。

「霊夢さん、私最近気付いたことがあるのですが」
「仕切り直しはいいからさっさと本題に入りなさいよ」
「私、どうやら友達が少ないみたいなんです」
「夢想──」
「ちょ、ちょっと霊夢さん!? フリーズ! フリーズ!! 今の話を聞いてどうしてそうなるんですかっ!?」

 夢想封印をぶっ放す為の回転を始めていた霊夢は359度の位置で取りあえずそれ以上回転することはやめて言い放つ。

「いや、そんな当たり前のこと今更聞かされてもねぇ」
「当たり前のことなんですかっ!? 私に友達が少ないのは当たり前のことだと、霊夢さんはそう仰るんですかっ!?」
「あ、ごめん言い間違えた」
「うんうん、そーです、こんな清く正しい私に友達が少ないなんて──」
「あんた、友達が少ないって言うより友達が居ないじゃないの」
「酷くないですかっ!? ちょっとその言葉は酷過ぎじゃないですかねぇ!?」

 霊夢の容赦無い一言に泡を食った様に慌てふためく射命丸。人は図星を突かれるとかように慌てふためくものだ。まあ射命丸は妖怪なのだが。その辺りは人間も妖怪も大差無いらしい。
 とまれ、『友達が少ない』などと言った彼女にも実は『友達が少ないじゃなくて居ない』のではないかという危惧はあったらしい。

「そもそも普段からの自分の行動を考えてみなさいよ。友達なんて居なくて当然でしょうが」
「んー……そうですねえ……」

 霊夢の指摘に目を瞑って自分の行動を省み始める射命丸。

 紅魔館の図書館でイチャコラしていた魔理沙とパチュリーの情事の様をすっぱ抜いて『白夜の笑劇! 紅魔館で肛間姦!! 十六夜咲夜様が見てる』とか記事にしてばら撒いたこと。

 白玉楼の庭で何を思ったのか木々の剪定ではなく自らの下の毛の剪定をおっ始めた半人半妖の庭師の様をすっぱ抜いて『冥界で明快! 魂魄妖夢はパイパン派!!』とか記事にしてばら撒いたこと。

 永遠亭でハローワークに行くことを愚図っていた輝夜に「大人のキスよ……帰って来たら続きをしましょう」とか言いながらハロワに行くことを強要していた永琳とその様子をハンカチ噛みながら見つめていた鈴仙の様をすっぱ抜いて『地上の兎の楽園で痴情の縺れ! 師匠、私じゃ貴女のバニー成らぬハニーになるのは無理ですか?』とか記事にしてばら撒いたこと。

 迷いの竹林で竹林合ってた──もとい乳繰り合っていた妹紅と慧音の様子をすっぱ抜いて『迷いの竹林? 女同士? それがどうした私達は幸福詐欺兎が居なくてももう迷わない!!』とか記事にしてばら撒いたこと。

 エトセトラエトセトラ。

 取りあえず自らの行いを省みた射命丸は一つの答えを見出した。

「──何処に問題があるのでしょうか?」
「……あんたそれ本気で言ってるの? もう帰っていいわよむしろ帰れ」
「でも! 私はっ! 新聞記者で! 2000部発行で! 在庫の山なんですよおおおお!!」 
「意味分からないから。後、売れ行き考えて新聞は刷りなさいよ。自業自得でしょうがそんなの」
「何故なんでしょうねぇ……。この清く正しい射命丸の清く正しい新聞がどうしてこんなに売れ行き不調なのか。私の新聞がこんなに売れない訳がない、ですのにねぇ?」
「ちなみにその清く正しい新聞を読んで魔理沙にパチュリーと二股掛けられていたことを知って激昂したアリスに魔理沙が包丁で刺されて、今も永遠亭で入院中なんだけど、知ってた?」
「勿論です。『魔法の森で阿呆の縺れ! 二股少女に天誅! 私の心の○○○は魔砲だぜ!!』といった風に記事にさせて頂きました。いやーあの回は普段の数倍の売れ行きでしたねぇ、私も良い記事が書けて満足です」

 満面の笑みを浮かべながら胸を張ってそう言う射命丸に霊夢は彼女にしては珍しく大仰に溜め息を吐いてみせた。駄目だこの天狗。腐ってやがる。早すぎたんだ。主に地霊殿射命丸サポートの件で。

「それにですねぇ、私は友達が居ないのではなく少ないのです! 決して! 決して友達が居ない訳ではないのです、ただあくまで少ないだけなのです!!」
「へぇー」

 まるで説得力の無い射命丸の主張に生返事を返しながら霊夢は境内の掃除を続ける。冬は秋と比べたら落ち葉も無くて掃除が随分楽だ。もう少ししたら仕舞いを付けてお茶でも飲もう。

「そう例えば風神録で中ボスとはいえ電撃参戦した犬走椛! 天狗繋がりお友達! ああ私も椛たんと繋がりたい、無論性的な意味で!!」
「その幻想はダブルスポイラーでぶち壊されたじゃないの」
「それは言わないで下さいよぉっ!!」

 そう言ってがっくりと項垂れる射命丸。ダブスポ出るまでは新聞作りの助手とかが定番設定だったもんね。神主は文椛派に酷いことをしたよね。

「ううっ、もみたんとのあの蜜月の日々はもう帰っては来ないのですかぁ……?」
「知らないわよ、そんなこと……」

 呆れながらそう返す霊夢の言葉に更に項垂れ射命丸。と、そこでいきなり顔をガバッと上に上げた。何やらキラキラした表情で。大事なことを思い出したという表情で。

「そうです! 私にはまだお友達が居ました! ついさっきまで忘れてましたけど!」
「そう。気になるわね、そのついさっきまで忘れてた友達の話」

 ついさっきまで忘れてた相手のことをのうのうと『友達』などという射命丸は本当に良い性格をしているなぁと思いながら、霊夢は先を促した。実はその『友達』とやらにも検討は付いていたのだが。

「それはずばりチルノさんです! 何と私とチルノさんはEDでも競演しているのですよ! これが友達でなくて何だと言うのでしょうかっ!?」

 やはり満面の笑みを浮かべながら程々にはある程度の胸を張りながら自信満々の体で言い放つ射命丸。それに対して楽園の素敵な巫女は素敵な言葉を告げてあげた。

「この前紅魔館にちょっと用事があったから例の湖の上飛んでた時に偶々会って話したんだけど」
「うんうん、当然チルノさんの親友のところである私の話も出た訳ですね?」

 何時の間にか友達から親友に格上げされていることは無視して霊夢は素敵な言葉を続ける。

「ええ、出たわよ。──『ところであの射命丸ってヤツのことなんだけど、あいつ最近やたらとあたいの体にベタベタしてきてちょっと気持ち悪いんだけど』──ですって」
「ただのスキンシップですよ!? ただのスキンシップですったらスキンシップなんです!! 決して、決してやましい気持ちなどあろう筈がない! 私はっ! 清くて! 正しくて! ロリコンなんですよおおおお!!」

 やっぱりロリコンなんじゃねえかと思わず本音を叫んだ射命丸に冷たい眼差しを向けながら霊夢は少し──考えた。
 この喧しくて、鬱陶しくて、周囲に迷惑を撒き散らしながらも。
 ──それでも何時でも自信たっぷりに幻想郷の空を話題を求めて飛ぶこの天狗少女のことを。



 そして。彼女の。霊夢の中で答えは出た。



「──まあ、『友達が少ない』のも良いじゃない。『友達が居ない』よりはずっとマシでしょ?」
「うぅ……霊夢さぁん、今の私に友達なんて居ないんです、居なかったんですよぉ……」

 叫んだ後またもがっくりと項垂れていた射命丸に背を向けて──霊夢は告げた。

「掃除も終わったことだし、お茶でも飲んで行きなさいよ。魔理沙が入院したお陰で最近一緒にお茶を飲む相手が居ないのよ」

 霊夢は続ける。楽園の巫女の。素敵な言葉を。

「茶飲み友達。ただお茶を飲むだけの関係でも、ただ境内で益体も無い話をする関係でも。お互いに友達と思っているなら、それはもう立派な『友達』でしょう?」
「れ、霊夢さん……」

 変わらず背中を向けたままの霊夢の表情は射命丸には見えない。ただ見えたのは、真っ赤に染まった彼女の耳と微かに震える彼女の両肩。

「霊夢さぁん……」
「さ、早く行きましょ。昨日里で新しい茶葉買って来てたところなのよ」

 相変わらず霊夢の言葉は素っ気無いし味気も無い。
 でも。それだとしても。霊夢の言葉は楽園の素敵な巫女の──素敵な言葉。



    ◆◇◆◇◆    



 射命丸文は確かに友達が少ない。
 でも別にそれでも良いではないか。
 射命丸文は友達が居ない訳ではないのだから。



    ◆◇◆◇◆    



「霊夢さんの煎れてくれるお茶、凄く楽しみです! そうですね、記事にしましょう! 楽園の巫女の素敵なアバ茶とか!!」
「いや、そーいう下ネタは良いから」

 ビシィと突っ込みを入れられ入れながら二人は歩く。神社の入り口はもう直ぐ其処だ。
 そこで霊夢の足がピタリと、止まった。後ろから着いて来ていた射命丸に振り返る。
 彼女にしては珍しく満面の笑みを浮かべて。
 そうして楽園の素敵な巫女は素敵な言葉を紡ぎ出す。










「ところで素敵な賽銭箱は直ぐ其処よ」
「やっぱりそういうオチですかぁっ!!」










 『文は友達が少ない』





 おしまい。
半年振りくらいの投稿になります。今回も短い作品ですが少しでも楽しんで貰えたら幸いです。
※どうでもいいことですがHN変えました。安眠まくら→杏仁まくら

※沢山の御感想有難う御座います。また、読んで下さった全ての方に心から感謝を。
次の機会がありましたら、その際も読んで頂ければ幸いです。
杏仁まくら
http://
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コメント



0.1420簡易評価
2.100名前が無い程度の能力削除
照れ隠しですねわかります
5.100名前が無い程度の能力削除
同業者であり、ライバルでもあるはたてさんは?
8.90アジサイ削除
おいしそうな名前に変わりましたね。
「射命丸は友達が少ない」略して「はがない」!
9.100名前が無い程度の能力削除
歪みないロリコンっぷりに吹いた
13.100奇声を発する程度の能力削除
堂々とロリコン宣言www
15.100名前が無い程度の能力削除
清く正しいロリコンでも盗撮癖があるのでアウトだよ!!

はたてさんは逆に自分に友達がなんかいるわけないと思っててショタなんですね、わかります
18.90名前が無い程度の能力削除
>「大人のキスよ……帰って来たら続きをしましょう」とか言いながら

葛城永琳www
29.100名前が無い程度の能力削除
文ェ…
32.100名前が無い程度の能力削除
胸が痛くなるな…
35.100名前が無い程度の能力削除
不意打ちコーラネタクッソワロタwww

あと友達居ない事気にしてる文ちゃんと
なんだかんだで話につき合ってる霊夢ちゃんかわいかった
42.100名前が無い程度の能力削除
だめだこのあややw
早過ぎるんだ、に吹いたw
46.100名前が無い程度の能力削除
この文はもう駄目かも分からんね