「お姉様、眠れないの。なんかお話して」
「ふふっ、わかったわ。
小悪魔の幸せな日。
昔々あるところに、図書館でこき使われてる小悪魔という使い魔がおりました。
小悪魔は毎日図書館の動かない魔女の言うことを聞いて、賢明に働いていました。
ある日のことです。
小悪魔は魔女から本の配達を頼まれました。
快く引き受けた小悪魔は、最初にメイド長のところにお菓子作りの本を持っていきました。
『こぁ』
『あら小悪魔、わざわざ持ってきてくれたの。ありがとう
そうだわ。これ昨日作ったお菓子なのだけれど、よかったら貰って』
『こぁぁ♪』
こうしてお菓子を貰って上機嫌の小悪魔は、次の配達に取りかかりました。
次は人形遣いの家です。
深い森を分けて進みますが、地図もない獣道。
あっという間に道に迷ってしまいました。
『こぁ~~~~!!』
こぁ~~~~
こぁ~~~
こぁ~~
こぁ~
叫んでも山彦となって帰ってくるだけです。
右も左もわからず心細い小悪魔。お腹もぐ~となりました。
そこで小悪魔は、先ほど貰ったお菓子を食べることにしました。
『こぁ』
甘いお菓子を食べた小悪魔は元気を取り戻しました。
そして再び歩き出すと、しばらくして綺麗なお家が見えてきました。
『こぁ、こぁ』
『あら小悪魔、珍しいわね貴女がくるなんて』
『こぁ』
『本を持ってきてくれたの。ありがとう。
お礼にこれをあげるわ。昨日作ったのだけれど』
『こぁぁ♪』
こうして小悪魔は蛙の人形を貰いました。
次に向かったのは山の神社です。
かなり遠いところですが、途中で蛙みたいな女の子に出会いました。
『こぁ』
あまりに蛙っぽかったので、女の子に蛙の人形をあげると一気に山の神社まで運んでくれました。
なんと女の子は山の神社の神様だったのです。神様の案内で緑の巫女さんに会うことができました。
『うちに本を、それはそれはわざわざどうも』
ずいぶんと腰の低い巫女さんです。
どこかの紅白とは大違い。
『そうだ。これ前に頂いた物ですが、お裾分けということで』
『こぁぁ♪』
こうして小悪魔は一袋のお米を貰いました。
ちなみに帰りも神様に送って貰いました。
次に向かったのはお医者さんの家です。
たくさんの本を抱え野を越え竹林を進みます。
ですがここは迷いの竹林。あっという間に再び迷子です。
すると賽銭箱を持った一匹の小さな兎が現れました。
『お賽銭くれれば幸福になれるよ』
お賽銭、といわれても小悪魔はお金を持っていません。
そこで先ほど貰ったお米を袋ごとあげました。
『米か。まあ奉納米ってのもあるし良しとするか』
そういうと小さな兎は、竹林の中のお屋敷まで案内してくれました。
お屋敷の入り口にはお医者さんの弟子の兎さんがいました。
兎さんに本を渡します。
『ごめんなさい。うちの師匠が無茶言って』
『こぁぁぁ』
小悪魔は気にしてません。
魔女から頼まれた仕事を頑張るのが自分の役目だからです。
『そうだ。ちょうど良い物があった。これをあげるわ』
兎さんは、一本の瓶を小悪魔に渡しました。
『それは師匠が作った力の出る薬でね。
こんなところまでわざわざ運んでくれたお礼よ』
『こぁぁ♪』
こうして兎さんから力の出る薬を貰った小悪魔は、最後の配達に取りかかります。
最後の配達先は博麗の神社です。
しかし神社がある山の麓まできた小悪魔は困ってしまいました。
神社に行くには長い階段を上らないといけないのです。
今日一日色々なところを回った小悪魔に、そんな力は残されていません。
そこで先ほど兎さんから貰った力の出る薬を飲みます。
とたんに力が溢れてきて、一気に階段を上る事ができました。
『わざわざ歩いてきたの。飛んでくればよかったのに』
小悪魔はどこかの誰かのように、スカートで飛び回るようなはしたない真似はしないのです。
『ありがと。これで新しい神事に挑戦できるわ。
ああそういえば、ちょっと前にあいつが忘れて行ったんだけど
これあんたのところの本よね』
それは少し前に白黒に持っていかれた本でした。
『こぁぁぁぁぁ!!』
『これ持ってって。うちにあってもどうしようもないし』
『こぁぁ♪』
こうして思わぬところで本を取り戻した小悪魔は、意気揚々と図書館に戻るのでした。
図書館に戻った小悪魔は本を魔女に見せました。
すると……
『良くやったわ小悪魔!!』
思いっきり誉められ、頭をなでなでしてもらいました。
『こぁ♪ こぁ♪ こぁ♪』
小悪魔は魔女に誉めて貰うのが大好きなのです。
こうして様々な人の優しさで無事仕事をやり遂げた小悪魔は、とても幸せでしたとさ。
……めでたしめでたし……と」
「すーすー」
「あらあら途中で寝ちゃったのね。おやすみなさいフラン」
努力した人が報われるのは素晴らしい。
しかもお嬢様の朗読ですと……!?
小悪魔が可愛すぎる。
読んでて顔がニヤけてくる作品でした。