「ねえ妹紅、地球って永遠の存在じゃないらしいわよ」
永遠亭に訪問した回数が、おそらく一万回を越えた頃。
輝夜と私は殺し合いをしなくなった。
仲良くなった、というよりは殺し合いに飽きた、と言い換えたほうが正しいかもしれない。
「ふーん。それって外の世界のことだよな? 地球がなくなる? そりゃ、悲しいコトだ」
十畳ほどの部屋には、今、私と輝夜しかいない。昼下がりの怠けた陽射しが、ぼんやりと差し込んでいる。
輝夜は首を少しだけかしげて、陽射しに負けないくらい怠けきった態度で口を開く。
「なんか、あと何億年後とかに爆発しちゃうみたい。爆発よ、爆発。どんなでかい花火よ」
「花火に例えるな。不謹慎とかそういうレベルを超越してるだろ」
どれほど人が死ぬかわかっていて話しているのだろうか、こいつは。
さすが地球のニンゲンを見下す頂上の存在、月人である。
「それでね、その花火の煽りを受けて月もなくなるわけ。月の都の科学力でも不可能っぽいのよ。えーりんが言ってたわ」
「へえ。そりゃ、重畳だ」
「重畳重畳。あんただって十分に不謹慎じゃない――って、まあ、どうでもいいか。でね、わたし思うのよ」
「何を?」
輝夜は今度は畳をゴロゴロゴロゴロ、まるで丸太になってみたいに転がりだした。
こんな奴に求婚した奴の子供が見てみたくなる。
たぶん、性格悪いんだろうな。
「月って、受けと攻めだと、受けよね」
「くっだらねぇぇぇぇええぇええええ! 受けとか攻めとかどうでもいいわ! つーか地球も月も生物じゃないだろ!」
一瞬想像しちゃったじゃないか! 自分を嫌いになりそうだよ、ちくしょう!
「くだらなくないわよ。受けと攻めよ? まるで弾幕勝負みたいじゃない」
「無理やり幻想郷に絡めなくていいから。さすがに無理がある」
「やっぱり? わたしもそう思ってたところ」
言って。輝夜は丸太をやめて、なぜかヒンズースクワットをし始める。それがやけに上手くて、少しだけ目を奪われてしまった。
悪い意味で。
「話を戻すけど、私たち蓬莱人は地球と月が爆発しちゃったらどうなるんでしょうね。この幻想郷だって、地球がなければ存在できないし」
「……まあ、宇宙に放り出されるんじゃないか」
「知ってる? 宇宙で生身になったら窒息と放射能と太陽光のフルコースで一分も経たないうちに死ぬらしいわ」
「悲惨すぎる」
「拷問よね」
と、輝夜は両手を畳に付き、逆立ちをしてみせた。
白いパンツが丸見えだった。
もはや恥じらいすらない。姫の面影は何処に行ったのだろう。
「くっ。つ、つらいわね、この格好」
「じゃあ、やめればいいじゃないか」
「や、やめないわ。これは……くっ、宇宙に行った時に、耐えられる練習なのよ」
「いや、無理だろ! 逆立ちしようが宇宙に行ったら確実に死ぬ――って上手くねえ!」
慣用句ね! 高いレベルの突っ込みが要求されるなあ!
輝夜は突っ込みを貰ったからなのか逆立ちをやめ、なぜか片足立ちをしてみせる。
「でもでも、外の世界には河童をしのぐ技術力があるわ」
「ふむ。それで?」
「莫迦ねえ。要するに、宇宙世紀よ、宇宙世紀。ガンダムとかヤマトとかスターウォーズとか、そういうの」
いや、まあ、ガンダムもヤマトもスターウォーズも、さすがに知っているけれど。
幻想郷にある図書館は無駄に何でもそろっていたりするし。
DVDとかBDとかも。
「莫迦って言うな。宇宙世紀くらいわかるから。台詞だって覚えているんだぜ? 『妹紅、行きまーす!』」
「…………」
沈黙が返ってきた。
あれ、結構上手くマネできたと思ったんだけどなあ。まだまだなのかな。
「ま、まあ、それはそれとして」
やめて。痛々しい人間を見るようなその瞳はやめて。死にたくなるから。
死ねないけれど。
「要するに宇宙を航海できる技術が発見されれば、私たちも生きられるんじゃないかって、そういう話」
「ああ、なるほど。他の星に住むってコトか」
「元老院の議員になったりね。リアルパドメよ。ナタリーポートマンより私美人だし、超えれるかもしれない」
「じゃあ、私はジェダイだな」
「オビ=ワン・ケノービね。似合っているわ」
「せめてアナキンと言ってくれよ! なんでそこでオビワンなんてチョイスが入ってくるんだ!?」
「ああ、ヨーダかも」
「より酷くなっちゃった!」
確かにヨーダみたいに年取ってるけどさ! でも、一応私も女子なわけです。乙女心もあるのです。
うふふ。
きゃは☆
ってか、まじうざいしー。っていうかー。みたいな♪
「ガンダムで例えるならば、私はシャアかしら」
「お前だけ例えが良すぎるだろうが。どこがシャアだよ。むしろその機体のジオング――ってこれも上手くねえ!」
「足なんて飾りです。偉い人にはソレがわからんのです」
そうしてやっと、輝夜は片足立ちを止めて、なんとブリッジをし始める。
たぶんもう、プライドとかないんだろうな、輝夜って。
「宇宙世紀になったらさ、神様って信仰集められるのかしら」
「珍しいな。お前が人の心配をするなんて」
「なんとなくよ。なんとなく。で、どう思う?」
どうだろう。ただでさえ信仰を集められない時代なのに、宇宙を自由自在に行き交うような世界になってしまったら――神も地に落ちるのだろうか。
「うーん。たぶん、宗教自体はあるだろうな。人はどれだけ進化しても、一生脆く寂しい存在だし」
「寂しいから信仰するの?」
「生きている意味を模索したら、そういう結論になるだろ。誰だって」
「わー。妹紅ちゃん超萌えキャラー。普段クールぶってるのに寂しがりやって、あんた人気投票に媚びているでしょ」
「媚びてねーよ! あと萌えキャラって言うな!」
「私に票を頂戴! 設定からして美人度は私のほうが上なのよ!」
「設定って言うな! というかブリッジしてる奴にそんなこと言われても説得力ねえよ! いい加減話を戻せ!」
すると、ため息をつきながら輝夜はブリッジをやめる。ご苦労なことである。
さて、次はどんな体勢になるのかな、と楽しみにしていたらマトモなことに体育すわりをする輝夜。
つまらない奴だった。
「さて、そういうことで、今日の議論の結論は『古いけれど、ヤマトも結構面白いのよ』でした」
「ヤマトについての言及は一度もないだろ。あと、議論もしてないだろ」
「つっまらない奴ね、あんた」
「うるせえ。ケンカ売ってんのか?」
「そうよ。ケンカ売ってるの」
「さあ。殺し合いをしましょう」
まあ、そういうわけで。
今日から殺し合いをまた始めるのでした。まる。
ここで吹いたwww
宇宙船輝夜号!って感じですかねww
そういうや、不死人を太陽に放り込んだらどうなるんだろ?
太陽はほぼプラズマ気体と気体と、液体っぽいもので出来てるから、重力に引かれてズブズブ中心核に沈んでいくよな、死にながら・・・。
その上、重力は地球の何十倍もあるから、重力圏脱出は困難。太陽の中心でしに続けるとか、マジで考えたくないな・・・・。