大晦日、命蓮寺は大変な賑わいを見せていた。
その大きな要因は、やはり境内にでっかく登場した除夜の鐘だろう。
年をまたいで108つ打たれるその親しみ深い落ち着いた音色は、聞く者に新年を迎えるに相応しい心構えを作らせる。
一般の参拝客でも鐘を打つ事が出来る、という事で、まだ日が落ちて間もないうちに人里から足を運ぶ者も少なくはなかった。
「押さないでください!鐘撞き希望の方はこちらへどうぞー!」
自称・毘沙門天の弟子、寅丸星が境内で声を張り上げる。
鐘の前に並ぶ人々の列は老若男女問わず、もう二十人を超えていた。
また、寺に集まるのは鐘撞き希望者だけではない。
新年を迎えるにあたって、白蓮からのありがたい説法を聞こうとやってきたご老体。連れられてやってきた息子、孫たち。
そうなればもう人の数も並ではなくなり、体が冷えては大変と、里から甘酒やそば屋が急遽駆けつけた。
やがて人が人を呼び、命蓮寺に集った人間の数は人里の半数を上回っていたという。
「盛況ですね…」
感慨深いといった様子で、尼僧・雲居一輪は呟いた。
「……ええ」
隣で答えるのは、僧侶・聖白蓮。
彼女もまた人波を見つつも、その表情はどこか浮かない。
「…姐さん、何か気がかりなことでも?」
一輪はそんな白蓮の様子に、心配するように語りかける。
「…ばれました?」
「ばれます。何年貴方の弟子やってきてると思ってるんですか」
彼女は自身の心の波を読まれた恥ずかしさを誤魔化すように微笑み、やがてゆっくりと呟いた。
「ねえ一輪、貴方はこの風景をどう見ますか?」
「…年末の恒例行事でしょうか。命蓮寺建立から間もないのに、こんなに集まってくれたのは喜ばしい事だと思いますが…」
先の憂いから、白蓮はきっとそうは思っていないのだろう。
一輪の想像通り、彼女はその言葉に一層寂しそうに目を伏せた。
「…確かに喜ばしい事です。年の瀬に私の話を聞きに来てくれるというのは、一人の僧として誇らしい事でしょう。
ですが…ここには、妖怪の姿が無い」
「あっ…」
絞り出す白蓮のその言葉に、一輪は思わず息を飲む。
「妖怪と人間が対等である世界こそが私の望み。
寺が賑やかな反面、果たして彼らがちゃんと年を越せているのかと思うと、不安でなりません」
「………」
一輪は胸元をきゅっと握り、ただ憂いを帯びる白蓮の横顔をどうする事も出来ずに見つめていた。
そんな一輪の様子に気づいたのか、白蓮はそのまま無理に笑顔を作るとさっと立ち上がり、背を向けるように歩きだした。
「…さあ、寺へ戻りましょうか。私達がこんな所にいては、ナズーリンや村紗に叱られてしまいます」
「…はい」
一輪は、その後ろ姿に寂寥を感じずにはいられなかった。
ごーん、と、低く重たい鐘の音が妖怪の山に轟き渡る。
38回目の鐘の音で、昼寝中のルーミアは暗闇の中目を覚ました。
「……んー?」
起きた理由も分からないままぼやぼやしていると、39回目の鐘がごーんと鳴った。
杉の木からひょっこり顔を覗かせ、音の鳴る方へ目をやる。
「……あれかー」
どうやら音は、人里挟んで向こう側の建物から聞こえてくるらしい。
あの音はなんだろう、とルーミアは考える。山の狸の腹太鼓にしては、ちょっと音が低すぎるようだ。
まあ、そんなものは実際聞いたことがないのだけど。
「…せっかく目が覚めたんだし、めんどくさいけど見に行くかー」
ふわりと枝から足を離し、ひとまず人里を目指して飛び去った。
それから飛ぶこと数十分。
ふよふよ飛んでいる最中でも、鐘の音は鳴り渡り続けている。
ルーミアは数えるのに途中で飽きてしまったため知る由もないが、ちょうど60回目の鐘の音が鳴り終わったところだ。
「なんなのかしら、この音。なんだか頭の中がまっしろくなりそう」
毎度おなじみ聖者のポーズで空を行く。
人里を超えて数分ほど経つと、いよいよ音が近づいてきた。
山の一角に、今までになかった開けた場所が出来ている。恐らく、そこが発生源だろう。
木製の横に長い大きな建物に、でっかい金属がぶら下がった壁無し小屋がある。
そして何より驚いた事には、こんな夜更けに人間がたくさん集まっていた事だ。
夜に出歩く人間は、食べてもいい。
それは彼女が覚えている数少ない実用的な知識。というか妖怪としての生存本能とも言うべきもの。
本来なら食べ放題やったーと手放しで喜ぶところなのだろうが、何故だろう。今宵、ルーミアの食欲は異常なまでに薄れていた。
「…あれー?」
すぐ真下の人波を眺めながら、ルーミアは不思議そうに小首を傾げる。
「おっかしいなあ。私、妖怪じゃなくなったのかなー」
それが事実だとしたらとんでもない事を言いつつ、ひとまず彼女はあのでかい音を出す正体を見極めに地に降りた。
人間に騒がれるとすごく面倒くさいので、あえて建物の裏の森の中へ降りることにする。
藪を掻きわけ敷地内へ出ようとすると、ふと、縁側に座る紫だか金だかよくわからない髪の色をした女性と目があった。
それは聖白蓮である。決して、なすの漬物に頭から突っ込んだ寅丸星ではない。
年越しの準備にかかっていた白蓮は、渡り廊下でふと茂みの奥を掻き分けるがさごそと言う音を聞いた。
ほんの少し警戒して目をやると、やがて茂みから出てきたのは見た事のない赤い目の妖怪。
なぜか両手をぴんと左右に張ったまま、くりくりした二つの眼をじーっとこちらに向けていた。
「あら…」
思わず顔をほころばせ、縁側を降りてルーミアに駆け寄る白蓮。
ルーミアは思わず、二歩後ずさった。追うのは慣れてるが、追われるのは慣れていないのだ。
「まあ、まあ、まあ!」
視線を同じ高さにするよう屈みこみ、そして正面から観察するように目を見据える白蓮。
食べられるとか、退治されるとか、そういった直接的な恐怖を超えてルーミアは目の前の未知におののいた。
「な…何ー?」
「貴方…まさか、この寺にやってきてくれたのかしら?」
期待に満ちた目で見つめる白蓮。
ルーミアはその目を見てすぐに、目の前の人間が頭がまっしろな感じのちょっとあれな人物と理解した。
そんなルーミアの怯えを余所に、白蓮はパーフェクトアルカイックスマイルでルーミアを出迎える。
「ようこそ、命蓮寺へ。私はこの寺の僧侶、聖白蓮と申します。
…さあ、そんな藪の中にいないで、こちらへいらっしゃい。怖がる事はありません」
実際、ルーミアのような妖怪を怖がらせるには、追い詰めるよりも優しくするほうが効果的だったりする。
白蓮の笑顔は間違いなく裏表のないもので、心は透き通るくらいに明快に澄んでいた。
そしてその分、余計にルーミアにとって理解しがたいものに映る。まさに今の彼女こそ、ルーミアにとっての正体不明だ。
差し出された手を取るべきかどうか迷っている間に、白蓮の方から強引に引っ張ってきた。
藪から引っ張り出され、薄闇の下に彼女の姿が晒される。
もっかい藪に飛び込んで逃げようかと思った刹那、ルーミアは更に手を引かれ、そのまま白蓮の胸の中に抱きとめられた。
白蓮は、自分におびえるルーミアの姿を、人間におびえる妖怪の者として捉えていたのだった。
「可哀想に、こんなに震えて…でも、もう心配は要りませんよ。私は貴方達の味方ですから…」
乾いた土に水を与えるように、胸の中で怯える小さな妖怪に慈愛たっぷりの言葉をかける。
一方ルーミアは、正体不明の恐怖と混乱と強引に抱きしめられて呼吸がまともにできないのとで、すっかり虫の息になっていた。
白蓮が自分の世界から帰って来ると、ようやくルーミアは解放された。
「貴方のお名前は何と言うのですか?」
「…ルーミア。闇を操る妖怪だけどー…」
はじめての命蓮寺。開始三分でルーミアが抱いた印象は、とっとと帰りたいの一言に尽きた。
「……で、あんたここで何やってるの」
「私達は年越しの準備です。蕎麦などありますが、よろしかったら貴方もどうですか?」
「…私妖怪だよ?」
「ええ。…それが、何か?」
きょとん、とした顔で尋ね返す白蓮。
ルーミアは思わずげんなりする。自分はバカだし、チルノはバカだ。だが目の前の彼女は、もっと違う意味のバカのようだ。
「……んー。遠慮しとく。ここ苦手だしさっきから頭真っ白くなりそうだしで」
「そうですか…では、貴方は何をしに?」
「さっきから鳴ってるのを見に来たの。ごーん、ってやつ」
「ああ、それなら…」
ちょうどその時、ごーーーんと67回目の除夜の鐘が鳴り響いた。
「…あれですか?」
「うん、あれ」
音は屋根向こうの鐘つき堂から聞こえてきた。
「あれでしたら、見た方が早いでしょう。案内します」
そういい、当たり前のように右手を差し出す白蓮。
この女性の対応にも多少慣れたようで、ルーミアはぎこちなくも手を取って後に続いた。
「こちらが鐘つき堂です。音はこれを打ち鳴らしていたのですね」
白蓮に連れられてやってくると、そこには上空からも見た大きな鉄の塊がぶら下がっていた。
「わー、でっかいなー」
お椀を伏せたような形のそれは、よく吊り下げられたなというほどの迫力がある。
ミスティア十匹分くらいなら、押し込めば入りそうなくらいだ。
ルーミアは予想よりも大きなその正体に感嘆して驚いていた。
「ふふ、気に入っていただけましたか?」
「まーまー。面白いけど、人間はなんでこんなん打ってるのかしら」
「大晦日に108つ打つのが伝統だからです。人間に巣くう108つの煩悩を、全て帳消しにして新年を迎える事が出来るのですよ」
「へー」
聞いているのかいないのか、分からない顔でただ鐘を見つめるルーミア。
微笑ましくそれを見ていた白蓮は、ふと、思いついたように言ってみた。
「貴方もひとつ打っていきませんか? 煩悩が取れてすっきりするかと思いますが」
「いやそれはいい」
「……そうですか」
一瞥もせずにルーミアは即答する。
白蓮、、ちょっぴりショック。
それからルーミアは69回目の鐘の音が鳴らされるのを見終えると、長い息を吐いてやれやれという風に言った。
「頭が白い原因がわかったわ。音の正体も分かったし、もう用事はおしまいね」
「…えっ!?」
そのまま、赤い靴を地からふわりと離して空を飛ぶ。しかし、聖はその手を風船を持つ子供のように引っ張った。
「あ、ま、待ってください!」
「いたいー」
「あ…ご、ごめんなさい…」
手を離す聖。するとルーミアは再び浮遊を再開する。
「え、いや、だから少し待ってくださいと!」
「…えー、面倒くさいなあ」
あからさまに面倒くさい顔をするルーミア。しかし聖はくじけない。
「で、なに?」
「…質問です。貴方は、これからどこか行くところがあるのですか?」
真面目に問いかけたその質問を、やはりルーミアは足りない子供に物を教えるような調子で問い返した。
「しょーもない問いね。妖怪に行く場所があると思う?」
白蓮はその言葉にハッとなり、悲しい顔つきで俯く。
それは自分の未熟を悔やんでいるような顔で。
彼女自身、大して考えもせずに言った一言が、白蓮の魂に火をつけたとは思いもよらなかったわけで。
「…やはり、人間は今も妖怪の居場所を奪い続けているのですね」
「…へ?」
いつも能天気なルーミアの表情が凍りつく。
頭に取り付けられた赤い色の「めんどくさい事察知レーダー」が、ぴこぴこぴことめんどくさい事態の来襲を告げて揺れまくった。
白蓮が顔を上げる。そこにあるのは僧侶ではない、ただ一人の聖人としての姿。
妖怪に慈愛を注ぎ人間と真に平等な世界を作り上げようとした、叶わぬ世界を夢見てあがく飽くなき宗教家の顔であった!
「…思えば私の頃から人間はいつもそうでした。
自身の都合のいいように世界を作り上げ、いつもその被害は妖怪のようなか弱き存在に回されて!」
「え、妖怪が弱いってなにそれ失礼」
「仏法孔孟全ての思想家は遍く人のためだけに教えを残し!取り残された妖怪は一体どうやって救済を得ればよいというのですか!」
「いや、妖怪が神に頼ったらまずいと思うけどなー」
「分かります…貴方もまた人の手によって居場所を奪われたのですね。この年の瀬に、心安らかに過ごす事もできないとは!ああ、嘆かわしい!」
「んー、私の居場所は私のいる所なんだけど。というかそっか、今日はおーみそかーだったっけ」
明後日の方向を向き、聖はただ説法を説く。
ルーミアはそれを見て、ああ、きっと彼女は空の向こうの神様に話しているんだなと一人で納得した。
唯一の救いは、来訪した人里の方々がこちらを向いていなかった事だろう。
大きな鐘が注意を引きつけていたため、寺の影で説法を打つ聖の姿は誰の目に触れられる事もなかった。
神様とお話している隙に逃げちゃえ、と、ルーミアはそろりそろりと後退する。
刹那、狙い澄ましたように白蓮はルーミアの方へつま先を綺麗にそろえてターンした。
「さあ、おいでなさい。居場所が無いのなら、私が貴方の居場所になりましょう。
ここは命蓮寺。人と妖怪が区別なく過ごせる場所。…大丈夫、何も怖がる事はありませんよ」
ぴしり、と、亀裂が入るような音が鳴る。
自分の事をかなりでっかく誤解してらっしゃる目の前の僧侶の笑顔に、ルーミアの身体から嫌な汗が噴出した。
雲居一輪や村紗のような実際人に虐げられた妖怪なら、ここで頭を垂れ仏門への帰依を宣言していただろう。
それほどまでに白蓮の笑顔は柔らかく、全てのものを受け入れる絶対的な母性を含んでいた。
しかし、相手は今まで好き放題に生きてきたただ一匹の妖怪である。
特に苦労した経験を持たない彼女には、この笑顔はどう映るか。
「い……」
ルーミアは両手をばっ!と前に出し、白蓮に向けて全力の力を振り絞る。
「きゃっ…!?」
真夜中にもかかわらず後光が差して昼間同様の白蓮の周囲を、全てを遮る闇が覆った。
そしてその隙に。
「嫌ーーーーーーーっ!この人なんか嫌ーーーーーーーっ!」
逃げた。
いつものふよふよではない、全力スピードで。
ところで飛行機がなぜ両翼を広げるかご存じだろうか。
それは風の抵抗をうまく利用し、逆風が吹けば吹くほどそれを自分のスピードに換算するためにあるのだ。
そして、ルーミアはいつも両手を広げている。ここまで言えばもう結論はおわかりだろう。
闇を打ち払い白蓮の視界が開けた時には、彼女は既に遥か彼方へ逃亡していた。
「……あら?」
一層冷え込む神社の裏手で、白蓮は一人取り残される。
この状況を彼女はどう見るか。誠心誠意の愛情を向け、それが拒絶された僧侶の反応は。
果たして白蓮は山の向こうへ目を細め、今しがた妖怪が去って行った方を見据える。
ルーミアの逃亡をきっかけに、ふと、白蓮は昔の事を思い出していた。
~~~
『止めなさい、聖獣・寅丸!貴方の牙は、このような事の為にあるのではない!』
『黙レ尼僧ガ!コノ人間共ハ我々ノ領域ヲ犯シ、アマツサエ古キヨリアッタ我々ヲ追イヤロウトシタ!』
『…確かに貴方の言い分は正しいかもしれない…だが、それは貴方が人間を蹂躙する理由にはならない!それでも食らうというのなら…!』
『ああ…白蓮様!』
『来るな!』
『…何ノ企ミダ、女…!』
『…私から喰らいなさい。この私の身体を殺し、貪り、食らいつくし! 私の思いが伝わらぬのなら、この命などもはや必要ない!』
『何ィ…!?』
『びびび白蓮様っ!?』
『近寄るな、村長!むやみに近づけば、私の命すら無駄になるぞ!』
『…ヌゥ…ッ!』
『………!』
『……クッ……ソノ目…何故ダ…何故、貴様ハソコマデ…ッ!』
『……私の望む世界は、人と妖怪の均衡の取れた世界』
『…何……ダト…?』
『死は確かに恐ろしい…ですが私は、貴方のように力を持ちまた理知的な妖怪が、人間が原因で理知を捨ててしまう事のほうが恐ろしい!』
『……貴様ァ…!』
『歩み寄りましょう、寅丸…!私は決して妖怪を見放さない…貴方の居場所が無いのなら、私が貴方の居場所になりましょう!』
『………クッ!』
バサッ
『虎が……』
『寅丸が退いたぞ!白蓮様の説得が効いたんだ!』
~~~
「懐かしいわね…初めて会った時の寅丸も、たしかあんな感じだったかしら」
これが、聖白蓮という女性であった。
ルーミアは飛行機に勝るスピードで幻想郷を駆け抜けていた。
もはやその速さは音速、天狗に勝ると言っても過言ではないだろう。
そしてそんな速さで幻想郷を突っ走っていたものだから、当然、そのうちにでっかい壁にぶつかる事になる。
「あだっ!?」
壁とは、むろん博麗大結界である。
白蓮の後光を振り切るために無我夢中で走っていたルーミアは、幻想郷の端っこまで来てしまい思いっきり結界に頭をぶつけた。
そしてふらふらと墜落。落ちた先には、先の命蓮寺と比べて随分さびれた神社があった。
「あてっ、たっ、とっ、ほいやっ、えっ、わーっ!?」
ピンボールのように枝に引っかかっては折れぶつかっては折れを繰り返し、ようやく茂みに不時着する。
「あーもう、ひどい目にあったわー」
肩に乗っかった枝切れなどをペッぺと払いつつ、とりあえず茂みを掻き分けて道に出る。
そこはとてもよく見慣れた場所──博麗神社の裏手だった。
「…アンタって奴は…一体どっから落ちてくんのよ」
右手から声が掛かり、声のした方を見やる。
そこにいたのは年中不機嫌な紅白巫女、博麗霊夢だ。
ルーミアはそんな巫女の反応を、きょとんとした目で見ていた。
「…なに見てんのよ。退治されたいの?」
このぞんざいな扱い。
しかし命蓮寺帰りのルーミアにとってその扱いは、古巣に帰って来たような安心顔を与えた。
「何その安心しきった笑顔。…まーいいわ。どうせアンタも表が目的でしょ?ほら、とっとと行きなさい」
茂みから手を貸されて抜け出る。
背中を押されるようにしてルーミアは境内へ向かった。
そこにあったのは、妖怪達の屋台街。
どっから拾ってきたとも分からない材料で、どっから組みあがったかもわからないテントがいくつも並んでいる。
店の主は全員妖怪。よく見れば基本的な屋台のほかに「氷屋」「虫くじ」「カラーうさぎ」など、若干怪しいのも混じっていた。
また賽銭箱は集まった妖怪達に適当な物を投げ込まれ、虫、枝、ビー玉、そして蛙と、もはや魔窟の様相を出していた。
「へー、こんなんやってたんだ」
「こんなんって…何、あんた知らなかったの?」
疑問の声も聞く事なく、とててててと屋台の間を意味もなく駆け抜けるルーミア。
見れば集まったのは妖怪だけではない。魔法使いや庭師に巫女など、一部の腕っぷしの強い方々が屋台に戯れているのがいくつか見えた。
妖怪がロクでもない事企んで、人間が力で抑えつけて。
でもやっぱり妖怪だから、懲りずにまた企んで、時には人間もそれに乗っかってみたりして。
やっぱこれよね、とルーミアは弾む気持ちで石畳を蹴って行く。
「霊夢ー!」
鳥居の所でくるりと振り返り、賽銭箱の前に腰かける霊夢にぶんぶんと手を振る。
霊夢はさもめんどくさそうに手を振り返し、ルーミアはそれを満足そうに見返した。
超早苗楽しみにしてます
ようやくお正月って気分になりましたよw
下手な正月番組よりも良かったです!
まだギリギリ…元旦ですね!
白蓮さんのイメージはピッタリでしたΣb
結局は霊夢のところに集まるってところが好きですw
素直過ぎるルーミアも大好き
あ、カラーうさぎ一匹下さい。いえ、虫くじは結構です。
ルーミアの煩悩は食欲しかないのか。