「……くふぁ」
思わず、声が零れた。
しかしそれは無理もない。
仕方がないのだ。
昔の人々が天動説を信じたように、表の反対は裏であると同じように。
必然。そう、必然だ。
ここでこうしている時点で、この結果は容易に予測がつく。
でなければおかしい。硬貨の表は数字が刻まれている側だと言い張るくらいにおかしい。
故に、問おう。この声を聞いている誰かに。
君は、この誘惑に耐えられるのか――?
「……魔理沙さん。炬燵が心地いいのは分かりましたから、少し静かにしてください」
「あ、はい。すいませんさとりさん」
こたつ。それは、日本人の心。
コタツ。それは、冬の代名詞。
炬燵。それは、一度虜になれば二度と離れられない魅惑の持ち主。
そう、魔理沙は炬燵に手足を突っ込んで寛いでいた。
ここは博麗神社ではない。いつも彼女が炬燵を堪能するのは、確かに博麗神社だ。
しかしここは違う。むしろ幻想郷ですらない。そこからさらに地下へと下った先にある、地底世界。
その中央に建つ、地霊殿である。
「いや~、やっぱり炬燵はいいね~」
そう呟くと、賛同する声が真横から聞こえてきた。
「そうだよね~。日本人ならこれだよね~」
炬燵机に乗せていた頭をそちらの方向にごろりと転がす。
吐く息も届きそうなくらいの近距離に、蕩けるような笑顔の少女がいた。
古明地こいし。さとりの妹だ。
彼女もまた、炬燵の魅力に取り付かれた同志である。
「やっぱりこいしもそう思うか? まあ、地霊殿にはちょっと似合わないけどな」
「悲しいけど、ここ洋館なのよね。でもいいじゃない。こうして私たちが愛しあうのに場所なんて……」
こいしの顔が徐々に近づいてくる。
何をしようとしているのかは明白だが、先に摂取したアルコールが思考を鈍らせる。
魔理沙は特に避ける素振りもせず、ただそれを眺めていた。
こいしが目を閉じて唇を軽く突き出した。ふっくらとして血色の良い唇。
魔理沙も雰囲気につられて目蓋を閉じた、そのとき。
「はいはい、そこまでよ」
突如、こいしとは反対側の真横から頭を掴まれ、引っ張られた。
急速にこいしとの距離が開く。視界の片隅でこいしが不満そうに頬を膨らませるのが見えた。
しかし、同じかそれ以上に険しい表情のさとりが睨んできて、思わず背筋が凍った。
「さ、さとりさん? なんでそんな怖い顔してるんでしょうか?」
「そう見えますか? たぶん勘違いじゃないでしょうか、自意識過剰とかの」
「……はい、そうですね」
魔理沙は肩を落として座り直す。
――ここは地霊殿の最北端にある一室で、先日さとりが炬燵を設置した部屋だ。
長かった一年はおわりを迎え、明日から新たなる一年が始まる。
現在の時刻は十一時を半分ほど過ぎた頃。あと四半刻もすればニューイヤーである。
その時を、古明地姉妹に霊烏路空、火焔猫燐と共に今か今かと待ちかねていた。
「さとり様。追加の蜜柑持って来ました」
「あら、ありがとうお燐。今年は最後までご苦労様ね」
「いやまあ……えへへ」
燐が照れたように頬を赤く染め、炬燵に入った。
これで全員揃った。左右に古明地姉妹、真正面に空、その右隣に燐が座った形となる。
それにしても、だ。
「なんだってここには三人も入ってるんだ?」
誰に問うわけでもなく、魔理沙は当然の疑問を口にした。
炬燵の口は四つある。五人いるので誰か二人は一緒にならなければならないのだが、魔理沙が座っている横、袖が触れ合う左隣にこいしが、右隣にさとりが座っているのだ。なので結構狭い。
こいしがいち早く答えた。
「そんなの、魔理沙と一緒に座りたいからに決まってるじゃん!」
うふふ、と嬉しそうに抱きついてくるこいし。
その好意は喜ばしいのだが、素直に返せない理由もまた隣にいた。
さとりである。
「魔理沙さんはそんなにこいしとだけ座りたいんですか?」
「いや、そういうわけじゃ……」
「だったら言えばいいじゃないですか。『お前は邪魔だからどっか行け』って」
口を尖らせて拗ねたように呟くさとりに、内心肝を冷やしながら答える。
「そ、そんなことはないぜ? さとりと隣だとすごく嬉しいなーっ」
「本当に?」
「もちろん、だぜ」
「……ならいいです」
そう言うと、さとりはぽてんと頭を魔理沙の肩に乗せた。
それを見ていたこいしも同じように、魔理沙にもたれかかる。
完全に動けなくなっていた。
そんな魔理沙を、燐が鋭い瞳で射抜いた。
「……良かったね、魔理沙。すごく妬まし……羨ましいよ」
「お、お燐。蜜柑取ってくれないか? 私じゃ届かないんだ」
「ふ~ん、まあ両手に花を持ってりゃ無理だよね~?」
「はは、ははははは……」
燐もこんな感じだった。
たぶん敬愛する主を取られて悔しいのだろうな、と不機嫌な理由には察しがついている。
いるのだが、ではさとりに『燐に構ってやれ』と言えるか? それは遠まわしの『あっちいけ』と同義である。また子猫のようなジロ目で見上げられては困る。
(っならば!)
早すぎる最後の希望、空に目を向けた。
「……くか~」
爆睡してた。
(いかん、どうすればいいんだ!?)
目の前に美味しそうな蜜柑が置いてある。
それを手にとって、中心の窪みに親指を突っ込んで穴を空け、花を開くように皮を剥き、心ゆくまで頬張りたかった。
しかし肩に二人の頭が乗っている以上腕を動かせず、蜜柑を食べるどころか酒も飲めない。
すでに何杯か飲んでいるため、狂おしいほどに口が寂しかった。
禁断症状で手どころか全身が地震のように震えだしそうだ。
(むう……ん?)
体勢を戻したさとりが蜜柑を手にとって剥き始めた。
至極自然な行為なので、てっきり自分で食べるためのものだと思っていたのだが。
剥き終わった蜜柑を半分に割り、さらに割り、一粒大にして。
「はい、あーん」
なんと、かすかに微笑みながら魔理沙の口元に突き出したではないか。
突然のことに硬直していると。
「……食べないんですか?」
と、瞳を潤ませるのだからたまらない。
魔理沙はとても逆らうことはできず、
「あ、あーん」
口を大きく開いて蜜柑の粒を受け入れた。
程よい酸味と甘味が奇跡的なコラボレーションを醸し出した美味さだった。
その代わり、さとりとは逆の方向から凄まじい気が発せられた。
こんなにも暑い部屋なのに冷や汗が額から流れる。
それは俗に言う、『殺気』というやつだった。
「……魔理沙」
「は、はいぃ!?」
左腕が加速度的に重くなっていく。
それがこいしの体重によるものか、プレッシャーによるものかは判断がつかなかった。
恐る恐るこいしに顔を向ける。
笑顔だった。
攻撃的な犬歯を剥き出しで、刺殺できそうなほどに鋭利な眼差しではあったが。
「ねぇ、魔理沙ぁ?」
「なななななんでしょうかこいしさま!?」
「蜜柑食べたいんでしょ? 食べさせてあげる」
こいしは蜜柑を一個持つと、それをこちらの口元に近づけてきた。
「あああの……こいし? これ、外皮ついてるけど」
「なあに? お姉ちゃんのは美味しそうに食べるけど、愛しのこいしちゃんのは食べれないの?」
「あああああうあうあうあう……」
無理だ。
いくらなんでも無理すぎる。
外皮のついた丸い蜜柑を頬張るのは……!
そこにさとりが参戦した。
「こいし、いくらなんでもそれは無茶よ。きっと美味しくないわ」
「そういう問題じゃないよさとりん!?」
「大丈夫よ、魔理沙には私への愛があるもの。お姉ちゃんには……まあ、無理でしょうね」
こいしは艶かしく自身の唇を真っ赤な舌で舐める。
その挑発に、さとりは眉根に皺を寄せながら三つの瞳を細めた。
「……へえ。その程度で、愛? 魔理沙さんは私のためならきっとコップごとお酒を飲み干してくれるわね」
「無理だって! いくらなんでもそれは物理的に不可能だ!」
「はん、そんなもので勝ち誇ってるの? 私のためなら、魔理沙は酒瓶ごと飲み込んでくれるわよ」
「出来ないよ! そんなの妖怪も挑戦しようと思わないよ!」
しかし二人は薄ら笑いを浮かべたまま、こちらを見向きもせずに睨みあう。
……あれ? これって逃げられるんじゃね?
刹那の疑問・即座の回答・否、今しかない――!
即座に腕で跳ねることで真後ろに足一本分飛ぶ。
その勢いを殺さぬまま体を捻ってうつ伏せに近い体勢になり、利き足の親指で思いっきり床を蹴ってこの場からの離脱を――。
「あらあら、どうしました魔理沙さん?」
「トイレなら一緒に行ってあげるけど、それ以外ならお仕置きだよ?」
両方の足首をしっかりと握られた。
ぞわっと怖気が走り、全身の毛穴が開く感覚が鮮明に駆け抜ける。
まるで捕食動物に捕まったかのような絶望感に陥った。
ひぃ、と言葉にならない悲鳴が喉から零れ出る。
ずっずっずっ……と引き摺られ、再び炬燵の前に連れ込まれてしまった。
座らされた場所の前には、開封されていない一升瓶と、日本酒がなみなみと満たされたガラスのコップ。
その意図を探るべくさとりに視線を向ける。……何かを期待するような瞳で見つめられた。
これって冗談だよなとこいしに笑いかける。……何かを望んでるような目で見返されてしまった。
「あのさ……冗談だよな?」
さとりとこいしは同時に、にっこりと笑った。
「「さあ、どっちを飲むの?」」
今年最後に、最大の難関が待っていた。
「そろそろだな」
「うん、もうそろそろ」
「そろそろだねぇ」
「ええ、すぐそこだわ」
「くわぁ……眠い……」
すでに、今年に想いを馳せることはない。
あるのは来年への願いのみ。
昨日より、より良き今日を。
今日より、より良き明日を。
みんなが今年よりも幸せになることを祈りながら。
そして、年が明けた。
思わず、声が零れた。
しかしそれは無理もない。
仕方がないのだ。
昔の人々が天動説を信じたように、表の反対は裏であると同じように。
必然。そう、必然だ。
ここでこうしている時点で、この結果は容易に予測がつく。
でなければおかしい。硬貨の表は数字が刻まれている側だと言い張るくらいにおかしい。
故に、問おう。この声を聞いている誰かに。
君は、この誘惑に耐えられるのか――?
「……魔理沙さん。炬燵が心地いいのは分かりましたから、少し静かにしてください」
「あ、はい。すいませんさとりさん」
こたつ。それは、日本人の心。
コタツ。それは、冬の代名詞。
炬燵。それは、一度虜になれば二度と離れられない魅惑の持ち主。
そう、魔理沙は炬燵に手足を突っ込んで寛いでいた。
ここは博麗神社ではない。いつも彼女が炬燵を堪能するのは、確かに博麗神社だ。
しかしここは違う。むしろ幻想郷ですらない。そこからさらに地下へと下った先にある、地底世界。
その中央に建つ、地霊殿である。
「いや~、やっぱり炬燵はいいね~」
そう呟くと、賛同する声が真横から聞こえてきた。
「そうだよね~。日本人ならこれだよね~」
炬燵机に乗せていた頭をそちらの方向にごろりと転がす。
吐く息も届きそうなくらいの近距離に、蕩けるような笑顔の少女がいた。
古明地こいし。さとりの妹だ。
彼女もまた、炬燵の魅力に取り付かれた同志である。
「やっぱりこいしもそう思うか? まあ、地霊殿にはちょっと似合わないけどな」
「悲しいけど、ここ洋館なのよね。でもいいじゃない。こうして私たちが愛しあうのに場所なんて……」
こいしの顔が徐々に近づいてくる。
何をしようとしているのかは明白だが、先に摂取したアルコールが思考を鈍らせる。
魔理沙は特に避ける素振りもせず、ただそれを眺めていた。
こいしが目を閉じて唇を軽く突き出した。ふっくらとして血色の良い唇。
魔理沙も雰囲気につられて目蓋を閉じた、そのとき。
「はいはい、そこまでよ」
突如、こいしとは反対側の真横から頭を掴まれ、引っ張られた。
急速にこいしとの距離が開く。視界の片隅でこいしが不満そうに頬を膨らませるのが見えた。
しかし、同じかそれ以上に険しい表情のさとりが睨んできて、思わず背筋が凍った。
「さ、さとりさん? なんでそんな怖い顔してるんでしょうか?」
「そう見えますか? たぶん勘違いじゃないでしょうか、自意識過剰とかの」
「……はい、そうですね」
魔理沙は肩を落として座り直す。
――ここは地霊殿の最北端にある一室で、先日さとりが炬燵を設置した部屋だ。
長かった一年はおわりを迎え、明日から新たなる一年が始まる。
現在の時刻は十一時を半分ほど過ぎた頃。あと四半刻もすればニューイヤーである。
その時を、古明地姉妹に霊烏路空、火焔猫燐と共に今か今かと待ちかねていた。
「さとり様。追加の蜜柑持って来ました」
「あら、ありがとうお燐。今年は最後までご苦労様ね」
「いやまあ……えへへ」
燐が照れたように頬を赤く染め、炬燵に入った。
これで全員揃った。左右に古明地姉妹、真正面に空、その右隣に燐が座った形となる。
それにしても、だ。
「なんだってここには三人も入ってるんだ?」
誰に問うわけでもなく、魔理沙は当然の疑問を口にした。
炬燵の口は四つある。五人いるので誰か二人は一緒にならなければならないのだが、魔理沙が座っている横、袖が触れ合う左隣にこいしが、右隣にさとりが座っているのだ。なので結構狭い。
こいしがいち早く答えた。
「そんなの、魔理沙と一緒に座りたいからに決まってるじゃん!」
うふふ、と嬉しそうに抱きついてくるこいし。
その好意は喜ばしいのだが、素直に返せない理由もまた隣にいた。
さとりである。
「魔理沙さんはそんなにこいしとだけ座りたいんですか?」
「いや、そういうわけじゃ……」
「だったら言えばいいじゃないですか。『お前は邪魔だからどっか行け』って」
口を尖らせて拗ねたように呟くさとりに、内心肝を冷やしながら答える。
「そ、そんなことはないぜ? さとりと隣だとすごく嬉しいなーっ」
「本当に?」
「もちろん、だぜ」
「……ならいいです」
そう言うと、さとりはぽてんと頭を魔理沙の肩に乗せた。
それを見ていたこいしも同じように、魔理沙にもたれかかる。
完全に動けなくなっていた。
そんな魔理沙を、燐が鋭い瞳で射抜いた。
「……良かったね、魔理沙。すごく妬まし……羨ましいよ」
「お、お燐。蜜柑取ってくれないか? 私じゃ届かないんだ」
「ふ~ん、まあ両手に花を持ってりゃ無理だよね~?」
「はは、ははははは……」
燐もこんな感じだった。
たぶん敬愛する主を取られて悔しいのだろうな、と不機嫌な理由には察しがついている。
いるのだが、ではさとりに『燐に構ってやれ』と言えるか? それは遠まわしの『あっちいけ』と同義である。また子猫のようなジロ目で見上げられては困る。
(っならば!)
早すぎる最後の希望、空に目を向けた。
「……くか~」
爆睡してた。
(いかん、どうすればいいんだ!?)
目の前に美味しそうな蜜柑が置いてある。
それを手にとって、中心の窪みに親指を突っ込んで穴を空け、花を開くように皮を剥き、心ゆくまで頬張りたかった。
しかし肩に二人の頭が乗っている以上腕を動かせず、蜜柑を食べるどころか酒も飲めない。
すでに何杯か飲んでいるため、狂おしいほどに口が寂しかった。
禁断症状で手どころか全身が地震のように震えだしそうだ。
(むう……ん?)
体勢を戻したさとりが蜜柑を手にとって剥き始めた。
至極自然な行為なので、てっきり自分で食べるためのものだと思っていたのだが。
剥き終わった蜜柑を半分に割り、さらに割り、一粒大にして。
「はい、あーん」
なんと、かすかに微笑みながら魔理沙の口元に突き出したではないか。
突然のことに硬直していると。
「……食べないんですか?」
と、瞳を潤ませるのだからたまらない。
魔理沙はとても逆らうことはできず、
「あ、あーん」
口を大きく開いて蜜柑の粒を受け入れた。
程よい酸味と甘味が奇跡的なコラボレーションを醸し出した美味さだった。
その代わり、さとりとは逆の方向から凄まじい気が発せられた。
こんなにも暑い部屋なのに冷や汗が額から流れる。
それは俗に言う、『殺気』というやつだった。
「……魔理沙」
「は、はいぃ!?」
左腕が加速度的に重くなっていく。
それがこいしの体重によるものか、プレッシャーによるものかは判断がつかなかった。
恐る恐るこいしに顔を向ける。
笑顔だった。
攻撃的な犬歯を剥き出しで、刺殺できそうなほどに鋭利な眼差しではあったが。
「ねぇ、魔理沙ぁ?」
「なななななんでしょうかこいしさま!?」
「蜜柑食べたいんでしょ? 食べさせてあげる」
こいしは蜜柑を一個持つと、それをこちらの口元に近づけてきた。
「あああの……こいし? これ、外皮ついてるけど」
「なあに? お姉ちゃんのは美味しそうに食べるけど、愛しのこいしちゃんのは食べれないの?」
「あああああうあうあうあう……」
無理だ。
いくらなんでも無理すぎる。
外皮のついた丸い蜜柑を頬張るのは……!
そこにさとりが参戦した。
「こいし、いくらなんでもそれは無茶よ。きっと美味しくないわ」
「そういう問題じゃないよさとりん!?」
「大丈夫よ、魔理沙には私への愛があるもの。お姉ちゃんには……まあ、無理でしょうね」
こいしは艶かしく自身の唇を真っ赤な舌で舐める。
その挑発に、さとりは眉根に皺を寄せながら三つの瞳を細めた。
「……へえ。その程度で、愛? 魔理沙さんは私のためならきっとコップごとお酒を飲み干してくれるわね」
「無理だって! いくらなんでもそれは物理的に不可能だ!」
「はん、そんなもので勝ち誇ってるの? 私のためなら、魔理沙は酒瓶ごと飲み込んでくれるわよ」
「出来ないよ! そんなの妖怪も挑戦しようと思わないよ!」
しかし二人は薄ら笑いを浮かべたまま、こちらを見向きもせずに睨みあう。
……あれ? これって逃げられるんじゃね?
刹那の疑問・即座の回答・否、今しかない――!
即座に腕で跳ねることで真後ろに足一本分飛ぶ。
その勢いを殺さぬまま体を捻ってうつ伏せに近い体勢になり、利き足の親指で思いっきり床を蹴ってこの場からの離脱を――。
「あらあら、どうしました魔理沙さん?」
「トイレなら一緒に行ってあげるけど、それ以外ならお仕置きだよ?」
両方の足首をしっかりと握られた。
ぞわっと怖気が走り、全身の毛穴が開く感覚が鮮明に駆け抜ける。
まるで捕食動物に捕まったかのような絶望感に陥った。
ひぃ、と言葉にならない悲鳴が喉から零れ出る。
ずっずっずっ……と引き摺られ、再び炬燵の前に連れ込まれてしまった。
座らされた場所の前には、開封されていない一升瓶と、日本酒がなみなみと満たされたガラスのコップ。
その意図を探るべくさとりに視線を向ける。……何かを期待するような瞳で見つめられた。
これって冗談だよなとこいしに笑いかける。……何かを望んでるような目で見返されてしまった。
「あのさ……冗談だよな?」
さとりとこいしは同時に、にっこりと笑った。
「「さあ、どっちを飲むの?」」
今年最後に、最大の難関が待っていた。
「そろそろだな」
「うん、もうそろそろ」
「そろそろだねぇ」
「ええ、すぐそこだわ」
「くわぁ……眠い……」
すでに、今年に想いを馳せることはない。
あるのは来年への願いのみ。
昨日より、より良き今日を。
今日より、より良き明日を。
みんなが今年よりも幸せになることを祈りながら。
そして、年が明けた。
3人とも可愛いぜ
新年早々ありがとうございました
なんか酷い目にあってるけどさとりとこいしからラブ送られてるからやっぱり爆発しろ
いいぞもっとやれ!
そしてもっと流行れ!
ところで、まだですか?三人の姫はj……