Coolier - 新生・東方創想話

大晦日の過ごし方 in守矢家

2010/12/31 23:19:25
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「本日、祝日、大晦日!  夜更かし年越し楽しみだ! イェーイ!」
「諏訪子、大変だ。早苗があまりの嬉しさにラッパーになってるぞ」
「いつもは10時に寝る約束だからね、そりゃ韻も踏みたくなるよ」
奇跡で風を吹かしてムーンウォークに興じるくらいだから、よっぽど嬉しいのだろう。喜色満面の笑みを顔に浮かべ、スリラーを踊る早苗は見ていて微笑ましい。
「微分、積分、いい気分! サラシ脱ぎだしエクスタシー!」
 
 しかしいくら微笑ましいとはいえ、見てると段々イライラしてきたので、とりあえず御柱を投げつけることにした。すると御柱を受けた早苗は「うごぁ!」と乙女度が暴落するような声をあげて壁にたたきつけられ、ノビてしまった。
「うわぁ、可哀相。壁に少しヒビ入ってるよ」
 諏訪子はぺいっ、と気絶した早苗を脇にどけて壁を見る。早苗はどうでもいいらしい。
「すまんすまん。後で河童でも呼んで修理させてもらうよ」
「もー、頼むよー」
「わかってるよ」
 まるで童みたいにぷーっと頬を膨らます諏訪子の頭を撫で、私は微笑む。昔は戦争をした仲だが、諏訪子は今では和やかな雰囲気で歓談することができる良き友人である。
「ん、見つめちゃってどうかしたの? 私の顔に何かついてる?」
「うんにゃ、諏訪子がべっぴんさんだから見つめてんのさ」
「やだー。神奈子ったらお世辞が上手いんだから」
 うふふ、と諏訪子はまんざらでもない様子で笑う。まったくかわゆい奴よのう。
「本心を言っただけさね」
「あーうー。照れるよ」
「なんだその照れ顔は、私をキュン死させたいのか?」
 胸に沸き上がる情欲を抑え切れず、私はすばやく諏訪子に近づいて押し倒し、うつ伏せの状態にして背中に乗っかる。
「お、やるのかい? まだ真昼間だよ」
「かまわん、やる。今日も諏訪子を悦ばせてあげるさ」
「うふふ、期待してるよ。あたしのあそこ、デリケートだから優しく扱ってね?」
「もちろん。たまに激しくするが……ねっ!」
「ひゃっ! ま、まだ準備出来てなかったのにぃ」
 諏訪子は艶っぽい声をあげ、それは私の情欲の炎にガソリンを注ぐ。
「ん、そこは……ぁん! 神奈子の意地悪、弱いの知ってるくせに激しくして」
「ふん、そんなこと言って、躯は正直だね。もっと喘いでいいんだよ?」
「あーうー」
 快感と羞恥でとろけた諏訪子の顔を堪能し、また私は刺激を与え始める。
 こうして、私と諏訪子がイチャコラしてる間に大晦日は過ぎていった――


「過ぎるなー!」


 メキッ!と御柱を素手で叩き折った音と共に、早苗が頭から流血しながらも立ち上がり、私を諏訪子のから引きはがす。ちっ、良いところだったのに。
「お二人共何なんですか! 人の頭部に御柱直撃させといて無視してイチャコラしだすなんて酷いですよ! このままじゃ私の今年の大晦日の思い出が御柱だけになってしまいますよ!」
「そんな大晦日もオツなもんさ」
「どこが!? 大体真昼間っから何やってるんですか! そういうのをやるには時と場合と状況を考えてですね……!」
「おい、頭から血が出てるけど大丈夫かい?」
「あ、奇跡でなんとかしたんで大丈夫です……って神奈子様がやったんでしょうが! しかも何サラっと話をすり替えようとしてるのですか!」

 早苗はぐるるる。と喉を鳴らしてキッ!とこちらを睨む。ノリツッコミをするなんて相当怒っている証拠である。うーむ、困った。なだめるにはどうしたらよいだろうか。
 ちらり、と私は隣に移動していた諏訪子にお助けアイコンタクトを送ると、諏訪子はコホン。と咳ばらいをして言う。

「んじゃあ、温泉でも行こっか」



 地底。それはコミュニケーション力皆無、卑屈で暗い、忌み嫌われる妖怪が閉鎖的に暮らしていると言われる場所である。しかし事実、そんな妖怪だけが地底に巣食ってるだけでなく、陽気な妖怪も数多く存在する。だが別段地上の者にどう思われようが気にしない妖怪がほとんどだったので、別になんの行動もおこす者はおらず地底は常にマイナスなイメージしか持たれてなかったのだが、ある日突然とある鬼が「そんな辛気臭いイメージなんてぶっ壊してやろう!」と屋台を作りだした。
 その鬼は幻想郷中に地底で屋台を開くことを宣伝した。そしてそのより多くの人間、妖怪との交流を屋台を通して深めようとした鬼の出現を皮切りに、お店を開きたいと思いつつもきっかけがなかった妖怪や、イメージ改革に参加したいが何をしたらいいかわからなかった妖怪、ただ単に流れに乗った妖怪などが店を開き始め、地底では今まさに空前絶後の商店ブームが広がっていた。
 地獄の旧都には屋台がところせましと並んでおり、妖怪や物好きな人間達は酒をのみかわし、交流を深め合っていた。
 地霊殿では使われてない巨大な別館を改造して温泉旅館を営んでいて、人、神、妖怪、魔法使いが日頃の疲れを癒すべく足を運んでいた。

「にしても、中々立派なもんだ。もっとぼろいのを想像してたんだが」
「シャンデリアが綺麗だねー。およ、かと思ったらししおどしの音が聞こえてきた」
「温泉温泉~! 速く入りたいですー!」

 空が朱に染まり始めた頃、私達は地霊殿別館、通称「古霊の湯」と呼ばれる旅館のエントランスに到着した。吹き抜けの天井には豪華なシャンデリアがいくつもかけられており、受付所の前には何故かししおどしも設置されていた。
 見取り図を見るに、旅館は2階建てのようで、1階には卓球場、大浴場、宴会所があり2階には客が泊まる為の部屋がいくつもあった。
「もう神奈子様! 旅館のことなんていいですから速く入りましょう! 温泉温泉!」
「あー、わかったわかった。そう急ぐな」

 神3人、と言って50ペリカを受付嬢に差出し手短にチェックインを済ませると、私達は大浴場へ向かった。



脱衣所を出ると浴場には5メートル四方の温泉があり、それより一回り大きな露天風呂が木製の扉を挟み外に設置されていた。

「ヒャッハー露天風呂だあ!」

 早苗は露天風呂を見つけると、タオルを道端に投げ捨て、何の躊躇いもなく頭からダイビングした。水深が一メートルにも満たなそうだというのに、無茶をする子だ。
 案の定、ゴツッ。と鈍い音が聞こえたが、そんな痛みじゃ私を止めることはできんと言わんばかりに早苗は温泉で泳ぎ出す。しかもバタフライ。
「まったく、早苗ったら元気だな。諏訪子もそう思わないか?」
「あーうー! あたしも泳ぐー!」
「ふー、やれやれだ」
 とてて、と露天風呂へ走っていく諏訪子の後ろ姿を見送り私は肩をすくめる。
「んじゃ、そろっと私も入ろうかな」
 幸い今は妖怪が活動する時間帯ではないので、浴場は閑散としていて、人っ子一人いない。

「と、思ったんだがどうやら誰かいるようだね」
 目立たんから気づかなかったが、やけに端の方にある温泉に金髪の水着を着た二人組を見つけた。片方はパレオを着ていて、もう片方は白いビキニを着ていた。
「一人で入るのもあれだし、触れ合ってみようか」
 思い立ったら吉日。私はわざわざ二人のいる所まで行き、湯に数十秒間使って極楽を味わった後、触れ合いを開始した。
「お二人さん、見かけない顔だねえ。何処から来たんだい?」
 二人はまさか話し掛けられるとは夢にも思わなかったのか、びくっ!と見てとれるように驚く。ショートカットの少女はぎこちない動きでこちらに会釈し、背の小さい耳のとんがった少女はさっと会釈した少女の後ろに隠れてしまった。人見知りするタチなんだろうか。

「わ、私は魔法の森から来た魔法使いで、ち、ちなみにこっちの子は地底と地上を繋ぐ橋から来た橋姫さんなのよ」
「へえ、私は最近妖怪の山に越してきた神だよ。八坂神奈子っていうんだ」
「私はアリス、アリスマーガトロイド」
「……あたっ、あた、しは、水橋パルスィ」
「ま、固くならないでいいよ。とって食おうってわけじゃないから安心しな」
「え、ええ」
「私の至福の時間を邪魔しおって、この巨乳め……妬ましい!」
 相手の警戒心を和らげるために微笑んで見せるが、アリスという魔法使いはいまだに落ち着かないし、パルスィという橋姫に至ってはすごい剣幕で謎の呪詛を呟きながら私の胸を親の仇でも見るように凝視している。
 なるほど、一筋縄じゃいかないというわけか。だが!幻想郷1フランクな神様(自称)を名乗るからにはここで引き下がるわけにはいかんな!ここでこの子達に出会ったのも何かの縁、今日は夜まで語りあって絶対仲良くなってやる。
 そんな燃えるような志をもって触れ合いを再開しようと思ったのだが、突然やってきた早苗によってそれは阻止された。
「あー! 神奈子様こんなとこにいたんですね!  一緒に露天風呂入りましょうよ!」
「ちょっ、早苗! 今私はこのこたちと!」
「さあ行きますよー!」
「おい! 話を聞け! というかどさくさに紛れて胸揉むな!」
「よいではないかよいではないか」
「よかないわ!」
 名残惜しかったが、早苗の押しに負けて私はひらひらと二人に手を振りその場を後にした。というか、いつまで胸を揉んでるんだこいつは。



神奈子と早苗が露天風呂に入って行くのを見届けたあと、ふたりぼっちになったアリスとパルスィは会話を始める。
「あー、いきなり話しかけられて心臓が止まるかと思ったわ。かなりどもっちゃったし……あれが最近妖怪の山に越して来た神様なのかしら」  
「やけに、フランクな神様でしたね」
「ええ、初対面の人にあんな気さくに接する事ができるなんて羨ましいわ」
「……しかも巨乳ですし。まったく、妬ましい」
「むー、確かにあれはすごい迫力だったわ。もう、たゆんたゆんで!」
「妬ましいわ……!」
 二人で先ほどまで目の前に存在していたたわわな果実を想像して、ぷくぷくと口まで温泉に浸かってもう一度歯ぎりをする。
 しかしいつまでも自分の身体の成長速度を恨んでもしかたがないので、アリス達はやるせない気持ちのまま浴場から上がることにした。


 露天風呂を満喫した私達は、従業員と思しき死霊妖精から牛乳を買い、腰に手を当て一気飲みする。
 その白濁色の液体は乾ききった私達の心に潤いを与え、生きる気力を注入してくれた。早苗なんて恍惚の表情を浮かべて心がどこかへトリップしている。
 なんていうか、その、一言で言うとエロイ表情だ。ベッドに連れ込みたくなる。しかしまだ深夜帯になってないからそういうのは自重する……はぁはぁ。
「神奈子、喘ぎ声喘ぎ声」
「ハッ! 自重しなきゃいけないんだった」
「まったく、こんな時間帯からピンク色な妄想しちゃダメだよ……それにしても早苗の牛乳飲んだ後の顔ってエロイよね。お持ち帰りしてベッドで――」
「おい、止めろと言ったのはどこの誰だ」
  
 駄目だこの幼女、速くなんとかしないと。

「ま、冗談はここまででいいとして」
「涎垂れてるぞ?」
「神奈子、お風呂も上がったことだし卓球場にでも行かない? 一戦しようよ」
「スルー能力が半端じゃないね……ま、いいだろう。どんな勝負でも蛙は蛇に勝てないことを教えてあげようじゃないか」
「追いつめられた鼠は猫さえ打ち負かす。勝負は何が起きるかわからないよ」  
 バチバチバチ。と二人の間に花火が散る。かくして、私達の戦いの火ぶたが唐突に切って落とされた。
 
 ちなみにその時早苗はというと、フルーツ牛乳を一気飲みしてへヴン状態であった。


 
 人間達が寝静まり妖怪たちが活発に動き始めるころ、卓球場では多くの妖怪に囲まれて私と諏訪子は全身全霊を込めて球を撃ちあっていた。
 
 早苗は台のセンターに陣取って審判役兼、実況役を見事にこなしていた。 
 
「うおおおおおお! 堕ちろ諏訪子! 御柱サーブ!」
 神力の応用!ラケットに神力を込めることで球にもその力を伝播させる!
「うおっとお! 言わずと知れた神奈子様の必殺技御柱サーブが出ました! あのサーブは軌道上全てに乾を創造するうぅ! はい、迷惑ですね!」
「なんの、土着神レシーブ!」
 流石諏訪子、マイナスの神力を与えて力を相殺するなんて…やるねえ。
「うわあああ土着神レシーブです! そのレシーブした玉に触れたモノは有機物、無機物問わずに祟られると言う恐怖のレシーブです! うん、迷惑ですね!」 
「ほう、あれを返すか……おもしろい。久々に本気が出せそうだっ!」
「それはこっちの台詞だ……よっ!」
 神力を纏ったピンポン玉はめまぐるしく両コートを行き来し、どちらのコートにも小規模のクレーターがいくつも出来ていた。
「一歩も譲らぬ攻防、果たして勝利の栄冠をつかみ取るのはどちらなんでしょうかー!?」 
「私だぁああ!」
「あたしだああ!」

 そうして死闘を続けること2時間、スコアは72対73で私は諏訪子にマッチポイントをとられた状態だった。
 周りを取り囲む野次馬妖怪達の数も増えていき、卓球場は妖怪でいっぱいだった。
「さあさあ賭けた賭けた! 諏訪子様か神奈子様か! 当たった方にはなんと勝利者から祝福のチッスが!」
「ひゃっほおおおおおう!」
 卓球場が一気に湧きあがったかと思うと、怒涛の勢いで神徳が集まり、神力が恐ろしい勢いで身体に蓄えられていくのを感じる。
 身体が火照り、浴衣も激しい戦いによってところどころ破れ、いつもセットしている髪が汗で崩れてロングヘアになってしまった。しかしそんなものを気にしてる暇は私にはない。
 もっと速く!もっと力強く!もっと鋭く!私は死力を尽くして球を撃ち返す。
 しかし神力が集まっているのは相手も同じらしく、諏訪子の球も段々と鋭さを増していく。
「いいねえ、最高にハイってやつだよ! こんなすがすがしい気分になったのは久方ぶりだ!」
「神奈子もかい!? あたしも力が漲って止まらないよ!」
「球のスピードが際限なく上がっていきます! 私、速すぎてもう実況できません!」
 
 早苗が実況放棄した瞬間、私の全身を悪寒が駆け巡る。やばい、これは何かが来る! 

「楽しかったが、この遊戯はもう終わりだよ! 滅せよ、ミシャグジドライブ!!」
 パン!と諏訪子の撃った球の速さは音速を超え、私に迫ってくる。もう駄目か!?そう思ったのだが、不規則に空いたクレーターにひっかかり球は大きく宙に舞う。

 ここだ!

「くらえ! メテオリック御柱スマッシュ!!!」

 空高く跳躍した私はあらん限りの神力をラケットに込め、球を相手コートへ叩きつけた――



 事の顛末を説明すると、先ほどの試合では私が勢いに乗りさらにポイントを先取して、華々しい勝利を飾ることができた。
 そう、そこまではよかったのだが、その後はもうてんやわんやの大騒ぎで大変だった。
 妖怪達の熱気は勝負がついても収まることを知らず、宴会場で大宴会が開かれることとなった。
 宴会では飲めや歌えやの大騒ぎで、約束通り私に賭けてくれた妖怪全員のほっぺにキスをプレゼントして回ったり、地獄鴉と火車の黒猫がうにゅ!にゃーん!うにゅ!にゃーん!とお餅をついてくれて皆に振る舞った。
 天狗と鬼は呑み比べを始め、橋姫と魔法使いはにこにこと笑い合い、早苗も妖怪に囲まれて毎朝練習しているダンスを披露し、諏訪子も白髪のサトリ妖怪と楽しく輪投げをしていた。
 
 地上の妖怪も地底の妖怪も分け隔てなく、皆が思い思いに宴会を楽しみ、新年を迎えようとしていた。
 
 年越しの瞬間くらいは二人と一緒にいたいと思い、私はべろんべろんになってる早苗と5個の鉄の輪でジャグリングをしてる諏訪子を自分の座ってる場所に運んで来て、ぎゅっと両手で抱き締め叫ぶ。
「よっし、皆そろそろ年越しだぞー! カウントダウン開始!」 

「うおおおおおおおお! さーん! にーい! いちー!」
 
 全員一丸となって眠ってるもの、酔いつぶれてるものも強引に肩を貸して立たせ、私も早苗を無理やり立たせる。諏訪子は自分で立てるはずなのだが、何故かぎゅっと抱きついて全体重を預けてきたので支えてあげた。

「ぜろー! いえーい! 明けましておめでとーう!」
 
 意識のある妖怪達は呑み物の容器を天高く突き上げ中身をぶちまけるが、誰も咎めることなく皆は年が越しても心ゆくまで踊り、歌い、呑み続ける。


 こうして私達の大晦日は過ぎて行った――  
先日、温泉旅館へ旅行しに行ったので、急遽作ることにした守矢家の大晦日を過ごすお話、いかがだったでしょうか?ノリノリで書くことができたので楽しみが少しでも伝わって、読んで下さった皆様にも楽しんでもらえると嬉しいです。

こんな私ですが、来年も宜しくお願いします!


ちなみに、序盤で神奈子がうつ伏せの諏訪子相手にやっていたのは、肩もみでした。

「そこ、そこそんなに押されると感じちゃう~っ!!」
「そう言われるとやりたくなるねえ」ギュッ
「らめええええええ!」
 
 良いお年をw
まんた
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https://twitter.com/#!/kuronukodeath
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コメント



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2.100奇声を発する程度の能力削除
ドンちゃん騒ぎww読んでて面白かったです
10.80名前が無い程度の能力削除
やりたい放題で楽しかったです。