Coolier - 新生・東方創想話

神は天にあらないと 世はすべてこともなしという訳にはいかない

2010/12/29 14:50:33
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幻想郷の管理者にして妖怪の賢者、八雲紫は自分が握っていた扇子を取り落とした事にも気付いていない様だった。
かろうじて、震える声で、言葉を発した。

「…………今、何と? 何と仰いました?」

嘘で、あって欲しい。いや、何かの聞き間違いに違いない、と八雲紫が弱々しい声で縋るように手を伸ばした先には、一人の女性が沈痛な面持ちで座っていた。彼女は紫の声に答えようともせず、ただ悲しげに首を振った。

「何とか仰って頂戴! 四季映姫様!」

八雲紫が幻想郷の顕界の管理者ならば、四季映姫・ヤマザナドゥは幻想郷の幽界の管理者である。

「ああ…………如何してそんな事に…………」

奇麗に整えられた金糸のような髪を乱暴に掻き毟り乍、賢者の名を持つ大妖は、あやかしに有るまじき事に天を仰いだ。
その嘆きの原因を持って来た張本人である地獄の管理者にして全ての使者を裁く閻魔は、口を開く事も出来ず、ただ眉間の彫を深くしていた。

晩秋の或る日の夕刻、八雲紫の住まう館を、共の一人も連れず訪れた四季映姫は、来訪の用件を曰く―――――――『極めて重要な話が有る』と。
早々に出迎えた紫に、閻魔は単刀直入に話を切り出したのだ。


「しつれいします!」

閉じられた襖の奥より、幼さの残る少女の声が掛かる。

「――――どうぞ」

許しの声に襖を開けたのは、客と主人に茶を運んできたのは紫の式の式、二股の尾を揺らす橙だった。すこしばかり緊張した面持ちではあるものの、確りと礼に則った所作で、いつもの様に泰然自若と寛ぐ八雲紫と、全てに悠然と構えて滅多に表情を崩す事の無い四季映姫の前に茶と菓子を置く。
一礼をして部屋を下がろうとする橙に向け、珍しく紫が声を掛けた。

「橙、貴女…………今日はこの後帰るだけ?」
「はい! 藍さまに貰った課題を帰ってやろうと思っています!」

慌てて姿勢を正し、緊張しながらも確りと答える橙。

「そう…………ならば確りと励みなさいな」
「はい! 有難う御座います! 頑張ります!
それでは紫さま、映姫さま、失礼致します!」

敬愛する主の主に声を掛けて貰った事に、嬉しさを隠す事も無く、元気に下がっていった。

橙が己の主にその事を報告し、荷物を纏め館を離れるまで、紫と映姫は置かれた茶に手を付ける事も無く、互いに無言でその場に座り続けていた。
橙が館から充分に離れた事を気配で察した紫は、いきなり絶叫した。

「助けてらああああああああああああん!」
「…………私は何処ぞの青ダヌキですか。どちらかと言うと白ギツネなのですが…………」

間髪を入れず部屋に現れた八雲藍に、恥も外聞も無く泣きつく八雲紫。
抱きついて来た紫の少し乱れた髪を、優しく撫でながら、白面金毛九尾の狐は、来客である地獄の閻魔に挨拶をした。

「直接顔を合わせるのは久方振りになります。ご健勝そうで何よりで御座います、閻魔様。
 …………お話は式を通じて聞いております」

地獄の十王の下、閻魔の名を冠する者が、大妖とはいえたかが地狐の頂点にしか過ぎない式神に向け、上半身を投げ出したのは、その言葉を聞いた瞬間だった。

「いや、本ッ~当に! 申し訳有りません! いくらウチの上の事が有るとはいえ、お世話になっております八雲家の皆さんにこんな厄介事持ち込んでしまって…………!」

藍は慌てて声を掛ける。

「いえいえ、日頃お世話になっているのはこちらの方で御座います。お顔をお上げください、閻魔ともあろうお方が軽々しく頭を下げるものでは御座いません」
「そ……そうです映姫さま! やめて下さいそんな事!」

藍に追随する様に紫が掛けた声に、ようやく顔を上げる映姫。

「すいません、取り乱しまして…………。しかし本当に情けない話で、勤め人としては上の理不尽には慣れているつもりでしたが、もうどうして良いか……あ、すいません、泣けてきた…………」

黙って差し出されたちり紙を、どうも、と礼を言って数枚つまんだ映姫は、目尻を拭うと、音を立てて鼻をかんだ。
ついでに紫も先程の涙を押さえ、鼻に詰まったものを拭く。暫し室内には盛大な音が響いた。

「あ゛―、お茶淹れてくる」

先程の茶もぬるくなり、藍の分もと、紫がぱたぱたと台所に向かう。
それを見送った藍は、些か真剣な顔をして、映姫に向き直る。

「それで、そのお話は本当なのですね?」

映姫は沈痛な面持ちで首肯した。

「…………はい。まだ日程こそ決まっておりませんが、現在休暇中で下界に降りていらっしゃいます“あの”お二方が、一週間ほど幻想郷に滞在なさる計画がある、と…………」










温かい茶が置かれ、三人は顔を突き合せる様に話し合いを再開する。
文字通り幻想郷の行く末がかかった、これ異常無い程の深刻な事態である。
四季映姫・ヤマザナドゥは、ぽつぽつと事の発端を話し始める。

「今日の朝の事です。仕事を初めて暫くした時、部下の赤鬼が真っ青な顔をして、私に電話だと、取り次いできたのです。その顔は青鬼の顔より青褪めて見えました。
何事かと思いましたが、私宛の電話に出ない訳にも行きません、恐る恐る電話に出てみると、それは何と梵天様直々の電話だったのです」

「梵天様!? あの、天部の!?」

「……はい、閻魔王にもなれば天部とそう変わらぬ位ではありますが、たかが田舎の一閻魔に直接お話頂けるような立場の方ではありません。それが何用かと思えば…………」

茶を口に含み、唇を濡らす。映姫も少し落ち着いて来たようだ。

「R2000という雑誌をご存知ですか? 天部が刊行している聖人向け雑誌だそうですが、その雑誌の企画で、連載作家の旅行記を載せる企画が立ち上がったのだそうです。
そしてその企画の第一弾として、お二方に滞在しているこの国の田舎の生活を体験してもらおうと…………それで旅行先の案として、古い生活が残るこの幻想郷の名が上ったのだそうです」

手の中の湯飲みが傾いて中身が零れているのにも気付かす。呆然と話を聞く八雲の二人だったが、何とか気を取り直し質問する。

「…………ここ、妖怪の里よね? そんな所にあのお二方を呼んでどうなさる気なのかしら?」
「妖怪と土着神の出自は厳密に言えば然程違いはありません、天部の方々もそちらの出自の方も多い事は御存知と思います。何より…………覚えています? 私の方から幻想郷が出来た時に送った報告書の内容を」
「…………色々な地域から妖怪を多く集めてはいる故、妖怪の被害は他の地域より“多少”多いが、然程問題は大きくない。妖怪側の環境の為、現代文明があまり入らない様に現地の妖怪がすこしばかり手は出しているが、人間の生活に問題が出る程度の事は無い、ごく普通の田舎である…………」

「大結界も外来人が迷い込む事もある程度の弱いものですし、中に住む人間を妖怪の為だけに飼い殺しにしている訳でもない、報告書としては何ら問題の有るものではないですが、少々聞こえの良い言葉を並べ過ぎている事も否定できません。
当然妖怪は人を食うものですから、天界や天部の方々がこちらにおいでになる事自体は、何ら問題は有りません。元々我々と貴女方は緩やかに敵対しておりますから、もし多少の、何らかの攻撃が有ったとしても協定の範囲内、問題になる事は無いでしょう…………」

だが、と藍は言葉を継いだ。

「それでも、あのお二方に粗相が有ったとなればそうも言ってられまい」

悲しげに首を振る映姫。

「ええ、あのお二方を敬愛する者は数え切れません、何せ地に遍くそのお心を与えて下さった方々ですから…………。私も敬愛する者の一人ですし、こんな立場でなかったら……緊張の方が強いでしょうが……直接言葉を交わす事を楽しみでなりません」

三人は夢想する、あの方々が幻想郷にいらした時の事を。何も考えていない小妖が、悪戯の一つもしてしまった時の事を。
当然あの方々に傷の一つも付けられようも無いが、その途端飛び出してくる天の軍勢を、仏法の守護者達をまざまざと眼の裏に映し出す。

幻想郷の終末である。



三人は眼を合わせ、地底の業火を消さんとばかりの深い、それは深い溜息を吐いた。

「…………万全の準備をしなければなりませんな。これはこの幻想郷を造った時よりも万全で、厳密に、完璧に、抜かり無く」

藍が、自分に言い聞かせるように呟いた。それに二人が肯く。
この幻想郷は八雲紫の願いから生まれた。しかし長きを生きた大妖とはいえスキマから覗き見る事を本分としていた八雲紫と言う妖怪は、引っ込み思案で、他人と話す事さえ苦手であった。しかし彼女がある時式として手に入れた妖獣は、白面金毛九尾の狐、人と交わり、言葉を操り、かつては大国を意のままに操った妖怪であった。その式の実行力と紫本来の実力が合わさった時、幻想郷は産声を上げたのである。

「何しろその膨大な妖力で、喧嘩の一つもした事が無かったくらいですからね」
「それを言わないでよぅ、藍のいじわる」

妖怪は何より他人からのイメージを重要とする。他の生き物の様に血肉を元として生きている訳ではないからだ。よって相手との喋り方一つを持っても細心の注意を払わなければならない。
妖怪の賢者八雲紫は、式神八雲藍を持って初めてその名と実力を発揮するのだ。






「さて、まず考える事は、お二方の御滞在先でしょうか」
「うん」
「そうですね」

八雲の能力の表を司る妖孤は自然と場を仕切る。あの八雲紫の胡散臭さと底の見えない雰囲気をプロデュースしたのが藍である事を知る者はここの三人以外には殆ど居ない。

「あのお二方は今東京の方にお住まいなのですよね?」
「ええ、東京都立川……松田ハイツ?」

あらゆる場所や空間を物ともしない紫の能力は、情報収集には欠かせない。八雲の裏は彼女の実力を遺憾なく発揮できる舞台だった。

「それならあまり古い造りの家でも不自由かもしれません、何処か良い場所は無いでしょうか?」
「そうねぇ……今の東京に近いなら洋風かしら? …………紅魔館?」

「いや、あそこは悪魔の館ですから」

映姫の突っ込みが入ったが、藍は少し考える。

「まあ、紅魔館自体には無理でしょうが、あの館には腕の良いメイドが居た筈です。何とか滞在期間内だけでも借りられないでしょうか…………?」

藍の言葉に他の二人は顔を見合わせるが、渋い顔で紫が反論した。

「うーん、主人のレミリアさんは話が分かる方だけれど、幾らなんでも難しくないかしら?」
「いえいえ、幾らでも手はあります。罠に嵌めるも良し、脅迫するも良し、実力で黙らせるのも良し、賭けの形にするという手もありますね」

「と、とりあえずどんな子だったか見てみましょう!」

妙な方向に行こうとしている藍を誤魔化す様に、紅魔館が見える隙間を開く紫。相手には決して気付かれずに景色と声が分かる優れものだ。






紅魔館は夕暮れを向かえ、家人が起き出してくる時間を迎えていた。
館の主人は、優秀なメイドを後ろに控えさせ、紅い装飾の散りばめられた自室で御目覚の紅茶を楽しんでいた。その紅茶は当然の様に血の色をしていた。
ほう、と当主レミリア・スカーレットは息を吐く。紅茶の味に満足している様だ。
そのままぽつりと胸の内を呟いた。

「平穏って素敵ね…………」

後ろに控えたメイドが小声で注意した。

「……お嬢様」
「こほん! …………平和とは何と退屈な事か! 血が流れぬ肉が散らぬ悲鳴が聞こえぬ。嗚呼、我が爪が腐って堕ちてしまいそうだ!」

芝居がかった仕草で、茶器を皿に置いたレミリアは、従者に声を掛ける。

「悪魔の走狗にして我が忠実なる下僕、十六夜咲夜よ! 今日の食事には濃い血を用意して頂戴、獲物が最後の悲鳴を上げた時に流れる、己の悲運と呪われし運命に上げる呪詛の様に吹き出した血だけを集めた、澱の様に濃く紅い血をね。
そうでもしなければ平穏のあまりお前の首を捻じ切ってしまうかもしれないよ?」

「畏まりました。無慈悲で無情の運命を司る吸血鬼の中の吸血鬼、スカーレットデビルの名を冠する我が至高の主、レミリア・スカーレットお嬢様。我が命に掛けて、ご要望の通りに」

紅魔館のいつもの風景である。
何度も言うようだが、妖怪や悪魔は、イメージ商売なのである。

その時、別室で電話が鳴った。
珍しい事も有るものである。基本的に幻想郷には電話に使われる回線は無い、それでもレミリアの執務室には電話が置いてあった。それが鳴っているのである。

瀟洒なる従者が消えた、電話の音が止む。暫くして従者はその手に電話を抱えて再び現れた。左手に電話本体を、右手に載せたクッションの上に受話器が伏せられていた。

「…………お嬢様、お電話で御座います」

電話の相手が余程急ぎだったのか、或いは相当の大物なのか、こちらまで持って来るという事はそのどちらかだ。飛び上がりそうになる心臓を宥め、レミリアは受話器をとる前に聞いた。

「誰から?」
「…………サルガタナス様……と名乗られました」

途端にレミリアの顔色が真っ青に変わり、次の瞬間今度は真っ赤になった。そして血を吐いた。

『お嬢様!』

大声を上げる訳にもいかず、さりとて電話を放り出して手を伸ばす訳にもいかず、おろおろとする咲夜を手で制して、レミリアは口元を拭い、受話器を手にとった。

「……お、お電話変わりました。わたくしがスカーレット家のレミリアです」

「……………………はい、はい、成る程、左様で御座いますか……」

咲夜にも覗いている八雲家と閻魔にも内容は聞こえないが、電話の相手はえらく威勢の良い感じの声でひたすら捲くし立てている様だった。

「…………はい、そうですね。では、はい、その様に…………はい、失礼致します」

受話器を耳に当てたまま、肯きを段々深くしていき、最後には最敬礼のように腰を90度に折って会話していたレミリアは相手が切った事が分かると、腰をそのままに腕だけでゆるゆると受話器を本体に返す。

「…………お嬢様?」

咲夜が恐る恐る問いかけると、その体勢のまま、レミリアが声を絞り出すように返事した。

「……緊急事態、全員集合。……それと、胃薬、持ってきて」

そう言ってまた血を吐いた。

「お嬢様ああああああ!!」


パチュリーの薬湯と美鈴の気孔で何とか持ち直したレミリアは家人に先程の電話の内容を伝えた。その内容に声も出ない面々だったが、何とかパチュリーが口を開いた。

「…………要するに、この幻想郷にあの“神の子”が来ると? そういう予定が有り、来た場合の歓迎を、うちがやれ、と。
…………それはもちろんお酒や料理を持っての歓迎では…………無いのよね、恐らく」
「多分…………何回も“そそう”の無いようにって、仰っていたし…………この地には私達以外悪魔の関係者が居ないから、わざわざ旅団長自らご連絡頂いたみたい」
「サルガタナス…………話に聞いていた通りフットワークの軽いお方らしいわね」
「そうね…………フフフ……平穏が素敵だなんで言っちゃったから、誰かが気を利かせてくれたのかしら、神の子相手に戦争を仕掛けろって…………。悪魔の名を冠する者としては最高の舞台よ、全てを殺し、破壊して…………今回だけは後始末の準備も要らないわね。何せ私達が居なくなるのですもの…………ああ、フラン、もう心配要らなくてよ? 心配事は全部無くなるのですから…………」
「ちょ、レミィ!?」
「お嬢様!」

呟きながら段々と目の焦点が合わなくなっていくレミリア。先程治療したばかりだというのに口から己の血をだらだらと流し始める。大騒ぎで治療を再開する従者達。

紫たちは黙って、覗いていたスキマを閉じた。






何とも微妙な空気が八雲の二人と映姫の間に流れる。覗きは悪行だが、まさかこれほど罪悪感に駆られる事になるとは思っても見なかった。
ぽつぽつと、紫が話し始める。

「あの子は昔っから気を使い過ぎる所があるから…………若くして当主の座に着いちゃったものだから、頑張りすぎちゃったみたいでね。
ほら、悪魔の関係の人たちって元々人付き合いが苦手でしょう? そのくせ自分の事になると我侭なところがあるから、責任者の立場って相当大変らしいのよ。その上彼女は親身になって相手の気を使うから…………胃炎はこちらに来る前から慢性的になっていたそうよ」

スカーレットデビルの名前の由来は、その本来の意味に於いて現在の紅魔館の住人以外にはトップシークレットである。

「…………如何に強力な治癒力が有るとはいえ、その分胃酸も強いらしいですからね。友人の魔女に特性の胃薬を処方してもらう事が日課だったそうですし…………」

その話を聞きながら、映姫はふと思いついた疑問を投げかけた。

「では、あの当主には妹が居た筈ですが、その子も何らかの持病が?」

八雲の二人は、悲しげに口を開いた。

「彼女達が幻想郷に移住するそもそもの目的が、その妹さんの事だったらしいわ。
レミリアさんの妹、フランドールちゃんは吸血鬼の上魔術を嗜むほど頭が良かったらしくてね、姉と二人で当主の仕事を分担していたらしいわ。
正式に名前を継いだ姉の方が表向きの仕事を中心に、頭の良かった妹の方が裏方の財務なんかを主に執り行っていたみたい…………」
「ところが当時のスカーレット家は、時勢もありましたでしょうが台所は火の車を通り越して地獄の火車の如くだったそうで…………まだ吸血鬼としても若いあの二人には荷が重かったのでしょう、最後には妹さんが財務管理表を見るだけで…………きゅっとして、ドカーン、と」

「……………………」

「吸血鬼が最も快適で過ごしやすい地下のじめじめした場所で療養していたようですが、近頃は何とか持ち直して、館の中までは過ごす事も増えてきているそうです」
「…………吸血鬼のノイローゼはねぇ……治療法なんて何処にも無いでしょうからねぇ」

「胃炎の姉とノイローゼの妹…………何と痛ましい」

「あ、でも近頃は二人とも気楽に過ごす事も多くなったみたいよ? 吸血鬼異変のときにかなり強引なリストラした事は気に掛けていたみたいだけど、退職者のその後の進路にはこちらもかなり協力したし、紅霧異変の時に立派に努め上げた事でかなり気が楽になっていたみたいだし…………」

罪悪感からか話が妙な方向に行きそうになっているのを、藍が強引に元に戻す。

「兎に角、紅魔館の事はそっとしておきましょう。向こうの歓迎の事については後からの調製でなんとでもなります。
…………メイドの事はひとまず保留という事で!」
「あの状態で従者を引き抜いてしまうと、罪悪感に殺されそうよね……」






「元々のお住まいに近い感じならば、白玉楼という手もありますか」

「そうねぇ、確かに快適に過ごして頂くには最適かもしれないわね…………幽々子なら充分に弁えてくれるでしょうし、ある意味無理も言いやすいわ」
「確かに、あそこならば私の権限も届きます。管理の遣り易さでは一番ではないでしょうか」

そう考えていた面々だったが、ある事に思い至った紫が待ったを掛ける。

「やっぱり駄目、白玉楼は無理」

「何故です? 何が問題なのですか?」

紫が居心地悪そうにしながら、友人の上司に当たる閻魔に理由を話す。

「幽々子の従者に半人半霊の子が居るでしょう? あの子がちょっとね…………」

その娘ならば映姫も面識がある。歳若い事もあり未熟なところもあるものの、真面目で気の良い娘だった筈だ。その子に何の問題があるのか。

「普段はとっても真面目で良い子よ? けれど、たまに発作的に刀を振り回す癖があるのよ。
その時は『斬れば判る』なんて言いながら何でもかんでも斬ろうとする変な癖でね、多分持っている刀の気にでも当てられるのではないかしら。
日頃はその発作が出ない様に、名目でしかない仕事の護衛と剣術指南役とは別に庭師と料理番を任せて庭の木とか食材を切らせて発散させているらしいわ。
…………幽々子も幽霊なのだから料理なんか食べなくても良い筈なのだけれど、あの子の為にね…………偶に胃薬を飲んでいるらしいわ」

幻想郷古参の妖怪、萃香の復帰イベントの際は、特に発作が酷かったらしい。喧嘩が苦手な紫の代わりに主に化けて参加していた藍はその時の事を思い出していた。

「…………今度、お邪魔する際には線香でも持っていきます」

幽霊の嗜好品である、当然腹は膨れない。喜ばれる事だろう。

「その発作が出る可能性がある以上、難しいですね」






「妖怪の山は?」
「一週間滞在するなんて言って見ましょうか? 天狗と鬼が幻想郷から消え失せます」






「ここは目線を変えて、永遠亭とか?」

「ああ…………」

意外と良い案かもしれない。あの屋敷に住むのは月の主従、来訪するお二方とは良くも悪くも繋がりが薄い。全く利害関係が無い者の歓待などあのお二方もここ暫くは経験が無いだろうし、目新しさもあるかも知れない。無論、紫達がお二方の立川での生活を知らないから、そういう考えが出てしまったのだろう。知っていたらどうなっていた事か。

何より、あまり知られていない事だったが、あの屋敷が客の歓待にはうってつけの理由があった。

永遠亭の主従は、無類の世話好きだったのだ。
月の目を盗む為ひっそりと暮らす主従だったが、何処かのブリーダーの如く兎の世話に毎日を費やしている。近頃は月の脱走兵までも世話し始めているのだ。その世話好きの性格は徹底しており、幻想郷の住人が迷い込んできたならばまるで桃源郷の様だったと後に話すくらいである。それでも余り評判になり過ぎない様に自重しているレベルである。


竹取物語には語られなかった部分がある。
月の汚れ無き都に住まう汚れ無き姫は、一切の雑事からも解放され、ただ其処に居るだけの存在だった。いや、それだけで良かった。
それに疑問と不満を持ったのはその姫当人だけだった。
姫は己が師に相談し、一計を案じる。己の欲するもの何一つ手に入らぬ都になど未練は無かった。体良く地上に降り立った姫の前に現れたのは―――――――。

老々介護の老人夫婦。

数え役満である。明日の薪にも不自由する、貧乏生活の裏ドラも乗っていた。
姫は狂喜する。瞬きする程の間に大きくなった姫は己が欲望のままに動き出す。老夫婦の尽きかけた寿命を倍にするかの如く、遥か先を歩んだ月の知識による介護。今だ貨幣経済さえ未熟な世界での超技術と経済哲学による財テク。人々はそれを竹から金が出たかの様だと言い表した。
やがてその美貌と能力に地の都の貴族達が目を付ける。その女性を手に入れる手段としてはごく真っ当な方法として、彼らは次々に結婚を申し込む。
しかし、欲に目が眩んだ姫にとっては、夫さえも世話の対象でしかなかった。直接乗り込んできた五人全てを手中に納めんと、己が持ち込んだ秘宝を使い盛大な出来レースを持ちかけようとした。
しかしそれは姫にとって意外な方向で頓挫する。彼ら五人は、姫が思うよりも愚かで、そして情熱に溢れていた。言いかけた話の最中で飛び出していく情熱溢れた候補者達は、それでも何とか不可能を可能にしようと姫から見れば愚か極まりない手段を用いて喰らいつく。

なよ竹のかぐや姫はそれで目が覚める。お世話は相手の立場を考えてしなければならないものだ、と。
反省した姫はその後帝からの求婚も断り、月に帰る決心をする。しかしそれは余りにも遅過ぎた。月は既に彼女の権利を剥奪、月に帰れば幽閉である。彼女にとってそれは昔の月の生活と何ら変わりが無いものだった。
それに絶望する姫であったが、彼女には既にどうしようもなかった。
救いは彼女に全ての技術を与えた師匠であり、月の頭脳と呼ばれる賢人であった。

師曰く『究極のお世話にとって、その相手以外の全ては利用するものでしかない』

月からの使者は誰一人還る事が無かった。そして二人は歴史の闇に消えた。


「…………逆にやばくね?」
「永遠亭、却下、と」

迷いの竹林とは月の追っ手から彼女達を守る壁であると同時に、彼女達の欲望から人里を守る役目も果たしている。彼女達の見張り役として、因縁もあるという自称焼き鳥屋を配し、人里の守護者上白沢慧音と密に連絡を取る事で何とか均衡を保っている状態なのだ。
彼女達に匿われた元月の軍人だった兎など、永遠亭主従の下にも置かぬ世話の嵐に腑抜けてしまい、近頃はまるでそこらの女学生の様になってしまっていた。






「地獄には…………無理よね?」
「元来過ごし易い場所ではありません。
何より、休暇中の方を職場にご案内する気ですか?」
「御尤も」






「規模は兎も角、立場的には近いものがあるし、守矢は…………」
「…………守矢の二柱が衰えた原因の元締めですよ…………?」
「あうち」


「まあ、それは守矢の方々も大して恨みには思っていないでしょうが…………それ以外にも問題があります」
「問題?」
「ええ、あのお二方が幻想郷に参られるという事は、一時的か永続的か、守矢への信仰が激減する可能性があります。二柱が消滅するほどでは無いでしょうが、ここに来る前程度に力が落ちる事は間違い無いでしょう」

紫が眉を顰め、計算を始める。

「あー、それは考えてなかった…………とりあえず消滅する事は無さそうね。ただし、人里に一週間お二方が滞在されると危険なレベルにまで落ちるわ」
「はい、こちらの計算でもそう出ています。…………しかし、その間守矢はどうしましょうか?」
「はて? 危険は無いのでしょう?」

疑問に口を挟んだ映姫に、八雲の二人はそういえば、と彼女に説明をする。

「結界外に居た時ほど力が下がる事が問題なのよ」
「昔の結界外に居た時の二柱を見た事が有るのは私達だけですからね、疑問に思われることでしょう。当時の守矢の神はお二人とも…………そう…………何といいますか」
「…………あまりの衰えに、その日の朝の事も覚えていらっしゃらない事も……多々、ね」

朝は日の昇る前からうろうろ、何をするでもなく家の中をうろつき。朝餉の後は縁側でぼおっと、昼過ぎにはうとうと、夕方水戸黄門を見て、夕餉。その後は早々に床に就くも、眠れずに家の中をふらふら、やっと日が変わる頃に眠る。

「早苗さんや、朝のお供えはまだかな?」
「……先程お召し上がりになりました」

「見当たらんが、あいつは何処に出かけておるのかね?」
よくよく誰かと聞いてみると五代前の風祝の事だったり。

終始こんな感じだった。

「あら、その時のパンフレットが出てきたわ」

紫の手には現代風の小冊子が握られていた。表紙は幻想郷の森と山々の写真、其処に目立つ字体でこう書かれていた。


『特別養護老神(とくべつようごろうじん)ホーム ~幻想の郷~』


「ああ、覚えています。提携組織として私の名前も乗っているんですよね、刷り上った時送って貰った物を少し読みましたが…………」

そう言ってぱらぱらと内容を流し読む映姫。

「そうなのよ、お客様第一号として気合入れたんだけれどね…………。あんなに元気になるとは思っても見なかったわ」

利用者サービスの一環である弾幕異変に三回連続参加するほどのハッスル振りである。

「ええ、最初は完全介護プランで進めていたんですけれどね、とりあえず今はケアハウスプランで落ち着きました。介護人も自前ですし、余り収益は望めない事が分かっていまはこのプラン全体が停止中です」

頑張ったんだけどねー、と八雲の二人が顔を見合わせる。

映姫も冊子を返し、話を元に戻す。

「それで、実際の対策はどうします? そんな状態ではあそこの風祝一人では手に余るでしょう」
「そうよねぇ…………」
「いっその事その期間、まとめて永遠亭に預けましょうか?」
「それ採用」

これにて一件落着である。葵の印籠が出るまでも無かった。






その時夜も更けてきたというのに、門から来訪の声が上がった。

「誰だ? この忙しいのに…………」

ぼやきつつも藍が応対に出る。外用の顔を作り、口調を改める。

「あいにく我が主は既にお休みになっております。一体この夜更けに何用で…………」

比那名居天子は肩で息をしながら、瞳をきらきらと輝かせて、声を弾ませつつ、両手で胸に抱いていた本を突き出す。

『悟れ! アナンダ』第一巻

「あっ、あの! 作者の方がこちらに来ると聞いて…………! 一目! 一目で良いからご挨拶を! あっ! それとできればサインを…………」

この本に…………と、話している所で藍は静かに門を閉じた。






「何だったの?」
「……………………」

藍は静かに首を振って、それ以上の話を拒んだ。
気を取り直して会議が再開される。

「地底は論外として話が済みました」
「いっその事いらん妖怪全部地底に押し込みましょうか」
「誰が押し込むのよ」

そこで映姫が思い出した。

「先程紅魔館には悪魔側から連絡が入っていたのですよね? 既にこの事は関係者の中では話が通っているという事でしょうか?」
「…………既に関係各位が動いているとなると、こちらの対応も急がなければなりませんね。確認すべきかもしれません」
「それなら…………」

と、紫がまた覗き用のスキマを開く。

その先は、ある寺だった。

夜も更けてきたというのに、静謐を旨とする寺院は、上に下にの大騒ぎだった。
門主の怒号が響き、住人の右往左往する足音が響き渡る。

「一輪! あれ何処にやったかしら!?」
「確か倉の中です! 後で探して見ます! ああ、小傘ちゃん! それが終わったらこっち手伝って!」
「えー、まだ終わんないよー!」
「ぬえさん、ちょっとこちら手伝ってもらえますか!?」
「アンタさっきから何時間かかってんの!? 貸しなさい!」

「おーい、夜食のカレーが出来たぞー」
「お前寺の中で何作っとんじゃー!」

大混乱である。

小さな賢将、毘沙門天の使い、妖獣ナズーリンは手こそ休み無く動かしながらも、首から上は呆然としていた。

「…………どうしてこうなった」

話は今日の昼過ぎにまで遡る。
彼女の元に毘沙門天からの使いが来たのだ。それ自体は珍しい事ではない、特にここ命蓮寺を敬愛する聖白蓮が開いてからは信仰の為もあり、使いが来る事は珍しくなかった。
内容もある意味いつも通りだ。

『あの方がそっち行くかもしれないんで、歓迎ヨロシク!』

相変わらず内容が簡素過ぎて必要なものが足りていないし、それ以前に意味が分からない。
あの方って誰だ、そっちとは命蓮寺で良いのか、かもしれないって決定していないのか、それなのに歓迎って具体的に何を如何すれば良いのか、…………ヨロシクって便利な言葉だよね。

ナズーリンはいつもの様に具体的な内容を求む、と返信して、寺の仕事に戻った。
そうすれば事情を理解している毘沙門天様の部下がきちんとした指令書にして送り直してくれる筈だ、それまでこの話は奇麗に忘れておく事にした。
しかし必要な事まで忘れていたのは痛恨事だった。この寺にはもう一人、毘沙門天からの使いが来る者が居たのだ。

恐らく内容は似たようなものだった筈だが、毘沙門天の化身が一体、寅丸星は大急ぎで寺の門主、聖白蓮に報告したらしい。そしてナズーリンには何がどうなったか一切判らないまま、歓迎会の準備が盛大に、大急ぎで始まった。

視線を辺りに向けると、白蓮と雲居一輪が倉から仏具を引っ張り出している。寅丸星は封獣ぬえと紙の輪と華で寺の飾り付けをしている。良くこの寺に遊びに来ている妖怪、多々良小傘は捕まって紅白の垂れ幕を縫わされていた。
雲山は二畳ほどもある半紙に、『熱烈歓迎』と書いた垂れ幕を量産していた。
暫く前から見当たらなかった村紗水蜜は夜食を作っていたらしい、というかお前何処から牛肉なんぞ手に入れてきた。ここは寺である、妖怪にも開かれている為、生臭物が一切置いていないという訳ではないが、牛の肉など人里でもあまり見かけない。五葷断ちを考えれば香辛料など論外である。

ナズーリンの制止の声など届きようも無かった。一体ここの住人は何の準備をしているのやら、未だ具体的に誰が何時来るのかさえ分からないと言うのに。

どうにも仏教徒とは偉くなればなる程、人の話を聞かず、突っ走ってしまう傾向にあるのではないか。何せこの地に寺を開く原因になった聖白蓮の封印された経緯にさえ、ナズーリンは未だ疑問があけないのである。
確かに彼女は当時から忌避される妖怪にも門戸を開いていた。しかしあの時集った村人も、とりあえず対妖怪の為の自衛の武器は持っていたが、事情を聞く気は有った筈だ。少なくともナズーリンにはそう見えた。しかし白蓮は自ら封印される道を選び、寅丸星はそれを手伝った。
集った村人達も呆然とする事しか出来ないほどの早業だった。
まあ、結果は変わらなかったかも知れないが、兎に角結論が早かった。

ナズーリンが思わず心中で『ちょ……(人の話を)聞けよ!』と突っ込みを入れたほどだ。

大体、毘沙門天も兎に角話が早い。多聞天って別名は人の話を良く聞くという意味ではなかったのか。問答無用って仏教用語だったっけ。

「ナズーリン、何か?」

その化身は粗忽者を絵に書いたような人物だし。まずその手の中の金槌としゃもじを置け、何をするつもりだ。

「いえ」

そういって手元の作業に集中しようとする。既に紙吹雪は籠一杯になっていた。これを一気に散らしてしまうとは諸行無情である。

「…………なにか、お偉いさんのやる事は察しろってか、覚れと、仏門らしく悟れってか。業務内容は書面で保存すべきではないのか、詳細な報告書は無しで良いってか、ほうれんそうは無言でOKってか……」

ブツブツと呟きながら手元の紙を切り刻んでいくナズーリンを見て、彼女の主人である寅丸星は、何かを察したのか、自愛に満ちた微笑を向け、そして自分の仕事に戻っていった。






静かにスキマを閉じた三人は、頭を抱えていた。

「…………どうしてこうなった」
「…………天部って…………」
「…………いや何かほんとスミマセン…………」


責任者が動かなければ物事は進まない。気力を振り絞って藍が立ち直る。

「とりあえず! こちらとしては具体的な内容を手に入れなければ進みません!
…………映姫様は至急来訪される具体的な日時と、滞在中の希望を問い合わせて下さい。滞在先は命蓮寺は人里も近いので無理ですが、一日程度なら出来ない事も無いでしょう。無論、お二方のご希望に添う形でなければなりません。御身の回りの事は八雲で何とか廻してみます、先んじて問題の有りそうな妖怪の対策には博麗を使う方向でリストアップを、郷の案内などには映姫様の所にも人員を出して頂く事になるでしょう。
結界や信仰に関する影響は紫様に試算して頂きます、数日も貫徹すれば出来上がりましょう。紅魔館、命蓮寺その他への連絡、通達は様子を見て私が行います」

「分かった、頑張るわ」
「…………諒解です。
いや、本当に有難う御座います、私一人ではどうしようもなかった。八雲のお二方が居てくれたお陰です。私の就任当時から本当にお世話になりっぱなしで…………」

そういって深々と頭を下げる映姫。八雲の二人はにこやかに首を振った。

「とんでもない。幻想郷の閻魔が貴女で私達も本当に助かっています、これからも良いお付き合いが出来ますれば嬉しい限りですわ」
「映姫様のように話のお分かりになる閻魔様であった事は我々にも幸運で御座いました。お世話頂いているのはこちらの方です」

四季映姫・ヤマザナドゥは閻魔の中でも若手である。そのため閻魔になった当時は、その環境に慣れきれず、体調を崩す事が有った。それを見た彼女の上司である閻魔王は、仕事の少ない幻想郷の閻魔の職を彼女に薦めた。
それは対外的には左遷にも等しい人事であったが、映姫はそれを受ける。
そして幻想郷には自分達の為に閻魔と誼を結びたがっていた八雲が居た。八雲の二人と新たな閻魔が近付くのには時間は掛からなかった。
八雲紫と四季映姫は意外と馬が合った。己の対人能力に自信が無い二人は良く愚痴を言い合った。八雲藍はその経験と能力で二人を影に日向に助けた。

外面的には仏法と死者の守護者である閻魔、四季映姫と、仏道とも人道とも外れた存在である妖怪、八雲紫の仲は、良くはない。
滅多にある事ではないが、外でこの二人が遭えば、説法を唱える映姫から逃げる紫といった構図になる筈だった。

この二人の仲を知る者は、恐ろしく少ない。


日が変わろうかという時間であったが、映姫は八雲家を辞した。
やるべき事は多い、寝る間さえ無いほどの忙しさは責を持つ能士の常である。
映姫は翌朝から通常の勤めが有ったし、天部への問い合わせの文を認める必要が有った。
紫は幻想郷の結界を保持する役目があったし、これは毎年冬の時期一杯を使って行われる事だった。
藍は幻想郷の管理者としての顔を目一杯に使って対策に乗り出す。時には紫の顔を使う事も珍しくない。分身した八雲藍を従え、幻想郷管理者は各地に顔を繋げる。






さて、往々にして理不尽とは自分の上位者よりもたらされるものである。

それから数日後、四季映姫の元に届いた文には、こう書かれていた。

『あれ中止』

ここ暫くの重圧と、持病の神経症から来る衝撃に、四季映姫・ヤマザナドゥはその場で気を失った。

















後日の事である。映姫か倒れた事を聞きつけたらしく、それなりに大騒ぎであった、ある人物から手紙が送られてきた。

曰く、天部の梵天が強引に話を進めていたらしく、こちらの予定的に無理があった事もあり、断ったのだが、そんな大騒ぎになっていたとは知らなかった。そちらには多大な迷惑だった事は察する事が出来る、お詫びと共に、身体を労わる事を友人と共に願う、と。

届けてくれた使者は、当人達が心配していた事を伝え、『閻魔の人たちって我慢し過ぎる所があるからねぇ…………』『ただでさえ熱い所なんだから水分補給はこまめにネ!』と仰っていた事も伝えてくれた。


四季映姫は仕事が終わるや否や、一緒に送られてきた『東京ウドラ』を持って、礼状の相談の為、八雲家に向かった。

幻想郷は今日も平和である。しかし平和とは無償で手に入るものではない、その裏には多くの者達の血と汗と、胃や神経の犠牲と、根性や何やらで築かれているものなのである。


どっとはらい
「パンチとロン毛のロン毛の方の誕生日にも何にも無く、当日6巻手に入れ損ねた事もあり、イライラしていた。それでついカッとなってやった。今は反省している、関係者と信者の方々には深くお詫びしたい」などと供述しており、現在は大人しく捜査員の質問に答えているとの事です。以上、立川警察署前から…………。


はじめまして、創想話には初投稿になります。

内容はクロスオーバーのようであり、そうでないような微妙なものになっておりますが、実際来てもらっても困る気がしたのでこんな感じになってしまいました。

あの本を読んだ方なら一度は考える、これを信者の人に見せたらどんな反応が返ってくるか…………? という欲求を東方信者の前で試すというまさに神も恐れぬ所業です。

いや、ほんとゴメンナサイ。

叱られたら泣きます。泣いて謝りますのでどうか許してください。



中身はほんのりえいゆか、ゆかえいの香が漂っている気もしますが気の所為です。二人とも大人なんですから普通の付き合いです。

文中はあえて突っ込みを控えめにしております。彼らの大元締め、立川の二人が居なければこれくらい暴走しっぱなしに違いない。
イエス・キリストと釈迦如来の突っ込みと気遣いは、まさに世界の福音だったのであろう…………。


寿命も無く延々続くエンドレス労働…………妖怪でも心労が堪ろうってもんです。
責任ある立場の仕事なんてやる気になれば幾ら時間が有っても足りないくらい大変です。世の管理職の皆様には頭が下がります。





…………だから社長、はやく給料下さい。




 追伸

何か喚く狂人さんからネタ拾ってもらった気がするが気のせいですかね!?

…………これは何か、新人が大御所に可愛がってもらったって事ですかね?
すいません同名で理想郷で妙なクロスオーバー書いた事あります。
後ほど楽屋に何か立川土産持ってご挨拶させて頂きます。
へいすけ
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コメント



0.1320簡易評価
1.60名前が無い程度の能力削除
和洋最高神コンビか。実際に来たら面倒な事になってたろうし、出さなくて正解だった。
4.80奇声を発する程度の能力削除
久々にあの漫画を読みたくなったww
5.100名前が無い程度の能力削除
うん、ゆかりん&映姫様がパニック起こすのも仕方が無いわw
10.100名前が無い程度の能力削除
上の事情に振り回される現場の人間ってのは大変だよね。
11.100名前が無い程度の能力削除
神は天にいまし、世はこともなし ですな
14.100名前が無い程度の能力削除
ブッダ様は博麗神社に泊めてもらえば断食苦行で喜ばれる。
イエス様は永遠亭にお邪魔すれば姫様とネトゲして愉しめると思うがどうだろう。
18.80名前が無い程度の能力削除
おもしろい。これは新鮮だ。
「あの漫画」ネタに限らないあのお二人ならば、また違った大騒ぎが見られるでしょうな。
19.100名前が無い程度の能力削除
面白かったー。ようこそ創想話へ。次のお話も楽しみにしてます。
22.90名前が無い程度の能力削除
独自解釈が色々と面白い
藍様実は萃夢想出てたのか。スカーレットでビルの由来とか、数え役満とか
永遠亭の秘密も衝撃的だw
23.100名前が無い程度の能力削除
面白かったです!
あの漫画テイストで東方キャラやエピソードを描いてるもんだから新鮮でした。
この紫と映姫様は好みですw
25.50名前が無い程度の能力削除
うん、面白かった。凄く面白かったけど東方キャラが惨めすぎて鬱になりました。
26.90名前が無い程度の能力削除
あの漫画は読んだことないけど幻想郷の慌てぶりと、どこか漂う世知辛さが好きです。
28.80名前が無い程度の能力削除
テルマエ・ロマエとのクロス物もそうだが、
「現代×それ以外」のクロス系の漫画に東方を混ぜる試みはおもしろくてたまらん。

しかし、やはり東方キャラが右往左往しすぎて少し惨めに感じた。
まぁそこがギャグの肝であるんだけれども。
32.100万年削除
救世主は駄目だ!
絶対張り切ってスペルカード参戦するも、
1.チルノあたりにポカミスしてしょんぼり
2.取巻き激怒
3.幻 想 郷 滅 亡 の 危 機
4.ゆかりん、ゲッシャーの悲劇再び
になってしまう!
35.100名前が無い程度の能力削除
あぁ、天界で大人気なんだったっけ『さとアナ』……。
42.100名前が無い程度の能力削除
わろた
44.100名前が無い程度の能力削除
天子かわいい天使か
46.100名前が無い程度の能力削除
散りばめられた小ネタに終始楽しませて頂きましたw