注意書き
一、初投稿、初二次創作SSです
一、さとりんがあんまり自重しません
一、この作品により作者の想定外の事態が起こった場合についての補償は致しかねます
嫌悪感を抱いたら即座にブラウザバックできるよう万全の態勢を整えたうえでお読みくださいませ。
「ところでお姉ちゃん」
「何かしらこいし」
「今日はクリスマスです」
妙に澄ました口調でこいしが話し出す。
「そのようですね」
三日程前から燐や空がぱたぱたとはしゃいでいた。空が鳥の丸焼きー、とはしゃいでいたのだがどうしたものか。
「クリスマスとは何が起きても不思議ではない日のことを指すらしいのです」
「そうなの?」
それは初耳。
「そうなの」
何故か胸を張って答えるこいし。
「と、言うことで」
きょとんとしている私の前に取り出されたのは、よくわからない材質でできたコードに繋がれた青色の――
「第三の眼、開いてみました!」
じゃじゃーん、とそんな効果音が聞こえてきそうな感じに出てきたその瞳は、しっかりと開いていた。
眼を開いたこいしなんて久しぶりに見るなぁ、とかこっちの瞳も翠色だったなぁ、なんてどうでもいい思考が生まれては消える。
「おお、お姉ちゃんの心が読める~」
そう言われて初めてああ、心が読まれてるんだ、って意識しちゃって、何を考えたらいいのやら。
とりあえず――こいし、すきですよ、と。いつも思ってることを心に描く。
「ん。私もすきだよ」
いつもは耳から入ってくるこいしの言葉が、直接心に流れ込んでくる。
「ね、私の気持ち、ちゃんとお姉ちゃんに伝わってる?」
ちょっぴりの不安と、期待と。そんな感情に交じって、すき。だいすき。そんな感情がストレートに流れ込んでくる。
「ええ。伝わってるわ」
お姉ちゃん、好き。
私も、だいすき。
私のほうが。
私だって。
……馬鹿。
そっちこそ。
私のとこいしのと、心が溶け合っていくみたいで。もうどれがどっちの心なんだか分からない。
「お姉ちゃん、いい?」
いつの間にかこいしの手が私を服の上から撫ぜていた。寝間着の薄い生地の上からの刺激に、気持ちいいけどもどかしい感覚に包まれる。
「んぅ、やぁ……」
じわじわと侵食するように、私の服の下に入ってくる。肌の上を滑る、火照った肌にはちょっと冷たいこいしの指。それが触れているという事実だけで溶けてしまいそうになる。
「こいし、その、えっと」
「わかってるよ、お姉ちゃん」
手の動きをいったん止めて、私の耳元に口を寄せる。
「もっと、して欲しいんでしょ?」
ああ、心の中、全部知られちゃってるんだ、って。全部顔がかぁっと朱に染まるのが自分でもわかった。
私が何か応える隙もなく、こいしの手が私の服のボタンにかかる。
一つずつ、焦らすようにゆっくりと外されて、
――目が覚めた。
「うう、なんて夢……」
目覚めたばかりだというのに心臓の鼓動が速くなっている。並行世界のどこかには夢が覚めなかった私も――いや、やめておこう。
そういえば昨日は久しぶりに帰ってきたこいしと一緒に寝たのだったか。隣から聞こえてくる規則的な寝息で思い出す。
まさか、と思いこいしの体から伸びる青いコードを手繰るけれど、その先にある瞳はやはり閉じたままで、ほっとしたような残念なような。
なんで私だけこんなにもやもやとせねばならんのか、と気持ちよさそうに寝ているこいしの頬をぷにぷにつついてみる。それだけでは足りずに指で唇をなぞってみたり、うなじにそっと口づけてみたり、首筋に舌を這わせてみたり。まずい。だんだん止まらなくなってきた。
どこかへ行ってしまいそうな理性をなんとか引き止めて、ついでにこいしを抱き寄せる。
温かくて柔らかくていい匂いがして、すごく幸せ。
「んぅ……お姉ちゃん?」
眠たげな声とともにうっすらと瞼を開くこいし。
「ごめんなさい、起こしちゃった?」
「んー、そんなことないよー。さっきから起きてたから」
それならよかった。じゃない。よくない。
「さっきって……どのあたりかしら?」
「ほっぺたをつつかれたあたりだよ。お姉ちゃんにああいうことされるのはすごく気持ちよかったけど、まだ朝だから続きは今夜、ね」
ちょん、と私の唇に人差し指を押し当てておどけて見せる。いつもならいい切り返しの一つや二つ即座に浮かんでくるのに、頭に浮かぶのは単語にならない言葉だけ。
耳まで真っ赤にしてあうあう言っている私の背中に、こいしの腕が巻きついてくる。
「ね、お姉ちゃん」
「なにかしら」
「だいすき」
耳元で囁くようなこいしの声は、でもはっきりと私の鼓膜を揺らす。
夢の中の光景が脳裏に浮かんで、胸のあたりがきゅう、と締め付けられるようになって、顔が熱くなって、何か言葉を返そうとしても口がぱくぱく動くだけで。
今まで何度も同じ台詞を言われたけれど、いつになってもこんな反応しかできないのは私が悪いのではなくこいしがいけないんだ、なんて。嬉しいのと幸せなのとでぐちゃぐちゃになる。
「こいし」
やっとの思いで言葉を絞り出す。
「私も、だいすきよ」
言った瞬間に笑顔になるこいしを見たら、もうそれ以上はもう何も言えない。何も考えられない。頭の中がこいしでいっぱいになる。
あ、お姉ちゃんの心臓、いつもより速く動いてるよ、なんて。そんなことを言いだすからいよいよ訳が分からなくなって、そんなわけで誰かが部屋の戸を叩いていたことにも気付かなかった。
「さとり様大変です!」
何度ノックしても返事がなかったからだろうか、蝶番ごと吹き飛ばすかのような勢いで開かれるドア。転がり込むように部屋に入ってきた燐は、初めて人化けした時のようなハイテンションで。
「外、見てみてください!」
言われるままにカーテンを開くと窓の外には。
「あら」
「雪だー」
真っ白に染まった庭が眩しくて目を細めた。地底に雪が降るなんて珍しい、というか私の知る限りでは初めてのこと。
「雪ですよ雪! 地底で雪が見られるなんて」
猫は炬燵でなんとやら、は火車には関係ないようで。そんなにはしゃがなくても、地上に行けばいくらでも見られるだろうに。当人が楽しいならばそれでいいのだけれど。
「雪だよお姉ちゃん。どうやって降らしたんだろうね」
ここにも楽しそうなのが一人。あんまり窓に近づくものだから、吐息がガラスにかかって曇っている。
寒さを気にしないペットたちが庭でわいわいやっているのが見える。人化け出来る子も出来ない子もめいめい楽しんでいるようだ。
「ということで私はお空と遊んできますねっ」
そう言って燐が出ていくと、部屋にいるのは元通り私とこいしだけ。
「お姉ちゃんはさ、雪を見るのは何年ぶり?」
私は一昨日、地上で見たばかりだけど、と窓の外を眺めながらこいしが訊ねる。
「そういえば、何年ぶりかしらね」
こいしと出掛ける以上に久しく、雪なんて見ていない。
雪にはあまりいい思い出がない。地上に居た頃、この季節はこいしと二人きりで過ごすにはあまりに寒すぎた。暗い冬の夜を照らしてくれるのは僅かばかりの灯だけで、暖をとるものなんてあるはずもない。妖怪だからそれなりに丈夫ではあったけれど、寒い事に変わりはなくって。クリスマスなんて知らなかったし、お正月だからと特別何かしたこともなかった。
そんな昔々の記憶が、全ての音を、全ての色彩を消しさるように静かに降りしきる雪とともに脳裏に焼き付いていて、雪の降る様をじっと眺めていると、じわじわと心の底の方からそれが蘇ってくるから、冬は普段以上に地上に出ないようにしていたのだった。
「雪は、あまり好きじゃないから」
冷たいし、と笑って答える。上手く笑えている自信はない。
「昔はさ、私も好きじゃなかったんだ」
目線を窓ガラスの向こうへ向けたまま、冷たいもんね、と微笑む。
「でも、お燐とかお空がああやって楽しそうにしてるのを見てたら、私も楽しまなきゃ損だな、って思ったの」
地上でも、人里の子供たちがみんな雪が降るのを喜んでてさ、と。
そこで言葉を切り、窓を開ける。
冷たい空気が毛布の中まで流れ込んできて、少し身震い。
「ほら」
そう言って差し出された手のひらを見ると、寝間着の薄い生地の上に、一片の雪が乗っかっていた。
「雪の結晶。綺麗でしょ」
今度は私のほうを見て、微笑んだ。
遠くから見れば白い薄片でしかないそれは、近くで見ると精巧な硝子細工のようで、じわじわと消えてしまうのが惜しいくらい。
ああ、雪の一つ一つはこんなにも綺麗だったのか、と。
「ええ。綺麗、ね」
そう答える頃には、さっきまであったものは一粒の雫へと変わっていた。
「だからさ」
素直に楽しめばいいんだよ。昔っからお姉ちゃんはいろいろ考えすぎるところがあるもん。そんなんだからみんなに気難しそうって言われちゃうんだよ、って。
そう言うこいしはやっぱり私の妹なんだって、心が温かくなる。
「こいし」
わしわし、とこいしの頭を撫でてやると
「んー?」
むぎゅ、と私の胸に顔をうずめてきた。
「ありがと」
わしわし。
「んー」
むぎゅ。
「だいすき」
わしわし。
「ん」
むぎゅう。
猫みたいに目を細めるこいしが可愛くて、ずっとそうしていたかったけれど、
「それじゃ、お姉ちゃんも外で遊ぼ?」
って言うその瞳が、わくわくと擬音が聞こえてきそうなほどに輝いていたから、
「……こいしがそう言うんなら、仕方ないわね」
外に出るなら支度しなくちゃと、こいしから手を離す。
鎌倉も雪だるまも作り方なんて知らないから、いろいろ教えてもらわなくちゃ。
「よしよし、素直なお姉ちゃんにはご褒美だね」
ご褒美ってペットじゃあるまいし、と思った次の瞬間にはこいしの顔が目の前にあって、エメラルド色の瞳に淡い紫が混じっていて。
「んむ……」
触れ合っていたのはほんの僅かな時間だったけれど、柔らかな感触と甘いこいしの味は唇が離れた後も消えずに残って。
「そうそう。雪も綺麗だけど――」
いったん離した顔を今度は耳に近づけて、
「お姉ちゃんのほうが綺麗だよ」
そう言って笑うこいしを、
「馬鹿」
とだけ言ってもう一度抱きしめた。
一、初投稿、初二次創作SSです
一、さとりんがあんまり自重しません
一、この作品により作者の想定外の事態が起こった場合についての補償は致しかねます
嫌悪感を抱いたら即座にブラウザバックできるよう万全の態勢を整えたうえでお読みくださいませ。
「ところでお姉ちゃん」
「何かしらこいし」
「今日はクリスマスです」
妙に澄ました口調でこいしが話し出す。
「そのようですね」
三日程前から燐や空がぱたぱたとはしゃいでいた。空が鳥の丸焼きー、とはしゃいでいたのだがどうしたものか。
「クリスマスとは何が起きても不思議ではない日のことを指すらしいのです」
「そうなの?」
それは初耳。
「そうなの」
何故か胸を張って答えるこいし。
「と、言うことで」
きょとんとしている私の前に取り出されたのは、よくわからない材質でできたコードに繋がれた青色の――
「第三の眼、開いてみました!」
じゃじゃーん、とそんな効果音が聞こえてきそうな感じに出てきたその瞳は、しっかりと開いていた。
眼を開いたこいしなんて久しぶりに見るなぁ、とかこっちの瞳も翠色だったなぁ、なんてどうでもいい思考が生まれては消える。
「おお、お姉ちゃんの心が読める~」
そう言われて初めてああ、心が読まれてるんだ、って意識しちゃって、何を考えたらいいのやら。
とりあえず――こいし、すきですよ、と。いつも思ってることを心に描く。
「ん。私もすきだよ」
いつもは耳から入ってくるこいしの言葉が、直接心に流れ込んでくる。
「ね、私の気持ち、ちゃんとお姉ちゃんに伝わってる?」
ちょっぴりの不安と、期待と。そんな感情に交じって、すき。だいすき。そんな感情がストレートに流れ込んでくる。
「ええ。伝わってるわ」
お姉ちゃん、好き。
私も、だいすき。
私のほうが。
私だって。
……馬鹿。
そっちこそ。
私のとこいしのと、心が溶け合っていくみたいで。もうどれがどっちの心なんだか分からない。
「お姉ちゃん、いい?」
いつの間にかこいしの手が私を服の上から撫ぜていた。寝間着の薄い生地の上からの刺激に、気持ちいいけどもどかしい感覚に包まれる。
「んぅ、やぁ……」
じわじわと侵食するように、私の服の下に入ってくる。肌の上を滑る、火照った肌にはちょっと冷たいこいしの指。それが触れているという事実だけで溶けてしまいそうになる。
「こいし、その、えっと」
「わかってるよ、お姉ちゃん」
手の動きをいったん止めて、私の耳元に口を寄せる。
「もっと、して欲しいんでしょ?」
ああ、心の中、全部知られちゃってるんだ、って。全部顔がかぁっと朱に染まるのが自分でもわかった。
私が何か応える隙もなく、こいしの手が私の服のボタンにかかる。
一つずつ、焦らすようにゆっくりと外されて、
――目が覚めた。
「うう、なんて夢……」
目覚めたばかりだというのに心臓の鼓動が速くなっている。並行世界のどこかには夢が覚めなかった私も――いや、やめておこう。
そういえば昨日は久しぶりに帰ってきたこいしと一緒に寝たのだったか。隣から聞こえてくる規則的な寝息で思い出す。
まさか、と思いこいしの体から伸びる青いコードを手繰るけれど、その先にある瞳はやはり閉じたままで、ほっとしたような残念なような。
なんで私だけこんなにもやもやとせねばならんのか、と気持ちよさそうに寝ているこいしの頬をぷにぷにつついてみる。それだけでは足りずに指で唇をなぞってみたり、うなじにそっと口づけてみたり、首筋に舌を這わせてみたり。まずい。だんだん止まらなくなってきた。
どこかへ行ってしまいそうな理性をなんとか引き止めて、ついでにこいしを抱き寄せる。
温かくて柔らかくていい匂いがして、すごく幸せ。
「んぅ……お姉ちゃん?」
眠たげな声とともにうっすらと瞼を開くこいし。
「ごめんなさい、起こしちゃった?」
「んー、そんなことないよー。さっきから起きてたから」
それならよかった。じゃない。よくない。
「さっきって……どのあたりかしら?」
「ほっぺたをつつかれたあたりだよ。お姉ちゃんにああいうことされるのはすごく気持ちよかったけど、まだ朝だから続きは今夜、ね」
ちょん、と私の唇に人差し指を押し当てておどけて見せる。いつもならいい切り返しの一つや二つ即座に浮かんでくるのに、頭に浮かぶのは単語にならない言葉だけ。
耳まで真っ赤にしてあうあう言っている私の背中に、こいしの腕が巻きついてくる。
「ね、お姉ちゃん」
「なにかしら」
「だいすき」
耳元で囁くようなこいしの声は、でもはっきりと私の鼓膜を揺らす。
夢の中の光景が脳裏に浮かんで、胸のあたりがきゅう、と締め付けられるようになって、顔が熱くなって、何か言葉を返そうとしても口がぱくぱく動くだけで。
今まで何度も同じ台詞を言われたけれど、いつになってもこんな反応しかできないのは私が悪いのではなくこいしがいけないんだ、なんて。嬉しいのと幸せなのとでぐちゃぐちゃになる。
「こいし」
やっとの思いで言葉を絞り出す。
「私も、だいすきよ」
言った瞬間に笑顔になるこいしを見たら、もうそれ以上はもう何も言えない。何も考えられない。頭の中がこいしでいっぱいになる。
あ、お姉ちゃんの心臓、いつもより速く動いてるよ、なんて。そんなことを言いだすからいよいよ訳が分からなくなって、そんなわけで誰かが部屋の戸を叩いていたことにも気付かなかった。
「さとり様大変です!」
何度ノックしても返事がなかったからだろうか、蝶番ごと吹き飛ばすかのような勢いで開かれるドア。転がり込むように部屋に入ってきた燐は、初めて人化けした時のようなハイテンションで。
「外、見てみてください!」
言われるままにカーテンを開くと窓の外には。
「あら」
「雪だー」
真っ白に染まった庭が眩しくて目を細めた。地底に雪が降るなんて珍しい、というか私の知る限りでは初めてのこと。
「雪ですよ雪! 地底で雪が見られるなんて」
猫は炬燵でなんとやら、は火車には関係ないようで。そんなにはしゃがなくても、地上に行けばいくらでも見られるだろうに。当人が楽しいならばそれでいいのだけれど。
「雪だよお姉ちゃん。どうやって降らしたんだろうね」
ここにも楽しそうなのが一人。あんまり窓に近づくものだから、吐息がガラスにかかって曇っている。
寒さを気にしないペットたちが庭でわいわいやっているのが見える。人化け出来る子も出来ない子もめいめい楽しんでいるようだ。
「ということで私はお空と遊んできますねっ」
そう言って燐が出ていくと、部屋にいるのは元通り私とこいしだけ。
「お姉ちゃんはさ、雪を見るのは何年ぶり?」
私は一昨日、地上で見たばかりだけど、と窓の外を眺めながらこいしが訊ねる。
「そういえば、何年ぶりかしらね」
こいしと出掛ける以上に久しく、雪なんて見ていない。
雪にはあまりいい思い出がない。地上に居た頃、この季節はこいしと二人きりで過ごすにはあまりに寒すぎた。暗い冬の夜を照らしてくれるのは僅かばかりの灯だけで、暖をとるものなんてあるはずもない。妖怪だからそれなりに丈夫ではあったけれど、寒い事に変わりはなくって。クリスマスなんて知らなかったし、お正月だからと特別何かしたこともなかった。
そんな昔々の記憶が、全ての音を、全ての色彩を消しさるように静かに降りしきる雪とともに脳裏に焼き付いていて、雪の降る様をじっと眺めていると、じわじわと心の底の方からそれが蘇ってくるから、冬は普段以上に地上に出ないようにしていたのだった。
「雪は、あまり好きじゃないから」
冷たいし、と笑って答える。上手く笑えている自信はない。
「昔はさ、私も好きじゃなかったんだ」
目線を窓ガラスの向こうへ向けたまま、冷たいもんね、と微笑む。
「でも、お燐とかお空がああやって楽しそうにしてるのを見てたら、私も楽しまなきゃ損だな、って思ったの」
地上でも、人里の子供たちがみんな雪が降るのを喜んでてさ、と。
そこで言葉を切り、窓を開ける。
冷たい空気が毛布の中まで流れ込んできて、少し身震い。
「ほら」
そう言って差し出された手のひらを見ると、寝間着の薄い生地の上に、一片の雪が乗っかっていた。
「雪の結晶。綺麗でしょ」
今度は私のほうを見て、微笑んだ。
遠くから見れば白い薄片でしかないそれは、近くで見ると精巧な硝子細工のようで、じわじわと消えてしまうのが惜しいくらい。
ああ、雪の一つ一つはこんなにも綺麗だったのか、と。
「ええ。綺麗、ね」
そう答える頃には、さっきまであったものは一粒の雫へと変わっていた。
「だからさ」
素直に楽しめばいいんだよ。昔っからお姉ちゃんはいろいろ考えすぎるところがあるもん。そんなんだからみんなに気難しそうって言われちゃうんだよ、って。
そう言うこいしはやっぱり私の妹なんだって、心が温かくなる。
「こいし」
わしわし、とこいしの頭を撫でてやると
「んー?」
むぎゅ、と私の胸に顔をうずめてきた。
「ありがと」
わしわし。
「んー」
むぎゅ。
「だいすき」
わしわし。
「ん」
むぎゅう。
猫みたいに目を細めるこいしが可愛くて、ずっとそうしていたかったけれど、
「それじゃ、お姉ちゃんも外で遊ぼ?」
って言うその瞳が、わくわくと擬音が聞こえてきそうなほどに輝いていたから、
「……こいしがそう言うんなら、仕方ないわね」
外に出るなら支度しなくちゃと、こいしから手を離す。
鎌倉も雪だるまも作り方なんて知らないから、いろいろ教えてもらわなくちゃ。
「よしよし、素直なお姉ちゃんにはご褒美だね」
ご褒美ってペットじゃあるまいし、と思った次の瞬間にはこいしの顔が目の前にあって、エメラルド色の瞳に淡い紫が混じっていて。
「んむ……」
触れ合っていたのはほんの僅かな時間だったけれど、柔らかな感触と甘いこいしの味は唇が離れた後も消えずに残って。
「そうそう。雪も綺麗だけど――」
いったん離した顔を今度は耳に近づけて、
「お姉ちゃんのほうが綺麗だよ」
そう言って笑うこいしを、
「馬鹿」
とだけ言ってもう一度抱きしめた。
さとこいちゅっちゅ!
後書きの4行だけでも甘いから、その話を膨らませたらもっと大変なことになってしまいそう。
さとこいもっと幸せになれ!
身体が暖かくなるな…
こめいじ幸せになれ!