はぁ……
パチュリーは今日何度目になるか分からないため息をつく。
原因はテーブルの向かいから来る視線。
おかげでパチュリーは読書に集中出来ずにいた。
パチュリーは本から顔を上げ、こちらに視線を注ぐ者を見やる。
「!!!」
テーブルの向かいに座る女の子はパチュリーと目が合うと慌てて自分の本に目線を落とし、ペラペラとページを捲り始める。女の子は人見知りなのか、顔が真っ赤に染まっている。
はぁ……
またも心の中でため息が一つ。
先ほどからずっとこの調子なのだ。
どうやら女の子はパチュリーに興味があるらしく、パチュリーが本を読んでいる間はずっとパチュリーに視線を送っているのだ。そしてパチュリーが視線に耐えられずに顔を上げると慌てて本を読んでいる振りをするのである。もちろん顔を真っ赤にして。
そもそもパチュリーはこの照れ屋な女の子と面識はなかった。
小声で隣にいた小悪魔に知っているか尋ねたところ、「こんな可愛い子を見たら忘れるはずがない」と返ってきた。
パチュリーはまだ隣で立っている小悪魔に目線を移す。
小悪魔は女の子に興味津々らしく、頭に付いている小さな羽がパタパタと忙しなく動いている。
そう、小悪魔は子ども好きなのだ。目の前にいる女の子はレミリアやフランドール並みの幼い外見をしている。子ども好きな小悪魔だが、パチュリーがいる手前、愛でに行けないのだろう。パチュリーがいなかったらそれこそ人懐っこい犬のように飛びついていくはずだ。
だから尚更パチュリーは居心地が悪い。早く自分はどこか別の場所に行ったほうが良いのではないかと思えてしまうのだ。
パチュリーは壁に掛けてある時計を見る。時計は午後6時を指しており、女の子が図書館に来てからちょうど1時間が経とうとしていた。
そもそも何故この女の子はここに来れたのだろうか。
パチュリーはしばし目を伏せて考える。そして、大して時間もかからずに一つの答えに行き着く。
美鈴だ。あの抜けている門番以外考えられない。
話の流れはこうだ。
女の子がたまたま門の前を通ろうとする。美鈴は女の子が本を持っていたため、図書館に用があるのだろうと勘違いしここに連れて来る。女の子は恥ずかしいから違うと言えない。そして今に至る。
(あの駄目門番!)
パチュリーは心の中で美鈴をなじる。先ほどのことが憶測だということを忘れ、パチュリーの中ではこれが真実となってしまっていた。
(だとすると……)
ちょっと不味いことになった。
もう時刻は午後の6時。室内は光の魔法で照らされているから忘れがちだが、外はもう真っ暗になっているだろう。
色々世間が騒がしく頃だ。この女の子も今日は何かしらのイベントがあった可能性が高い。
しかもそのイベントは大体これからが本番。なにせパチュリーもこれからそのイベントに面倒だが顔を出しに行かなければいけないのだから。
いま考えると、女の子がこちらを見ていたのは「帰りたい」と言いたかったからであろう。
パチュリーはテーブルの端に置かれているメモ用紙を一枚手に取り、さらさらとペンで何か書き込んでいく。
「小悪魔」
「は、はい!」
女の子に心奪われていた小悪魔がパチュリーの声で我に返る。
「これ」
そんな子悪魔にパチュリーは先ほど書いていたメモ用紙を渡す。それを受け取った小悪魔は早速何が書かれているのかを確認する。
すると、小悪魔から笑みがこぼれた。
「はい、すぐにお持ちします」
そう言って小悪魔は近くの本棚に移動し、パチュリーから頼まれたものをどこか楽しげに探し始める。
「あなた、名前は?」
小悪魔が探しものをしている間に、パチュリーはまだ顔がほんのりと赤い女の子に初めて話しかけた。パチュリーは人見知りではないが無口なため、女の子が図書館に入って来ても話しかけずにいたのだ。
「えっ……」
「だから名前よ、あなたの名前」
「と、朱鷺子……」
朱鷺子は顔を再び真っ赤に染めながら自分の名前を告げる。
「お待たせ致しましたパチュリー様。ご所望のものをお持ちしました」
ちょうど良く小悪魔がパチュリーから頼まれていたものを持って現れる。
「そう、朱鷺子っていうのね」
言いながらパチュリーは頼んだものを小悪魔から受け取る。
そして、受け取ったものをそのまま朱鷺子の前に置いた。
「それ、あげるわ」
「えっ」
「今日はクリスマスよ」
パチュリーは立ち上がり
「メリークリスマス、朱鷺子」
朱鷺子に柔らかな笑みを向け、図書館から出て行った。
残された朱鷺子は突然の出来事に呆然としていたが、たった今貰ったばかりの一冊の本に恐る恐る手を伸ばすと、嬉しそうにそれを胸に抱きしめた。
「キャーッ!可愛いー!あなた朱鷺子ちゃんっていうんですか!可愛いお名前ですね!私はここで司書を務めている小悪魔です!よろしくお願いしますね!」
「あ……」
「そうだ!朱鷺子ちゃんケーキ食べます?今一階パーティーやってるんですよ」
「あっ……」
「ああ、朱鷺子ちゃんも今日は用事がありますよね。では、私が朱鷺子ちゃんを送って差し上げます!」
「あ、あの……」
「実はパチュリー様から朱鷺子ちゃんを送って差し上げるよう言われてまして。パチュリー様ってああ見えて実は優しいんですよ。では、行きましょうか朱鷺子ちゃん!」
「あー……」
パチュリーは今日何度目になるか分からないため息をつく。
原因はテーブルの向かいから来る視線。
おかげでパチュリーは読書に集中出来ずにいた。
パチュリーは本から顔を上げ、こちらに視線を注ぐ者を見やる。
「!!!」
テーブルの向かいに座る女の子はパチュリーと目が合うと慌てて自分の本に目線を落とし、ペラペラとページを捲り始める。女の子は人見知りなのか、顔が真っ赤に染まっている。
はぁ……
またも心の中でため息が一つ。
先ほどからずっとこの調子なのだ。
どうやら女の子はパチュリーに興味があるらしく、パチュリーが本を読んでいる間はずっとパチュリーに視線を送っているのだ。そしてパチュリーが視線に耐えられずに顔を上げると慌てて本を読んでいる振りをするのである。もちろん顔を真っ赤にして。
そもそもパチュリーはこの照れ屋な女の子と面識はなかった。
小声で隣にいた小悪魔に知っているか尋ねたところ、「こんな可愛い子を見たら忘れるはずがない」と返ってきた。
パチュリーはまだ隣で立っている小悪魔に目線を移す。
小悪魔は女の子に興味津々らしく、頭に付いている小さな羽がパタパタと忙しなく動いている。
そう、小悪魔は子ども好きなのだ。目の前にいる女の子はレミリアやフランドール並みの幼い外見をしている。子ども好きな小悪魔だが、パチュリーがいる手前、愛でに行けないのだろう。パチュリーがいなかったらそれこそ人懐っこい犬のように飛びついていくはずだ。
だから尚更パチュリーは居心地が悪い。早く自分はどこか別の場所に行ったほうが良いのではないかと思えてしまうのだ。
パチュリーは壁に掛けてある時計を見る。時計は午後6時を指しており、女の子が図書館に来てからちょうど1時間が経とうとしていた。
そもそも何故この女の子はここに来れたのだろうか。
パチュリーはしばし目を伏せて考える。そして、大して時間もかからずに一つの答えに行き着く。
美鈴だ。あの抜けている門番以外考えられない。
話の流れはこうだ。
女の子がたまたま門の前を通ろうとする。美鈴は女の子が本を持っていたため、図書館に用があるのだろうと勘違いしここに連れて来る。女の子は恥ずかしいから違うと言えない。そして今に至る。
(あの駄目門番!)
パチュリーは心の中で美鈴をなじる。先ほどのことが憶測だということを忘れ、パチュリーの中ではこれが真実となってしまっていた。
(だとすると……)
ちょっと不味いことになった。
もう時刻は午後の6時。室内は光の魔法で照らされているから忘れがちだが、外はもう真っ暗になっているだろう。
色々世間が騒がしく頃だ。この女の子も今日は何かしらのイベントがあった可能性が高い。
しかもそのイベントは大体これからが本番。なにせパチュリーもこれからそのイベントに面倒だが顔を出しに行かなければいけないのだから。
いま考えると、女の子がこちらを見ていたのは「帰りたい」と言いたかったからであろう。
パチュリーはテーブルの端に置かれているメモ用紙を一枚手に取り、さらさらとペンで何か書き込んでいく。
「小悪魔」
「は、はい!」
女の子に心奪われていた小悪魔がパチュリーの声で我に返る。
「これ」
そんな子悪魔にパチュリーは先ほど書いていたメモ用紙を渡す。それを受け取った小悪魔は早速何が書かれているのかを確認する。
すると、小悪魔から笑みがこぼれた。
「はい、すぐにお持ちします」
そう言って小悪魔は近くの本棚に移動し、パチュリーから頼まれたものをどこか楽しげに探し始める。
「あなた、名前は?」
小悪魔が探しものをしている間に、パチュリーはまだ顔がほんのりと赤い女の子に初めて話しかけた。パチュリーは人見知りではないが無口なため、女の子が図書館に入って来ても話しかけずにいたのだ。
「えっ……」
「だから名前よ、あなたの名前」
「と、朱鷺子……」
朱鷺子は顔を再び真っ赤に染めながら自分の名前を告げる。
「お待たせ致しましたパチュリー様。ご所望のものをお持ちしました」
ちょうど良く小悪魔がパチュリーから頼まれていたものを持って現れる。
「そう、朱鷺子っていうのね」
言いながらパチュリーは頼んだものを小悪魔から受け取る。
そして、受け取ったものをそのまま朱鷺子の前に置いた。
「それ、あげるわ」
「えっ」
「今日はクリスマスよ」
パチュリーは立ち上がり
「メリークリスマス、朱鷺子」
朱鷺子に柔らかな笑みを向け、図書館から出て行った。
残された朱鷺子は突然の出来事に呆然としていたが、たった今貰ったばかりの一冊の本に恐る恐る手を伸ばすと、嬉しそうにそれを胸に抱きしめた。
「キャーッ!可愛いー!あなた朱鷺子ちゃんっていうんですか!可愛いお名前ですね!私はここで司書を務めている小悪魔です!よろしくお願いしますね!」
「あ……」
「そうだ!朱鷺子ちゃんケーキ食べます?今一階パーティーやってるんですよ」
「あっ……」
「ああ、朱鷺子ちゃんも今日は用事がありますよね。では、私が朱鷺子ちゃんを送って差し上げます!」
「あ、あの……」
「実はパチュリー様から朱鷺子ちゃんを送って差し上げるよう言われてまして。パチュリー様ってああ見えて実は優しいんですよ。では、行きましょうか朱鷺子ちゃん!」
「あー……」
るな茶「・・・」
ぱちゅ「今度は金髪縦ロールか・・・」
おまけ2
こあー「私、子どもが大好きなんですよ」
ぱちゅ「へえ」
さくや「私、子どもが大好きなんですよ」
おぜう「なにそれこわい」