注意
この話は作者の紅魔館関係の過去作品の設定を引き継いでおります。独自設定などが盛り込まれているのでご注意ください。
地下の大図書館へと続く階段をレミリアはただ進んでいた。
足取りは慎重に、まあ踏み外しても飛べば良いのだが。
別に暇だから本でも、と言う訳ではない。現に先程までは博麗神社に行こうと出支度をしていたくらいだ。
だが、普段はそっけない親友が直々に呼び出しをくれたのであれば、出向くのもやぶさかではないと考えを改めたのだ。
やがて彼女は入口の大扉へとたどり着く。
身長の数倍はあるであろうそれを軽々と開いて中へと入る。
「いらっしゃい、レミィ」
いつもの様に読書をしていた親友が、顔をあげてレミリアを迎えた。
手をあげて応じるとレミリアはそのまま歩を進める。
小悪魔が引いた椅子へと腰掛けて言葉を紡いだ。
「わざわざ呼び出すなんて、珍しい事もあるじゃない」
そこで意地悪そうに笑みを浮かべる。
「誰も来ないから寂しくなったのか?」
「ふふ」
応じるパチュリーはそうかもねと呟いた。
「最近は誰も訪れてくれないからね。
貴方もフランもご無沙汰だし、最近はもっぱら静寂だけが友達だわ」
「魔理沙が来ているじゃないか」
「あれは泥棒よ、いずれ痛い目を見せないといけないわ」
お互いにくすくすと声を漏らす。
「フランは、美鈴にべったりだからな。最近は特にやり過ぎなほどにね」
「あら、やきもちかしら?」
親友の指摘にレミリアは苦笑した。
「いや、フランは心配なのだろうよ。
夢の中ではといえ、美鈴の死を目の当たりにしたのだからね」
言葉に小悪魔が済まなそうに俯いて、パチュリーはそう、とだけ呟いた。
「レミィを呼んだのはまさにそれに対しての事なのよ」
「それに対して……フランの事か?」
「まあ、それもあるけれど。ねえレミィ」
パチュリーはただ変わらない声色で紡ぐ。
「貴方、最近美鈴に甘えてるかしら?」
「え?」
きょとんとしたレミリアにパチュリーは続ける。
「そうね、質問を変えるわ。以前、レミィに聞いた美鈴の運命。あれはどうなったかしら?」
「あ、ああ。あれから新しい運命が見えるようになったよ。
年老いた咲夜の傍で笑っている美鈴。成長した私やフランの傍に控える美鈴」
レミリアは優しい顔でただ伝える。
「どれを見ても、死しか見えなかった美鈴の運命は変わったよ。
もう、ほとんど死の運命は消えて、我らと共にある運命が大体を占めるようになった」
それからまっすぐにパチュリーを見つめて感謝すると呟いた。
しばし前の事だ。
美鈴が寿命であると言う事にパチュリーだけが気が付いた。
それは日常のふと何気ない仕草から。あるいは隠そうとする不自然さから。
美鈴に対して親しく成り過ぎていたレミリア達では、逆に気が付かなかったもの。
それは第三者と言う観点からの視線で見ていたパチュリーにしか分からないものであった。
それを良しとしないパチュリーは早速行動に移した。
夢と言う手段を用いて……小悪魔の能力である夢を見せる程度の能力。
それを使い、美鈴の寿命による死のイメージを皆に見せて、彼女を引きとめさせた。
そして、己の人生に満足して逝こうとしていた美鈴は皆の想いに気が付いて、新しく生きる事を決めたのだ。
「それは何より」
「ああ、それでそれと何か関係が?」
「そうねえ……」
パチュリーは淡々と言葉を続ける。
「ほとんどの死の運命は消えたと言うけれど、まだ残っているのね?」
「ああ……」
レミリアが苦い顔をする。
「残っているのは殺される運命だ。
相手が誰だかもわからないが恐らくは……狩人か教会だと思う」
溜息一つ。
「幻想郷に来てまで奴らに追われるとは思わなかったけどね。
でも、人間と言うのは随分と執念深いのを思い出したよ」
「そうね、それでどうするつもり?」
「どうするって……」
質問にレミリアが困惑する。
「いつ来るか分からない者にどう対処すると?
私達に出来る事は美鈴にさりげなく気を使う事だけだよ」
眉をひそめたままレミリアは天井を仰いだ。
「衰えたまま戦って殺される。それが残った美鈴の死の運命。
ならばあいつが昔の力を取り戻すまで、我らで守ってやらなくてはいけない」
「美鈴は、どれくらい弱くなってるのかしら?」
「かなり、だ。あの後、久しぶりに弾幕ルール無しで手合わせしたんだよ」
「そう」
「……一応、技能自体は昔と変わらないがね。でも、再生力や耐久力は昔と比べるべくもない」
ふぅと息を吐いて、レミリアが視線をパチュリーに戻す。
それからいつの間にか用意されていた紅茶を一口。
「美鈴はあの時、私達の為に生きると言ってくれた。
存在事態が精神に重きを置く妖怪である美鈴は、また我等の為に力を取り戻してくれると信じている。
そうすれば……力が戻ればあいつは、そこらの者には簡単に後れは取らないはずだから」
パチュリーはそんなレミリアを見て穏やかに笑う。
「本当にレミィは美鈴が大事なのね」
「まあね、育ての親だし……ずっと守ってくれたからね」
「それで、用件と言うのはその美鈴の力を早く取り戻させる方法があると言う事よ」
「……パチェはなんでもお見通しなのね」
どこか感心した様な、それでいて呆れた様な様子でレミリアが言う。
「まあ、その方法が甘えてあげると言う事」
「ふむ……」
「必要とされればされるほどに、恐らくだけど、力の回復は速まるはずよ。
ああ、そうね。頼りにされている場合と期待されていない場合じゃ、何事にも力の入れようが代わる様にね」
「それで、美鈴に私も甘えろと」
「そうよ」
真顔で提案する親友からレミリアは視線を逸らした。
「いまさら、素直に甘えられるものかよ……」
外見こそ幼児だがレミリアは齢五百歳を超える吸血鬼だ。
いうなれば精神はもう成熟している、それが無邪気な子供の様に甘えられるかと言うのだ。
「そうかしらね、フランは構わずに甘えているようだけれど」
「む……」
フランドール。
レミリアの妹であり年もそう違わない。
だがずっと引き篭もっていた為に、レミリアと違い精神は幼い。
だからこそ、何の気兼ねも無く美鈴に甘える事が出来るのだ。
「フランは……子供だから」
「そうね、美鈴にとってはフランは子供に等しいでしょう。
そして貴方もよ、レミィ。子供に甘えられて嬉しくない親は居ないわ」
「だがしかし……」
煮え切らないレミリアの返事。
故にパチュリーは攻める口を変えてみる事にした。
「やりようによっては血が吸えるかもしれないわね」
「……」
「美鈴を縛っていたあの方とやらとの約束はもうない。
むしろ貴方達の為に生きると決めたわね、ならば持って行きようによっては……」
「血が……吸えると」
レミリアの呟きはほぼ無意識によるもの。
だが、それ故に興味を引かれたと言う事を示していた。
興味の対象。それは吸血衝動。
レミリアの種族名がが示す通りの欲求。
それは人間で言う、食欲と性欲の中間にあたり、何よりも強い。
好意を抱いたものの血を吸いたいと思う事は当然の事だ。
それは食事であるだけでなく、信頼や愛などを示す印にもなる。
レミリア自身、過去に何度も美鈴の血を吸おうとしてきたが、その度にさりげなく断られてきた。
それは美鈴の中にまだ、レミリアの父親がいたからに違いないと思っていた。
だが、それが居なくなった今ならば、あるいは……
「し、しかし……」
それでもレミリアの返事は煮え切らない。
確かにパチュリーの提案は魅力的ではあるが、今の状態で断られたらこの先、非常に気まずい思いをすることになる。
「いまさら、どういう風に言えと……」
「ふむ……」
パチュリーは思案。
それから小悪魔に目配せをする。
主の視線の意味を理解した小悪魔が了承する様に微笑んだ。
「ならばこうしましょう。私達がレミィに美鈴の夢を見せるわ」
「夢を?」
「そう、つまりは練習しなさいと言う事よ」
「………う」
レミリアは返事に困る様に顔を歪めた。
彼女のどこか追い詰められた様子を見て取ったパチュリーはさらに言葉を重ねようとして……
「面白そうな話をしてるね」
そこに割り込む声があった。
レミリアによく似た容姿。ただ違うのは蜂蜜色の髪。
フランドールであった。
彼女はそのまま手近な椅子に座ると笑顔で二人を眺めた。
「フラン、いつから……」
「うん、少し前に、本でも読もうかと思って、そうしたらお姉さまの声が聞こえたから」
「そう……」
フランドールはパチュリーに視線を移す。
「私も見たいな、美鈴の夢」
パチュリーは笑みを持ってフランドールを迎える。
「あら、フランには必要無いと思うけれど……貴方は普段から甘えているのだし」
「ううん、私もね、美鈴の血が吸いたいの。でも、やっぱりすぐには頼めそうにないから練習したいよ」
「!?」
「そうね、分かったわ」
パチュリーが了承しフランドールが素直に喜びを浮かべた。
それから横目でレミリアを見て、意地の悪い笑み一つ。
「あらあら、これはフランの方が先に美鈴の血を吸ってしまうかもしれないわね」
「う……」
レミリアの顔に迷いが浮かぶ。
それから半ば意地になったように言葉を放つ。
「いいわ、私にも夢を見せなさい」
「ふふ、やっぱり甘えたいのね?」
「……本来なら練習なんか必要ないの。でも、念には念を入れて……」
にやにや顔のパチュリーとうっとり小悪魔。
なにやら嬉しそうなフランドールの視線を受けてレミリアの言葉が尻すぼみになっていく。
頬の紅潮をを隠す様に乱暴に椅子から立ち上がるとレミリアは三人に背を向ける。
「夢を楽しみにしているわ。せいぜい私をがっくりさせないでね」
そんな良く分からない事を言い捨てて、レミリアは早足で去っていく。
見届けたフランドールが、楽しみだね、と呟いて、それから後を追うように図書館から出て行った。
「可愛いわね、二人とも」
「ですね」
微笑ましそうに二人が呟いて。
「あまりお嬢様をいじめないでくださいな」
「あら、咲夜」
現れたのは完全で瀟洒なメイド。
彼女は呆れたようにだがとりあえず澄まし顔を浮かべている。
その手には数冊の本が握られていた。
たまたま本でも借りにに来たのだろう。
「だって、可愛いのですもの。ほら、好きな子には意地悪したくなるじゃない?」
「それは……わかりますが」
「理解してくれてうれしいわ。ああそうだ、どうせ話を聞いていたのでしょう。貴方も美鈴の夢、どうかしら?」
「はぁ……」
「どうせ普段、体面やプライドが邪魔をして甘えられないのでしょう。
ならばせめて夢の中で甘えてみるのも悪くないと思うわ?」
パチュリーの意味深な視線を咲夜は涼しい顔で受け流す。
「まあ、甘えるかはどうかとして……」
咲夜はわざとらしく咳払い。
「それも確かに一興。最近居眠りばかりの美鈴には、言いたい事がたくさんありましたの」
「あら、それならば説教の練習にちょうどいいじゃない?」
「そうですわね、紅魔館の風紀の為に…仕方なく…よろしくお願いしますわ」
「ええ、賜ったわ」
それだけ話すと、では、と咲夜は音も無く消えうせる。
「素直じゃないのね、皆」
「そこが可愛いんじゃないですか」
そうねと笑ってパチュリーは小悪魔に視線を移す。
「それじゃあ、また貴方に頼むけど」
「はい、お任せください。夢の種類は願望投影系で、レベルは軽めでよろしいですか?」
「いいえ……」
小悪魔の確認にパチュリーは小さく笑う。
先ほどの微笑ましそうな笑みとは正反対の暗い笑み。
「レベルの加減は無しでよいわ」
「よろしいのですか? そうなると……」
「いいのよ」
小悪魔の夢を見せる能力。
様々なバリエーションの夢を見せる事が出来るが、本来の用途は淫夢を見せる事。
淫夢の加減を弄って、様々な夢を見せているのである。つまり加減をしないとなると……
「むしろそれが目的よ」
小悪魔の疑問にしれっとパチュリーは答える。
「はぁ……」
「いい、美鈴が手っ取り早く回復するには誰かに必要とされる事よ。
母親代わりのままではきっと時間がかかるわ、だって素直に甘えるのはフラン位なものだもの」
だからね、とパチュリーは続ける。
「誰かと恋人になってしまえばいいのよ。そうすれば精神や肉体的にも求められる様になる。
そうなれば必要とされる度合いは母親の比ではないわ、それに求めるようになる比率もね」
「ですが、どうも美鈴さんにはその、同性愛の趣味は無いみたいですが……」
「だから、迫らせるのよ。一旦そうなってしまえば男女の違いなんてささやかなものだと分かるはず……」
それからパチュリーは小悪魔の手を取って頬にあてる。
「私とあなたの様にね」
「は、はい」
パチュリーと小悪魔。
今でこそほぼ恋人と言ってよい関係だが、そうなるまで葛藤があったのだ。
小悪魔はともかく、まだ人に近いパチュリーの方は同性愛に違和感を持っていた。
まあ、色々あってパチュリーが小悪魔を襲うと言う解決に至った訳だが……
「魔女らしくないけれど、貴方とこういう関係になって私は愛の素晴らしさを知ったわ。
だからこそ、それの持つ力も理解しているつもりよ。もしかしたら第六の属性かもしれないとはよく言ったものね」
瞳を閉じて語るパチュリー。
それが再び意地悪い笑みを浮かべた。
「それにね、前回の件での美鈴の態度、まだちょっと気に入らないと思っているの」
それはとても含みのある、どこか嫌らしい、とても魔女らしい笑みだった。
寿命の件での美鈴との会話を思い出しているのかパチュリーの眉に皺が寄る。
「だからね、娘と思っている子に迫られて、慌てふためくあいつを見てみたいかなって……」
くすくすと笑ってパチュリーは続ける。
「皆、行動力はあるからね、そういう風に意識させれば何かしら行動を起こすはずよ、それこそ美鈴が予想だにしない行動をね」
「ああ、さすがです、パチュリー様」
そんなパチュリーを見てうっとりとした様子で小悪魔が呟いた。
小悪魔の方に同性愛への抵抗はない。むしろ好みですらあるようで。
見ているのが好き、と言う嗜好を満たせる予感に底知れぬ笑みを浮かべる。
「小悪魔、張り切っちゃいますね!」
「ええ、うまくいったら」
パチュリーは小悪魔の指を己の唇へとなぞる様に当てる。
「ご褒美をあげるわ、ね」
そう妖艶に呟いて、小悪魔が眼を輝かせた。
冬の夜空に月が煌めいている。
いつものテラスで、お気に入りの椅子に座りレミリアはグラスを傾けていた。
「いつもここから始まるのね」
レミリアはそんな事を呟いた。
今回は予め言われていたが為にこれは夢であると分かる。
何の為か、それは美鈴に甘える為の練習だ。
それを意識してレミリアは苦い顔になる。
「まったく、パチェったら余計な気をまわして……」
溜息一つ。
それからふと思い出す。
(やりようによっては血が吸えるかもしれないわね)
パチュリーの言ったそんな言葉。
それを意識して、ふと気分がざわめくのを感じた。
期待感と不安と、それらがごちゃ混ぜになった様な変な気分。
レミリア自身、美鈴の血が吸いたいのは間違い無い。
初めはそうでもなかったが、それでも共に過ごすうちに。
その身を掛けて、レミリア達を守る想いが本物であると悟った時に。
彼女は初めて美鈴の血を求めた。
吸血行為の意味は大きく分けて二つ。
単に食事の為と、親しき者への親愛の証だ。
この場合は後者。
親しき物の血を取りこむことで、また同化することで安心を得る事が出来る。
「馬鹿げてる……」
グラスを置いてレミリアは再び溜息。
過去に何度かレミリアは美鈴の血を求めた事があった。
でも、それらはすべて叶わなかった。
それは美鈴の中にレミリアの父がいたからだ。
決してレミリアが嫌いだと言う訳ではなく、むしろ逆だからこそ彼女は拒むのだ。
それを分かっていたから、レミリアは無理やりにでも求める様な事はしなかった。
だが、今はどうだろう。
遠い日の約束から解放されて、自分達の為に生きると言ってくれた美鈴なら、もしかしたらと言う想いがある。
馬鹿げてると自分に言い聞かせてもそれは頭から離れない。
またレミリア自身も迷っていた。
もし、美鈴が血を吸う許可を出してもそれで良いのかと、吸う事で今までの関係が壊れてしまうかもしれない。
そんな迷いが彼女を蝕んでいた。
「お嬢様?」
「ひゅぃぃぃ!?」
不意に、レミリアの視界に美鈴の顔が真直に映る。
考え事に没頭していたレミリアは、美鈴が傍に来た事に全く気が付か無かった。
「どうしたんですか? 河童みたいな声をあげて」
「……何でもない」
くすくす笑う美鈴にレミリアは照れ隠しの様に憮然とする。
彼女は笑みのまま数歩、後ろ手を組んで夜空の月を見上げた。
「眩しい月ですね」
「ああ」
返事をしてからレミリアは気が付く。
この展開は以前見た事があると。
そう、あの時の夢。
美鈴が死んでしまう時の……
「こんなに無警戒に月を眺める事が出来る。本当に幻想郷に来てよかったですね」
言葉を紡げずにいるレミリアに美鈴がくるりと振り返る。
そしていつぞやと同じようにその言葉を口にする。
「お嬢様に言いたい事があるんです」
「……」
レミリアの動いていないはずの心臓が鳴った様な気がした。
この時点で、夢であるはずなのに、そう分かっているはずなのに酷く感覚が生々しい。
何ができるか分からないが、それでもレミリアは思わず立ち上がりかけて……
「いまさらこんなお願いをするのは都合がよいと思うかもしれませんが」
予想と違う展開に足を止める。
「え…?」
美鈴が己の服の胸元のボタンをはずしだしたのだ。
呆然とするレミリアの前で、肩口まで服を下げて、照れたようにはにかむ。
「私の血を吸っていただけませんか? お嬢様」
月光に照らされた美鈴の肌はとてもきれいで、妙に艶めかしくて。
レミリアはごくりと無意識に唾を飲み込んだ。
「きゅ、きゅうにどうしたんだ?」
声が上ずっているのをレミリアは感じた。
だってそれは遠い昔から望んでいた事。
求めても、求めても手に入らなかった唯一のものだったからだ。
「今まではずっと母親として、貴方を導いてきたつもりでした」
美鈴はやや頬を染めて、吐息を一つ。
「でも、もうお嬢様は一人前です。ですから、もしよければこれからは貴方の僕として……」
「あ、ああ……」
ふらふらと、吸い寄せられるようにレミリアが美鈴へと寄っていく。
頭がぼんやりしている。思考が纏まらない。
レミリアの目の前の美鈴は美しく。
五百年、母親代わりとして慕ってきたはずなのに、そんな対象とは見れなかったはずなのに。
なのに今は妙に艶めかしくて、なまじ外見が若いだけあってとても妖しくて。
なにより、その美鈴が自分を求めていると、僕にして欲しいと願ってきていて、つまりそれは……。
「私に血を吸わせたいのなら……分かっているわね」
レミリアの口からそんな言葉が突いて出た。
「かつてお父様に身を捧げていたお前なら分かるでしょう?」
母親としてでは無い、女としての美鈴を目の前にしてレミリアに湧きあがってくるものがあった。
暗い悦び……吸血鬼としての支配欲求。いままでの関係を台無しにしてしまう様な、それに対する背徳的快楽への予感。
「はい、お嬢様……」
対する答えは従順で。何のためらいも無くて。
美鈴がレミリアの頬に手を添えてそのまま顔を寄せていく。
単に親愛の為の吸血ならばそのまま吸えばいい。
だが、そうでない、もっと深くに求める吸血であるならそれ相応の準備が必要となる。
初めは軽く、遠慮するように唇が重なって、それから徐々に深く。
お互い貪るように。深く、長く。
淫靡な水音が響いて、レミリアはそれに夢中になる。
もう、何のためにの夢なのか、そもそも夢であるのか事態忘れていた。
唇を離して、熱い吐息。
口の端から垂れる涎を拭おうともせずにそのままレミリアは美鈴に身を任せる。
美鈴はそのまま頬へそして首筋へと舌を這わせる。
湧きあがる快楽に耐えるかのようにレミリアは瞳を固く閉じる。
美鈴の手によってレミリアの服のボタンが外されていく。
露わになった白い肌の上に美鈴が刻まれていった。
「ふぁ……ぁ……」
やがてレミリアの口から声が漏れる。
それは明らかに悦楽を孕んだ声色。
「あああ……ぁ……」
漏れだした声はもう止まらない。
体を何度も痙攣させて、美鈴によって刻まれる快楽に夢中になる。
「は……お嬢様……可愛い……」
「……ん……ふぅ……いう…な……」
幼い外見から信じられないほどの艶っぽい嬌声。
それに荒い息を吐く美鈴の声はやはり昂っていて。
「や……かんじゃ……だめ……」
ぴくんとレミリアの体が跳ねてそのまま美鈴に持たれるように倒れ込む。
受け止めた美鈴の首筋にちょうどレミリアの頭が重なる。
甘い匂い。
血液の甘い匂い。
数百年、望みつつも飲む事の叶わなかったそれが目の前にある。
「美鈴……ああ……」
準備は整った。体も、心もこれ以上ないくらいに昂っていて、だからこそ迷わずに牙を突き立てた。
美鈴の甘い嬌声を聞きながらただ、甘美なる闇へとレミリアは堕ちていく……どこまでも……どこまでも……
ああ、夢だと咲夜は思った。
何の変哲もない自分の部屋。
ただ違うのは美鈴が居ると言う事。
その膝の上に自分が座っていると言う事だ。
「咲夜ちゃんは甘えん坊ですね~」
そんな事を美鈴が言った。
彼女の両腕は咲夜の前へと回されておりしっかりと抱すくめられている。
暖かくて柔らかい二つの塊が、咲夜の背にしっかりと感じられた。
「………うん」
顔が赤い。言葉が出ない。
ゆえに咲夜はそう返すの精一杯だった。
美鈴の夢を見せてくれるとパチュリーが言った時は少しだけ期待した。
昔ならともかく成長した今は、言われたとおりに体面やプライドが邪魔をして美鈴に甘えられない。
だからこそ、夢の中では昔の様に、無邪気に甘えられると思っていたのに……なのに……
「いきなりこの状況で始まるなんて……」
難易度が高すぎると咲夜は思った。
素直に甘えられない理由。
なにもそれは体面やプライドだけではない。
幼いころから抱いてきた淡い思慕。
それが歳月を重ねるごとに強くなってきて。
だが美鈴は自分をそういう対象としてみない。当然だ、同性同士なのだから。
だから、この想いはおかしいものだと自分を誤魔化していて。母親に抱く憧れだとそう思っていて……。
でも、いざとなると駄目であった。意識してしまっていた。
昔の様に無邪気に甘えられるわけがなかった。
暖かいぬくもり、そして押しつけられる二つの塊。
耳元で感じる吐息。美鈴の甘い匂い。
それらが否応にも咲夜の本能を刺激してやまない。
これでは甘えるどころか、余計に欲求不満になってしまうではないかと。
「咲夜さん」
「な、なによ」
「まずはすいませんでした」
「……」
咲夜はただ黙って言葉を聞く。
何時もの通りの落ち着いた美鈴の声が、火照った気持ちに落ち着きを与えてくれるからだ。
「紅魔館を任せて、勝手に死のうとしてしまって」
ふいに蘇る。あの美鈴が死んでしまう夢の感触。
冷たくなっていく体、感じられなくなった鼓動。
昂った気持ちが覚めていくのを感じて、不安が湧きあがってきて。
それを誤魔化す様に咲夜は体の前に回された美鈴の手に己が手を重ねた。
「馬鹿、あの時は、本当に……」
言いたいことはたくさんある。
だが、もういいのだ。美鈴はもう、私達の為に生きると決めてくれたのだから。
だからもう不問にしてやろうと、そう思う。
鼓動を感じる。
暖かくて優しい鼓動。
「あれから考えてみたんです」
不意に美鈴が言う。
「咲夜さんの事を」
「私の事?」
「そうです、私にとって咲夜さんはどんな存在なのか」
「う、うん」
咲夜に浮かぶのは戸惑い。
なぜなら美鈴の言葉の響きが何時もと違うように思えたからだ。
「小さい頃は、お嬢様達と同じように娘だと、そう接してきました」
「うん」
「でも、あっという間に成長して、もう私を抜かしてしまって……そして」
「……うん」
重ねた手と手。
それに力が込められた。
「私にとって、貴方はとても大切な存在になってしまっていた」
「美鈴……」
咲夜が呆けた様な声をあげる。
首をまわしてみると同じく此方を見た美鈴と目が合った。
「意識してしまったら、もう、いけないと分かっていても駄目でした」
「……うん」
早鐘を刻む鼓動。
それを咲夜は感じ取った。
それは自分と、美鈴の物。
「すいません、貴方が好きです」
「馬鹿ね……」
自然とお互い顔を寄せて。
「私も、美鈴が好きなのよ」
自然と唇が重なった。
そのまましばらく、お互いを感じあうように。
そして唇を離して咲夜が言う。
頬は赤く、やや興奮した様子で。
「もっと、貴方の事知りたいわ」
体の向きを変えて美鈴へと向き合う。
そのまま押し倒す様に体重を預けた。
「さ、咲夜さ……ん……」
再び重ねられる唇。
何時もならば支えられるはずの美鈴は何故かされるがままで。
そのまま咲夜に押し倒されるように地面へと倒れた。
「や。だめ……」
潤んだ美鈴の瞳。
言葉でこそ拒絶しているが何かを期待するかのような眼差し。
それに誘われた様に、浮かされたように咲夜は再び唇を重ねる。
あれほどに大きく、頼もしく見えた美鈴の体は今はなぜか小さく感じて。
そのまま、美鈴の服を脱がしていく。
露わになった綺麗な肌に羞恥の赤が乗る。
「いきなり…こんな……」
弱々しい美鈴の声が、咲夜の中の何かを煽りたてた。
「教えて欲しいの、今までみたいに、ね」
耳元で優しく囁いて。
美鈴は朱に染まった顔で小さく頷いて。
だから咲夜がその豊かな胸へと口を付けると美鈴が体を跳ねさせた。
ランプの光が照らす闇の中に何かがうごめいている。
それはしなやかな肢体を持つ、紅い髪の女性だ。
両手は縛られて、その表情は失意と、そして悲哀に塗りつぶされていた。
「ああ、美鈴」
その美鈴を組みしいて、フランドールは愉悦の表情を浮かべていた。
既に衣服を破り捨て、隠す物の無い美鈴の体を眺める。
そこにはすでにフランドールの付けたいくつもの噛み跡が刻まれていた。
「や、やめ……」
フランドールは身をかがめて腹のあたりを噛む。
牙を通すと美鈴の体が震えた。
その感情は恐怖だ。
吸血鬼にとって獲物の其れを理解することはたやすい。
それからねぶる様に胸を、肩を、太股を、そして首筋を。
マーキングするかのように舌でねぶり、牙で傷つけた。
「可愛い……ねえ……美鈴」
それから美鈴の横に両手をついて、その目を見つめる。
「……どうして…こんな…」
息も絶え絶えに美鈴はそう言った。
その表情は暗く、あの自分を抱きしめていてくれた優しさはない。
あるのは美鈴の中の、そう、信じていた何かが砕けた、そんな絶望だけだ。
その表情が、なお一層フランドールを掻きたてる。
ああ、そうだと、フランドールは思う。
「美鈴がいけないの……」
私は、美鈴をこうしたかったのだと。
支配してしまいたかったのだと。
優しい美鈴。暖かい美鈴。大好きな美鈴。
だからこそ、自分の物にしてしまいたい。
フランドールは素直であった。幼い故に無邪気で、残酷なほどに素直で。
だからこそ、不意に気が付いてしまったのだ。
「こんなに私を夢中にさせるから。
なのに貴方は私を娘としか見てくれない、だから、ずっと良い子のままじゃいけないって…だから…」
そう、このままではそこで終わってしまう。自分は美鈴の中でずっと娘のままで。
そして長い月日の中で、それが当たり前になって変えようのない事実になってしまって。
だから、そうなる前に……
「……理解させようって、そう思ったの」
美鈴は自分の物であると言う事。
怯えた彼女の瞳を覗き込む。
失意と恐怖に追われた、は、は、と短い息遣いが感じられて、その頬には涙が伝っていた。
それをフランドールは嘗めとって、しょっぱいと呟く。
そのまま顔を落として唇を奪う。
柔らかくて、暖かくて、気持ちが良い。
「ん……」
強引に美鈴の口内を無理やり侵しつくす。
「んんん!」
ぷはぁと息を吐いて快楽に酔ったように喜悦を浮かべた。
「ねえ、何をして欲しい?」
ちろちろと首筋を嘗めながらフランドールは言う。
「私に何をして欲しい?」
「は……」
美鈴は掠れた、力尽きた様な声でおやめくださいとそう答えて。
それでフランドールの不愉快そうに眉がつり上がる。
「まだ、足りないのね」
彼女はそのまま美鈴の目を見つめる。
美鈴が苦悶の表情を浮かべた。
それがやがて解れて、だらしなく緩んでいく。
吸血鬼の特性の一つだ。瞳で掛ける呪詛。
魅了の魔眼。
フランドールはこの特性が特に強かった。
何度か試した妖精メイド達は、命じられるままに這いつくばっていつまでも足を嘗め続けたと言うのに。
美鈴ときたら、しばらくは夢中になるもののすぐに効果が薄れてきてしまう。
「あ……あああ……はぁ……」
美鈴が悩ましい息を漏らした。
頬は紅潮し、夢見るような眼差しへと変わる。
「妹…様……」
ぼんやりと呟いた声。ゆるみきった甘い声。
これでしばらくはまた抵抗もせずに良く啼いてくれるだろう。
またじっくりと美鈴に教えてやればよい、主人が誰なのか、理解するまで何度でも。
だが……
「だめだ」
フランドールは言った。
我慢できないと。もう自分の方が駄目だと。
出来れば美鈴自身に自分の意思で言わせたい言葉があった。
魅了のかかった状態では無く、素の状態で服従の言葉を言わせたかった。
でももう無理だった。
「美鈴、私に、血を吸って欲しい?」
「……あ……」
表情は複雑なもの。
快楽と、絶望と、悦楽と、悲哀と。
それらがごちゃ混ぜになって美鈴の中で荒れ狂っていた。
それは抵抗だった。
魅了されてなおフランドールへの抵抗。
だけど、其の光が徐々に消えていく。
薄ぼんやりとした最後の意思は途切れて、彼女は熱に浮かされたように呟いた。
「血を吸ってください…私を…貴方の物にしてください」
フランドールは複雑な、それでも満足げな笑みを浮かべて。
そのまま躊躇い無く美鈴の首筋に牙を埋め込んだ。
堕としてあげると。身も心も、魂さえも呪縛して。
永遠の寵愛を授けてあげると、そう決めて……
獣の様な嬌声と、何かのうごめく音だけが何時までも響いている。
眼が覚めて美鈴は大きく伸びをする。
時刻は朝の七時過ぎ。
最近は体の調子が良い。
あれほどに感じていた体の重さは今は無い。
現金なものだと、美鈴は思う。
皆の為に生きると決めた途端に体の調子が良くなって。
少しずつだが力も戻ってきている様な気がする。
でも、それでよかったと思う。
あのまま、何も気が付かずに死んでいたら自分は後悔していただろう。
恐らく、死したのちの法廷で悲しむ彼女達を見せられて理解するに違いない。
それがどれほどに罪深いものなのかと言う事を。
屍山を築き血河を踏み越えて来た美鈴でも、耐えられるものではなさそうだった。
まあとりあえずはと、彼女はベッドから立ち上がる。
着替えて庭仕事に行こうと。考え事なら後でもできる。
美鈴は着替えを出そうとクローゼットへと向かって……その時だった。
破砕音が部屋に響いて、直したばかりのドアが吹き飛び何者かが部屋へと飛び込んでくる。
とっさに身構えて、こんな展開、前にもあったなと思いだす。
案の定そこにいたのはフランドールであった。
「めいりん」
彼女は蕩けそうなほどに甘い声で美鈴を呼んだ。
そして、例のごとく凄まじい勢いで彼女に抱きついた。
美鈴は今度はこそ身構えていて、その体をしっかりと受け止めきれるはずだったが、だが予想外に勢いが強くやはり倒れこんでしまう。
衰えた体が回復するまでにはまだまだ時間がかかりそうだと美鈴は苦笑した。
「美鈴~美鈴~」
一方のフランドールはただ甘えた声をあげて美鈴の胸に頭をすりつけている。
尋常じゃない甘え方に美鈴が戸惑いを浮かべる。
「あの、妹様?」
呼びかけるとフランドールの動きが止まる。
それから顔をあげて紅い瞳で美鈴をまっすぐに見つめた。
「美鈴をね(性的に)抱く夢を見たの、凄く可愛かった」
「私を(抱擁的に)抱く夢ですか」
「うん!」
美鈴は理解する。
きっとフランドールは自分に甘える夢を見て、いても立っても居られなくなったのだと。
だからこそ、たまらなくなってすぐに飛び込んできたのだと。
普段、あれほど纏わりついてきているのにまだ甘えたりないと言うのは親代わりとしては複雑で、でも嬉しいものでもあった。
「私ね、美鈴を(性的に)抱きたかったみたい」
キラキラした瞳でフランドールは美鈴を見上げて。
美鈴は慈愛を込めた優しい笑みでそれを見返す。
「そんな事なら何時でも喜んで(抱擁的に)抱いてくれていいんですよ」
「本当に! 嬉しいな、美鈴がそんな事を思ってくれていたなんて、それじゃ……」
「美鈴」
フランドールの言葉を遮って、美鈴の背後から声が聞こえた。
「咲夜さん?」
呼びかけに、美鈴の背に抱きついた咲夜は小さく返事をした。
「私も、見たのよ」
「はぁ……」
「貴方と(性的に)抱きしめ合う夢」
「私と(抱擁的に)抱きしめ合う夢ですか?」
「う、うん」
咲夜の声は小さく、どこか照れたような響きが混ざっている。
美鈴は理解する。
きっと、咲夜は幼いころに自分に甘えていた夢を見たのだと。
そういえば最近は成長してトンと甘えてこなくなった事を寂しく思っていた事を。
「いつでも(抱擁的に)抱きしめてあげますよ」
「美鈴……!…嬉しい、わたしも(性的に)貴方と抱き合いたくて……」
可愛いものだと美鈴は思う。
娘に等しい二人にこうも甘えられると思わず頬が緩んでしまう。
親馬鹿と呼ばれても仕方ないなと、ふと思って。
「モテモテね、美鈴」
声はすぐ横で。
見なくとも分かる。
だって数百年の付き合いなのだから。
「お嬢様も夢を?」
「そ、そうお前に(性的に)抱かれる夢」
「そうですか私に(抱擁的に)抱かれる夢を」
視線を向けるとレミリアは俯いていて、でも耳まで紅くなっている事が見て取れた。
「お前はとてもうまくて、私は何度も……」
そこで耐えきれなくなったかのようにふるふると体を震わせて美鈴の方へと身を寄せた。
美鈴は微笑んでレミリアを抱きよせる。昔そうしていたように優しさを込めて。
「何時でも(抱擁的に)抱いてさしあげますよ、お嬢様」
「……うん」
美鈴は理解する。
レミリアも皆と同じように夢を見たのだと。
最近は親離れしたと思ったが、やはりまだ子供だったのだと。
恐らくはまた、パチュリー達の仕業に違いない。
だが、今回ばかりは美鈴も責める気にはならなかった。
「そ、それでね……」
遠慮がちにレミリアが言葉を紡ぐ。
「誰から(性的に)抱いてくれるの?」
美鈴は微笑ましそうに笑み浮かべる。
「三人一緒で大丈夫ですよ」
慈愛に満ちた笑み。
皆、可愛い子供達。だから甘える順番に貴賎を付けるつもりはなかった。
美鈴は優しく三人を受け入れて……
「め、美鈴~」
「ふふ、妹様」
「美鈴」
「咲夜ちゃん」
「美鈴!」
「お嬢様も」
そのまま、ごく自然に三人に押し倒された。
「……え?」
左右の手をレミリアと咲夜に抑えられて、腹の上にフランドールが乗っている。
「ああ、美鈴」
その表情はとても甘える為の物ではなかった。
「……あの?」
焦燥が滲んでいた。
抑え切れないほどの感情。
それは過去人の間を渡り歩いて、それなりに経験を積んだ美鈴には理解できるものだった。
認めたくはないし、理解したくもなかったが、それは欲情。
「あ、あの……」
つぅぅっと一筋、汗を流して美鈴が戸惑った様子を見せる。
助けを求める様に見渡した視界には同じような表情が二つ。
ここにきて美鈴は小悪魔の見せる夢の本来の特性と、先ほどのやりとりの齟齬を理解し始めていた。
「ちょ……と…皆……まっ……」
顔を引きつらせる美鈴に三人の手が伸びる。
「「「めーりん!!」」」
盛大に服のやぶける音と、悲鳴がこだました。
水晶玉には絡み合う四人の姿が映し出されている。
「うまくいった様ね」
パチュリーは満足気にそう呟いた。
それから小悪魔に視線を向ける。
「えっと、その、皆さん凄いですね」
「ええ、いきなり育ての親の体を求めるとかちょっと予想外だったけれど」
水晶玉の中での美鈴は既にほぼ全裸に剥かれていて。
だが奇跡的な動きで三人の求愛を捌いている。
「まあ、結果オーライと言うやつね、きっと」
だが、このままでは堕ちるのは時間の問題に見えた。
三対一では多勢に無勢にも程がある。
しばし二人でその様子を観察する。
そして、予想通りに美鈴に限界が訪れた。
「うわぁ……レミィったら……」
「咲夜さんもえげつない……」
「フラン……貴方そんな事まで……」
「これじゃ、美鈴さんも型無しですね…」
そののちの行為は、二人で色々よろしくしているパチュリーと小悪魔ですら驚愕を覚える様なものであった。
そして、無造作にパチュリーが手を振って水晶玉の映像を消した。
「これ以上は野暮ね……」
「は、はい」
それからパチュリーは小悪魔に艶のある視線を向けた。
主人の雰囲気の変貌を察知して、頬を染める小悪魔と見つめ合う。
「ねえ……」
普段の淡々とした声からは信じられぬほど妖しい声。
「皆を見てたら……その……私も……」
小悪魔を見つめるパチュリーの視線は冷たくて、ぞくぞくするほどに蟲惑的で。
たまらなくなったように小悪魔が体を震わせて、主人へと跪く。
「分かっているわね、ご褒美よ」
「は、はい」
伸ばされたパチュリーの指を、小悪魔が舐める音だけがしばらく響く。
それを満足げに見つめてパチュリーは囁いた。
「今日は攻めて欲しいの、ね?」
「ああ…パチュリー様……」
誰も居ない静寂の図書館で、二人だけの狂宴が始まる。
-終-
あっちで続き書かないか?
それと、事情はどうあれ、パッチェさんにこの言葉を送ろう
「それはエゴだよ!!」
ゴをロに換えてもいいです。当人の意思は無視ですか。そうですか。
前回のとは違って、無理やりガチ百合の道に引き吊り込んだ気がします。悪質な洗脳みたいな。
まるで強姦魔だな(若本風に)。
個人の意見だけど、前作で止まっててほしかった。
娘同然に思ってた相手に、半ばレ○プみたいにされたわけだし
前作の余韻も台無し…
と思ったら後書きでこれか
まあ後書きは後書きだし、純粋に本編だけで評価したらこの点数です
と思ったが、あとがきで全て吹き飛んだので、
AAは読み手の環境によって正しく表示されません -20点
>過去作品の設定を どの作品か明示されていない -10点
>ご注意ください。 そういうときのためにタグがあるんだと思います -10点
妄想であれ、望ましくない話だったな
あとがきが救いかね
誤字報告
>嘗めまかしくて
艶めかしくて(なまめかしくて)
その、下品なんですがね……ボッk(ry
後書きがないとさすがにぶち壊しすぎるけどこういうのも好きよw
さあ小悪魔の夢の内容を詳しく書く作業に戻るんだ