Coolier - 新生・東方創想話

目的だけ決めて過程はアドリブってこと結構あるよね

2010/12/23 17:38:11
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 とある夏の日、レミリアはひどく憤慨していた。
 夏は暑い。当たり前であり不変の真理である。
 だがそれを抜きにしても暑かった。否、レミリアの部屋だけが暑かった、異常に。
 それもこれも魔理沙とフランが、下の部屋で何かやらかし始めてからだ。
 魔理沙のことだから2,3日であきらめるだろうと高をくくっていたのだが、
 存外に長く、すでに1週間が経過していた。
 これではいけないと思い、直談判に行ったら出会い頭にマスタースパークである。
 威厳も何もあったものではない。グングニルでも投げてやろうかと思ったら、
 フランがレーヴァテインをちらつかせているので諦めざるを得なくなってしまった。
 こうなってしまったら頼れるのは友人だけである。
 近くの薄情な妹より、近くの大図書館である。そういうわけでパチュリーの元を訪ねたレミリアであった。

「というわけで、溶けない氷とかないかしら」
  単刀直入、さっさと聞いてしまうのが一番いい。あるならそれでよし。
 ないのなら霊夢あたりに援軍を頼むつもりだったのに。
「どうしたのレミィ、暑さで頭でもおかしくなったの?」
 はて、今、目の前の友人はなんと言ったのか。頭がおかしいとか何とか。いやいやそんなまさか
「むしろ頭だけがおかしくなったんじゃ」
 パチェの横に控える小悪魔。彼女が口を開いて出た言葉が、これ?
 おや、おかしいな。ここの連中はこんなにも毒吐きだっただろうか。
 そう考えていたら、おでこにパチェの手が当てられた。
「熱があるかどうか私じゃわからないわ。小悪魔、体温計と専門家を呼んできて」
「わかりました」
 どうも病人扱いされているらしい。いきなりなんなのよ。
「はいレミィ」
「なにこれ?」
「体温計よ。熱いんでしょ」
「いや、私が熱いんじゃなくて暑いのは私の部屋で」
「お嬢様、失礼します」
 突然現れたのは紅魔館のパーフェクトメイドこと十六夜咲夜。それがいきなりおでことおでこをひっつけてきた。
「ちょっと、咲夜!?」
「27,836℃ですわ」
 鼻血をぼたぼた垂らしながらそんなこと報告されても困るのだが、パチェはいたって普通に対応している。
「体温計は27,8℃。さすがは専門家ね。でもこの体温はまずいわね。低すぎるわ」
「いやいや、パチェだって吸血鬼の体温がもともと低いことは知っているでしょう?」
「小悪魔、病院に連絡して頂戴」
 無視かこのやろう。
「パチュリー様、脳科ですか?精神科ですか?」
「内科じゃないの!?体温は何のために測ったの!?」
「どちらでもいいわ」
「また無視か!そして否定しなさいよ!」
「ええっと、幻想郷救急は1119だったっけ?」
 連絡を止めるつもりは毛頭ないらしい。しかし、救急は8556だったはずだが。
『衣玖さんのお天子情報』
「病院は!?」
『本日、総領娘様は……天界で鬼の子、萃香さんとグダってますね。
 おっと胸の大きさについての話に入ったようです。
 どうも総領娘様は自分の胸のほうが大きいと、萃香さんも負けてませんね。
 互いに絶壁だと思うんですが、おおっと!脱ぎ始めました!
 直接争おうじゃないか、ということでしょうか。
 当然のごとくつけてません。なにをって?ご想像にお任せします。
 あ、総領娘様が胸囲では勝ってるとかぬかしてますね。萃香さんが涙目で……ミッシングパワー発動です!
 総領娘様、これは苦しい。必死に反論をしてますが、もともと体がこのサイズだと。
 総領娘様ぐうの音も出ない。決まったようで……緋想の剣を持ち出しました!結局肉弾戦のようです。
 いいところですが、これにて。
 本日のプレゼントはご自宅の窓から天界にいる私に聞こえる声でフィーバー!と叫んだ方に、
 もれなく総領娘様と萃香さんがちちくり合っている様子を収めた写真をプレゼント。
 ただいまより受付を開始します』
「フィーバー!!!!!フィーバー!!!!!」
「うるさい!!」
「フィーバー!!!フィ、ゲホッゴホッ!」
「パチェまで何やってるの!?そんなにほしいの!?」
「レミリアお嬢様はいらないんですか?あ、もうレミリアお嬢様って呼ぶのめんどくさいんで、レミ嬢でいいですか?」
「いいわけないでしょう、やめなさい。なんか響きが嫌」
 嫌に決まっている。だが、世界はそれを受け入れてくれるほどやさしくなかった。
「いいじゃない、レミ嬢も」
 大体何だレミ嬢って。様はどこに言った。いやいやそういう問題じゃなくて。
「これなら、スペルカードにも応用できそうですね。不夜城レッド改めレミ嬢ピンク」
「荘厳な名前が一気にいかがわしくなった!?」
 なんてこと言うんだこいつは、その名前と比べられると私の不夜城レッドまでおかしく見えてくるじゃない。
 あれ、おかしい?いやおかしくないおかしくない。
「……わしくってなんですか?」
「さあ、きっと臭いがするとかなんかそんな感じよ。レミィもお年頃なのよ」
どうもいかがわしくをイカが、わしく(=臭いがする)と捉えられてしまったらしい。
日本語って難しい。しかしイカの臭いって、何?
「キャッレミジョウサンドウィッチ」
 サンドイッチ?
「レミイカお嬢様、ちょうどレミィね」
「略してイカ嬢ですね。イカ嬢でゲソ」
 なぜだろうかものすごく馬鹿にされている気がする。いやたぶん馬鹿にされている。
「いい加減にしなさい。それ以上いくと承知しないわよ」
 釘を刺さないとどこまでも突っ走りかねない。友人とはいえ親しき仲にも礼儀ありだ。
「レミィ」
「レミ嬢」
 元の名前に戻すつもりはまったくないらしい。
「風邪を引いて頭がおかしくなったんじゃ」
「パチュリー様、逆に考えましょう。頭だけがおかしくなったと考えるんです」
 デジャヴの香りがぷんぷんする。ああ、ほらおでこに手を当ててきた。
「私じゃわからないわ。小悪魔、体温計とレミィのエキスパートを」
「エキスパートならすでに来ています」
 そりゃそうだ。咲夜はさっきここに来てから、まださがってないんだから。
「さあ、お嬢様おでこを」
「まずあなたは鼻血を拭きなさい。私は正常だから」
 許可を出す前にくっつけてきた。当然のごとく鼻血は垂れたまま。
 咲夜、いくら私が吸血鬼だからって、目の前でぼたぼた血が垂れてるのをいいとは思わないのよ。
「28,252℃です」
「さすがは咲夜ね。でもこの体温はまずいわ」
「あのね、パチェ吸血鬼だから何の問題もないんだってば」
「小悪魔、病院に連絡して頂戴」
 相変わらずのスルースキルね。
「産婦人科ですか?」
「なんでもいいわ」
「いやいや待ちなさいよ。産婦人科って何よ」
「いや、もうどこに連絡しても変わりませんよ、レミ嬢」
「お嬢様、まさか私の寝ているうちに夜這いを。ああ、言ってくださればいつでもお相手はいたしましたのに」
 だめだこいつら早く何とかしないと。
「幻想郷救急は10398でしたっけ?」
 それさっき連絡したやつと違うじゃない。
『時報です。ただいまお嬢様の体内時計は13:20です』
「ねえ、今の声咲夜よね?」
「なに言ってるんですかレミ嬢。時報の声は時報さんに決まってるじゃないですか」
「だから、その時報さんが咲夜じゃないの?」
「レミィ、デーモンキングクレイドルのしすぎで頭がおかしくなったんじゃ」
「脳細胞死んじゃったんですか?」
 ……ああ、またこの展開か。何をしてるのよ私は。
 氷をもらいに来たんじゃない。そうよ、氷をもらいにきたのよ。それが何でこんなことに。
 またおでこに手を当てられてるわ。この流れを変えないと……この流れは、私自身が打ち切るしかない。
 やってやるわ。やってやろうじゃないの。

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 タイミングをつかむまでに幾百回、何度も太陽が昇っては沈んでいった。
 太陽が昇るたびにベッドに戻り、
 太陽が沈んだら起き、
 夜ご飯を食べ、
 適当に時間をつぶし、
 深夜ご飯を食べ、
 午前のティータイムを楽しんで、
 パチュリーとの話し合いに2時間かけ、
 朝ごはんを霊夢にもらいに行って、
 追い出されて、
 帰ったら寝て、
 また起きて、
 繰り返し繰り返し幾度ものシミュレーションを経て、
 ついにつかんだわ。
 絶好のタイミングを!
『今日の運勢は……はい出ました。
 A型の人は最高に運のいい日となるでしょう。
 神々への感謝のために守屋神社を参拝するのも悪くないのではないでしょうか。
 O型とAB型の人はなかなかにいい感じの日になりそうです。
 ですが更なる運の向上を祈願するために守屋神社を参拝されることをお勧めします。
 B型の人は残念ながら最悪の日になりそうです。
 この不運を振り払うためにもぜひとも、ぜひとも守屋神社での厄払いを』
 どう考えてもあの青いほうの巫女だ。
「どう聞いても自作自演じゃない」
「大変ですよレミ嬢、B型ばっかり飲んでるから今すぐにでも行かないと」
「とことんまで無視か。それに飲んでる型と私の血液型に関係はないから」
「レミィ」
「レミ嬢」
 ここだ。ここで止めないとまたあの無限ループに入る。
「あああああ!あああああああああ!!それ以上は言わせないわよ!
いい!?私は溶けない氷がほしいの!フランと魔理沙が私の安眠を八卦炉で邪魔をしてくるから氷がほしいの!」
「倒せばいいじゃない」
「できないから毎日毎日ここに来てるんでしょうが」
 最近はドアの前に立っただけでマスタースパークが飛んでくるようになったし。
「レ無理アってのも」
「よくない」
「でも、確かにあの2人のコンビネーションはいいわね。
マスタースパークで退路をふさいだ後に、フォーオブアカインド+レーヴァテインで一気にしとめに来るものね」
 え?あの2人そんなえげつないことまでしてくるの?
「ま、まあ、そうね。うん、ほんと困っちゃうわ。で、思ったんだけど2人がかりって卑怯じゃない?」
「お嬢様、霧雨魔理沙と妹様、お二方からクレームの手紙が届いています」
 魔理沙とフランがわざわざ手紙を……ん、ちょっとまて。
「何そのタイムリーな手紙。私、今初めてこの言葉を発したんだけど」
「痴呆ね」
「はいはいよかったよかった。それ以上言わせないわよ。で、咲夜、手紙の内容は?」
「では読みます。『来いよレミリア、ショットとボムなんか捨ててかかってこい。ルナティックで相手してやるよ』とのことです」
 そっちが有利になる条件を持ちかけておいて呼び捨てとは、何様のつもりかしら。
 仮にも私が姉なのよ。コテンパンにされても姉なのよ。
「レミ嬢ちゃん指名入ったよ!」
「だれがレミ嬢ちゃんだ。いいわよ、やってやろうじゃないの。500万で売ってやるわ」
「ずいぶんふっかけるのね」
「0を2つつけても安いぐらいよ」
 さすがにこの額はどうにもできないでしょう。いや、どうにかされたら困る。
「あ、追伸がありました。『日時と場所はこちらで決める。一人で来ること』。これと500万ジンバブエドルが」
 まずい、どうにかされた。
「じ、じんばぶえどる?それが何かは知らないけれど、言われずとも私をその評価においたところだけは礼儀があるじゃない」
「ちなみに外の文献によると、それはお金としての価値をなしていないわ。安いわね」
「安いですね」
「レミ嬢安、魔理フラ高ですね」
 ……魔理沙もいるとはいえ、実の妹からの評価がこれほど低いとは。
「ああ……もういいわ。戻して、氷の話なの。溶けない氷がほしいの」
「つまり、レミィの話を総合するとこうね」
 おお、珍しく話題が元に。
「魔理沙とフランの結婚は許さないと」
 戻ってねえ。
「言ってない言ってない。認める気もないけど。それより結婚って何?」
「魔理沙さんと妹様の仲に納得の行かないレミ嬢」
「そこでフランの見ていないところで、こっそりグングニルで魔理沙をいびり続けるレミィ」
「妹様に発見されるお嬢様、そこで3人は桃園の誓いを結んだのです」
「まさにレミ嬢ピンク、いやレミ嬢ピーチ」
「この幻想郷で一番常識にとらわれないものを決める素潜り対決が今始まる」
 ……おかしいな……頭痛くなってきた。
「あなたたち全員優勝でいいんじゃない?」
「大丈夫です、お嬢様。いざとなれば、この十六夜咲夜がお嬢様と結婚いたします」
「何が大丈夫で、どこがいざとなれば、なのか全くわからないのだけれど」
「ヒューヒュー」
「うぅ、レミィお幸せに」
 だめだ、たたっ斬らないとまた変な方向に流れる。流される。
「ええい、違う違う!パチェ、溶けない氷はできるかどうかを聞いてるの!yes or no はい!」
「nes」
「はいえ」
「どっちだ!?」
「お嬢様」
「なに?」
「ぬ、nui」
「無理に混ざらなくていいから」
 nesって何だ?はいえって何だ?聞きたくないけど聞くしかない。聞かないと話が進まない気がする。
「で、nes、nesね。どういう意味なの?」
「nesというのは、noとyesを混ぜ合わせた画期的な返答方法で」
「氷が作れるのかどうかを聞いているの」
「はいえというのは、はいといいえを足した高度な受け答えで」
「氷なの氷、ice」
「nuiというのは、noとouiをあわせた表現で」
「わかったわかった。氷は作れるの?作れないの?アイスよアイス」
「あいまいな言葉が好きな日本人的表現といえるわね」
「ワタシニホンジンチガウ」
 大体この洋館のどこに日本人がいるというのか。魔理沙がいたか。
 でもあいつって日本人なのか?いやいやそんなことは問題じゃない
「氷よ。iceよ。できるの?できないの?」
「ice cream」
「I scream コアーーーッ!!」
「レミィ、溶けない氷、そう、深い心のわだかまりは早く溶かしたほうが」
「精神的な意味じゃないの。物理的な意味で氷がほしいの」
「そんなに妖精大戦争に出たかったんですか?」
 いや、別に出たくないし。何が悲しくてあの氷精と弾幕張らねばならんのだ。
 それと私単独の話はいつ来るのかしら。
「違う、食らうんじゃないの。置くの、冷房装置、インテリア」
「そんなレミィに、はい」
「パ、パチュリー様それは!」
「これは香霖でしょうが!」
 誰がどう見ようと東方香霖堂である。
私メインの本はいつ出るのかしら。
「氷が言いの!こ・お・り!」
「どうぞ」
 小悪魔からかろうじてりんごの形を保っている、『何か』を差し出される。
「……なに、この生理的に受け付けない物体X」
「『こ』んなこともあろうかと、『オ』イルにぶち込んだ、『り』んご。略してこおりです」
「食への冒涜よ。はぁ、突っ込んでたらのどが渇いたわ。咲夜、何か冷たいもの」
「お嬢様が突っ込むだなんて、た、たまには私にも」
「いいからさっさと行ってきなさい」
「かしこまりました」
 ここが吸血鬼の館であるとはいえ、鼻血をところ構わずぼたぼた垂らすのはやめてほしい。
 後、あの謎の妄想癖もやめてほしい。
「パチェ、氷はないの?氷よ」
「もう、レミィったらどこからかぎつけたのかしら。カモン」
「え、あ、えぇ?」
 メカメカしい春告精のような塊がこちらに向かって歩いてきた。あんなやつメイドに雇った覚えはないのだが。
「『こ』う魔館、『オ』リジナルの、『リ』リー。こおりよ」
「いや、あの、氷以前の問題なんだけど」
「氷の体よ」
「比喩、直喩の話じゃなくてね。えっと、まずどう見ても春告精のパクリよね」
「失礼ね、インスパイアと言ってもらいたいわ」
「オマージュとかパロディもありですね」
『ソノトオリデス』
「え?喋った?」
『ハジメマシテレミリアサマ。パチュリーサマ、ニトリサマ、アリスサマニツクラレマシタ、メカリリーコトリリーグレイデス』
「あの人形遣いに河童も関わってるじゃないの」
「そのときは、&アリスとか、&にとりとか、つけるから何の問題もないわ」
 いろいろと問題だらけな気がしないでもないが、今の私に必要なものは氷だ。
 危うく流されそうだった。危ない、危ない。
「お嬢様冷たいお飲み物をお持ちしました」
 そういえば飲み物を頼んでいた。しかし咲夜にしては。
「ずいぶん時間がかかったじゃない」
「すみません、なにぶん材料がなかったもので」
 いったい何を持ってきてくれたのかと、内心わくわくしながら振り向いたのだが……何でそんなものを持っているの?
「咲夜」
「何でしょう?」
「私はのどが渇いているといったはずね」
「そのとおりです」
「じゃあ今あなたが手に持っているものは?」
「元気が出る辛さ100倍カレーです」
「辛さ100倍!?飲み物を持ってきてといっているのに、カレーを持ってきたうえに辛さ100倍!?」
「レミ嬢、カレーは飲み物ですよ」
「どこの誰がいった言葉か知らないけど、私の中の常識ではカレーは食べ物なの」
 誰だ、カレーは飲み物なんて初めに言ったやつは。会ったらグングニルぶっぱなしてやる。
「お嬢様、しっかりと温度は5℃以下にいたしましたが」
「何でそこだけしっかりと遂行してるの!?私はそんなもの今いらないの、下げて頂戴」
「食への冒涜ですね」
『スキキライスルトオオキクナレマセンヨ』
「好き嫌いとか冒涜とかのレベルじゃないから。とにかく咲夜、水、水でいいから持ってきなさい。
あと、そのカレーはあなたが責任を持って処理すること」
「かしこまりました」
 美鈴があのカレーを食わされなければいいのだが。
「すいません氷を切らしていたようで」
「あらそう、ならこれを使いなさい」
 ……ん?
「パチェ、それって氷じゃないの?」
「?そうね、氷よ」
「なにわかりきったこといってるんですか」
「あなた氷を持ってたのに出し惜しみしてたってこと?」
「溶けないって言う条件をつけたのはレミィよ。これは溶けにくい氷だから」
 揚げ足取りにもほどがある。
「それでいいわ、1つよこしなさい。ふふふ、見てなさいフラン、魔理沙、これで快適に眠ってやるわ」

「……終わったわね」
 全員が息を吐いた。やっと終わったという表情だ。
「終わりましたね。というより終わらせましたね」
「みんな実験の協力ありがとう」
「いえいえ、全てはお嬢様のためですから」
「それにしてもレミリアお嬢様の気が立つことをしてどれぐらい精神が持つか、なんてよくやりますよ。
魔理沙さんに妹様まで動員して」
「限界を知っておくって言うのは大事なことよ、それが身内ならなおさらね。結局根負けしたけど。
氷は……プレゼントにでもしておきましょうか」
 全てはレミリアの精神力を試すためのものだったのだ。
「パチュリー様、あの氷ってこういう仕組みなんですか」
「水に氷結と圧縮の魔法をかけてるのよ。
もともとはじける弾幕に使おうと思ってたから、
片方が解除されるともう片方も解除するようになってて、
魔法をかけなおすのが面倒くさいのよね」
『パチュリーなら溶けない氷を作るのなんて楽勝じゃないの?』
「作るのが面倒だし、作ったら作ったで解除するのも面倒なのよ。質問は終わり?」
「はい、ありがとうございます」
「それじゃ、咲夜、もうさがっていいわ。
レミィに実験のことは知らせちゃだめよ。抜き打ちでいつかやるつもりだから」
「かしこまりました。それでは、失礼いたします」
 手品の種もわかったところで、咲夜はフランドールと魔理沙に実験の終了を告げるために図書館から出て行った。
「にとりも脱いでいいわ」
『ん、いいのかい?』
「ぷはぁっ、やっぱりこういうごてごてしたのは動きにくいね」
 そしてリリーグレイを演じていた河童のにとりもメカメカしいよろいを脱ぎ捨てる。
「そもそもなんでそんなもの持ってきたんですか」
「さっき言ったリリーグレイって言うのは口からでまかせじゃなくてね、
パチュリーとアリスとの共同開発で半自立型リリーグレイを作ってるところなんだよ。
ガワができたから持ってきたらいきなり着ろってのはねえ」
「このタイミングで来たあなたが悪い。そして名称はメカリリーよ」
「いいや、こればっかりは譲れないね、リリーグレイだ」
「メカリリー」
「リリーグレイ」
「メカ」
「グレイ」
「むきゅきゅきゅきゅ」
「かぱぱぱぱ」
 激しい口論が続く中、冷静に見守っていた子悪魔が何かを思い出したように声を上げた。
「パチュリー様もにとりさんもその辺にしてください。それより」
「重要なことよ」
「わかりましたから。パチュリー様、何か忘れてるような気がするんですが」
「……ああ、そうだわ。水にかけた魔法がそろそろ解けるからもう一度かけなおさないと。小悪魔、持ってきなさい」
 とたんに小悪魔の顔色が悪くなる。
「あの、非常に言いにくいのですが」
「どうしたの」
「レミリアお嬢様がさっき持っていかれたのがそれです」

その日紅魔館にレミリアの盛大な悲鳴が響いた。今日も幻想郷は平和である。
はじめまして、銅です。
変なところがあればどんどん指摘してください。
よろしくお願いします。
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コメント



0.270簡易評価
1.70名前が無い程度の能力削除
『勢いばかりだが嫌いじゃないぜ』
『説明不足でわけわからん箇所がちらほらあったけど』
2.100名前が無い程度の能力削除
『滲み出る失踪(疾走)感』
『俺の為のSSか』
9.90名前が無い程度の能力削除
『SAS〇KEのコースをスケボーでクリアーするなら多分こんな感じだと思う。支離滅裂な謎の疾走感と十分なエンターテイメント性』
『三回からじわりと来るぜ。飽きとか。』