太陽が徐々に沈み夕暮れ時の幻想郷。
夕暮れ時とは、季節によって時間が違うが、
1人で暮らしているうえでは、最も優雅な時間である。
夕日が程よい光を照らし出し、静かな雰囲気を演出してくれる。
この静かな雰囲気の中で一番映えるのが、音楽というもので、
耳と頭の中に直接頭に入ってくる、今聞いている曲は静かなものではないが
どこか気分を高揚にさせてくれる曲である、珍しく紅茶を飲みながら、
そんな優雅な時間を満喫していた。
そんな優雅な時間の中、ドアを思いっ切り開ける激しい音が響いた。
「おーい、香霖、茸を採ってきてやったぜ、これで茸焼きとしようぜ」
静かで優雅な時間とは、1人でなければならない
それでもって一番静かでないやつが来た。
「いきなり来ていきなり食事会とは、忙しない奴だな。
こっちは、1人で静かな時間を楽しんでいたのに」
魔理沙は、辺りを見渡した、紅茶のカップに蓄音機、
それに手に抱えてある読んでいる途中の本。
「なるほど、お前は自分だけで音楽を聴きながら静かに
優雅な時間を楽しんでいたわけだな、
安心しろ茸焼きは、優雅なのは保障するぜ」
「茸焼きのどこが優雅なんだ、紅茶と合わないし、音楽の音が聞こえないじゃないか」
「茸で紅茶を淹れれば優雅だぜ」
別に紅茶だけが優雅なわけじゃない、そんな会話をしてるうちにまた1人やってきた。
「霖之助さん、お酒を持ってきたわよ
食事をするのは、魔理沙から事前に聞いてるわよね?」
「事前に聞いた覚えは無い、それに僕は1人で静かな時間を楽しんでいたんだ
それを君達がいきなり茸焼きだなんて訪ねて来て」
霊夢も魔理沙と同じところを見渡した、それでもって得意げな顔をされた。
「そう、霖之助さんは、静かで優雅な時間を楽しんでたのね?
いいじゃない、1人で楽しむよりみんなで楽しんだ方がうるさいわよ」
「・・・仕方ない、わかったよ茸焼きには付き合う、
でもまだ夕食には時間が早いじゃないか、
音楽も最後まで聴いてないし、少し時間経ってからにしないか?」
時間を邪魔された事は嫌だったが、茸焼きでお酒を飲むのは悪くは無かった。
少し時間が早い事には、2人とも納得したらしく少し時間を置いてから
食事会をすることにした。
「それにしても、この音楽中々いいじゃないか、気分が良くなるぜ」
「ああ、その音楽かい?そ少し前に稗田家に用があったときに貸してもらったんだ、
それは、幺樂団の歴史というものらしい、
何枚か同じのがあるらしいから貸してもらえたんだけどね。
いい曲ですからぜひ聞いてみてください。って言ってたな」
「へぇ、稗田家から借りたのね、確かに気分が良くなる曲ね、お酒に合いそうだわ」
「あぁ、僕も素晴らしい曲だと思った。それで、自分でも演奏してみようと思って
前に拾ったキーボードというものを使ってみようと思ってね」
店の奥に足を運び、キーボードをとりだしてきた。キーボードは、
運ぶのに便利だ、重くもなく軽くもなく運びやすい
このキーボードというやつは、黒と白のボタンから音が奏でられるらしい
「おぉ、これ見た事あるぜ、確か前に戦った幽霊三姉妹の赤いやつが使ってたっけ?」
「そういえばそうねぇ、あいつの持ってるキーボードは不思議な音らしいわよ」
「キーボード自体不思議だがな」
「このキーボードの音は不思議じゃないけど確かにキーボード自体は不思議だ。
僕も手に入れて倉庫に入れっぱなしだったんだけど、ちょうどいい機会だったよ
まだ始めたばかりだし、キーボードの事自体詳しくないけど
ほら、こんな風に音が奏でられるんだ」
そういって、今かかってる曲を真似するような感じに振舞って
キーボードの黒と白のボタンのいろんな所を押した。
しかし、キーボードから奏でられる音は、リズムも違うし音もどこか外れてしまう。
「このキーボードの音も不思議な音みたいね」
「不思議なキーボードだな」
「仕方ないじゃないか、まだ始めたばかりなんだ」
「なんだ、始めたばかりでも香霖は楽器が弾けるから
キーボードを出してきたのかと思ったぜ」
「そんな事はない、それに音楽というのはすぐ弾けるようになるほど甘くない
何度も繰り返して弾いていって初めて一曲が弾けるようになるんだ。
ましてや今かかってる様な曲は、相当な鍛練が必要だろう」
「ふ~ん、でも弾けなくても音が鳴らせるだけでも面白そうね、
ちょっと私に貸してみてよ」
そういうと霊夢は、音を試しながらかかってる曲を真似し始めた。
ぎこちない動きとはいえ、音はあっているようだ、
これも霊夢の勘というやつだろうか
「なんだよ、霊夢に真似できるなら私にも真似出来そうじゃないか」
そういって魔理沙も挑戦したが、僕と同じような音になった。
音楽とは、すぐに弾けるようになるほど甘くは無いが、
全く出来ないでも挑戦してみる事が大事である。
興味はあっても難しいからやらないでは、何をやっても上手くはならないだろう。
そんなこんなでキーボードの話しで盛り上がりながら時間が過ぎていった。
もう辺りも暗くなり、夕飯時には丁度いい時間になり
茸焼きを肴にお酒を飲む事にした、飲みながらも音楽の話題が続いた。
「それにしても、キーボードの音だけじゃつまらないわね、
もっと気分が良くなる楽器とかお酒に合いそうな楽器とか
集めてみたらどう?」
「楽器というのは値が張るんだ、そう易々と集められるもんじゃない
1つの音を鳴らす楽器だけでも家が買えてしまう様な楽器だってある。
今回のは前にたまたま落ちていて、使える楽器だったからいいけど
落ちていても使えない楽器ばかりなんだよ」
「1つの楽器で1つの音しか鳴らせないのっては不便だな」
「いや、どうやら外の世界の楽器には、1つの楽器だけで
100種類以上の音色を出せる物も落ちていたよ、
でも、その楽器はどうやっても音すら鳴らないんだ」
「100種類だって!?そいつは驚いたな、でも音が鳴らないんじゃ意味が無いな」
「外の世界の物は、幻想郷では、信じられない能力を持っているからね、
その分使える条件も特殊なんだ、幻想郷でも使える条件の物でも
あればいいんだけど・・・」
「まぁ、どうだろうね、とりあえず飲みましょうよ
お酒を飲めば1つの音色でもいろいろな音が聞こえるかもしれないわよ」
「そうだそうだ、とにかく飲もうぜ」
「2人とも飲みすぎだよ」
そんな話をしつつ、食事会での時間は過ぎ、酔っ払ったまま
2人は帰っていった、後片付けもしないままに。
次の日、夕暮れ時に僕は外の世界の道具を拾いに行った。
そこで僕は、とんでもなく素晴らしいものを発見してしまった。
「なんだよ来て見るなりいきなり油揚げを持ってて
また紫に用があるのか?」
僕は拾いに行って帰ってからすぐに店の前に立ち
油揚げを手に持ち、前とは違う者をおびき寄せようとしていた。
「おお魔理沙か、いや今回用があるのは紫じゃなくて
その式神の方に重要な依頼があるんだ」
「藍の方にか?あいつに依頼を頼んでも何かの計算を任せるくらいの事しか
出来ないと思うぜ」
「今回は、式神というところが、一番ポイントなんだよ。
今見せるから、店に入ってくれ」
そういって魔理沙を店の中にいれ油揚げを店の前の地面に置いた。
そして、今日拾ってきたものを魔理沙に見せた。
「なんだこりゃ、でかくも小さくも無い箱だな、これがどうしたんだ?」
僕が拾ってきたこの箱は正面にボタンがいっぱい付いており
それなりに重い箱である。
しかし、それは僕の常識を覆すものだった
「これは※音源モジュールと言って、その名称はSD90というらしい、
音楽の楽器なんだが驚くべきは、この楽器に入っている音色は、
1000種類以上も入っているんだよ」
(※音源モジュールとは、簡単に言うとこの機械自体に音色のデータが入っていて
パソコンに繋いでパソコン内の音楽データを鳴らすものです)
「1000種類だって!?おいおい、昨日話したときは100種類が
どうのこうのの話しだったじゃないか
それにこんな歪な箱がどうみたって楽器じゃないぜ、
どうやって演奏するんだよ」
「演奏するには、条件がいるんだ。1つは式神にしかこの楽器を扱えない事
2つ目は式神がイメージをしないと音が鳴らないこと
とにかく条件には、式神である事が必要なんだ。
それに紫の式神は、かなり優秀だそうじゃないか
優秀な式神ならその能力にこの楽器も比例するんじゃないかな」
「ふーん、でも式神にしか音が出せないのは残念だな
式神以外でも音を出せたらいいのにな」
「便利なものにはそれなりのリスクが伴うものだよ
でも、この楽器は自分がイメージした曲を式神に命令すれば
式神がイメージした音を奏でてくれるらしいんだ。
だから今回紫の式神の演奏が上手くいけば
僕も式神を従えて見ようと思ってね」
それにしても、昨日楽器の音色の話をしたばかりで
このようなものが手に入るとは幸運である。
これはきっと、僕の音楽への熱意が通じたに違いない。
「霖之助さん、地面に油揚げが落ちてたわよ。また紫でも呼ぶつもり?
って大事そうに見てるけどなに?この箱は」
「霊夢、この箱は・・・」
「式神にしか扱えないへんちくりんな楽器だそうだ、
へんちくりんでも1000種類以上の音色を出せるらしいぜ」
僕が説明しようと思ったら代わりに変な言葉を加えて説明された
また話が長くなるのが面倒くさかったんだろう。
「ということは、今度は藍の方に用があるのね?
って1000種類以上の音色を出したらへんちくりんな曲にならないかしら?」
「それは大丈夫さ、用は曲のイメージと音色のイメージを
式神が持っていれば、曲が成り立つんだよ。」
「それ以前にどうやって藍を呼ぶかだな、私もその箱から音が流れるのを
聞いてみたいものだがな」
「そうねぇ、紫も藍もどこにいるかわからないわね
藍はたまに人里で見かけるけど人里に油揚げでも置いておけば寄ってくるかな?」
そう、問題はどうやって式神を呼ぶか、その為に油揚げを置いたのだが・・・
「あら、私の僕に何か用があるのかしら?」
ふと気づくとドアがいつの間にか開いていて、紫がそこにいた
「毎月の代金をこっそりいただきに来たのですが、なにやら
面白い話をしているみたいですわね。少し待ってれば藍を呼んできますわ」
そう言い残すとドアを閉め、すぐに姿を消してしまった。
不幸中の幸い、いや、不幸ではあるがこれはタイミングがいい
やはり僕の熱意が天に通じたに違いない。
「なんか面白い事になってきたな、式神にしか出来ない音楽って
どんな音楽なんだろうな」
「どうだかねぇ、まぁあまり期待しないでおくけど」
僕は期待している、しかし1つ気がかりな事がある
外の世界の式神、つまりコンピューターには扱えても
幻想郷の式神には、扱えるかどうかという問題だ。
使役者の命令どおりに動くという点では
同じで、この音源モジュールというやつも
式神を通して命令すれば演奏できるらしい。
なので幻想郷の式神でも扱えるはずだと思うのだが。
少し考えているうちにドアが開いた。
「初めまして、私は紫様の式神の八雲藍と申します。
紫様が仰るには、貴方は私に用があるみたいですが
いったい何の用でしょうか?」
「おお、君が紫の式神か、君にこれを使って演奏してもらいたいんだ」
置いてある箱に指を指した。しかし少し訳のわからなそうな顔をしている。
「はぁ、私がこれで演奏ですか、私は演奏というものをしたことがないのですが・・・
しいて言うなら音楽を少し聴いたことがあるくらいで」
「僕の能力によると式神が音を出せるものらしいんだ、
だからこの箱に触って曲をイメージすれば
さぁ、演奏してみてくれ」
不可解な表情のまま、紫の式神は、置いてある楽器に触り
目をつぶってイメージをしている。
が、何も起こらない
・・・辺りが静まり返った。しかし何も起こらない
よくみると紫もいて少しにやついているようだ。
「・・・何も起こらないぜ」
「そんな気もしてたのよね」
「あの・・・すみません、もう終わってもよろしいでしょうか?
私も仕事の途中で呼び出されたもので・・・」
「え?あぁ・・・それはすまなかったね。もういいよ」
残念な気分に陥った。僕は式神にイメージという指示をだし
イメージしたものを奏でられるというのは、間違っていないはず
紫が傘でこの楽器を指し満足そうな顔で話を始めた。
「面白い光景を見せていただいたお礼に種明かしをしますわ。
これはね、外の世界の式神とこの機械を繋いで
情報を同調させなければいけませんの
幻想郷の式神では、機械と繋ぐなんてことは出来ないわね」
やっぱり幻想郷では、この楽器を扱うのは無理だったのだろうか
若干予想はしていたが、やはり残念だった。
「でもこの機械古いけど、外の世界の一部の人間からは、
まだ中々人気があるものなのよね
代金としてちょうどいいですわね。これが今月分ということで」
箱を持ってドアを閉め、追いかけた時には、式神と一緒にもういなくなっていた。
紫は、始めから知っていて式神を呼んだらしい。
結局僕の熱意は、別の方向へと天に向かってしまったらしい。
「いい物を手に入れたと思ったんだけどな、
まぁ・・・使えないんじゃ意味はないか。
ところで2人は、この時間に何しに来たんだい?」
「おおそうだった、今回は茸はないが酒盛りをしようと思って
お酒を持ってきたんだ」
そういうと帽子から小さめのお酒を取り出した。
霊夢も「あら偶然ね」といいお酒を服から取り出した。
今回僕は、恥ずかしい思いをしたわけだが
こういうときは、お酒を飲んで楽しんで忘れてしまう事に限る。
しかし、飲みすぎには注意しなければいけない。
早速奥からおかずを取り出し、お酒を飲みあう事にした。
お酒を飲むと世界が変わる、お酒を飲むと音楽も変わる、
1つの音色でも、楽しみようによっては、全然変わる事もある。
音は少なくとも、僕は楽しみ方を変えながらこれから音楽を取り組んでみる事にした。
次回も期待してます
あと誤字報告
>幻想郷の式神では、機会と繋ぐなんてことは出来ないわね
恐らく機械かと
でも、とても原作のテイストがあって良お話でした。