「ねえ小傘さん」
「うらめしや?」
小傘は早苗に話しかけられたので、首を傾げながら『うらめしや?』と返事をした。
「あなたの能力って『人を驚かせる程度の能力』ですけど、これって被ってますよね? 橙って妖怪が確かこれと同じ能力を持ってるんですよ」
「うらっ!?」
「ほら、そのキャラ作り。ひょっとして橙と能力被ってるの理解(ワカ)ってて、キャラで差つけようと思ってません?」
「そ、そんなことないめしやよ」
「うわっ、キモい」
早苗はキモがったが、小傘は内心ほくそ笑んだ。今の振る舞いは、早苗があまりのキモさに驚いて小傘の驚きエネルギーが補充されるのを計算した上で行ったことだからである。
「ていうかそもそも、いいですか? 私当時出演してないから知らないんですけど、妖々夢だったか永夜抄だったか、『人を幸せにする能力』を持った兎が東方には存在してるらしいんですよ」
「ふぅん、すごいや! 早苗は物知りだね!」
小傘は『うわぁ、こいつ東方とか妖々夢とか出演とか意味わからんこと言い始めたぞ』と思った。
「『人を幸せにする能力』は、なんでも彼女と会っただけで人間が無条件で幸せになるそうなんですが、あなたの『人を驚かせる能力』って、別にあなたと会った人間が無条件で驚いてるわけじゃないですよね? ほら、星蓮船で人間が3人、6つのシチュエーションであなたと会話をしますけど、驚かないじゃないですか」
「うらめしや」
「はいはい、表は蕎麦屋。で、実際どうなんですか? あなたの『人を驚かす能力』って、嘘なんですか? 被ってる上に嘘能力だったんですか? あなたは新手のクズですか?」
「だったらお前今すぐ奇跡起こしてみろやファック」
小傘が突然ドスの利いた低い声で喋ったので早苗は再度驚いた。
そう、実は多々良小傘には、確かに無条件で人を驚かせる能力は無い。そもそも東方の能力には、実は二種類あるのだ。
一つはてゐの『幸せにする』、咲夜の『時間を操る』のような、その能力名がイコール、その人物の持つ特殊能力(超自然的な超能力)であるパターン。
もう一つは妖夢の『剣術を扱う』などといった、自分の得意分野をさも能力であるかのように自己申告するパターン。
小傘は後者に当たる。
このたった628字の文章の中で、小傘は早苗を2度も驚かせている。つまり、小傘は『人を驚かせる』という特技を持った妖怪なのであり、決してそういう特殊な能力を持っているわけではない。
星蓮船本編をプレイしたプレイヤーで、果たして2面で驚かなかった人間はどの程度存在するのだろうか。
一面の物騒な人食いネズミを倒したと思ったら、二面ではやたら可愛くて弱そうな妖怪が出てきた。…と思って安心するのも束の間、そのあまりの実力に『驚く』ことになる。
そう、小傘は、その圧倒的な実力とのギャップで驚かせるために、わざとキャラを作り、弱弱しい妖怪のフリをしたのだ。B早苗はまんまと踊らされたことになる。妖怪をいじめていたつもりだったのが、実は手のひらで踊っていたのだ。
「ごめんね早苗、気を悪くしないでね。はい、仲直りの握手だよ」
「え…? あ、は、はい…」
早苗は唐突に小傘から右手を差し出されたので、つい握ってしまった。
…………………ボトリ。
「………~~~~~~~~~~~~ッッッッッ!!!?!???」
「ははは、落とすなよぉ。お前を愛する者の手だぜェ?」
しかし小傘が握らせたのは事前に用意しておいた人間の手首だった。これで早苗は今回、三度も驚かされたことになる。
小傘はさらに驚かせるために早苗に前蹴りをぶちかまそうかとも一瞬考えたが、人を驚かせる手段として暴力は最低だと考えているのでやめた。
「それじゃあね、早苗。ごちそうさま。そろそろ記憶を消させてもらうね」
「………え? ………え?」
「今まで何度もやってることだから大丈夫だよ。明日になったらまた、いつもどおり、私をいじめに来てね」
「え……?」
早苗の意識は途切れた。
手首はどうしたとか突っ込んでもいいのかな、こが
>そろそろ記憶を消させてもらうね
脈絡なく便利な力使いだして吹いたwお前それが能力じゃないのかw
でも評価は微妙 もうちょっと纏めたら面白かったかも
EXじゃしこたま驚かされたよ。
全体的にぶん投げてただけって印象。それはそれで良いけど、オチをぶん投げないでもうちょい締めるか、投げるなら投げるでもっと遠くにぶっ飛ばして欲しかった
磨いたら面白くなりそうな感性だと思いました
気がつけば最後まで読み切ってしまった。