*注意*
グロテスク表現が多々あります。
苦手な方はお戻り下さい。
念の為、年齢制限として15R指定の物とさせて頂きます。
15歳未満の方はご覧にならないようお願い致します。
サンホラの'黒き女将の宿'を聞いていると尚光景が目に浮かぶと思います。
「ねぇルーミアは何で人を食べるの?」
「え?」
唐突な質問に対してルーミアは不意を着かれた様な声を出す。
それは霧の湖の近場で、彼女達がいつもの通りカエルを捕まえたり等、他愛無い事をして戯れていた最中の事であった。
質問した当人であるチルノは、そんなルーミアを気にせず改めて聞いてくる。
「だーかーらー、何でルーミアは人を食べたりするの? って聞いてるの」
「うーん、何でと聞かれても。妖怪だから私は人を食べるんだよー」
「でもさ、妖怪でも人を食べてない奴多いじゃない。むしろ大抵は食べたりはしてないし、一緒に暮らしたりしてる奴もいるじゃない」
ばたばたと手を振りながらチルノはルーミアに聞いていく。
「別に人を食べるのが悪いから聞いてる理由じゃないよ? 生きていくには食べられるものがあるわけだし。ただ、なんで人間なのかなーって思って」
「チルノちゃんが珍しく難しい事聞いてくるよー・・・」
「あたいは最強だからね! でも分からない事はちゃんと聞く事にしてるの、より最強に近づく為に!」
「うーん、そうだなー。食べる理由かー」
ふふん~、とチルノは腰に手を当て偉ぶってみる。
質問に問われてしまったルーミアは、それに答えるために首をあげ手を顎に掛けて軽く考えてみる。
「うん。それはね」
何とも簡単に答えが思い浮かぶ。食べるという行為において、これ以上ない理由だ。
笑顔でルーミアはチルノに質問された答えを告げる。
「美味しいから、だよ」
えー、とチルノは顔を歪ませる。
人間と少なからず関わりを持つ彼女にとってはにわかに信じたくはない答えだったからであろう。
「ほんとだよ。美味しいの、特にー」
そんな彼女を気にせず、なんていう部分だったかな? とルーミアは首をひねり思い出す。
「そう、特にね。肝臓が美味しいのよ」
「肝臓? ・・・って何?」
「最強なチルノちゃんでも流石に知らないのかー。んとね、人間の内臓。つまり身体の中にあるんだけどね。その中の一部分に肝臓って言う物があるの。人間もパイにしたりして食べたりしてるのよ」
「ふーん、でもさあまりよく知らないけど他の動物も同じなんじゃないっけ?」
「ん?」
「ん、いや。内臓ね。それじゃ他の動物にも同じのがあるんじゃないの?」
「他の動物にも肝臓は確かにあるね。それでもやっぱり食べるには人間のだね」
「そこはこだわるのね、美味しいから?」
にこにこと笑顔のまま、宵闇の少女は答える。
「そう、美味しいから」
その後納得したのかしていないのか、そもそもそこまで気にした事でもなかったのであろうか? チルノはそんな事よりもと、弾幕ゴッコをしたり、カエルを凍らせたりしたりして遊ぶ事に没頭した後、周りが暗くなってきた頃にルーミアと別れた。
ルーミアも聞かれたことなんてもう既に忘れてしまっていた。そんな事より次にチルノと出会った時に何かいたづらをしてみようか、等と考えていた。
いつもチルノは何かしら驚かせようと色々してくるのだ。たまにはこちらから驚かせてみようか。例えば昼寝している時に起きたら真っ暗にしておくとか・・・、混乱して四方八方に氷を撃ちそうではあるが。
それもなかなか面白そうだなと思い、ルーミアは静かに一人笑う。
てくてくと、宵闇の少女は一人路を歩く。
ぞくっと、肌を震わせる。
それは似たような状況であったからであろう。
そう、いつかのあの時と同じような雰囲気。
暗い、宵闇の中。
・・・早く帰ろう。
そう思ったルーミアは足を早めようと考えたが、すぐに思い至る。
「あ・・・」
そうだ、今は帰る家なんて無い。
家なんてないから、いつも私はふらふらと彷徨っているんだ。
急がなくとも、私には
「ちょっといいかしら」
びくりと身体を震わせる。
同じ、だ。
声を掛けられた事も、あの時と同じ。
そう、あの時と―――――
///////////////////////////////////////////////////////
「ちょっといいかしら」
「ん?」
唐突に声を掛けられ小さな少女は立ち止まる。
黒い服で身を包み、赤いリボンを結んでいるくすんだブロンド色の髪の毛を揺らして少女は振り返る。
「わたし?」
「そう、貴方よ。可愛らしいお嬢さん」
笑顔でその人は私を引き止めた。
時刻は既に酉の刻(十八時ほど)を過ぎており、周りは薄暗い闇に包まれ、若干肌寒い空気が空間に敷き詰められている。
そこは若干貧相な暮らしを虐げられている人々の町であり、街に灯を燈す程の資金は街に残っておらず夜になれば殆どの通りは真っ暗になってしまう。
しかし、暗くなったとて何もそこまで苦労や問題ごとも起きないので十分であった。歩く程度であれば近場の家から漏れ出した光で十分であった。
たまに路地裏から喧騒が起きていたりする事もある。そういう時は関わる事さえしなければ十分である。ただ、もれなく次の日そこへ目を向けてみれば何か紅い物が見えたりすることも多々ある。
「なーにー?」
「ごめんね、突然声を掛けて。ちょっとお願いしたい事があるの」
そういって困った顔を向けてくるのは、歳は三十路半ば程の若干ふとましい感じの女性であった。
調理の途中であったのだろうか? 女性はエプロンを身につけている。
「お願い事・・・? でも、もうそろそろ暗くなってしまうから早く家に帰らないとお母さんに怒られちゃう」
「大丈夫よ。ちょっと腰を痛めてしまって調理器具が取れないだけなのさ。お客さんに頼るわけにもいかないから、今しがた目に入ったお嬢さんに手伝ってもらえれば助かると思ってね」
いたたた、と腰をとんとんと叩きながら女性はそう言ってくる。
「珍しく上の方達がこちらへいらっしゃってね。粗相を起こすわけにもいかないのさ。手伝ってもらったお礼にゃ、そうさね、服なんかいらんかね? お金でも構わないよ」
「服・・・」
そう呟いて少女は自身が身に着けている服を見る。
黒い服。
少女の家もまた貧相であった為、市場で最も安い黒い服が何着かしか持っていなかった。
実際今装着している服も触らずとも、痛んでしまっているという事が目に見えて分かるほど使い古している。
少女とて好んでずっと着ている訳ではない。出来るならば歳相応のお洒落をしてみたい年頃である。
「・・・どんな服?」
「興味あるかい? よかった! 赤い色のかわいい服さ。私が作った物なんだけど、もう私の子供も着れなくなったもんだし、どうだい? やってくれないかね、そこまで難しい事ではないしさ」
色のついた服、それは少女にとってとても魅力的な代物であった。
今までに色彩のついた服は一度も着たことがないので当然の思いでもあり、そして少女は決断する。
「わかった、手伝う。でも、暗くならないまでだと嬉しいな」
「おおー、うれしいね。спасибо(Thank you)、спасибо(Thank you)」
ささっ、こっちだよ。と女性は少女の手を取り、路地裏へと連れて行く。
「路地裏へいくの? こっちは危ないから他の道へ行ったほうがいいんじゃないかな」
「いやね、お店の入り口がこちら側からじゃないと入れないのさ。不安がらせてごめんよ」
少々急ぎ足で女性は足を進める。それにつれて手を取られている少女もまた歩の進みが速くなる。
ぱたぱたと二人の足音が路地を響かせる。
「そういえばおばさんはお店をしてるのよね。何のお店をしているの?」
「おばさんじゃなくてお姉さんって呼んでほしいけど、もうそうとも言えない歳だわね。私はただのしがない料理屋をやってるさね。大抵は不味いビールを高く出して、美味しい料理を出してなんとか人気を保ってるのさ」
麦酒はお嬢さんにはまだ早いけどね、と女性は軽く笑う。
「おいしい料理を作れるの? どういう物を作ってるの?」
「酒の摘みは大抵作ってるよ。でもね、私の店の一番のお勧めはパイさ。しっかりと練ったパイに具をいーっぱい詰め込んでね。以前はそこまで人気もなかったけど、ちょっと手法を変えてみりゃどんなもんだい。今では店の一番の名物だよ」
「おいしそうっ、私にも教えてもらえない?」
「ふふっ、そう簡単に店の味を盗ませるわけにはいかないね。でもそうだねぇ」
ぴたりと女性は足を止める。同時に少女も進めていた足を止める形になり、響いていた足音はそこで一旦途切れてしまう。
「ポイントだけは教えてあげよう。美味しい料理を作る為に重要なことだよ」
「ポイント?」
宵闇の中、女性は笑う。
にたり
にたり
そう顔を歪ませて笑う。
「新鮮な材料を使う事さ」
ちらりと銀色めいた物が少女の目の端に映った。
突如、駆ける足音が路地裏へと響き渡り、気付いた時には女性が少女を押しかかるような形を取っていた。
どさりと体勢を崩して少女は勢いよく倒れこんでしまう。
「いたっ・・・?!」
倒れた時に強く腰を打ってしまい、少女は軽く悲鳴をあげてしまう。
突然押し倒してきた女性に対して文句を上げようと思った時であった。
冷たい感触が腹部に突き刺さっていた。
「・・・え」
女性が覆いかぶさってるのに、若干ではあるが少女との間に隙間があった。
そこには女性の手と、その手に然りと握られた柄。
柄の先に付いているであろう、銀色の刃物は少女の腹部へ入り込んでしまっていた。
最初は確かに少し冷たい物が触れてしまった様な感覚だけであった。
しかし、瞬く間にそれは身体を焼ききる痛みへと変貌していく。
「ア゙ア゙アアアァッァッ!!!!」
「煩いわよ、静かにしなさい小娘」
ぐいっ、と女性は手に力を込めると同時に少し手首に回転をかける。
くぐもった液体の音が響き渡り、同時に少女はがくがくと悶絶を打つ。
今すぐ痛みの原因の元である刃物を取る為に、手を腹部に当てて抜こうとするが、如何せん、少女の上には顔を鬼のように変貌させている女性が跨っている為、抜こうと思えど抜く事は出来ない。
そもそも少女と女性の体躯は大きく違った為、少女がいかに反抗せよともそれは意味なき反抗としか成り得ない事は極めて明白であった。
しかし、それでも痛みから逃れる為にも少女は全身を使ってそれから逃れようと試みる。
足を意味なくばたつかせ、腕は女性を投げ飛ばそうと試み、顔を何度も振り続ける。
「少しは落ち着き・・・なさいっ・・・!!」
少女の抵抗に苛立ったのか、刃物から両手を離して握りこぶしを作ったうえで少女を殴りつける。
打ち付けられた衝撃に少女は声を漏らしていく。
最初は老人が上げる乾いた咳の様な音、しかし、時間が経つ内に[ごぼっ]と壊れてしまった水道管から水が零れる様な音を漏れ出していく。
何度も何度も、そう何度も殴っている内に自身の手を若干傷めてしまった事に気付き、手を止める。
殴られ続けた少女は顔を大きく腫らせてしまうが、それ以上に少女は変わってしまっていた。
「う・・・うふふ。ほら、これで貴方の願い事は叶ったでしょう?」
少女が着ていた服は少女の血で紅く染め上げられていた。
腹部の痛み、幾度も殴られ少女は既に身動きが取れなくなってしまっていた。
ただ、薄れゆくものではあったが、確かに少女は意識を未だ保っていた。
すでに身体には可笑しな感覚しか残っていないように感じ取れた。真夏で温くなってしまった川の中に深くぷかぷかと身を沈めてしまったような、どうにも抜け出せられないような不思議な感覚。
「やだやだ、こうしちゃいられないわ! 急がなきゃ!」
そういって女性は腹部に突き刺していたナイフを急いで抜き取る。ごぼり、と新しい紅が溢れ出し少女の身体が震えるが、そんな事には目もくれない。
溢れ出す血を邪魔そうに軽く払いながら、何を思ったか、女性は手を少女の中へと突き入れたのだ。
ぐぷぐぷと、少女の中を女性は手探る。
「あったわぁ」
そういって女性はお宝を探しあてたと言わんばかりの、げひた笑みを満面に浮かべる。
ずるりと少女から手を抜き出すと、その手には血で朱色に染まった何かの内臓がしかと握られていた。
「はやくしないとね」
路地裏に一人文の足音を響かせながら、上機嫌な女性は軽く鼻歌を歌ってその場を去っていく。
♪いつものキドニーがなくなったから娘の肝臓を使ってキドニーパイ♪
♪上流貴族は大喜び♪
♪浮かれたばばあはまた作る♪
♪ないなら作れ、作っちゃえ♪
♪死体がないなら作っちゃえ♪
新鮮な[食材]を手にした女性がその場を去った後、少女は最後に残っていた気力を振り絞り自身の身体を眺める。
そこには、ぽかりと空いた空洞が在っただけで紅い服なんてそこにはなかった。
やっぱり変わらない、いつもの黒い服。
ただ、いつもとは違う吸い込まれてしまいそうなそんな黒色。
そうして――、漆黒の闇を宿しながら、少女は息を引き取る。
そして、同時に。
「ちょっといいかしら」
いつもと変わらない様に女性はとある少女へと声を掛ける。
女性が経営する店の名物、キドニーパイを作る為に必要な[食材]を得る為だ。
そもそも女性の店は貧しくて、かつては作る為に必要な食材さえ残らない状況下に陥っていた。
そしてとある時、女性に機転が訪れる。それは滅多に来ないであろう上流貴族がこんな辺鄙な店へと立ち寄ってきたのだ。
いつもの輩に出している麦酒は不味い。いつも作っている食材は足りていない。
最後の手段と、とち狂った女性は自身の子を食材に仕立て上げる。それはキドニーパイ(腎臓煮込みのパイ)。
もちろん料理のレシピは秘密だよ。店の味を盗まれちゃいけないからね。貴族様と言えどもそれは叶わない願いさ。
気に入ってくださり大変光栄でございます。またご賞味したいのであれば、またのご来店をお待ちしております。
そうして味を占めた女性は手を紅く染め上げていく。
別に構わないじゃないか。自分さえ良ければ。自分が幸せならそれでいいのさ。だってもう貧乏は、貧乏はもういやだからさ!
貴族に一目置かれた女性は、貧しい状況から抜け出していく。
抜け出すだけでは足りない、もっと、もっと・・・!
「なーに?」
時刻は酉の刻。いつも仕入れる時間だけは替えない。仕込みを考えると一番よい時間だからだ。
声を掛けた少女の顔は見ない。欲しい物は今見えていないのだから。
「ごめんね、突然声を掛けて。ちょっとお願いしたい事があるの」
そういって女性は少女の服を見る。黒い服。
これならばいつもと同じ謳い文句を言えば思い通りだろう、と内心ほくそえむ。
「いいわよ。でも、もうそろそろ暗くなってしまうから早くしましょう」
おや、と女性は何か少し疑問に感じてしまった。
前に同じ様な声をした子がいたような、でももう何人もの子を手に上げているのだ。気のせいだろうと結論付ける。
「良かったわ! こんな快く受けてくれるなんて! спасибо(Thank you)、спасибо(Thank you)
ちゃんと仕事をしてくれた暁にはお礼に赤い服を貴方にプレゼントするわ! じゃあこっちへ来てちょうだいっ」
ささっ、こっちだよ。と女性は少女の手を取り、路地裏へと連れて行く。
「お礼をしてくれるなんて嬉しいわ」
「ふふっ、ちゃんとお仕事をしてくれたらお話よ? でも簡単な事だからきっとあなたにもできるわ」
「そう。なら良かった」
少々急ぎ足で女性は足を進める。それにつれて手を取られている少女もまた歩の進みが速くなる。
ぱたぱたと一人の足音が路地を響かせる。
「お姉さんは確か料理を作っているんだよね」
「あら? お姉さんと呼んでくれるのかね嬉しいねー。料理のことで私を知っているのかしら、光栄だね。そう。この街一番の料理作っているさね」
少女の発言に女性は気を良くする。
「確か珍しいパイを作っているんだよね、それって美味しい?」
「ああ、もちろんさね! 貴族様に認められるくらい上等なパイなんだよ」
「いつも作ったら喜んでくれる?」
「そうだよ、パイを作った時に顔を綻ばさせなかった人は今までいないわ」
「そう」
なら良かった、と少女は呟く。
そうしてぴたりと女性は足をとめ、路地裏に響いていた足音がなくなる。
「作る為のポイントを教えて欲しいかい?」
「ううん、それより一つお願い事があるの」
大抵の子はこういうと教えて欲しいと駄々をこねるのだが、先程からこの子と話すとなぜかどこか調子が狂ってしまう。
少し苛苛したが、なにせ最後のお願い事だ。聞き入れてあげるのが大人ってもんだ。
「なんだい。言ってみなさいな」
「えっとね、もう私。仕事を一度終えてしまっているの」
「?? 何いってんだい。まだ何もしとらんよ」
「ううん、以前にね。ちゃーんとお仕事はしたよ。それでね、その時お姉さんが取ったものを返してほしいの」
ちょっと頭のおかしい子を連れてきちゃったかしら、と少し女性は悔やんでしまう。
今まで仕事に関わらした子なんていないし、もちろん関わったとあればそれは食材としての形だけだ。
そんな子供達は全員いなくなったのだから。
「ったく、何を言っているんだい。この子は・・・」
「んー、分かり辛かったかな。簡単にいうとね」
宵闇の中、少女は笑う。
「私の肝臓を返して」
響く足音はなかった。ただ、一つ女性が倒れる音が路地裏を木霊する。気付いた時には少女が女性を押しかかるような形を取っていた。
どさりと体勢を崩して女性は勢いよく倒れこんでしまう。
「った・・・! 何すんのこの糞ガキ・・・!」
倒れた時に強く腰を打ってしまい、女性は軽く悲鳴をあげてしまう。
突然押し倒してきた少女に対して文句を上げた時であった。
少女の右手が腹部に突き刺さっていた。
「・・・は?」
在り得ない光景を目にし女性はぽかんと表情を浮かべる。
現実味がない光景だ。我を忘れるのも仕方ない事であろう。
少女は小柄な身で、体躯的にはいつかいた自身の子程度の物であったであろう。
そんな子供が自身の身体を確かに貫いているのだ。驚かないほうがおかしい。
しかし、そんな事よりも続いてやってくる腹部の痛みへ神経は優先順位を上げる。
「ヒッギャアアアアアアアアアアァァッッァ!!!!」
いつもと同じような場所で、同じような悲鳴が上がる。
しかし、それは確かに同じような状況下であったが、彼女にとってそれは在ってはならない事であった。
ぶちぶちと神経が千切れていくものを身が感じ、それを脳が受諾する。
自身から溢れ出る液体をかける為にエプロンを着けていたのではない。本来の役目をエプロンは担っていなかった。
「うーん、煩いなぁ」
そういって少女は残っていた左手を女性の口へと持っていく。
錯乱している女性はそれに気付かず、ただ痛みから逃れようと少女を我が身から剥がそうと何度も試みるが、少女とは思えない力で身体全体を押え付けられている為逃れることは出来ない。
女性は悲鳴を上げる為に大きく口を開けていたのが災いとなったか、簡単に少女は考えていた事を成し遂げる。
煩かいから、それなら声をあげられないようにすればいいや。と少女は考えたのだ。
ぐいっとがちがちと噛まれてしまう事に気にも留めず、左手を口の中へ差し入れると、簡単に目的の物を容易く潰したのだ。
潰したというより、引き抜いたという方が的を得ていよう、女性の舌を文字通り引き抜いたのだ。
「ごぼぉッ・・・」
先程の声とは打って変わり、甲高い音から配水管に水が詰まってしまった様な音が漏れる。
焼ききれるような痛みを抱きながら女性は尚もあがこうと身をばたつかせる。
用意していたナイフの事など当に忘れてしまっていた事は不幸な事だったであろうか、覚えていたとしても結果に変わりはしなかったであろうか。
つまらなさそうに変わり果て行く女性を少女は見つめていたが、当の目的でもあった事を試みようと考える。
ぐりっと突き入れていた右手で、目的の物を探す為に内臓を掻き回す。その際顔からは涙を垂れ流し気を失いそうになっている女性がびくりと震えた事にはもちろん気をかけない。
「っと、これかな?」
そうしいって引き抜いた物を眺めてみる。
しかし――、
「残念、これじゃないね」
それは確かに内臓ではあったが大きさも色も、あの時とは別物である。
そういうものに対し知識がない少女にとってそれがなんであるかは分からなかったがどくんどくん、と脈を打ち、未だに血を垂れ流す内臓であった。
その血はびっと勢いよく吹き出し、少女の服を紅く染め上げていく。
しかし、それは確かに少女が望んでいるものではない。
「ごめんなさい、私。こういうお料理初めてで、不器用なの」
そういって女性に謝りを告げていく。
しかし、女性はもうすでに反応を起こさない。
瞳孔が開ききった目は、既にどこか遠い所を見つめてしまっている。
「だからちょっと、時間がかかると思うの。苦しいかもしれないけど我慢してね?」
「っと、これだね」
ようやく引き抜き当てた時には既に周りは完全に暗闇に包まれていた。
しかし、だからこそ、少女は手にした肝臓を目にせず済んだのだ。
自身の肝臓はもう既に存在しない、そんな事実を突きつけられず済む事に多少ならずとも安心を感じてしまっていた。
「どうしようかなぁ」
復讐は果たした。これで確かに思いは遂げたと思ったのだが、やはり足りない。
色々なにやら触っている間に自身の身体は血で赤く染め上げれており、もう望んでいなかった紅色の服を確かに少女は着てもいたのだ。
それでも確かに、彼女は満たされない気持ちであった。
ぽっかりと空いた空洞みたいな、あの時感じた気持ちは少女を引き止める。
そしてふと思い出す。今となってはどうでもいい女性が言っていた事。
・・・美味しいのかな?
確か貴族でも美味しく食べるっていってた気がする。でも、それは調理をした上での話である。
しかし、これ程手の込んだ料理は、少女にとって初めてのことであった。
私の顔を覚えていないかが心配であったのだが、ちゃんとご機嫌を取ったりして逃げられないようにしたりもちゃんと下ごしらえもしていたのだ。
何よりもぽっかりと空いた気持ちは空腹感にも似ていたのである。ならば好奇心に身を任せて興じてみるのも一興であろう。
そっと、手にしていた肝臓を口へと運び、少女はそれをまるで果実のように一齧りする。
「・・・不思議な味」
それは今まで食べた物にはない、独特な味であった。
もちろんそれは血生臭く、人が食せるような物ではなかったが、すでに少女は人ではない身であった為であろうか。不思議と嫌な味ではなく感じ取れた。
「・・・」
無言でもう一齧り。
口から溢れ出た血が滴るが、気には留めない。
くちゃくちゃと、しっかり咀嚼する。
何度も何度も噛み締めていく。
闇に溶かしつかせるかのように、しっかりと咀嚼を試みる。
「これは駄目ね」
しっかりと味わった上で少女は結論付ける。
ごくりと舌に残った物を嚥下させる。
「これだけ美味しいなら、食べちゃうのも仕方ないわ」
そういって残った物を余さずぺろりと少女は平らげる。
少女の身体には見合わないほど平らげる。
肝臓はもちろん、残っていた内臓や肉もしっかりと平らげる。
ぽっかりと空いた空腹感を満たす為にも。
それからというもの、怪奇な現象は後を絶たなくなった。
宵闇の頃、不思議と消えていく人が目に見えて増えていったのだ。
以前から確かに同じ現象はあった。しかし、それは形を残しての話である。
形を残していた時はそう頻度も多くはなかったのだ。
多くて月に二度や三度。それは確かにその程度のものであった。
しかし、死体を残しての話がなくなったと思えば、次は人が完全に消えてしまうという現象がおき始めてしまった。
頻度は週に二度三度、多ければ毎日という割合であった。
[これは犯行を行っている者がエスカレートした上で行われている事ではないだろうか。]
さすがに黙っているわけにもいかなくなった街の人々は色々と対策を講じていく。
いくつか逃げ出せたという報告も上がり、いくつもの噂話が上げられていた。
そこには暗闇を身に宿した黒い少女がいたという与太話もあげられていた。
しかし、施した事は意味をなさず、ならば少しでも安全にと街に灯りを燈す事にしたのだ。
宵闇の頃、しかと周りを見渡せるように。
そうするとどうであろう。今まであった事が嘘であったかのように事件は息を潜めていった。
そうしてこの事件は灯りが燈される事が燈され続けることにより忘れ去られていってしまった。
///////////////////////////////////
「ちょっと大丈夫? あなた」
はっと意識を戻す。
いつか在ったような、もう忘れてしまった出来事を思い出しそうになり意識がどこかへいってしまっていたのだ。
気を取り戻しルーミアは声をあげている人間へと顔を向ける。
「うん? どうしたの?」
「迷っちゃって・・・、最近は妖怪も結構安全って聞くからさ。何よりあなたみたいな子なら安全そうだし。知っていれば里への帰り方教えてもらえないかな?」
もちろんルーミアは知っていた。だてに毎日ふらふらとそこら中を漂っているわけではない。
「知ってるよ、あっちの方向。多分少しすれば霧の湖が見れるから、そこからならわかる?」
「それなら分かるわ! ありがとうね、やっぱり聞いて正解だったわ」
「ねぇねぇ」
うん? と女性は首をかしげる。
まったくルーミアには警戒心を抱いていないようだ。
「なーに?」
「うんとね。聞きたいのだけれど」
「あなたは食べられる人類?」
肝心の内容は無駄にグロいだけで中身が無く薄っぺらい作品でした。
ストーリーは面白いけど、単語の誤用や文章がかなり変なのが残念。
>>突貫工事してたもんだからごめんね!
4. 10点 名前が無い程度の能力 ■2010/12/18 02:50:17
自分のサイトでもないのに勝手に年齢制限を設けてることに常識を疑います。
肝心の内容は無駄にグロいだけで中身が無く薄っぺらい作品でした。
>>今しがた世間で問題となっている事でもあるので[念の為]と記述しております。常識あってこそとお思いくださいませ。
>>中身がないとはこれは奇な事。確かに少女には中身が無かれとも、生まれたという中身はあるのです。 この度肝臓を食べた事はアダムとイヴが知恵の実を食べたという物を連想させる事も出来ます故、そこは読者様の想像力を豊かにさせてご覧頂けたらより一層作品という物は映える事だと思われます。描くかどうかこちらとて悩みましたが外見からは狂気しか感じられないように致しました。
個人的な補足としてここで幾つか上げさせて頂きます
ルーミアが何故人間を食べ大食であるのか、宵闇の少女と言われる所以、妖怪となった成り行き。等を含めております。 意外と謎が多いルーミアの原点も少なからずなぞっています。
少し中身が無いという発言を頂きまして俗に言う顔が真っ赤状態になったのでこちらで長々と書かせて頂きました。この作者気持ち悪いわーい。
主語が後ろの方についてる場所が多すぎる。
唐突に声を掛けられ小さな少女は立ち止まる。
黒い服で身を包み、赤いリボンを結んでいるくすんだブロンド色の髪の毛を揺らして少女は振り返る。
短い間でこんな書き方されると萎える。
んーでもかなり個性的かも。
後は視点統一した方がいい。
話の内容はグロを書きました。終わりって感じだから面白くない。
変に気取りすぎて一人相撲。
はたからみると滑稽に見えますので注意。
彼女の人食いたる由縁が「人食いの為に殺された最期だったから」というのは説得力があるような気もします。
内容もあれだけど文章がちょっとな。
主語が後ろの方についてる場所が多すぎる。
唐突に声を掛けられ小さな少女は立ち止まる。
黒い服で身を包み、赤いリボンを結んでいるくすんだブロンド色の髪の毛を揺らして少女は振り返る。
短い間でこんな書き方されると萎える。
んーでもかなり個性的かも。
後は視点統一した方がいい。
話の内容はグロを書きました。終わりって感じだから面白くない。
変に気取りすぎて一人相撲。
はたからみると滑稽に見えますので注意。
>>どもです。 変なテンションになってしまった為コメントで暴走してました
書き方は昔からの悪い癖ですね。今後気をつけます。
グロが書きたかったってのもありますがちょっと視点が少なすぎましたね
8. 50点 名前が無い程度の能力 ■2010/12/18 10:50:31
件の曲を自分が知らないからかもしれませんが、殺されたルーミアが妖怪として生まれ変わることが出来たなにかしらの「根拠」が欲しかったかもと思ってしまいました。
彼女の人食いたる由縁が「人食いの為に殺された最期だったから」というのは説得力があるような気もします。
>>根拠としては報酬である赤い服を貰い受けることでした。 あげたって言われて確認したけど真っ黒なまんま。 ちょっと理由が薄すぎました
9. 60点 名前が無い程度の能力 ■2010/12/18 12:33:33
ふぅ……。
>>ルーミアのキドニーパイ食べたいです