「ナズーリン、替えのパンツを忘れてしまいました」
「ご主人……」
私は戦慄した。
わがご主人は失せ物のプロフェッショナルとして名高いが、まさか自分の下着までなくしてしまうとは。
「なくしたんじゃないですよ。忘れたんですよ」
「同じことだよ。だいたいご主人は、シャンプーもリンスも石鹸も、全部忘れて私に借りたじゃないか。というか手ぶらで来たんだろう。およそ銭湯に来る格好じゃなかったよ」
「それは、まあ」
命蓮寺の風呂が壊れた……というかドラム缶風呂のドラム缶に穴が開いたので今日は近くの銭湯に来ていた。私は元が獣なので、二日や三日入らなくても不快になったりはしないが、ご主人がこれできれい好きなので毎日入らないと気が済まない。
そのわりにはタオルすら持ってこないので、私のタオルを使って体を洗ったんだが。バスタオルもないのでこれも共有だ。
先にご主人に体を拭かせて、湿ったタオルでやれやれと髪を拭いていたときの衝撃の告白だった。
「しかたないから、来るときにつけていたものをまたはけばいいだろう」
「それが、その……」
「まさか」
「私たちは獣なので、下着をつけるのは、ちょっと馴染みがないですよね。あなただって二日に一日はノーパンティーでしょう」
「私は毎日ちゃんとはいてるよ!」
私は頭を抱えた。
じゃあ、ノーパンティーで帰ればいいじゃないか。来る時もそうだったんだから何も問題ない。
と言うと、
「それはいけません。風呂上りに下着をつけずに外を歩くと、風邪をひいてしまいます」
と言う。
どないせえと。
「ご主人は、コンビニに行ってパンツを買ってこい、というのかい?」
「いえ、それには及びません」
と、私の脱衣かごに目を向けてさらりと、
「ナズーリンがはいていたパンツを貸してください」
と言った。
「嫌だよ!」
「いいじゃないですか。減るもんではなし」
「なんでそんな変態みたいな真似をしなきゃならないんだ。だいいち汚いだろう」
「ナズーリン。私があなたが身につけていたものを、汚いと思うだなんて、そんなことは天地にかけてありえません。白蓮に誓います」
「私が嫌なんだよ」
でも、言ってもきかないので、しかたなく貸してあげた。
体の大きさが違うので、思い切りよく伸びていた。パンツの伸縮性ってすごいなあと思った。
「ほんと、ご主人には困ったものだよ。早く服を着ないとそれこそ風邪をひいてしまうよ」
「ナズーリン」
「ご主人。喋らないで服を着てしまおう」
「いえ、それが」
「牛乳はコーヒー牛乳とフルーツ牛乳、どっちがいいんだい? ご主人は昨晩爪を切っていたから、私が蓋をとってあげるよ」
「ありがとうございます。でも、ナズーリン、聞いてください」
「なんだい。そう立派なものを放り出されていると、こちらも目のやり場に困るよ」
「ええ、そのことなのですが」
ご主人は上半身裸、というか、パンツだけ身につけた格好で、
「うーん、私のお乳は、そんなに立派でしょうか」
「ああそうだね。早くしまっておくれよ」
「そう、そのことなのですが」
嫌な予感がした。
「ナズーリン、替えのブラを忘れてきました。あなたのものを貸してください」
私は泣きながらご主人をボコボコにした。
◆ ◇ ◆
というようなことがあってから、私はご主人の下着を常に携帯するようにした。
人の身体的コンプレックスをこれ以上ない形で突いてくるなんて、ご主人はマジデビルだと思う。
しかしそもそもご主人はほとんど下着をもっていなかったので、里の下着店に行ってそろえるところからはじめた。
あまりこだわりはないようだったので、私好みのものをそろえられたのは僥倖と言えた。
「ふむ。これでご主人は立派なおしゃれ下着さんだよ。いつでもランジェリーパブに勤められる」
「なんだか恥ずかしいですね」
「ノーパンティーのほうがよっぽど恥ずかしいよ……健康法を気取っているわけでもないんだろう」
「ナズーリン、ノーパン健康法とは寝るときに下着をつけないことであって、常時チンポロリンな状態のことではないんですよ」
「ご主人……」
叱っておいた。ポロリンって、するものないだろう、と言ったら「女の子だと、マンチラリン?」とか言ったので殴った。
それからわりとよく二人で銭湯に行くようになった。当然のごとく、ご主人は下着を忘れるので(というか、そもそも持ってくる気がないんじゃないかと思う)、いつも私がチョイスしたものをつけている。
それで調子に乗った。
ある日のことだった。魔理沙がやってきて、ご主人の衣の裾を盛大に捲った。
いわく「あの頃の純粋な気持ちを思い出したかった」だそうだ。どの頃だ。
折悪しく、ご主人はそのとき、前と後ろのそうとうな部分がスケスケになっているパンティーをはいていた。もうなんかコアの部分だけ隠せればいいのよって感じのやつだった。
魔理沙は真っ赤になって逃げ帰ると、間髪入れず天狗を連れて戻ってきた。
「さあ!」
「さあ! じゃない!」
カメラの狙いをつけつつ、天狗は片方の手で扇をかまえていた。
風を起こすつもりだ。
ご主人のあんな下着の写真を撮られては、風評被害で命蓮寺がつぶれかねない。
そうでなくても白蓮の格好が僧侶にはまったく見えなくてなんかやらしいと評判なのだ。
村紗がとくに理由もなくざんぶざんぶ水をかぶるので、かなりの割合でセーラー服が水に濡れていて、常時見せブラが丸見えになっているのも災いした。
つまるとこ、命蓮寺は最近なんというかそういうお店みたいな目で見られていた。
「私の調べによると、あなたの獣耳も存外受けがいいですよ。スカートに穴があいててえっちぃですし」
「うるさい」
私はご主人の前に立ちはだかると、両手を広げてエロフォトグラファーのルッキングレイプ視線をさえぎる。
「ご主人の写真は撮らせないよ。このエロカメラマンめ」
「えい」
天狗が扇を振り下ろした。
私のスカートが捲れ上がった。
「あっ」
「星のと色違いじゃないか。この発情期め」
「ち、違う!」
あわててスカートを押さえるが、時すでに遅し。天狗のカメラにしっかりと私のパンツ写真はおさめられていた。魔理沙と天狗がとてもいい顔をしてパン、ツー、丸、見え、とハンドシグナルを交わしている。殺すか。
「お待ちなさい」
耳の穴からダウジングロッドを突っ込んで脳みそ掻きだしてやる決意を固めた時だった。障子がババァーンと開いて白蓮が出てきた。あと擬音につられて八雲紫もスキマから出てきた。
「エロカメラマンさん。わが命蓮寺の者のそのような写真を撮られるのは、看過できるものではありません。そのカメラをおよこしなさい」
「私のグラビア写真集なら、出版契約を結んであげても良くってよ」
ブラジル水着に着替えている八雲紫に極力目を向けないようにして、天狗はカメラを後ろ手に隠し、撤退の機会をうかがった。しかしすでに雲山が命蓮寺のまわりをとり囲んでいる。ここから逃げ出すのは、いかな天狗でも骨だと思われた。
「おとなしく渡さないというのなら……」
「ぼ、暴力をふるうつもりですか。公正明大なジャーナリストにたいして」
「いえ。星」
「はい」
ご主人が袖を振ると、袂から金塊がごろんと出てきた。
「買い取りましょう」
みんな平和になった。ご主人の財宝が集まる程度の能力は幻想郷でも最高に問題解決能力の高い能力であると思う。
なぜか八雲紫も金塊もらって帰っていった。
「ありがとう、白蓮。助かったよ」
「いいえ。これも仏法の導くもの。ところでナズーリン、あなたは破廉恥罪で折檻です」
「え」
「ナズーリン、申し訳ありません。私があなたのパンツをはいてみたいなんてよこしまな考えを起こしたばかりに、いつの間にかこんなことに」
「ちょっと待て」
仏恥義理でお仕置きをくらった。死ぬかと思った。
その後三日間くらい、ご主人には少し小さめのブラをあてがってやった。
「ご主人……」
私は戦慄した。
わがご主人は失せ物のプロフェッショナルとして名高いが、まさか自分の下着までなくしてしまうとは。
「なくしたんじゃないですよ。忘れたんですよ」
「同じことだよ。だいたいご主人は、シャンプーもリンスも石鹸も、全部忘れて私に借りたじゃないか。というか手ぶらで来たんだろう。およそ銭湯に来る格好じゃなかったよ」
「それは、まあ」
命蓮寺の風呂が壊れた……というかドラム缶風呂のドラム缶に穴が開いたので今日は近くの銭湯に来ていた。私は元が獣なので、二日や三日入らなくても不快になったりはしないが、ご主人がこれできれい好きなので毎日入らないと気が済まない。
そのわりにはタオルすら持ってこないので、私のタオルを使って体を洗ったんだが。バスタオルもないのでこれも共有だ。
先にご主人に体を拭かせて、湿ったタオルでやれやれと髪を拭いていたときの衝撃の告白だった。
「しかたないから、来るときにつけていたものをまたはけばいいだろう」
「それが、その……」
「まさか」
「私たちは獣なので、下着をつけるのは、ちょっと馴染みがないですよね。あなただって二日に一日はノーパンティーでしょう」
「私は毎日ちゃんとはいてるよ!」
私は頭を抱えた。
じゃあ、ノーパンティーで帰ればいいじゃないか。来る時もそうだったんだから何も問題ない。
と言うと、
「それはいけません。風呂上りに下着をつけずに外を歩くと、風邪をひいてしまいます」
と言う。
どないせえと。
「ご主人は、コンビニに行ってパンツを買ってこい、というのかい?」
「いえ、それには及びません」
と、私の脱衣かごに目を向けてさらりと、
「ナズーリンがはいていたパンツを貸してください」
と言った。
「嫌だよ!」
「いいじゃないですか。減るもんではなし」
「なんでそんな変態みたいな真似をしなきゃならないんだ。だいいち汚いだろう」
「ナズーリン。私があなたが身につけていたものを、汚いと思うだなんて、そんなことは天地にかけてありえません。白蓮に誓います」
「私が嫌なんだよ」
でも、言ってもきかないので、しかたなく貸してあげた。
体の大きさが違うので、思い切りよく伸びていた。パンツの伸縮性ってすごいなあと思った。
「ほんと、ご主人には困ったものだよ。早く服を着ないとそれこそ風邪をひいてしまうよ」
「ナズーリン」
「ご主人。喋らないで服を着てしまおう」
「いえ、それが」
「牛乳はコーヒー牛乳とフルーツ牛乳、どっちがいいんだい? ご主人は昨晩爪を切っていたから、私が蓋をとってあげるよ」
「ありがとうございます。でも、ナズーリン、聞いてください」
「なんだい。そう立派なものを放り出されていると、こちらも目のやり場に困るよ」
「ええ、そのことなのですが」
ご主人は上半身裸、というか、パンツだけ身につけた格好で、
「うーん、私のお乳は、そんなに立派でしょうか」
「ああそうだね。早くしまっておくれよ」
「そう、そのことなのですが」
嫌な予感がした。
「ナズーリン、替えのブラを忘れてきました。あなたのものを貸してください」
私は泣きながらご主人をボコボコにした。
◆ ◇ ◆
というようなことがあってから、私はご主人の下着を常に携帯するようにした。
人の身体的コンプレックスをこれ以上ない形で突いてくるなんて、ご主人はマジデビルだと思う。
しかしそもそもご主人はほとんど下着をもっていなかったので、里の下着店に行ってそろえるところからはじめた。
あまりこだわりはないようだったので、私好みのものをそろえられたのは僥倖と言えた。
「ふむ。これでご主人は立派なおしゃれ下着さんだよ。いつでもランジェリーパブに勤められる」
「なんだか恥ずかしいですね」
「ノーパンティーのほうがよっぽど恥ずかしいよ……健康法を気取っているわけでもないんだろう」
「ナズーリン、ノーパン健康法とは寝るときに下着をつけないことであって、常時チンポロリンな状態のことではないんですよ」
「ご主人……」
叱っておいた。ポロリンって、するものないだろう、と言ったら「女の子だと、マンチラリン?」とか言ったので殴った。
それからわりとよく二人で銭湯に行くようになった。当然のごとく、ご主人は下着を忘れるので(というか、そもそも持ってくる気がないんじゃないかと思う)、いつも私がチョイスしたものをつけている。
それで調子に乗った。
ある日のことだった。魔理沙がやってきて、ご主人の衣の裾を盛大に捲った。
いわく「あの頃の純粋な気持ちを思い出したかった」だそうだ。どの頃だ。
折悪しく、ご主人はそのとき、前と後ろのそうとうな部分がスケスケになっているパンティーをはいていた。もうなんかコアの部分だけ隠せればいいのよって感じのやつだった。
魔理沙は真っ赤になって逃げ帰ると、間髪入れず天狗を連れて戻ってきた。
「さあ!」
「さあ! じゃない!」
カメラの狙いをつけつつ、天狗は片方の手で扇をかまえていた。
風を起こすつもりだ。
ご主人のあんな下着の写真を撮られては、風評被害で命蓮寺がつぶれかねない。
そうでなくても白蓮の格好が僧侶にはまったく見えなくてなんかやらしいと評判なのだ。
村紗がとくに理由もなくざんぶざんぶ水をかぶるので、かなりの割合でセーラー服が水に濡れていて、常時見せブラが丸見えになっているのも災いした。
つまるとこ、命蓮寺は最近なんというかそういうお店みたいな目で見られていた。
「私の調べによると、あなたの獣耳も存外受けがいいですよ。スカートに穴があいててえっちぃですし」
「うるさい」
私はご主人の前に立ちはだかると、両手を広げてエロフォトグラファーのルッキングレイプ視線をさえぎる。
「ご主人の写真は撮らせないよ。このエロカメラマンめ」
「えい」
天狗が扇を振り下ろした。
私のスカートが捲れ上がった。
「あっ」
「星のと色違いじゃないか。この発情期め」
「ち、違う!」
あわててスカートを押さえるが、時すでに遅し。天狗のカメラにしっかりと私のパンツ写真はおさめられていた。魔理沙と天狗がとてもいい顔をしてパン、ツー、丸、見え、とハンドシグナルを交わしている。殺すか。
「お待ちなさい」
耳の穴からダウジングロッドを突っ込んで脳みそ掻きだしてやる決意を固めた時だった。障子がババァーンと開いて白蓮が出てきた。あと擬音につられて八雲紫もスキマから出てきた。
「エロカメラマンさん。わが命蓮寺の者のそのような写真を撮られるのは、看過できるものではありません。そのカメラをおよこしなさい」
「私のグラビア写真集なら、出版契約を結んであげても良くってよ」
ブラジル水着に着替えている八雲紫に極力目を向けないようにして、天狗はカメラを後ろ手に隠し、撤退の機会をうかがった。しかしすでに雲山が命蓮寺のまわりをとり囲んでいる。ここから逃げ出すのは、いかな天狗でも骨だと思われた。
「おとなしく渡さないというのなら……」
「ぼ、暴力をふるうつもりですか。公正明大なジャーナリストにたいして」
「いえ。星」
「はい」
ご主人が袖を振ると、袂から金塊がごろんと出てきた。
「買い取りましょう」
みんな平和になった。ご主人の財宝が集まる程度の能力は幻想郷でも最高に問題解決能力の高い能力であると思う。
なぜか八雲紫も金塊もらって帰っていった。
「ありがとう、白蓮。助かったよ」
「いいえ。これも仏法の導くもの。ところでナズーリン、あなたは破廉恥罪で折檻です」
「え」
「ナズーリン、申し訳ありません。私があなたのパンツをはいてみたいなんてよこしまな考えを起こしたばかりに、いつの間にかこんなことに」
「ちょっと待て」
仏恥義理でお仕置きをくらった。死ぬかと思った。
その後三日間くらい、ご主人には少し小さめのブラをあてがってやった。
大爆笑wwwww
思わず口に出して言いたくなる語感の良さでした。チンポロリン。
下ネタの具合が普通に怒られそうなレベルになっとる
「パンティーなんて言葉使う女子なんていねーよ」っていう女性捜査官の意見で女装ってた犯人が捕まった話思い出した
そうなんだろ!?
最後までナズーリンが可哀想www
ナズーリンの穴あきスカートの下がスケスケおぱんつとか胸が高鳴るな。
しかし星ちゃんブラの必要ないナズーリンに向かってブラを貸してってマジデビル……